説明

2液硬化性組成物

本発明の2液硬化性組成物は、熱可塑性樹脂と可塑剤からなるプラスチゾルA液と、ゲル化剤からなるB液とから成り、A液とB液の混合時にスプレー塗布可能な粘度を有し、かつ塗布後30秒〜60分でゲル化することを特徴とする。この2液硬化性組成物は、特に自動車製造ラインの車体工程においてシーラー(熔接部の防水、気密、防塵、防錆を目的)あるいはアンダーコーティング材(耐チッピングを目的)、あるいは接着剤として適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有するプラスチゾルとゲル化剤とを組合せた2液硬化性組成物であって、該2液を混合し、次いで塗布することによって2液の混合物が室温において全体にゲル状を呈し、即ち初期ゲル化し、これによって後の工程のハンドリングやシャワーによる変形や脱落が防止され、さらにその後の加熱処理によって完全硬化物を形成でき、たとえば油面鋼板への接着性を有し、特に自動車製造ラインの車体工程においてシーラー(熔接部の防水、気密、防塵、防錆を目的)あるいはアンダーコーティング材(耐チッピングを目的)あるいは接着剤として適用できる2液硬化性組成物であり、特に自動車製造ラインで用いる際の自動車材料用2液硬化性組成物に関する。更に、本発明は、このような2液硬化性組成物を用いる車体部材のシール工法、アンダーコート工法及び接着工法にも関する。
また、本発明の2液硬化性組成物は、自動車部品、例えば、オイルフィルターにおけるフィルターエレメントとハウジングのシーラーや、ガソリンタンク用のアンダーコーティング材としても使用でき、さらに、その他の諸工業製品における部品および最終製品などや成型品にも適用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車製造ライン(基本的に、車体工程、塗装工程、及び艤装工程から成る)における車体部材のシール工法では、最初の車体工程でプレス成形した車体部材がスポット熔接により組み立てられるが、車体部材の接合部は熔接スポット間の車体パネルの歪みにより隙間が生じるため、その接合部の防水、防塵、気密、防錆を目的としてシーラーが塗付される。
このようなシール工法には、主として1液熱硬化性組成物のシーラーが用いられており、通常、車体工程の次の塗装工程では、車体部材の水洗、前処理、電着塗装とその後の電着炉での焼付けが行われ、接合部を有する車体部材にシーラー塗布が行われ、次いで該部材はシーラー炉へ送られ、その後、下、中,上塗り塗装工程へと順次送られ、最後に艤装工程に付される。
【0003】
しかしながら、従来から使用される1液熱硬化性シーラーは、その硬化にはシーラー炉が必要であり、しかも、シーラー塗布時のダスト等による上塗り塗装外観の低下を引き起こすといった重大な問題を生じるという欠点を有する。
【0004】
一方、オイルフィルターの製造工程においては、硬化炉に移送する際の未硬化シーラーの損傷を防ぐため、紫外線あるいは熱源によりシーラーを部分的に硬化「kiss−gelled」させ、後に加熱により完全に硬化させる方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。しかしながらこの方法では、部分的に硬化させるためのエネルギー源として紫外線照射装置や加熱装置が別途必要であり、設備コストおよびエネルギーコスト的に不利である。
【特許文献1】特表平8−500531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主目的は、かかる従来のシール工法の問題点に鑑み、シール工法を塗装外観に支障を来たす塗装工程ではなく、前工程の車体工程で実施でき、かつシーラー炉の必要をなくし、しかも、スプレー塗布可能なシーラーとして適用できる組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このような組成物を用いる車体部材のシール工法、車体部材のアンダーコート工法、及び車体部材の接着工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの目的を達成するために鋭意研究を進めたところ、熱可塑性樹脂と可塑剤からなるプラスチゾルA液と、ゲル化剤からなるB液とを組合せた2液硬化性組成物が上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、明細書を通じて、「ゲル化」とは、プラスチゾルが流動性を失い、固化する現象のことを言い、「ゲル化剤」とは、熱可塑性樹脂を可塑剤に分散したプラスチゾルを室温においてゲル化させうる成分を称す。具体的には、プラスチゾルA液の分散質である熱可塑性樹脂を溶解させるような可塑剤、高沸点溶剤、有機溶剤、熱可塑性樹脂の構成モノマーなどを単独でまたは混合して用いる。ゲル化剤は熱可塑性樹脂のコロイド分散状態から順次溶液状態になり増粘、ゲル化させる。
【0007】
すなわち、例えば図1で示すように、熱可塑性樹脂11および可塑剤12を主成分とするA液1とゲル化剤21を成分とするB液2を混合すれば、混合直後には、スプレー塗布可能程度の粘度を呈し、時間経過と共に、プラスチゾルA液1中の熱可塑性樹脂11が、B液2のゲル化剤21により溶解膨潤して、混合物全体が室温でゲル状となり、膨潤ゲル3を形成する。この初期ゲル化によって、ハンドリングによる変形や脱落が防止される。その後、さらに加熱処理を行うことによって、系が均一に完全に硬化されて、完全硬化物4が得られる。
【0008】
従って、このようなA液とB液から成る2液硬化性組成物をシーラーとして適用すれば、上記の初期ゲル化により、水洗時に要求される耐シャワー性を具備することから、該シール工法を、車体工程でプレス成形した車体部材をスポット熔接により組立てた後にシーラー塗布を行ない、水洗から始まる次の塗装工程に供することができ、しかも、塗装工程の電着炉で完全に硬化できるため、従来のシーラー炉を省略しうる。
【0009】
また、上記シール工法とは別に、自動車製造ラインにおいて、主に走行中の飛び石やその衝突物による破損等を防止する耐チッピングを目的として、アンダーコート工法も採用されている。このアンダーコート工法も従来のシール工法と同じ工程段階で、すなわち、電着塗装及び電着炉での焼き付けの後に行なわれ、従来のシール工法と同様な観点から車体工程での実施が望まれていたが、本発明者らの研究によって、本発明の2液硬化性組成物がアンダーコーティング材としても十分に適用できることがわかった。
【0010】
加えて、上記シール工法とは別に、自動車製造ラインにおいて、主に外板パネルのバタツキの低減、張り剛性の付与を目的として、外板パネルと補強部品の接着工法も採用されている。従来この目的で使用される接着剤は、接合後に続く、電着、塗装工程に至る途中で必要な耐シャワー性を付与する目的で、高粘度に設計されており、塗付作業用の設備負担等が多いといった課題や、シャワー工程にて脱落した場合、電着塗装の著しい品質低下を招くといった課題があった。このような問題を解決する手法として、本発明の2液硬化性組成物が、上記接着工法における接着剤としても十分に適用できることがわかった。
【0011】
即ち、第1の要旨によれば、本発明は、熱可塑性樹脂と可塑剤からなるプラスチゾルA液と、ゲル化剤からなるB液とから成り、A液とB液を混合することにより、該混合物が室温でゲル化することを特徴とする2液硬化性組成物を提供する。
第2の要旨によれば、本発明は、自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した車体部材をスポット溶接により組み立てた後、該組み立て車体部材の接合部にシーラーとして、上記の本発明の2液硬化性組成物を塗布し、次いでゲル化状態で次の塗装工程並びに艤装工程に付する、車体部材のシール工法を提供する。
第3の要旨によれば、本発明は、自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した車体部材をスポット溶接により組み立てた後、該組み立て車体部材のアンダーコーティング材として、上記の本発明の2液硬化性組成物を塗布し、次いでゲル化状態で次の塗装工程並びに艤装工程に付する、車体部材のアンダーコート工法を提供する。
第4の要旨によれば、本発明は、自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した車体部材の接合の接着剤として、上記の本発明の2液硬化性組成物を塗布し、次いでゲル化状態とすることから成り、これに続く部材の処理工程においても接着剤の変形を防止することができる、部材の接着工法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の2液硬化性組成物のゲル化から完全硬化に至る経過を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0013】
1:A液、2:B液、3:膨潤ゲル、4:完全硬化物
11:熱可塑性樹脂、12:可塑剤、21:ゲル化剤
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、従来既知の熱可塑性樹脂が使用でき、例えば、アクリル樹脂;MBS樹脂(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン);ポリ塩化ビニル;塩化ビニル共重合体(例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体など);アイオノマー樹脂;AAS樹脂(アクリロニトリル/スチレン/特殊ゴム);AES樹脂(アクリロニトリル/EPDM/スチレン);AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン);ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン);ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を、それぞれ単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0015】
アクリル樹脂としては、たとえばアクリル酸アルキルエステル(アルキルは、例えばメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシルなどである)もしくはメタクリル酸アルキルエステル(アルキルは、例えばメチル、エチル、ブチル、ラウリル、ステアリルなどである)の単独重合体もしくは共重合体、またはこれらエステルと他のアクリル系モノマー(メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸など)との共重合体;更に、構成モノマーとして、たとえばエチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレートの少なくとも1種[Aモノマーと称す]と、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートの少なくとも1種およびメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸の少なくとも1種の混合物[混合Bモノマーと称す]を使用して重合するコアシェル型アクリル樹脂、また重合に際して、上記Aモノマーと混合Bモノマーとを、その配合割合(比率)を多段階乃至連続的に変化させながら重合を行うことによって製造するコアシェル型アクリル樹脂の重合体、グラジェント型アクリル樹脂等を用いる。これらの中で、重量平均分子量1000〜2000000、一次粒子のおよび/または一次粒子が凝集した二次粒子の粒径0.1〜100μmのコアシェル型アクリル樹脂やグラジェント型アクリル樹脂が特に好ましい。
【0016】
本発明のプラスチゾルA剤で用いる可塑剤としては、たとえばジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジデシルアジペート、ジオクチルセバケートなどのアジピン酸系、セバチン酸系、トリメリット酸系などのポリエステル系可塑剤などが使用できる。
【0017】
本発明で用いるB剤のゲル化剤としては、A剤の熱可塑性樹脂を溶解ないし膨潤させる可塑剤、高沸点溶剤、溶剤、モノマーなどを用いることができる。特にアクリル樹脂を熱可塑性樹脂に用いたプラスチゾルA剤の場合、たとえば、重合に用いた(メタ)アクリル酸エステル、たとえば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノマーを用いることができる。熱可塑性樹脂、特にアクリル樹脂のゲル化剤として用いる可塑剤としては、樹脂との相溶性に優れ、樹脂を溶解ないし膨潤させる可塑剤を用いる。
上記のA剤に用いる可塑剤と組み合わせてまたは別に、フタル酸エステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、ジオクチルセバケート等のセバチン酸ジエステル、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート等のリン酸エステル、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤、ポリオキシエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジベンゾエート及びペンタエリスリトールテトラベンゾエートなどの安息香酸エステル類、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジヘキシルフマレート、ジオクチルフマレート、ビス(2−エチルヘキシル)フマレート、ジノニルフマレート、ジイソノニルフマレート、ジデシルフマレート、ジベンジルフマレート、ジオレイルフマレート、オクチル−2−エチルヘキシルフマレート、2−エチルヘキシルイソノニルフマレート、ブチルベンジルフマレート、モノエチルフマレート、モノオクチルフマレート、モノ−2−エチルヘキシルフマレート及びモノデシルフマレートのフマル酸エステル類、フェノール系アルキルスルホン酸エステル、クレゾール系アルキルスルホン酸エステルなどスルホン酸エステル類などが使用できる。
【0018】
高沸点溶剤としては、常圧下の沸点140℃以上の有機溶剤が用いられ、通常の芳香族、脂肪族系のものも使用できるが、実用上、プロセスオイル、石油留分オイル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMAC)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(メトキシセロソルブアセテート)、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート等及びこれらの1種または2種以上の混合物が用いられる。これらの溶剤の沸点はいずれも140℃以上で、極性を有するため溶解能が優れるが、ナフテン、パラフィン等の非極性溶剤と混合して使用することもある。熱可塑性樹脂に対する溶解性がよいと、ゲル化時間が短くなる傾向にある。熱可塑性樹脂に対する溶解膨潤性をA剤の可塑剤との関係から選定する。
【0019】
また熱可塑性樹脂を溶解させる有機溶剤としてはトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、Nメチル2ピロリドンなどの有機溶剤などからなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上を使用する。可塑剤と併用することが望ましい。なお、本発明のゲル化剤は、上記に列記したものに限定されるものでなく、熱可塑性樹脂、可塑剤の様々なプラスチゾルA剤との関係からB剤のゲル化剤が適宜選定されることはいうまでもない。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂がアクリル樹脂であるとき、ゲル化剤としては(メタ)アクリル酸エステル単独またはこれと安息香酸エステルの混合物が好ましく、これらの中でも特に、2−ヒドロキシエチルアクリレートとジエチレングリコールジベンゾエートの混合物の組合せ、またはグリシジルメタクリレートとジエチレングリコールジベンゾエートの混合物の組合せが好ましい。
【0021】
本発明に係る2液硬化性組成物は、上記熱可塑性樹脂と可塑剤とを主成分とするプラスチゾルA液と、上記ゲル化剤を成分とするB液とで構成され、通常、熱可塑性樹脂100部(重量部、以下同様)に対して、ゲル化剤は、通常50〜150部の範囲、好ましくは75〜125部の範囲の量で使用される。ゲル化剤の量が50部未満では、混合後のゲル化時間が遅くなり、次工程への搬送の弊害となる。また、ゲル化剤の量が150部を越えると、混合後のゲル化時間が速くなり、塗布の作業性に支障をきたす傾向となる。
可塑剤は、熱可塑性樹脂100部に対して、通常75〜200部の範囲、好ましくは80〜150部の範囲で使用される。
【0022】
また、実際のシーラー(ボデーシーラー、シームシーラー)やアンダーコーティング材、接着剤等の適用に際し、本発明の2液硬化性組成物に通常の添加成分を配合することができる。
添加成分の例には、充填材、例えばカオリン、クレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム等)、炭酸マグネシウム、酸化チタン、焼石コウ、硫酸バリウム、亜鉛華、ケイ酸、マイカ粉、タルク、ベントナイト、シリカ、ガラス粉、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト粉、アルミナ、シラスバルーン、セラミックバルーン、ガラスバルーン、プラスチックバルーン、金属粉等が挙げられ、通常2液熱硬化性組成物中20〜60重量%を用いる。
【0023】
本発明のA剤の熱可塑性樹脂に加えて、熱硬化性樹脂とその潜在性硬化剤を併用することもできる。例えば、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂〔グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、線状脂肪族エポキサイド型、脂環族エポキサイド型等のエポキシ樹脂;さらにこれらのエポキシ樹脂変性体、たとえばゴム変性エポキシ樹脂[ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルなど)とブタジエン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体との反応生成物]、ウレタン変性エポキシ樹脂[ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量500〜5000)に過剰量のジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)を反応させて得られる末端NCO含有ウレタンプレポリマーと、OH含有エポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのジグリシジルエーテルなど)との反応生成物]、チオコール変性エポキシ樹脂等〕等のエポキシ樹脂を用いることができる。また、エポキシ樹脂と組み合わせて、その潜在性硬化剤〔ジシアンジアミド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、イミダゾール誘導体(2−n−ヘプタデシルイミダゾールなど)、ヒドラジド誘導体(アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、1,3ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、エイコサン2酸ジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’−エチリデンビスビスフェノールジグリコール酸ジヒドラジド)、N,N−ジアルキル尿素誘導体、N,N−ジアルキルチオ尿素誘導体、メラミン誘導体、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノビフェニル、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ドデカンジアミン、デカンジアミン、オクタンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等〕を用いることができる。
これらは、本発明の発明の2液硬化性組成物のA剤およびB剤の少なくとも一方に含ませることができる。通常A剤の熱可塑性樹脂100部に対し1〜20部を配合する。これにより、2液硬化性組成物が完全に硬化したときの物性と耐久性を向上させることができる。
【0024】
本発明の2液硬化性組成物に用いることができる熱硬化性樹脂として上記エポキシ樹脂とその潜在性硬化剤の他に、ポリウレタン樹脂とその潜在性硬化剤を用いることができる。たとえば、ポリイソシアネート化合物または末端イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーの活性イソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロクッドポリウレタンプレポリマーに対して、ポリオールやポリアミンの活性水素基(アミノ基)をブロック剤で不活性化したポリアミン化合物等の潜在性硬化剤を組合わせこともできる。
【0025】
その他の添加剤として発泡剤を用いる。発泡剤として特に限定されないが、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミンのようなニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシベンゼンスルホニルヒドラジドのようなヒドラジド化合物等の熱分解型有機系発泡剤が挙げられる。また熱により急速に膨張し発泡する発泡性マイクロカプセル型の発泡剤を用いることもできる。たとえば商品名MICROPEARL F−80S(松本油脂製薬社製)、商品名MICROPEARL F−82(松本油脂製薬社製)、商品名MICROPEARLF−80VS(松本油脂製薬社製)、商品名 Expancel 091(AKZO NOBEL社製)、商品名 Expancel 091−80(AKZO NOBEL社製)、商品名 Expancel 091−140(AKZO NOBEL社製)、商品名 Expancel 092−120(AKZO NOBEL社製)、商品名 Expancel 093−120(AKZONOBEL社製)等や、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル−酢酸ビニル共重合体からなる外殻と、この外殻内に封入された揮発性液体とから形成されているもの等が挙げられる。発泡温度は160℃以上220℃以下であることものを用いる。
【0026】
本発明の2液硬化性組成物には接着付与剤を配合してもよい。接着付与剤も通常使用されるものでよく、ポリアミド系、イソシアネート系等がある。ポリアミド系としては、例えばダイマー酸とポリアミン類を縮合して得られるポリアミドアミンが挙げられる。また、イソシアネート系としては、例えば、トリレンジイソシアネートのオリゴマー、ポリウレタンプレポリマーの活性イソシアネート基をブロックしたブロック化イソシアネートポリマーなどを用いる。
【0027】
さらに本発明のA剤および/またはB剤には吸湿剤(酸化カルシウム、モレキュラーシーブスなど);揺変性賦与剤(有機ベントナイト、フュームドシリカ、ステアリン酸アルミニウム、ヒマシ油誘導体など);安定剤〔2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、金属石ケン類、など〕;等を適量選定し、これらは上記A液および/またはB液に適宜振り分けて配合されてよい。
【0028】
上記A液とB液を混合した場合、その直後の粘度(20℃)は通常、塗布作業ができる50〜200Pa・sに設定され、無人ロボット化のスプレー塗布が可能となる。
また、この粘度状態で塗布した場合、概して30秒〜60分で、図1に示したゲル化物が形成され、上述の如く、水洗に対して十分な耐シャワー性を具備する。
【0029】
以下、本発明の2液硬化性組成物(A液とB液との混合物)を用いた、車体部材のシール工法、アンダーコート工法及び接着工法について詳述する。
本発明のシール工法、アンダーコート工法および接着工法はいずれも、自動車製造ライン(車体工程→塗装工程→艤装工程)において、最初の車体工程で、以下の手順に従って実施することができる。
まず、車体工程にてプレス成形した車体部材をスポット熔接により組立てた後、シール工法にあっては該熔接部の隙間に、すなわち、エンジンルーム、フロアー、ルーフ、ダッシュボード、ボンネットトランク、ドア部などの隙間部に、;またアンダーコート工法にあってはホイールハウス、ロッカー、車体裏部に、所定のA液とB液の2液硬化性組成物を混合した後、好ましくはロボットにより、所定の厚み(シール工法の場合0.5〜10mm厚;アンダーコート工法の場合0.2〜5mm厚、接着工法の場合5〜20mm厚で自動塗布する。
また、接着工法にあってはプレス成形した外板部材に所定のA液とB液の2液硬化性組成物を混合した後、好ましくはロボットにより、直径10〜30mmのドット状もしくは直径10〜20mmのビード状に自動塗布する。その後、直ちに補強部材を組み付ける。
【0030】
塗布後、そのままの状態で30秒〜60分間放置しゲル化させてから、次の塗装工程(水洗→前処理→電着塗装→電着炉→中,上塗り塗装→中,上塗り炉)並びに艤装工程(艤装,組立て→検査・完成)に付す。
ここで、上記ゲル化した塗膜は、優れた保形性を有することから、特に耐シャワー性や化成処理液、電着液に対し飛散、溶解乃至脱落せず、また電着炉での焼付条件下(一般に140〜220℃×10〜60分)の加熱処理によって完全に硬化する。
【実施例】
【0031】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1〜4および比較例1〜2
(1)2液硬化性組成物の調製
下記表1のA液,B液の項に示す部数の各成分を配合し、ミキサーで30分間撹拌混合し、次いで30分間減圧脱泡して、それぞれA液とB液を得る。
(2)貯蔵安定性(結果を表1に併記)
調製したA液とB液をそれぞれ、40℃×1週間貯蔵し、貯蔵前後の粘度をブルックフィールド型回転粘度計(20℃、#7ローター、10rpm)で測定し、粘度変化率(%)を算出して評価する。
【0032】
(3)性能試験(結果を表1に併記)
A液とB液を23℃雰囲気下、スタティックミキサーで混合し、直ちに下記性能試験に付し評価する。
i)常温ゲル化性
混合物を23℃雰囲気下で放置し、指触によりゲル化するまでの時間(分)を測定する。
ii)剪断接着試験(MPa)
25×100×1mmのSPCC鋼板を用い、ラップ長さ25mm、クリアランス1mmで剪断接着試験片を作製後、170℃×20分にて焼付けを行い、次いで20℃に冷却してから剪断接着強度を測定する。
【0033】
iii)硬化物物性〔破断強度(Mpa)および伸び(%)〕
JIS2号ダンベル、厚さ2mmの試験片を作成後、170℃×20分にて焼付けを行い、次いで20℃に冷却してから測定する。
iv)耐シャワー性
混合物をSPCC鋼板に1mm厚で塗布し、23℃×30分放置後、得られる試験片を垂直に立て、塗布面に対し直角(90°)に距離1mのノズル(カトリ製作所製、K9SPT1/4×5.0)から、50℃温水を3kg/cmの圧力で1分間吹付けたときの外観変化を評価する(○:塗布物の変形なし、×:塗布物が飛散)。
【0034】
v)耐チッピング性
混合物をSPCC鋼板に0.5mm厚で塗布し、170℃×20分にて焼付けを行い、次いで20℃に冷却して試験片を得る。試験片を45°の角度に設置し、2mの高さから35mmφの塩化ビニル管を介してM4ナットを落下させ、落下したナットにより塗膜が破れるまでのナットの総重量(kg)を計量することで評価する。
【0035】
【表1】

注1)三菱レイヨン(株)製のグラジェント型アクリル樹脂、「LP−3106」
注2)ジャパンエポキシレジン(株)製のビスフェノールF型エポキシ樹脂、「エピコート807」
【0036】
表1の結果から、本発明の関わる実施例1〜4の組成物は、いずれも室温でのゲル化性に優れ、すなわち、6分から20分の間でゲル化しており、またA液とB液を混合し、23℃で30分保持した後に実施したシャワー試験においても、いずれも塗布物の変形はなかった。
これに対し、比較例1の組成物ではB液にゲル化剤が含まれていないため、室温ゲル化性が得られず、その結果、耐シャワー試験では飛散が認められた。また、比較例2の組成物では、ゲル化剤をA液に配合したため、A液を作製中にゲル化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と可塑剤からなるプラスチゾルA液と、ゲル化剤からなるB液とから成り、A液とB液を混合することにより、該混合物が室温でゲル化することを特徴とする2液硬化性組成物。
【請求項2】
B液が、A液の熱可塑性樹脂を溶解ないし膨潤させる成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の2液硬化性組成物。
【請求項3】
B液が、可塑剤、高沸点溶剤、有機溶剤及び熱可塑性樹脂のモノマーからなる群から選択されるゲル化剤からなる請求項1または2に記載の2液硬化性組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がアクリル樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項5】
ゲル化剤が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび安息香酸エステル可塑剤からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項6】
ゲル化剤が、(メタ)アクリル酸エステルモノマー単独、または(メタ)アクリル酸エステルモノマーと安息香酸エステル可塑剤の混合物である請求項1〜5のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項7】
さらに熱硬化性樹脂とその潜在性硬化剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項8】
熱硬化性組成物がエポキシ樹脂である請求項7に記載の2液硬化性組成物。
【請求項9】
自動車製造ラインで用いる自動車材料用2液硬化性組成物である請求項1〜8のいずれかに記載の2液硬化性組成物
【請求項10】
A液とB液の混合後の室温におけるゲル化時間が、30秒〜60分であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項11】
A液とB液の混合時はスプレー塗布可能な粘度を有し、かつ塗布後、室温において30秒〜60分でゲル化する請求項1〜10のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項12】
熱可塑性樹脂100重量部に対し、ゲル化剤50〜150重量部を含む請求項1〜11のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項13】
A液とB液の混合時の粘度(20℃)が50〜200Pa・sである請求項1〜12のいずれかに記載の2液硬化性組成物。
【請求項14】
自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した車体部材をスポット溶接により組み立てた後、該組み立て車体部材の接合部にシーラーとして、請求項1〜13のいずれかに記載の2液硬化性組成物を塗布し、次いでゲル化状態で次の塗装工程並びに艤装工程に付する、車体部材のシール工法。
【請求項15】
自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した車体部材をスポット溶接により組み立てた後、該組み立て車体部材のアンダーコーティング材として、請求項1〜13のいずれかに記載の2液硬化性組成物を塗布し、次いでゲル化状態で次の塗装工程並びに艤装工程に付する、車体部材のアンダーコート工法。
【請求項16】
自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した車体部材の接合の接着剤として、請求項1〜13のいずれかに記載の2液硬化性組成物を塗布し、次いでゲル化状態とすることから成り、これに続く部材の処理工程においても接着剤の変形を防止することができる、部材の接着工法。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/017045
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513173(P2005−513173)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011593
【国際出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】