説明

2液速硬化型樹脂組成物

【課題】塗装後の物性発現を速める方法並びに、可使時間を長く保ち、且つ塗装後の物性発現を速める2液配合型アクリルウレタン樹脂組成物の提供を図る。
【解決手段】必須の特定混合物を90質量%以上含む単量体から重合されるアクリルポリオール(1)を5質量%以上含有するポリオール成分(2)を主剤とし、ポリイソシアネート(3)を硬化剤として配合してなり、上記の必須の特定混合物が、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)と、4−ヒロドキシブチルアクリレート(b)との混合物であり、当該必須の特定混合物中において、上記重合性単量体(a)が55から70質量%、4−ヒロドキシブチルアクリレート(b)が30から45質量%配合されたものであることを特徴とする速硬化型樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液配合型アクリルウレタン樹脂であり、特に、自動車補修用のトップコートやベースコートに適応した場合、塗装後短時間で、ペーパー研ぎやコンパウンド仕上げが可能であり、塗装作業時間を短縮化できる技術と、2液配合後の可使時間を遅延することのできる技術を有す2液架橋型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−53800号公報
【0003】
自動車補修塗装分野において、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の2液配合硬化型塗料を用いた塗料は、補修仕上げの生産性を向上させるために、塗装作業後に、より短時間の内に塗膜物性が発現することが望まれている。即ち、塗装後に、より短時間の内に研磨、ポリッシングを済ませ、早く補修作業を完結させることが望まれている。
【0004】
前記2成分系の塗料の場合、反応触媒により硬化速度を加速させ、物性発現の速度を速めることが可能であるが、その触媒効果にも限界がある。つまり、一般に使用されているスズ系やアミン系のウレタン化触媒を過剰に添加した場合は、硬化速度を速めるだけでなく、2液配合後の塗料が、短時間の内で激しく粘度上昇し、所謂、可使時間の短い、使い勝手の悪い塗料となる場合がある。また、特開2002−53800号公報(特許文献1)に開示されているように、アミン系触媒を用いた場合は、ウレタン化触媒とすれば効果は高いものの、塗膜が黄色く変色する等の問題が発生する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アクリルポリオール系樹脂とポリイソシアネート系の2液配合硬化型塗料において、実質上、十分なる可使時間を有し、且つ、塗装された塗膜の物性発現が瞬時に進み、短時間で塗装を仕上げることができる実用性と、優れた塗膜性能とを兼ね備えた塗料を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の組成にて合成されたアクリルポリオールを含んだポリオールは、ポリイソシアネートと瞬時に反応し、短時間の養生時間にも拘わらず、塗膜を研磨することができる塗膜硬度を与え、さらに、ポリッシング仕上げが可能となる耐熱性をも発現することを見出した。即ち、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上の重合性単量体が55から70質量%と、4−ヒロドキシブチルアクリレートを30から45質量%との必須の特定混合物90質量%以上から重合されるアクリルポリオールは、イソシアネートとの反応性に富み、且つ僅かな架橋反応においても優れた耐熱性を発現するものであり、該アクリルポリオールを5質量%以上含むポリオール成分に硬化剤であるポリイソシアネートを配合すると、実質上、十分なる可使時間を有し、且つ塗装された塗膜の物性発現が瞬時に進み、短時間で塗装を仕上げることができる実用性と、優れた塗膜性能とを兼ね備えた塗料となることを確認し本発明を完成させた。
【0007】
より詳細に説明すれば、上記のアクリルポリオール(1)は、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)55から70質量%と、4−ヒロドキシブチルアクリレート(b)30から45質量%との混合物90質量%以上から重合されるものである。前記、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)とは、単量体の単一重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す単量体であって、且つ、重合に寄与する基を除き、炭素数4以上のアルキル基を有すものである。尚、ここで示すアルキル基とは、直鎖状、枝分かれ状のものや、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基を含むものである。具体的には、ブチル基以上の炭素数を有し、且つ単量体の単一重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルや、スチレンおよびその誘導体を意味しており、具体的には、n−ブチルメタクリレート(Tg=20℃)、iso−ブチルメタクリレート(Tg=67℃)、tert−ブチルメタクリレート(Tg=132℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg=83℃)、イソボルニルメタアクリレート(Tg=180℃)、スチレン(Tg=100℃)等が挙げられ、特に、tert−ブチルメタクリレートとイソボルニルメタクリレートがよい。尚、ここで示すガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計にて発熱量を測定して求められるDSC法により決定することができる。
【0008】
アクリルポリオール(1)を構成する単量体としては、4−ヒドロキシブチルアクリレート(b)を除いて、重合物のガラス転移点が20℃未満の単量体の使用は、耐熱性発現を不充分なものにするし、炭素数3以下の単量体の使用は、得られる樹脂液の粘度が高くなったり、或いは白濁したりするなどの問題を発生させることがあるので、これらの単量体の使用は、アクリルポリオール(1)中の10質量%未満とすることが望ましく、また、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)が55質量%未満の場合も、得られる樹脂の粘度が高くなるなどの問題を発生させることがあるので望ましくない。一方、70質量%を越える場合、必然的に4−ヒドロキシブチルアクリレート(b)の含有量が低下することにより、本願目的の速硬化性の効果が低下するために望ましくない。
【0009】
また、アクリルポリオール(1)を得るためには、イソシアネートとの反応性に富んだ4−ヒドロキシブチルアクリレート(b)が必須であり、その結果、耐熱性の低い低分子量のポリイソシアネート硬化剤を瞬時に高分子量化させ、塗装後の僅かな時間で耐熱性に優れる塗膜を形成することができる。4−ヒドロキシブチルアクリレート(b)は30から45質量%が適当であり、30質量%未満の場合、架橋密度が低く、十分な塗膜性能が発現しないことがあり、また、45質量%を超える場合、水酸基数が高くなりすぎて、樹脂の溶剤に対する溶解力が下がり、粘度が高くなったり、或いは白濁したりするなどの問題が発生する場合があるので望ましくない。
【0010】
次に、アクリルポリオール(1)の合成方法を説明する。前記したアクリルポリオール(1)を得るための条件を満たす単量体をそれぞれ混合し、ラジカル開始剤の存在下にて、溶剤中にて重合させればよい。使用するラジカル開始剤は、有機過酸化物が望ましく、具体的には、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられ、単量体混合物全体の重量に対して、1〜5質量%程度の開始剤を重合時に存在させればよい。
【0011】
また、合成に使用する溶剤は、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、炭化水素系溶剤等が使用できるが、重合中および重合後のアクリルポリオール(1)を溶解させるに十分な溶解力を有している溶剤組成を選定することがよく、さらには、昨今の環境対策の観点からすると、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤は避けた方が望ましい。また、重合温度については、使用する開始剤の分解温度を考慮し、また、目的の塗料の粘度を考慮して決めればよい。
【0012】
かくして得られたアクリルポリオール(1)は、4−ヒドロキシブチル基がアクリル主鎖からグラフトされた構造を有しており、このアクリルポリオール(1)はポリイソシアネートとの反応性が極めて高い特徴を有している。つまり、2−ヒドロキシエチルメタクリレートや、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の炭素数2あるいは3、つまり、エチレン鎖やプロピレン鎖に結合した水酸基と比べ、ブチレン鎖の末端に結合した水酸基は、全て1級の水酸基であることに加え、立体障害が少なく、自由度が高い水酸基であるが故に、ポリイソシアネート(3)のイソシアネート基との反応性が高い。また、水酸基量が極めて多い樹脂であることから、塗装後の短時間の内に、イソシアネートとの反応率を高める性質を有しており、それ故に、本願目的の研磨性、ポリッシング性を瞬時に発現させることが可能となるものである。さらに、本発明の技術的内容を説明すれば、水酸基量が極めて多いアクリル樹脂は、一般には高粘度となったり、溶剤にもはや溶解していられない状態になったりするが、本発明のアクリルポリオール(1)は、炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体が多量に共重合されているために、溶剤への溶解性が高いことから、著しく高粘度になることはない。
【0013】
次に、アクリルポリオール(1)と組み合わせることのできるその他ポリオールについて説明をする。
【0014】
その他のポリオール成分としては、アクリル系であれば、アクリルポリオール(1)よりも反応性の低い樹脂でよく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのイソシアネートと反応することのできる水酸基を有した単量体と、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン等にて共重合されたアクリル系のポリオールが挙げられる。
【0015】
その他のポリオールとしては、ポリエステルポリオールの使用も可能である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールと、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸を脱水縮合させて得られるポリエステル系のポリオールが挙げられる。
【0016】
アクリルポリオール(1)は、前記したその他のポリオールと混合して主剤であるポリオール成分(2)とする。アクリルポリオール(1)を含有する割合は、主剤であるポリオール(2)中に少なくともアクリルポリオール(1)が5質量%以上となるようにすることが望ましく、5質量%未満の場合は、本願目的の速硬化性の発現が顕著ではない。また、長い可使時間が必要とされない用途においては、アクリルポリオール(1)を95質量%以上とすることで、著しい速硬化性を発現し、本願目的を満足させることができる。また、長い可使時間と速硬化性の両者が要求される用途においては、アクリルポリオール(1)を5から50質量%含有させることで、可使時間と速硬化性の両者を満足することができる。
【0017】
次に、硬化剤であるポリイソシアネート(3)について説明する。使用するイソシアネート類については、一分子に2個以上のイソシアネート基を有すものであれば特に限定はなく、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート系の何れも使用できる。しかし、耐候性の点からは、脂肪族系イソシアネートが望ましく、より具体的に例示すれば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添MDI、等の、トリメチロールプロパンアダクトや、ビューレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体(三量体)が挙げられるが、中でも耐熱性の発現を顕著にするのは、イソシアヌレート体(三量体)であり、本願目的の塗装直後の早い時間からポリッシング適性を発現させるためにはイソシアヌレート(三量体)が好適である。
【0018】
さらに、イソシアネートの種類とすれば、水酸基との反応性の高いヘキサメチレンジイソシアネートと、水酸基との反応性の低いイソホロンジイソシアネートとを混合して用いるのがよく、こうした配合により、2液配合後の可使時間を遅延することができるだけでなく、塗装後に、短時間のうちに、研磨、ポリッシング作業が行える物性を発現し、且つ、研磨、ポリッシング作業可能時間幅が長く維持できる優位性を示す。具体的な配合比率を説明すれば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体:イソホロンジイソシアネートの三量体がそれぞれ、95:5〜60:40質量部にて配合されたものがよい。ヘキサメチレンジイソシアネートが95質量%を超えると、配合後の可使時間の遅延効果が殆ど得られなく、また、60質量%未満になると、反応率が低く、ポリッシング適性が悪くなる傾向にある。
【0019】
また、ポリイソシアネート(3)中のヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を特定のモノアルコールで変性することにより、さらに、本願目的の耐熱性発現を促進させ、且つ、可使時間を長くすることができる。具体的には、ポリイソシアネート(3)を構成するヘキサメチレンジイソシアネートの三量体100質量部に対して、炭素数6以上12以下のモノアルコールの0.5質量部から10質量部でウレタン結合にて変性したものがよい。
【0020】
前記炭素数6以上12以下のモノアルコールとすれば、具体的に、ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ボルネオール、イソボルネオール等が挙げられ、特に、シクロヘキサノール、ボルネオール、イソボルネオールによる変性ポリイソシアネートは、スプレー塗装時のミストの馴染み性を良化させ、且つ、耐熱性の発現速度がさらに速くなると共に、可使時間を長くすることができる。
【0021】
ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体への前記モノアルコールの変性方法は、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体100質量部に対し、0.5から10質量部のモノアルコールを添加し、40℃から60℃程度にてアルコールが消費されるまで加熱撹拌すればよい。尚、モノアルコールが固体の場合は、予め溶剤にて溶解した溶液を加えるのがよい。
【0022】
次に主剤となるポリオール成分(2)と、硬化剤となるポリイソシアネート(3)の配合比について説明する。主剤ポリオール成分(2)と硬化剤ポリイソシアネート(3)の配合は、ポリオール成分(2)の水酸基数100に対して、イソシアネート基数が、80から140程度になるように、さらに望ましくは、水酸基数100に対して、イソシアネート基数が90から120程度の範囲になるように配合すればよい。イソシアネート基数が80以下だと、架橋密度が低く耐熱性に優れた塗膜を与えないことがあり、また、140を超えると、硬化不良になったり、硬化過程において塗膜から炭酸ガスが発生したりするなどの不具合を与えることがある。
【0023】
また、主剤となるポリオール(2)或いは、硬化剤となるポリイソシアネート(3)には、硬化速度を調整するために、必要に応じてウレタン化反応触媒を適量添加することもできる。ウレタン化触媒は、公知のスズ系、アミン系等の触媒が使用できるが、アミン系は、変色したり、耐候性を悪くさせたりすることがあるので、スズ系の触媒が好ましい。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられ、可使時間と、硬化速度のバランスを考慮して適量加えればよい。
【0024】
また、本発明の速硬化型樹脂組成物は、クリアー塗料としての使用も可能であるし、着色顔料やフィラー等を加えた塗料としても使用が可能であって、レベリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン、消泡剤等の各種添加剤を加えることもできるし、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー等の着色顔料や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料も含有させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本願請求項1乃至4の発明により得られた2液配合型アクリルウレタン樹脂は、塗装後短時間で、ペーパー研ぎやコンパウンド仕上げが可能となる新規な速硬化型樹脂を提供することができるものである。また、請求項5乃至7の発明では、請求項1乃至4の発明で得られた主剤のさらなる速硬化性の向上と、可使時間のさらなる遅延が認められたことが明らかである。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下の表を含む説明において、配合量の単位は原則として質量部である。
【0027】
アクリルポリオール(1)の合成
窒素雰囲気下、2Lのフラスコにキシレンを250g仕込み還流させた。攪拌しながら表1および表2の組成(500g)と重合開始剤(20g)を6時間かけて滴下した。さらに、還流温度にて4時間反応を続け、室温に冷却後酢酸ブチルを230g加え反応を完了させ、実施例として(1)−1から(1)−8と、比較例として(1)−9から(1)−12の固形分50質量%の樹脂溶液を得た。尚、重合開始剤は、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを75%含有する脂肪族炭化水素系溶剤溶液である。また、表1および表2には、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)と4−ヒロドキシブチルアクリレート(b)の総和中に含まれる、前記(a)の含有量を「(a)の含有量(%)」として、また、4−ヒドロキシブチルアクリレート(b)の含有量を、「(b)の含有量(%)」として、それぞれの計算値を記載した。さらに、(1)中に含まれる、(a)と(b)の含有量を「必須成分量(%)」として、計算値を記載した。
【0028】
尚、以下に記載した略号や原料は次の通りである。
t−BMA:tert−ブチルメタクリレート
i−BMA:iso−ブチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
2−EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
IBX:イソボルニルメタクリレート
STY:スチレン
MAA:メタクリル酸
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレートと3−ヒドロキシプロピルメタクリ
レートの混合物
4−HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
主剤となるポリオール(2)を構成するその他のポリオール(4)の合成
窒素雰囲気下、2Lのフラスコにキシレンを250g仕込み還流させた。攪拌しながら表3の組成(500g)と重合開始剤(25g)を6時間かけて滴下した。さらに、還流温度にて4時間反応を続け、室温に冷却後酢酸ブチルを225g加え反応を完了させ、主剤となるポリオール(2)を構成するその他のポリオールとして(4)−1および(4)−2として、固形分50質量%の樹脂溶液を得た。尚、重合開始剤は、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを75%含有する脂肪族炭化水素系溶剤溶液である。
【0032】
【表3】

【0033】
主剤となるポリオール(2)の調整
先に得られたアクリルポリオール(1)−1から(1)−8および(1)−9から(1)−12と、その他のポリオール(4)−1および(4)−2を、表4および表5の配合にて調整し、主剤ポリオール(2)−1から(2)−9および(2)−10から(2)−15を得た。また、比較例として、表6の組成にて、比較例である(2)−16から(2)−19と、参考例として、その他のポリオール(4)−1と(4)−2を主剤とした塗料も作製し、(2)−20と(2)−21とした。
【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
硬化剤(3)の調整
窒素雰囲気下、HDIの三量体(旭化成ケミカルズ社製 デュラネートTPA−100)の100gを500mlのフラスコに仕込み、酢酸ブチル(100g)を加え、攪拌して均一にした。別途、2−エチルヘキサノール等のモノアルコール(3g)を酢酸ブチル(3g)に溶解したものを準備し、それをフラスコに加え、60℃×6時間にて反応を行い、それぞれ固形分50質量%のポリイソシアネート樹脂液を得た。得られたポリイソシアネートをそれぞれ(3)−1から(3)−5とした。また、イソボルニルアルコールの量を上記とは変え、得られたポリイソシアネートを(3)−6及び(3)−7とした。尚、表7には、使用したHDIの三量体およびアルコールの使用量のみを記載した。
【0038】
【表7】

【0039】
さらに硬化剤として、HDI三量体とIPDI三量体(デグサ社製 Vestanat T−1890/100)を配合した硬化剤を調整した。調整方法は、それぞれ、酢酸ブチルの50質量%溶液を作製し、表8に示す組成にて配合し、それを固形分50%の(3)−8から(3)−10を得た。また、表7で得られた硬化剤(3)−3および(3)−4をIPDI三量体と配合し、それぞれ、(3)−11および(3)−12を得た。
【0040】
【表8】

【0041】
また、硬化剤の比較例として、表9および表10に示す組成にて、硬化剤を準備し、それぞれ、(3)−13から(3)−18を得た。
【0042】
【表9】

【0043】
【表10】

【0044】
速硬化性の評価
得られた主剤(2)−1から(2)−21にジブチル錫ジラウレート(0.05%)を加え、これに、硬化剤であるHDI三量体(3)−1を配合した。尚、配合比は、主剤中の水酸基量と、硬化剤のイソシアネート基量が当量となるように配合した。但し、比較例として合成した(1)−10および(1)−11から得られたポリオール(2)−17および(2)−18は、硬化剤と混合した際に、相溶性が悪く、均一な塗料にならなかった為、評価は行わなかった。その他の配合済み塗料1から塗料21は、評価1として、ロックペイント社製プロタッチのホワイトをスプレー塗装した上に、それぞれの配合済み塗料を膜厚が50〜55μmとなるように塗装し、60℃×10分乾燥させた。その塗膜を室温に戻し、スリーエム社製水とぎペーパーシート(ソフトタイプ)#1200で表面を研磨し、さらに、研磨部をスリーエム社製ウールバフ「カット1」と同社製スポンジバフ「ハード2L」のコンパウンドで磨いて評価した。評価2としては、60℃×20分の乾燥時間とし、同様にペーパー研磨性、コンパウンド磨き性について評価した。尚、評価基準は5段階評価で、ペーパー研磨時に塗膜が膿んでおり磨けないものを「1」、研磨は出来たがコンパウンド仕上げ時に塗膜がよれてしまったものを「2」、コンパウンド仕上げは出来たが、翌日観察するとペーパー傷が戻ったものを「3」、ペーパー傷も戻らず美しく仕上がったものを「5」とした。また、配合済み塗料は、それぞれ可使時間を測定した。これは配合から著しく高粘度化する時点までの時間を記録した。結果を表11に示す。
【0045】
【表11】

【0046】
次に、硬化剤の性能について調べるため、主剤を(2)−1に統一し、硬化剤を(3)−2から(3)−18を配合した。尚、配合比は、主剤中の水酸基量と、硬化剤のイソシアネート基量が当量となるように配合した。得られた配合済み塗料22から塗料38を、前述した評価1および評価2により評価し、また同様に可使時間を測定した。結果を表12に示す。
【0047】
【表12】

【0048】
以上のように、上記の各実施例に係る2液配合型アクリルウレタン樹脂によって、塗装後の僅かな時間でも、ペーパー研ぎ、コンパウンド仕上げが可能となる塗料を得ることが確認されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須の特定混合物を90質量%以上含む単量体から重合されるアクリルポリオール(1)を5質量%以上含有するポリオール成分(2)を主剤とし、ポリイソシアネート(3)を硬化剤として配合してなり、
上記の必須の特定混合物が、重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)と、4−ヒロドキシブチルアクリレート(b)との混合物であり、
当該必須の特定混合物中において、上記重合性単量体(a)が55から70質量%、4−ヒロドキシブチルアクリレート(b)が30から45質量%配合されたものであることを特徴とする速硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合物のガラス転移点(Tg)が20℃以上を示す炭素数4以上のアルキル基を有す重合性単量体(a)が、tert−ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1記載の速硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリルポリオール(1)を95質量%以上含有するポリオール成分(2)を主剤とすることを特徴とする請求項1記載の速硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリルポリオール(1)を5から50質量%含有するポリオール成分(2)を主剤とすることを特徴とする請求項1記載の速硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート(3)が、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体および/またはイソホロンジイソシアネートの三量体を含むことを特徴とする請求項1記載の速硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
ポリイソシアネート(3)が、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体で構成され、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体との比率が、質量部で95:5〜60:40であることを特徴とする請求項1記載の速硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
ポリイソシアネート(3)を構成するヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が、ウレタン結合にて変性されたものであって、
上記の変性は、変性前におけるヘキサメチレンジイソシアネートの三量体100質量部に対して、炭素数6以上12以下のモノアルコール0.5から10質量部を添加してなされたことを特徴とする請求項5または6に記載の速硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−6926(P2010−6926A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166905(P2008−166905)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(391056066)ロックペイント株式会社 (8)
【Fターム(参考)】