2点係止型の墜落防止ロープとチョーク台付ベルトを備えた樹木昇降補助具とそれを用いた樹木昇降方法
【課題】 フック掛け替え時の無胴綱状態を回避し、かつ万が一の落下時における衝撃荷重を低減する、軽量な樹木昇降補助具とそれを用いた樹木昇降方法を提供する。
【解決手段】 ベルトの一端にアイ部を設け他端及び他端近辺に重連的に複数の環部を設けたチョーク台付ベルト2Aで樹木に巻き付けて台付部を構成し、柱上安全帯3に連結された墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、チョーク台付ベルト2Aのアイ部と接続する。次に、チョーク台付ベルト2Bを高い位置に配置し、他方のフック13bをチョーク台付ベルト2Bのアイ部と接続する。この工程を繰り返しながら樹木を昇降することにより、常に墜落防止ロープ1の少なくとも1ケのフックがチョーク台付ベルトに接続されている状態となり、墜落が防止できる。また、チョーク台付ベルトを常に作業者の腰より高い位置とすることにより、万が一の落下時における衝撃荷重が低減できる。
【解決手段】 ベルトの一端にアイ部を設け他端及び他端近辺に重連的に複数の環部を設けたチョーク台付ベルト2Aで樹木に巻き付けて台付部を構成し、柱上安全帯3に連結された墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、チョーク台付ベルト2Aのアイ部と接続する。次に、チョーク台付ベルト2Bを高い位置に配置し、他方のフック13bをチョーク台付ベルト2Bのアイ部と接続する。この工程を繰り返しながら樹木を昇降することにより、常に墜落防止ロープ1の少なくとも1ケのフックがチョーク台付ベルトに接続されている状態となり、墜落が防止できる。また、チョーク台付ベルトを常に作業者の腰より高い位置とすることにより、万が一の落下時における衝撃荷重が低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として樹木の昇降作業において使用する樹木昇降補助具と、この樹木昇降補助具を用いた樹上の昇降方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に接触する樹木の枝を伐採する(線下伐採という)ため、また植林した樹木の枝打ちのために作業者は木に昇降する必要がある。このときの樹木昇降方法として、梯子(一本梯子と呼ばれる梯子主材が1本でステップ付きのものが多い)を樹木に沿うように立て掛けてそのステップを昇降する方法、樹木に固定するためのロープ又はベルトを備え、作業者の片足裏程度の大きさを有したステップ(単体足場)を50cm程度間隔に配置しながら昇降する方法、爪の付いた金具を両足に装着して、その爪を樹に食い込ませながら昇降する方法、等がある。
【0003】
この樹木への昇降作業や樹上での伐採作業は高所作業となり、作業者には墜落して死傷する危険性がある。そのため作業者はランヤードと呼ばれるフック付きのロープを備えた柱上安全帯を装着し、両側腰部に位置する環の一方に連結したロープで樹木の幹を抱き込み、ロープ先端のフックを他方の環に係止して、樹木との間にU字状の体勢保持(U字つりという)を行い、この安全帯によって樹木の幹と連結されて、万が一足を踏み外した場合の墜落を防止している。しかしながら、枝等があってランヤードのフックを掛け替えるときは、作業者と樹木の幹との連結が解かれる。このとき、墜落事故が発生する可能性が非常に高くなる。
【0004】
建設現場等の高所作業においては、1本つり専用の安全帯が使用されているが、フックの掛け替え時における墜落を防止するため、ランヤード2本を取り付けて、どちらかのフックを堅固な構造物と連結させ、無胴綱状態(フックが係止されず、人体と構造物が連結されていない状態)を回避する手法がとられ、更に、万が一の墜落時において落下距離を短くして衝撃荷重を低減するために、ランヤードのフックの係止点は人体の腰より高い位置とされている。ところが、樹木の昇降では堅固な構造物は幹(枝では十分な強度が得られないことが多い)であり、ランヤードのフックを掛けることが困難である。
【0005】
また、柱上安全帯のランヤードはロープを掴持する伸縮調節器により人体に巻き付けたベルトに連結されており、この伸縮調節器によりロープの長さ、つまり樹木との距離が調節でき、樹木との間にU字状の体勢保持を行って両手を自由として作業ができる。ところが、作業者が樹木をスムーズに昇降するためには、ある程度幹から腰を引いて、距離を保つ必要がある。このように樹木との距離が離れた状態で足を踏み外した場合、そのままの状態で下方向へ滑落することがあった。従って、主ランヤードとは別の副ランヤードを用いて墜落を防止することが望まれている。
【0006】
特に、配電線路の障害となる樹木の枝を伐採する作業では、樹木が導電経路となるため、作業者が絶縁性(ゴム製)の保護具を着用する必要がある。このため、樹木の昇降作業において使用する昇降具や昇降補助具(墜落防止具)としては、装備は極力軽くすることが望まれている。
また、育林のために植林した樹木の枝打ちをする作業は、林道から離れた山奥で行うことが多い。チェーンソーや鋸と共に携帯する昇降具や昇降補助具に関して、軽量なものでなければ、林業作業者は携帯しづらいのが現状である。
【0007】
従来の樹木昇降補助具としては、特開2006−239183号のものがある。
これは、足場を作りながら樹木に昇る昇降具であり、この昇降具を手持ちの安全帯と連結することにより、墜落を阻止しようとするものである。
【0008】
しかしながら前記従来品は、墜落時に荷重を支持するために樹木に取り付けられる支持ベルトが作業者の足元近くになることがあり、落下距離が長くなり衝撃荷重が大きくなる場合がある。最悪の場合、樹木の低い位置で墜落事故が発生したとき、落下距離が長いために地面に激突するおそれがある。この前記従来品は、主ベルトと巻付ベルトが連結されているためバックルを使用して樹木の径の違いに対応しているが、墜落時にはその衝撃荷重によりベルトが伸び、また大きな荷重が加わることによりバックルが滑り、更に落下距離は長くなる。
また、前記従来品は、樹木が大きく曲がっていたり、巻付ベルトを巻き付ける位置に枝がある場合には使用できないことがある。更に、身軽で昇降したいのに、腰元に大量に携帯して昇降することは、労力を要するばかりではなく、枝等の障害物に引っ掛かる危険性が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−239183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする主な問題点は、柱上安全帯のみでは、枝等があって柱上安全帯のフックを掛け替えるときに、フックが樹木の幹と連結されていない無胴綱状態が生じる点である。また、前記課題を解決すべく発明された特許文献1の技術は、足場を作りながら樹木に昇る、という技術的思想の発明であり、荷重支持点が足元近くになって落下距離が長くなり、衝撃荷重が大きくなる点、及び曲がった樹木や枝の位置により取付けできないことがある点、軽装備での昇降ができない点が課題である。
【0011】
そこで本発明は、線下伐採や枝打ちの作業者が一般的に使用している樹木昇降具と併用して使用でき、安全帯のフックを掛け替えるときも無胴綱状態が回避でき、安全帯のフックを掛ける荷重支持点を腰より高い位置とすることにより万が一の落下時に於ける衝撃荷重が低減できる、樹木昇降補助具とそれを用いた樹木昇降方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、一端のベルトを折り返して縫着したアイ部(ロープやベルトを加工した輪状の部分)と、ベルトの他端及び他端近辺に重連的に複数の環部とを設けたチョーク台付ベルトで樹木を抱き込み、その一端のアイ部を他端又は他端近辺の環部の輪の中に挿入して、台付部(荷や物を固定する部分)を構成する。一方、安全帯の墜落防止ロープの先端に、チョーク台付ベルトのアイ部に係止可能なフックを2ケ設け、墜落防止ロープと樹木に廻し掛けしたチョーク台付ベルトとにより、作業者と樹木を接続可能とする。順次盛り替えて取り付ける複数のチョーク台付ベルトと墜落防止ロープを使用して、作業者は常に少なくとも1ケのフックがチョーク台付ベルトに接続されている状態で昇降を行う。
【0013】
前記チョーク台付ベルト他端及び他端近辺の環部は、それぞれがほぼ同径の輪状に形成されており、そのベルト本体にほぼ等間隔で、重連的に設けられている。作業者は、それらの環部の中で最も適切な環部を選択して使用することにより、異なった径の樹木にチョーク台付ベルトを巻き付けて、安全な長さで使用することができる。
【0014】
前記墜落防止ロープの一端と2ケのフックを並列的に連結するために、三つ目環(取付プレート)が用いられている。この連結方法により、厚手の手袋を履いていても、そのフック同士が離隔された状態で連結されているので、重なり合うことなく、フックの選択及び把持が容易となり、作業性が向上する。
【0015】
作業者は、先ず、1本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止し墜落を防止する。次に、昇降具を使用して1本目のチョーク台付ベルトが自分の腰より高い位置まで昇る。続いて、別の2本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープの他方のフックbを2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止して墜落を防止する。続いて、フックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部から取り外し、1本目のチョーク台付ベルトを樹木より取り外す。そして、2本目のチョーク台付ベルトが自分の腰の位置に来るまで作業者が昇る。この工程又は逆手順を繰り返して昇降する。
これらの工程において、作業者は絶えず本発明の昇降補助具により、樹木の幹と接続されている。また、チョーク台付ベルトの巻き付け箇所である荷重支持点は、絶えず作業者の腰より高い位置である。
【0016】
前段落では、1本目、2本目のチョーク台付ベルトを盛り替えながら昇降したが、1本目、2本目、3本目、4本目とチョーク台付ベルトを複数本用意し、チョーク台付ベルトを樹木に配置しながら昇降する方法もある。
作業者は、先ず、1本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止し墜落を防止する。次に、昇降具を使用して1本目のチョーク台付ベルトが自分の腰より高い位置まで昇る。続いて、別の2本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープの他方のフックbを2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止して墜落を防止する。続いて、フックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部から取り外す。続いて、2本目のチョーク台付ベルトが自分の腰の位置に来るまで作業者が昇る。そして、3本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、1本目のチョーク台付ベルトより取り外した墜落防止ロープ先端の一方のフックaを3本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止し墜落を防止する。以下同様にして所定の位置まで昇り、降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して降りる。
これらの工程において、作業者は絶えず本発明の昇降補助具により、樹木の幹と接続されている。また、チョーク台付ベルトの巻き付け箇所である荷重支持点は、絶えず作業者の腰より高い位置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る樹木昇降補助具を用いることで、安全帯のフックを掛け替えるときの無胴綱状態が回避できる。安全帯のフックを掛ける荷重支持点が腰より高い位置であり、万が一の落下時に於ける衝撃荷重を低減させる効果がある。また、本発明の樹木昇降補助具は樹木の曲りや枝の位置に影響を受けることなく墜落が防止できる。更に、軽量で運搬性が良く、嵩張らないので本発明の樹木昇降補助具が枝等の障害物に引っ掛かって作業者が体勢を崩す危険性が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る樹木昇降補助具の、使用状態が示された説明図である。
【図2】本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1が示された正面図及び柱上安全帯3のD環33への取付図である。
【図3】本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の三つ目環(取付プレート)12が示された正面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2が示された正面図及び側面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2の変形例が示された側面図である。
【図6】樹木を昇降する作業者が使用する柱上安全帯3が示された正面図である。
【図7】本発明の実施例1の樹木昇降方法1−1の工程が示された説明図である。
【図8】本発明の実施例1の樹木昇降方法1−2の工程が示された説明図である。
【図9】本発明の実施例2に係る墜落防止ロープ5が示された正面図及び側面図である。
【図10】本発明の実施例2に係るチョーク台付ベルト6が示された正面図及び側面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る墜落防止ロープ7が示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<樹木に昇降するときに、本発明の樹木昇降補助具と併用される昇降具及び安全帯>
以下、図面を参照しつつ本発明に係る実施の形態について説明する。図1は、樹木昇降補助具の使用状態が示された説明図である。先ず、作業者は主ランヤード31を備えた柱上安全帯3を装着し、その主ランヤード31で樹木の幹を抱き込んだ後、主ランヤード31のフックを安全帯のD環33に係止する。次に、作業者の片足裏程度の大きさを有し、樹木に固定するためのロープ又はベルトを備えたステップ4(単体足場)を、自分の昇降可能な間隔(50cm程度)で、第1ステップ4A、第2ステップ4B、第3ステップ4Cと、順次配置しながら木に昇る。作業位置に到着後は、樹木との間にU字状の体勢保持を行って両手を自由として作業する。木から降りるときは、逆の手順でステップ4を順次撤去しながら降りる。
尚、説明を簡素化するために、以下ではステップ4の取り付け、取り外しに関する記載を省略して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の樹木昇降補助具は、先端に2ケのフック13a,13bを備えた墜落防止ロープ1と、一端にアイ部22が設けられて、他端に複数個の環部23、24、25が設けられた、少なくとも2本のチョーク台付ベルト2とで構成される。
後で詳しく説明するが、このチョーク台付ベルト2の本数は、作業者の昇降に従ってチョーク台付ベルト2を盛り替える場合は2本でよい。また、盛り替えないで、昇るときに順次配置し、降りるときに順次撤去する場合は、昇降する樹木の高さによりチョーク台付ベルト2の必要数が決まる。
【実施例1】
【0021】
図2(a)は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1が示された正面図である。この墜落防止ロープ1は、ロープ11と、三つ目環(取付プレート)12と、2ケのフック13a,13bと、を備えている。
【0022】
図3は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の三つ目環(取付プレート)12が示された正面図である。図3に示すように、三つ目環12は2ケのフック連結孔121a,121bと、ロープ連結孔122を有している。このフック連結孔121a,121bは、中心軸Y−Yの両側に相対して設けられている。またロープ連結孔122は、その中心を中心軸Y−Y上として設けられている。
【0023】
図2(a)及び図3に示すように、ロープ11の一端が三つ目環12のロープ連結孔122に編み込まれ、フック連結孔121a,121bにフック13a,13bがUシャクル14a,14bで並列して接続されている。また、ロープ11は、その他端が環状に編み込まれて、環状部15を形成している。
【0024】
前記ロープ11は、柱上安全帯を使用する作業者が主ランヤードの掛け替え時に使用する副ランヤードと同仕様のもので、通常、φ10〜12mmのナイロン製のロープであり、三つ目環12への編み込みは「さつま加工」と呼ばれる編み込み方法である。本実施例では繊維ロープを使用しているが、定められた強度(15.0kN以上の引張強度)を有するものであれば、ベルト製のストラップ等を使用して縫合してもよい。ここで「定められた強度」とは、「安全帯の規格」及び「安全帯構造指針」の規格値をいう。
【0025】
ここで、墜落防止ロープ1の長さは特に特定するものではないが、万が一の落下時における衝撃荷重を低く抑えるために、作業の支障にならない程度で出来る限り短いことが望ましい。具体的には、柱上安全帯に取り付ける副ランヤードのランヤード長さ(ロープ長さ+フック長さ)は、フックを掛ける掛止物が特定されないこともあり、標準で1.6〜1.7mであるが、本実施例では、図1に示すように、墜落防止ロープ1のフックを掛ける掛止物であるチョーク台付ベルト2が、作業者の体の前で、腰から頭程度の高さ位置であるので、ランヤード長さを、1.0〜1.4mとすることができる。
【0026】
また、前記三つ目環12は、定められた強度(11.5kN以上の引張強度)を有するために、鉄製またはアルミ製で、板材の打ち抜き加工やレーザーカット加工、或いは鍛造で製作されている。この三つ目環12は3ケの孔を有しているが、孔の数は限定されず、ロープ11と2ケのフック13a,13bとが接続できればよい。具体的には、孔を1ケとし、その1ケの孔にロープ11とUシャクル14a,14bを全て連結してもよい。しかしながら、作業者がフックを係止する際に、フック13aとフック13bが混同しないように、別孔に接続されることが望ましい。
【0027】
また、三つ目環12とフック13a,13bとを接続するために、本実施例ではUシャクル14a,14bを使用しているが、三つ目環12と同様の定められた強度を有する手法であれば、その接続方法は限定されない。最もシンプルな接続方法としては、フック13a,13bの環部に直接ロープ11を編み込んで接続することも可能である。つまり、三つ目環12とUシャクル14a,14bは、墜落防止ロープ1を構成する必須要素ではない。しかしながら、製造時の組立性、作業時におけるフックの取扱い性を考えると、三つ目環12とUシャクル14a,14bを備えることが望ましい。
【0028】
図2(b)は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の、安全帯3のD環33への取付図である。図2(b)に示すように、ロープ11端部の環状部15をD環33に挿通した後、その環状部15に2ケのフック13a,13bを接続した三つ目環12を挿通し、環状部15の輪が締まる状態とすることにより、墜落防止ロープ1が柱上安全帯3のD環33に連結される。そのために、環状部15の輪の大きさは2ケのフック13a,13bを接続した三つ目環12が挿通出来る大きさである。本実施例では墜落防止ロープ1の他端に環状部15を設けたが、フックやカラビナを用いて柱上安全帯3のD環33と連結してもよい。
【0029】
図4(a)及び図4(b)は、本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2が示された正面図及び側面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、チョーク台付ベルト2は、ベルト本体21の一端に墜落防止ロープ1のフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部22が設けられており、ベルト本体21の他端にアイ部22が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部23、24、25が設けられている。
【0030】
アイ部22は、ベルト本体21の一端を折り返して、フック13a,13bの鉤部が樹上で容易に係止できる大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、折り返したベルト端部から所定の長さで縫合されている。この所定の長さとは、定められた強度(使用状態であるチョーク吊り状態で、11.5kN以上の引張強度)と、耐久性(通常の使用時における摩耗、紫外線等による劣化に耐える性能)を考慮して決定した縫合長さである。また、このアイ部22には金属製のフック13a,13bが係止されるので、輪状部分に摩耗防止のための保護部材である摩耗防止布221で覆われており、前記の縫合部には摩耗による縫い糸の劣化防止のために熱収縮チューブ222が被せられている。
【0031】
環部23は、ベルト本体21の他端をアイ部22と同様に折り返して、アイ部22が挿入可能な大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、アイ部22の縫合と同様に、折り返したベルト端部から所定の長さで縫合されている。
環部24、25は、別体で成るベルトが折り返されて、アイ部22が挿入可能な大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、折り返したベルト端部から所定の長さで、ベルト本体21に縫合されている。
これら縫合の所定長さはアイ部22の縫合と同じであり、縫合部には摩耗による縫い糸の劣化防止のために熱収縮チューブ222が被せられている。
【0032】
これらの環部23、24、25は、それぞれがほぼ同径の輪状に形成されており、ベルト本体21にほぼ等間隔で、重連的に設けられている。図4(b)に示すように、環部23、24、25は、その輪状部と隣の環部の縫合部とが重ならない程度の位置に配置されている。これにより、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付けるときに、樹木の径によって環部23、24、25の何れかを選択して、アイ部22を挿入することにより、様々な樹木の径に対応できる。当然のことながら、樹木はその大きさにより径が異なり、1本の樹木でもその高さ位置によって順次径が異なっている。そのために、チョーク台付ベルト2は、数種類の全長を有するものが用意されている。しかしながら、複数の重連の環部を設けることにより、1種類で樹の高さ位置による径の違いにほぼ対応できる。
また、本実施例では輪状部を環部23、24、25と3ケとしているが、輪状部の数はチョーク台付ベルト2の全長により適宜決定される。更に、輪状部の径が同径でなくとも、環部の配置位置が等間隔でなくとも、輪状部の径と環部の配置位置を組み合わせて、樹木の様々な径に対応してもよい。
【0033】
図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2の変形例が示された側面図である。図5(a)に示すように、環部23、24、25は、ベルト本体21の片面のみではなく、両面に適宜縫合されてもよい。図5(b)に示すように、ベルト本体21を折り返されずに、環部23を別体で成るベルトで縫合してもよい。図5(c)に示すように、環部24、25を別体で成るベルトで縫合せずに、ベルト本体21を折り返して縫合し、複数の輪状部を設けてもよい。
【0034】
本発明のチョーク台付ベルト2を構成するベルトは、樹木に巻き付け易いように可撓性を有する材料で形成されている。具体的には、ナイロン、ポリエステル、アラミド繊維等を用いることができる。幅、厚さは、定められた強度(15.0kN以上の引張強度)を有する範囲で、出来る限り軽量なものが選定されている。具体的には、20mm×3mm程度であれば扱い易い。
また、本実施例ではベルトを使用しているが、定められた強度を有するものであれば、繊維ロープ等を使用してもよい。
【0035】
図6は、樹木を昇降する作業者が使用する柱上安全帯3が示された正面図である。図6に示すように、柱上安全帯3は主ランヤード31と胴ベルト32を備えている。この胴ベルト32にD環33が設けられている。図2(b)に示すように、墜落防止ロープ1が柱上安全帯3のD環33に連結されている。
【0036】
昇降具であるステップ4及び柱上安全帯3を使用して樹木に昇降する方法については前述したが、ここで、墜落防止ロープ1とチョーク台付ベルト2とから成る樹木昇降補助具を使用して墜落を防止しながら安全に昇降する方法について説明する。
【0037】
先ず作業者は、自分の身長程度の高さ位置で、1本目のチョーク台付ベルト2A(第1チョーク台付ベルト)で樹木の幹を抱き込み、アイ部22を、環部23、24、25の何れかに挿入した後、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付ける。その後、柱上安全帯3に連結された墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、第1チョーク台付ベルトのアイ部22に係止する。続いて、第1ステップ4に昇る。このとき、第1チョーク台付ベルトに掛けられたフック13aの係止点は、作業者の腰より高い位置であり、万が一の落下した場合でも衝撃荷重が抑制される。
【0038】
次に作業者は、自分の身長程度の高さ位置で、2本目のチョーク台付ベルト2B(第2チョーク台付ベルト)を、第1チョーク台付ベルトと同様にして樹木に巻き付ける。そして、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを、第2チョーク台付ベルトのアイ部22に係止した後、墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、第1チョーク台付ベルトから取り外す。続いて、第2ステップ4に昇る。このとき、第2チョーク台付ベルトに掛けられたフック13bの係止点は、作業者の腰より高い位置であり、万が一の落下した場合でも衝撃荷重が抑制される。以後、この手順を繰り返して昇って行く。降りるときは、この逆手順を繰り返す。
【0039】
このように、墜落防止ロープ1のフック13a,13bの何れかが、作業者の腰より高い位置で、チョーク台付ベルト2に接続されている。枝等があって、柱上安全帯3の主ランヤード31のフックを掛け替えるときも、無胴綱状態が回避できる。
このチョーク台付ベルト2の樹木への取付方法はチョーク締付方式なので、樹木の曲りがあっても巻き付けることができる。また、巻き付けたい位置に枝があっても、取付点を変更して巻き付けることができる。従って、本発明の樹木昇降補助具は樹木の曲りや枝の位置に影響を受けることなく墜落が防止できる。具体的には、幹が極端に斜めになっていて、ステップ4が取付られないような不安定な状態が発生しても、本発明の樹木昇降補助具を取り付けることにより墜落が防止できる。
更に、特許文献1のように昇降用の足場と墜落防止具が一体のものでは、昇降・作業位置が限定されるが、本発明では幹の360°どの位置でも、墜落を防止しながらの昇降・作業ができる。具体的には、樹木を昇る時と降りる時のルートが幹を挟んで180°反対側の場合でも、チョーク台付ベルト2を緩めて、簡単に反転することが可能である。
【0040】
また、本発明は、チョーク台付ベルト2で樹木の幹を抱き込み、アイ部22を、環部23、24、25の何れかに挿入した後、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付ける手法であるが、その他の手法として、バックルを用いて樹木の幹に取り付ける手法もある。しかしながら、この手法は、万が一の落下時等、大きな荷重が加わったときに、ベルトの伸びにバックルの滑りが加算されて、落下距離が長くなり衝撃荷重が大きくなる。一方、チョーク式はベルトの伸びのみの要因であり、落下距離が抑制される。
【0041】
作業者は、樹上で伐採等の作業を行うとき、柱上安全帯3の主ランヤード31に体重を預けて作業を行う。このときの墜落事故の要因の一つのとして、フックの掛け間違いがある。具体的には、本来フックを係止すべきD環に掛けず、工具吊り用の簡易フックや簡易カラビナに掛けてしまい、墜落してしまうことが多々ある。本発明では、墜落防止ロープ1のフック13a,13bの何れかが、作業者の腰より高い位置で、チョーク台付ベルト2に接続されているので、作業者は安心して両手で伐採作業ができる。
【0042】
本発明の墜落防止ロープ1は、従来の副ランヤードに三つ目環12とフック13bが付加されたのみであり、またチョーク台付ベルト2は繊維ベルト製であり、安全性を確保するものとしては非常に軽量である。装備的にも最低限の装備で済むため、作業性に優れている。従って、線下伐採の作業者も、山奥で作業する育林作業者も、作業能率を低下させることなく本発明の昇降補助具を使用できる。
【0043】
図7(a)から図7(e)は、本発明の実施例1の樹木昇降方法1−1の工程が示された説明図である。
図7(a)に示すように、工程(a)で、作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2Aを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22に係止する。
図7(b)に示すように、工程(b)で、作業者は、ステップ4Aを使用して1段昇る。このとき、1本目のチョーク台付ベルトは自分の腰より高い位置である。
図7(c)に示すように、工程(c)で、作業者は、別体の2本目のチョーク台付ベルト2Bを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを2本目のチョーク台付ベルト2Bのアイ部22に係止する。
図7(d)に示すように、工程(d)で、作業者は、フック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22から取り外し、1本目のチョーク台付ベルト2Aを樹木より取り外す。
図7(e)に示すように、工程(e)で、作業者は、ステップ4Bを使用して1段昇る。このとき、2本目のチョーク台付ベルトは自分の腰より高い位置である。
【0044】
これらの工程(a)から工程(e)を1サイクルとし、作業者は各工程を繰り返して樹木に昇る。また、逆手順を繰り返して樹木から降りる。これにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかのチョーク台付ベルトに接続されている。
【0045】
図8(a)から図8(f)は、本発明の実施例1の樹木昇降方法1−2の工程が示された説明図である。
図8(a)に示すように、工程(a)で、作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2Aを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22に係止する。
図8(b)に示すように、工程(b)で、作業者は、ステップ4Aを使用して1段昇る。このとき、1本目のチョーク台付ベルト2Aは自分の腰より高い位置である。
図8(c)に示すように、工程(c)で、作業者は、別体の2本目のチョーク台付ベルト2Bを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを2本目のチョーク台付ベルト2Bのアイ部22に係止する。
図8(d)に示すように、工程(d)で、作業者は、フック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22から取り外す。
図8(e)に示すように、工程(e)で、作業者は、ステップ4Bを使用して1段昇る。このとき、2本目のチョーク台付ベルト2Bは自分の腰より高い位置である。
図8(f)に示すように、工程(f)で、作業者は、3本目のチョーク台付ベルト2Cを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、1本目のチョーク台付ベルト2Aより取り外した墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを、3本目のチョーク台付ベルト2Cのアイ部22に係止する。
【0046】
以下同様にして所定の位置まで昇る。このとき、複数のチョーク台付ベルト2は、ステップ4と同様に順次樹木に配置されている。降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して昇降する。
これにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかのチョーク台付ベルトに接続されている。
【0047】
通常、樹木に昇降する作業者が使用する安全帯は、その胴ベルト32に胴綱と呼ばれる主ランヤード31が取り付けられている柱上安全帯3と呼ばれる安全帯である。しかし、胴綱が取り付けられていない、U字つり使用のできない1本つり専用のタイプのものであっても、昇降が目的であれば本発明の樹木昇降補助具が使用できる。
作業者が樹木に昇降する方法として、ステップ4を配置しながら昇降する方法で説明したが、一本梯子を使用して昇降する場合や、爪の付いた金具を両足に装着して昇降する場合でも、同様に本発明の樹木昇降補助具が使用できる。即ち、本発明の樹木昇降補助具は、線下伐採や枝打ちの作業者が一般的に使用している樹木昇降具と併用して使用できる。
【実施例2】
【0048】
以下、本発明の実施例2について説明する。上記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1に対し、実施例2のうち差異を有する構造のみについて説明する。
【0049】
図9は、本発明の実施例2に係る墜落防止ロープ5が示された正面図及び側面図である。この墜落防止ロープ5は、ロープ51と、三つ目環52と、フック53と、を備えている。図9に示すように、三つ目環52には3ケの孔が設けられており、その1ケの孔にロープ51の一端が編み込んで接続されている。三つ目環52の他の1ケの孔に、フック53がUシャクル54で連結されている。三つ目環52の残りの1ケの孔であるフック係止孔521は、次に説明するチョーク台付ベルト6のフック62が係止可能な大きさの孔である。また、ロープ51の他端は、実施例1と同様に柱上安全帯3のD環33に連結するための環状部が設けられている。
【0050】
図10(a)及び図10(b)は、本発明の実施例2に係るチョーク台付ベルト6が示された正面図及び側面図である。図10(a)及び図10(b)に示すように、チョーク台付ベルト6は、ベルト本体61の一端にフック62が連結されており、ベルト本体61の他端に、フック62が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部63、64、65が、ほぼ等間隔で、重連的に設けられている。
【0051】
実施例1の樹木昇降方法1−1では、1本の墜落防止ロープ1と、2本のチョーク台付ベルト2を用い、墜落防止ロープ1の2ケのフック13a,13bを、2本のチョーク台付ベルト2のそれぞれのアイ部22に係止し、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落を防止するものであった。
本実施例2では、1本の墜落防止ロープ5と、1本のチョーク台付ベルト6と、1本の実施例1のチョーク台付ベルト2を用いて、墜落防止ロープ5のフック53をチョーク台付ベルト2のアイ部22に係止し、チョーク台付ベルト6のフック62を墜落防止ロープ5の三つ目環52のフック係止孔521に係止し、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落を防止するものである。つまり、実施例2では、墜落防止ロープ5を柱上安全帯3と接続して、チョーク台付ベルト6及びチョーク台付ベルト2を樹木の幹に巻き付けた後、各々のフックとアイ部とを組み合わせながら、ほぼ実施例1と同様の手順で昇降して、フック掛け替え時等の無胴綱状態を回避する。
【0052】
このようにフックとアイ部とを組み合わせが必要なので、実施例1の樹木昇降方法1−2の如く、チョーク台付ベルト6とチョーク台付ベルト2とを各々複数個用意して、順次樹木に配置しながら樹木に昇る場合は、チョーク台付ベルト6とチョーク台付ベルト2とを交互に配置する必要がある。
【実施例3】
【0053】
以下、本発明の実施例3について説明する。上記実施例1及び上記実施例2と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1及び実施例2に対し、実施例3のうち差異を有する構造のみについて説明する。
【0054】
図11は、本発明の実施例3に係る墜落防止ロープ7が示された正面図である。この墜落防止ロープ7は、ロープ71と、フック72と、を備えている。図11に示すように、ロープ71の一端がフック72の環部に編み込んで接続されている。ロープ71の他端は、実施例1と同様に柱上安全帯3のD環33に連結するための環状部が設けられている。
【0055】
本実施例3では、2本の墜落防止ロープ7,7と、2本の実施例1のチョーク台付ベルト2,2を用いる。先ず、作業者は、その2本の墜落防止ロープ7,7を柱上安全帯3に接続する。この状態で、作業者側に2ケのフックが備えられている実施例1と同じ状態である。作業者はチョーク台付ベルト2を樹木の幹に巻き付けた後、墜落防止ロープ7のフック72をチョーク台付ベルト2のアイ部22に係止し、実施例1と同様にして、これを繰り返しながら昇降する。このとき、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落が防止されている。
【0056】
この実施例3の墜落防止ロープ7は、線下伐採の作業者が通常使用している「セフティロープ」と呼ばれる副ランヤードを使用してもよい。従って、作業者は主ランヤード1本と2本の墜落防止ロープ7との計3本のランヤードを装着しなければならない煩雑さはあるものの、特別な副ランヤードを用意する必要がなく、2本のチョーク台付ベルト2を用意すれば、墜落防止対策が採れる。しかしながら、万が一の落下時における衝撃荷重を低く抑えるために、墜落防止ロープ7の長さは、作業の支障にならない程度で出来る限り短いことが望ましい。
【実施例4】
【0057】
図示しないが、他の実施形態として、実施例1の墜落防止ロープ1とチョーク台付ベルト2各1本を使用し、樹木の幹に巻き付けたチョーク台付ベルト2を取り外すことなく、ずり上げながら昇る方法もある。但し、枝等の障害物を交わすときのために、もう1本のチョーク台付ベルト2を携帯しておく必要がある。
【0058】
作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2を実施例1と同様にして樹木の幹に巻き付けて、墜落防止ロープ1の一方のフック13aを接続し、昇る高さ位置に合わせて、自分の腰より低くならないように、巻き付けたチョーク台付ベルト2をずり上げながら昇る。そして、枝等の障害物があって、ずり上げが出来ないときは、携帯した2本目のチョーク台付ベルト2を枝等の上側の幹に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを接続する。降りるときは、昇るときの逆手順を繰り返す。これにより、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落が防止できるものである。尚、この方法は、樹木の表面が比較的滑らかな場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 墜落防止ロープ
11 ロープ
12 三つ目環(取付プレート)
121 ロープ連結孔
122a,122b フック連結孔
13a フック(一方のフック)
13b フック(他方のフック)
14a,14b Uシャクル
15 環状部
2 チョーク台付ベルト
21 ベルト本体
22 アイ部
23、24、25 環部
3 柱上安全帯
31 主ランヤード
32 胴ベルト
33 D環
4 ステップ(単体足場)
5 墜落防止ロープ
51 ロープ
52 三つ目環
521 フック係止孔
53 フック
54 Uシャクル
6 チョーク台付ベルト
61 ベルト本体
62 フック
63、64、65 環部
7 墜落防止ロープ
71 ロープ
72 フック
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として樹木の昇降作業において使用する樹木昇降補助具と、この樹木昇降補助具を用いた樹上の昇降方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に接触する樹木の枝を伐採する(線下伐採という)ため、また植林した樹木の枝打ちのために作業者は木に昇降する必要がある。このときの樹木昇降方法として、梯子(一本梯子と呼ばれる梯子主材が1本でステップ付きのものが多い)を樹木に沿うように立て掛けてそのステップを昇降する方法、樹木に固定するためのロープ又はベルトを備え、作業者の片足裏程度の大きさを有したステップ(単体足場)を50cm程度間隔に配置しながら昇降する方法、爪の付いた金具を両足に装着して、その爪を樹に食い込ませながら昇降する方法、等がある。
【0003】
この樹木への昇降作業や樹上での伐採作業は高所作業となり、作業者には墜落して死傷する危険性がある。そのため作業者はランヤードと呼ばれるフック付きのロープを備えた柱上安全帯を装着し、両側腰部に位置する環の一方に連結したロープで樹木の幹を抱き込み、ロープ先端のフックを他方の環に係止して、樹木との間にU字状の体勢保持(U字つりという)を行い、この安全帯によって樹木の幹と連結されて、万が一足を踏み外した場合の墜落を防止している。しかしながら、枝等があってランヤードのフックを掛け替えるときは、作業者と樹木の幹との連結が解かれる。このとき、墜落事故が発生する可能性が非常に高くなる。
【0004】
建設現場等の高所作業においては、1本つり専用の安全帯が使用されているが、フックの掛け替え時における墜落を防止するため、ランヤード2本を取り付けて、どちらかのフックを堅固な構造物と連結させ、無胴綱状態(フックが係止されず、人体と構造物が連結されていない状態)を回避する手法がとられ、更に、万が一の墜落時において落下距離を短くして衝撃荷重を低減するために、ランヤードのフックの係止点は人体の腰より高い位置とされている。ところが、樹木の昇降では堅固な構造物は幹(枝では十分な強度が得られないことが多い)であり、ランヤードのフックを掛けることが困難である。
【0005】
また、柱上安全帯のランヤードはロープを掴持する伸縮調節器により人体に巻き付けたベルトに連結されており、この伸縮調節器によりロープの長さ、つまり樹木との距離が調節でき、樹木との間にU字状の体勢保持を行って両手を自由として作業ができる。ところが、作業者が樹木をスムーズに昇降するためには、ある程度幹から腰を引いて、距離を保つ必要がある。このように樹木との距離が離れた状態で足を踏み外した場合、そのままの状態で下方向へ滑落することがあった。従って、主ランヤードとは別の副ランヤードを用いて墜落を防止することが望まれている。
【0006】
特に、配電線路の障害となる樹木の枝を伐採する作業では、樹木が導電経路となるため、作業者が絶縁性(ゴム製)の保護具を着用する必要がある。このため、樹木の昇降作業において使用する昇降具や昇降補助具(墜落防止具)としては、装備は極力軽くすることが望まれている。
また、育林のために植林した樹木の枝打ちをする作業は、林道から離れた山奥で行うことが多い。チェーンソーや鋸と共に携帯する昇降具や昇降補助具に関して、軽量なものでなければ、林業作業者は携帯しづらいのが現状である。
【0007】
従来の樹木昇降補助具としては、特開2006−239183号のものがある。
これは、足場を作りながら樹木に昇る昇降具であり、この昇降具を手持ちの安全帯と連結することにより、墜落を阻止しようとするものである。
【0008】
しかしながら前記従来品は、墜落時に荷重を支持するために樹木に取り付けられる支持ベルトが作業者の足元近くになることがあり、落下距離が長くなり衝撃荷重が大きくなる場合がある。最悪の場合、樹木の低い位置で墜落事故が発生したとき、落下距離が長いために地面に激突するおそれがある。この前記従来品は、主ベルトと巻付ベルトが連結されているためバックルを使用して樹木の径の違いに対応しているが、墜落時にはその衝撃荷重によりベルトが伸び、また大きな荷重が加わることによりバックルが滑り、更に落下距離は長くなる。
また、前記従来品は、樹木が大きく曲がっていたり、巻付ベルトを巻き付ける位置に枝がある場合には使用できないことがある。更に、身軽で昇降したいのに、腰元に大量に携帯して昇降することは、労力を要するばかりではなく、枝等の障害物に引っ掛かる危険性が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−239183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする主な問題点は、柱上安全帯のみでは、枝等があって柱上安全帯のフックを掛け替えるときに、フックが樹木の幹と連結されていない無胴綱状態が生じる点である。また、前記課題を解決すべく発明された特許文献1の技術は、足場を作りながら樹木に昇る、という技術的思想の発明であり、荷重支持点が足元近くになって落下距離が長くなり、衝撃荷重が大きくなる点、及び曲がった樹木や枝の位置により取付けできないことがある点、軽装備での昇降ができない点が課題である。
【0011】
そこで本発明は、線下伐採や枝打ちの作業者が一般的に使用している樹木昇降具と併用して使用でき、安全帯のフックを掛け替えるときも無胴綱状態が回避でき、安全帯のフックを掛ける荷重支持点を腰より高い位置とすることにより万が一の落下時に於ける衝撃荷重が低減できる、樹木昇降補助具とそれを用いた樹木昇降方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、一端のベルトを折り返して縫着したアイ部(ロープやベルトを加工した輪状の部分)と、ベルトの他端及び他端近辺に重連的に複数の環部とを設けたチョーク台付ベルトで樹木を抱き込み、その一端のアイ部を他端又は他端近辺の環部の輪の中に挿入して、台付部(荷や物を固定する部分)を構成する。一方、安全帯の墜落防止ロープの先端に、チョーク台付ベルトのアイ部に係止可能なフックを2ケ設け、墜落防止ロープと樹木に廻し掛けしたチョーク台付ベルトとにより、作業者と樹木を接続可能とする。順次盛り替えて取り付ける複数のチョーク台付ベルトと墜落防止ロープを使用して、作業者は常に少なくとも1ケのフックがチョーク台付ベルトに接続されている状態で昇降を行う。
【0013】
前記チョーク台付ベルト他端及び他端近辺の環部は、それぞれがほぼ同径の輪状に形成されており、そのベルト本体にほぼ等間隔で、重連的に設けられている。作業者は、それらの環部の中で最も適切な環部を選択して使用することにより、異なった径の樹木にチョーク台付ベルトを巻き付けて、安全な長さで使用することができる。
【0014】
前記墜落防止ロープの一端と2ケのフックを並列的に連結するために、三つ目環(取付プレート)が用いられている。この連結方法により、厚手の手袋を履いていても、そのフック同士が離隔された状態で連結されているので、重なり合うことなく、フックの選択及び把持が容易となり、作業性が向上する。
【0015】
作業者は、先ず、1本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止し墜落を防止する。次に、昇降具を使用して1本目のチョーク台付ベルトが自分の腰より高い位置まで昇る。続いて、別の2本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープの他方のフックbを2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止して墜落を防止する。続いて、フックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部から取り外し、1本目のチョーク台付ベルトを樹木より取り外す。そして、2本目のチョーク台付ベルトが自分の腰の位置に来るまで作業者が昇る。この工程又は逆手順を繰り返して昇降する。
これらの工程において、作業者は絶えず本発明の昇降補助具により、樹木の幹と接続されている。また、チョーク台付ベルトの巻き付け箇所である荷重支持点は、絶えず作業者の腰より高い位置である。
【0016】
前段落では、1本目、2本目のチョーク台付ベルトを盛り替えながら昇降したが、1本目、2本目、3本目、4本目とチョーク台付ベルトを複数本用意し、チョーク台付ベルトを樹木に配置しながら昇降する方法もある。
作業者は、先ず、1本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止し墜落を防止する。次に、昇降具を使用して1本目のチョーク台付ベルトが自分の腰より高い位置まで昇る。続いて、別の2本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープの他方のフックbを2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止して墜落を防止する。続いて、フックaを1本目のチョーク台付ベルトのアイ部から取り外す。続いて、2本目のチョーク台付ベルトが自分の腰の位置に来るまで作業者が昇る。そして、3本目のチョーク台付ベルトを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、1本目のチョーク台付ベルトより取り外した墜落防止ロープ先端の一方のフックaを3本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止し墜落を防止する。以下同様にして所定の位置まで昇り、降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して降りる。
これらの工程において、作業者は絶えず本発明の昇降補助具により、樹木の幹と接続されている。また、チョーク台付ベルトの巻き付け箇所である荷重支持点は、絶えず作業者の腰より高い位置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る樹木昇降補助具を用いることで、安全帯のフックを掛け替えるときの無胴綱状態が回避できる。安全帯のフックを掛ける荷重支持点が腰より高い位置であり、万が一の落下時に於ける衝撃荷重を低減させる効果がある。また、本発明の樹木昇降補助具は樹木の曲りや枝の位置に影響を受けることなく墜落が防止できる。更に、軽量で運搬性が良く、嵩張らないので本発明の樹木昇降補助具が枝等の障害物に引っ掛かって作業者が体勢を崩す危険性が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る樹木昇降補助具の、使用状態が示された説明図である。
【図2】本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1が示された正面図及び柱上安全帯3のD環33への取付図である。
【図3】本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の三つ目環(取付プレート)12が示された正面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2が示された正面図及び側面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2の変形例が示された側面図である。
【図6】樹木を昇降する作業者が使用する柱上安全帯3が示された正面図である。
【図7】本発明の実施例1の樹木昇降方法1−1の工程が示された説明図である。
【図8】本発明の実施例1の樹木昇降方法1−2の工程が示された説明図である。
【図9】本発明の実施例2に係る墜落防止ロープ5が示された正面図及び側面図である。
【図10】本発明の実施例2に係るチョーク台付ベルト6が示された正面図及び側面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る墜落防止ロープ7が示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<樹木に昇降するときに、本発明の樹木昇降補助具と併用される昇降具及び安全帯>
以下、図面を参照しつつ本発明に係る実施の形態について説明する。図1は、樹木昇降補助具の使用状態が示された説明図である。先ず、作業者は主ランヤード31を備えた柱上安全帯3を装着し、その主ランヤード31で樹木の幹を抱き込んだ後、主ランヤード31のフックを安全帯のD環33に係止する。次に、作業者の片足裏程度の大きさを有し、樹木に固定するためのロープ又はベルトを備えたステップ4(単体足場)を、自分の昇降可能な間隔(50cm程度)で、第1ステップ4A、第2ステップ4B、第3ステップ4Cと、順次配置しながら木に昇る。作業位置に到着後は、樹木との間にU字状の体勢保持を行って両手を自由として作業する。木から降りるときは、逆の手順でステップ4を順次撤去しながら降りる。
尚、説明を簡素化するために、以下ではステップ4の取り付け、取り外しに関する記載を省略して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の樹木昇降補助具は、先端に2ケのフック13a,13bを備えた墜落防止ロープ1と、一端にアイ部22が設けられて、他端に複数個の環部23、24、25が設けられた、少なくとも2本のチョーク台付ベルト2とで構成される。
後で詳しく説明するが、このチョーク台付ベルト2の本数は、作業者の昇降に従ってチョーク台付ベルト2を盛り替える場合は2本でよい。また、盛り替えないで、昇るときに順次配置し、降りるときに順次撤去する場合は、昇降する樹木の高さによりチョーク台付ベルト2の必要数が決まる。
【実施例1】
【0021】
図2(a)は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1が示された正面図である。この墜落防止ロープ1は、ロープ11と、三つ目環(取付プレート)12と、2ケのフック13a,13bと、を備えている。
【0022】
図3は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の三つ目環(取付プレート)12が示された正面図である。図3に示すように、三つ目環12は2ケのフック連結孔121a,121bと、ロープ連結孔122を有している。このフック連結孔121a,121bは、中心軸Y−Yの両側に相対して設けられている。またロープ連結孔122は、その中心を中心軸Y−Y上として設けられている。
【0023】
図2(a)及び図3に示すように、ロープ11の一端が三つ目環12のロープ連結孔122に編み込まれ、フック連結孔121a,121bにフック13a,13bがUシャクル14a,14bで並列して接続されている。また、ロープ11は、その他端が環状に編み込まれて、環状部15を形成している。
【0024】
前記ロープ11は、柱上安全帯を使用する作業者が主ランヤードの掛け替え時に使用する副ランヤードと同仕様のもので、通常、φ10〜12mmのナイロン製のロープであり、三つ目環12への編み込みは「さつま加工」と呼ばれる編み込み方法である。本実施例では繊維ロープを使用しているが、定められた強度(15.0kN以上の引張強度)を有するものであれば、ベルト製のストラップ等を使用して縫合してもよい。ここで「定められた強度」とは、「安全帯の規格」及び「安全帯構造指針」の規格値をいう。
【0025】
ここで、墜落防止ロープ1の長さは特に特定するものではないが、万が一の落下時における衝撃荷重を低く抑えるために、作業の支障にならない程度で出来る限り短いことが望ましい。具体的には、柱上安全帯に取り付ける副ランヤードのランヤード長さ(ロープ長さ+フック長さ)は、フックを掛ける掛止物が特定されないこともあり、標準で1.6〜1.7mであるが、本実施例では、図1に示すように、墜落防止ロープ1のフックを掛ける掛止物であるチョーク台付ベルト2が、作業者の体の前で、腰から頭程度の高さ位置であるので、ランヤード長さを、1.0〜1.4mとすることができる。
【0026】
また、前記三つ目環12は、定められた強度(11.5kN以上の引張強度)を有するために、鉄製またはアルミ製で、板材の打ち抜き加工やレーザーカット加工、或いは鍛造で製作されている。この三つ目環12は3ケの孔を有しているが、孔の数は限定されず、ロープ11と2ケのフック13a,13bとが接続できればよい。具体的には、孔を1ケとし、その1ケの孔にロープ11とUシャクル14a,14bを全て連結してもよい。しかしながら、作業者がフックを係止する際に、フック13aとフック13bが混同しないように、別孔に接続されることが望ましい。
【0027】
また、三つ目環12とフック13a,13bとを接続するために、本実施例ではUシャクル14a,14bを使用しているが、三つ目環12と同様の定められた強度を有する手法であれば、その接続方法は限定されない。最もシンプルな接続方法としては、フック13a,13bの環部に直接ロープ11を編み込んで接続することも可能である。つまり、三つ目環12とUシャクル14a,14bは、墜落防止ロープ1を構成する必須要素ではない。しかしながら、製造時の組立性、作業時におけるフックの取扱い性を考えると、三つ目環12とUシャクル14a,14bを備えることが望ましい。
【0028】
図2(b)は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の、安全帯3のD環33への取付図である。図2(b)に示すように、ロープ11端部の環状部15をD環33に挿通した後、その環状部15に2ケのフック13a,13bを接続した三つ目環12を挿通し、環状部15の輪が締まる状態とすることにより、墜落防止ロープ1が柱上安全帯3のD環33に連結される。そのために、環状部15の輪の大きさは2ケのフック13a,13bを接続した三つ目環12が挿通出来る大きさである。本実施例では墜落防止ロープ1の他端に環状部15を設けたが、フックやカラビナを用いて柱上安全帯3のD環33と連結してもよい。
【0029】
図4(a)及び図4(b)は、本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2が示された正面図及び側面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、チョーク台付ベルト2は、ベルト本体21の一端に墜落防止ロープ1のフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部22が設けられており、ベルト本体21の他端にアイ部22が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部23、24、25が設けられている。
【0030】
アイ部22は、ベルト本体21の一端を折り返して、フック13a,13bの鉤部が樹上で容易に係止できる大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、折り返したベルト端部から所定の長さで縫合されている。この所定の長さとは、定められた強度(使用状態であるチョーク吊り状態で、11.5kN以上の引張強度)と、耐久性(通常の使用時における摩耗、紫外線等による劣化に耐える性能)を考慮して決定した縫合長さである。また、このアイ部22には金属製のフック13a,13bが係止されるので、輪状部分に摩耗防止のための保護部材である摩耗防止布221で覆われており、前記の縫合部には摩耗による縫い糸の劣化防止のために熱収縮チューブ222が被せられている。
【0031】
環部23は、ベルト本体21の他端をアイ部22と同様に折り返して、アイ部22が挿入可能な大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、アイ部22の縫合と同様に、折り返したベルト端部から所定の長さで縫合されている。
環部24、25は、別体で成るベルトが折り返されて、アイ部22が挿入可能な大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、折り返したベルト端部から所定の長さで、ベルト本体21に縫合されている。
これら縫合の所定長さはアイ部22の縫合と同じであり、縫合部には摩耗による縫い糸の劣化防止のために熱収縮チューブ222が被せられている。
【0032】
これらの環部23、24、25は、それぞれがほぼ同径の輪状に形成されており、ベルト本体21にほぼ等間隔で、重連的に設けられている。図4(b)に示すように、環部23、24、25は、その輪状部と隣の環部の縫合部とが重ならない程度の位置に配置されている。これにより、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付けるときに、樹木の径によって環部23、24、25の何れかを選択して、アイ部22を挿入することにより、様々な樹木の径に対応できる。当然のことながら、樹木はその大きさにより径が異なり、1本の樹木でもその高さ位置によって順次径が異なっている。そのために、チョーク台付ベルト2は、数種類の全長を有するものが用意されている。しかしながら、複数の重連の環部を設けることにより、1種類で樹の高さ位置による径の違いにほぼ対応できる。
また、本実施例では輪状部を環部23、24、25と3ケとしているが、輪状部の数はチョーク台付ベルト2の全長により適宜決定される。更に、輪状部の径が同径でなくとも、環部の配置位置が等間隔でなくとも、輪状部の径と環部の配置位置を組み合わせて、樹木の様々な径に対応してもよい。
【0033】
図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2の変形例が示された側面図である。図5(a)に示すように、環部23、24、25は、ベルト本体21の片面のみではなく、両面に適宜縫合されてもよい。図5(b)に示すように、ベルト本体21を折り返されずに、環部23を別体で成るベルトで縫合してもよい。図5(c)に示すように、環部24、25を別体で成るベルトで縫合せずに、ベルト本体21を折り返して縫合し、複数の輪状部を設けてもよい。
【0034】
本発明のチョーク台付ベルト2を構成するベルトは、樹木に巻き付け易いように可撓性を有する材料で形成されている。具体的には、ナイロン、ポリエステル、アラミド繊維等を用いることができる。幅、厚さは、定められた強度(15.0kN以上の引張強度)を有する範囲で、出来る限り軽量なものが選定されている。具体的には、20mm×3mm程度であれば扱い易い。
また、本実施例ではベルトを使用しているが、定められた強度を有するものであれば、繊維ロープ等を使用してもよい。
【0035】
図6は、樹木を昇降する作業者が使用する柱上安全帯3が示された正面図である。図6に示すように、柱上安全帯3は主ランヤード31と胴ベルト32を備えている。この胴ベルト32にD環33が設けられている。図2(b)に示すように、墜落防止ロープ1が柱上安全帯3のD環33に連結されている。
【0036】
昇降具であるステップ4及び柱上安全帯3を使用して樹木に昇降する方法については前述したが、ここで、墜落防止ロープ1とチョーク台付ベルト2とから成る樹木昇降補助具を使用して墜落を防止しながら安全に昇降する方法について説明する。
【0037】
先ず作業者は、自分の身長程度の高さ位置で、1本目のチョーク台付ベルト2A(第1チョーク台付ベルト)で樹木の幹を抱き込み、アイ部22を、環部23、24、25の何れかに挿入した後、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付ける。その後、柱上安全帯3に連結された墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、第1チョーク台付ベルトのアイ部22に係止する。続いて、第1ステップ4に昇る。このとき、第1チョーク台付ベルトに掛けられたフック13aの係止点は、作業者の腰より高い位置であり、万が一の落下した場合でも衝撃荷重が抑制される。
【0038】
次に作業者は、自分の身長程度の高さ位置で、2本目のチョーク台付ベルト2B(第2チョーク台付ベルト)を、第1チョーク台付ベルトと同様にして樹木に巻き付ける。そして、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを、第2チョーク台付ベルトのアイ部22に係止した後、墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、第1チョーク台付ベルトから取り外す。続いて、第2ステップ4に昇る。このとき、第2チョーク台付ベルトに掛けられたフック13bの係止点は、作業者の腰より高い位置であり、万が一の落下した場合でも衝撃荷重が抑制される。以後、この手順を繰り返して昇って行く。降りるときは、この逆手順を繰り返す。
【0039】
このように、墜落防止ロープ1のフック13a,13bの何れかが、作業者の腰より高い位置で、チョーク台付ベルト2に接続されている。枝等があって、柱上安全帯3の主ランヤード31のフックを掛け替えるときも、無胴綱状態が回避できる。
このチョーク台付ベルト2の樹木への取付方法はチョーク締付方式なので、樹木の曲りがあっても巻き付けることができる。また、巻き付けたい位置に枝があっても、取付点を変更して巻き付けることができる。従って、本発明の樹木昇降補助具は樹木の曲りや枝の位置に影響を受けることなく墜落が防止できる。具体的には、幹が極端に斜めになっていて、ステップ4が取付られないような不安定な状態が発生しても、本発明の樹木昇降補助具を取り付けることにより墜落が防止できる。
更に、特許文献1のように昇降用の足場と墜落防止具が一体のものでは、昇降・作業位置が限定されるが、本発明では幹の360°どの位置でも、墜落を防止しながらの昇降・作業ができる。具体的には、樹木を昇る時と降りる時のルートが幹を挟んで180°反対側の場合でも、チョーク台付ベルト2を緩めて、簡単に反転することが可能である。
【0040】
また、本発明は、チョーク台付ベルト2で樹木の幹を抱き込み、アイ部22を、環部23、24、25の何れかに挿入した後、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付ける手法であるが、その他の手法として、バックルを用いて樹木の幹に取り付ける手法もある。しかしながら、この手法は、万が一の落下時等、大きな荷重が加わったときに、ベルトの伸びにバックルの滑りが加算されて、落下距離が長くなり衝撃荷重が大きくなる。一方、チョーク式はベルトの伸びのみの要因であり、落下距離が抑制される。
【0041】
作業者は、樹上で伐採等の作業を行うとき、柱上安全帯3の主ランヤード31に体重を預けて作業を行う。このときの墜落事故の要因の一つのとして、フックの掛け間違いがある。具体的には、本来フックを係止すべきD環に掛けず、工具吊り用の簡易フックや簡易カラビナに掛けてしまい、墜落してしまうことが多々ある。本発明では、墜落防止ロープ1のフック13a,13bの何れかが、作業者の腰より高い位置で、チョーク台付ベルト2に接続されているので、作業者は安心して両手で伐採作業ができる。
【0042】
本発明の墜落防止ロープ1は、従来の副ランヤードに三つ目環12とフック13bが付加されたのみであり、またチョーク台付ベルト2は繊維ベルト製であり、安全性を確保するものとしては非常に軽量である。装備的にも最低限の装備で済むため、作業性に優れている。従って、線下伐採の作業者も、山奥で作業する育林作業者も、作業能率を低下させることなく本発明の昇降補助具を使用できる。
【0043】
図7(a)から図7(e)は、本発明の実施例1の樹木昇降方法1−1の工程が示された説明図である。
図7(a)に示すように、工程(a)で、作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2Aを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22に係止する。
図7(b)に示すように、工程(b)で、作業者は、ステップ4Aを使用して1段昇る。このとき、1本目のチョーク台付ベルトは自分の腰より高い位置である。
図7(c)に示すように、工程(c)で、作業者は、別体の2本目のチョーク台付ベルト2Bを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを2本目のチョーク台付ベルト2Bのアイ部22に係止する。
図7(d)に示すように、工程(d)で、作業者は、フック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22から取り外し、1本目のチョーク台付ベルト2Aを樹木より取り外す。
図7(e)に示すように、工程(e)で、作業者は、ステップ4Bを使用して1段昇る。このとき、2本目のチョーク台付ベルトは自分の腰より高い位置である。
【0044】
これらの工程(a)から工程(e)を1サイクルとし、作業者は各工程を繰り返して樹木に昇る。また、逆手順を繰り返して樹木から降りる。これにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかのチョーク台付ベルトに接続されている。
【0045】
図8(a)から図8(f)は、本発明の実施例1の樹木昇降方法1−2の工程が示された説明図である。
図8(a)に示すように、工程(a)で、作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2Aを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22に係止する。
図8(b)に示すように、工程(b)で、作業者は、ステップ4Aを使用して1段昇る。このとき、1本目のチョーク台付ベルト2Aは自分の腰より高い位置である。
図8(c)に示すように、工程(c)で、作業者は、別体の2本目のチョーク台付ベルト2Bを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを2本目のチョーク台付ベルト2Bのアイ部22に係止する。
図8(d)に示すように、工程(d)で、作業者は、フック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22から取り外す。
図8(e)に示すように、工程(e)で、作業者は、ステップ4Bを使用して1段昇る。このとき、2本目のチョーク台付ベルト2Bは自分の腰より高い位置である。
図8(f)に示すように、工程(f)で、作業者は、3本目のチョーク台付ベルト2Cを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、1本目のチョーク台付ベルト2Aより取り外した墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを、3本目のチョーク台付ベルト2Cのアイ部22に係止する。
【0046】
以下同様にして所定の位置まで昇る。このとき、複数のチョーク台付ベルト2は、ステップ4と同様に順次樹木に配置されている。降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して昇降する。
これにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかのチョーク台付ベルトに接続されている。
【0047】
通常、樹木に昇降する作業者が使用する安全帯は、その胴ベルト32に胴綱と呼ばれる主ランヤード31が取り付けられている柱上安全帯3と呼ばれる安全帯である。しかし、胴綱が取り付けられていない、U字つり使用のできない1本つり専用のタイプのものであっても、昇降が目的であれば本発明の樹木昇降補助具が使用できる。
作業者が樹木に昇降する方法として、ステップ4を配置しながら昇降する方法で説明したが、一本梯子を使用して昇降する場合や、爪の付いた金具を両足に装着して昇降する場合でも、同様に本発明の樹木昇降補助具が使用できる。即ち、本発明の樹木昇降補助具は、線下伐採や枝打ちの作業者が一般的に使用している樹木昇降具と併用して使用できる。
【実施例2】
【0048】
以下、本発明の実施例2について説明する。上記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1に対し、実施例2のうち差異を有する構造のみについて説明する。
【0049】
図9は、本発明の実施例2に係る墜落防止ロープ5が示された正面図及び側面図である。この墜落防止ロープ5は、ロープ51と、三つ目環52と、フック53と、を備えている。図9に示すように、三つ目環52には3ケの孔が設けられており、その1ケの孔にロープ51の一端が編み込んで接続されている。三つ目環52の他の1ケの孔に、フック53がUシャクル54で連結されている。三つ目環52の残りの1ケの孔であるフック係止孔521は、次に説明するチョーク台付ベルト6のフック62が係止可能な大きさの孔である。また、ロープ51の他端は、実施例1と同様に柱上安全帯3のD環33に連結するための環状部が設けられている。
【0050】
図10(a)及び図10(b)は、本発明の実施例2に係るチョーク台付ベルト6が示された正面図及び側面図である。図10(a)及び図10(b)に示すように、チョーク台付ベルト6は、ベルト本体61の一端にフック62が連結されており、ベルト本体61の他端に、フック62が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部63、64、65が、ほぼ等間隔で、重連的に設けられている。
【0051】
実施例1の樹木昇降方法1−1では、1本の墜落防止ロープ1と、2本のチョーク台付ベルト2を用い、墜落防止ロープ1の2ケのフック13a,13bを、2本のチョーク台付ベルト2のそれぞれのアイ部22に係止し、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落を防止するものであった。
本実施例2では、1本の墜落防止ロープ5と、1本のチョーク台付ベルト6と、1本の実施例1のチョーク台付ベルト2を用いて、墜落防止ロープ5のフック53をチョーク台付ベルト2のアイ部22に係止し、チョーク台付ベルト6のフック62を墜落防止ロープ5の三つ目環52のフック係止孔521に係止し、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落を防止するものである。つまり、実施例2では、墜落防止ロープ5を柱上安全帯3と接続して、チョーク台付ベルト6及びチョーク台付ベルト2を樹木の幹に巻き付けた後、各々のフックとアイ部とを組み合わせながら、ほぼ実施例1と同様の手順で昇降して、フック掛け替え時等の無胴綱状態を回避する。
【0052】
このようにフックとアイ部とを組み合わせが必要なので、実施例1の樹木昇降方法1−2の如く、チョーク台付ベルト6とチョーク台付ベルト2とを各々複数個用意して、順次樹木に配置しながら樹木に昇る場合は、チョーク台付ベルト6とチョーク台付ベルト2とを交互に配置する必要がある。
【実施例3】
【0053】
以下、本発明の実施例3について説明する。上記実施例1及び上記実施例2と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略し、実施例1及び実施例2に対し、実施例3のうち差異を有する構造のみについて説明する。
【0054】
図11は、本発明の実施例3に係る墜落防止ロープ7が示された正面図である。この墜落防止ロープ7は、ロープ71と、フック72と、を備えている。図11に示すように、ロープ71の一端がフック72の環部に編み込んで接続されている。ロープ71の他端は、実施例1と同様に柱上安全帯3のD環33に連結するための環状部が設けられている。
【0055】
本実施例3では、2本の墜落防止ロープ7,7と、2本の実施例1のチョーク台付ベルト2,2を用いる。先ず、作業者は、その2本の墜落防止ロープ7,7を柱上安全帯3に接続する。この状態で、作業者側に2ケのフックが備えられている実施例1と同じ状態である。作業者はチョーク台付ベルト2を樹木の幹に巻き付けた後、墜落防止ロープ7のフック72をチョーク台付ベルト2のアイ部22に係止し、実施例1と同様にして、これを繰り返しながら昇降する。このとき、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落が防止されている。
【0056】
この実施例3の墜落防止ロープ7は、線下伐採の作業者が通常使用している「セフティロープ」と呼ばれる副ランヤードを使用してもよい。従って、作業者は主ランヤード1本と2本の墜落防止ロープ7との計3本のランヤードを装着しなければならない煩雑さはあるものの、特別な副ランヤードを用意する必要がなく、2本のチョーク台付ベルト2を用意すれば、墜落防止対策が採れる。しかしながら、万が一の落下時における衝撃荷重を低く抑えるために、墜落防止ロープ7の長さは、作業の支障にならない程度で出来る限り短いことが望ましい。
【実施例4】
【0057】
図示しないが、他の実施形態として、実施例1の墜落防止ロープ1とチョーク台付ベルト2各1本を使用し、樹木の幹に巻き付けたチョーク台付ベルト2を取り外すことなく、ずり上げながら昇る方法もある。但し、枝等の障害物を交わすときのために、もう1本のチョーク台付ベルト2を携帯しておく必要がある。
【0058】
作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2を実施例1と同様にして樹木の幹に巻き付けて、墜落防止ロープ1の一方のフック13aを接続し、昇る高さ位置に合わせて、自分の腰より低くならないように、巻き付けたチョーク台付ベルト2をずり上げながら昇る。そして、枝等の障害物があって、ずり上げが出来ないときは、携帯した2本目のチョーク台付ベルト2を枝等の上側の幹に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを接続する。降りるときは、昇るときの逆手順を繰り返す。これにより、作業者は絶えず樹木の幹と接続されて、墜落が防止できるものである。尚、この方法は、樹木の表面が比較的滑らかな場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 墜落防止ロープ
11 ロープ
12 三つ目環(取付プレート)
121 ロープ連結孔
122a,122b フック連結孔
13a フック(一方のフック)
13b フック(他方のフック)
14a,14b Uシャクル
15 環状部
2 チョーク台付ベルト
21 ベルト本体
22 アイ部
23、24、25 環部
3 柱上安全帯
31 主ランヤード
32 胴ベルト
33 D環
4 ステップ(単体足場)
5 墜落防止ロープ
51 ロープ
52 三つ目環
521 フック係止孔
53 フック
54 Uシャクル
6 チョーク台付ベルト
61 ベルト本体
62 フック
63、64、65 環部
7 墜落防止ロープ
71 ロープ
72 フック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木に昇降するときに使用する樹木昇降補助具であって、
ロープと、2ケのフックと、から構成され、前記ロープの先端に前記2ケのフックが並列して接続されている墜落防止ロープと、
ベルトで構成され、前記ベルトの一端に前記墜落防止ロープのフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部を設け、前記ベルトの他端に前記アイ部が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部を設けた、少なくとも2本のチョーク台付ベルトと、
より成る樹木昇降補助具。
【請求項2】
前記チョーク台付ベルトが、ベルトで構成され、前記ベルトの一端に前記墜落防止ロープのフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部が設けられており、前記ベルトの他端に前記アイ部が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部が設けられており、
前記複数個の環部が、それぞれ同径の輪状に形成されて、前記ベルトに等間隔で重連的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の樹木昇降補助具。
【請求項3】
前記墜落防止ロープが、ロープと、取付プレートと、2ケのフックと、から構成され、
前記取付プレートに、相対する2ケのフック連結孔と、前記2ケのフック連結孔の中間部にロープ連結孔と、を設け、
前記2ケのフック連結孔に前記2ケのフックが並列して接続されており、前記ロープ連結孔に前記ロープが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の樹木昇降補助具。
【請求項4】
作業者が昇降具及び安全帯を使用して樹木を昇降するに当たり、一端に2ケのフックを並列接続した前記墜落防止ロープの他端が作業者に装着した安全帯に接続されており、
1本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(a)と、前記1本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(b)と、別体の2本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの他方のフックを前記2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(c)と、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部より外して、前記1本目のチョーク台付ベルトを樹木より取り外す工程(d)と、前記2本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(e)と、を1サイクルとして、
上記工程の繰り返し又は逆手順の繰り返しにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかの前記チョーク台付ベルトに接続されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹木昇降補助具を用いた樹木昇降方法。
【請求項5】
作業者が昇降具及び安全帯を使用して樹木を昇降するに当たり、一端に2ケのフックを並列接続した前記墜落防止ロープの他端が作業者に装着した安全帯に接続されており、
複数の前記チョーク台付ベルトが用意されており、
1本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(a)と、前記1本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(b)と、別体の2本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの他方のフックを前記2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(c)と、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部より外す工程(d)と、前記2本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(e)と、別体の3本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記3本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(f)と、
以下同様にして所定の位置まで昇り、降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかの前記チョーク台付ベルトに接続されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹木昇降補助具を用いた樹木昇降方法。
【請求項1】
樹木に昇降するときに使用する樹木昇降補助具であって、
ロープと、2ケのフックと、から構成され、前記ロープの先端に前記2ケのフックが並列して接続されている墜落防止ロープと、
ベルトで構成され、前記ベルトの一端に前記墜落防止ロープのフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部を設け、前記ベルトの他端に前記アイ部が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部を設けた、少なくとも2本のチョーク台付ベルトと、
より成る樹木昇降補助具。
【請求項2】
前記チョーク台付ベルトが、ベルトで構成され、前記ベルトの一端に前記墜落防止ロープのフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部が設けられており、前記ベルトの他端に前記アイ部が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部が設けられており、
前記複数個の環部が、それぞれ同径の輪状に形成されて、前記ベルトに等間隔で重連的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の樹木昇降補助具。
【請求項3】
前記墜落防止ロープが、ロープと、取付プレートと、2ケのフックと、から構成され、
前記取付プレートに、相対する2ケのフック連結孔と、前記2ケのフック連結孔の中間部にロープ連結孔と、を設け、
前記2ケのフック連結孔に前記2ケのフックが並列して接続されており、前記ロープ連結孔に前記ロープが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の樹木昇降補助具。
【請求項4】
作業者が昇降具及び安全帯を使用して樹木を昇降するに当たり、一端に2ケのフックを並列接続した前記墜落防止ロープの他端が作業者に装着した安全帯に接続されており、
1本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(a)と、前記1本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(b)と、別体の2本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの他方のフックを前記2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(c)と、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部より外して、前記1本目のチョーク台付ベルトを樹木より取り外す工程(d)と、前記2本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(e)と、を1サイクルとして、
上記工程の繰り返し又は逆手順の繰り返しにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかの前記チョーク台付ベルトに接続されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹木昇降補助具を用いた樹木昇降方法。
【請求項5】
作業者が昇降具及び安全帯を使用して樹木を昇降するに当たり、一端に2ケのフックを並列接続した前記墜落防止ロープの他端が作業者に装着した安全帯に接続されており、
複数の前記チョーク台付ベルトが用意されており、
1本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(a)と、前記1本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(b)と、別体の2本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの他方のフックを前記2本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(c)と、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記1本目のチョーク台付ベルトのアイ部より外す工程(d)と、前記2本目のチョーク台付ベルトが作業者の腰の位置に来るまで作業者が昇る工程(e)と、別体の3本目の前記チョーク台付ベルトを作業者より高い位置でそのアイ部を所定の環部に挿通して樹木に巻き付け、前記墜落防止ロープの一方のフックを前記3本目のチョーク台付ベルトのアイ部に係止する工程(f)と、
以下同様にして所定の位置まで昇り、降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかの前記チョーク台付ベルトに接続されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹木昇降補助具を用いた樹木昇降方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−200375(P2012−200375A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66991(P2011−66991)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】
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