説明

2種以上の活性物質のためのドラッグデリバリーシステム

【課題】長期間にわたり、固定された生理的比率の黄体ホルモン系ステロイド化合物と発情ホルモン系ステロイド化合物を同時放出するための、膣投与に適した好ましくはリング形態のドラッグデリバリーシステムを提供すること。
【解決手段】該ドラッグデリバリーシステムは、黄体ホルモン系化合物と発情ホルモン系化合物の混合物を含む熱可塑性ポリマーコアと熱可塑性スキン層とを含んでなる少なくとも1つのコンパートメントを含み、黄体ホルモン系化合物は、初期に比較的低い過飽和度でポリマーコア材料に溶解している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の活性物質を同時放出するためのドラッグデリバリーシステム、より特定的には、該活性物質を長期間にわたって実質的に一定の比率で放出するリング形経膣ドラッグデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような放出システムは、例えば、異なる活性物質を含有する好ましくは球状又は円筒状の別個の貯蔵容器を特殊構造のホールダーとして組み立てることを開示する米国特許第3,995,633号及び同第3,995,634号から公知となっている。
【0003】
そのような放出システムが米国特許第4,237,885号にも記載されており、該特許では、ポリマー材製のチューブ又はコイルを該チューブ内に設けられた「スペーサー」で部分に分割した後、分割された各チューブ部分にシリコーン液中の異なる活性物質を充填し、次いで、該チューブの両端を接着する。しかし、この放出システムでは、特に長期にわたる貯蔵中に1つの貯蔵容器から他の貯蔵容器への活性物質の移動(拡散)が生じ、その結果、予備設定された当該活性物質間の固定放出比が経時的に変化してしまう。
【0004】
2層膣リングがヨーロッパ特許公開第0,050,867号に記載されており、該リングは、内層が活性物質を充填したシリコーンエラストマーである、好ましくは2つのシリコーンエラストマー層で被覆された薬理的に許容し得る支持リングを構成する。
【0005】
類似のリング形経膣放出システムが既に米国特許第4,292,965号に記載されている。今日では、シリコーンエラストマーは、使用するには安全性が低く、もはや明らかに好ましい材料ではないと考えられている。
【0006】
米国特許第4,596,576号には、各コンパートメントが異なる活性物質を含有する2コンパートメント型膣リングが開示されている。しかし、種々の活性物質間の放出比が一定である適当なリングを得るためには、該コンパートメントの端部を不活性ストッパー、好ましくはガラスストッパーで接続する必要があった。
【0007】
特許公開WO97/02015号は、1番目のコンパートメントがコアと中間薬剤含有層と薬剤非含有外層とからなり、2番目のコンパートメントが薬剤含有コアと薬剤非含有外層とからなる2コンパートメント型デバイスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,995,633号
【特許文献2】米国特許第3,995,634号
【特許文献3】米国特許第4,237,885号
【特許文献4】欧州特許公開第0,050,867号
【特許文献5】米国特許第4,292,965号
【特許文献6】米国特許第4,596,576号
【特許文献7】国際公開第97/02015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
長期間にわたって2種以上の活性物質を互いに実質的に一定の比率で放出する放出システムは特定の用途に極めて有用である。例えば、避妊やホルモン代償療法の分野では、好ましくは実質的に一定の比率の黄体ホルモン活性薬剤と発情ホルモン活性薬剤との同時投与が多用されている。
【0010】
しかし、これら2種の薬剤を1つの貯蔵容器に同時導入しても、単に純粋に偶発的に所望の放出比が得られるに過ぎない。実際、単位時間当たりの放出は、(貯蔵容器の壁を構成する)高分子材料からなる外層における活性物質の溶解度と、該外層における活性物質の拡散係数とにより決定される。このタイプの放出システムにおいては、実際に、該貯蔵容器中に含有されている活性物質の放出比は、大部分、該容器の外層材料として何を選択するかにより決定される。
【0011】
貯蔵容器の外層材料は、理論的には多様な高分子材料から選択し得るが、実際には、比較的少数のポリマーのみが該容器の放出比決定外層として満足に機能し得るようであることが判明している。医薬に用いるにはポリマーに特定の要件が課せられるだけでなく、多くのポリマーは、例えば、剛性が不十分であるとか、十分に不活性ではないとか、また活性物質の溶解度が十分でないといった点で医薬用には不適である。
【0012】
さらに、活性物質を含有する貯蔵容器の組成も重要である。何故なら、該容器の材料は活性物質を外層の内側に適切に供給する役目を果たすからである。該容器の材料は、活性物質の放出中に収縮してはならず、大量の活性物質などを吸収し得るものでなければならない。
【0013】
従って、殆どの場合、上記参考文献に明白に示されているように、特定の比率で2種以上の活性物質を放出し得る放出システムとして複数の別個の貯蔵容器を有する放出システムを選択することを余儀なくされる。必ずしも満足すべき放出、放出比及び放出条件が得られない場合もあるということの他に、開示されている膣リングはいずれも比較的複雑であるために製造コストが高くなるという欠点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことには、本発明者は、慎重に貯蔵容器及び外層材料を選択し且つ処理することにより、2種以上のステロイド化合物(例えば、プロゲストーゲン及びエストロゲン)、好ましくはエトノゲストレル(etonogestrel)及びエチニルエストラジオールを放出するための好ましくはリング形の1コンパートメント型ドラッグデリバリーシステムを用いて長期間にわたり信頼し得る放出比を達成し得ることを見出した。
【0015】
好ましくはリング形の本発明のドラッグデリバリーシステム(以下膣リングと称する)は、熱可塑性ポリマーコアを含んでなる少なくとも1つのコンパートメントを含み、該コアは、少なくとも黄体ホルモン系ステロイド化合物と発情ホルモン系ステロイド化合物を、生理的要求量の黄体ホルモン系化合物と発情ホルモン系化合物とを前記ポリマーから直接放出し得る重量比で含み、前記黄体ホルモン系化合物は、初期に比較的低い過飽和度で、好ましくは、25℃での前記コアポリマー中の黄体ホルモン系ステロイドの飽和濃度を得るのに必要な重量の1〜約6倍の濃度でコアポリマーに溶解しており、前記発情ホルモン系化合物は、初期に前記黄体ホルモン系化合物より低い濃度でコアポリマーに溶解しており、熱可塑性スキン層(外層)は、前記黄体ホルモン系化合物及び発情ホルモン系化合物のどちらに対しても透過性である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の膣リングの第1の実施態様の平面断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の膣リングの第2の実施態様の平面断面図を示している。
【図3】図3は、本発明の膣リングの第3の非円形実施態様の平面断面図を示している。
【図4】図4は、波状にした、本発明の膣リングの第4の実施態様の部分平面断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
より特定的に言えば、避妊用に用いるのが好ましい本発明の膣リングは、少なくとも黄体ホルモン系化合物としてエトノゲストレル(3−ケトデソゲストレル)を、発情ホルモン系化合物としてエチニルエストラジオールを、約10部:約1.5〜5部のエトノゲストレル:エチニルエストラジオール重量比で含むエチレン−ビニルアセテートコポリマー(ポリ−EVA)からなる熱可塑性ポリマーコアを含んでなる少なくとも1つのコンパートメントを含み、化合物エトノゲストレルは、その25℃での飽和濃度を得るのに必要な量の1〜約6倍、より好ましくは2〜5倍の重量でポリ−EVAコアに溶解しており、ポリ−EVAからなる熱可塑性スキン層は、エトノゲストレル及びエチニルエストラジオールのどちらに対しても透過性である。
【0018】
既に上記から明らかなように、本発明は、ステロイドが、4〜25℃の温度での長期間(例えば、6ヶ月以上)の貯蔵中に、過飽和状態(但し、該ステロイドの濃度は25℃での溶解度を過剰には超えない)に保持し得るという驚くべき知見に基づいている。許容し得る過剰量が、最低貯蔵温度、ステロイド化合物の種類及び存在する追加の化合物(補助溶媒作用)を含む熱可塑性ポリマーの種類により決定されることは勿論である。しかし、前記過剰量が許容し得る限度を超えると、ステロイドは膣リングの外面上に晶出する。
【0019】
該知見により、容易に製造し得且つステロイド化合物の信頼し得る予測可能な放出を提供する膣リングが得られる。ステロイド含有流体コアを含む公知膣リングに対し、本発明の膣リングの熱可塑性固体コアには、例えば密閉不良のためにステロイド含有流体が漏出するというリスクがない。さらに、本発明の膣リングは押出法により容易且つ低コストで製造し得る。つまり、層の数とステロイドの組成が異なるコンパートメントを含む複雑なデバイスの製造が回避される。
【0020】
本発明を実施する際に用い得る熱可塑性ポリマーは、原則として、低密度ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテートコポリマー及びスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーのような医薬用に適した任意の熱可塑性ポリマー又はエラストマー材料であってよい。エチレン−ビニルアセテートコポリマー(ポリ−EVA)は、その優れた機械的・物理的性質(例えば、材料中のステロイドの溶解度)のために特に好ましい。ポリ−EVA材料は、コアにもスキン層にも好ましく用い得、以下の商品名:Elvax、Evatane、Lupolen、Movriton、Ultrathene及びVestyparの元に販売されている製品のような任意の市販エチレン−ビニルアセテートコポリマーであってよい。
【0021】
本発明の膣リングは、要求される任意のサイズで製造し得る。しかし、実際には、該リングは、外径が50〜60mm、より好ましくは52〜56mmであり、断面の直径が約2.5〜5mmであるのが好ましい。
【0022】
コア体の表面は、好ましくは800mm以上、より好ましくは1,000mm以上、典型的には約1,700〜2,000mmの大きさであるが、膣リングの設計(物理的寸法)が被験者に不都合がなければ、それより有意に大きい表面も可能である。好ましいことではないが、プラシーボコンパートメント又は1種以上の他の薬剤を充填したコンパートメントである第2のコンパートメントを加えることが必要な場合もあり得る。そのような追加のコンパートメントは、例えば、プロゲストーゲンとエストロゲンの比率が避妊に適した比率とは異なるホルモン代償療法を実施する際に必要であり得る。しかし、単一のコンパートメントを含む膣リングが本発明の好ましい実施態様であり、該リングは製造し易く、且つ調節可能な優れた放出パターンを示す。
【0023】
本発明の膣リングは主として避妊用として設計されているが、上記のように、特定の条件下にはHRT(ホルモン代償療法)にも用い得る。黄体ホルモン系ステロイド化合物は、任意の適当なプロゲストーゲン、例えば、デソゲストレル(desogestrel)、エトノゲストレル(etonogestrel)、レボノルゲストレル(levonorgestrel)、ノルゲスチメート(norgestimate)、ゲストデン(gestodene)、又は黄体ホルモン活性を有する任意の他のステロイド化合物であってよい。発情ホルモン系ステロイド化合物は、エストラジオール、エストリオール、メストラノール及びエチニルエストラジオールのような任意の適当なエストロゲンであってよい。好ましいプロゲストーゲンはエトノゲストレルである。避妊用に好ましいエストロゲンはエチニルエストラジオールであり、HRT用に好ましいエストロゲンはエストラジオールである。
【0024】
ヒトにおける避妊の場合、本発明の膣リングは、ポリ−EVAコア体が、約1:0.2〜0.4、より好ましくは1:0.2〜0.3重量比のエトノゲストレルとエチニルエストラジオールを含み、21日間にわたりin situで24時間当たりエトノゲストレルの場合には95〜145μg、好ましくは120μg、またエチニルエストラジオールの場合には10〜20μg、好ましくは15μgの平均放出速度で放出し得るように、エトノゲストレルが比較的低い過飽和度、好ましくはその25℃での飽和濃度の1〜6倍の濃度でポリ−EVAに溶解していることを特徴とするのが好ましい。
【0025】
そのような膣リングの有利な実施態様において、スキン層は、厚さが40〜300μmの範囲であり、ビニルアセテート含量が5〜15%の範囲であるエチレン−ビニルアセテートコポリマースキン層であり、より特定的には、コンパートメントのスキン層は、厚さが110μmであり、9〜10%のビニルアセテート含量を有するエチレン−ビニルアセテートコポリマーからなる。
【0026】
そのようなスキン層は、優れた溶解度及びステロイド拡散性を有し、長期間にわたり膣リング中適当なステロイド濃度で適切な比率のエトノゲストレルとエチニルエストラジオールの組み合わせ放出を可能にする。
【0027】
さらに、該コア体は、25〜35%、好ましくは26〜30%のビニルアセテート含量を有するエチレン−ビニルアセテートコポリマーからなるのが有利である。ビニルアセテートの割合は、当該事項に関して種々の文献に記載されている電位差滴定を用いて決定し得る。
【0028】
先に述べたように、黄体ホルモン系ステロイドを比較的低い過飽和度でコア材料に溶解することが本発明の必須要素である。この「比較的低い過飽和度」とは、一般に、25℃でのポリマー中のステロイドの飽和濃度を得るのに必要な量の1〜約6倍、より好ましくは2〜5倍の黄体ホルモン系ステロイドの量と定義し得る。
【0029】
ステロイドの飽和濃度は、当業界でそれ自体公知の種々の方法により決定し得る。例えば、熱可塑性ポリマーを、25℃で(追加のステロイド結晶を添加した)ステロイド飽和溶液に導入し、該飽和溶液中でポリマー中のステロイドの濃度が一定になるまで維持する。飽和濃度の決定に適当な別の方法は、いわゆるタイムラグ法である。
【0030】
黄体ホルモン系ステロイド化合物がエトノゲストレルである、本発明のより好ましい実施態様において、発情ホルモン系化合物はエチニルエストラジオールであり、コア材料はポリ−EVAであり、「低過飽和度」は、前記ポリ−EVAコア材料中、約0.3〜約1重量%の量のエトノゲストレルと、約0.05〜約0.3重量%の量のエチニルエストラジオールを用いることにより得られる。そのような初期の低過飽和度により、エトノゲストレル含有膣リングは驚異的に安定になる。
【0031】
ポリ−EVAのコアは、0.5〜1重量%、好ましくは0.55〜0.8重量%のエトノゲストレル及び0.10〜0.23重量%、好ましくは0.12〜0.18重量%のエチニルエストラジオールを含むのが有利であり得る。
【0032】
上記スキン層は、コア材料中のこれらの好ましいステロイド濃度で、長期間にわたり適切な生理的速度でエトノゲストレルとエチニルエストラジオールを組み合わせ放出し得、それによって、ドラッグデリバリーデバイスである該膣リングは、かなりの長期間にわたる貯蔵中にも優れた安定性(リングの外面に結晶化が認められない状態)を示す。
【0033】
本発明の膣リングは、任意の適当な方法で製造し得る。好ましい製造法は、薬剤含有コアと薬剤非含有外層とを同時押出することを含む。このようにして得られたファイバーを所要の長さの断片に切断し、任意の適当な方法で各片をリング形デバイスに組み立てる。次いで、該リングを例えば適当な小袋中に包装するが、場合によっては包装前に滅菌又は消毒する。
【実施例】
【0034】
本発明の膣リングの製造法を記載する以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【0035】
図1は、コア体(1)と、コア体(1)を被覆し且つ放出速度を調節するスキン層(2)とを有する膣リングを示している。図3に示されているように、該リングは必ずしも完全な円形体ではなく、図4に示されている本発明の膣リングの断面は、該リングが表面拡張設計を含み得ることを示している。図2は、別の物体(3)を該リングの一部として組み込み得ることを示している。
【0036】
実施例1
57部のエトノゲストレル、12部のエチニルエストラジオール(EE)、5部のステアリン酸マグネシウム、及び9,926部のEvatane(登録商標)28−25を混合する。この混合物をEvatane(登録商標)1020VN3と同時押出して、外径4.0mm、スキン層の厚さ80μmの同軸ファイバーを形成する。該ファイバーを157mmの断片に切断する。次いで、接着剤を用いて各ファイバー片の端部を接着する(図1)。
【0037】
得られたリングを25℃及び周囲相対湿度(RH)で6ヶ月間貯蔵した後、メタノールでリンスし、次いでHPLC分析にかけて、外面上のステロイドの量を測定する。リング外面上のステロイドの量は、エトノゲストレルが10μg未満、エチニルエストラジオールの量が2μg未満であり、これは、極めて少量であり、貯蔵0時間の場合に匹敵すると考えられる。この実施例は、比較的低い過飽和度のエトノゲストレルを用いてさえ、安定な剤形が得られ得ることを示している。
【0038】
実施例2
75部のエトノゲストレル、16部のエチニルエストラジオール、5部のステアリン酸マグネシウム、及び9,904部のEvatane(登録商標)28−25を混合する。この混合物をEvatane(登録商標)1020 VN3と同時押出して、外径3.5mm、スキン層の厚さ90μmの同軸ファイバーを形成する。該ファイバーを147mmの断片に切断する。次いで、接着剤を用いて各ファイバー片の端部を接着する。
【0039】
得られたリングを25℃/周囲RHで6ヶ月間貯蔵した後、メタノールでリンスし、次いでHPLC分析にかけて、外面上のステロイドの量を測定する。リング外面上のステロイドの量は、エトノゲストレルが10μg未満、エチニルエストラジオールが2μg未満であり、これは、極めて少量であり、貯蔵0時間の場合に匹敵すると考えられる。
【0040】
実施例3
実施例1の手順に従い、表1にリストした特性を有するリング形デバイスを製造した。エトノゲストレルの飽和濃度は、溶解試験を用いて25℃で測定すると0.35%である。溶解試験では、(振とう)インキュベーターを用い、平坦なフィルム(厚さ200μm)を前記活性物質の飽和水溶液で飽和して、コアポリマー〔Evatane(登録商標)28−25〕中の活性物質エトノゲストレル及びエチニルエストラジオールの溶解度を測定する。4週間及び6週間経過後、該フィルムをステロイド含量について分析する。最大飽和に達していることを確実にするために2期間を選択した(最大飽和に達しているということは、4週間目と6週間目の間に有意な差が認められないことから結論し得る)。25℃での値はエトノゲストレルについては約0.35%であり、エチニルエストラジオールについては約1.30%である。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例4
57部のエトノゲストレル、12部のエチニルエストラジオール、5部のステアリン酸マグネシウム、及び9,926部のEvatane(登録商標)28−25を混合する。この混合物をEvatane(登録商標)1020 VN3と共に同時押出して、外径4.0mm、スキン層の厚さ90μmの同軸ファイバーを形成する。該ファイバーを147mmの断片に切断する。該ファイバー片を温度40℃の鋳型に入れ、ファイバーの端部と端部の間に溶融高密度ポリエチレン(HDPE)を注入し、次いで冷却して、ファイバー片の端部を結合する。図2は、スキン層(2)で被覆されたコア体(1)の端部を結合しているHDPE体(3)を示している。
【0043】
実施例5
69部のエトノゲストレル、16部のエチニルエストラジオール、5部のステアリン酸マグネシウム、及び9,910部のEvatane(登録商標)28−25を混合する。この混合物をEvatane(登録商標)1020 VN3と共に同時押出して、外径4.0mm、スキン層の厚さ110μmの同軸ファイバーを形成する。該ファイバーを157mmの断片に切断する。次いで、該ファイバー片の端部を溶融して結合する。
【0044】
対照実施例
500部のエトノゲストレル、500部のエチニルエストラジオール、及び9,000部のEvatane(登録商標)28−25を混合する。この混合物をEvatane(登録商標)1080 VN5と共に同時押出して、2.75mmの外径、種々のスキン層厚さを有する同軸ファイバーを形成する。該ファイバーを室温で貯蔵した後、メタノールでリンスし、次いでHPLC分析にかけて、外面上のステロイドの量を測定する。該ファイバー表面上のステロイドの量を表2に示す。この実施例は、高過飽和度では安定な剤形が得られないことを明らかに示している。
【0045】
【表2】

【符合の説明】
【0046】
1 コア体
2 スキン層
3 別の物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーコアと該コアを被覆する熱可塑性ポリマースキン層とを含んでなる少なくとも1つのコンパートメントを含むドラッグデリバリーシステムであって、前記コアは、黄体ホルモン系ステロイド化合物と発情ホルモン系ステロイド化合物との混合物を、生理的に要求される量の前記黄体ホルモン系化合物と前記発情ホルモン系化合物とを前記ポリマーから直接放出し得る重量比で含み、前記黄体ホルモン系化合物は、初期に比較的低い過飽和度で前記ポリマーコア材料に溶解しており、前記発情ホルモン系化合物は前記黄体ホルモン系化合物より低い濃度で前記ポリマーコア材料に溶解しており、且つ前記熱可塑性スキン層は前記黄体ホルモン系化合物及び発情ホルモン系化合物に対して透過性であることを特徴とする前記ドラッグデリバリーシステム。
【請求項2】
デリバリーシステムが、実質的にリング形態を有し且つ黄体ホルモン系化合物と発情ホルモン系化合物との混合物の膣投与用であることを特徴とする、請求項1に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項3】
少なくともスキン層が、好ましくはスキン層とコア材料とが熱可塑性ポリマーとしてエチレン−ビニルアセテートコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項4】
黄体ホルモン系化合物が、その(25℃での)飽和濃度を得るのに必要な量の約1〜約6倍の重量で熱可塑性コア材料に溶解していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項5】
溶解している量が必要な量の2〜5倍であることを特徴とする、請求項4に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項6】
熱可塑性ポリマーコアと該コアを被覆する熱可塑性ポリマースキン層とを含んでなる少なくとも1つのコンパートメントを含む、実質的にリング状形態を有する膣投与に適したドラッグデリバリーシステムであって、前記コアは、10部:1.5〜5部の重量比の黄体ホルモン系ステロイド化合物と発情ホルモン系ステロイド化合物との混合物を含み、前記黄体ホルモン系化合物は初期に比較的低い過飽和度で前記ポリマーコアに溶解しており、前記ポリマースキン層は黄体ホルモン系化合物及び発情ホルモン系化合物のどちらに対しても透過性であることを特徴とするドラッグデリバリーシステム。
【請求項7】
コア材料として用いられる熱可塑性ポリマーがエチレン−ビニルアセテートコポリマーであり、スキン層材料として用いられる熱可塑性ポリマーがエチレン−ビニルアセテートコポリマーであり、前記コアが、10部:2〜4部の比率の黄体ホルモン系化合物エトノゲストレルと発情ホルモン系化合物エチニルエストラジオールとの混合物を含み、前記コアが、0.3〜1重量%のエトノゲストレル及び約0.05〜約0.3重量%のエチニルエストラジオールを含むことを特徴とする、請求項6に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項8】
エトノゲストレルとエチニルエストラジオールの比率が10部:2〜3部であり、エトノゲストレルの重量%が0.5〜1.0%であることを特徴とする、請求項7に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項9】
スキン層が、40〜300μmの範囲の厚さ及び5〜15%の範囲のビニルアセテート含量を有するエチレン−ビニルアセテートコポリマースキン層であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項10】
スキン層の厚さが80〜150μmであり、ビニルアセテート含量が9〜10%であることを特徴とする、請求項9に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
コア材料が、25〜35%のビニルアセテート含量を有するエチレン−ビニルアセテートコポリマーからなることを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載のドラッグデリバリーシステム。
【請求項12】
コア材料が、0.55〜0.8重量%のエトノゲストレル及び0.12〜0.18重量%のエチニルエストラジオールを含むことを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載のドラッグデリバリーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−256378(P2009−256378A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183379(P2009−183379)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【分割の表示】特願平10−98876の分割
【原出願日】平成10年4月10日(1998.4.10)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】