説明

2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステルおよびその製造

まずヒドロキシル化脂肪酸化合物を部分単独重合させること、該部分単独重合させたヒドロキシル化脂肪酸化合物とアルコールとを反応させて、中間生成物を形成すること、そして該中間生成物を酸、酸無水物またはエステルで末端封止すること、によって2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステルを製造する。2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステルは下記:(3)で表され、式中Rは6から12個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R1は水素またはメチル基であり、xは8〜12の範囲の整数であり、nは1〜20の整数であり、R2は1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そしてR3は1〜12個の炭素原子を含有するアルキル基である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、米国仮特許出願第61/224,532(2009年7月10日出願)、発明の名称“ESTERS OF SECONDARY HYDROXY FATTY ACID OLIGOMERS AND PREPARATION THEREOF” (その教示を、以下で全部再現するように参照により本明細書に組み入れる)の利益を主張する非仮出願である。
【0002】
本発明は、2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマー、特に、12−ヒドロキシステアリン酸系オリゴマーのダブルエステルであって、該ダブルエステルが少なくとも実質的に残留不飽和を有さないものの製造方法、その使用、特に潤滑剤組成物成分としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
天然エステル(たとえばキャノーラ油)および合成エステルは、European Eco−label (European Commission 2005/360/EC)の要件に適合するバイオ潤滑剤を配合するのに使用できる。これらの配合物は所定最小レベルの再生可能炭素原子を配合物中に含有しなければならない。例として、液圧流体は、最小レベルの再生可能炭素、少なくとも50パーセント(>50パーセント)を要求する。
【0004】
合成エステルを含有する配合物は、植物油系製品よりも高い潤滑性能を与えるが、それは顕著により高いコストでのことである。合成エステルは、石油化学原料または再生可能原料に由来できる。例えば、多くの短鎖酸(例えば、ヘキサン酸、オクタン酸およびデカン酸)は、石油化学原料から製造され、合成ポリオールエステルの製造において用いられている。他の酸,例えばオレイン酸は、再生可能原料に由来する。
【0005】
多官能アルコール,例えばネオペンチルグリコール(NPG)、ペンタエリスリトール(PAE)またはトリメチロールプロパン(TMP),特にTMPトリオレエートまたはNPGジオレエートを基にする不飽和脂肪酸(例えばオレイン酸)ポリオールエステルは、現在、European Eco−label基準に適合することが必要なバイオ潤滑剤を配合するためのベース流体として好まれている。このようなポリオールエステルは、高い再生可能炭素量(European Eco−label基準の、またはこれを超える)を有し、低い流動点(−25℃未満(<−25℃))を有する。しかし、これらはまた、高度(例えば、100グラム当たり>10グラムのヨウ素,ASTM D5554)の不飽和(エステルの酸部分におけるオレフィン部位)を有し、これは、潤滑剤を高温(例えば90℃またはこれを超える(≧90℃))設備で使用したときの酸化を招来する。このような設備のために、使用者は、飽和ポリオールエステルをより好むが、このようなエステルは、使用者が、高温特性を犠牲にすることなくより低コストである代替物を所望するのに十分に高価である。
【0006】
高オレフィン植物油(例えば遺伝子組み換えまたは高オレイン酸のキャノーラ油)で構成され、またはこれを含む組成物はまた、高い再生可能炭素量を有するが、幾つかの条件下で酸化的分解を受ける可能性がある。例えば、高レベル(>50パーセント)の植物を配合した潤滑剤は、潤滑剤バルク流体温度が>90℃である高温設備において用いるのには推奨されない。これは、粘度、酸性度または両者および結果として望ましい物理的または化学的な特性,例えば流動点および熱酸化安定性の損失における不所望の変化を招来する可能性がある。
【0007】
「バイオ潤滑剤組成物」としても知られる、再生可能材料を基にする改善された潤滑剤組成物に対する所望が存在する。改善された配合物は、低い流動点(例えば、流動点<―10℃)および許容可能な熱酸化安定性(すなわち、改善された組成物が酸化防止剤を含む場合、これは、American Society for Testing and Materials (ASTM) D2893試験の変法(ここでは試験の変更は、温度の95℃から120℃への変更である)を用いた動粘度変化が20パーセント以下(≦20パーセント)の1つ以上を示すのがよい。改善された組成物はまた、工業用潤滑剤、自動車潤滑剤または両者に対する潤滑および粘度の要求(例えば、40℃での粘度が10センチストークス(cSt)(1×10-5平方メートル毎秒(m2/s))から300cSt(3×10-42/s)、100℃での粘度が4センチストークス(4×10-62/s)から50センチストークス(5×10-52/s)、および粘度指数(VI)>140)に合致するのがよい。改善された組成物は、好ましくは、不飽和分,例えばエストリド中に見出されるもの(これはエストリドの熱酸化安定性に不利に作用する傾向がある)を有さない。
【0008】
「エストリド」は、2つ以上の脂肪酸単位の縮合によって形成されてエステル結合をもたらすオリゴマー脂肪酸である。1つは典型的には、酸触媒によって二重結合にカルボン酸部位を付加することによって縮合を実現する。
【0009】
米国特許(US)第6,018,063号(Isbellら)は、オレイン酸に由来するエストリドのエステルに関する。Isbellらは、エストリドの典型的な合成を、ヒマシ油脂肪酸または12−ヒドロキシステアリン酸の、熱または酸触媒添加の条件下での単独重合を含むものとして記載する。
【0010】
第US6,407,272号(Nelsonら)は、ヒドロキシ酸のエステルを2級アルコールと、有機金属トランスエステル化触媒の存在下で反応させることによる、ヒドロキシ酸の2級アルコールエステル(例えば、2級アルコールのリシノレエートエステル)の製造を教示する。
【0011】
特許協力条約公開(WO)第2008/040864号は、「高くかつ制御された」オリゴマー化レベルおよび低い残留酸指数を有するエストリドエステルの合成方法に関する。該方法は、飽和ヒドロキシ酸の同時オリゴマー化およびヒドロキシ酸のモノアルコールによるエステル化を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
幾つかの側面において、本発明は、2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステルの製造方法であって、
a.スズ含有、チタン含有または窒素含有の触媒を用いてヒドロキシル化脂肪酸化合物を部分単独重合し、形成されたメタノールを、任意に同伴剤、減圧および窒素スパージの1つ以上を用いて除去して、下記式1:
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは6〜12個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R1は水素またはメチル基であり、xは8〜12の範囲の整数であり、そしてnは1〜20の範囲の整数である。)
で表される化合物の分布を有する生成物Xを得ること、
b.任意に、残留メタノールおよび用いる場合には同伴剤から、生成物Xを回収すること、
c.生成物Xを、2〜12個の炭素原子を含有するアルコールと、任意に追加量のスズ含有、チタン含有または窒素含有の触媒を用いて反応させ、そして形成されたメタノールを除去して、下記式2:
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R、xおよびnは上記定義の通りであり、そしてR2は1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基である。)
で表される化合物の分布を有する生成物Yを得ること、
d.任意に、過剰のステップcのアルコールおよび残留メタノールから生成物Yを回収すること、
e.生成物Yを、酸、酸無水物またはエステルと反応させて、下記式3:
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R、xおよびnは上記定義の通りであり、R2は、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そしてR3は、1〜12個の炭素原子を含有するアルキル基である。)
で表される化合物の分布を有する生成物Zを形成すること、ならびに
f.任意に、ステップeにおいて反応物質として添加した過剰の酸、酸無水物またはエステル、およびYと酸、酸無水物またはエステルとの反応中に形成された酸から、生成物Zを回収すること、
を含む方法である。
【0019】
幾つかの側面において、本発明は、上記式(3)で表される2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステルである。該エステルは、好ましくは、流動点 −10℃未満、VI 160またはそれ以上(≧160)、および総酸価<1mgKOH/gの少なくとも1つを有する。幾つかの側面において、該エステルは、ヒドロキシル価(OH♯) 10またはそれ以下(≦10)、好ましくは<8、より好ましくは<5、更により好ましくは<4、および更により好ましくは<3を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記式1、2および3において、Rは6炭素(C6)から12炭素(C12)のアルキル基またはアルキル部位であり、C6部位が好ましく、そしてnは8〜12の範囲の整数であり、10が好ましい。上記式1において、R1は水素原子またはメチル基またはメチル部位である。上記式2および3において、R2はC2〜C20のアルキル基またはアルキル部位であり、C8(2−エチルヘキシル)部位が、式2および3について好ましい。上記式3において、R3はC1〜C12のアルキル基またはアルキル部位であり、C4部位が好ましい。
【0021】
上記プロセスは3ステップを含む。ステップ1では、ヒドロキシル化脂肪酸成分,好ましくは12−ヒドロキシ脂肪酸のメチルエステル、およびより好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸のメチルエステルを、スズ(Sn)系、チタン(Ti)系、または窒素系の触媒を用いてオリゴマー化して、1つより多い繰り返し単位および未反応脂肪酸成分濃度<90質量%(総オリゴマー構造質量基準で)を有するオリゴマーを得る。ステップ1は、酸触媒の使用なしで生じる。ステップ2では、オリゴマーをアルコール(2炭素原子(C2)〜20炭素原子(C20)を有するもの)と、反応(好ましくは定量的に)させる。アルコールは、好ましくは、6炭素原子(C6)〜16炭素原子(C16)を有し、より好ましくは8(C8)炭素原子〜10(C10)炭素原子を有する。例示的なアルコールとしては、2−エチルヘキサノール、2−(2−ブトキシプロポキシ)プロパン−1−オール(DPnB)、1−オクタノールおよび2−オクタノールが挙げられる。ステップ3では、ヒドロキシ官能基が残っている末端を、酸、酸無水物またはエステル,好ましくは下記式4:
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R3は上記定義の通りである。)
の酸無水物と反応させる。例示的な無水物としては、イソ酪酸無水物が挙げられる。
【0024】
オリゴマー未反応脂肪酸成分濃度は、その逆として縮合度を有する。すなわち、未反応脂肪酸成分濃度 <90質量%は、縮合 10質量%超(>10質量%)と等価(未反応脂肪酸成分濃度と縮合とを併せて100質量%としたとき)である。縮合は、VI 160超(>160)および流動点 −10℃未満(<−10℃)を実現するために、好ましくは10質量%〜95質量%、より好ましくは15質量%〜85質量%、および更により好ましくは20質量%〜75質量%である。
【0025】
ステップaは、任意に、しかし好ましくは、同伴剤または化合物(生成物XをC2−C20アルコールと反応させる前にメタノールの除去を容易にするもの)の使用を含む。メタノール除去(ステップaの間)は有利である。これは平衡点よりも上でのオリゴマー化をもたらし、平衡点またはそれ以下で得られるよりも高い粘度を有する生成物を形成できるからである。
【0026】
ステップaは、部分単独重合または縮合に作用するのに十分な温度で、上記した範囲内の、ヒドロキシル化脂肪酸化合物、および反応中に形成されたメタノールの共沸蒸留、用いる場合には同伴剤、で行う。温度は、好ましくは70℃〜220℃の範囲であり、より好ましくは120℃〜210℃の範囲であり、そして更により好ましくは180℃〜200℃の範囲である。
【0027】
ステップcは、1)生成物XとC2−C20アルコールとの反応、および2)反応中に形成されたメタノールを分留によって除去して生成物Yを得ること、に作用するのに十分な温度で行う。温度は、好ましくは70℃〜220℃の範囲であり、より好ましくは120℃〜210℃の範囲であり、そして更により好ましくは180℃〜200℃の範囲である。C2C20アルコールは、好ましくは、Xの1モル当量当たり少なくとも1モル当量のアルコールを与えるのに十分な量で存在する。
【0028】
ステップeは、生成物Yと、酸、酸無水物またはエステルとを反応させて生成物Zを形成するのに作用するのに十分な温度で行う。温度は、好ましくは、80℃〜160℃、より好ましくは100℃〜140℃、および更により好ましくは110℃〜130℃の範囲である。
【0029】
任意のステップbは、ステップaの間に形成された残留メタノール、および用いる場合は同伴剤から生成物Xを除去し、同伴剤は従来の手順,例えば同伴剤,好ましくは7炭素原子(C7)〜10炭素原子(C10)、最も好ましくは9炭素原子(C9)を有する脂肪族化合物との共沸で得る。同伴剤ならびに残留するメタノールおよび同伴剤の除去は、好ましくは、減圧下(例えば、4キロパスカル(kPa))での蒸留によって行う。温度は、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜190℃、および更により好ましくは150℃〜180℃の範囲である。
【0030】
任意のステップdは、過剰のステップcのアルコールおよびステップbからの残留メタノールからの生成物Yの除去を、従来の手順,例えば分留によって行う。ステップdは、好ましくは、減圧下(例えば4kPa)での蒸留を含んで、生成物Yの回収に作用する。温度は、好ましくは、70℃〜350℃、より好ましくは120℃〜250℃、および更により好ましくは150℃〜180℃の範囲である。
【0031】
任意のステップfは、生成物Zを、ステップeにおいて反応物質として添加した過剰の酸、酸無水物もしくはエステル、または生成物Yと酸、酸無水物もしくはエステルとの反応中に形成された酸から回収し、好ましくは1)減圧を用いて揮発性物質を除去すること、2)塩基,例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液で1回以上洗浄すること、3)吸収材料,例えばマグネシウムシリケート、活性化カーボンおよび硫酸マグネシウム(MgSO4)を用いること、そして4)濾過、の1つ以上を含む。
【0032】
アラビア数字およびアルファベット大文字は、それぞれ、発明の実施例(Ex)および比較例(CEx)を示す。
【0033】
実施例1
ステップ1について、1リットル(L)ガラス反応器(温度コントローラー、オーバーヘッド撹拌器、電気ヒーター、およびディーン・スターク装置(減圧/窒素ラインに接続された水凝縮器を備える)に、968.22グラム(g)(3.1モル)のメチル−12−ヒドロキシステアレート(M12HSA)、150グラムのノナンおよび3.25g(0.5モル%)(M12HSAのモル基準)のスズ(II)−2−エチルヘキサノエートを添加して、混合物を形成する。混合物を設定点温度200℃まで加熱し、撹拌しながらその温度を4時間維持し、メタノールをノナンとの共沸蒸留で除去する。総メタノール回収量52g(1.6モル)は、54%の縮合または46パーセントの残留メチルエステル官能性と等価であり、下記式5:
【0034】
【化5】

【0035】
で表される化合物の分布を有する生成物を得る。
【0036】
ステップ2について、残留ノナンを減圧下で除去し、反応器内容物を設定点温度135℃まで冷却する。ビグリュー蒸留カラムを反応器とディーン・スターク装置との間に配置し、次いで、303.56 g (2.3 モル)の2−エチルヘキサノール(2−EH)および3.25g(0.008モル)のスズ(II)ジオクトエートを反応器に添加し、反応器内容物を、撹拌しながら、設定点温度190℃まで6時間加熱する。ステップ2中に形成されたメタノール(36.3 g, 1.13 モル)を反応器内容物から分留によって除去する。
【0037】
ステップ3について、反応器内容物を減圧(50kPa)下で蒸留に供し、分留では除去されなかった残留メタノールおよび過剰の2−エチルヘキサノールを除去して、下記式6:
【0038】
【化6】

【0039】
で表される化合物の分布を有する生成物を得、次いで、反応器内容物を設定点温度130℃まで冷却し、220.5g(1.52モル)のイソ酪酸無水物を反応器に添加し、反応器内容物を2時間撹拌する。過剰のイソ酪酸無水物およびイソ酪酸無水物で減圧下での末端封止中に形成された酸を除去する。減圧を2時間維持し、次いで反応器内容物を設定点温度70℃まで冷却し、100ミリリットル(mL)の0.5モーラー(M)炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の水中溶液を反応器に撹拌しながら添加する。設定点温度を撹拌しながら1時間維持し、次いで水を減圧下で除去する。10gのマグネシウムシリケート、5gの活性化カーボン、および10gの硫酸マグネシウム(MgSO4)を反応器に撹拌しながら添加し、次いで反応器含有物を、80gのマグネシウムシリケートでコートした濾紙を用いて濾過し、下記式7:
【0040】
【化7】

【0041】
で表される化合物の分布を有する最終生成物を得る。
【0042】
下記表1は、メチル−12−ヒドロキシステアレート(M12HSA)、中間生成物(2−エチルヘキサノールとの反応に従い)、および最終生成物(イソ酪酸無水物との反応に従い)の物性情報を纏める。
【0043】
【表1】

【0044】
表1中のデータは、ステップ1が、OH♯の、171ミリグラム水酸化カリウム毎グラム(mgKOH/g)(M12HSAのOH♯)から79.0mgKOH/gの生成物X(上に「M12HSA」とある欄)への低減によって示される、最終生成物における特定分子量(オリゴマー化度または縮合度)を構築できることを示す。ステップ1(上に「M12HSA」とある欄)からステップ3(上に「最終生成物」とある欄)まで進め、粘度および流動点の徐々の低下、更にVIの増大が得られる。ステップ3はまた、3mgKOH/g未満(<3mgKOH/g)のOH♯をもたらし、これは最終生成物が、より高いヒドロキシル部位量,例えば79mgKOH/gと比べて、極めて低いヒドロキシル部位量(これは熱酸化安定性を支持する)を有することの指標である。洗浄ステップは粘度またはVIへの影響を有さないが、これは総酸価(TAN)を顕著に低減する。
【0045】
実施例2
実施例1の再現であるが、M12HSA濃度を43%に低減させる変更がある。ステップ1について、M12HSA量を5449.1gに増大させ、スズ(II)ジオクトエートを0.25モル%に低減させ、温度を190℃まで低減させ、時間を6時間に増大させる。ステップ2について、0.5モル%のスズ(II)−2−エチルヘキサノエートを添加し、時間を62時間に増大させ、ステップ1からの2905.3gの生成物を用い、2−EHの量を1212.3g.に増大させる。ステップ3について、ステップ2からの2702.77gの生成物を用い、イソ酪酸無水物の量を982.2gに増大させ、温度を125℃まで低減する。最終生成物特性を下記表2に纏める。
【0046】
実施例3
実施例2の再現であるが、2−EHを1−オクタノール656gに変更し、スズ(II)エチルヘキサノエートの量を0.25モル%に低減し(ステップ2について)、ステップ2で用いるステップ1生成物の量を1475gに低減し、ステップ2の時間を7時間に変更し、ステップ3でのイソ酪酸無水物の量を390gに低減し、ステップ3で用いるステップ2生成物の量を1668.21gに変更し、ステップ3の温度を120℃に低下させ、そしてステップ3の時間を3時間に増大させる。
【0047】
比較例A
実施例2の再現であるが、ステップ2を行わず、ステップ1からの687.35gの生成物をステップ3で用い、372.58gのメチルデカノエート(C10ME)でイソ酪酸無水物を置き換え、0.25モル%のスズ(II)−2−エチルヘキサノエートの添加をステップ3に動かす。加えて、ステップ3の温度を210℃および時間を22時間に変更する。
【0048】
比較例B
実施例2の再現であるが、ステップ2および3を行わず、920gのM12HSAを用い、M12HSA,濃度を60%に増大させ、ステップ1の条件を210℃で6時間に変更する。
【0049】
実施例4
実施例1の再現であるが、941.4gのM12HSAを使用し、スズ(II)2−エチルヘキサノエートの添加をステップ1とステップ2とに均等に分け、ステップ1での濃度を47%に変更し、493.0gの2−(2−ブトキシプロポキシ)プロパンー1−オール(DPnB)で2−EHを置き換え、ステップ1からの757.39gの生成物をステップ2で用い、ステップ1、2および3のそれぞれの温度と時間との組合せとして、以下を用いる:190℃で3時間、215℃で26時間、および125℃で2時間。
【0050】
実施例5
実施例2の再現であるが、ステップ1のM12HSA濃度を51%に変更し、M12HSAの量を5994.4gに変更し、スズ(II)2−エチルヘキサノエート添加を実施例4のように分け、2387.5gのステップ1生成物および988.9gの2−EHをステップ2で用い、ステップ1、2および3のそれぞれの温度と時間との組合せとして、以下を用いる:190℃で12時間、190℃で35時間、および125℃で2時間。
【0051】
実施例6
実施例5の再現であるが、1654gのステップ1生成物を用い、スズ(II)2−エチルヘキサノエート添加量を0.24モル%に低減し、612gの1−オクタノールで2−EHを置き換える(全てステップ2にて)。ステップ3で、1802.89gのステップ2生成物および415gのイソ酪酸無水物を反応させる。
【0052】
実施例7
実施例2の再現であるが、M12HSAの量を6079.7gに変更し、ステップ1の条件を187℃および15時間に変更し、2−EHの量を2285.9gに変更し、スズ(II)2−エチルヘキサノエート(ステップ2の)を0.25モル%に変更し、5621.7gのステップ1生成物をステップ2で用い、ステップ2の時間を35時間に変更し、そしてイソ酪酸無水物の量を1573.4gに変更する。
【0053】
実施例8
実施例7の再現であるが、315gの無水酢酸でイソ酪酸無水物を置き換え、1682.8gのステップ2からの生成物を、実施例7での4608.5gに代えて用い、ステップ3の温度を120℃に変更する。最終生成物特性を下記表3に纏める。
【0054】
実施例9
実施例7の再現であるが、6061.2gのM12HSA、0.24モル%のスズ(II)2−エチルヘキサノエート、温度190℃、時間4時間を用い、M12HSA濃度を29%に低減する(ステップ1にて)。ステップ2で、662.9gのステップ1からの生成物および413.12gの2−EHを用い、その温度での時間を24時間に低減する。ステップ3で、897.87gのステップ2からの生成物、および382.1gのイソ酪酸無水物を用いる。
【0055】
実施例10
実施例9の再現であるが、4972.84gのM12HSAを用い、ステップ1の時間を285分に変更し、M12HSA濃度を34%に変更する。ステップ2で、688.96gのステップ1生成物、317.6gの2−EHを用い、ステップ2の時間を23時間に変更する。ステップ3で、764.4gのステップ2生成物、235.5gのイソ酪酸無水物を用い、ステップ3の時間を4時間に増大させる。
【0056】
実施例11
実施例9の再現であるが、2677.7gのM12HSAを用い、ステップ1の時間および温度を193℃および435分に変更し、M12HSA濃度を43%に変更する。ステップ2で、658.59gのステップ1生成物、280.5gの2−EHを用い、ステップ2の時間を20時間に変更する。ステップ3で、688.19gのステップ2生成物、208.74gのイソ酪酸無水物を用いる。
【0057】
実施例12
実施例9の再現であるが、945.2gのM12HSAを用い、ステップ1の時間および温度を195℃および900分に変更し、M12HSA濃度を60%に変更する。ステップ2で、887.9gのステップ1生成物、275.65gの2−EHを用い、ステップ2の時間を23時間に変更する。ステップ3で、931.17gのステップ2生成物、274.4gのイソ酪酸無水物を用いる。
【0058】
実施例13
実施例7の再現であるが、5210.3gのM12HSAを用い、ステップ1の時間および温度を200℃および6.5時間に変更し、M12HSA濃度を46%に変更する。ステップ2で、4860.6gのステップ1生成物、2159.8gの2−EHを用い、ステップ2の時間を16時間に、温度を190℃に変更する。ステップ3で、5636.1gのステップ2生成物、1271.3gのイソ酪酸無水物を用い、ステップ3の温度を130℃に変更する。
【0059】
実施例14
実施例13の再現であるが、5239.84gのM12HSAを用い、ステップ1の時間および温度を190℃および16時間に変更し、M12HSA濃度を47%に変更する。ステップ2で、1352.53gのステップ1生成物、619.1gの2−EHを用い、ステップ2の時間を22時間に、温度を190℃に変更する。ステップ3で、1789.0 gのステップ2生成物および495.4gのイソ酪酸無水物を用いる。
【0060】
実施例15
実施例14の再現であるが、902.53gのM12HSAを用い、ステップ1の時間および温度を200℃および22時間に変更し、M12HSA濃度を70%に変更する。ステップ2で、758.62gのステップ1生成物、184.65gの2−EHを用い、ステップ2の時間を16時間に変更する。ステップ3で、841.41gのステップ2生成物、168.59gのイソ酪酸無水物を用い、ステップ4でNaHCO3洗浄を70℃で2時間行う。
【0061】
実施例16
実施例15の再現であるが、5064gのM12HSAを用い、ステップ1の時間および温度を190℃および10時間に変更し、M12HSA濃度を44%に変更する。ステップ2で、4741.71gのステップ1生成物、2147.6gの2−EHを用い、ステップ2の時間を22時間に変更する。ステップ3で、5467.21gのステップ2生成物および1517.1gのイソ酪酸無水物を用いる。ステップ4の温度を65℃で2時間に変更する。最終生成物特性を下記表4に纏める。
【0062】
実施例17
実施例16の再現であるが、5036gのM12HSAを用い、ステップ1の時間を9時間に変更し、M12HSA濃度を47%に変更する。ステップ2で、4710.88gのステップ1生成物、1693.5gの2−EHを用い、ステップ2の時間を19時間に変更する。ステップ3で、50292.07gのステップ2生成物および1693.5gのイソ酪酸無水物を用い、温度を120℃に変更する。
【0063】
比較例C
実施例17の再現であるが、縮合を行わず、ステップ1および2を効果的に組合せて706gのM12HSAと296gの2−EHとを190℃で6時間反応させる。ステップ3で、348gのイソ酪酸無水物を866.3gの組合せステップ1および2からの生成物と反応させる。
【0064】
実施例18
実施例1の再現であるが、M12HSAの量を943.45gに変更し、ステップ1での濃度を54%に変更する。ステップ2で、825.48gのステップ1からの生成物を用い、364 gの2−オクタノールで2−EHを置き換え、ステップ2の時間および温度を20時間で200℃に変更する。ステップ3で、ステップ2からの全生成物および220.25gのイソ酪酸無水物を用いる。
【0065】
比較例D
実施例18の再現であるが、縮合を行わず、ステップ1および2を効果的に組合せて593.8 gのM12HSAと449.7 gの2−オクタノールとを185℃で17時間反応させる。ステップ3で、188.13 gのイソ酪酸無水物を712.58 gの組合せステップ1および2からの生成物と、温度135℃で反応させる。
【0066】
実施例19
実施例18の再現であるが、M12HSAの量を956.72 gに変更し、ステップ1での縮合を72%に変更する。ステップ2で、821.92 gのステップ1からの生成物を用い、250gの1−オクタノールで2−EHを置き換え、ステップ2の時間を16時間に変更する。ステップ3で、946.9 gのステップ2からの生成物および若干過剰のイソ酪酸無水物を用いる。
【0067】
実施例20
実施例19の再現であるが、M12HSAの量を971 gに変更し、ステップ1での縮合を53%に変更する。ステップ2で、836 gのステップ1からの生成物および364.1 gの1−オクタノールを用い、ステップ2の時間を20時間に変更する。ステップ3で、903.2 gのステップ2からの生成物および220.4gのイソ酪酸無水物を用いる。
【0068】
比較例E
実施例18の再現であるが、縮合を行わず、ステップ1および2を効果的に組合せて393.3gのM12HSAと329.5gの1−オクタノールとを195℃で17時間反応させる。ステップ3で、188.13 gのイソ酪酸無水物と443.48 gの組合せステップ1および2からの生成物とを温度130℃で反応させる。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
データは、ステップ2でのアルコールの選択は最終生成物特性の差異をもたらすことを示唆する。例えば、実施例2(2−エチルヘキサノール)および実施例4(DPnB)と実施例3(1−オクタノール)との比較は、流動点の顕著な増大を示す。実施例18(2−オクタノール)もまた、ステップ2を他の例よりも少ない量で実施することが(2級アルコールの反応性が1級アルコールよりも少ないことの結果として)、最終生成物特性にどのように作用するかを示す。目視比較について以下で再現する、実施例18および実施例2の最終生成物についてのゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)図を参照のこと。ここで実施例18は未反応メチルエステル成分の実施例2よりも高いレベルの分布を有する。
【0073】
実施例2、比較例Bおよび実施例13(これらの全てが、2−エチルヘキサノールを用いる)の比較は、不完全な末端封止(ステップ3)が最終生成物OH♯>3をもたらすことを示す。これはより高い粘度およびより低いVI値に関係すると考えられる。
【0074】
実施例2、比較例Aおよび実施例8は、最終生成物特性に対する末端封止剤の影響を示す。例えば、粘度の小さい差異のみが、イソ酪酸無水物(実施例2)と無水酢酸(実施例8)との間のスイッチをもたらす。比較例A(これはC10MEを末端封止剤として用いる)は、実施例2または実施例8のいずれよりも顕著に高い粘度を示す。これは末端封止がステップ3の時間の22時間の後であっても不完全であることの指標である。
【0075】
実施例2、実施例5、実施例7〜12、実施例14〜17および実施例19は、ステップ1でM12HSAのオリゴマー化または縮合の程度を変える効果を示す。これらの例は、比較例Cのようなオリゴマー化なしで得ることができるよりも高い粘度、高いVI値および低い流動点を有する最終生成物を示すと考えられる。
【0076】
実施例2、実施例6、比較例C、比較例D、実施例20および比較例Eの間での最終生成物特性の比較は、生成物特性が、ステップ1でのある量の縮合を有する3ステッププロセス(実施例2、実施例6および実施例20)と、縮合を有さない2ステッププロセス(比較例C、比較例Dおよび比較例E)との間でどのように変わるかを示す。例えば、実施例2、実施例6および実施例20については、比較例C、比較例Dおよび比較例Eについてよりも、流動点温度が低く、40℃および100℃での粘度が高い。比較例C、比較例Dおよび比較例Eはまた、実施例2、実施例6および実施例20よりも低い粘度を有する傾向がある。
【0077】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステルを製造する方法であって、
a.スズ含有、チタン含有または窒素含有の触媒を用いてヒドロキシル化脂肪酸化合物を部分単独重合し、形成されたメタノールを、任意に同伴剤、減圧および窒素スパージの1つ以上を用いて除去して、下記式1:
【化1】

(式中、Rは6〜12個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R1は水素またはメチル基であり、xは8〜12の範囲の整数であり、そしてnは1〜20の範囲の整数である。)
で表される化合物の分布を有する生成物Xを得ること、
b.任意に、残留メタノールおよび用いる場合には同伴剤から、生成物Xを回収すること、
c.生成物Xを、2〜12個の炭素原子を含有するアルコールと、任意に追加量のスズ含有、チタン含有または窒素含有の触媒を用いて反応させ、そして形成されたメタノールを除去して、下記式2:
【化2】

(式中、R、xおよびnは上記定義の通りであり、そしてR2は1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基である。)
で表される分布を有する生成物Yを得ること、
d.任意に、過剰のステップcのアルコールおよび残留メタノールから生成物Yを回収すること、
e.生成物Yを、酸、酸無水物またはエステルと反応させて、下記式3:
【化3】

(式中、R、xおよびnは上記定義の通りであり、R2は、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そしてR3は、1〜12個の炭素原子を含有するアルキル基である。)
で表される化合物の分布を有する生成物Zを形成すること、ならびに
f.任意に、ステップeにおいて反応物質として添加した過剰の酸、酸無水物またはエステル、およびYと酸、酸無水物またはエステルとの反応中に形成された酸から、生成物Zを回収すること、
を含む、方法。
【請求項2】
触媒がスズ触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa.が、ヒドロキシル化脂肪酸化合物の少なくとも10質量%であるが95質量%以下の単独重合に作用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アルコールが、ステップc.において、Xの1モル当量当たり少なくとも1モル当量のアルコールを与えるのに十分な量で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
生成物Yがステップe.において酸無水物と反応する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシル化脂肪酸化合物がメチル12−ヒドロキシステアレートである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップcにおけるアルコールが、2−エチルヘキサノール、1−オクタノールおよび2−オクタノールから選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
下記式3:
【化4】

(式中、Rは6〜12個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R1は水素またはメチル基であり、xは8〜12の範囲の整数であり、nは1〜20の範囲の整数であり、R2は1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そしてR3は1〜12個の炭素原子を含有するアルキル基である。)
で表される、2級ヒドロキシ脂肪酸オリゴマーのエステル。
【請求項9】
エステルが、流動点−10℃未満、粘度指数160またはそれ以上、ヒドロキシル数8未満、および総酸価1mgKOH/g未満、の少なくとも1つを有する、請求項8に記載のエステル。

【公表番号】特表2012−532956(P2012−532956A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519588(P2012−519588)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040703
【国際公開番号】WO2011/005635
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】