説明

2軸ヒンジ並びにこの2軸ヒンジを備えた電子機器

【課題】コストダウンを図った上で、必要な強度を確保して小型化を図ることができる2軸ヒンジ並びに電子機器を提供する。
【解決手段】第1筐体に取り付けられる一対のベース部材と、これら各ベース部材の軸支片部間に回転可能に軸支されたところの切削加工で形成した第1ヒンジシャフトと、この第1ヒンジシャフトに直交状態で回転可能に取り付けた第2ヒンジシャフトと、この第2ヒンジシャフトに固定され第2筐体に取り付けられる支持部材と、ベース部材の少なくとも一方の軸支片部と第1ヒンジシャフトとの間に設けられ、第1ヒンジシャフトの回転を制御する第1回転制御手段と、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトとの間に設けられ、当該第2ヒンジシャフトの回転を制御する第2回転制御手段と、で2軸ヒンジを構成し、またこの2軸ヒンジを電子機器に用いることで解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラ、デジタルカメラなどのカメラ機器、携帯電話機、PDA、ザウルス(登録商標)などの携帯機器、ノート型パソコン、カーナビゲーション装置等の小型の電子機器における機器本体とディスプレイ装置とを互いに2方向へ回動可能に連結する2軸ヒンジ並びにコの2軸ヒンジを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルカメラなどのカメラ機器、携帯電話機、PDA、ザウルス(登録商標)などの携帯機器、ノート型パソコン、カーナビゲーション装置等の小型の電子機器では、機器本体にディスプレイ装置が2軸ヒンジを介して2方向へ回動可能に取り付けられているものが公知である。この2軸ヒンジとしては、ディスプレイ装置を機器本体に対して第1ヒンジシャフトを介して相対方向に起伏回動させて開閉操作を行うことができると共に、ディスプレイ装置を機器本体に対して第1ヒンジシャフトを軸に90°まで開いたとき、ディスプレイ装置を機器本体に対して相対的に第1ヒンジシャフトと直交する方向に延びる第2ヒンジシャフトの軸回りに回転させることができる2軸ヒンジが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されている2軸ヒンジは、その部材名を本願発明と共通する部材名を本願発明に係る部材名に直して説明すると、第1筐体2側に所定間隔を設けて取り付けられる一対の軸受片部を有するベース部と、上片部とこの上片部の両端部より折り曲げた一対の取付片部を有し、一方の取付片部を一方の軸受片部に起伏回動軸部を介して起伏回転可能に取り付け、他方の取付片部に筒状ケースを取り付け、この筒状ケースをベース部の軸受片部に第1ヒンジシャフトを介して起伏回転可能に取り付けたブラケット部と、このブラケット部の平面部に水平方向へ第2ヒンジシャフトを介して回転可能に取り付けられると共に第2筐体側を支持する支持部材と、この支持部材に取り付けた第2ヒンジシャフトの回転角度を規制するストッパー片と、ベース部材の軸受片部と筒状ケースとの間に設けた支持部材の回転制御手段とで構成されている。この回転制御手段は、第1ヒンジシャフトを挿通させて軸受片部に固定された固定カム部材と、第1ヒンジシャフトを挿通させて筒状ケースに固定され、固定カム部材と対向させた回転カム部材と、第1ヒンジシャフトに環巻きさせて回転カム部材と筒状ケースとの間に弾設された弾性手段とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-220198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている2軸ヒンジは、第1ヒンジシャフトのほかにブラケット部を有する上に、ブラケット部の上へん部の下面側に取り付けたストッパー片を有するなどして、部品点数が多く、構造が複雑であるため制作コストが高くつくという問題がある上に、強度的にも難点があった。
【0006】
本発明の目的は、部品点数を少なくしてコストダウンを図った上で、必要な強度を確保して小型化を図ることができる2軸ヒンジ並びにこの2軸ヒンジを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の目的を達成するための本発明に係る2軸ヒンジは、取付片部とこの取付片部より折り曲げた軸支片部とを有し、電子機器を構成する第1筐体と第2筐体のいずれか一方の筐体に対し前記取付片部を所定間隔を設けて取り付けられる一対のベース部材と、これら各ベース部材の前記軸支片部間に回転可能に軸支されたところの切削加工で形成した第1ヒンジシャフトと、この第1ヒンジシャフトの略中央部に直交状態で回転可能に取り付けた第2ヒンジシャフトと、この第2ヒンジシャフトに固定され前記第1筐体と第2筐体のいずれか他方に取り付けられる支持部材と、前記ベース部材の少なくとも一方の軸支片部と前記第1ヒンジシャフトとの間に設けられ、前記第1ヒンジシャフトの端部に取り付けられたところの当該第1ヒンジシャフトの回転角度により前記ベース部材の取付片部に当接する第1ストッパー部材を有し、当該第1ヒンジシャフトの回転を制御する第1回転制御手段と、前記第1ヒンジシャフトと前記第2ヒンジシャフトとの間に設けられ、前記第2ヒンジシャフトの端部に取り付けられたところの第2ストッパー部材を有し、当該第2ヒンジシャフトの回転を制御する第2回転制御手段と、で構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記第1回転制御手段を、前記第1ヒンジシャフトの端部に設けられたところの当該第1ヒンジシャフトの回転角度により前記ベース部材の取付片部に当接する第1ストッパー部材と、前記軸支片部に係合させて取り付けたところのその軸芯部軸方向に設けた軸支孔へ前記第1ヒンジシャフトを回転可能に軸挿させた固定カム部材と、この固定カム部材に当接した状態で前記第1ヒンジシャフトをその軸芯部軸方向に設けた変形挿通孔へ前記第1ヒンジシャフトの変形小径部を係合挿通させて軸方向へスライド可能に設けた回転カム部材と、前記第1ヒンジシャフトに環巻きされ前記回転カム部材を前記固定カム部材側へ押圧する弾性手段と、で構成することができる。
【0009】
本発明はさらに、前記第2回転制御手段を、前記第1ヒンジシャフトに設けた係合用凹部内に位置し、前記第2ヒンジシャフトの端部に取り付けられたところの第2ストッパー部材と、その軸芯部軸方向に設けた挿通孔ヘ前記第2ヒンジシャフトを挿通させ、前記第1ヒンジシャフトに前記係合用凹部に続いて設けた固定用凹部内に収容固定された板バネとで構成することができる。
【0010】
本発明はさらに、前記第2回転制御手段の前記第2ストッパー部材と前記板バネとの間に吸い込み手段を設けることができる。
【0011】
本発明はさらに、前記ベース部材の取付片部を、前記軸支片部より折り曲げて形成させた第1取付片部と第2取付片部とで構成することができる。
【0012】
本発明はさらに、前記第2ストッパー部材を、そのストッパー部を前記第2ヒンジシャフトに設けた係合用凹部の端面に設けた当接面に当接するように構成することができる。
【0013】
そして、本発明の電子機器は、前記本発明に係る2軸ヒンジを第1筐体と第2筐体の開閉用ヒンジとして用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明に係る2軸ヒンジ並びにこの2軸ヒンジを備えた電子機器によれば、第1筐体側へ取り付けるベース部材に対して支持部材を開閉可能に軸支させる構成として、第1ヒンジシャフトのみを用い、しかもこの第1ヒンジシャフトを金属性の丸棒を切削加工することにより形成させたので、製造コストを下げ、小型化できた上で、十分な強度を維持できるという効果を奏し得る。
【0015】
また、第1ヒンジシャフトに取り付けた第1ストッパー部材を、第1筐体へ取り付けるベース部材の取付片部へ当接させる構成としたので、小型化させても2軸ヒンジの強度の向上を図ることができたものである。
【0016】
さらに、第1筐体側へ取り付けるベース部材の取付片部を軸支片部から折り曲げて形成させた第1取付片部と第2取付片部とで構成したので、取付強度を増大させることができたものである。
【0017】
そして、第2ストッパー部材のストッパー部を係合用凹部の端面に形成させた当接面に当接させるようにしたので、構成を簡単にできた上で、強度を増大できるという効果を奏し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る2軸ヒンジを用いた電子機器の一例であるビデオカメラの斜視図である。
【図2】本発明に係る2軸ヒンジの正面図である。
【図3】本発明に係る2軸ヒンジの平面図である。
【図4】本発明に係る2軸ヒンジの分解斜視図である。
【図5】本発明に係る2軸ヒンジの一部分解斜視図である。
【図6】本発明に係る2軸ヒンジの動作を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係る2軸ヒンジの動作を説明する斜視図である。
【図8】本発明に係る2軸ヒンジの動作を説明する斜視図である。
【図9】本発明に係る2軸ヒンジの第1ヒンジシャフトを示し、(a)は一方の側から見た斜視図であり、(b)は他方の側から見た斜視図である。
【図10】本発明に係る2軸ヒンジの固定カム部材を示し、(a)は一方の側から見た斜視図であり、(b)は他方の側から見た斜視図である。
【図11】本発明に係る2軸ヒンジの回転カム部材を示し、(a)は一方の側から見た斜視図であり、(b)は他方の側から見た斜視図である。
【図12】本発明に係る2軸ヒンジの第2ストッパー部材を示し、(a)は平面図、(b)斜視図である。
【図13】本発明に係る2軸ヒンジの板バネの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る2軸ヒンジ並びにこの2軸ヒンジを用いた電子機器を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1は本発明を実施した電子機器の一例としてのビデオカメラを示し、矢印Aで示した1点鎖線で囲われた部分にビデオカメラ1の機器本体2に対しディスプレイ部3が開閉可能、かつ回転可能に図示してない本発明に係る2軸ヒンジを介して取り付けられている。以下の説明では、便宜上、機器本体2を第1筐体2とし、ディスプレイ部3を第2筐体3として説明する。
【0021】
図2〜図13は本発明に係る2軸ヒンジ4の一例を示す図である。尚、図2乃至図6は、本発明に係る2軸ヒンジ4を図1に示したビデオカメラ1への取付方向とは異なった方向から図示してあるが、実施例のものは指示記号5、6で示したベース部材が第1筐体2の側へ取り付けられ、指示記号9で示した支持部材が第2筐体3の側へ取り付けられる構成である。
【0022】
本発明に係る2軸ヒンジ4は、それぞれ第1取付片部5a、6aと、この第1取付片部5a、6aより折曲げて形成した軸支片部5b、6bと、この軸支片部5b、6bより折り曲げて形成させた第2取付片部5c、6cとを有し、第1筐体2側に第1取付片部5a、6aと第2取付片部5c、6cを所定間隔を設けて取り付けられる一対のベース部材5、6と、このベース部材5、6の各軸支片部5b、6b間に回転可能に軸支されたところの、例えばステンレス鋼などの金属性の丸棒を切削加工で形成した第1ヒンジシャフト7と、この第1ヒンジシャフト7の略中央部に直交状態で回転可能に取り付けられた第2ヒンジシャフト8と、この第2ヒンジシャフト8に固定され第2筐体3側に取り付けられる支持部材9と、ベース部材5の軸支片部5bと第1ヒンジシャフト7の間に設けられ、第1ヒンジシャフト7の両端部に取り付けられたところの当該第1ヒンジシャフト7の回転角度により前記ベース部材5と6の第1取付片部5a、6aに当接する第1ストッパー部材10、10を有し、当該第1ヒンジシャフト7の回転を制御する第1回転制御手段11と、第1ヒンジシャフト7と第2ヒンジシャフト8の間に設けられ、第1ヒンジシャフト7に設けた係合用凹部7c内に位置し、第2ヒンジシャフト8の端部に取り付けられたところの第2ストッパー部材12を有し、当該第2ヒンジシャフト8の回転を制御する第2回転制御手段13と、で構成されている。
【0023】
電子機器としては、実施例に挙げたビデオカメラ1に限定されず、デジタルカメラなどのカメラ機器、及び携帯電話機、PDA、ザウルス(登録商標)などの携帯機器、ノート型パソコン、カーナビゲーション装置等の小型の電子機器等が挙げられる。第1筐体2には、例えば、ベース部材5、6の第1取付片部5a、6aと第2取付片部5c、6cが取り付けられると共に、第2筐体3には、支持部材9が取り付けられる構成であるが、第1筐体2に支持部材9を取り付け、第2筐体3にベース部材5、6を取り付けてもよい。
【0024】
ベース部材5、6は、それぞれ第1筐体2側に取り付けられる略矩形平板状の第1取付片部5a、6aと、この第1取付片部5a、6aから折り曲げた軸支片部5b、6bと、この軸支片部5b、6bから折り曲げられた第2取付片部5c、6cからなり、例えばステンレス製の金属プレートをプレス加工することにより形成されている。軸支片部5bには後述する固定カム部材14を固定させる略鍵穴形状の変形取付孔5dが設けられ、軸支片部6bのほうには第1ヒンジシャフト7の端部を回転可能に軸支する軸支孔6dが設けられている。これらベース部材5、6は、ベース部材5の第1取付片部5aと第2取付片部5cに設けた取付孔5f、5gと、ベース部材6の第1取付片部6aと第2取付片部6cに設けた取付孔6f、6gを介して、図示してない取付ビスで図1に示した第1筐体2の側に所定間隔を設けて取り付けられるものである。もっともこのベース部材5、6はこれらを第2筐体3側へ取り付ける実施例のあることは上述した。
【0025】
尚、ベース部材5、6に軸支片部5b、6bより折り曲げて形成させた第1取付片部5a、6aと第2取付片部5c、6cを設けると、これらの第1取付片部5a、6aと第2取付片部5c、6cを第1筐体2側へ取り付けることにより、軸支片部5b、6bの取り付け強度が増大するが、ベース部材5、6の材厚を厚くすることにより、第1取付片部5a、6aか第2取付片部5c、6cの一方を省略することは可能である。したがって、本願明細書と特許請求の範囲で、単に取付片部といった場合には、第1取付片部か第2取付片部の一方或は双方が含まれるものである。
【0026】
次に、第1ヒンジシャフト7は、とくに図9に示したように、その大径部7dと、この大径部7dの軸方向の一側面側に設けた平坦部7eと、この平坦部7eに位置し、第1ヒンジシャフト7全体の略中央部に当該平坦部7eと直交する方向に設けた第2ヒンジシャフト8の取付孔7aと、この取付孔7aの一側部側に設けられた後述する板バネ15の固定用凹部7bと、この固定用凹部7bに続いて設けられた当該固定用凹部7bより若干幅広の第2ストッパー部材12の係合用凹部7cと、大径部7dに続いてその軸方向のベース部材5側に設けられた円形中径部7fと、この円形中径部7fに続いて設けられた断面略楕円形状の第1変形小径部7gと、この第1変形小径部7gに続いて設けられた断面略矩形状の第2変形小径部7hと、第1ヒンジシャフト7の軸方向のベース部材6側に設けた円形小径部7iと、この円形小径部7iに続いて設けられた第3変形小径部7kとを有している。第1ヒンジシャフト7の第1変形小径部7gは、とくに図2乃至図4に示したように、ベース部材5の軸支片部5bに設けた変形取付孔5dへ嵌入固定させた後述する固定カム部材14に設けた軸支孔14aへ回転可能に挿入軸支させると共に、第1ヒンジシャフト7のベース部材6側に設けた円形小径部7iをベース部材6の第1取付片部6aに設けた軸支孔6dへ回転可能に挿入軸支させることにより、この第1ヒンジシャフト7はベース部材5とベース部材6に回転可能に軸支されている。そして、第1ヒンジシャフト7の第2変形小径部7hと第3変形小径部7kがベース部材5とベース部材6の各軸支片部5b、6bを貫通した側には、それぞれ第1ストッパー部材10、10がその変形挿通孔10a、10aを挿通係合させており、それぞれの露出端部をかしめることによって第1ヒンジシャフト7に回転規制されて取り付けられている。
【0027】
第2ヒンジシャフト8は、とくに図4に示したように、第1ヒンジシャフト7側に位置して大径部8aに続いて円形中径部8bが設けられ、この円形中径部8bに続いて円形小径部8cが設けられ、さらにこの円形小径部8cに続いて変形小径部8dが設けられている、さらに支持部材9側には、大径部8aに続いて変形大径部8eが設けられている。そして、円形中径部8bを第1ヒンジシャフト7の取付孔7aへ挿通させ回転可能に軸着させると共に、円形小径部8cを固定用凹部7bに嵌入固定させた板バネ15の円形挿通孔15aへ回動可能に挿通させ、さらに変形小径部8dを係合用凹部7cに内に収容させた第1ストッパー部材10の変形挿通孔10aを通してその露出端をかしめることにより、当該第1ストッパー部材10を第2ヒンジシャフト8と共に回転可能となるように固定させている。そして、この第2ヒンジシャフト8の変形大径部8eは支持部材9の略中央部に取り付けられる構成である。
【0028】
支持部材9は、帯状を呈した板状のもので、その略中央部に変形取付孔9aを設け、その両側部側に取付孔9b、9bを設け、さらにこの取付孔9b、9bの内側にそれぞれボス部9c、9cを設けたものであり、変形取付孔9aへ第2ヒンジシャフト8の変形大径部8eを挿入させ、その露出端をかしめることによって第2ヒンジシャフト8へ共に回転するように取り付けられている。そして、この支持部材9は、取付孔9b、9bを介して図示してない取付ビスにより図1に示した第2筐体3へ取り付けられるものである。最も、この支持部材9は第1筐体2側へ取り付ける実施例も考えられることは上述した。
【0029】
第1回転制御手段11は、第1ヒンジシャフト7の両端部に取り付けられたところの当該第1ヒンジシャフト7の回転角度により各ベース部材5、6の第1取付片部5a、6aに当接する第1ストッパー部材10、10と、軸支片部5bに係合させて取り付けたところのその軸芯部軸方向に設けた軸支孔14aへ第1ヒンジシャフト7を回転可能に軸挿させた固定カム部材14と、この固定カム部材14に当接した状態で第1ヒンジシャフト7をその軸芯部軸方向に設けた変形挿通孔16aへ第1ヒンジシャフト7の第1変形小径部7gを係合挿通させて軸方向へスライド可能に設けた回転カム部材16と、第1ヒンジシャフト7の円形中径部7fに環巻きされ、回転カム部材16を前記固定カム部材14側へ押圧する例えば圧縮コイルスプリングから成る弾性手段17とで構成されている。
【0030】
第1ストッパー部材10、10は変形挿通孔10a、10aとその外周部に設けた突出部10b、10bとを有し、第1ヒンジシャフト7が所定回転角度回転した時にベース部材5と6の第1取付片部5a、6aと当接して第1ヒンジシャフト7の回転角度を規制するようになっている。尚、図中指示記号10c、10cで示した部分は識別マークである。固定カム部材14はその一端部側にベース部材5の軸支片部5bに設けた変形取付孔5dと固定孔5eへ挿入させる第1固定部14bと第2固定部14cを有し、他端部側に互いに軸方向へ対向設置した凸部18a、18aと、この凸部18a、18aの両側に設けた第1凹部18b、18b及び第2凹部18c、18cとから成る第1カム部18が設けられている。回転カム部材16は固定カム部材14の第1カム部18と対抗する側に同じく凸部19a、19aと凹部19b、19bからなる第2カム部19が設けられている。弾性手段17は、好ましくは圧縮コイルスプリングであり、第1ヒンジシャフト7の円形中径部7fと大径部7dとの間に設けられたフランジ部7mと回転カム部材16との間に弾設されている。
【0031】
第2回転制御手段13は、前記第1ヒンジシャフト7に設けたストッパー部Cとストッパー部Dを有する係合用凹部7c内に位置し、前記第2ヒンジシャフト8の端部に取り付けられたところの第2ストッパー部材12と、その軸芯部軸方向に設けた円形挿通孔15aへ前記第2ヒンジシャフト8を挿通させ、第1ヒンジシャフト7に前記係合用凹部7cに続いて設けた固定用凹部7b内に収容固定された板バネ15とで構成されている。板バネ15は、とくに図13に示したように、一方向へ湾曲させた板状のもので、その第2ストッパー部材12側には円形挿通孔15aを挟んで隆起部15bが設けられている。第2ストッパー部材12は、図12に示したように、その中心部軸方向に設けた変形取付孔12aと、その外周に突設させた当接面Aと当接面Bを有する突出部12bを有すると共に、変形取付孔12aを挟んで係合凹部12c、12cが設けられている。
【0032】
そして、変形取付孔12aに第2ヒンジシャフト8の変形小径部8dを挿通させてその露出端部を所定のかしめトルクでかしめることにより、板バネ15を押圧変形させ、第2ヒンジシャフト8に所定の回転トルクが発生すると共に、第2ヒンジシャフト8の回転角度により板バネ15の隆起部15bへ第2ストッパー部材12の係合凹部12cが落ち込むことにより、第2ヒンジシャフト8の自動的に回転させる吸い込み機能を生じさせる吸い込み手段20が設けられている。
【0033】
尚、固定カム部材14に設ける第1カム部18と、回転カム部材16に設ける第2カム部19は、それぞれ逆にして設けることは可能である。さらに、板バネ15の隆起部15bと第2ストッパー部材12の係合凹部12cは、それぞれ逆に設けてもよい。
【0034】
次に本発明に係る2軸ヒンジ4及びこの2軸ヒンジ4を用いたビデオカメラ1の作用を説明する。
【0035】
ビデオカメラ1の機器本体を構成する第1筐体2とディスプレイ部を構成する第2筐体3とが互いに重なり合った閉成状態では、図2及び図3と図6にそれぞれに示したように、第1ヒンジシャフト7の第1回転制御手段11の各第1ストッパー部材10、10は、ベース部材5、6の各第1取付片部5a、6aに当接していず、回転カム部材16の第2カム部19の凸部19a、19aは、固定カム部材14の第1カム部18のそれぞれ第1凹部18b、18bと圧接状態にある。
【0036】
また、この閉成状態において、板バネ15に設けた隆起部15bと第2ストッパー部材12に設けた係合凹部12cとは嵌合状態にあって、第2筐体3が第1筐体2に対して自然に回転しないようになっている。さらに、第2回転制御手段13の第2ストッパー部材12の当接面Aと当接面Bは、とくに図2に示したように、係合用凹部7cのストッパー部Cとストッパー部Dのどちらにも当接していない。
【0037】
この閉成状態から、ビデオカメラ1の機器本体である第1筐体2に対してディスプレイ部である第2筐体3を外側へ開くと、支持部材9と共に第2ヒンジシャフト8が第1ヒンジシャフト7と共に回転し、第2筐体3は第1筐体2に対して第1ヒンジシャフト7を支点にして外方向へ向けて開かれる。この際に、第1回転制御手段11の回転カム部材16は、最初はその第2カム部19の凸部19a、19aを固定カム部材14の第1カム部18の第1凹部18b、18bから凸部18a、18aへ移動する際の抵抗に遭遇するが、所定開成角度を超えると回転カム部材16の第2カム部19の凸部19a、19aが固定カム部材14の第1カム部18の凸部18a、18aを超えて第2凹部18c、18c側へ落ち込むので、第2筐体3は第1筐体2に対して自動的に開かれる。
【0038】
開かれた第2筐体3は開成角度が90°になると、第1回転制御手段11の第1ストッパー部材10、10がベース部材5、6の各第1取付片部5a、6aに当接するので、図1に示したように、第2筐体3は第1筐体2に対して90°の開成角度で停止させられる。
【0039】
次に、90°開かれた第2筐体3は第1筐体2に対して閉じることにより元位置に戻すことができるものであり、この際には、最初は第1回転制御手段11の回転カム部材16の第2カム部19の凸部19a、19aは、固定カム部材14の第1カム部18の第2凹部18c、18cから凸部18a、18aへ移動する際の抵抗に遭遇するが、所定閉成角度を超えると回転カム部材16の第2カム部19の凸部19a、19aが固定カム部材14の第1カム部18の凸部18a、18aを超えて第1凹部18b、18b側へ落ち込むので、第2筐体3は第1筐体2に対して自動的に閉じられて元位置に戻る。
【0040】
次に、第2筐体3の第1筐体2に対する90°の開成角度から、第2筐体3を左右いずれかの方向へ回転させると、当該第2筐体3は第2ヒンジシャフト8を支点に回転することができ、左方向へ回転させたときには、図2に示したように、第2ストッパー部材12の当接面Aが係合用凹部7cのストッパー部Cに当接するまで回転し、その回転角度は最大90°となる。次に、右方向へ回転させた場合には、当接面Bが係合用凹部7cのストッパー部Dに当接するまで回転させることができ、その左方向の回転角度は180°となる。
【0041】
また、本発明に係る2軸ヒンジ4は吸い込み手段20を有し、この吸い込み手段20により、第2筐体3を第1筐体2に対して第2ヒンジシャフト8を支点に左右いずれかの方向へ回転させたときは、元位置に戻る際に第2ストッパー部材12の係合凹部12cが板バネ15に設けた隆起部15bに落ち込み、所謂吸い込み動作が発生するものである。
【0042】
本発明に係る2軸ヒンジ4は、また、第2筐体3を180°回転させた状態でも第1筐体2に対して閉じることができ、この場合には、第2筐体3のディスプレイ画面が外側を向いた状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上詳細に説明したように、本発明に係る2軸ヒンジは、以上のように構成したので、ビデオカメラに限定されず、機器本体を構成する第1筐体とディスプレイ部を構成する第2筐体とを有するデジタルカメラなどのカメラ機器、及び携帯電話機、PDA、ザウルス(登録商標)などの携帯機器、ノート型パソコン、カーナビゲーション装置等の小型の電子機器等な開閉装置として広く用いられるものである。
【符号の説明】
【0044】
A 当接面
B 当接面
C ストッパー部
D ストッパー部
1 ビデオカメラ
2 第1筐体(機器本体)
3 第2筐体(ディスプレイ部)
4 2軸ヒンジ
5 ベース部材
5a 第1取付片部
5b 軸支片部
5c 第2取付片部
6 ベース部材
6a 第1取付片部
6b 軸支片部
6c 第2取付片部
6d 軸支孔
7 第1ヒンジシャフト
7b 固定用凹部
7c 係合用凹部
7g 第1変形小径部
8 第2ヒンジシャフト
9 支持部材
10 第1ストッパー部材
10a 変形挿通孔
11 第1回転制御手段
12 第2ストッパー部材
13 第2回転制御手段
14 固定カム部材
14a 軸支孔
15 板バネ
15a 円形挿通孔
16 回転カム部材
16a 変形挿通孔
17 弾性手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付片部とこの取付片部より折り曲げた軸支片部とを有し、電子機器を構成する第1筐体と第2筐体のいずれか一方の筐体に対し前記取付片部を所定間隔を設けて取り付けられる一対のベース部材と、これら各ベース部材の前記軸支片部間に回転可能に軸支されたところの切削加工で形成した第1ヒンジシャフトと、この第1ヒンジシャフトの略中央部に直交状態で回転可能に取り付けた第2ヒンジシャフトと、この第2ヒンジシャフトに固定され前記第1筐体と第2筐体のいずれか他方に取り付けられる支持部材と、前記ベース部材の少なくとも一方の軸支片部と前記第1ヒンジシャフトとの間に設けられ、前記第1ヒンジシャフトの端部に取り付けられた当該第1ヒンジシャフトの回転角度により前記ベース部材の取付片部に当接する第1ストッパー部材を有するところの当該第1ヒンジシャフトの回転を制御する第1回転制御手段と、前記第1ヒンジシャフトと前記第2ヒンジシャフトとの間に設けられ、前記第2ヒンジシャフトの端部に取り付けられた第2ストッパー部材を有するところの当該第2ヒンジシャフトの回転を制御する第2回転制御手段と、で構成したことを特徴とする、2軸ヒンジ。
【請求項2】
前記第1回転制御手段は、前記第1ヒンジシャフトの端部に設けられたところの当該第1ヒンジシャフトの回転角度により前記ベース部材の取付片部に当接する第1ストッパー部材と、前記軸支片部に係合させて取り付けたところのその軸芯部軸方向に設けた軸支孔へ前記第1ヒンジシャフトを回転可能に軸挿させた固定カム部材と、この固定カム部材に当接した状態で前記第1ヒンジシャフトをその軸芯部軸方向に設けた変形挿通孔へ前記第1ヒンジシャフトの変形小径部を係合挿通させて軸方向へスライド可能に設けた回転カム部材と、前記第1ヒンジシャフトに環巻きされ前記回転カム部材を前記固定カム部材側へ押圧する弾性手段と、で構成したことを特徴とする、請求項1に記載の2軸ヒンジ。
【請求項3】
前記第2回転制御手段は、前記第1ヒンジシャフトに設けた係合用凹部内に位置すると共に、前記第2ヒンジシャフトの端部に取り付けられたところの第2ストッパー部材と、その軸芯部軸方向に設けた円形挿通孔ヘ前記第2ヒンジシャフトを挿通させ、前記第1ヒンジシャフトに前記係合用凹部に続いて設けた固定用凹部内に収容固定された板バネとで構成したことを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載の、2軸ヒンジ。
【請求項4】
前記第2回転制御手段はさらに、前記第2ストッパー部材と前記板バネとの間に吸い込み手段を設けたことを特徴とする、請求項3に記載の2軸ヒンジ。
【請求項5】
前記ベース部材の取付片部は、前記軸支片部より折り曲げて形成させた第1取付片部と第2取付片部とで構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の2軸ヒンジ。
【請求項6】
前記第2ストッパー部材は、そのストッパー部を前記第2ヒンジシャフトに設けた係合用凹部の端面に設けた当接面に当接するように構成したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2軸ヒンジ。
【請求項7】
前記請求項1〜5に記載の2軸ヒンジを用いたことを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−113375(P2013−113375A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260100(P2011−260100)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】