説明

2軸延伸フィルム

【課題】高湿度下でも優れた酸素バリア性を示し、かつ成形加工性の良い2軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】エチレンビニルアルコール共重合体99〜55質量%と160℃における降温半結晶化時間が20秒以上である半芳香族ポリアミド1〜45質量%とからなるポリアミド樹脂組成物からなる層を有する2軸延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸延伸フィルムに関し、詳しくは高湿度下でのバリア性に優れる2軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、飲料、食品、化学品などの包装材として、金属缶、ガラス瓶、あるいは熱可塑性樹脂からなる容器や成形体などが使用されている。中でも熱可塑性樹脂からなる容器や成形体はその軽量性、成形性、ヒートシールなどの包装生産性、コストの面で優越しており、最も大量に使用されている。しかしながら、一般に熱可塑性樹脂からなる容器や成型体は、包装材として優れているが、容器壁を通しての酸素透過が無視し得ないオーダーで生じ、内容物の保存性の点で課題が残っている。
【0003】
容器外からの酸素透過を防止するために、熱可塑性樹脂の容器や成形体では、容器壁を多層構造とし、そのうちの少なくとも1層として、ポリメタキシリレンアジパミド(以下「N−MXD6」という)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」という)、ポリアクリロニトリル等のガスバリア樹脂やアルミ箔等を酸素バリア性の層として設けることが行われている。しかしながら、N−MXD6や塩化ビニリデンを積層したフィルムは保存される条件によらずガスバリア性が比較的良好であるものの、十分なガスバリア性を発揮するには至っていない。さらに、塩化ビニリデンは、燃焼させた際にダイオキシンが発生し、環境を汚染する問題がある。EVOHやポリビニルアルコールは前述のような環境汚染の問題はないものの、これらをバリア層とした多層フィルムは、比較的湿度の低い環境下で保存された場合は優れたガスバリア性を発揮するものの、保存される内容物が水分活性の高いものであったり、高湿度の環境下で保存されたり、さらに内容物を充填後にいわゆるボイル処理やレトルト処理などの加熱殺菌処理を施すとガスバリア性は大幅に低下する傾向にあり、内容物への酸素透過量が多くなり内容物の保存性に問題が生じる問題があった。
【0004】
また、これらのガスバリア性樹脂は、2軸延伸加工を施すことが従来から行われている。N−MXD6と、ナイロン6(以下、「N−6」という)とからなる多層2軸延伸フィルムが、従来からパウチなどのフィルム包装容器で用いられているものの、保存環境や内容物によっては、十分なバリア性を発揮できるには至っていない。また、塩化ビニリデンは,他樹脂にコーティングして用いられているが、延伸するとクラック等が生じるため、十分な性能を発揮できるには至っていない。また、EVOHは、結晶化速度が速いために、延伸フィルム製造時に、フィルムが均一に延伸されずに延伸斑が生じる、フィルム破断が多発するといった問題があり、EVOH単層フィルムでの延伸フィルムの製造は困難であった。かかる問題を解決するため、特定の密度を有するEVOHの未延伸フィルムを含水率3.5重量%以下に調節して50〜130℃で延伸する方法(特許文献1)や押出機とTダイとの間に熱交換機を設けて、温度制御をする方法(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−26697号公報
【特許文献2】特開平11−254523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のいずれの方法による場合でも、EVOH単層での延伸フィルムでは、依然、延伸時にフィルム破断が発生して安定的な製造が困難であったり、延伸フィルムの膜厚精度が劣ったり、所望する物性が得られないことがある。さらに、EVOHの弱点である高湿度下でのバリア性の悪化は依然解決できない。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたものであり、その課題は、2軸延伸加工が容易であり、低湿度条件のみならず、高湿度下でも優れた酸素バリア性を発揮する2軸延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の2軸延伸フィルムを提供する。
すなわち、エチレンビニルアルコール共重合体99〜55質量%と160℃における降温半結晶化時間が20秒以上である半芳香族ポリアミド1〜45質量%とからなるポリアミド樹脂組成物からなる層を有する2軸延伸フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、低湿度条件のみならず、高湿度下でも優れた酸素バリア性を示し、かつ成形加工性の良い2軸延伸フィルムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明で使用する原料樹脂であるEVOHについて説明する。本発明においては、エチレン含有量が通常10〜60モル%、好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは25〜55モル%であり、酢酸ビニル成分のケン化度が通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上のEVOHが使用される。
EVOHのエチレン含有量が10モル%以上であれば、得られるフィルムの耐水性は良好なものとなる。また、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上であれば、得られるフィルムの耐水性は良好なものとなる。
【0011】
特に、EVOHに含まれるNaとK金属含有量の和が0.01〜30ppmの範囲であるEVOHが好適に使用される。より好ましくは上記の金属含有量の和が0.1〜10ppmである。
EVOH中の上記金属含有量の和が0.01ppm以上であれば、押出加工時に着色(黄変)が低く抑えられる。また、該金属含有量が30ppm以下であれば、ゲルの発生頻度を低く抑えられるので、それに起因する延伸時のフィルム破断の発生が抑制される。
またNa,K以外の金属含有量は特に制限されないが、5〜300ppmのCa及び/又は5〜200ppmのMgの含有は、ゲルの発生抑制の効果を奏するために好ましい。
【0012】
本発明で使用するEVOHは、必要に応じて種々変性されていてもよく、また、変性EVOHと未変性EVOHの混合物でもよい。上記の変性EVOHとしては、例えば、プロピレン、イソブテン等による変性EVOH、炭素数3〜30のα−オレフィンの少なくとも1種または当該オレフィンの少なくとも1種のエチレンによる変性EVOH、アクリル酸エステルのグラフト重合による変性EVOH、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、シアノエチル基によりEVOHの水酸基を変性した変性EVOH、ポリエステルとビニルアルコールとを解重合反応とて得られるポリエステルグラフト物を含有する変性EVOH、酢酸ビニル−エチレン−ケイ素含有オレフィン性不飽和単量体の共重合体をケン化して得られる変性EVOH、ピロリドン環含有単量体−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、アクリルアミド−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、酢酸アリル−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、酢酸イソプロペニル−エチレン−酢酸ビニルから成る3元共重合体をケン化して得られる変性EVOH、EVOHの末端にポリエーテル成分を付加してなる変性EVOH、ポリエーテル成分がEVOHの枝ポリマーとしてグラフト状に付加している変性EVOH、アルキレンオキサイドがEVOHに付加した変性EVOHなどの各種の変性EVOHが挙げられる。
【0013】
また、本発明で使用するEVOHは、上記以外のα−オレフィン、不飽和カルボン酸またはその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニ
トリル、アミド、無水物、不飽和スルホン酸またはその塩などのコモノマーを含んでいても差支えない。
【0014】
次に、本発明で使用する半芳香族ポリアミドについて説明する。
本願における半芳香族ポリアミドとは、芳香環を有する構成単位と有さない構成単位からなるポリアミドであり、下記式(I)で表される芳香族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、下記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミド(以下、ポリアミド(A)と呼ぶことがある)、または下記一般式(III)で表される脂肪族ジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と下記一般式(IV)で表される芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド(以下、ポリアミド(B)と呼ぶことがある)が好ましく、両者の組み合わせでも良い。さらに本発明で用いる半芳香族ポリアミドは、本発明の効果を損なわない範囲で、前記のジアミン単位、及びジカルボン酸単位、以外の構成単位をさらに含んでいてもよい。ここで、ジアミン単位とはジアミンに由来する構成単位を指し、ジカルボン酸単位とはジカルボン酸に由来する構成単位を指す。
【化1】

[前記一般式(II)中、nは2〜18の整数を表す。前記、一般式(III)中、Rは脂肪族又は脂環族の2価の基を表わす。また、前記一般式(IV)中、Arはアリーレン基を表す。]
【0015】
本発明で用いる半芳香族ポリアミドにおいて、前記ジアミン単位及び前記ジカルボン酸単位の含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、前記ジカルボン酸単位の含有量(全構成単位に対するモル%)が前記ジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。
【0016】
(ジアミン単位(I))
まず、半芳香族ポリアミド(A)について説明する。
本発明で用いる半芳香族ポリアミド(A)中のジアミン単位は、優れたガスバリア性を付与することに加え、透明性や色調の向上や、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点から、前記式(I)で表される芳香族ジアミン単位をジアミン単位中に70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0017】
前記式(I)で表される芳香族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明で用いる半芳香族ポリアミド(A)中のジアミン単位は、優れたガスバリア性を発現させることに加え、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点から、メタキシリレンジアミン単位をジアミン単位中に70モル%以上含むことが好ましく、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0019】
前記式(I)で表される芳香族ジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
(ジカルボン酸単位)
半芳香族ポリアミド(A)中のジカルボン酸単位は、適度な結晶性を付与することに加え、包装材料として必要な柔軟性を付与する観点から、前記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0021】
前記一般式(II)中、nは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。前記一般式(II)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
半芳香族ポリアミド(A)中のジカルボン酸単位は、優れたガスバリア性に加え、包装材料の加熱殺菌後の耐熱性を保持する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、ジカルボン酸単位中に合計で70モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。本発明のポリアミド樹脂中のジカルボン酸単位は、ガスバリア性の発現及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点からはアジピン酸単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上含むことが好ましい。また、ジカルボン酸の種類は用途に応じて適宜決定され、適度なガスバリア性付与と成形加工適性付与との観点からはセバシン酸単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上含むことが好ましく、低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いる場合は1,12−ドデカンジカルボン酸単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上含むことが好ましい。
【0023】
本発明の半芳香族ポリアミドである半芳香族ポリアミド(A)においては、一般式(II)以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物として、ガスバリア性の更なる付与及び包装材料の成形加工性を容易にする観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸単位中に30モル%を超えない範囲で含んでもよく、3〜20モル%の範囲が好ましい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(ジアミン単位(III))
次に、半芳香族ポリアミド(B)について説明する。
本発明で用いる半芳香族ポリアミド(B)中のジアミン単位は、適度な柔軟性付与と適度な結晶性付与の観点から、前記式(III)で表される脂肪族ジアミン単位をジアミン単位中に70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0025】
前記一般式(III)中、Rは脂肪族または脂環族の2価の基を表わし、2価の基の炭素数は2〜18、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは6〜12である。前記一般式(III)で表される脂肪族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の側鎖を有する脂肪族ジアミン、及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明で用いる半芳香族ポリアミド(B)中のジアミン単位は、柔軟性付与の観点から、半芳香族ポリアミド(B)中のジアミン単位として、ヘキサメチレンジアミン単位をジアミン単位中に70モル%以上含むことが好ましく、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0027】
(ジカルボン酸単位(IV))
次に、半芳香族ポリアミド(B)中のジカルボン酸単位は、ガスバリア性の更なる付与及び包装材料の成形加工性を容易にする観点から、前記式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸単位をジカルボン酸単位中に70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0028】
前記一般式(IV)中、Arはアリーレン基を表す。
前記アリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記一般式(IV)で表される芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びそれらのエステル形成性誘導体等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
前記一般式(IV)で表される芳香族ジカルボン酸単位は、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を前記芳香族ジカルボン酸単位中に合計で70モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、重合がし易いという観点から、イソフタル酸、又はイソフタル酸およびテレフタル酸を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0030】
前記一般式(IV)で表される芳香族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜16、より好ましくは炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2−メチルコハク酸、イタコン酸、グルタコン酸等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等が挙げられる。
【0031】
(ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外の構成単位)
前記ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外の構成単位を構成しうる化合物としては、3価以上の多価カルボン酸、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0032】
(ポリアミドの結晶性)
本発明で用いる半芳香族ポリアミド樹脂は、脱偏光強度法により測定される160℃での降温半結晶化時間が20秒以上であることが好ましい。該ポリアミドの降温半結晶化時間が20秒以上であることを採用するのは、20秒未満であると、結晶化速度が速すぎるため、2軸延伸の際に延伸ムラや延伸破断が生じるためである。また概して、降温半結晶化時間が長い、すなわち結晶化速度の遅いポリアミドは、融点が低く、EVOHの融点と近くなるため、溶融混合時に熱履歴を低く抑えることができるため、成形性やゲル化を抑制するといった観点からも好ましい。
ここで、降温半結晶化時間は、脱偏光強度法によってポリアミドからなるペレットもしくはフィルムを260℃の熱風環境で3分間溶融した後、160℃のオイルバスにて結晶化させて、結晶化が1/2進行するまでの時間を表し、半結晶化時間が短いほどその材料は結晶化速度が速いといえる。また、160℃で結晶化させる理由としては、前記ポリアミド樹脂組成物の結晶化速度が最も速い温度であり、測定が簡便であるためである。
【0033】
本発明で用いられる半芳香族ポリアミドとして、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6IT)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)等が挙げられるが、より好ましくはポリメタキリシレンアジパミド、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド、及びポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマーが挙げられる。
【0034】
(ポリアミドの製造方法)
本発明で用いるポリアミドは、前記ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分とを重縮合することで製造することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。
また、前記ジアミン単位及び前記ジカルボン酸単位の含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、前記ジカルボン酸単位の含有量が前記ジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。前記ジカルボン酸単位の含有量が前記ジアミン単位の含有量の±2モル%の範囲を超えると、ポリマーの重合度が上がりにくくなるため重合度を上げるのに多くの時間を要し、熱劣化が生じやすくなる。
【0035】
本発明で用いるポリアミドの重縮合方法としては、一般的に知られている加圧法や常圧滴下法など、いずれの方法も利用可能である。その一例として、リン原子含有化合物を添加して溶融重縮合(溶融重合)法により製造されることが挙げられる。溶融重縮合法としては、例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がある。また、ジアミン成分を、溶融混合状態のジカルボン酸成分に直接加えて、重縮合する方法によっても製造できる。この場合、反応系を固化させることなく均一な液状状態に保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミド樹脂の融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0036】
本発明で用いるポリアミドの重縮合系内に添加されるリン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられ、これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
【0037】
本発明で用いるポリアミドの重縮合系内に添加されるリン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で0.1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppmであり、さらに好ましくは5〜400ppmである。
【0038】
また、本発明で用いるポリアミドの重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド樹脂の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド樹脂のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
【0039】
溶融重縮合で得られた本発明で用いるポリアミドは、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミドの固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0040】
本発明で用いるポリアミドの重合度については、相対粘度が一般的に使われるものである。本発明のポリアミドを主成分とする構造体を形成する場合、好ましい相対粘度は、成形品の外観や成形加工性の観点から、好ましく1.5〜4.2であり、より好ましくは1.7〜4.0、さらに好ましくは2.0〜3.8である。但し、本発明のポリアミドを他の熱可塑性樹脂の添加剤や改質剤等に使用する場合、この範囲に限定されない。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
【0041】
(添加剤)
本発明において、本発明の2軸延伸フィルムに要求される性能に応じて、ポリアミド樹脂組成物中に滑剤、結晶化核剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。更に、耐衝撃性改善等の様々な物性を付与するために、エラストマー等の熱可塑性樹脂を混合してもよい。
【0042】
EVOHと半芳香族ポリアミドからなるポリアミド樹脂組成物は、原料であるEVOHと半芳香族ポリアミドをドライブレンドしたものを直接押出機に投入して溶融混合したり、事前に押出機にてEVOHと半芳香族ポリアミドとをブレンドした樹脂組成物ペレットを作製して得られるが、これらに限られるものではない。
【0043】
本発明の2軸延伸フィルムを構成するポリアミド樹脂組成物中のEVOHと半芳香族ポリアミドの混合割合は、EVOHが99〜55質量%に対して、半芳香族ポリアミドが1〜45質量%の範囲が好ましい。より好ましくは、EVOHが95〜60質量%に対して、半芳香族ポリアミドが5〜40質量%の範囲が好ましく、特に好ましくはEVOHが90〜70質量%に対して、半芳香族ポリアミドが10〜30質量%の範囲である。ポリアミド樹脂組成物中のEVOHの割合が55質量%未満であると2軸延伸するのは容易になるものの、低湿度条件(23℃、60%RH以下)での酸素バリア性は悪化する。
【0044】
(酸素吸収性能付与)
本発明において、160℃における降温半結晶化時間が20秒以上である半芳香族ポリアミドとEVOHとからなるポリアミド樹脂組成物に、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を、重縮合反応開始前、反応中、又は押出成形時に化合物又は錯体として添加することで、酸素吸収性能を付与することができる。また、不飽和二重結合を持ったポリブタジエンなどのジエン系化合物などを添加して酸素吸収性能を付与することも可能である。
【0045】
本発明において、前記金属原子をポリアミド樹脂組成物中に添加、混合するには金属原子を含有する化合物(以下、金属触媒化合物と称する)を用いることが好ましい。金属触媒化合物は前記金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。
無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。中でも、酸素吸収機能が良好であることから、前記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体が好ましい。
上記金属触媒化合物は、一種以上を添加することができるが、金属原子としてコバルトを含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。
【0046】
ポリアミド樹脂組成物に添加される前記金属原子の濃度は特に制限はないが、ポリアミド樹脂100質量部に対して1〜1000ppmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜700ppmである。金属原子の添加量が1ppm以上であれば、本発明のポリアミド樹脂組成物のガスバリア効果に加え、酸素吸収機能が十分に発現し、包装材料の酸素バリア性の向上効果が得られる。ポリアミド樹脂に金属触媒化合物を添加する方法は特に限定されず、任意の方法で添加することができる。
【0047】
(2軸延伸フィルムの製造方法)
本発明の延伸フィルムの製造方法について説明する。本発明でいう延伸フィルムの延伸方法として単層または多層のTダイ、環状ダイより作成した延伸用原反をロール延伸法、テンター法、インフレ法(ダブルバブル法を含む)等で延伸する方法があり、同時2軸延伸で延伸することが好ましい。また、延伸は少なくとも1方向に面積延伸倍率で4〜80倍に延伸されるがこの延伸倍率は用途により必要な熱収縮率において適宜選択すれば良い。また、必要に応じ、ヒートセット処理、コロナ処理、プラズマ処理等公知の表面処理をしても良い。
まず、原料のEVOHと半芳香族ポリアミドから、実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造する。なお、EVOHフィルムと半芳香族ポリアミドからなるポリアミド樹脂組成物の該未延伸フィルムの厚みは、フィルムの用途や延伸倍率に応じて適宜選択されるが、通常は60〜1000μmの範囲である。
【0048】
なお、押出成形機とTダイとの間には必要に応じて、流量や圧力の調整、異物除去などのためのディスク型やポール型などのフィルターを設置してもよい。さらに、温度保持のためのサーモジナイザーや温度調節のための熱交換器等を設置してもよい。
【0049】
キャスティングロールにおける成形には、静電ピニング法、エアナイフ法、真空チャンバー法などが適用される。そして、Tダイから溶融押出しされたポリアミド樹脂組成物は、通常60℃以下、好ましくは40℃以下の温度に保たれたキャスティングロール上に密着されて急冷され未延伸フィルムとなる。
【0050】
上記の未延伸フィルムは、引き続き縦延伸工程に供されるが、それに先立ち、延伸性向上のため、40℃以上の温水浴槽などに浸漬することにより当該未延伸フィルムの含水率を調整してもよい。
【0051】
次に、未延伸フィルムの2軸延伸について説明する。本発明においては、ロール式延伸機により50〜70℃の温度範囲で且つ2.5〜4.0倍の延伸倍率の条件下に未延伸フィルムを縦方向に延伸して1軸延伸フィルムを得、次いで、テンター式横延伸機により60〜120℃の温度範囲で且つ2.5〜5.0倍の延伸倍率の条件下に上記の1軸延伸フィルムを横方向に延伸して2軸延伸フィルムを得、更に、110℃を下限とし180℃で上記の2軸延伸フィルムを熱固定する方法が好ましく適用される。
【0052】
上記のロール式延伸機は、温調制御および速度制御可能な複数本のロール及び複数本のニップロールから構成され、低速ロールと高速ロールの線速度を一段または多段で変更することにより、フィルムの縦延伸倍率を種々変更することが出来る。
【0053】
上記の縦延伸において、延伸温度は50℃〜70℃の間の温度に設定するのか好ましい。延伸温度(フィルム温度)が50℃以上であれば、延伸応力によるフィルムの破断を抑制することができる。また、延伸温度が70℃以下であれば、フィルムが延伸ロールに粘着することなく、また適度な結晶化が進むため、フィルムの成形加工がしやすくなる。
また、上記の縦延伸において、延伸倍率は2.5倍〜4.0倍に延伸するのが好ましい。延伸倍率が2,5倍以上であればフィルムに所望の配向を賦与することができる。また延伸倍率が4.0倍以下であれば、フィルムを破断することなくフィルム成形がしやすい。
なお、フィルムの加熱は、ロール式縦延伸機のロールによって行うのがよい。
【0054】
上記のテンター式横延伸機は、例えば、実公昭46−19426号公報、特公昭55−30977号公報、特公昭56−32089号公報、特公昭56−36853号公報などに記載され、当業者において周知であり、横延伸倍率は、フィルム幅方向両端部が把持されたテンター間の間隔を調整することにより、種々変更することが出来る。
【0055】
上記の横延伸において、延伸温度は60℃〜120℃の間の温度に設定するのか好ましい。
延伸温度が60℃以上であれば、延伸応力によるフィルムの破断を抑制することができる。また延伸温度が120℃以下であれば、フィルムに所望の配向を賦与することができ、機械的強度に優れ、且つ厚み精度の良いフィルムが得られる。
また、上記の横延伸において、延伸倍率は2.5倍〜5.0倍に延伸するのが好ましい。延伸倍率が2.5倍以上の場合は、フィルムに所望の配向を賦与することができる。また、延伸倍率が5.0倍以下であれば、成形時のフィルムの破断を抑制できる。
なお、フィルムの加熱は、熱風オーブン、加熱ヒーター式オーブン又は両者の併用などの何れの方式で行ってもよい。
【0056】
上記の熱固定は、2軸延伸されたフィルムの寸法安定性を向上させるために行われる。熱固定温度は110℃〜180℃で行われるのが好ましい。
熱固定温度が110℃以上であれば、十分にフィルムを熱固定できる。また、熱固定温度が180℃以下であれば、フィルムの白化や、またフィルムが軟化しすぎて穴が発生しフィルムが破断する等のトラブルを抑制できる。熱固定は、フィルムの緊張状態または弛緩状態、更には、両者を組み合わせた状態の何れの状態で行ってもよい。なお、弛緩率は10%以下が好ましい。また、フィルムの加熱は、横延伸の場合と同様に行うことが出来る。
【0057】
前記の縦延伸工程で得られた1軸延伸フィルムの横延伸工程への移送時間(横延伸開始位置までの移送時間)は、極力短くするのが好ましく、例えば5秒以内とするのが好ましい。かかる短時間の移送により、縦延伸に伴う配向や結晶化の進行を抑制して横延伸時における懸念されるフィルム破断が効果的に防止される。また、横延伸工程は、縦延伸工程よりも高い延伸温度で行われるため、上記の移送の間に必要な温度にまでフィルムを予熱するのが好ましい。
【0058】
(多層フィルムに用いる熱可塑性樹脂)
本発明の2軸延伸フィルムは、そのまま、すなわち単層フィルムとして使用する他、当該フィルムを少なくとも一層とする多層フィルムとして使用される。かかる多層体は、共押出にて、上記方法にて多層の2軸延伸フィルムとする他、本発明の単層もしくは多層の2軸延伸フィルムの片面または両面に他の樹脂(フィルム又はシート)を、ラミネートすることにより得られる。
【0059】
上記のラミネート方法としては、例えば、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物などの公知の接着剤を使用し、本発明の2軸延伸フィルムと他の熱可塑性樹脂からなる基材とをラミネートする方法などが挙げられる。
【0060】
また、上記の熱可塑性樹脂からなる基材(フィルム又はシート)としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、EVOH(EVOH2層以上)等が挙げられる。更には、紙、金属箔、織布、不織布、金属綿条、木質面なども使用可能である。
【0061】
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−α ,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−α ,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α ,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分又は完全鹸化物等のその他のエチレン共重合体; これらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0062】
前記ポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上と、グリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とから成るポリエステル、ヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るポリエステル、又は環状エステルから成るものをいう。
【0063】
前記ポリエステルを構成するジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ) エタン−p ,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸などに例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
【0064】
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合しても良い。
【0065】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4 ,3’,4 ’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0066】
前記ポリエステルを構成するグリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4 ’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ) ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA 、ビスフェノールC 、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0067】
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0068】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0069】
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが例示される。
【0070】
本発明で用いられるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0071】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル% 以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0072】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0073】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル% 以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル% 以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル% 以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
【0074】
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
【0075】
本発明に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0076】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0077】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル% 以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト単位を70モル% 以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0078】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。このポリグリコール酸には、ラクチド等などの他成分を共重合しても構わない。
【0079】
特にポリエステル全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせは透明性と成形性を両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換)反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでも良いことは言うまでも無い。
【0080】
本発明のポリアミド樹脂組成物からなる2軸延伸フィルムと積層して使用するポリアミドは、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミドなどが挙げられ、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位を共重合してもよい。
【0081】
前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸としては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が使用できる。
【0082】
前記脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体が使用できる。さらに、脂環族のジアミンであってもよい。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0083】
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0084】
また、前記芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0085】
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
【0086】
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミドBAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
【0087】
また、前記ポリアミドの共重合成分として、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。具体的な例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0088】
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0089】
前記ポリアミドは、基本的には従来公知の、水共存下での溶融重縮合法、あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドを更に固相重合する方法などによって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0090】
これらの熱可塑性樹脂と併用しうるゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)ゴム、ポリ(スチレン−ブタジエン)ゴム、ポリ(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム、アクリルゴム、ポリアミド系エラストマー等を例示することができる。
【0091】
積層体の層構成としては、本発明の単層もしくは多層の2軸延伸フィルムの層をA(A1,A2,・・・)、他の熱可塑性樹脂からなる基材をB(B1,B2,・・・)で表した場合、A/Bの二層構造のみならず、B/A/B、A/B/A、A1/A2/B、A/B1/B2、B2/B1/A/B1/B2など任意の組合せが可能である。
【0092】
本発明の二軸延伸フィルム及び積層してなるフィルムは、さらに、薄膜をコーティングすることも可能である。
上記のコーティング物質としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独または共重合体、これらのオレフィンの単独または共重合体の不飽和カルボン酸またはそのエステルによるグラフト変性ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、EVOHなどが挙げられ、更には、金属、ケイ素などに代表される無機物なども使用可能である。コーティング方法としては、コーティング物質の溶液を塗布乾燥する方法の他、蒸着方法などが適宜選択して適用される。なお、コーティングは、ラミネートの前後のいずれに実施しても構わない。
【0093】
本発明の2軸延伸フィルムは、各種包装材料、工業用材料などの酸素バリア性を要求されるあらゆる用途に利用できる。包装材料としては、フィルム状、またはシート状の成形体に加工することができ、さらに包装容器としてはボトル、トレイ、カップ、チューブ、平袋やスタンディングパウチ等の各種パウチ等の少なくとも一部を構成する材料として使用することができる。なお、本発明のポリアミド樹脂組成物を利用してなる包装材料または包装容器において、該2軸延伸フィルムを利用してなる層の厚みは、特に制限はないが、1μm以上の厚みを有するように層を形成することが好ましい。
【0094】
本発明の2軸延伸フィルムからなる包装容器には、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料、ゼリー、プリン等に代表される高水分食品、乾燥野菜、コーヒー豆、コーヒー粉、お茶、穀物を原料としたお菓子等に代表される低水分食品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤、半導体等の電子デバイス等、種々の物品を収納することができる。特に、熱水充填、ボイル殺菌やレトルト殺菌等を必要とする飲料や食品等を充填する包装容器に好適である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお本発明における評価のための測定は以下の方法によった。
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度
ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。そして、これらのtおよびt0から下記式(2)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 (2)

【0096】
(2)ポリアミド樹脂組成物の降温半結晶化時間
半結晶化時間測定装置((株)コタキ製作所製、商品名:MK701)を用い、脱偏光強度法によって100μmのポリアミド樹脂組成物のフィルムを5枚重ねたものを260℃の熱風環境で3分間溶融した後、160℃のオイルバスにて結晶化させたときの結晶化が1/2進行するまでの時間を半結晶化時間として表した。
【0097】
(3)2軸延伸フィルムの酸素透過係数
ASTM D3985に準じた酸素透過率測定装置(Mocon社製、型式:OX−TRAN 2/21SH)を使用して100μmフィルムの23℃、90%RHにおける酸素透過率、及び23℃、60%RHにおける酸素透過率を測定し、各測定条件における酸素透過係数(cc・mm/(m・day・atm))に換算した。数値が低いほど酸素の透過量が少なく好ましい。
【0098】
実施例1
【0099】
(未延伸フィルム作製)
EVOH(クラレ株式会社製 エバール F101B:エチレン含有量:32%、酢酸ビニル成分のケン化度:99.8%)とN−MXD6(三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン固相重合品 S6007、相対粘度:2.65)のペレットを95対5質量%の割合でドライブレンドしたもの25mmφ単軸押出機により、押出温度250℃、スクリュー回転数60rpm、引き取り速度1.2m/minで製膜し、幅200mm、厚み150μmの単層未延伸フィルムを作製した。
【0100】
(2軸延伸フィルム作製)
この未延伸フィルムを(株)東洋精機製作所製の二軸延伸装置(テンター法)を用いて、延伸温度105℃ でMD方向に3倍、TD方向に3倍延伸し、160℃で30秒熱固定し、厚み約17μmの2軸延伸フィルムを得た。
【0101】
実施例2
EVOHとN−MXD6との割合を90対10質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0102】
実施例3
EVOHとN−MXD6との割合を80対20質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0103】
実施例4
EVOHとN−MXD6との割合を70対30質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0104】
実施例5
N−MXD6を溶融重合品である#6003(三菱ガス化学株式会社製、相対粘度:2.2)に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0105】
実施例6
N−MXD6をイソフタル酸6mol%共重合したN−MXD6(相対粘度:2.65)に変更し、未延伸フィルムの成形温度を245℃にしたこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0106】
実施例7
ステアリン酸コバルトをコバルト含有量がポリアミド樹脂組成物に対して5ppmとなるように添加したこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0107】
実施例8
ステアリン酸コバルトをコバルト含有量がポリアミド樹脂組成物に対して200ppmとなるように添加したこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0108】
実施例9
EVOHとN−MXD6との割合を60対40質量%に変更したこと以外は、実施例8と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0109】
実施例10
ステアリン酸コバルトをコバルト含有量がポリアミド樹脂組成物に対して800ppmとなるように添加したこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0110】
実施例11
半芳香族ポリアミドをN−6IT(三菱化学株式会社製 ノバミッドX21)に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。なお、ポリアミドの半結晶時間は、1000秒以上と非常に長いため、それ以降は測定しなかった。
【0111】
実施例12
延伸倍率をMD方向に4倍、TD方向に4倍延伸することに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0112】
比較例1
EVOH(クラレ株式会社製 エバール F101B)のみに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得ようとしたが、フィルム破断が多発し、2軸延伸フィルムが得られなかった。
【0113】
比較例2
延伸温度を70℃に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得ようとしたが、フィルム破断が多発し、2軸延伸フィルムが得られなかった。
【0114】
比較例3
N−MXD6(三菱ガス化学株式会社製 S6007)のみに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0115】
比較例4
半結晶化時間が15秒であるN−6(宇部興産株式会社製 1024B)に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、2軸延伸フィルムを得ようとしたが、フィルム破断が多発し、2軸延伸フィルムが得られなかった。
【0116】
比較例5
EVOHとN−MXD6との割合を45対55質量%に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。
【0117】
【表1】


・EVOH(グレード:F101B):ポリエチレンビニルアルコール共重合体(クラレ株式会社製)
・N―MXD6(グレード:S6007):ポリメタキシリレンアジパミド固相重合品(三菱ガス化学株式会社製、相対粘度:2.65)
・N―MXD6(グレード:6003):ポリメタキシリレンアジパミド溶融重合品(三菱ガス化学株式会社製、相対粘度:2.2)
・イソフタル酸6モル%共重合N−MXD6(相対粘度:2.65)
・N−6IT:ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(三菱化学株式会社製 ノバミッドX21)
・N−6(グレード:1024B):ナイロン6(宇部興産株式会社製)
【0118】
EVOHと半結晶化時間が20秒以上の半芳香族ポリアミドとからなる2軸延伸フィルムは、フィルム破断をほとんどすることなく、2軸延伸フィルムの作製が可能であり、23℃90%RHという高湿度下においてもN−MXD6の単層の2軸延伸フィルム(比較例3)と比べて良好な酸素バリア性を示した(実施例1〜12)。特に、コバルト化合物を添加し、酸素吸収能力を付与することでさらに良好な酸素透過係数を示した(実施例7〜10)。
これらに対し、EVOHのみで2軸延伸をした場合、フィルム破断により2軸延伸フィルムを得ることができなかった(比較例1及び2)。また、脂肪族ポリアミドであり、かつ半結晶化時間が20秒未満であるポリアミド6をブレンドしても、フィルム破断が生じ、2軸延伸フィルムが得ることができなかった(比較例4)。さらに、EVOHとN−MXD6を45対65質量%の割合でブレンドした2軸延伸フィルムは、延伸は容易なものの、低湿度条件(23℃、60%RH以下)での酸素バリア性が低い値となった(比較例5)。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の2軸延伸フィルムは成形加工性がよく、低湿度条件のみならず、高湿度下での酸素バリア性に優れるため、熱水殺菌処理を必要とする食品等の包装容器として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンビニルアルコール共重合体99〜55質量%と160℃における降温半結晶化時間が20秒以上である半芳香族ポリアミド1〜45質量%とからなるポリアミド樹脂組成物からなる層を有する2軸延伸フィルム。
【請求項2】
前記半芳香族ポリアミドがキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミドである請求項1に記載の2軸延伸フィルム。
【請求項3】
前記半芳香族ポリアミドがヘキサメチレンジアミンを70モル%以上含むジアミン単位と、芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミドである請求項1に記載の2軸延伸フィルム。
【請求項4】
前記半芳香族ポリアミドがビス(アミノメチル)シクロヘキサンを70モル%以上含むジアミン単位と、芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸成分とを含有するポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の2軸延伸フィルム。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂組成物が元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子を1ppm以上含有する請求項1〜4のいずれかに記載の2軸延伸フィルム。
【請求項6】
熱水殺菌処理を施す包装容器に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の2軸延伸フィルム。

【公開番号】特開2012−46584(P2012−46584A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188154(P2010−188154)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】