説明

2軸船

【課題】 良好な運航性能と高い運航経済性との両立を図ることができる2軸船の提供。
【解決手段】 2軸船は、0.75以上の方形係数Cbを有すると共に、2体のプロペラ11と、各プロペラ11ごと設けられた2つのスケグ12とを備えるものである。各プロペラ11の直径Dpは、各プロペラ11の全円面積の合計が、この2軸船10と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められている。また、2つのスケグ12同士間に画成されるトンネル部15の起点部15sから船尾垂線APまでの水平距離Sと船長Lppとの比は、
0<S/Lpp≦0.15
という関係を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2体のプロペラと、各プロペラごと設けられた2つのスケグとを備えた2軸船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2体のプロペラを備えた2軸船が知られている。この種の2軸船としては、後半部船体の下方の一部に形成されたナックル状の曲がりを有するものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。この2軸船の後半部船体に設けられたナックル状の曲がりは、船体に伴う水流の流速を摩擦抵抗により低下させてプロペラによる伴流回収効率を増加させ、それにより、2軸船における推進効率を向上させるものである。また、従来から、左右一対のプロペラ軸間に画成された船底凹部に各プロペラへの水の流入を増加させるためのフィンが設けられているものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。このように、2軸船の船底凹部にフィン設けることにより、左右のプロペラを円滑に作動させて船体振動を軽減することが可能となる。また、左右一対のスケグ間に画成されるトンネル状船底凹部の天井面がプロペラ近傍位置より後方部に亘り湾曲して垂れ下がるように形成された2軸船も知られている(例えば、特許文献3参照。)。このような2軸船においては、上記天井面の湾曲して垂れ下がった部分が障害となってトンネル状船底凹部内へ波や空気が入り難くなるので、船体振動や騒音が低減される。
【特許文献1】特開昭57−37086号公報
【特許文献2】実開昭57−69791号公報
【特許文献3】特開平8−133172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、2体のプロペラを備えた2軸船は、船体振動を抑制しつつ良好な運航性能を発揮し得るものである。しかしながら、2軸船は、主機、プロペラ、舵、操舵機といった艤装品をそれぞれ2体ずつ有するものであることから、一般に船価が割高になり、1軸船に比して運航経済性の面で劣ると考えられている。
【0004】
そこで、本発明は、良好な運航性能と高い運航経済性との両立を図ることができる2軸船の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による2軸船は、0.75以上の方形係数Cbを有する2軸船であって、2体のプロペラと、各プロペラごと設けられた2つのスケグとを備え、各プロペラの直径Dpは、これら各プロペラの全円面積の合計が、この2軸船と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められており、2つのスケグ間に画成されるトンネル部の起点部から船尾垂線までの水平距離Sと船長Lppとの比が、
0<S/Lpp≦0.15
という関係を満たすことを特徴とする。
【0006】
この2軸船において、各プロペラの直径Dpは、これら各プロペラの全円面積の合計が、この2軸船と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められている。すなわち、当該1軸船のプロペラの直径Dp1とすると、各プロペラの直径Dpは、
1/√2<Dp/Dp1<1.0
という関係を満たしている。従って、2体のプロペラは、この2軸船と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船のプロペラよりも何れも小さいものとなるが、これによって、2軸船が本来有する良好な保針性能(操縦性能)が損なわれることはなく、また、プロペラの直径を小さくしたことによる推進性能の低下は実用上許容される範囲内に抑えられる。
【0007】
そして、このように2体のプロペラの直径Dpを小さくしたことにより、この2軸船では、2つのスケグ間に、起点部から船尾垂線までの水平距離Sと船長Lppとの比が、
0<S/Lpp≦0.15(=1.5/10)
という関係を満たすようにトンネル部を形成することが可能となる。すなわち、この2軸船では、トンネル部の起点部が、スクエアステーション1.5、あるいはそれよりも船尾側に位置することになる。これにより、この2軸船では、船尾側を肥大化させることが可能となるので、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する従来型2軸船に比較して排水量を更に多くして船価高を相殺するように積載量(載荷重量)を増加させることが可能となる。この結果、この2軸船によれば、良好な運航性能と高い運航経済性との両立を図ることが可能となる。
【0008】
また、各プロペラの直径Dpは、
0.8×Dp1≦Dp≦0.9×Dp1
という関係を満たすと好ましい。
【0009】
この態様によれば、2体のプロペラを1軸船や従来型2軸船に比して小さくしたとしても、2軸船の推進性能を実用上良好な範囲内に保つことが可能となる。
【0010】
更に、各スケグは、プロペラの軸心を通って鉛直方向に延びるスケグ中心面に関して非対称に形成されると共に、スケグ後端を通る平面とスケグ中心面とが交差するように下端側が船体側部に向けて傾けられていると好ましい。
【0011】
一般に、2軸船のスケグは、船首から船尾に向かうにつれて先細に形成される。このため、スケグがスケグ中心面に関して左右対称であって傾けられていない場合、トンネル部の船尾側が船首側に比べて拡げられることになるので、トンネル部に流入した水流は船首から船尾に向かうに従って拡散・減速させられ、船体抵抗の増加を招く剥離を引き起こすおそれがある。これに対して、各スケグを左右非対称に形成すると共にその下端側を船体側部に向けて傾けることにより、各スケグの船体中心側に位置する側面の延在方向は全体に船長方向に近づき、トンネル部の船長方向における断面積の変化率が小さくなる。これにより、トンネル部における水流の拡散・減速を抑制して、トンネル部における剥離の発生を抑制すると共にトンネル部から各プロペラに流入する水流の流速を高めることができる。また、各スケグの船体外側に位置する側面のみを外方に膨らまして各スケグの外側における伴流率を高めることにより、船体効率を高めると共に各スケグの船体外側から各プロペラに流入する水流の流速を低下させることができる。従って、この態様のもとでは、各プロペラに対してスケグ内側から流入する水流とスケグ外側から流入する水流との間の流速差を生じさせ、いわゆる伴流利得を得ると共に、船体効率を高めることができるので、2軸船の推進性能を良好に向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明による2軸船においては、船体中心面とスケグ中心面との距離Bsが、
1.2×Dp≦Bs≦1.6×Dp
という関係を満たすと好ましい。
【0013】
一般に、船舶の排水量が多くなり浸水面積が増加すると、船体抵抗が増加すると共に伴流率が低下することにより推進性能が低下する。このため、推進性能を向上させるためには、船体中心面とスケグ中心面との距離Bsをできるだけ小さくして、スケグ間のトンネル部における流れを加速させ、かつ、スケグ外側における伴流率を高めることにより、船体抵抗の増加と伴流率の低下とを抑えるとよい。ただし、主機、補機類等の搭載スペースや船内交通性の確保、更には、2体のプロペラの相互干渉によるキャビテーションや振動の発生を考慮すると、船体中心面とスケグ中心面との距離Bsを小さくすることには限界がある。これらの観点から、船体中心面とスケグ中心面との距離Bsが、
1.2×Dp≦Bs≦1.6×Dp
という関係を満たすようにすれば、スペース効率や船内交通性を損なうことなく、また、キャビテーションや振動の発生を抑制しつつ、2軸船の推進性能を向上させることが可能となる。
【0014】
更に、本発明による2軸船においては、船底後端部が上方に湾曲することなく概ね平坦に延びるように形成されるとよく、船体後端部の深さhaと満載時喫水dとの比が、
0.15≦ha/d≦0.25
という関係を満たすと好ましい。
【0015】
このように、船底後端部、好ましくはプロペラ面よりも後方の船底を概ね平坦に形成することにより、流れの剥離を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。更に、船体後端部の深さhaと満載時喫水dとの比が上記関係を満たすようにすれば、剥離範囲や死水領域の増加を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。この結果、この態様によれば、船体抵抗を増加を抑えて2軸船の推進性能を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な推進性能と高い運航経済性との両立を図ることができる2軸船の実現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明による2軸船の要部を示す模式図であり、図2は、図1の2軸船を後方から見た状態を示す模式図である。これらの図面に示される2軸船10は、2体のプロペラ11と、各プロペラ11に対応して設けられた図示されない主機、それに関連する補機類等を備えるものである。本実施形態の2軸船10は、船長Lpp=226m、船幅B=43m、満載時喫水d=12.7m、方形係数Cb=▽/(Lpp×B×d)=0.88という諸元を有するものであり、これらの寸法に関しては、方形係数Cbが0.75以上である一般的な2軸船として構成されている。また、2軸船10は、保針性能(針路安定性)を良好に保つべく、2体のプロペラ11に対応するように船体後部に設けられた2つのスケグ12を有しており、各プロペラ11および各スケグ12の後方には、各1体の舵14が設けられている。そして、左右一対のスケグ12同士間には、トンネル部15が画成されている。
【0019】
このような基本構成を有する本実施形態の2軸船10において、各プロペラ11の直径Dpは、これら各プロペラ11の全円面積の合計が、2軸船10と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められている。すなわち、各プロペラ11の直径Dpは、当該1軸船のプロペラの直径をDp1とすると、
1/√2<Dp/Dp1<1.0
という関係を満たしている。そして、本実施形態では、各プロペラ11の直径Dpが、
0.8×Dp1≦Dp≦0.9×Dp1
という範囲内から選択されており、例えば、Dp=0.88×Dp1とされている。なお、全円面積は、プロペラ11が回転した際にプロペラ羽根の先端により描かれる円の面積であり、π/4・Dpとして表される。
【0020】
各プロペラ11の直径Dpが上述のような範囲から選択される結果、2軸船10に含まれる2体のプロペラ11は、2軸船10と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船や従来型2軸船のプロペラよりも何れも小さいものとなるが、これによって、2軸船10が本来有する良好な保針性能(操縦性能)は損なわれることはない。また、直径Dpを小さくしたことによる推進性能の低下は実用上許容される範囲内に抑えられ、2軸船10の推進性能は実用上良好な範囲内に保たれる。
【0021】
そして、本実施形態の2軸船10では、上述のように2体のプロペラ11の直径Dpを小さくした上で、2つのスケグ12同士の間のトンネル部15が、スクエアステーション1.5、若しくはそれよりも船尾側で立ち上がるように形成されている。すなわち、トンネル部15は、その起点部15sから船尾垂線APまでの水平距離Sと船長Lppとの比が、
0<S/Lpp≦0.15
という関係を満たすように形成されている。これにより、2軸船10では、船尾側を肥大化させることが可能となるので、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船や従来型2軸船に比較して排水量を更に多くして船価高を相殺するように積載量(載荷重量)を増加させることが可能となる。上述のようなトンネル部15の設計により、本実施形態の2軸船10の積載量は、概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する従来型2軸船に対しておよそ5%程度増加することになる。
【0022】
このように、2軸船10では、推進性能を実用上良好な範囲内に保ちつつ、船尾側を肥大化させて積載量を増加させることができるので、良好な運航性能と高い運航経済性との両立を図ることが可能となる。
【0023】
ところで、本実施形態の2軸船10では、排水量の増加、およびそれに伴う浸水面積の増加により、特に満載時において船体抵抗が増加すると共に特に各スケグ12の外側において伴流率が低下するおそれがある。このため、2軸船10では、かかる船体抵抗の増加等に起因する推進性能の低下を抑える共に、推進性能を従来型2軸船よりも向上させるべく、次のような対策が講じられている。
【0024】
まず、2軸船10の各スケグ12は、図2に示されるように、スケグ中心面P1に関して非対称に形成される。加えて、各スケグ12は、スケグ後端線12a(図1参照)を通る平面P2と、スケグ中心面P1とが交差するように、その下端側が船体側部に向けて傾けられている。なお、スケグ後端線12aは、スケグ12を側方から見た際のスケグ後端部の稜線である。
【0025】
ここで、一般に2軸船のスケグは、下方から見た状態で船首から船尾に向かうにつれて先細に形成される。このため、スケグがスケグ中心面に関して左右対称であって傾けられていない場合、トンネル部の船尾側が船首側に比べて拡げられ、トンネル入口に比べてトンネル出口が大きくなるので、トンネル部に流入した水流は船首から船尾に向かうに従って拡散・減速させられ、船体抵抗の増加を招く剥離を引き起こすおそれがある。
【0026】
これに対して、本実施形態のように、各スケグ12を左右非対称に形成すると共に、それぞれの下端側を船体側部に向けて傾けることにより、各スケグ12の船体中心側に位置する側面12iの延在方向は、図3に示されるように、各スケグ12の船体外側に位置する側面12oに比べて全体に船長方向に近づくことになる。これにより、トンネル部15の船長方向における断面積の変化率が比較的小さくなるので、トンネル部15における水流の拡散・減速が抑制される。従って、2軸船10では、船体抵抗の増加を招くトンネル部15における剥離の発生を抑制すると共に、トンネル部15から各プロペラ11に流入する水流の流速を高めることができる。また、各スケグ12の船体外側に位置する側面12oのみを外方に膨らまして各スケグ12の外側における伴流率を高めることにより、船体効率を高めると共に各スケグ12の船体外側から各プロペラ11に流入する水流の流速を低下させることができる。
【0027】
これにより、各プロペラ面11b(図2参照)に流れ込む水流の非対称性、すなわち、各プロペラ11に対してスケグ12の内側すなわちトンネル部15から流入する水流とスケグ12の外側から流入する水流との間の流速差を生じさせ、いわゆる伴流利得を得ると共に、船体効率を高めることが可能となる。このように、各スケグ12を左右非対称に形成すると共にその下端側を船体側部に向けて傾ければ、2軸船10の推進性能を良好に向上させることが可能となる。
【0028】
なお、2軸船10の各スケグ12をスケグ中心面P1に関して非対称に形成するに際しては、スクエアステーション0.5にて、プロペラ11の軸心11aの高さにおけるスケグ内側半部(スケグ中心面P1よりも内側の部位)の幅Biとスケグ外側半部(スケグ中心面P1よりも外側の部位)の幅Boとの比が、
0.5≦Bi/Bo<1
という関係を満たすように各スケグ12を構成するとよい。本実施形態では、スケグ内側半部の幅Biとスケグ外側半部の幅Boとの比が、Bi/Bo=0.73として定められている。また、各スケグ12を傾斜させるに際しては、スケグ中心面P1とスケグ後端線12aを通る平面P2とのなす角度θが、
0°<θ≦15°
という関係をみたすようにするとよい。これらの構成を採用すれば、プロペラ面11b(図2参照)に流れ込む水流に非対称性を良好に生じさせて伴流利得を確実に得ることが可能となる。
【0029】
また、本実施形態の2軸船10では、船体中心線を通って鉛直方向に延びる船体中心面Pcと、各プロペラ11の軸心11a(図1参照)を通って鉛直方向に延びるスケグ中心面P1との距離Bs(図2参照)が、プロペラ11の直径Dpを基準として、
1.2×Dp≦Bs≦1.6×Dp
という関係を満たすように各スケグ12が形成されている。
【0030】
すなわち、2軸船10の推進性能を向上させるためには、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bs、つまりトンネル部15の幅をできるだけ小さくして、スケグ12同士間のトンネル部15における流れを加速させ、かつ、各スケグ12の外側における伴流率を高めることにより、船体抵抗の増加と伴流率の低下とを抑えるとよい。ただし、主機、補機の搭載スペースや船内交通性の確保、更には、2体のプロペラ11の相互干渉によるキャビテーションや振動の発生を考慮すると、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsを小さくすることには限界がある。これらの観点から、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsが上記関係を満たすようにすれば、スペース効率や船内交通性を損なうことなく、また、キャビテーションや振動の発生を抑制すると共に、上述のように左右非対称かつ傾斜したスケグ12を実現しつつ、2軸船10の推進性能を向上させることが可能となる。なお、本実施形態の2軸船10では、船体中心面Pcとスケグ中心面P1との距離Bsが、Bs=1.404×Dpとして定められている。
【0031】
更に、本実施形態の2軸船10では、図4に示されるように、船底16の後端部、より詳しくは、プロペラ面11bよりも後方の船底16が上方に湾曲することなく概ね平坦に延びるように形成されている。更に、2軸船10において、その船体後端部17は、満載時における船体後端部17の没水深さhaと満載時喫水dとの比が、
0.15≦ha/d≦0.25
という関係を満たすように形成されている。
【0032】
一般に、船体後端部17周辺では水流が船体から離れるため、この周辺の部位を図4において破線で示されるように上方に湾曲する曲面状に形成すると流れの剥離が起こり、船体抵抗の増加を招いてしまう。また、船体後端部17の没水深さhaを必要以上に大きくすると、流れの剥離範囲や死水領域が増加し、やはり船体抵抗の増加を招いてしまう。これに対して、上述のように、好ましくはプロペラ面11bよりも後方の船底16を概ね平坦に形成することにより、流れの剥離を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。更に、船体後端部17の深さhaと満載時喫水dとの比が上記関係を満たすようにすれば、剥離範囲や死水領域の増加を抑制し、船体抵抗の減少させることが可能となる。従って、このように船尾付近の形状を工夫することにより、船体抵抗を増加を抑えて2軸船10の推進性能を向上させることが可能となる。
【0033】
以上説明されたように、本実施形態の2軸船10は、満載状態では概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船や従来型2軸船と同等あるいはそれ以上の推進性能を発揮し得るものであり、しかも、従来型2軸船よりも多い積荷等を積載可能とするものである。また、本実施形態の2軸船10は、1軸船や従来型2軸船に比べて小さい直径Dpを有するプロペラを備えていることから、バラスト状態では、喫水をより浅くすることができるので1軸船や従来型2軸船よりも早い速力を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による2軸船を示す模式図である。
【図2】図1に示される2軸船を後方から見た状態を示す模式図である。
【図3】図1に示される2軸船を下方から見た状態を示す模式図である。
【図4】図1に示される2軸船のトンネル部の構成を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0035】
10 2軸船、11 プロペラ、11a プロペラの軸心、11b プロペラ面、12 スケグ、12a スケグ後端線、12i,12o 側面、14 舵、15 トンネル部、15s 起点部、16 船底、17 船体後端部、Pc 船体中心面、P1 スケグ中心面、P2 スケグ後端線を通る平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.75以上の方形係数Cbを有する2軸船であって、
2体のプロペラと、各プロペラごと設けられた2つのスケグとを備え、
前記各プロペラの直径Dpは、前記各プロペラの全円面積の合計が、この2軸船と概ね同一の船長、船幅および満載時喫水を有する1軸船のプロペラの全円面積よりも大きく、かつ、当該1軸船のプロペラの全円面積の2倍よりも小さくなるように定められており、
前記2つのスケグ間に画成されるトンネル部の起点部から船尾垂線までの水平距離Sと船長Lppとの比が、
0<S/Lpp≦0.15
という関係を満たすことを特徴とする2軸船。
【請求項2】
前記各プロペラの直径Dpは、前記1軸船のプロペラの直径をDp1としたときに、
0.8×Dp1≦Dp≦0.9×Dp1
という関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の2軸船。
【請求項3】
前記各スケグは、前記プロペラの軸心を通って鉛直方向に延びるスケグ中心面に関して非対称に形成されると共に、スケグ後端を通る平面と前記スケグ中心面とが交差するように下端側が船体側部に向けて傾けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の2軸船。
【請求項4】
船体中心面とスケグ中心面との距離Bsが、
1.2×Dp≦Bs≦1.6×Dp
という関係を満たすことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の2軸船。
【請求項5】
船底後端部が上方に湾曲することなく概ね平坦に延びるように形成されており、
船体後端部の深さhaと満載時喫水dとの比が、
0.15≦ha/d≦0.25
という関係を満たすことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の2軸船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−22447(P2007−22447A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210366(P2005−210366)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(592250540)株式会社大島造船所 (32)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)