説明

2連式吐出器

【課題】内容物の黒変防止対策の施されたバスバリア性の高い2連式吐出器を提供する。
【解決手段】種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器を横並び配列にした2連式吐出器において、管体7、8の少なくとも1つに、送給経路を取り囲んでガスの透過を阻止する保護層16を設け、ピストン9bの押しボタン部分Bを被覆してガスバリア層を形成するカバーキャップ11を設け、ポンプのシリンダー9aについては、ガスバリア性の高い素材を用いた成形体を適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの容器内に充填された種類の異なる内容物をボタンによる押圧操作でそれぞれの容器から同時に吐出させ、使用直前において混合するのに適した2連式吐出器に関するものであり、ガス(とくに酸素等)の透過による内容物の変色を効果的に回避しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、毛染め剤や洗顔フォーム、トリートメント等においては組成の異なる2種類の内容物を使用直前に混ぜて使用する商品が流通してきている。
【0003】
かかる商品は、それぞれの内容物をそれぞれ個別の容器に充填してそれを1セットにして販売されているのが普通であり、使用に際してはそれぞれの容器から所定の割合になるように内容物を個別に注出して混合する煩雑な作業が必要になっていた。
【0004】
上記のような従来の問題を解消したものとしては、各容器の口部にポンプ装置の吸引口を接続して該ポンプ装置を手で駆動することで各容器から同時に内容物を注出する吐出装置が知られている(例えば特許文献1参照)が、ポンプ装置を手で駆動するこの種の吐出装置、とくに2連式の吐出器においては装置自体のサイズが大きくなるのが避けられず操作性の低下が生じることがあった。
【0005】
このため、ポンプに2つの空間領域を区画形成する同心2重の周壁を備えたシリンダーを設け、このシリンダーの空間領域内に操作レバーにより同時にスライドさせるピストンを組み込んで内容物の同時吐出を実現するとともに吐出装置のサイズの小型化、操作性の改善を図った提案がなされている(例えば特許文献2参照)ところ、近年、容器内に充填されている内容物によっては、吐出器の構成部材を透過したガス(とくに酸素)の影響により変色を引き起こすことも新たな問題として浮上してきており、この点に関する改善が求められていた。
【特許文献1】特開2005-126144号公報
【特許文献2】特開2007-137465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、吐出器内を通過する内容物の変色防止対策としてガスバリア性を高めた2連式吐出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器を横並び配列にしてその口部において着脱自在に連結保持するホルダーと、このホルダーの開口にそれぞれ吸入弁を介してつながり容器内の内容物を通過させる送給通路を形成する管体と、この管体につながり容器内の内容物を吸引、加圧、その出側へと圧送するポンプと、上記管体の出側に配置される吐出弁を有し該吐出弁を通過させた内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出するノズルとを備えた2連式吐出器であって、
前記ポンプに、各管体の送給通路に個別につながる吸排口を有し、その内部に空間領域を区画形成する同心2重の周壁を備えたシリンダーと、このシリンダーの空間領域でそれぞれ往復移動可能な2つの摺動部を有し、該シリンダーの開放端より露出させた後端域を押しボタン部分としてその押し込み操作により該摺動部をスライドさせて各容器内の内容物を吸引、加圧、ノズルへ向けて圧送するピストンとを設け、前記管体の少なくとも1つに、送給経路を取り囲んでガスの透過を阻止する保護層を設け、前記ピストンの押しボタン部分を被覆してガスバリア層を形成するカバーキャップを設け、前記ポンプのシリンダーは、ガスバリア性の高い素材を用いた成形体からなる、ことを特徴とする2連式吐出器である。
【発明の効果】
【0008】
内容物が通過する管体にガスの透過を阻止する保護層を設けるとともにポンプのシリンダーそのものをガスバリア性の高い素材にて構成し、さらに、ピストンの摺動部を除く押しボタン部分をガスバリア層を形成するカバーキャップで覆うことにより吐出器内部へのガスの透過が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1〜4は本発明にしたがう2連式吐出器を容器に装着した状態で示した図であり、図1は外観斜図、図2は側面を断面で示した図、図3は背面を断面で示した図、そして、図4はA−A断面を示した図である。
【0010】
図において1、2は異なる内容物をそれぞれ充填したチューブタイプの容器、3、4は容器1、2をその口部において横並び姿勢で固定保持するホルダーである(ねじで係合する場合について示してあるが、アンダーカットにより係合させてもよい。)。このホルダー3、4には容器1、2の口部1a、2aと連通する開口3a、4aが設けられており(図2、図3参照)、その内周壁にはねじ込み末端で口部1a、2aに設けられた凹部1b、2bに傾斜壁を乗り越えて適合して容器1、2のホルダー3、4に対する位置決めを行う突起3b、4bが形成されている(図2参照)。
【0011】
また、5、6はホルダー3、4の開口3a、4aに配置された吸入弁(逆止弁)、7、8は吸入弁5、6を介してホルダー3、4につながる管体である。
【0012】
この管体7、8は内容物の送給経路を形成するものであって、このうち管体7はストレート管7aと、このストレート管7aの後端に着脱可能に配置され、該ストレート管7aとホルダー3とを所定の角度をもって回転可能に連係する短管7b、7c(短管7cはホルダー3に連結される。)からなる。また、管体8については、ポンプの周りを取り囲む環状管8aと、この入側、出側に一体的に設けられた短管8b、8c(短管8bはホルダー4に連結される。)からなる。
【0013】
また、9は管体7、8に連係する容器本体1、2内の内容物を吸引、加圧、圧送するポンプである。このポンプ9は管体7、8に個別につながる吸排口S〜Sを有し、その内部に内側、外側2つの空間領域P、Pを区画形成する同心2重の周壁t、tを備えたシリンダー9aと、このシリンダー9a内に配置されたピストン9bと、シリンダー9aの開口端9a′にアンダーカット嵌合により抜け止め保持されたピストン押さえ9cからなっている。
【0014】
シリンダー9aはその全体がガスバリア性の高い素材(樹脂)を用いた成形体で構成されている。また、ピストン9bは一端が開放された外筒体9bと、この外筒体9bの内側にアンダーカットの如き手段によって固定された内筒体9bによって構成されており(外筒体9bの内側に凹部を設け、内筒体9bの後端部に該凹部に嵌合する凸部を設けて一体連結した場合を例示したが、一体成形したものを適用してもかまわない。)、外筒体9b、内筒体9bのそれぞれの先端にはシリンダー9aの空間領域P、Pでそれぞれ往復移動可能な摺動部f、fが形成され、シリンダー9aの開放端9a′より露出している後端域が押しボタン部分Bとなる。
【0015】
また、10はピストン9bをシリンダー9a内で弾性支持するスプリング、11は押しボタン部分Bを被覆(ピストン9bの周りを覆い隠す)するカバーキャップである(図2参照)。このカバーキャップ11は押しボタン部分Bの押し込み操作に際して該押しボタン部分Bととともに動くものであって、該カバーキャップ11自体がガスの透過を阻止する素材にて構成されている(カバーキャップ11でガスバリア層を形成する。)。
【0016】
さらに、12、13は管体7、8の出側に配置された吐出弁(逆止弁)、14は吐出弁12、13を通過させた内容物を外界へ向けて排出するノズルである。
【0017】
ノズル14は吐出弁12、13の出側でそれぞれ排出空間m、mを形成するベース14aと、このベース14aに連結された管体14bと、この管体14bの外周にヒンジhを介して揺動可能に保持され該管体14bの先端開口を開閉する蓋体14cからなる。
【0018】
15a、15bはベース14a及び管体14bのそれぞれの内側に設けられた仕切り板である。この仕切り板15a、15bはノズル14内を軸芯に沿って2分割するものであり、容器1、2から排出された内容物を個別に通す通路r、rを形成する。
【0019】
さらに、16は管体7のストレート管7aの外周に取り付けられた保護層である(図2参照)。この保護層16はガスの透過を阻止する素材からなるフィルムをインサート成形によってストレート管7aの外表面に一体的に配置したものを例として示してあり、この保護層16によってガスバリア層を形成する。
【0020】
上記の構成になる2連式吐出器は、ポンプ9を構成するシリンダー9aがその内部において2つの空間領域P、Pを形成する同心2重の周壁t、tからなっており、このシリンダー9aに管体7、8を直接接続した構造であり、また、ピストン9bはそれに直結する押しボタン部分Bの押し込み操作によって駆動するので、吐出器の構造の簡素化、サイズのコンパクト化が可能であって、片手で容器を把持しながら内容物の排出が簡単に行なえる。
【0021】
また、シリンダー9aはガスバリア性の高い素材で構成されており、押しボタン部分Bの外側にはガスバリア層を形成するカバーキャップ11が、また、管体7のストレート管7aにはガスバリア層を形成する保護層16がそれぞれ配置されているため、吐出器内へのガスの透過は極めて小さい。
【0022】
変色を引き起こし易い内容物を充填した容器をホルダー3につなぐ場合には、短管7b、7cについてもガスバリア性の高い素材(樹脂)を用いた成形体を適用することが好ましい。
【0023】
本発明にしたがう吐出器は、スプリング10を除く他の部材は全て合成樹脂にて成形することが可能であるが、例えばカバーキャップ11のように押しボタン部分Bの上に別体として配置する場合には該カバーキャップ11はアルミニウムのような金属製部材を用いることもできる。
【0024】
カバーキャップ11としては図5(a)に示すような一端開放型の筒状体を用いることができる他、開放された先端部11aに抜け止め用のフランジgを有する図5(b)に示すようなもの、あるいは、胴体の外側壁に環状凸部iを有する図5(c)に示すようなものを適用することも可能である。また、カバーキャップ11は2色成形(材質の異なる部材を一体的に成形する成形法)あるいはインサート成形により押しボタン部分Bの外表面に一体的に設けてもよいし、一般的に使用されている材料からなる部材の表面(内外の少なくとも一方)にバリア性の高いコーティング層を形成してもよく、この点については限定されない。ガスバリア層は、単層タイプ、積層タイプの何れかが選択される。
【0025】
かかる構成の吐出器を用いて容器1、2内の内容物を排出するには、押しボタン部分Bの押し込み操作(カバーキャップ11とともに押し込む。)を複数回にわたって繰り返し行えばよい。押しボタン部分Bの押し込みによりピストン9bをスプリング10の反発力に抗してスライドさせ、その行き止まり状態で押し込みにかかる力を取り除くと、スプリング10の復元力にて押しボタン部分Bはピストン9bとともに初期位置へと復帰し、この時、シリンダー9a内が負圧となるため容器1、2内の内容物が吸入弁5、6を通って管体7、8、シリンダー9aへと吸引される。
【0026】
押しボタン部分Bの押し込み操作により再びピストン9bをスライドさせると管体7、8、シリンダー9a内に存在する内容物は加圧され、吐出弁12、13を経てノズル14へと圧送されることとなり、圧送された内容物は各通路r1、rを経てノズル14の先端から外界へと排出される。
【0027】
ガスバリア層を形成するカバーキャップ11、保護層16、ポンプ9のシリンダー9aは、その構成素材として、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ナイロン樹脂(例えば、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂あるいは非晶質ポリエステル樹脂(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、その他ジール成分体等の共重合体、エチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合体樹脂等)を用いることができる。部材そのものを上記の素材で成形してもよいが、一般的に使用されている材料と上記素材との積層構造としてもよく、また、一般的に使用されている材料からなる部材をそのまま用い、その部材に、真空蒸着やスパッタリング等によりガスバリア性を有するコーティング層を形成してもよく、何れにおいてもガスの透過が抑制されることになる。
【0028】
図6は保護層16を、ストレート管7aに対して着脱可能(弾性変形可能なものを適用する。)としたC型断面形状をなす筒体で構成し、ピストン9bの外筒体9bと内筒体9bとを一体成形して、該内筒体9bの内側に設けた筒体17の貫通孔eにカバーキャップ11の棒状部分11aを差し込んでその連結を図った本発明にしたがう他の実施の形態を示した図である。
【0029】
かかる構成の吐出器は、容器1が変色のおそれがない内容物を充填した容器を使用した場合にあっては保護層16を取り付ける必要がなく、部品点数の削減、組み立て工程の簡素化を図ることができる利点がある。
【0030】
上掲図6に示したカバーキャップ11はその分解状態を図7に示すように、カバーキャップ11とピストン9bをそれぞれ個別に作製してそれらを組み合わせることによって一体化を図るが、2色成形あるいはインサート成形を適用して両者を一体化させたカバーキャップ11を形成することもできる。
【0031】
図8はインサート成形によりストレート管7aの内壁面に保護層16を設けた本発明にしたがうさらに他の実施の形態を示した図であり、図9は2色成形またはインサート成形によりガスバリア性の高い素材でストレート管7aを成形してポンプ9の吸排口sに設けた例である。
【0032】
上掲図8、9に示した構造の吐出器においても、ガスの透過を極力小さくすることが可能であり、内容物が変色するような不具合を効果的に回避し得る。とくに図9に示した例の吐出器は、ストレート管7aがガスバリア層になっているので保護層16の配置が不要であり、パーツ数の削減を図るのに有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
内容物の変色防止対策が施されたコンパクトな2連式吐出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にしたがう2連式吐出器の実施の形態を示した外観斜視図である。
【図2】図1に示した吐出器の側面を断面で示した図である。
【図3】図1に示した吐出器の背面を断面で示した図である。
【図4】図1に示した吐出器のA-A断面を示した図である。
【図5】(a)〜(c)はキャップの外観を示した図である。
【図6】本発明にしたがう2連式吐出器の他の実施の形態を示した図である。
【図7】図6に示した2連式吐出器の押しボタン部分とカバーキャップを示した図である。
【図8】本発明にしたがう2連式吐出器の他の実施の形態を示した図である。
【図9】本発明にしたがう2連式吐出器のさらに他の実施の形態を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 容器
1a 口部
1b 凹部
2 容器
2a 口部
2b 凹部
3 ホルダー
3a 開口
3b 突起
4 ホルダー
4a 開口
4b 突起
5 吸引弁
6 吸引弁
7 管体
7a ストレート管
7b 短管
7c 短管
8 管体
8a 環状管
8b 短管
8c 短管
9 ポンプ
9a シリンダー
9b ピストン
9c ピストン押さえ
10 スプリング
11 カバーキャップ
12 吐出弁
13 吐出弁
14 ノズル
14a ベース
14b 筒体
14c 蓋体
15a 仕切り板
15b 仕切り板
16 保護層
f、f 摺動部
B 押しボタン部分
S〜S 吸排口
t、t 周壁
r、r 通路
h ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器を横並び配列にしてその口部において着脱自在に連結保持するホルダーと、この各ホルダーの開口にそれぞれ吸入弁を介してつながり、容器内の内容物を通過させる送給通路を形成する管体と、この管体につながり、容器内の内容物を吸引、加圧、その出側へと圧送するポンプと、上記管体の出側に配置される吐出弁を有し、該吐出弁を通過させた内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出するノズルとを備えた2連式吐出器であって、
前記ポンプに、各管体の送給通路に個別につながる吸排口を有し、その内部に空間領域を区画形成する同心2重の周壁を備えたシリンダーと、このシリンダーの空間領域でそれぞれ往復移動可能な2つの摺動部を有し、該シリンダーの開放端より露出させた後端域を押しボタン部分としてその押し込み操作により該摺動部をスライドさせて各容器内の内容物を吸引、加圧、ノズルへ向けて圧送するピストンとを設け、
前記管体の少なくとも1つに、送給経路を取り囲んでガスの透過を阻止する保護層を設け、
前記ピストンの押しボタン部分を被覆してガスバリア層を形成するカバーキャップを設け、
前記ポンプのシリンダーは、ガスバリア性の高い素材を用いた成形体からなる、ことを特徴とする2連式吐出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−22883(P2009−22883A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188645(P2007−188645)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)