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2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(ジメスナ)と組み合わせたシスプラチン組成物
説明

2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(ジメスナ)と組み合わせたシスプラチン組成物

【課題】シスプラチンと併用投与可能な組成物を提供する。
【解決手段】ガン患者へ投与するための組成物は、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)又はその薬学的に許容される塩で構成され、凍結乾燥の形態を有しており、水溶液又は無菌で注射可能な水溶液に再調製したとき、水溶液のpH値が1.5〜9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く抗ガン剤として使用されているシス−ジアムミンジクロロ白金(シスプラチン)の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シスプラチンの最も重要かつ共通した投与量制限毒性のひとつは腎毒性である(腎障害を起こすこと)。シスプラチンが細胞中DNAのある核酸配列と反応するために、モノアクオ種またはジアクオ種を形成するためにまず最初にクロリドリガンドと水分との置換により活性種に化学転換しなければならない。このシスプラチンのアクオ種は、DNA上のイミダゾール窒素または、人体の腎管上皮を形成する細胞中にも存在しているスルフヒドリル基を含む求核的種と反応する。
【0003】
シスプラチンはスルフヒドリル部分を含む化合物と容易に反応する。スルフヒドリル基はシステイン、グルタチオンおよびホモシステイン中に見出されている。メタロチオネインはシステイン残基を30%含む7kDaのタンパク質である。細胞中のメタロチオネインおよびグルタチオン濃度は、シスプラチン療法における薬品抵抗と相互関連する。このようにして、2−メルカプトエタンスルホネートからスルフヒドリル基の局部腎管濃度が増大されうるならば、シスプラチンの毒性は、反応性シスプラチン”アクオ種”の腎管中での化学的抑制により減少させられる場合がある。アクオ種は以下の反応式に基づくシスプラチンの加水分解により形成される。
【0004】
Pt(NHCl+HO→
[Pt(NHCl(HO)]
[Pt(NHCl(HO)]+HO→
[Pt(NH(HO)++
Kempf et al.,British J.Cancer, 52,937-939(1985)(非特許文献1)では、ネズミの腎臓中におけるシスプラチンの腎毒性を防ぐためのソジウム2−メルカプトエタンスルホネート(”メスナ”)の使用が記載されている。この論文は、メスナのただ一つ知られている代謝産物が、その二硫化物、およびシスプラチンと反応することが不可能なジメスナであることを記述している。この論文によると、メスナを静脈注射での投与後、二硫化物が自動酸化により自発的に形成され、体内の血流中全域に渡って見られるようになる。そして二硫化物は腎臓によって排除される。この論文の著者らは、ネズミにシスプラチンを静脈注射により投与し、またメスナも各シスプラチン注入の2時間前に、そして最後のシスプラチン注入後は4日間毎日数回経口投与を行った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kempf et al.,British J.Cancer, 52,937-939(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Kempf et al.によって提案されている治療法は複雑であり実用的でない。しかし、メスナはシスプラチンと反応するため併用投与され得ない。シスプラチンと併用投与可能な代わりのメスナを発見することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この時点で意外にも、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)、特にそれがナトリウム塩の形態、即ちジメスナにあるときには実質上シスプラチンと同時またはほぼ同時に投与できることがわかった。スルホネートはシステインおよび血流中にある他のチオールプロテインにより侵襲されることなく、そしてさらにシスプラチンの腎毒性を減少させる効果がある。これは特に驚くべきことであり、なぜならメスナは血流中のシステインと反応する疑いがあるためである。尿によるシステイン排除の進行は、人体へのメスナの投与に関連して報告されている。B, Sidau and I.C.Shaw, J. Chromatography 311,234-238,(1984)参照。
【0008】
もし、上記Kempf et al.の論文で記述されている通りメスナからジメスナへの物質交代が意義のある場合、ジメスナがシステインに反応するのは可能である。一方、もしメスナがシステインと反応する場合、おそらくジメスナはメスナの意義のある代謝産物ではない。
【0009】
メスナは尿管上皮に関し、シクロホスファミド、イホスファミドおよびトロホスファミドを含むオキサザホスホリン抗ガン剤の使用に関連した状態で、尿管、膀胱および尿道で出血の原因となっている出血性膀胱炎の危険性を減少または防止するために広く使用されている。
【0010】
ジメスナが同じ目的で試験されている。Block at el.,J. Cancer Res. Clin.Oncol.108,87-97 1984 and Eur. J.Cancer Clin. Oncol.17,1155-1163(1981)参照。オキサザホスホリン誘導尿管上皮の毒性は、化学的、生化学的、解剖学的および病理学的にも、シスプラチンの投与で観測される腎毒性とは異なったものである。オキサザホスホリンの場合、アクロレインが毒性の代謝産物として生成し、メスナがアクロレインの二重結合付加し、その結果、尿管上皮上で損傷がなく尿により排泄される安定したチオエーテル付加物となる。
【0011】
本発明によれば、シスプラチンおよび薬学的許容形態にある2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)からなる、ガン患者の人体への投与に適した組成物が提供される。スルホネートは薬学的に許容される塩のいかなる形態でもよく、特にナトリウム塩(ジメスナ)もしくはそれに代わるもので遊離酸またはそれらの混合物の形態でありうる。好ましくはナトリウム塩の形態である。組成物の好適な形態は水溶液であり、通常無菌で注射可能な水溶液である。それゆえ、そのような溶液は電気的中立状態となるために、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の陰イオンおよび薬学的許容な陽イオン、特にNa+およびH+を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物の使用は、患者が正しい量だけ服用できることを確実にし、2つの薬の処方の間違いを減少させ、腎毒性の減少および医原性関連の合併症(フロセミドまたは高張含塩下剤の投与−下記参照)の回避に必要な追加的な病気予防調合量を減少させる。
【0013】
本発明の組成物は動物実験において抗腫瘍活性に相乗効果を示すことが分かっている。組成物はまた、シスプラチン誘導の骨髄抑圧または神経系毒性を防ぐことも可能である。
【0014】
さらに本発明は、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の薬学的許容形態、特に二ナトリウム塩(ジメスナ)の使用を提供し、この使用は、患者にこれとシスプラチンとの組み合わせで投与するものであり、それらは実質的に同時又は24時間以内でのいずれかの順序で続けて投与し、その投与によってスルホネートおよびシスプラチンが患者の血流中で共存するようになるものである。特にオーストラリアで顕著であるが、特許法が許可している場所では、上記概念は、他のものとして患者へ実質的に同時にスルホネートとシスプラチンとを投与する方法でも提案されうる。このように、本発明によればスルホネートとシスプラチンとがどちらか一方の順を追って継続的に、特に互いに24時間以内にまたはもっと近い時間内に与えられ、シスプラチンが存在する血液中にスルホネートがはいるか、スルホネートが存在する血液中にシスプラチンがはいることになり、本発明の原理、生体内で2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)のシスプラチンとの共在作用により腎毒性の減少が効果づけられうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(BNP7787)の静脈注射投与量の増加する場合としない場合のシスプラチン(6mg/kg)の静脈注射後処理5日間の血清クレアチニン(mg/dl)の値を示している。
【図2】図2は、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(BNP7787)の静脈注射投与量の増加する場合としない場合のシスプラチン(6mg/kg)の静脈注射後処理5日間のBUN(血入尿素窒素)(mg/dl)の値を示している。
【図3】図3は、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(BNP7787)の静脈注射投与量の増加する場合としない場合のシスプラチン(6mg/kg)の静脈注射後処理5日間のWBC(白血球)(1000個/mm)の値を示している。
【図4】図4は、シスプラチンおよび2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(BNP7787)を静脈注射された結腸腫瘍化フィッシャー・ネズミの反応を示し、平均体重(対開始重量%)と日数との関係を示している。
【図5】図5は、シスプラチンおよび2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(BNP7787)を静脈注射された結腸腫瘍化フィッシャー・ネズミの反応を示し、腫瘍部重量(mg)の中央値と日数との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物は典型的には溶液である。組成物は、シスプラチンの治療薬との作用のために、適当なまたは慣用のいかなる形態をも取り得、治療薬とはスルホネートとの共存を相容れるものである。治療薬の型は、通常は非経口的で特に注射液が好適であるが、投与経路により決まる。
【0017】
以下に2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(ジメスナ)二ナトリウム塩の無菌水溶液を主に参照して説明するものであるが、当業者はシスプラチンの他の治療薬およびスルホネートの他の形態に関連して、本発明の原理を容易に利用し得る。前記他の形態とは一ナトリウム、一カリウム、ナトリウム−カリウム、二カリウム、カルシウム、およびマグネシウムのスルホン酸塩を含む。
【0018】
水溶液は、通常pH値が7.0未満1.0以上の値を持ち、より一般的には2と6の間、好適なのは4と6の間である。これはシスプラチンのアクオ種の生成防止を助ける。同じpH値は、後にシスプラチン種に反応しうるメスナの生成防止をも助ける。好適には、塩酸またはリン酸がpH値を減少させるのに使用される。シスプラチンの安定性は溶液の塩素イオン濃度と比例関係にあるため、溶液は塩素イオンを含むのが好ましく、例として塩化ナトリウムがあげられ、さらに任意でpH値を減少させるための塩酸の使用によりイオンを増大させる。また、血漿中の塩素の高濃度は、シスプラチンの不活性で中性の二塩素種の維持に大変都合がよい状態をもたらす。中性二塩素シスプラチン種はガン細胞がするように細胞に侵入することが可能であり、細胞中の塩素濃度が低いため二塩素種シスプラチンの一アクオ種または二アクオ種への転換に都合がよい。そしてアクオシスプラチン種は、細胞中のDNAのある核酸と架橋結合した相当するキレートの形成に役立つ。
【0019】
シスプラチン誘導の腎毒性は臨床上重要な問題であり、またクレアチニンクリアランスの減少、クレアチニンの増加、血入尿素窒素の増加、尿酸および血中マグネシウム減少症の増加に結び付く。通常この合併症の危険性を少なくするようにするため使用する予防薬は以下のものを含む。
【0020】
a.非経口投与の高張(3%)塩化ナトリウム
b.マンニトール利尿
c.処置前または/および処置後の水和剤(経口または非経口)
d.フロセミドのような環状利尿剤の投与による人工利尿、または
e.チオ硫酸塩の経口または非経口投与
これらのものは治療を受ける患者に追加的な危険性を生じさせる。例として、高張含塩下剤(NaCl 30mg/ml)の投与は、医原性の高ナトリウム血症の危険性を生じさせる。高ナトリウム血症は医学的に生命を奪いかねない非常状態であり、高張含塩下剤の投与はナトリウム血清が増加する患者、または充血心臓疾患の患者に逆の効果を与える。フロセミドのような腎臓により尿の生成を増加させる強力な環状利尿剤の使用は、医原性低カリウム血症、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、循環血液量減少症、代謝性塩基性症、低塩素血症の危険性を増大させる。これら全ての状態は生命を危険にさらすものである。それらは本発明の実施により回避できるものである。
【0021】
本発明の好適な一実施例は、特に単位服用形態においてシスプラチン、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)、塩化ナトリウムと塩酸、またはリン酸からなる注射可能の無菌で安定した水溶液、または懸濁液である。無菌性を保つために密封された容器で保管される。この溶液はガン患者の人体へ静脈注射に特に適している。好ましくは、シスプラチンの濃度が約0.1mg/mlから1.0mg/mlの間にあるのがよい。また好ましくは、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の濃度が1mg/mlないし最大溶解濃度にあるのがよい。その最大溶解濃度については、ジメスナの場合約320mg/ml(水または生理的食塩水のどちらかにおいて測定)、より好ましくは5mg/mlから100mg/mlの間(二ナトリウム塩として計算)にあるのがよい。
【0022】
好ましくは、塩化ナトリウムの濃度が1から25mg/mlの間で、より好ましくは、9から25mg/mlの間にあるのがよく、塩酸またはリン酸がpH値2から6の範囲、より好ましくは4から6の範囲にあるかまたは維持するに十分な濃度である。望ましくは、組成物はpH値を維持するための緩衝剤、特に酢酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムの単独または組み合わせを含む。
【0023】
好ましくは、本発明の組成物は、例えば通常溶液で約10から約25mg/mlの、より好ましくは10から15ml/mlのマンニトールを含む。
【0024】
本発明の組成物は、任意の順序で成分を混合して調合されうる。
【0025】
有効成分と他の任意成分の同じ相対比率が、本発明の他の組成物を調合する場合にも適用されうる。このようなことから、シスプラチンとスルホネート(二ナトリウム塩として計算)の重量比は、1:1から1:3200までの間が好ましく、さらに1:5から1:1000までの間がより好ましい。
【0026】
他の2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の塩が二ナトリウム塩として使用される場合、スルホネートの濃度または比率はモル濃度に従って調整される。二ナトリウム塩であるジメスナの1gは、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)陰イオン4.63ミリモルと当量である。
【0027】
2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)は、シスプラチンに対しての混加物とした場合またはシスプラチンとは別にその前後に投与される場合のどちらにおいても、凍結乾燥形態で調製されるのが好ましい。スルホネートの水溶液または凍結乾燥物は、pH値の広い範囲に渡って、特に1.5から9の間で安定している。このようなことから、スルホネートが別々に投与される場合、pH値は4から9の範囲にあるのが好ましい。本発明によるシスプラチン−スルホネート組成物もまた凍結乾燥物として保存されることが好ましい。凍結乾燥物は無菌水、ブドウ糖(5%)と水、”通常の”生理食塩水またはリンゲル液で再調合されうる。再調合溶液は、薬調合の微細凝集を避けるために無菌0.2ミクロンの濾材で濾過されるのが好ましい。
【0028】
シスプラチン、または本発明のシスプラチンを含む組成物の投与は、通常非経口で行われ、例として静脈注射、動脈注射、腹膜内注射、皮下注射、洞内注射、胸膜内注射により行われる。好ましい方式は、水溶液または懸濁液での注射によるものであり、静脈注射での実施が好ましい。スルホネートは非経口(上記の通り)または経口で、シスプラチンとは別に投与できる。
【0029】
投与方法の組み合わせで多様な治療法が可能であり、例として(a)本発明の組成物の一回投与、(b)始めにスルホネートを投与し、次に24時間以内でシスプラチンの投与、または(c)始めにスルホネートを投与し、次に一時間後にシスプラチンの投与、続いてシスプラチンおよびスルホネートの同時投与、1時間後シスプラチン投与の達成、さらにスルホネートの投与。
【0030】
スルホネートが経口で与えられる場合、薬学的調合技術においての従来の如何なる形態でも調合されうる。経口投与のための固形投薬形態は、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、顆粒を含む。それらは賦形剤を含み、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、または担体である。他の任意添加物として薬学調合技術において知られている充填剤、結合剤、湿潤剤、分解剤、抑制剤水溶液、吸収加速剤、水和剤、吸着剤、滑剤、緩衝剤がある。
【0031】
類似する型の固形組成物も、高分子量のポリエチレングリコールおよびその同等物のみならずラクトースまたは乳糖のような賦形剤を使用して、柔らかくまたは硬く充填したゼラチンカプセル中の充填剤として使用されうる。
【0032】
好ましくは、組成物は腸管のある一部分で2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)を遅らせて遊離するよう調合されるのがよい。そのような組成物のための包埋剤の例として高分子物質またはロウ物質がある。
【0033】
経口投与のための液状服用形態は、生理学的許容乳剤、溶液、懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤を含む。
【実施例】
【0034】
以下の実施例の説明は本発明を限定するものではない。記載のある”薬びん”とは、シスプラチンを蛍光への露出から保護するための”琥珀色の薬びん”のことである。
【0035】
実施例1
(a)2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の調製
以前よりL.Lamaire and M.Reiger,J.Org.Chem.26,1330−1,(1961)で報告されている通り、2,2’−ジチオ−ビス(エタン)スルホネート)二ナトリウムは、水中の2−メルカプトエタンスルホネートを当モルのヨウ素で酸化させることにより調製された。
(b)2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の安定化
このようにして調製されたスルホネート50mgが1mlの水の中で溶解され、水中1Nの塩酸を加えることにより水溶液のpH値が1.5,2.0,3.0,4.0,5.0,6.0に、水中1Nの水酸化ナトリウムを加えることにより水溶液のpH値が8.0,9.0,10.0,11.0に調整された。その後水溶液は室温中で24時間攪拌され、減圧により水分が除去され、そして残留物がスペクトル分析等級のDO中で溶解された。陽子核磁気共鳴法のスペクトルは初期の物質に対応するピークのみ示した。
【0036】
pH値1.5の水溶液を100℃で10分間加熱したが、陽子核磁気共鳴法のスペクトルは何の変化もしなかった。
【0037】
メスナおよびジメスナが異なるピークを示すことに注目し、それによりジメスナからメスナへの減成が監視し得る。メスナの陽子核磁気共鳴法によるスペクトルは2.88δおよび3.19δの多重線であり、ジメスナのそれは3.09δである。
(c)シスプラチンと2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の安定水溶液の調製
無菌、注射可能、0.9%w/vの塩化ナトリウム水溶液(米国薬局方等級品質)に純粋な塩酸(99.999%)を加え、2.0から6.0の範囲のpH値とした。純粋なシスプラチンを上記塩化ナトリウム水溶液1mg/mlに加え、室温にある暗室において攪拌(1500-2500rpm)により約60分から90分で、完全に溶解した。次に、水溶液ml当たりに上記で調製されたジメスナ15mgを加え、完全に溶解するまで混合物を攪拌した。さらに純粋な塩酸を加えることにより、最終的なpH値は2.0から6.0の範囲以内に調整された。水溶液は、0.2ミクロンの無菌フィルター(VWR Scientificより入手)でろ過されることにより無菌化され、無菌注射液用薬びんに保管された。各薬びん中には、水溶液ml当たり約0.9mgのシスプラチンおよび14.3mgの2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)が含まれていた。
【0038】
実施例2
室温で5分から10分の間攪拌(1500-2500rpm)により完全に溶解されたジメスナの塩化ナトリウム水溶液15mg/mlを、0.9%w/v塩化ナトリウムの無菌注射可能水溶液(米国薬局方等級品質)に加えた。純粋(99.999%)な塩酸を加えることで、水溶液のpH値は2.0から6.0の範囲以内に調整された。純粋(99.999%)なシスプラチンをジメスナ水溶液1mg/mlに加え、完全に溶解するまで暗室で混合物を攪拌した。残りの工程は、実施例1(c)と同様に行い、ほぼ同等の組成物溶液を得た。
【0039】
実施例3
ジメスナ無菌水溶液15mg/mlに、塩化ナトリウム結晶体のジメスナ溶液9mg/mlを加えること以外は実施例2が繰り返された。各薬びん中には、注射水溶液ml当たり約1.0mgのシスプラチンおよび14.3mgのジメスナが含まれていた。
【0040】
実施例4
シスプラチン0.5mg/mlおよびジメスナ30mg/mlが使用されること以外は実施例1(c)が繰り返された。各薬びん中には、注射溶液ml当たり0.5mgのシスプラチンおよび30.0mg/mlのジメスナが含まれていた。
【0041】
実施例5
0.1%w/vの塩化カリウム濃度を与えるために、米国薬局方等級品質の塩化カリウム結晶体が塩化ナトリウム酸性溶液中で溶解されること、および30mg/mlのジメスナが使用されること以外は実施例1(c)が繰り返された。各薬びん中には、注射溶液ml当たり1.0mgのシスプラチンおよび30.0mgのジメスナが含まれていた。
【0042】
実施例6
1.0%w/vのマンニトールを与えるために、純粋なマンニトール(純度99+%、Aldrich Chemical Companyより購入)が塩化ナトリウム溶液中で溶解されること、および30mg/mlのジメスナが使用されること以外は実施例1(c)が繰り返された。各薬びん中には、注射溶液ml当たり約1.0mgのシスプラチンおよび30.0mgのジメスナが含まれていた。
【0043】
実施例7
シスプラチンおよび2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)を含み、非ろ過、酸性化された塩化ナトリウム水溶液が、市販装置を使用して凍結乾燥されること以外は実施例1(c)が繰り返された。患者に投与する必要があるまでの6ヶ月から1年までの間、光を遮断する琥珀色の薬びん中に室温下で凍結乾燥物が保存されうる。それは、無菌水(米国薬局方等級品質)を用いて再調製でき、もし必要であれば塩酸またはリン酸を用いてpH値2.0から6.0まで再酸性化でき、水溶液は、0.2ミクロンの無菌フィルターを通過させられる。
【0044】
実施例8
フィッシャー・ネズミにおいて、シスプラチンにより誘導された腎毒性および骨髄抑圧に対しての、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(BNP7787)による保護の生体実証
本実施例は、腎毒性を誘導する量のシスプラチン(6mg/kg,一本の静脈注射)
が投与されているフィッシャー・ネズミ(体重150-200g)へ、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(=BNP7787)を一本の静脈注射により1000mg/kgで投与された、つまり2つの薬品が同時に投与された場合(ほぼ同時に投与された場合)の、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)(=BNP7787)による生体保護効果を示す。
【0045】
研究実験のための好条件下において、フィッシャー・ネズミ(処置グループ当たり10匹)が以下のように処置された。
グループ1: 非処置
グループ2: 通常の生理食塩水
グループ3:1000mg/kg BNP7787
グループ4:6mg/kgシスプラチン
グループ5:6mg/kgシスプラチンおよび37mg/kg BNP7787
グループ6:6mg/kgシスプラチンおよび111mg/kg BNP7787
グループ7:6mg/kgシスプラチンおよび333mg/kg BNP7787
グループ8:6mg/kgシスプラチンおよび1000mg/kg BNP7787
クレアチニン(図1)、血入尿素窒素血清剤(BUN)(図2)がそれぞれmg/dl単位で、および平均血漿中白血球数が1000個/mm単位で(図3)5日間計測され、試験動物が毎日体重計測された。図1〜図3は、グループ1〜8が左から右の順の並びで棒グラフの形態により実験結果を示している。図1および図2で示すように、BNP7787は十分な腎保護をしていることを実証している(BNP7787が333および1000mg/kgの場合100%)。図3で示すように、2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の高投与量(333および1000mg/kg)は、それぞれ約6800および6200の白血球数を与えた。これらは非処置検定値の場合の白血球数の15%以内である。シスプラチンのみの場合、および2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の低服用量(37mg/kg)処置グループの場合の5日間平均白血球数は、それぞれ約4800および4500であり、非処置検定グループと比較して32%から36%の減少がある。フィッシャー・ネズミ試験体は、人体の場合におけるシスプラチン誘導の腎毒性と高い相互関係がある。
【0046】
このようにして本試験は、スルホネートの高投与量による100%腎保護を含むシスプラチン誘導の腎毒性および骨髄抑圧から腎保護をする2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の効果を実証するものである。
【0047】
実施例9
2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)の非経口投与によるシスプラチンの抗腫瘍活性の増強
BNP7787(1000mg/kg)がほぼ同時に静脈投与されるか又はされずとも、静脈投与されるシスプラチン(6mg/kgおよび9mg/kg)の増大する投与量による抗腫瘍活性および有毒性は、腫瘍部体積および試験動物体重の各変化により概算される重量変化で計測され、皮下にWARD結腸ガン腫瘍(約3.0g)を株化されたFischerネズミを用いて研究された。WARD腫瘍は非処置検定のネズミにおいて、7日間で3.0gから10gに成長した。
【0048】
その結果が図4および図5において、平均体重(図4)および腫瘍部重量の中央値(図5)が縦座標に、日数表示の時間が横軸に対応するよう曲線表示されている。両図における識別符号は以下の通りである。
白丸 = 非処置、検定値
黒丸 = BNP7787 1000mg/kg
白逆三角 = シスプラチン(CDDP)6mg/kg
黒逆三角 = シスプラチン9mg/kg
白四角 = シスプラチン6mg/kg、およびBNP7787 1000mg/kg
黒四角 = シスプラチン9mg/kg、およびBNP7787 1000mg/kg
図4に見られるように、シスプラチン(6mg/kgおよび9mg/kg)のみ処置されたネズミは6日間で自体重の8%まで減少するところ、BNP7787処置および腫瘍非処置状態のネズミは約6日間で自体重の約2%から4%しか減少しない。シスプラチンが両方の投与量(6mg/kgおよび9mg/kg)で、さらにBNP7787(1000mg/kg)を静脈注射で処置することは、それを受けたネズミが他全ての処置グループのネズミの自体重よりも大きいことから分かるように(白四角、黒四角と白三角、黒三角とを比較)、腎障害に対して保護がなされることが明らかである。この試験結果は、BNP7787による処置が、ネズミの体重を減少させる原因となる神経系毒性および嘔吐を含むシスプラチン関連の他の毒性を減少または予防しうることを示唆している。
【0049】
そのうえさらに、BNP7787は6mg/kgおよび9mg/kgの両投与量グループにおけるシスプラチンの抗腫瘍活性を増強した(図5中でそれぞれ白四角、黒四角にあたる)。投与量6mg/kgおよび9mg/kgのシスプラチンのみ処置されたネズミは、腫瘍部重量中央値の最も減少した値が3000mgからそれぞれ700mgおよび500mgまでとなった。投与量6mg/kgおよび9mg/kgのシスプラチンの処置に続いて直ぐに投与量1000mg/kgのBNP7787一本静脈注射処置されたネズミは、腫瘍部重量中央値の最も減少した値が3000mgからそれぞれ300mg以下及び100mgまでとなった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の組成物は、抗ガン剤による治療を受けていない(非処理の)患者、または以前に(複数の)抗ガン剤により治療を受けた患者に対して適用されうる。また、この組成物は一種または複数種の他の抗ガン剤との組み合わせでガン患者に投与することも可能である。特に他の抗ガン剤とは5−FU、ブレオマイシン、VP−16(エトポサイド)、シクロホスファミド、イホスファミド、ロイコボリン、メトトレキセート、ビンブラスチンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)又はその薬学的に許容される塩で構成され、ガン患者へ投与するための組成物であって、凍結乾燥の形態を有し、かつ水溶液又は無菌で注射可能な水溶液に再調製したとき、水溶液のpH値が1.5〜9である組成物。
【請求項2】
メスナの生成を防止する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
水溶液のpH値が4ないし9である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
塩酸又はリン酸で水溶液のpHが調整されている請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
水溶液がさらに緩衝液を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
水溶液が塩素陰イオンならびにナトリウムおよび水素陽イオンを含む請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
1.0ないし320mg/mlの2,2’−ジチオ−ビス(エタンスルホネート)又はその薬学的に許容される塩を含む請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
さらにマンニトールを含む請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに10ないし25mg/mlのマンニトールを含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211198(P2012−211198A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172119(P2012−172119)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2008−47977(P2008−47977)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(500175967)バイオニューメリック・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】