説明

2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体およびその保存方法

【課題】 搬送または貯蔵を行っても結晶粒子が固結することがなく、取扱い性良好な2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体およびその保存方法を提供する。
【解決手段】 密閉容器内に保存される下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体であって、当該粉体に含まれる水分量が0.5重量%以下である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体に関し、詳しくは、吸湿に因る固結を防止した2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体およびその保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸などの下記一般式(1)に示される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸は、水性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、可塑剤、潤滑油、界面活性剤、化粧品の基材、反応性モノマーなどの原料として広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【化1】

【0004】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸は、通常、粒状の結晶粒子形態を有して製造され、搬送または貯蔵された後に、販売または使用されている。しかしながら、搬送または貯蔵した後に、粒状の結晶粒子形態が変化し、結晶粒子が固結するという問題点がある。上記の結晶粒子の固結は、一般式(1)において、特にRの炭素数が2以上の場合に顕著となる。すなわち、Rの炭素数が1である2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸においては、上記結晶粒子の固結はそれほど生じないが、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸などのRの炭素数が2以上の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸に対し、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と同様の条件で搬送または貯蔵を行った場合、上記結晶粒子の固結が容易に起こる。
【0005】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の結晶粒子が固結すると、結晶粒子の流動性が低下し、上記搬送、貯蔵、販売、使用などの各過程において、取り扱い性が著しく低下する。また、結晶粒子の固結により結晶粒子の粒径が不均一となるため、各種用途に使用した際に不具合が生じる。例えば、水性ポリウレタン樹脂において、固結により不均一な結晶粒径を有する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を使用した場合、得られる水性ポリウレタン樹脂の耐久性などに悪影響を及ぼす。
【0006】
したがって、搬送または貯蔵を行っても結晶粒子が固結することのない2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体、特に一般式(1)においてRの炭素数が2以上の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の提供が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特公昭61−5485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、搬送または貯蔵を行っても結晶粒子が固結することがなく、取扱い性良好な2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体およびその保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体中の水分量が結晶粒子の固結に大きく影響しており、水分量を一定値以下に調節することにより、結晶粒子の固結を顕著に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の要旨は、密閉容器内に保存される下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体であって、当該粉体に含まれる水分量が0.5重量%以下であることを特徴とする2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体に存する。
【0011】
【化2】

【0012】
本発明の第2の要旨は、密閉容器内に下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を保存する方法であって、当該粉体に含まれる水分量を0.5重量%以下に調節することを特徴とする2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の保存方法に存する。
【0013】
【化3】

【0014】
本発明の第3の要旨は、密閉容器内に保存される下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体であって、6ヶ月保存した後の当該粉体に含まれる水分量が0.5重量%以下であることを特徴とする2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体に存する。
【0015】
【化4】

【発明の効果】
【0016】
本発明の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体は、長期間の搬送または貯蔵を行っても結晶粒子が固結することがなく、取扱い性良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を構成する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0018】
【化5】

【0019】
一般式(1)において、Rは置換されていてもよい直鎖または分岐の炭素数1〜7の飽和アルキル基を示す。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、iso−ヘキシル等が例示され、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル及びiso−プロピル基である。Rの置換基としては、反応条件下で不活性であれば特に制限されず、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基である。本発明の効果はRが2以上の場合に顕著であり、特にR=2の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸が好ましい使用対象である。
【0020】
上記2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造することが出来る。例えば、塩基性触媒存在下、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとのアルドール反応によって2,2‘−ビス(ヒドロキシメチル)アルカナールを得(特開平11−222453号公報参照)、次いで、過酸化水素、過イソ酪酸、酸素または空気により酸化する方法(特開平11−100349号公報参照)が例示される。また、酸性触媒下でトリメチロールプロパンとホルムアルデヒドとを反応させ、硝酸を主成分とする酸触媒存在下で生成物を酸化し、更に酸性触媒存在下で得られた環状カルボン酸を分解する方法(特開2002−226426号公報参照)も例示される。
【0021】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸は、通常、結晶粒子から成る粉体として得られる。粉体としては、1.0cm以上の塊状物は含まないことが好ましい。また、重量平均粒径において±300μmの範囲内に粒子の90重量%以上が属する様な粒径分布を有する粉体であることが好ましく、更に、粒子の90重量%以上が±600μmの範囲内に属する様な粒径分布を有する粉体であることが好ましい。
【0022】
本発明の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体は、粉体に含まれる水分量が0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下であり、密閉容器内に保存されている。粉体に含まれる水分量が0.5重量%を超える場合、一般式(1)におけるRの炭素数が2以上の場合において、結晶粒子の固結が生じ易くなり、また、Rの炭素数が1の場合でも、湿度による変質などが生じ易くなる。本発明において、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体に含まれる水分量を可能な限り除去することが理想的であるが、コスト的な見地から実用的でなく、また、粉体に含まれる水分量を0.5重量%以下に調節することで固結防止の効果が十分得られる。
【0023】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量は、例えばカールフィッシャー法などにより簡便に測定できる。具体的には、三菱化学社製カールフィッシャー法水分計「CA−06」(電量滴定式水分測定装置)を使用し、結晶粒子を溶解して測定する。
【0024】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量を本発明の範囲内にするための方法としては、特に限定されず、例えば、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の製造工程において、本発明の範囲内の水分量になるまで乾燥を行い、密閉容器に保存する方法が挙げられる。すなわち、不純物を除去するために水または各種有機溶剤などを使用して2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の晶析を行い、固液分離工程を経て結晶粒子として回収し、次いで、常圧または減圧下で2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の融点より低い温度下で目的の水分量になるまで乾燥させる。
【0025】
上記の方法において、晶析溶媒中の含水率、固液分離工程の脱溶剤率および乾燥工程における脱水乾燥率が、最終的な2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の水分量を決定する要因となる。すなわち、含水率の低い晶析溶媒を使用すれば、後の工程における脱水乾燥の負荷を低減できるが、その様な晶析溶媒はコスト高となる。また、含水率がそれほど低くない通常の晶析溶媒を使用すれば、後の固液分離工程および乾燥工程での負荷が大きくなる。したがって、晶析工程(使用する晶析溶媒の含水量)、固液分離工程、乾燥工程の各工程における脱水量の負荷バランスは、全工程を通して最も経済性に優れる様に配分されることが好ましい。密閉容器内に、上記の様にして水分量が0.5重量%以下に調節された2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を保存すればよい。
【0026】
密閉容器としては、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を保存可能であれば特に制限は無い。密閉容器を構成する材料としては、特に制限は無く、具体的には、(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、PET、フッ素樹脂などのガス透過性の低い熱可塑性樹脂、(2)無機物や有機物フィラーを多量に添加し、気体透過性を低下させた熱可塑性樹脂と、物性バランスを保持するための他の熱可塑性樹脂と多層成形した材料、(3)熱可塑性樹脂から成る成形体に、気体不透過性の金属膜を貼り合わせた材料、(4)熱可塑性樹脂から成る成形体に、気体不透過性の金属蒸着層を設けた材料、(5)水蒸気透過性の低い熱可塑性樹脂に粘着性樹脂の様な疎水性の添加剤を添加した材料などが例示される。これらの中から、コスト及び実用性を考慮して適宜選択すればよい。
【0027】
上記の密閉容器を構成する材料の中でも、JIS−Z0208で規定される防湿包装材料の透湿度試験方法に準じて測定される40℃における透湿度が、通常5g/m・日以下、好ましくは3g/m・日以下、更に好ましくは1g/m・日以下である材料が好ましい。
【0028】
上記の透湿度を有する透湿性の低い材料としては、(1)化学構造的にガス透過性の小さい熱可塑性樹脂、(2)無機物および/または有機物フィラーを多量に添加して気体透過性を低下させた熱可塑性樹脂と、物性バランスの保持から他の熱可塑性樹脂とを多層成形した材料、(3)熱可塑性樹脂から成る成形物に気体不透過性の金属膜を貼り合わせた材料、(4)熱可塑性樹脂から成る成形物に気体不透過性の金属蒸着層を設けた材料、(5)水蒸気透過性の低い熱可塑性樹脂に粘着性樹脂の様な疎水性の添加剤を加えた材料などが例示される。上記の目的とする透湿度を満足し、コスト及び実用性を考慮して適宜選択すればよい。
【0029】
密閉容器の大きさは、有効容積として通常0.001〜1mである。有効容積が1mを超える容器を使用した場合、保存する2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の量が多いため、自重により固結する可能性がある。密閉容器の厚みは、通常0.01〜10mm、好ましくは0.05〜5mmである。密閉容器を構成する材料の透湿度が高い場合は、密閉容器の厚みを厚くするか、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を密閉保存した容器をさらに密閉容器に保存する(2重に密閉する)等の対策をとればよい。
【0030】
2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸を密閉した容器は、更に、上記の保存容器、またはそれ以外の容器に入れて密封してもよい。例えば、上記の保存容器に密閉した状態、またはそれ以外の状態の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を一斗缶などの金属製容器で密閉してもよい。一斗缶などの金属容器は、容器の内側または外側に樹脂コーティングを施したもの、樹脂フィルムで内張り加工を施したものであってもよい。
【0031】
密閉容器内には、固結防止剤(吸湿防止剤、脱水剤)を添加することが好ましい。これにより、外部からの湿気による影響を防ぐことが出来る。特に透湿度の高い材料から成る容器の場合に固結防止剤を添加することが好ましい。また、水分量が0.5重量%を超える2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を固結防止剤により密閉容器内で乾燥させて、本発明の範囲内の水分量に調節することも出来る。しかしながら、固結防止剤で水分量が余りにも多い2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を乾燥することは、固結防止剤を無駄に使用することとなり、好ましくない。固結防止剤を使用して乾燥する場合、密閉容器内に保存する前の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量が0.8重量%以下となるまで乾燥することが好ましい。
【0032】
上記の固結防止剤(吸湿防止剤、脱水剤)は、密閉容器内で水分量が0.5重量%以下に調節された2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を保存させる場合も好ましく使用される。固結防止剤としては、特に限定されないが、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の用途やコスト等を考慮して適宜選択することが好ましく、シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、分岐鎖アミノ酸、カルシウム塩、マグネシウム塩、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、ゼオライト、タルク、けい藻土、パーライト、燐酸水素二ナトリウム等が例示される。これらの固結防止剤は、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
上記のカルシウム塩としては、有機カルシウム塩および無機カルシウム塩の何れであってもよく、燐酸一水素カルシウム、燐酸二水素カルシウム、炭酸カルシウム、燐酸三カルシウム、ケイ酸カルシウム、無水塩化カルシウム、水酸化カルシウム、グルコン酸カルシウム等が例示され、これらは2種以上組合せて使用してもよい。上記のマグネシウム塩としては、有機マグネシウム塩および無機マグネシウム塩の何れであってもよく、酸化マグネシウム、乾燥硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、塩化マグネシウム、無水硫酸マグネシウム等が例示され、これらは2種以上組合せて使用してもよい。
【0034】
固結防止剤の添加形態は特に限定されず、用途、コスト等によって適宜選択すればよい。具体的には、(1)2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸結晶粒子に直接混合・添加した形態、(2)固結防止剤を入れた保存容器内に、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体が保存されている密閉または半開の保存容器を入れて密閉した形態、(3)2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を密閉した容器を外袋で密閉し、外袋の中に固結防止剤を入れる形態などが例示される。
【0035】
上記の(1)の形態としては、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸結晶粒子に直接混合・添加するため、用途により固結防止剤を選択する必要がある。また、密閉容器の内部に、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸結晶粒子とは直接接触しない様に固結防止剤を添加する方法であってもよい。例えば、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸結晶粒子よりも目開きの小さい袋に固結防止剤を入れ、これを2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体中に1つ以上入れておく方法や、密閉容器の上部壁面などに固結防止剤を設置する場所を設け、天地逆にならない様に保存する方法なども好ましい。
【0036】
上記の(2)の形態としては、具体的には、一斗缶などの金属容器に2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を入れた密閉容器を入れ、同時に金属容器内に固結防止剤を入れる。一斗缶などの金属容器の内側または外側に、樹脂コーティングを施したり、樹脂フィルムで内張り加工を施してもよい。また、ファイバードラム等を使用してもよい。上記の(3)の形態における外袋としては、上述の透湿性の低い材料を使用した外袋であることが好ましい。
【0037】
次に、本発明の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の保存方法について説明する。本発明の保存方法は、上記で説明した密閉容器に、上記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量を0.5重量%以下に調節する保存方法である。水分量を0.5重量%以下に調節する方法としては、透湿性の低い材料を使用した容器を使用する方法、上記の固結防止剤を使用する方法、これらを組合せた方法などが例示される。
【0038】
保存温度は、通常40℃以下、好ましくは35℃以下である。保存温度が40℃を超える場合、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量が低くても、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体が固結することがある。
【0039】
密閉容器中の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量は、6ヶ月以上、好ましくは1年以上、更に好ましくは3年以上の長期保存後においても、0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下に保たれる。これにより、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の固結を防止することが出来る。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の水分量は、三菱化学社製カールフィッシャー法水分計「CA−06」(電量滴定式水分測定装置)を使用し、結晶粒子を溶解し、カールフィッシャー法により測定した。
【0041】
実施例1:
延伸ナイロン(15μm)/ポリエチレン層(20μm)/アルミニウム薄膜(9μm)/ポリエチレン層(20μm)/帯電防止ポリエチレン層(70μm)から成る厚さ134μmの多層フィルム構造を有し、有効容積1.8リットルの保存容器を作成し、水分量0.01重量%の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の粉体1000gを入れ、バキュームシーラーにより密閉した。保存容器の透湿度は0.01g/m・日以下であった。室温26℃、湿度40%の恒温室内に6ヶ月保管した後、開封して2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の粉体の水分量を測定したところ、0.01重量%であり、粉体の固結は全く見られなかった。
【0042】
実施例2:
厚さ180μmのLDPEから成る有効容積1.8リットルの帯電防止袋を作成し、水分量0.10重量%の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の粉体1000gとシリカゲル30gとを入れ、バキュームシーラーにより密閉した。保存容器の透湿度は0.6g/m・日であった。室温26℃、湿度40%の恒温室内に6ヶ月保管した後。開封して2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の粉体の水分量を測定したところ、0.01重量%であり、粉体の固結は全く見られなかった。
【0043】
比較例1:
厚さ120μmのLDPEから成り、有効容積1.8リットルの帯電防止袋を作成し、水分量0.01重量%の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の粉体1000gを入れ、バキュームシーラーにより密閉した。使用した保存容器の透湿度は10g/m・日であった。室温26℃、湿度40%の恒温室内に6ヶ月保管した後、開封して2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸の粉体の水分量を測定したところ、0.53重量%であり、粉体の固結が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に保存される下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体であって、当該粉体に含まれる水分量が0.5重量%以下であることを特徴とする2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体。
【化1】

【請求項2】
一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸が2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸である請求項1に記載の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体。
【請求項3】
密閉容器を構成する材料のJIS−Z0208に準じて測定される40℃における透湿度が、5g/m・日以下である請求項1又は2に記載の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体。
【請求項4】
密閉容器内に下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体を保存する方法であって、当該粉体に含まれる水分量を0.5重量%以下に調節することを特徴とする2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体の保存方法。
【化2】

【請求項5】
一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸が2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸である請求項4に記載の保存方法。
【請求項6】
密閉容器を構成する材料のJIS−Z0208に準じて測定される40℃における透湿度が、5g/m・日以下である請求項4又は5に記載の保存方法。
【請求項7】
密閉容器内に保存される下記一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体であって、6ヶ月保存した後の当該粉体に含まれる水分量が0.5重量%以下であることを特徴とする2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体。
【化3】

【請求項8】
一般式(1)で表される2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸が2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸である請求項7に記載の2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)アルカン酸の粉体。