説明

2,2−ジブロモマロンアミドの製造方法

本発明は、一般的に、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドから2,2−ジブロモマロンアミドを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
関連出願の相互参照
本件は、米国仮特許出願番号第61/263,423号(2009年11月23日出願)の利益を主張し、その全部を参照により本明細書に組入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、2,2−ジブロモマロンアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
化合物2,2−ジブロモマロンアミドは、とりわけ、化学産業および関連産業(例えば微生物制御産業)における製品、出発物質、および含有成分として有用である。
【0004】
米国(U.S.)特許第4,241,080号は、とりわけ、2,2−ジブロモマロンジアミド(すなわち2,2−ジブロモマロンアミド)およびその製造に言及する。製造例は、対応する非ハロゲン化アミド、マロンジアミド(すなわちマロンアミド)と、ハロゲン(特に臭素)との、水性溶液中での酸触媒反応である。
【0005】
化学および関連の産業は、2,2−ジブロモマロンアミドを高収率および高選択性で製造するための改善されたプロセスを所望する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の簡単な要約
本発明は、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドから2,2−ジブロモマロンアミドを製造する方法に関する。
【0007】
第1の態様において、本発明は、2,2−ジブロモマロンアミドの製造方法であり、該方法は、ある量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドと有効量のニトリル−アミド−転化組成物とを一緒に接触させて反応混合物を形成することを含み、2,2−ジブロモマロンアミドを生成するように該接触を行う。
【0008】
第2の態様において、本発明は、第1の殺生物配合物を第2の殺生物配合物に転化する方法であり、該方法は、第1の量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドおよび水を含む第1の殺生物配合物を準備すること、該第1の殺生物配合物および有効量のニトリル−アミド−転化組成物を一緒に接触させて、第2の殺生物配合物を含む反応混合物を形成することを含み、該第2の殺生物配合物が水および2,2−ジブロモマロンアミドを含み、第2の殺生物配合物を(インサイチュで)生成するように該接触を行う。
【0009】
本発明の方法は、2,2−ジブロモマロンアミド、ならびに2,2−ジブロモマロンアミド、水、および任意に少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分を含む殺生物配合物を製造するのに有用である。本発明の方法によって製造される2,2−ジブロモマロンアミドは、化学産業および関連産業(例えば微生物制御産業)において、製品(例えば特殊化学品)、出発物質(例えば医薬化合物の合成において)、および含有成分(例えば抗微生物組成物の成分として)、として有用である。本発明の方法によって製造される殺生物配合物は、従来の殺生物用途(例えば、水系(例えば水冷却塔)における微生物制御等)において有用である。
【0010】
追加の態様は本明細書の残りの部分(特許請求の範囲を含む)で説明する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、先に要約したような2,2−ジブロモマロンアミドの製造方法に関する。本発明はまた、第2の態様の本発明の方法によって製造される第2の殺生物配合物に関する。幾つかの態様において、第2の殺生物配合物は、少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分を更に含む。幾つかの態様において、少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分は、過酸化水素を含む。幾つかの態様において、少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分は、第1の量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの未反応部分を含み、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの未反応部分(すなわち第2の量)は、第1の量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドよりも少ない。幾つかの態様において、少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分は、過酸化水素、およびある量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの未反応部分を含む。幾つかの態様において、第2の殺生物配合物は、ある量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの未反応部分を含まない(すなわち、第1の量および反応してその生成物を形成した2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの量が同じである)。幾つかの態様において、第2の殺生物配合物は、過酸化水素およびある量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの未反応部分を含まない。
【0012】
米国特許実務および主題を参照により組み入れることを許容する他の特許実務の目的で、発明の簡単な要約または発明の詳細な説明に記載される各米国特許、米国特許出願、米国特許出願公開、PCT国際特許出願およびWO公開(これと同等の)の全内容は−特記がない限り−参照により組入れる。本明細書に記載されることと特許、特許出願もしくは特許出願公開、またはこれらの参照により組入れる部分に記載されることとに矛盾がある場合には、本明細書に記載されることが優先する。
【0013】
本件において、数値範囲の任意の下限値、または該範囲の任意の好ましい下限値は、該範囲の任意の上限値、または該範囲の任意の好ましい上限値と組合せて該範囲の好ましい側面または態様を規定することができる。数値の各範囲は、全ての数値(有理数および無理数の両者)、その範囲内に包含されるもの(例えば約1〜約5の範囲、例えば1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,および5が挙げられる)を包含する。
【0014】
括弧なしで列挙される単位値,例えば2インチと、括弧付で列挙される対応する単位値,例えば(5センチメートル)との間に矛盾がある場合には、括弧なしで列挙される単位値が優先する。
【0015】
化学名と構造との間に食い違いがある場合には、構造が優先する。
【0016】
本明細書で用いる“a”,“an”,“the”,“少なくとも1”,“1またはそれを超える”は互換的に用いる。本開示に記載する本発明の任意の側面または態様において、数値範囲を説明する語句における用語「約」は、語句から削除して本発明の別の側面または態様を与えてもよい。用語「約」を用いる先の側面または態様において、「約」の意味はその使用の文脈から解釈できる。好ましくは、「約」は、数値の90%〜100%、数値の100%〜110%、または数値の90%〜110%を意味する。本開示で記載する本発明の任意の側面または態様において、開放型の用語「含む(comprising, comprises)」等(これは「含む(including)」、「有する(having)」および「特徴とする(characterized by)」と同義)は、それぞれの一部閉鎖型の語句「から本質的になる(consisting essentially of, consists essentially of)」等、またはそれぞれの閉鎖型の語句「からなる(consisting of, consists of)」等に置換えて本発明の別の側面または態様を与えることができる。本権において、要素(例えば含有成分)の先の列挙に言及する場合、語句「その混合物」「その組合せ」等は、任意の2つまたはそれを超える(全て等)列挙された要素を意味する。構成成分の列挙において用いる用語「または」は、特記がない限り、列挙した構成成分を個別、更に任意の組合せで意味し、個別構成成分のいずれかを列挙する追加の態様をサポートする(例えば、語句「10%またはそれを超える」を列挙する態様において、「または」は、「10%」を列挙する別の態様、および「10%超」を列挙する更に別の態様をサポートする)。用語「任意に」は、「伴ってまたは伴わずに」を意味する。例えば、「任意に少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分」は、少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分を伴いまたは伴わないことを意味する。用語「複数」は、2またはそれを超えることを意味し、ここで各複数は特記がない限り独立に選択される。符号「≦」および「≧」は、それぞれ、それまたはそれ未満、およびそれまたはそれを超えることを意味する。符号「<」および「>」は、それぞれ、それ未満またはそれを超えることを意味する。
【0017】
本開示で用いる用語「アミド」は、特記がない限り、カルボキシアミド(すなわち、構造−C(=O)−N<)を有するトリラジカル官能基を有する化合物)を意味する。
【0018】
用語「2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド」は、式(A):
【0019】
【化1】

【0020】
の化合物を意味する。
【0021】
2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの他の名称は、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドおよびDBNPAである。
【0022】
用語「2,2−ジブロモマロンアミド」は、式(B):
【0023】
【化2】

【0024】
の化合物を意味する。
【0025】
2,2−ジブロモマロンアミドの他の名称は、2,2−ジブロモマロンジアミド;2,2−ジブロモプロパンジアミド;およびDBMALである。
【0026】
前記したように、本発明の方法は、有効量のニトリル−アミド−転化組成物を用いる。用語「有効量」は、収率少なくとも50%の2,2−ジブロモマロンアミドを主題の特定反応(例えば第1の態様の方法)で得るのに十分な量を意味し、パーセント収率は2,2−ジブロモマロンアミド(反応してその生成物を形成するもの)の量を基準とする。生成物の例は、2,2−ジブロモマロンアミドおよび任意の反応副生成物である。反応する2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの量は、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの第1の量から未反応2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの量を差し引いたものである。好ましくは、量は、全ての2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドを消費するのにほぼちょうど十分な過酸化水素であり、残る未反応過酸化水素が5%未満であり、より好ましくは未反応過酸化水素が2%未満であり、更により好ましくは未反応過酸化水素が1%未満であり、更により好ましくは未反応過酸化水素が0.5%未満であるものである。典型的には、量は、2.0モル〜2.2モル、およびよりふさわしくは2.0モル〜2.1モルの過酸化水素(1.0モルの2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド当たり)である。
【0027】
好ましくは、ニトリル−アミド−転化組成物は、過酸化水素、または水と触媒量のニトリルヒドラターゼ酵素とを含む混合物を含む。
【0028】
幾つかの態様において、ニトリル−アミド−転化組成物は、水および触媒量のニトリルヒドラターゼ酵素を含む。ニトリルヒドラターゼ酵素は、単核鉄酵素および非コリノイドコバルト酵素(これらは構造的に多様なニトリルの、これらの対応するアミド(カルボキシアミド)への水和を触媒する)のファミリーを含む。ニトリルヒドラターゼ酵素はまた、他の名称,例えばNHアーゼ、ニトリラーゼ、脂肪族アミドヒドロリアーゼ、およびニトリルヒドロリアーゼによっても知られる。好ましいニトリルヒドラターゼ酵素は、酵素番号(ECナンバー)4.2.1.84を有するものであり、中温性微生物,例えばBacillus,Norcardia,Bacteridium,Rhodococcus,Micrococcus,Brevibacterium,Alcaligenes,Acinetobacter,Corynebacterium,Fusarium,およびKlebsiellaに見出される。任意のニトリルヒドラターゼ酵素は、本発明の方法における使用に好適である。そのようなニトリルヒドラターゼ酵素の1つの例は、好熱性株のBacillus sp.BR449(第US6,228,633B1号に記載されるように)によって産生される。第US6,228,633B1号のニトリルヒドラターゼは、温度範囲摂氏20度(℃)〜70℃およびpH約5〜9でニトリル官能基をアミド官能基に加水分解するための活性を有するという特徴を有する。
【0029】
より好ましくは、ニトリル−アミド−転化組成物は、過酸化水素および水を含む。更により好ましくは、ニトリル−アミド−転化組成物は、過酸化水素、水、および触媒量のアルカリ土類金属塩基(水酸化アルカリ土類金属または炭酸アルカリ土類金属であるもの)を含む。用語「アルカリ土類金属」は、カチオン形のリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムを意味し;好ましくはナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはカルシウム;およびより好ましくはナトリウムである。
【0030】
幾つかの態様において、ニトリル−アミド−転化組成物は、水、過酸化水素(すなわちH22)、および水酸化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ土類金属、炭酸水素アルカリ土類金属、またはこれらの任意の2種またはそれを超える混合物を含む触媒量のアルカリ土類金属塩基を含み、またはこれらから実質的になる。幾つかの態様において、ニトリル−アミド−転化組成物は、2,2−ジブロモマロンアミド、後述の第1の態様の発明の方法の先の実施からの母液または両者を更に含み、またはこれらから本質的になる。
【0031】
望ましくは、過酸化水素と2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドとの反応においてアルカリ土類金属塩基が触媒的に作用して本発明の方法に係る2,2−ジブロモマロンアミドを与え、それにより、好ましい塩基触媒での本発明の方法を提供すると発見し、考えられる。本発明の方法の反応の反応度はpHが低くなるに従って低減されると考えられるが、反応度は、ニトリル−アミド−転化組成物のpHが4.0まで下がっても2,2−ジブロモマロンアミドの経済的な商業生産に満足できる程度に維持される。
【0032】
アルカリ土類金属塩基(これは幾つかの態様において、ニトリル−アミド−転化組成物の一部である)が塩基性pH値(すなわち、pH7.0超のpH)で作用して2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの不所望生成物への不所望の分解を促進すると発見し、考えられる。逆に、2,2−ジブロモマロンアミドは塩基性pH値で実質的に2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドよりも安定である(すなわち10倍またはそれを超える)。ニトリル−アミド−転化組成物のpHがより塩基性になるに従って、アルカリ土類金属塩基はより多量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドを分解させる。2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドのこの塩基促進分解はpH9.0およびそれより上で特によく見られる。本発明の方法は、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドから2,2−ジブロモマロンアミドへの転化の間のインサイチュでの反応混合物のpHを、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの塩基促進分解を最小化または防止する一方で同時に2,2−ジブロモマロンアミドへの塩基触媒転化自体を促進するpH範囲に有利に維持する。
【0033】
好ましくは、本発明の方法の間の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの塩基促進分解を最小化するために、反応混合物のpHはインサイチュでpH8.9またはそれ未満、より好ましくはpH7.9またはそれ未満、更により好ましくはpH7.0またはそれ未満、および更により好ましくはpH<7.0に維持する。好ましくは、本発明の方法の間の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドから2,2−ジブロモマロンアミドへの塩基触媒転化を最大化するために、反応混合物のpHはインサイチュでpH4.0またはそれを超え、より好ましくはpH5.0またはそれを超え、および更により好ましくはpH5.5またはそれを超えるように維持する。幾つかの態様において、反応混合物のpHはインサイチュでpH5.5〜pH7.0、およびより好ましくはpH5.5〜pH<7.0に維持する。
【0034】
幾つかの態様において、本発明の方法は、反応混合物のpHをインサイチュで、2,2−ジブロモマロンアミドを少なくとも75パーセント(%)収率、より好ましくは少なくとも80%収率、更により好ましくは少なくとも85%収率、および更により好ましくは少なくとも90%収率(例えば95%またはそれを超える収率)で生成するような様式で上記pH範囲に維持することを含む。本開示において、2,2−ジブロモマロンアミドの全ての収率は、特記がない限り、反応した2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの量を基準とする。
【0035】
幾つかの態様において、本発明の方法は、反応混合物のpHをインサイチュで、本発明の方法が、反応混合物のpHがインサイチュで上記のpH範囲に維持されない場合に2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド、過酸化水素、または両者と反応する場合がある任意の他の任意配合物含有成分,特に他の配合物含有成分の存在下で、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの2,2−ジブロモマロンアミドへの転化の選択性を有することを特徴とする場合に、2,2−ジブロモマロンアミドを生成するような様式で上記pH範囲に維持することを更に含む。他の配合物含有成分の幾つかの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、およびプロパノール)、ならびにポリ(エチレンオキサイド)−プロピレンオキサイドコポリマー、ならびにこれらのブレンド物が挙げられる。更に別の配合物含有成分の例は、界面活性剤、イオン性ポリマー、非イオン性ポリマー、スケール形成抑制剤、および腐食防止剤である。好ましくは、他の配合物含有成分は、過酸化水素、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド、または更により好ましくは過酸化水素と2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドとの両者と親和性である。本開示で用いる用語「親和性」は、化学的相互作用によって分離も不可逆変化もせず、他の成分を化学的に分解しない、均一混合物を形成できることを意味する。より好ましくは、本発明の方法は、インサイチュで反応混合物のpHを、上記の収率および選択性の両者で2,2−ジブロモマロンアミドを生成するような様式で上記pH範囲に維持することを更に含む。
【0036】
本発明の方法は、添加速度制御様式で規定量の過酸化水素、アルカリ土類金属塩基を添加することにより;またはより好ましくは別個の添加速度制御様式で規定量の、過酸化水素およびアルカリ土類金属塩基の各々を独立に添加することにより、反応混合物のpHを上記pH範囲に維持するインサイチュ手段を提供する。より好ましくは、添加速度制御様式は、過酸化水素の別個の供給物流(例えば、水性混合物として)およびアルカリ土類金属塩基(例えば、水性混合物として)の流量を制御することを含む。
【0037】
幾つかの態様において、本発明の方法は、2,2−ジブロモマロンアミドの少なくとも幾らかかを精製して、実質的に純粋な形の2,2−ジブロモマロンアミド(すなわち、90%またはそれを超え、より好ましくは95%またはそれを超え、および更により好ましくは97%またはそれを超え、全て水は考慮せず、そして後述の高性能液体クロマトグラフィ法を用いて測定される)を与えることを含むステップを更に含む。例えば、25.0gの水および67.5gまたはこれを超える2,2−ジブロモマロンアミドを含む100.0グラム(g)の湿潤ろ物は、実質的に純粋である。同様に、0.50gの水および89.55gまたはこれを超える2,2−ジブロモマロンアミドを含む100.00gの乾燥ろ物は実質的に純粋である。幾つかの態様において、実質的に純粋な2,2−ジブロモマロンアミドは更なる製造方法ステップにおいて使用できる。更なる製造方法ステップにおいて、実質的に純粋な2,2−ジブロモマロンアミドは、例えば、2,2−ジブロモマロンアミドを含みまたはこれから得られる、有機化合物(例えば医薬)の合成における出発物質、または殺生物組成物の合成もしくは製造における含有成分を含むことができる。幾つかの態様において、本発明の方法は、実質的に純粋な2,2−ジブロモマロンアミドを乾燥させて実質的に純粋および乾燥形の2,2−ジブロモマロンアミド(これは好ましくは2wt%未満、およびより好ましくは1wt%未満の水を含有する)を与えることを含むステップを更に含む。
【0038】
本発明の方法の1つまたは複数の反応ステップ(例えば、精製または乾燥のステップではなく)は、最終的に2,2−ジブロモマロンアミド、および場合により1種またはそれを超える他の成分を含む反応混合物を生成する。可能な他の成分の例は、未反応出発物質(例えば、未反応2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド、H22、またはアルカリ土類金属塩基)、1種または複数種の溶媒(例えば水)、反応副生成物、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの1種または複数種の塩基促進分解生成物、またはこれらの組合せである。反応混合物中の2,2−ジブロモマロンアミドの溶解性は、用いる特定条件(例えば、温度、pH、配合物組成、またはこれらの組合せ)によることができる。2,2−ジブロモマロンアミドは、反応混合物中に溶解した溶質、反応液体中に配置(例えば分散もしくは懸濁)された固体または両者の形であることができる。好ましくは、本発明の方法によって生成した2,2−ジブロモマロンアミドの少なくとも90%が、反応液体中に配置された固体の形である。固体2,2−ジブロモマロンアミドは、その反応液体から,従って任意の反応液体可溶性物質から、容易に除去または分離できる。幾つかの態様において、固体2,2−ジブロモマロンアミドをろ過によって除去し、水性母液ろ液、および湿潤固体ろ物(2,2−ジブロモマロンアミドおよび残存水を含む)を別個に得る。湿潤固体ろ物の2,2−ジブロモマロンアミドは、前記したように実質的に純粋な形である。幾つかの態様において、2,2−ジブロモマロンアミドを含有する湿潤固体ろ物は、更なる精製または乾燥なしで使用して、殺生物配合物を得る。他の態様において、2,2−ジブロモマロンアミドを含む湿潤固体ろ物は、従来手段(例えば減圧乾燥、または固体にガス流を接触させる(例えば、ガス流を固体の上またはこれに通して流す)ことによる乾燥によって乾燥させて、実質的に純粋で乾燥形(前記したように)の2,2−ジブロモマロンアミドを含有する乾燥固体ろ物を得る。
【0039】
好ましくは、本発明の方法は、第1の態様の発明の方法の別の実施で一部または全ての母液を用いるステップを更に含む。第1の態様の本発明の方法の各々のそのような後続の実施は、好ましくは、先の実施の母液を用い、これにより、本発明の方法の初期の実施からの母液を、2回またはそれを超えて、より好ましくは3回またはそれを超えて、および更により好ましくは5回またはそれを超えてリサイクルさせるための手段を確立する。
【0040】
反応温度、反応圧力および反応時間は、本発明の方法の反応、精製、または乾燥のいずれを実施するにも臨界的ではない。任意の反応温度、反応圧力および反応時間が、出発物質(例えば式(A)の化合物)が実質的に分解しない(または不所望にそこで反応しない)ことを条件に、好適である。例えば、2,2−ジブロモマロンアミドを調製するための好適な温度および圧力は、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜50℃、および約大気圧(例えば約101キロパスカル(kPa))である。湿潤固体2,2−ジブロモマロンアミドを乾燥させるのに好適な温度および圧力の例は、20〜100℃、好ましくは20℃〜60℃(例えば50℃)、および約大気圧またはそれ未満(例えば約1kPaまで下げる)である。
【0041】
2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドは、任意の公知の合成方法(例えば3−シアノアセトアミドのジ臭素化)で調製でき、または、好ましくは市販の製造元から得ることができる。2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの幾つかの商業的な製造元があり、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの市販で供給される型の全ては、本発明における使用に許容可能である。更に、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの市販で配合された形、例えば2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドおよびポリエチレングリコールのブレンド物(水中の)の配合物を本発明において使用できる。
【0042】
材料および一般的方法
反応物質:
2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド(The Dow Chemical Company,バッチ#W126xxxxC2; 分子量241.87 グラム毎モル(g/mol)。
50wt%水性過酸化水素−Sigma−Aldrich−物質#516813−4L,バッチ#55798PJ。
6wt%水性水酸化ナトリウム。
脱イオン水。
【0043】
設備:
減圧ろ過フラスコ。
【0044】
22リットルのバッフル付ガラス撹拌反応器(すなわち撹拌可能な反応器)(フラッシュマウントボトムドレーンバルブを有するもの)。撹拌反応器は、添加、センサー入力のための複数の上部口を有する。撹拌反応器の6口は以下を備える:
1)pHプローブ−携帯型pHメーター(Accumet AP62 pH/mv メーター,Orion pHプローブ付)
2)50wt%水性過酸化水素の添加用の1000ml添加漏斗
3)撹拌器−電気撹拌軸およびテフロン(登録商標)パドル(4ブレードを有する)
4)2つの温度熱電対,各々異なるデジタル温度ディスプレイに配線されている
5)6wt%水性水酸化ナトリウムの添加用の250mL添加漏斗
6)雰囲気へのベント,または所望であればスクラビング装置
【0045】
22リットルのガラス貯蔵タンクを用いて、実施間の母液を貯蔵する。Masterflex(登録商標)蠕動ポンプ(Cole−Parmer Instrument Company,Vernon Hills,Illinois,USA)を用いて、4リットル減圧フィルターフラスコから母液を貯蔵タンクにポンプ引きすること、貯蔵タンクからのリサイクル充填物を撹拌反応器に後続の実施のためにポンプ引きすることの両者を行う。4リットル減圧フラスコ上に配置した、中多孔度ろ紙(18.5センチメートル径)を取り付けたポーセレンブフナー漏斗を用いる。水アスピレーターから減圧を与える。
【0046】
本発明の1つまたは複数の例
本発明の非限定例を以下に説明する。幾つかの態様において、本発明は、例のいずれかに記載する通りである。
【0047】
例1:脱イオン水を用いる2,2−ジブロモマロンアミドの調製
反応実施:
撹拌された反応器に約16リットルの脱イオン水を入れる。撹拌速度で撹拌しながら2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド(1997.4g,8.258mol)を添加する。全ての2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドが反応器内に入った時点で、撹拌速度(すなわち撹拌器の速度)を増大させて2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの固体懸濁を確実にする。この出発懸濁物の出発pHはpH6.3である。50wt%水性過酸化水素をゆっくり添加し始める(全部で1180.8gの50wt%水性過酸化水素,17molH22(分子量34.015g/mol)を含有するものが最終的に添加される)。
【0048】
得られる混合物のpHがpH3.9まで低下した時点で、6wt%水性水酸化ナトリウムを添加し始める(全部で251.8gの6wt%水性水酸化ナトリウム,0.38molNaOH(分子量40.00g/mol)を含有するものが最終的に添加される)。厚い層の泡が生じる場合があり、場合により、撹拌された反応器のベントから押出す。50wt水性過酸化水素の添加速度を、発泡層を消散させるのに十分に確実に遅くし、または撹拌速度を更に増大させて泡の分散および破壊を助ける。50wt水性過酸化水素の約半分を添加した後、得られる反応混合物(スラリー)は、出発懸濁物よりも顕著に薄く、反応スラリーの温度のピークは51℃である。pHは、50wt水性過酸化水素の添加中、pH5.5〜pH5.7程度でとどまる。50wt水性過酸化水素を添加するための時間は4.13時間である。スラリーを約1時間撹拌し、次いでスラリーを、室温(約25℃)までゆっくり冷却しながら1晩置く。
【0049】
反応混合物をろ過して、2,2−ジブロモマロンアミドを含む固体をろ物および収集物として単離し、次の実施で使用するために母液を貯蔵する:翌朝、得られる反応混合物は固体を含み、その異なる部分が浮き、底に沈降し、または反応混合物中に懸濁している。撹拌器を稼動させて液体中の固体を分散させ、次いでブフナー漏斗を用いて反応混合物をろ過して、2,2−ジブロモマロンアミドを含む湿潤固体およびフィルターフラスコを収集して母液をろ液として収集する。湿潤固体2,2−ジブロモマロンアミドは、19.6wt%の揮発性物質(例えば水)(これは乾燥により除去できる)を含有する。母液は、これを例2(後述)における脱イオン水の代わりに後続反応中にリサイクルするためにフィルターフラスコから貯蔵タンク内にポンプ引きする。
【0050】
2,2−ジブロモマロンアミドを含むろ物固体を乾燥させ:ろ物固体を金属またはプラスチックのトレーに移す。トレーを簡易「乾燥チャンバー」(これは乾燥窒素ガスまたは乾燥空気の流れを固体に通せるように構成されている)内に置く。ガスを入れ、これを、一定質量が実現されて収量1752グラム(g)のガス乾燥2,2−ジブロモマロンアミド(収率81.6%,添加した2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミド基準,2,2−ジブロモマロンアミド分子量259.88g/mol)になるまで、トレー内の固体に通して流す。結果を表1にて後記する。
【0051】
例2〜7:リサイクルした母液を脱イオン水に代えて用いた2,2−ジブロモマロンアミドの調製
例1〜7の各々において、H22の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドに対するモル比は約2.06である。脱イオン水を全くまたは殆ど用いず、例1における脱イオン水に代えて先の反応混合物からの母液を用いる他は例1の手順を繰り返す。例2は、例1からの15Lの母液を用いる。
【0052】
例3〜7は各々、例2〜6のそれぞれからの13Lの母液を用いる。リサイクルした母液の低減は、撹拌された反応器のベントから押出す泡の潜在性を低減する。異なるバッチからの母液の分離は必要ない;幾つかの反応からの母液の混合物はリサイクルされるのに好適である。例2〜7のそれぞれの湿潤固体2,2−ジブロモマロンアミドバッチは、32.8wt%,26.9wt%,24.7wt%,17.9wt%,28.6wt%,および26.0wt%の揮発性物質(例えば水)を含有する。例1において前記した湿潤固体2,2−ジブロモマロンアミドを乾燥させてそれぞれ例2〜7のガス乾燥固体2,2−ジブロモマロンアミドを得る。
【0053】
結果を表1において以下に示す。表1において、Ex.No.は例番号を意味し、gはグラムを意味し、DBNPAは2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドを意味し、wt%は質量パーセントを意味し、hは時間を意味し、DBMALは2,2−ジブロモマロンアミドを意味し、そして%はパーセントを意味する。
【0054】
【表1】

【0055】
例1〜7のガス乾燥2,2−ジブロモマロンアミドを一緒にブレンドする。組合せたガス乾燥2,2−ジブロモマロンアミドの502.46g部分を減圧オーブンで5時間、50℃で乾燥させて502.03gの減圧乾燥2,2−ジブロモマロンアミドを得る。結果は、例1〜7の組合せたガス乾燥2,2−ジブロモマロンアミドが、約0.5wt%の水を含有することを示す。
【0056】
組合せたガス乾燥2,2−ジブロモマロンアミドの純度を、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)で、Agilent Zorbax CNカラム(4.6ミリメートル(mm)×250mm、5ミクロン粒子)および80体積パーセント(vol%)高純水/20vol%高純度アセトニトリル(0.05モーラーリン酸ナトリウム一塩基緩衝液を含む)を含み、85wt%リン酸によってpHがpH3に調整された溶離液を用いて分析する。流量は1.0mL溶離液毎分であり、インジェクション体積2.0マイクロリットル、205ナノメートルでの紫外線検出、および実施時間15分である。2,2−ジブロモマロンアミド成分は、3.62分にて溶離し、ガス乾燥2,2−ジブロモマロンアミドは、ピーク面積に基づき97.75%純度であることを示す。
【0057】
上記例によって示されるように、本発明の方法は、2,2−ジブロモマロンアミドを2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドから高収率で製造し、反応母液をリサイクルする手段を与える一方、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの塩促進分解を最小化または防止すると同時に十分量のアルカリ土類金属塩基を与えて2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの2,2−ジブロモマロンアミドへの所望の転化を触媒するように、アルカリ土類金属塩基の量を最小化する。
【0058】
本発明をその好ましい態様に従って説明してきたが、これは本開示の精神および範囲の中で改変できる。従って本件は、本開示で開示される一般原理を用いた本発明の任意の変更、使用、または適合を網羅することを意図する。更に、本件は、本発明が属する分野における公知または慣用の実施の範囲内となり特許請求の範囲の限定の範囲内となる本開示からの逸脱を網羅することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ジブロモマロンアミドの製造方法であって、
ある量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドと有効量のニトリル−アミド−転化組成物とを一緒に接触させて反応混合物を形成することを含み、2,2−ジブロモマロンアミドを生成するように該接触を行う、方法。
【請求項2】
第1の殺生物配合物を第2の殺生物配合物に転化する方法であって、第1の量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドおよび水を含む第1の殺生物配合物を準備すること、該第1の殺生物配合物および有効量のニトリル−アミド−転化組成物を一緒に接触させて、第2の殺生物配合物を含む反応混合物を形成することを含み、該第2の殺生物配合物が水および2,2−ジブロモマロンアミドを含み、第2の殺生物配合物を生成するように該接触を行う、方法。
【請求項3】
第2の殺生物配合物が、少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の他の殺生物配合物含有成分が、過酸化水素、2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの未反応部分、またはこれらの組合せを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ニトリル−アミド−転化組成物が、過酸化水素、および触媒量の水酸化アルカリ土類金属または炭酸アルカリ土類金属を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
接触ステップの間に反応混合物のpHをpH9.0未満に維持することを更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
接触ステップの間に反応混合物のpHをpH4.0からpH9.0未満に維持することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
接触ステップの間に反応混合物のpHをpH5.5〜pH7.0に維持することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各接触ステップが、独立に、反応した2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドの量基準で75%またはそれを超える収率で2,2−ジブロモマロンアミドを生成する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
a:反応混合物から母液を得ること;
b:該母液の殆どを含む別のニトリル−アミド−転化組成物を準備すること;
c:該母液を含む他のニトリル−アミド−転化物を別の量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドと接触させて別の反応混合物を形成すること;
を更に含み、
該母液を含む他のニトリル−アミド−転化物を別の量の2,2−ジブロモ−3−シアノアセトアミドと接触させることを、追加の2,2−ジブロモマロンアミドを生成するように行う、請求項1および5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
各ニトリル−アミド−転化組成物が水を含み、水を除いて90%またはそれを超える純度の水湿潤固体2,2−ジブロモマロンアミドを得るように2,2−ジブロモマロンアミドを精製するステップを更に含む、請求項1および5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
95%またはそれを超える絶対純度を有し、含有される水が1質量%未満である乾燥固体2,2−ジブロモマロンアミドが得られるように水湿潤固体2,2−ジブロモマロンアミドを乾燥させるステップを更に含む、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2013−511537(P2013−511537A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540054(P2012−540054)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057211
【国際公開番号】WO2011/063110
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】