説明

2,3−ジメチルブタン調製プロセスおよび得られた生成物の用途

本発明は2,3−ジメチルブタン調製のためのプロセスに関係し、2,3−ジメチルブタンを含む反応混合物を生成するように、反応領域でイソブタンを水素化タングステンと酸化アルミニウムからなる担体とからなる担持触媒と接触させることからなる。接触は、基本的に2,3−ジメチルブタンを非常に高選択的に生成するイソブタンのメタセシス反応の遂行に導く。触媒は、好ましくは酸化アルミニウムを基にした担体上に接合した水素化タングステンである。担体は酸化アルミニウム、混合酸化アルミニウムおよび修飾酸化アルミニウムから選ぶことができる。反応混合物は単離できて、好ましくは、2,3−ジメチルブタンおよび任意にC5+アルカンのような反応混合物の1つまたはそれ以上の他の成分を回収するために1つまたはそれ以上の分画操作に供される。プロセスは反応混合物から2,3−ジメチルブタンを単一成分として含むC5+アルカンを単離することからなり、それはガソリンのオクタン価を上げるためにガソリンと混ぜる、あるいはガソリンのブレンドストックとして用いることができる。2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの分離された分画を単一成分から単離することができて、それはガソリンのオクタン価を上げるためにガソリンと混ぜる、あるいはガソリンのブレンドストックとして用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野と発明が解決しようとする課題】
【0001】
本発明は2,3−ジメチルブタンの調製プロセスに関する。2,3−ジメチルブタン、ジイソプロピルとも呼ばれる、は高いオクタン価を示すことが知られていて、例えばRON(リサーチオクタン価)は104に匹敵し、蒸気圧は比較的低い(38℃で51kPa)(内燃機関と大気汚染、1973, E. F. Obertによる)。このため、2,3−ジメチルブタンは自動車のガソリンへの添加物として求められ、簡単で直接的なプロセスによる前記生成物の調製法の開発は非常に有用である。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,255,605号明細書はブテン−1、ブテン−2、イソブタン、n−ブタンおよびイソブチレンからなる混合ブテンフィードストリームからの2,3−ジメチルブタンの調製プロセスについて述べている。プロセスは(a)混合ブテンフィードストリームを、ブテン−1をブテン−2に転換するため二重結合異性化に供する、(b)ステップ(a)の流出液をイソブタン、イソブチレンおよびブテン−1からなるオーバーヘッドとn−ブタンとブテン−2からなるボトムストリームに分画する、(c)(b)のボトムストリームを、ブテン−2をイソブチレンに転換するため骨格異性化に供する、(d)(c)からの流出液を(a)からの流出液と合わせ、合わせたストリームを(b)で分画する、(e)ステップ(b)のオーバーヘッドを、イソブチレンをエチレンと2,3−ジメチルブテン−2に、ブテン−2をエチレンとノルマルヘキサンおよび重質オレフィン炭化水素に転換するため不均化する、(f)(e)からの流出液をCとイソブタンからなるオーバーヘッド、ブチレン類からなるサイドストリーム、および2,3−ジメチルブテン−2とn−ヘキサンを含む炭素数6の炭化水素および重質物からなるボトムストリームに分画する。(g)(f)で分離された前記のサイドストリームを不均化のためステップ(e)に再循環する、(h)(f)で分離された前記のボトムストリームをn−ヘキサンと2,3−ジメチルブタンを生じるように水素化する、そして(i)生成物として2,3−ジメチルブタンを分離するステップからなる。しかしながら、プロセスは長い多段階プロセスであり、水素化タングステンおよび酸化アルミニウムからなる担体からなる担持触媒は用いられていない。
【0003】
国際公開第98/02244号パンフレットはアルカンのその高級および低級同属体へのメタセシスを行うためのプロセスについて述べている。このようにアルカンをそれ自身と反応して直接その高級および低級同属体を得ることが、とりわけ固体酸化物上に接合分散した金属水素化物からなる担持触媒の存在下で可能である。その実施例はエタン、プロパン、ブタンまたはイソブタンのような直鎖あるいは分岐アルカン、およびシリカ担体上に接合したタンタルまたはタングステン水素化物のような種々の触媒が用いられることを示している。特にシリカ上に接合した水素化タンタルに基づく担持触媒の存在下でのイソブタンのメタセシス反応(静置反応器中)の例が示されている。前記の反応はメタン、エタン、プロパン、ネオペンタン、イソペンタンと2−メチルペンタンおよび比較的低い比率のnーブタンと2−メチルヘキサンを生成する。2,3−ジメチルブタンの生成については言及されていない。
【0004】
国際公開第2004/089541号パンフレットは水素化タングステンと酸化アルミニウムに基づく担体からなるアルカンメタセシス担持触媒について述べている。炭化水素メタセシス反応に用いられる前記の触媒は分岐炭化水素(即ち分岐鎖をもったあるいは“イソ”型)の生成に比べて直鎖(またはノルマル)炭化水素(即ち直鎖をもった)の生成に非常に高い選択性を示す。実施例は特にプロパンのメタセシスを示し、そこでは基本的にエタンおよびブタンが低比率のメタン、ペンタンおよびC同属体とともに生成する。前記出願の教示は前記の触媒は直鎖アルカンから作られる分岐アルカンの生成において非常に低い選択性を有することを示唆し、とりわけ2,3−ジメチルブタン(二重の“イソ”型を示す)の生成については特に言及されていない。さらに、この触媒は主に出発アルカンよりすぐ低級および高級のアルカンの生成を導くことが示された。
【0005】
米国特許第6,441,263号明細書および米国特許第6,566,569号明細書、R. L. BurnettとT. R. HughesのJ. Catal., 1973, 31, 55−64の論文、およびA. S. Goldman, A. H. Roy, Z. Huang, R. Ahuja, W. SchinskiとM. BrookhartのScience 2006, 312, 257−261の論文もまたアルカンのその高級および低級同属体への不均化反応について述べているが、主に直鎖アルカンを導く。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、特に国際公開第2004/089541号パンフレットの教示とは反対に、イソブタンのメタセシス反応に用いた水素化タングステンと酸化アルミニウムに基づく担体からなる担持触媒は2,3−ジメチルブタンの生成に非常に高い選択性を示すことが見出された。特に前記の選択性は水素化タンタルとシリカ担体からなる担持触媒の存在下で行う以外は全く同じ反応の選択性よりも3倍まで大きいことが見出された。さらに、前記の結果はイソブタンメタセシス反応は主にすぐ高級あるいは低級アルカン、即ち各々CおよびCアルカンの生成を導き、CおよびCアルカンは導かないはずであることからなお一層驚くべきことである。このことからそのような反応は2,3−ジメチルブタンの直接かつ簡単な調製の興味あるルートとなり、前記の製法は本発明の主題を形成する。
【0007】
本発明は2,3−ジメチルブタンの調製のプロセスに関するもので、イソブタンを、2,3−ジメチルブタンを含む反応性生物を生成するように、水素化タングステンと酸化アルミニウムからなる担体からなる担持触媒と反応領域で接触させることを特徴とする。
【0008】
2,3−ジメチルブタンの調製には特にイソブタンのメタセシスのための触媒反応を用いる。好ましくは、イソブタンは単独または実質的に単独で用いられ、その場合、本発明による接触は主にイソブタンのそれ自身とのメタセシス反応を導くことができる(即ちイソブタンの同族化反応あるいはイソブタン自己メタセシス反応)。そのような反応において、2,3−ジメチルブタンが25%と同等もしくはそれ以上、好ましくは30%と同等もしくはそれ以上、特に40%と同等もしくはそれ以上のモル選択率で生成される。2,3−ジメチルブタンのモル選択率(%で表した)は一般に生成した2,3−ジメチルブタン(2,3diMeBu)のモル数の生成した全ての炭化水素の全モル数に対する比率(100を乗じた)を意味し、以下の式(1)で書くことができる。
選択率2,3diMeBu=100x(生成2,3diMeBuのモル数/生成全炭化水素のモル数) (1)
【0009】
同様に、そしてより一般的には、生成したアルカンのモル選択率(%で表した)は前記の生成したアルカンのモル数の全ての生成した炭化水素の全モル数に対する比率(100を乗じた)に対応する。
【0010】
イソブタンはまた1つまたはそれ以上の他の炭化水素(類)、好ましくは1つまたはそれ以上の他のアルカン(類)、とりわけ1つまたはそれ以上の、特に炭素原子1ないし12、例えば炭素原子4から12、特に炭素原子4を含む直鎖および/または分岐アルカン(類)との混合物の形でも用いることができる。前記の混合物で、イソブタンは、好ましくは、例えば混合物の50から100モル%以下まで、あるいは50から99モル%までを代表するようにモル構成成分の大部分でありうる。それはまた、例えば混合物の1から50モル%以下まで、あるいは5から50モル%以下までのようにモル構成成分の小部分であってもよい。例えば、触媒との接触後に生成する2,3−ジメチルブタンの比率が望ましいオクタン価を有する自動車用ガソリンを得るために望まれる比率に該当するようなイソブタンの比率でイソブタンの1つまたはそれ以上の他の炭化水素(類)、特に1つまたはそれ以上のアルカン(類)との混合物を使うことができる。このようにイソブタンと1つまたはそれ以上の他の炭化水素の混合物の場合、本発明による接触はイソブタンのそれ自身とのメタセシス反応(即ちイソブタン自己メタセシス反応)、イソブタンと他の炭化水素との交差メタセシス反応、炭化水素のそれ自身とのメタセシス反応(即ち炭化水素自己メタセシス反応)、および炭化水素と他の炭化水素との交差メタセシス反応を同時に導く。前記の反応の中で、イソブタンのそれ自身とのメタセシス反応(即ちイソブタン自己メタセシス反応)を本発明に従い非常に高い2,3−ジメチルブタン選択率で行うことができる。
【0011】
イソブタンの接触は水素化タングステンと酸化アルミニウムからなる担体とからなる担持触媒の存在下で行われる。この場合、前記の触媒は2,3−ジメチルブタンの生成に対し非常に高い選択性を示し、特に上に述べたような選択性を示す。担持触媒は、好ましくは、水素化タングステンをその上に接合した酸化アルミニウムに基づく担体からなる。かくして、この場合、触媒中に存在するタングステン原子またはイオンは酸化アルミニウムからなる担体に直接結合できて、とりわけ酸化アルミニウムの少なくとも1ケの酸素原子と、特にタングステン−酸素一重結合(W−OAl)によって結合できる。
【0012】
触媒は担体を含みそれは酸化アルミニウムからなるどんな担体でもよく、とりわけ酸化アルミニウムが担体の表面に直接接近できるいかなる担体でもよい。このようにして、担体は好ましくは特にその構造全体にわたって均質な組成を有する酸化アルミニウム担体から選ぶことができる。それはまた酸化アルミニウムが主に担体の表面に位置するような不均質な酸化アルミニウムから選ぶこともできる。前記の後者の場合、酸化アルミニウムはそれ自身担体となる固体担体、とりわけ金属または耐火性酸化物、硫化物、カーバイド、窒化物および塩から、また炭素、金属、開放または閉鎖メソポーラス構造体MCM21およびMCM22、有機/無機ハイブリッド物質およびモレキュラーシーブから選ばれる、好ましくはシリカおよび金属または耐火性酸化物から選ばれる固体担体上に分散、析出、支持または接合できる。
【0013】
担体は標準ISO9277(1955)に従って測定された0.1から3000m/gまで、好ましくは0.1から1000m/gまで、好ましくは0.5から800m/gまでの範囲から選ばれる比表面積(B.E.T.)を有する。
【0014】
担体は酸化アルミニウム、混合酸化アルミニウムおよび修飾酸化アルミニウム、とりわけ元素周期律表の15ないし17族の1つまたはそれ以上の元素によって修飾された酸化アルミニウムから選ぶことができる。元素周期律表は1991年にIUPACによって提示されたもので、族には1から18の番号が付けられていて、David R. LideによりCRC Press, Inc., USAから“CRC化学および物理ハンドブック”第76版(1995−1996)として刊行されている。
【0015】
担体は酸化アルミニウムから選ばれる。単純アルミナとも呼ばれる酸化アルミニウムは一般に実質的に他の酸化物のない酸化アルミニウム、より特定的には一般に不純物の形で存在する1つまたはそれ以上の他の酸化物を2%以下含む酸化アルミニウムと理解される。もし1つまたはそれ以上の他の酸化物を2重量%かそれ以上含むならば、酸化物は混合酸化アルミニウム、より特定的には少なくとも1つの他の酸化物と結合した形の酸化アルミニウムと考えることが一般に同意されている。
【0016】
担体は好ましくは酸化アルミニウム(または単純アルミナ)から選ばれ、特に多孔質アルミナ、半多孔質アルミナ、非多孔質アルミナおよびメソポーラスアルミナから選ばれる。
【0017】
かくして、担体は、しばしば“活性化アルミナ”あるいは“遷移アルミナ”と呼ばれる多孔質アルミナから選ばれる。それらは一般に種々の部分水酸化した酸化アルミニウム(Al)に該当する。それらは一般に、例えば三水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの水酸化物(あるいは酸化アルミニウム水和物)およびゼラチン状水酸化アルミニウム(またはアルミナゲル)のような水酸化アルミニウムから選ばれる前駆体の、とりわけ熱処理(または脱水処理)からなる活性化処理によって得られる。活性化処理は前駆体中に含まれる水、および部分的に水酸基の除去を可能にし、かくして幾分かの残余水酸基および多孔質構造が残ることを許す。最終的には、多孔質構造は、フレームアルミナを用いるとき、避けられ、この場合前処理は水酸基をも除去する。多孔質アルミナの表面は一般にアルミニウムと酸素原子、および特定の結晶形に従って結合し酸性および塩基性の両サイトに存在する水酸基の複雑な混合物からなる。多くの結晶形は一般に、前駆体の選択および空気流あるいは不活性ガスのような他のガスの使用、圧力と温度、例えば100から1000℃までの温度、好ましくは200から1000℃、といった活性化処理の条件に依存する。担体はとりわけγ−アルミナ(ガンマアルミナ)、η−アルミナ(イータアルミナ)、δ−アルミナ(デルタアルミナ)、θ−アルミナ(シータアルミナ)、κ−アルミナ(カッパアルミナ)、ρ−アルミナ(ローアルミナ)、α−アルミナ(アルファアルミナ)およびχ−アルミナ(クシーまたはカイ−アルミナ)から選ばれる多孔質アルミナでよい。担体はγ−アルミナおよびη−アルミナから選ぶことが好ましい。多孔質アルミナは100から3000m/g、または100から1000m/g、好ましくは300から1000m/g、とりわけ300から800m/g、特に300から600m/gの比表面積(B.E.T.)を持ち得る。それはまた1.5cm/gと同等またはそれ以下、あるいは1cm/gと同等またはそれ以下、好ましくは0.9cm/gと同等またはそれ以下、とりわけ0.6cm/gと同等またはそれ以下の比細孔容積を有し得る。
【0018】
担体はまた半多孔質アルミナから選ぶこともできる。これらは一般に上に述べたような活性化処理によって得られ、とりわけ600から1000℃の温度範囲で得られる。それらは、上述の1つのような多孔質アルミナとα−アルミナ(アルファアルミナ)あるいはγ−アルミナ(ガンマアルミナ)のような非多孔質アルミナの、多孔質アルミナと非多孔質アルミナの重量比が10/90から90/10の範囲、特に20/80から80/20の混合物からなる。
【0019】
担体はまた一般に“か焼アルミナ”あるいは“フレームアルミナ”の語で知られる非多孔質アルミナから選ばれ、それはα−アルミナ(アルファアルミナ)またはγ−アルミナ(ガンマアルミナ)でよい。α−アルミナは自然状態では“コランダム”の名で存在し、他の酸化物のような不純物を2重量%かそれ以下、好ましくは1重量%かそれ以下含んでいてもよい。それはまた一般に、とりわけアルキルアルミニウム、アルミニウム塩、酸化アルミニウムの水酸化物、三酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムから選ばれる前駆体の、特に温度1000℃以上、好ましくは1100℃以上での熱処理あるいはか焼によって合成することもできる。非多孔質アルミナは0.1から300m/g、好ましくは0.5から300m/g、とりわけ0.5から250m/gの範囲の比表面積(B.E.T.)を有する。
【0020】
担体はまたメソポーラスアルミナ、とりわけ比表面積(B.E.T.)が100から800m/gまでの範囲のメソポーラスアルミナから選ぶこともできる。それらは幅が2nmから0.05μmの細孔を有してもよい。
【0021】
担体は混合酸化アルミニウムから選ぶことができる。混合酸化アルミニウムによって一般に少なくとも1つの他の酸化物と重量で2から80%以下、とりわけ2から50%以下、特に2から40%以下あるいはさらに2から30%以下の範囲で結合している酸化アルミニウムを意味する。他の酸化物あるいは酸化物類は元素周期律表の炭素を除く1ないし13族の金属および14族の元素から選ばれる元素(M)の酸化物である。元素(M)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタナイドおよびアクチナイド、好ましくはシリコン、ボロン、ガリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコン、セリウム。バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンおよびタングステンから選ぶことができる。とりわけ、混合酸化アルミニウムは無水アルミン酸塩、尖晶石、シリカアルミナおよびアルミノシリケートから選ぶことができる。
【0022】
担体はまた修飾酸化アルミニウム、とりわけ元素周期律表の13ないし17族の、好ましくは15ないし17族の、好ましくは16または17族の1つまたはそれ以上の元素によって修飾された酸化アルミニウムから選ぶことができる。酸化アルミニウムは、特に、ボロン、リン、硫黄、フッ素および/または塩素によって修飾される。担体はとりわけアルミナの超酸、あるいはホウ酸化、ホウ素化、リン酸化、ピロリン酸化、リン化、オルトリン化、亜リン酸化、オルト亜リン酸化、硫酸化、硫化、6価硫黄化、4価硫黄化、塩素化、フッ素化酸化アルミニウム、好ましくは塩素化酸化アルミニウムから選ぶことができる。
【0023】
担体はいかなる形および大きさの粒子形でもよい。粒子は平均の大きさが10nmから10mmあるいは10nmから5mm、好ましくは20nmから4mmでよい。それらは球形、ほぼ球形、半球形、半球状、円筒形または立方体、あるいはリング、ペレット、ディスクまたは顆粒の形、あるいは米国特許第4,242,530号明細書に述べられているように蒸留カラム反応器で用いられるような充填材の形でさえもよい。
【0024】
担持触媒は水素化タングステンと好ましくはその上に水素化タングステンが接合された酸化アルミニウムからなる担体とからなる。タングステンは2から6、好ましくは4から6の範囲の酸化状態でよい。担持触媒中のタングステン原子(あるいはイオン)は、とりわけ少なくとも1個の一重結合によって担体に結合でき、同様に1つまたはそれ以上の水素原子ととりわけ一重結合(W−H)によって結合でき、任意に1つまたはそれ以上の水素ラジカル、R、と、とりわけ一重または多重炭素−タングステン結合で結合できる。タングステンに結合している水素原子数は1から5、好ましくは1から4、とりわけ1から3でよい。担体上に接合された水素化タングステンによって一般にタングステン原子が少なくとも1個の一重結合によって担体に結合していることを意味し、とりわけ酸化アルミニウムの少なくとも1個の酸素原子が、例えば少なくとも1個の一重結合(W−OAl)によって結合していることを意味する。タングステンはまた1つまたはそれ以上の炭化水素ラジカル、R、と、とりわけ1つまたはそれ以上の一重、二重、三重炭素−タングステン結合によって結合できる。ラジカルRはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、アリル、ネオペンチリデン、アリリデン、ネオペンチリジンおよびネオシリルラジカルから選ぶことができる。タングステンはまた1つまたはそれ以上の炭化水素配位子、特に芳香族配位子、および/または1つまたはそれ以上のカルボニル配位子によって複合体化される。
【0025】
担持触媒は上述のような水素化タングステンであり、それはまた、好ましくは少なくとも1個の酸素原子および/または少なくとも1個の窒素原子からなる“補助的な”配位子のような、1つまたはそれ以上の配位子を含んでもよい。配位子は同じものでも異なるものでもよく、好ましくはオキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミドおよびアミド配位子から選ぶことができる。一般にオキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミドおよびアミド配位子によってそれぞれ、
− 一般式:=Oの2価オキソラジカル
− 一般式:−OR’のアルコキソ、アリールオキソまたはアラルキルオキソラジカル
− 一般式:≡Nの3価ニトリドラジカル
− 一般式:=R”の2価イミドラジカル、および
− 一般式:−NRの1価アミドラジカル
を意味し、そこで式Oは酸素原子を表し、R’は水素原子または1価の炭化水素ラジカル、直鎖または分岐した、飽和または不飽和の、とりわけアルコキソ配位子については好ましくはCからC10のアルキルラジカルから、アリールオキソ配位子については好ましくはCからC12のアリールラジカルから、アラルキルオキソ配位子については好ましくはCからC14のアラルキルラジカルからそれぞれ選ばれる1価の炭化水素ラジカルを表し、Nは窒素原子を表し、R”は水素原子または1価の炭化水素ラジカル、直鎖または分岐した、飽和または不飽和の、とりわけ好ましくはCからC10のアルキルラジカルから、好ましくはCからC12のアリールラジカルから、好ましくはCからC14のアラルキルラジカルから選ばれる1価の炭化水素ラジカルを表し、RおよびRは同じものかまたは異なるもので、水素原子または1価の炭化水素ラジカル、直鎖または分岐した、飽和または不飽和の、とりわけ、好ましくはCからC10のアルキルラジカルから、好ましくはCからC12のアリールラジカルから、好ましくはCからC14のアラルキルラジカルから選ばれる1価の炭化水素ラジカルを表す。
【0026】
触媒は一般に赤外スペクトル分析で(W−H)結合に特有な1つまたはそれ以上の吸収バンドを示し、その振動数はタングステンの配位圏によって変化しタングステンの担体との結合数および任意に炭化水素ラジカルと他の水素原子との結合数に依存する。このようにして、例えば、1903および1804cm−1に少なくとも2本の吸収バンド、同じタングステン原子をそれ自身はアルミニウム原子に連結した酸素原子に連結する(W−OAl)結合の環境で、とりわけα−アルミナまたはγ−アルミナで考えられる(W−H)結合に特有なバンド、が見出された。触媒の(W−H)結合はまた500MHzでのプロトンNMRによって特徴付けることも可能であり、そこで水素化タングステンの化学シフト(δW−H)の値は変化し、タングステンの配位圏およびタングステンと担体との結合数および任意に炭化水素ラジカルRとの結合数に依存する。ある代表的な事例では、化学シフトは0.6ppm(100万分の1)に等しい。
【0027】
一例として、触媒とその調製法はより特定的に国際公開第2004/089541号パンフレットに述べられている。触媒の調製法は以下の段階からなる:
(1)例えばα−またはγ−アルミナのような酸化アルミニウムからなる担体の、とりわけ1ないし24時間、好ましくは200ないし1000℃、特に300ないし700℃の温度での空気または酸素下での焼成段階とそれに続く例えば不活性ガスまたは真空下での、とりわけ1ないし4時間、好ましくは200ないし1000℃、特に300ないし700℃での脱水酸化を含む段階、
(2)タングステンを、担体上に接合したタングステン炭化水素化合物または複合体を形成するように、少なくとも1つの炭化水素配位子に結合できるタングステンの有機金属前駆体(Pr)を酸化アルミニウムに基づく担体に分散し接合する段階、それに続く
(3)単体に接合されたタングステンを形成するように、先行の化合物または複合体を水素化分解する段階。
【0028】
2,3−ジメチルブタンの調製プロセスはイソブタンを水素化タングステンおよび酸化アルミニウムからなる担体とからなる担持触媒に接触することからなる。接触は種々のやり方で行うことができて、とりわけ50から600℃の温度で、好ましくは70から550℃で、特に100から500℃で行うことができる。それはまた0.01から100MPaの範囲の全絶対圧で、好ましくは0.1から50MPa、特に0.1から30MPaで行うことができる。
【0029】
接触はまた液体でも気体でも不活性試薬の存在下で、特に窒素、ヘリウムまたはアルゴンの存在下で行うことができる。それは水素あるいは特にシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンおよびテトラヒドロナフタレンのような“インサイツ”に水素を生成する試薬の存在下で有利に行うことができる。接触中に存在する水素は触媒の活性化あるいは再生のための試薬として働くことができる。例えば、水素は広範囲で選ばれる水素分圧、好ましくは0.1kPaから50MPa、特に1kPaから1MPa、あるいは0.01から50MPa、特に0.1から20MPaで接触に用いることができる。
【0030】
さらに、接触は、イソブタンの触媒のタングステンに対するモル比が広範囲で、例えば1から10、好ましくは2から10、特に5から10から選ばれるようなイソブタンと触媒の量で行うことができる。それはまた触媒を含む反応領域で行われ、その中にイソブタンが好ましくは連続的に、特に広範囲から選ばれる触媒タングステン1モル当たり1分当たりのイソブタン導入モル速度、例えば0.01から10または1から10、あるいは5から10でさえ、あるいは0.01から10、好ましくは0.1から5x10、さらに好ましくは0.5から10で導入される。
【0031】
接触は反応領域で基本的に2,3−ジメチルブタンと一般にエタンからなる反応混合物を、好ましくは優勢な割合で、任意に未反応イソブタンとともに、生成するように行われる。反応混合物はまた、低い割合ではあるが、メタン、プロパンおよび他の重質アルカン、一般にC5+アルカン(即ち少なくとも5個の炭素原子を含む)、とりわけイソペンタンおよび直鎖および/または分岐したヘキサン、へプタンおよびオクタンのようなCないしCアルカンを含み得る。一方、エタンとプロパンもまた反応領域から分離し単離することができ、任意にオレフィンを作るためのクラッキングのような他の操作に供することができる。さらに、他の重質アルカン、とりわけCないしCアルカン、特に直鎖および/または好ましくは分岐したヘキサン、へプタンおよびオクタンは、同様に反応領域から分離ないし単離され、好ましくは直接ガソリン(例えば自動車の)の高オクタン価の添加物として用いられ、あるいは2,3−ジメチルブタンとの混合物中に保持されガソリン(例えば自動車の)の高オクタン価の添加物として用いられる。全反応混合物(通常液体)もまた、気体の生成物、例えばメタン、エタン、およびプロパンを除去した後に、直接ガソリン(例えば自動車の)製造のための混合成分として用いられる。
【0032】
種々の方法が接触を行うためおよびプロセスの収率を改善するために用いられる。接触は不連続的にまたは好ましくは連続的に行われる。接触は気相または気液混合相、または液相で、あるいは超臨界相でも、選ばれた相に適合した反応領域中で行われる。このようにして、接触は気相または気液混合相で気体のイソブタンを触媒上に接触することによって行われ、気体または液体の形で2,3−ジメチルブタンを生成する。接触はまた液体イソブタンを触媒とともに懸濁液として用いることによって、液相または超臨界相でも起こる。
【0033】
接触は静置反応器、再循環反応器または動的連続流反応器を含む反応領域中で行うことができる。静置反応器では、反応器は例えば完全な反応サイクルのため導入される固定した量のイソブタンと触媒を含む。再循環反応器では、反応混合物の少なくとも1つの成分、好ましくは未反応イソブタンおよび/または生成2,3−ジメチルブタン、を再循環することが好ましい。動的連続流反応器では、液体または気体のイソブタンがとりわけ触媒を含む床を通過する。
【0034】
実際に、接触は管状(または多管状)反応器、蒸留カラム反応器、スラリー反応器、流動床反応器、機械的攪拌床反応器、流動床および機械的攪拌床反応器、固定床反応器および循環床反応器から選ばれる反応器からなる反応領域で行われる。触媒は、一般に粒形で、管状(または多管状)反応器の管の中に配置される。このようにして、好ましくは連続的に管の中へ導入されたイソブタンはストリームの形でその中を通り、反応混合物を生成するように触媒と接触する。触媒はまた蒸留反応器の中に配置され、そこで触媒は好ましくは触媒および蒸留充填材の両方として機能する蒸留システムの構成要素、即ち蒸留機能および触媒機能をともに有する蒸留カラムの充填材、例えば、米国特許第4,242,530号明細書に述べられているような、リング、サドル、顆粒、シート、チューブ、螺旋体、袋詰、である。触媒はまた流動床および/または機械的攪拌床反応器の床、固定床反応器の床、あるいは循環床反応器の床を形成し得る。触媒は前記の反応器の1つで使用され、任意に、好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナおよびアルミニウムシリケートから選ばれる少なくとも1つの不活性固形剤との混合で用いることができる。イソブタンは前記の反応器の1つに好ましくは連続的に導入され、一般に好ましくは連続的に気体または液体ストリームの形で触媒を含む管の中あるいは前記の反応器の床または蒸留充填材を通過あるいは循環する。2,3−ジメチルブタンの最適な生成へ向けて反応の展開を促進するため、プロセスは、好ましくは連続的に反応混合物の1つまたはそれ以上の成分、好ましくは2,3−ジメチルブタンを取り出すことによって有利に実行される。
【0035】
反応領域でこのように生成した反応混合物は前記の反応混合物から2,3−ジメチルブタンを分離し回収するために処理することができる。一般に未反応イソブタンを伴う2,3−ジメチルブタンとエタンからなる反応混合物は、前記の反応混合物から未反応イソブタンを分離するために処理してもよく、一方このようにして分離された未反応イソブタンは好ましくは反応領域に戻される。とりわけ、2,3−ジメチルブタンと一般にエタンからなり任意に未反応イソブタンを伴う反応混合物は、反応領域から分離され、2,3−ジメチルブタンおよび任意に好ましくは反応領域に戻される未反応イソブタンを単離し回収するために、好ましくは1つまたはそれ以上の、とりわけ蒸留または液相/気相変換から選ばれる分画操作に供される。
【0036】
基本的に2,3−ジメチルブタンと一般にエタンを特に優勢な比率で含み任意に未反応イソブタンを伴う反応混合物はまた、低い比率ではあるが、メタン、プロパンおよび他の重質アルカン、一般にC5+アルカン、とりわけイソペンタン、直鎖および/または好ましくは分岐した分岐ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのようなCないしCアルカンを含んでもよい。このように、プロセスは2,3−ジメチルブタンおよび任意に反応混合物の1つまたはそれ以上の成分を、別々あるいは混合で、分離し単離することからなる。分離は不連続的にあるいは好ましくは連続的に様々なやり方で行われる。それは、同じあるいは異なるタイプの、反応混合物の1つまたはそれ以上の分画からなり、好ましくは、
− 物理的状態の変化、好ましくは気/液相変化、特に蒸留および/または凝縮または部分凝縮、例えば蒸留/凝縮カラムまたはカラム反応器による分画、
− 分子ろ過、好ましくは半浸透性で選択性のある膜による分画、
− 吸着、好ましくは分子篩または他の吸着剤による分画、
− 吸収による、好ましくは吸収油による分画、
− 低温膨張、好ましくは膨張タービンによる分画、および
− 圧縮、好ましくはガス圧縮機による分画、
から選ばれる。
【0037】
これらの分画の中で、反応混合物の物理的状態の変化による分画、好ましくは気/液相変化による、特に蒸留および/または凝縮あるいは部分凝縮による、特に1つまたはそれ以上の蒸留/凝縮カラムまたは蒸留カラム反応器による分画が好ましい。
【0038】
プロセスは反応混合物からC5+アルカン、より特定的には単一成分として2,3−ジメチルブタンを含むCないしCアルカン(例えば直鎖および/または好ましくは分岐したペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタン)を、好ましくは前記の単一成分をガソリンと特にガソリンのオクタン価を上げるために混合するために、あるいは前記の単一成分をガソリンのブレンドストックとして用いるために、分離し単離することで有利に構成される。
【0039】
本発明はまた2,3−ジメチルブタンを含む前述の単一成分をガソリンと好ましくはガソリンのオクタン価を上げるために混合する用途に関する。それはまた2,3−ジメチルブタンを含む前記の単一成分のガソリンのブレンドストックとしての用途に関する。
【0040】
プロセスはまた反応混合物からC5+アルカン、とりわけ単一成分として2,3−ジメチルブタンを含むCないしCアルカンを分離し、ついで前記の単一成分から2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの画分を、好ましくは前記の少なくとも1つの分離した画分をガソリンと好ましくはガソリンのオクタン価を上げるため混合するために、あるいは前記の1つの分離した画分をガソリンのブレンドストックとして用いるために、分離し単離することで有利に構成される。
【0041】
本発明はまた前述の2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの分離した分画のガソリンと好ましくはガソリンのオクタン価を上げるために混合する用途に関する。それはまた前述の2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの分離した分画のガソリンブレンドストックとしての用途に関する。
【0042】
本発明のプロセスはまた、単一の(反応)ステージかつ比較的高い選択性をもつことで、2,3−ジメチルブタンの製造に対し特に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の実施例は本発明を例証する。
【実施例1】
【0044】
酸化アルミニウムを基にした担体上に接合された水素化タングステンからなる触媒の調製
デグサ(ドイツ)が販売している94.95重量%のアルミナと5重量%の水からなる比表面積(B.E.T.)100m/gのγ−アルミナ(Aeroxide(登録商標) Alu C)2.5gを乾燥気流下500℃で15時間焼成処理し、ついで絶対圧10−2Pa、500℃で15時間脱水酸化処理した。このように処理されたアルミナは赤外分光測定で残余(AlO−H)結合に特徴的な3本の吸収バンドをそれぞれ3774、3727および3683cm−1に示した。
【0045】
第一段階で、先に調製したアルミナ1.8gを分け、アルゴン雰囲気下25℃で磁気攪拌棒を装着したガラス反応器に導入した。ついで反応器に触媒の前駆体(Pr)として用いられ、一般式(2)に該当するトリス(ネオペンチル)ネオペンチリデンタングステンを導入した。
W[−CH−C(CH[≡C−C(CH] (2)
【0046】
反応器を66℃に加熱しこのようにして作られた混合物を乾燥状態で4時間攪拌した。この時間の終りに反応器を25℃に冷却し、その後固体混合物を25℃でn−ペンタンで洗浄した。このように洗浄した固体化合物を真空乾燥し、ついで4.2重量%のタングステンを含み一般式(3)に該当するアルミナ上に接合した有機金属タングステンが得られるようにアルゴン下で単離した。
(Al−O)W[−CH−C(CH[≡C−C(CH] (3)
ここでx=1およびy=2
【0047】
上記で得られた500mgの接合した有機金属タングステン化合物を絶対水素圧73kPa、150℃で15時間水素と接触することによって水素化分解処理を行うため容量500mlのガラス反応器に入れた。この期間の終りに、反応器を25℃に冷却し、アルゴン下、大気圧で、アルミナ上に接合した水素化タングステンからなる触媒(W−H/Al)を得て単離した。触媒は4.2重量%のタングステンを含み、赤外分光測定で、アルミナ上に接合した(W−H)結合に特徴的なそれぞれ1903と1804cm−1に2つの吸収バンドを示した。さらに、500MHzでの核磁気共鳴(固体H−NMR)で水素化タングステンの化学シフト値(δW−H)、0.6ppm(100万分の1)を示した。
【実施例2】
【0048】
(比較例)
シリカを基にした担体上に接合された水素化タンタルからなる触媒の調製
比表面積(B.E.T.)200m/gの、商業上の照会名“Aerosil 200”(登録商標)でデグサ(ドイツ)が販売しているシリカ1.8gを絶対圧10−2Pa、500℃で15時間水素化分解処理に供した。このようにして赤外分光測定で3747cm−1に残存(SiO−H)結合に特徴的な吸収バンドを示すシリカが得られた。
【0049】
上記で調製したシリカ1.4gをアルゴン雰囲気下、25℃でガラス反応器に導入した。ついで反応器に触媒の前駆体(Pr)として使われ一般式(4)に該当するトリス(ネオペンチル)ネオペンチリデンタンタル270mgを含む容量15mlのn−ペンタンを導入した。
Ta[−CH−C(CH[=CH−C(CH] (4)
【0050】
このようにして得られた混合物をシリカ上に接合した有機金属タンタル化合物を得るように25℃で2時間保持した。この期間の終りに、25℃でn−ペンタンで洗浄することによって過剰の前駆体(Pr)を除去した。このように接合された有機金属タンタル化合物を真空乾燥した。それは5.2重量%のタンタルを含み一般式(5)および(6)に該当した。
(Si−O)Ta[−CH−C(CH[=CH−C(CH
ここでx=1, y=2 (5)
およびx=2, y=1 (6)
【0051】
このようにして調製したシリカ上に接合した有機金属タンタル化合物を絶対水素圧73kPa、150℃で15時間水素と接触させることによって水素化分解処理に供した。この期間の終りに、シリカ上に接合した水素化タンタル(Ta−H/Si)からなる触媒が得られ、アルゴン下で単離された。それは5.2重量%のタンタルを含み赤外分光測定で1830cm−1にシリカ上に接合された(Ta−H)結合に特徴的な吸収バンドを示した。
【実施例3】
【0052】
2,3−ジメチルブタンの調製
2,3−ジメチルブタンの調製は以下のように行われた:実施例1で調製したアルミナ上に接合された水素化タングステン(W−H/Al)500mgを含む150℃に加熱された容量5mlの反応器中にイソブタンを全絶対圧0.1MPa下4ml/minの速度で連続的に導入した。
【0053】
接触によって生成した反応混合物は主に、以下の主式(7)に従って、触媒(W−H/Al)の存在下でのイソブタン同族化反応から生じる2,3−ジメチルブタンとエタンからなることが認められた。
2CH(CH → CH(CH−CH(CH+CH−CH (7)
【0054】
生成した反応混合物中に、少ない比率ではあるが、メタン、プロパン、イソペンタンおよび他のアルカン類、特にCないしCのようなC5+アルカン、すなわち直鎖および分岐ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンも見いだされた。
【0055】
とりわけ41.2%(反応600分後)に相当する2,3−ジメチルブタン生成のモル選択率、および生成した他のアルカンのモル選択率が測定された(下記の表1を参照)。
【実施例4】
【0056】
(比較例)
2,3−ジメチルブタンの調製
500mgの触媒(W−H/Al)の代わりに実施例2(比較例)で調製したシリカ上に接合した水素化タンタルからなる触媒(Ta−H/Si)330mgを用いた以外、実施例3と全く同じ手順を採用した。
【0057】
接触によって生成した反応混合物は主にイソペンタンおよびエタンを含み、また、少ない比率ではあるが、プロパン、2,3−ジメチルブタン、メタンおよび他のアルカン類を含んでいた。シリカ上に接合された水素化タンタルからなる触媒(Ta−H/Al)の存在下でのイソブタンの同族化反応は以下の主式(8)および(9)に従って書くことができる。
2CH(CH → CH−CH−CH+CH−CH(CH)−CH−CH (8)
2CH(CH → CH−CH+CH(CH−CH(CH (9)
【0058】
とりわけ15.5%(反応600分後)に相当する2,3−ジメチルブタンのモル選択率、および生成した他のアルカンのモル選択率を、比較を目的に測定した(下記の表1を参照)。
【0059】
表1を分析すると、本発明による実施例3の反応における2,3−ジメチルブタンのモル反応率は41%の桁であったのに対し、一方実施例4(比較例)の反応では15%の桁であったことが特筆された。
【0060】
金属水素化物触媒の存在下で行うアルカン(直鎖同様分岐鎖も)のメタセシス反応は主反応生成物として主に直鎖アルカンを生じることが先行技術から知られている。さらに、先行技術に基づいて、アルカンメタセシスの反応性生物は主に炭素数が出発アルカンよりもすぐ1つ低級およびすぐ1つ高級なアルカンであることが期待された。表1に示した結果は、イソブタンメタセシス反応は実施例4の比較例で示されたように、主にイソブタンよりすぐ低級および高級なアルカン、即ちそれぞれCおよびCアルカンの生成を導くはずだったのに意外な結果であった。驚くべきことに、本発明による実施例3では、CおよびCアルカン、特に高選択率で2,3−ジメチルブタンが主に得られた。
【0061】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】米国特許第4,255,605号明細書
【特許文献2】国際公開第98/02244号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/089541号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,441,263号明細書
【特許文献5】米国特許第6,566,569号明細書
【非特許文献】
【0063】
【非特許文献1】R. L. BurnettとT. R. HughesのJ. Catal., 1973, 31, 55−64
【非特許文献2】A. S. Goldman, A. H. Roy, Z. Huang, R. Ahuja, W. SchinskiとM. BrookhartのScience 2006, 312, 257−261

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブタンを反応領域で2,3−ジメチルブタンを含む反応混合物を形成するように水素化タングステンおよび酸化アルミニウムからなる担体とからなる担持触媒と接触させることを特徴とする2,3−ジメチルブタンの調製プロセス。
【請求項2】
イソブタンを単独あるいは1つまたはそれ以上の他の炭化水素(類)との混合物の形で用いることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
イソブタンを1つまたはそれ以上の他のアルカン(類)との混合物の形で用いることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
イソブタンを1つまたはそれ以上の他の直鎖および/または分岐アルカン(類)との混合物の形で用いることを特徴とする請求項2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
触媒がその上に水素化タングステンを接合した酸化アルミニウムを基にした担体からなることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項6】
担体が酸化アルミニウム、混合酸化アルミニウムおよび修飾酸化アルミニウムから選ばれることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項7】
修飾酸化アルミニウムが元素周期律表の13ないし17族の1つまたはそれ以上の元素を含むことを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
担体が0.1ないし3000m/g、好ましくは0.1ないし1000m/gの範囲から選ばれる比表面積(B.E.T.)を有することを特徴とする請求項1ないし7の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項9】
担体が多孔質アルミナ、半多孔質アルミナ、非多孔質アルミナおよびメソポーラスアルミナから選ばれることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項10】
接触が50ないし600℃、好ましくは70ないし550℃の範囲から選ばれる温度で行われることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項11】
接触が0.01ないし100MPa、好ましくは0.1ないし50MPaの範囲から選ばれる全絶対圧下で行われることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項12】
接触が水素またはインサイツで水素を生じる試薬の存在下、好ましくは0.1kPaないし50MPa、あるいは0.01ないし50MPaから選ばれる水素分圧下で行われることを特徴とする請求項1ないし11の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項13】
接触がイソブタンの触媒のタングステンに対するモル比が1ないし10、好ましくは2ないし10から選ばれるようなイソブタンおよび触媒の量で行われることを特徴とする請求項1ないし12の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項14】
接触が触媒を含む反応領域で行われ、その中へイソブタンが触媒タングステンのモル当たり1分間に0.01ないし10、好ましくは0.01ないし10、さらに好ましくは0.1ないし5x10から選ばれるイソブタン導入モル速度で好ましくは連続的に導入されることを特徴とする請求項1ないし13の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項15】
接触が気相、気/液混合相、液相または超臨界相で行われることを特徴とする請求項1ないし14の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項16】
反応領域が静置反応器、再循環反応器または動的連続流反応器からなることを特徴とする請求項1ないし15の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項17】
反応領域が管状(または多管状)反応器、蒸留カラム反応器、スラリー反応器、流動床反応器、機械的攪拌床反応器、流動および機械的攪拌床反応器、固定床反応器および循環床反応器から選ばれる反応器からなることを特徴とする請求項1ないし15の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項18】
プロセスが2,3−ジメチルブタンおよび任意に反応混合物の1つまたはそれ以上の他の成分を、別々にあるいは混合で分離し単離することからなることを特徴とする請求項1ないし17の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項19】
分離が非連続的または好ましくは連続的に行われ、同型または異なる型の、好ましくは
− 物理的状態の変化による、好ましくは気/液相の変化による、特に蒸留および/または凝縮または部分凝縮による、特に蒸留/凝縮カラムまたはカラム反応器による分離、
− 分子ろ過、好ましくは半透過性および選択性膜による分離、
− 吸着、特に分子ふるいまたは他の吸着剤による分離、
− 吸収、特に吸収油による分離、
− 低温膨張、好ましくは膨張タービンによる分離、および
− 圧縮、好ましくはガス圧縮機による分離、
から選ばれる1つまたはそれ以上の反応混合物の分離からなることを特徴とする請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
2,3−ジメチルブタンおよびエタンからなり任意に未反応のイソブタンを伴う反応混合物が反応領域での接触により生成され、2,3−ジメチルブタンを前記の反応混合物から分離し回収するために処理されることを特徴とする請求項1ないし19の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項21】
2,3−ジメチルブタンとエタンからなり未反応イソブタンを伴う反応混合物が反応領域における接触により生成され、未反応イソブタンを前記の反応混合物から分離するため処理され、一方このようにして分離された未反応イソブタンが前記の反応領域に戻されることを特徴とする請求項1ないし20の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項22】
2,3−ジメチルブタンとエタンからなり任意に未反応イソブタンを伴う反応混合物が反応領域における接触によって生成され、前記の領域から単離されることを特徴とする請求項1ないし19の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項23】
2,3−ジメチルブタンとエタンからなり任意に未反応イソブタンを伴う反応混合物が反応領域における接触により生成され、前記の領域から単離され、2,3−ジメチルブタンおよび任意に未反応イソブタンを単離し回収するように、蒸留および液/気相変換から選ばれる1つまたはそれ以上の分画操作を受けることを特徴とする請求項1ないし19の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項24】
分画操作によって単離され回収された未反応イソブタンが反応領域に戻されることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
接触が2,3−ジメチルブタンを含むC5+アルカン、好ましくはCないしCアルカンを生成し、プロセスが反応混合物から単一成分として2,3−ジメチルブタンを含む、前記のC5+アルカン、好ましくはCないしCアルカンを、好ましくは前記の単一成分をガソリンと特にガソリンのオクタン価を上げるために、あるいは前記の単一成分をガソリンのブレンドストックとして用いるため混合できるように、分離し単離することからなることを特徴とする請求項1ないし19の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項26】
接触が2,3−ジメチルブタンを含む、C5+アルカン、好ましくはCないしCアルカンを生成し、プロセスが反応混合物から単一成分として2,3−ジメチルブタンを含む、前記のC5+アルカン、好ましくはCないしCアルカンを分離し、続いて前記の単一成分から2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの分画を、好ましくは前記の少なくとも1つの分離した分画をガソリンと特にガソリンのオクタン価を上げるために、あるいは前記の少なくとも1つの分離した分画をガソリンのブレンドストックとして用いるため混合できるように、分離し単離することからなることを特徴とする請求項1ないし19の何れか1つに記載のプロセス。
【請求項27】
請求項25に記載の2,3−ジメチルブタンを含む単一成分の、前記の単一成分を好ましくはガソリンのオクタン価を上げるためガソリンと混合する用途。
【請求項28】
請求項25に記載の2,3−ジメチルブタンを含む単一成分の、ガソリンブレンドストックとしての用途。
【請求項29】
請求項26に記載の2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの分離した分画の、前記の少なくとも1つの分離した分画を好ましくはガソリンのオクタン価を上げるためガソリンと混合する用途。
【請求項30】
請求項26に記載の2,3−ジメチルブタンを含む少なくとも1つの分離した分画の、ガソリンブレンドストックとしての用途。

【公表番号】特表2009−541478(P2009−541478A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517373(P2009−517373)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002154
【国際公開番号】WO2008/001040
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(597142701)ビーピー オイル インターナショナル リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】