説明

2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノン及び2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、およびその塩の製造方法

【課題】高性能繊維のモノマーである2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールおよび/またはその塩の製造方法を提供する。
【解決手段】2,5−ジアルコキシ−1,4−ベンゾキノンとアンモニアとを溶媒中で0.1kPa以上の圧力を印加して反応させることによる、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンの製造方法。および該2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンからの2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールおよび/またはその塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンゾキノンのアミン誘導体の合成方法に関する。さらには高性能繊維のモノマーである2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、およびその塩の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール塩はポリベンゾオキサゾールの原料として有用である。本化合物の合成法として特許文献1、非特許文献1および2にあるように、ジヒドロキシベンゾキノンを出発原料とし、塩化水素の存在下メタノールと反応させ2,5−ジメトキシ−p−ベンゾキノンを合成し、これをアンモニアでアミノ化し、塩酸中塩化第一スズで還元することにより2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール2塩酸塩を得る。しかしながら本工程におけるアミノ化の際、原料である2,5−ジメトキシ−p−ベンゾキノンは溶媒に対する溶解性が低く、反応には高温を要する。さらに高温で反応させる際溶媒中に溶解するアンモニアが容易に蒸発し反応の系外に出てゆくといった問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平2−221281号公報
【非特許文献1】J. of Polymer Science, A, 6 1503 (1968)
【非特許文献2】Polymer, 11, 297-308 (1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンの合成方法、およびそれからの2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、およびその塩の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は下記式(II)
【化1】

(II)
(式中Rは炭素数1〜20の炭化水素)
で表される2,5−ジアルコキシ−1,4−ベンゾキノンとアンモニアとを溶媒中で0.1kPa以上の圧力を印加して反応させることによる、下記式(I)
【化2】

(I)
で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンの製造方法である。また本発明は上記の方法にて得られた2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンを還元させることによる下記式(III)
【化3】

(III)
で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールおよび/またはその塩の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により高原料濃度条件で2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンを製造することが可能となり、それより高性能繊維のモノマーである2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールおよび/またはその塩を反応効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において下記式(I)
【化4】

(I)
で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンは以下の方法で合成される。
【0008】
(原料)
原料は下記式(II)
【化5】

(II)
(式中Rは炭素数1〜20の炭化水素)
で表される2,5−ジアルコキシ−1,4−ベンゾキノンである。式中Rは炭素数1〜20の炭化水素であるが、好ましくはメチル、エチル、プロピル、フェニルなどが挙げられる。
【0009】
中でもRがメチルである下記式
【化6】

で表される2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンが好ましく挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0010】
式(II)で表される化合物は、下記式
【化7】

で表される2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンゾキノンをアルコキシ化させることにより簡便に式(II)で表される化合物を製造することができる。
【0011】
式(II)で表される化合物を加圧状態でアンモニアと反応させることで上記式(I)で表される化合物を得ることが出来る。
本発明で反応に用いられる溶媒は上述の式(II)で表される化合物及びアンモニアを溶解させるものが好ましく利用できる。
一例として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0012】
(アンモニア)
アンモニアの使用量は式(II)で表される化合物1モルに対して2〜100モルであることが好ましい。
アンモニアは反応前に溶媒に溶解させておく、反応直前にガスとして加える、反応中に逐次加えてゆく等従来公知の方法が用いられる。
【0013】
反応温度としては−50℃〜800℃好ましくは0℃〜500℃さらには20℃〜300℃が好ましい。
反応圧力としては0.1kPa〜1GPa印加する、好ましくは1kPa〜100MPa印加することが好ましい。
ここで言う印加する圧力とは常圧1気圧約101.13kPaにさらに加える圧力のことである。すなわち圧力を加えないときは1気圧で反応を行うことを意味する。
反応装置は上述のように反応を密閉状態で過熱攪拌を行うことが出来る従来公知の装置いずれもが好ましい。一例としてオートクレーブ、グラスチューブオーブンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0014】
(2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールおよび/またはその塩)
上述の方法にて得られた上記式(I)で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンを還元することで下記式(III)
【化8】

(III)
で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールが得られる。還元方法としては従来公知の方法が好ましく利用できる。具体的には塩酸中での塩化第一スズ等の触媒を用いた還元、触媒の存在下での水素を用いた還元などが挙げられるがこれに限定されるものでは無い。
【0015】
得られた2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールと酸とを反応させることにより、その塩を得ることが出来る。塩としては強酸塩が好ましく、強酸塩の例としては塩酸塩、硫酸塩、りん酸塩などが挙げられるがこれに限定されるものでは無い。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによっていささかも限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
TAIATSU TECHNO CORP製耐圧ガラス製反応装置ハイパーグラスターに2mol/lのアンモニアメタノール溶液114重量部に2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン6重量部を加え窒素置換し1kPaの圧力を印加し、攪拌速度180RPMにて反応を開始した。系内の温度が100℃に達した時点で内圧は3.5KPaであった。この状態で反応を5時間継続し反応を終了した。減圧蒸留にて反応溶媒を除去し2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノン5.12重量部を得た。
【0018】
[比較例1]
圧力を印加しなかったこと以外は実施例1と同様の実験を行った。反応中原料である2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンがメタノール中に溶解せず反応は完全に進行しなかった。
【0019】
[実施例2](2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール2塩酸塩)
2.4Nの塩酸130重量部に、44重量部のSnCl・2HO、実施例1で得られた2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノン3.5重量部を加え過熱攪拌した。沈殿の発生を確認したら、110重量部の12Nの塩酸を加え、過熱還流攪拌した。その後12Nの塩酸を300重量部加え冷却した。沈殿物が発生してくるのでガラスフィルターでろ過し乾燥し、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール2塩酸塩4.2重量部を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)
【化1】

(II)
(式中Rは炭素数1〜20の炭化水素)
で表される2,5−ジアルコキシ−1,4−ベンゾキノンとアンモニアとを溶媒中で0.1kPa以上の圧力を印加して反応させることによる、下記式(I)
【化2】

(I)
で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンの製造方法。
【請求項2】
式(II)で表される化合物が下記式
【化3】

で表される2,5−メトキシ−1,4−ベンゾキノンである請求項1に記載の2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンの製造方法。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかの方法にて得られた2,5−ジアミノ−1,4−ベンゾキノンを還元させることによる、下記式(III)
【化4】

(III)
で表される2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールの製造方法。
【請求項4】
請求項3の方法にて得られた2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオールと酸とを反応させることによる、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール塩の製造方法。

【公開番号】特開2007−70300(P2007−70300A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260611(P2005−260611)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】