説明

2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類およびその製造方法

【課題】2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類とその製造方法を提供する。
【解決手段】スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類と、2,6−ジアミノプリン類または2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類とを反応させることにより、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6−ジアミノプリン類は、抗ウイルス剤等の医薬品の合成中間体、特に最近話題になっているアンチセンス医薬品の合成中間体として需要の多い化合物であり、最初に実用化された白血病治療薬、抗HIV−1薬剤などの合成中間体として知られている(非特許文献1〜4)。
一方、パーフルオロアルキル基をもつ化合物は、特異な生理活性が発現することが知られている。非特許文献5は、2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリンの製造方法を開示する。
【0003】
【非特許文献1】ウイルス、55巻、69−76ページ、2005年
【非特許文献2】ウイルス、55巻、85−94ページ、2005年
【非特許文献3】Antimicrobial Agents and Chemotherapy、37巻、332−338ページ、1993年
【非特許文献4】Biochemical and Biophysical Research Communications、219巻、337−341ページ、1996年
【非特許文献5】Journal of the American Chemical Society、80巻、5744−5752ページ、1957年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、8位に2つのパーフルオロアルキル基をもつ2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類については、これまでに報告例がない。
本発明は、医薬品や農薬品の合成中間体として有用な化合物である2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類、およびその簡便で効率の良い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類により、2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキル−8H−プリン類または2,6−ジアミノプリンをパーフルオロアルキル化し、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、一般式(1a):
【化1】

[式中、RfおよびRfは、炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、RおよびRは、置換されていても良いアミノ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表されることを特徴とする、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類に関するものである。
【0007】
別の本発明は、一般式(2):
【化2】

[式中、R3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、一般式(3a):
【化3】

[式中、Rfは、炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と、一般式(4):
【化4】

[式中、Rfは炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、RおよびRは、置換されていても良いアミノ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表される2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類を反応させることを特徴とする、一般式(1a):
【化5】

[式中、Rf、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]
で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類の製造方法に関するものである。
【0008】
さらに別の本発明は、一般式(2):
【化6】

[式中、R3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、一般式(3b):
【化7】

[式中、Rfは、炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と、一般式(5):
【化8】

[RおよびRは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表される2,6−ジアミノプリン類を反応させることを特徴とする、一般式(1b):
【化9】

[式中、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]
で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、抗ウイルス剤等の医薬品や各種農薬品の合成中間体として有用な化合物である2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類を提供するものであり、その製造方法は簡便かつ高効率であって有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、上記一般式(1a)(または(1b))で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類について説明する。
プリン環の8位に導入されるパーフルオロアルキル基RfおよびRfは、炭素数が1から12のものであり、互いに同一でも異なっていてもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロシクロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、パーフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロプロピルメチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルプロピル基、パーフルオロネオペンチル基、パーフルオロ−1−メチルブチル基、パーフルオロ−2−メチルブチル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロシクロブチルメチル基、パーフルオロ−2−シクロプロピルエチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロ−1−メチルペンチル基、パーフルオロ−2−メチルペンチル基、パーフルオロ−3−メチルペンチル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−3,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1−エチルブチル基、パーフルオロ−2−エチルブチル基、パーフルオロ−1,1,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−1−メチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−2−メチルプロピル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロシクロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基またはパーフルオロドデシル基等が例示できる。
【0011】
なかでも、医薬品の合成中間体として有用な点で、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基またはパーフルオロヘキシル基が望ましく、トリフルオロメチル基がさらに望ましい。
【0012】
プリン環の2,6位のアミノ基RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、無置換であるほか、置換アミノ基でもよい。たとえば、炭素数1から4のアルキル基で置換されていても良く、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基またはブチルメチルアミノ基等が例示できる。
【0013】
さらに、RおよびRで表されるアミノ基は、窒素原子の保護基等で置換されていても良く、具体的には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、プロパルギルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、p−フェニルベンゾイルアミノ基、ベンジルアミノ基、p−メトキシベンジルアミノ基、トリチルアミノ基、4,4’−ジメトキシトリチルアミノ基、メトキシエトキシメチルアミノ基、フェニルオキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ基、アリルアミノ基、p−メトキシフェニルアミノ基、トリフルオロアセチルアミノ基、メトキシメチルアミノ基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルアミノ基、アリルオキシカルボニルアミノ基、2,4,6−トリイソプロピルフェニルアミノ基またはトリクロロエトキシカルボニルアミノ基等が例示できる。
【0014】
このアミノ基RおよびRは、医薬品の合成中間体として有用な点で、ともに無置換のアミノ基であることが好ましい。
【0015】
次に、上記一般式(1a)(または(1b))で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類の好ましい製造方法について説明する。
第1の好ましい製造方法として、この化合物は、上記一般式(2)で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、上記一般式(3a)で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と上記一般式(4)で表される2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類とを反応させる[工程A]により製造することができる。
【0016】
【化10】

[式中、Rf、Rf、R,RおよびXは、前記と同じ内容を示す。]
【0017】
この[工程A]において、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)と2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)との反応を、スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下で行うことが、この製造方法における一つの特徴である。この特定の4種類の反応試剤を組み合わせることにより、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)を用いて、化合物(4)のプリン環の8位をさらにパーフルオロアルキル化することができる。
【0018】
[工程−A]における反応溶媒としては、反応に用いるスルホキシド類(2)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない任意の溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。なかでも収率が良い点で、水、スルホキシド類(2)、または水とスルホキシド類(2)の混合溶媒を用いることが望ましい。
【0019】
上記ハロゲン化パーフルオロアルキル基(3a)のXは、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示できる。収率が良い点でヨウ素原子または臭素原子が望ましく、ヨウ素原子がさらに望ましい。
【0020】
上記スルホキシド類(2)におけるR3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、ブチル基、ドデシル基等が例示できる。置換されていても良いフェニル基としては、具体的には、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基等が例示できる。なかでもR3aおよびR3bは、収率が良い点でメチル基、ブチル基、フェニル基が望ましく、メチル基がさらに望ましい。
【0021】
2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)とスルホキシド類(2)とのモル比は、1:1から1:200が望ましく、収率が良い点で1:10から1:100がさらに望ましい。
【0022】
過酸化物は例えば、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3から70重量%であることが好ましく、市販の35重量%過酸化水素をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、10から30重量%過酸化水素水を用いることがさらに望ましい。
【0023】
2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)と過酸化物のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3がさらに望ましい。
【0024】
鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)等の無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)化合物または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、反応に用いる過酸化水素をそのまま酸化試薬として用いることもできる。収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセンまたは鉄粉を用いることが望ましく、硫酸鉄(II)またはフェロセンであることがさらに望ましい。
この[工程−A]ならびに後述する[工程−B]および[工程−B’]において、フェロセン等の有機金属化合物を使用できることも、本発明に係る製造方法における一つの特徴であると考えられる。
【0025】
これらの鉄化合物は、固体のまま用いても良いが、溶液として用いることもできる。溶液として用いる場合、溶媒としては、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)と2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)との反応に用いる上述した溶媒のいずれでも良いが、中でも水が望ましい。その際の鉄化合物溶液の濃度は、収率が良い点で、0.1から10mol/Lが望ましく、0.5から5mol/Lがさらに望ましい。
【0026】
2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)と鉄化合物のモル比は、1:0.01から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.1から1:1がさらに望ましい。
【0027】
酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルオロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、硫酸を用いることが望ましい。
【0028】
また、硫酸の酸性塩を用いても良い。酸性塩としては、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウム等を例示できる。
これらの酸は、希釈して用いても良い。その際の溶媒は、上記の反応溶媒のいずれか1種以上を用いることが好ましく、中でも水、スルホキシド類(2)、または水とスルホキシド類(2)の混合溶媒が望ましい。
【0029】
2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)と酸のモル比は、1:0.001から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.01から1:2がさらに望ましい。
【0030】
2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)とハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)との反応モル比は、1:1から1:100が望ましく、収率が良い点で1:1から1:10がさらに望ましい。
【0031】
反応温度は、0℃から120℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃以上が望ましく、過酸化物の分解を抑制する点で100℃以下が望ましい。本反応は発熱反応であるため、反応のスケールにもよるが、室温で反応を開始しても、自発的に系内の温度は40℃程度から70℃程度に上昇する。この温度範囲でも、目的物を収率良く得ることができる。
【0032】
反応を密閉系で行う場合、大気圧でも反応は充分に進行するが、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。反応の際の雰囲気は、空気中でも充分に進行するが、アルゴン、窒素等の不活性ガスでも良い。
【0033】
ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)が、室温で気体の場合は、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素等の気体で希釈して混合気体としても良く、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)のモル分率が1から100%の気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)またはその混合気体を、反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧でも反応は充分に進行するが、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。また、開放系で、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)またはその混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)またはその混合気体の導入速度は、反応のスケール、反応試剤量、反応温度、混合気体におけるハロゲン化パーフルオロアルキル類(3a)のモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度であることが好ましい。
【0034】
反応後の溶液から目的物を単離する方法に、特に限定はなく、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0035】
次に、上記一般式(1b)で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類の、別の好ましい製造方法について説明する。
第2の好ましい製造方法として、この化合物は、上記一般式(2)で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、上記一般式(3b)で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と上記一般式(5)で表される2,6−ジアミノプリン類とを反応させる[工程B]により製造することができる。これは、上記一般式(1a)において、RfおよびRfが同一である2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類(1b)の製造方法である。
【0036】
【化11】

[式中、R、R、RfおよびXは、前記と同じ内容を示す。]
【0037】
この[工程B]においても、上記同様に、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)と2,6−ジアミノプリン類(5)との反応を、スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下で行うことが、この製造方法における一つの特徴である。この特定の4種類の反応試剤を組み合わせることにより、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)を用いて、化合物(5)のプリン環の8位に一度に二つのパーフルオロアルキル基を導入できるという顕著な効果を得ることができる。
【0038】
[工程−B]における反応溶媒としては、反応に用いるスルホキシド類(2)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない任意の溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。なかでも収率が良い点で、水、スルホキシド類(2)、または水とスルホキシド類(2)の混合溶媒を用いることが望ましい。
【0039】
上記ハロゲン化パーフルオロアルキル基(3b)のXは、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示できる。収率が良い点でヨウ素原子または臭素原子が望ましく、ヨウ素原子がさらに望ましい。
上記スルホキシド類(2)におけるR3aおよびR3bは、上述のとおりである。
【0040】
2,6−ジアミノプリン類(5)とスルホキシド類(2)とのモル比は、1:1から1:200が望ましく、収率が良い点で1:10から1:100がさらに望ましい。
【0041】
過酸化物は例えば、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3から70重量%であることが好ましく、市販の35重量%過酸化水素をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、10から30重量%過酸化水素水を用いることがさらに望ましい。
【0042】
2,6−ジアミノプリン類(5)と過酸化物のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3がさらに望ましい。
【0043】
鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)等の無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)化合物または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、反応に用いる過酸化水素をそのまま酸化試薬として用いることもできる。収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセンまたは鉄粉を用いることが望ましく、硫酸鉄(II)またはフェロセンであることがさらに望ましい。
【0044】
これらの鉄化合物は、固体のまま用いても良いが、溶液として用いることもできる。溶液として用いる場合、溶媒としては、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)と2,6−ジアミノプリン類(5)との反応に用いる上述した溶媒のいずれでも良いが、中でも水が望ましい。その際の鉄化合物溶液の濃度は、収率が良い点で、0.1から10mol/Lが望ましく、0.5から5mol/Lがさらに望ましい。
【0045】
2,6−ジアミノプリン類(5)と鉄化合物のモル比は、1:0.01から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.1から1:1がさらに望ましい。
【0046】
酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルホロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、硫酸を用いることが望ましい。
【0047】
また、硫酸の酸性塩を用いても良い。酸性塩としては、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウム等を例示できる。
これらの酸は、希釈して用いても良い。その際の溶媒は、上記の反応溶媒のいずれか1種以上を用いることが好ましく、中でも水、スルホキシド類(2)、または水とスルホキシド類(2)の混合溶媒が望ましい。
【0048】
2,6−ジアミノプリン類(5)と酸のモル比は、1:0.001から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.01から1:2がさらに望ましい。
【0049】
2,6−ジアミノプリン類(5)とハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)との反応モル比は、1:1から1:100が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:20がさらに望ましい。
【0050】
反応温度は、0℃から120℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃以上が望ましく、過酸化物の分解を抑制する点で100℃以下が望ましい。本反応は発熱反応であるため、反応のスケールにもよるが、室温で反応を開始しても、自発的に系内の温度は40℃程度から70℃程度に上昇する。この温度範囲でも、目的物を収率良く得ることができる。
【0051】
反応を密閉系で行う場合、大気圧でも反応は充分に進行するが、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。反応の際の雰囲気は、空気中でも充分に進行するが、アルゴン、窒素等の不活性ガスでも良い。
【0052】
ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)が、室温で気体の場合は、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素等の気体で希釈して混合気体としても良く、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)のモル分率が1から100%の気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)またはその混合気体を、反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧でも反応は充分に進行するが、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。また、開放系で、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)またはその混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)またはその混合気体の導入速度は、反応のスケール、反応試剤量、反応温度、混合気体におけるハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)のモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度であることが好ましい。
【0053】
反応後の溶液から目的物を単離する方法に、特に限定はなく、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0054】
上記[工程−A]で用いる2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類(4)の製造方法に制限はない。例えば、上記非特許文献5に記載の製造法により、Rfがトリフルオロメチル基の化合物である2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリンを得ることができる。
【0055】
あるいは、2,6−ジアミノプリン類(5)を原料として、一般式(2):
【化12】

[式中、R3aおよびR3bは、前記と同じ内容を示す。]
で表されるスルホキシド類、過酸化物および鉄化合物、さらに場合によっては酸の存在下、一般式(3b):
【化13】

[式中、RfおよびXは、前記と同じ内容を示す。]
で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類を反応させることにより製造しても良い。
この製造方法を[工程−B’]に示す。
【0056】
【化14】

[式中、R、R、RfおよびXは、前記と同じ内容を示す。]
【0057】
[工程−B’]における反応溶媒としては、反応に用いるスルホキシド類(2)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない任意の溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。なかでも収率が良い点で、水、スルホキシド類(2)、または水とスルホキシド類(2)の混合溶媒を用いることが望ましい。
【0058】
上記ハロゲン化パーフルオロアルキル基(3b)のX、および上記スルホキシド類(2)におけるR3aおよびR3bは、上述のとおりである。
2,6−ジアミノプリン類(5)とスルホキシド類(2)とのモル比は、1:1から1:200が望ましく、収率が良い点で1:10から1:100がさらに望ましい。
【0059】
過酸化物は例えば、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3から70重量%であることが好ましく、市販の35重量%過酸化水素をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、10から30重量%過酸化水素水を用いることがさらに望ましい。
【0060】
2,6−ジアミノプリン類(5)と過酸化物のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3がさらに望ましい。
【0061】
鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)等の無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)化合物または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、反応に用いる過酸化水素をそのまま酸化試薬として用いることもできる。収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセンまたは鉄粉を用いることが望ましく、硫酸鉄(II)またはフェロセンであることがさらに望ましい。
【0062】
これらの鉄化合物は、固体のまま用いても良いが、溶液として用いることもできる。溶液として用いる場合、溶媒としては、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)と2,6−ジアミノプリン類(5)との反応に用いる上述した溶媒のいずれでも良いが、中でも水が望ましい。その際の鉄化合物溶液の濃度は、収率が良い点で、0.1から10mol/Lが望ましく、0.5から5mol/Lがさらに望ましい。
【0063】
2,6−ジアミノプリン類(5)と鉄化合物のモル比は、1:0.01から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.1から1:1がさらに望ましい。
【0064】
[工程−B’]では、反応試剤として、さらに酸を添加することにより、目的物の収率を向上させることができる。酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルホロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、硫酸を用いることが望ましい。
酸を添加して[工程−B’]を実施すると、一般に、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類(1b)を副生する。その際は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で、目的物のみを単離することができる。
【0065】
また、硫酸の酸性塩を用いても良い。酸性塩としては、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウム等を例示できる。
これらの酸は、希釈して用いても良い。その際の溶媒は、上記の反応溶媒のいずれか1種以上を用いることが好ましく、中でも水、スルホキシド類(2)、または水とスルホキシド類(2)の混合溶媒が望ましい。
【0066】
酸を用いる場合の2,6−ジアミノプリン類(5)と酸のモル比は、1:0.001から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.01から1:2がさらに望ましい。
【0067】
2,6−ジアミノプリン類(5)とハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)との反応モル比は、1:1から1:100が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:10がさらに望ましい。
【0068】
反応温度は、0℃から120℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃以上が望ましく、過酸化物の分解を抑制する点で100℃以下が望ましい。本反応は発熱反応であるため、反応のスケールにもよるが、室温で反応を開始しても、自発的に系内の温度は40℃程度から70℃程度に上昇する。この温度範囲でも、目的物を収率良く得ることができる。
【0069】
反応を密閉系で行う場合、大気圧でも反応は充分に進行するが、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。反応の際の雰囲気は、空気中でも充分に進行するが、アルゴン、窒素等の不活性ガスでも良い。
【0070】
ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)が、室温で気体の場合は、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素等の気体で希釈して混合気体としても良く、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)のモル分率が1から100%の気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)またはその混合気体を、反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧でも反応は充分に進行するが、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。また、開放系で、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)またはその混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)またはその混合気体の導入速度は、反応のスケール、反応試剤量、反応温度、混合気体におけるハロゲン化パーフルオロアルキル類(3b)のモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度であることが好ましい。
【0071】
反応後の溶液から目的物を単離する方法に、特に限定はなく、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【実施例】
【0072】
次に本発明を参考例および実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(参考例1)
<2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシルプリンの合成[工程−B’]>
【化15】

【0074】
二口フラスコに2,6−ジアミノプリン0.15g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド5.0mL、トリデカフルオロ−1−ヨードヘキサン1.3mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシルプリンの生成を確認した(生成率10%)。
反応溶液に水を加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、目的物を酢酸エチルで抽出した。抽出液を濃縮後、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシルプリンを白色固体として得た(0.018g、収率4.0%)。
【0075】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ6.20(s,2H),7.31(s,2H),12.2(brs,1H)
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−126.2(q,JFF=4.7Hz,2F),−122.9(brs,2F),−121.9(m,4F),−108.9(m,2F),−80.7(t,JFF=9.5Hz,3F)
MS(m/z):469[M+H]
【0076】
(実施例1)
<2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリンの合成[工程−B]>
【化16】

【0077】
二口フラスコに2,6−ジアミノプリン0.15g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリン(生成率25%)および2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン(生成率45%)の生成を確認した。
参考例1と同様の操作により、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリン(0.054g、収率19%)を黄色固体として、2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン(0.050g、収率23%)を白色固体として得た。
【0078】
<2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリン>
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ8.02(s,1H),8.24(brs,1H),8.84(brs,1H),9.08(brs,1H)
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ99.2(m),121.5(q,JCF=285.8Hz),157.9,158.2,167.8,170.7
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−71.6
MS(m/z):286[M]
【0079】
<2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン>
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ6.56(brs,2H),7.64(brs,2H),12.1(brs,1H)
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ112.0,121.0(q,JCF=267.5Hz),149.3(q,JCF=33.2Hz),152.7,157.7,161.7
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−62.6
MS(m/z):218[M]
【0080】
(実施例2)
二口フラスコに2,6−ジアミノプリン1.5g(10mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド20mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液20mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液10mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液3.0mLおよび30%過酸化水素水2.0mLを加えて密閉し、60分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリン(生成率27%)および2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン(生成率45%)の生成を確認した。
【0081】
(実施例3)
二口フラスコに2,6−ジアミノプリン1.5g(10mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド50mL、硫酸0.055mL、ガス状ヨウ化トリフルオロメチル30mmol、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液3.0mLおよび30%過酸化水素水2.0mLを加えて密閉し、60分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリン(生成率19%)および2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン(生成率32%)の生成を確認した。
【0082】
(実施例4)
二口フラスコに2,6−ジアミノプリン0.15g(1.0mmol)とフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリン(生成率2.4%)および2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン(生成率0.7%)の生成を確認した。
【0083】
(実施例5)
<2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリデカフルオロヘキシル)−8H−プリンの合成[工程−B]>
【化17】

【0084】
二口フラスコに2,6−ジアミノプリン0.15g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド3.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、トリデカフルオロ−1−ヨードヘキサン1.3mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8,8−ジパーフルオロヘキシル−8H−プリン(生成率6.2%)および2,6−ジアミノ−8−トリデカフルオロヘキシルプリン(生成率22%)の生成を確認した。
参考例1と同様の操作により、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリデカフルオロヘキシル)−8H−プリン(0.023g、収率3.0%)を淡黄色固体として、2,6−ジアミノ−8−トリデカフルオロヘキシルプリン(0.084g、収率18%)を白色固体として得た。
【0085】
<2,6−ジアミノ−8,8−ジパーフルオロヘキシル−8H−プリン>
H−NMR(重アセトン):δ6.75(brs,1H),6.82(brs,1H),7.56(brs,1H),7.70(brs,1H)
19F−NMR(重アセトン):δ−127.0(m,4F),−123.6(brs,4F),−122.4(m,4F),−114.2(brs,2F),−114.2(brs,2F),−112.9(brs,2F),−112.3(brs,2F),−82.0(m,6F)
MS(m/z):787[M+H]
【0086】
(実施例6)
<2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリンの合成[工程−A]>
【化18】

【0087】
二口フラスコに2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリン0.22g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(トリフルオロメチル)−8H−プリンの生成を確認した(生成率29%)。
【0088】
(実施例7)
<2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシル−8−トリフルオロメチル−8H−プリンの合成[工程−A]>
【化19】

【0089】
二口フラスコに2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシルプリン0.47g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらにアルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシル−8−トリフルオロメチル−8H−プリンの生成を確認した(生成率6.8%)。
参考例1と同様の操作により、2,6−ジアミノ−8−パーフルオロヘキシル−8−トリフルオロメチル−8H−プリンを淡黄色固体として得た(0.011g、収率2.0%)。
【0090】
H−NMR(重アセトン):δ6.75(brs,1H),6.82(brs,1H),
8.02(s,1H),8.24(brs,1H)
19F−NMR(重アセトン):−127.0(m,2F),−123.6(brs,2F),−122.8(brs,2F),−122.5(m,2F),−110.9(brs,2F),−81.9(m,3F),−70.9(s,3F)
MS(m/z):537[M+H]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1a):
【化1】

[式中、RfおよびRfは、炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、RおよびRは、置換されていても良いアミノ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表されることを特徴とする、2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類。
【請求項2】
一般式(1a)のRおよびRが、無置換のアミノ基である、請求項1に記載の2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類。
【請求項3】
一般式(2):
【化2】

[式中、R3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、一般式(3a):
【化3】

[式中、Rfは、炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と、一般式(4):
【化4】

[式中、Rfは炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、RおよびRは、置換されていても良いアミノ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表される2,6−ジアミノ−8−パーフルオロアルキルプリン類を反応させることを特徴とする、一般式(1a):
【化5】

[式中、Rf、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]
で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類の製造方法。
【請求項4】
一般式(2):
【化6】

[式中、R3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、一般式(3b):
【化7】

[式中、Rfは、炭素数1から12のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と、一般式(5):
【化8】

[RおよびRは、置換されていてもよいアミノ基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表される2,6−ジアミノプリン類を反応させることを特徴とする、一般式(1b):
【化9】

[式中、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]
で表される2,6−ジアミノ−8,8−ビス(パーフルオロアルキル)−8H−プリン類の製造方法。
【請求項5】
一般式(3a)または(3b)のXが、ヨウ素または臭素である、請求項3または4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)またはフェロセンである、請求項3から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
過酸化物が、過酸化水素あるいはその水溶液である、請求項3から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
酸が、硫酸である、請求項3から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
一般式(2)のR3aおよびR3bが、メチル基である、請求項3から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
反応温度が、20℃から100℃の範囲から選ばれた温度である、請求項3から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
反応圧が、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から選ばれた圧力である、請求項3から10のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−115122(P2008−115122A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300412(P2006−300412)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】