説明

2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)の水性医薬組成物およびその使用

本発明は、親油性の治療薬を含む水性医薬組成物を提供する。具体的には、本発明は、化合物2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)を含む水性医薬組成物を提供する。本発明の好ましい組成物は、少なくとも1種のブロックコポリマー(例えば、P188または別のポロキサマー)およびポリエチレングリコール(PEG)の存在下でプロポフォールを含む。本発明の組成物は、滅菌されているかまたは容易に滅菌される(例えばオートクレーブ処理によって)ことが好ましく、これはヒトを含む任意の動物に非経口投与するのに適している。この組成物は、また、広範囲の環境条件にわたり化学的にも物理的にも長期間安定である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(1.関連出願の相互参照)
本出願は、35U.S.C.119(e)のもとに、2002年7月29日出願の米国特許仮出願番号第60/399,490号、2002年10月29日出願の同60/422,195号、2002年12月30日出願の同60/436,979号、2003年1月29日出願の同60/443,490号、2003年4月11日出願の同60/462,450号、2003年4月21日出願の同60/464,314号、2003年5月14日出願の同60/470,403号、および2003年7月7日出願の同60/485,354号に先行する利益を主張する2003年7月29日出願の米国特許出願番号第10/766,631号の継続出願である。本出願は、35U.S.C.119(e)のもとに、2002年7月29日出願の米国特許仮出願番号第60/399,490号、2002年10月29日出願の同60/422,195号、2002年12月30日出願の同60/436,979号、2003年1月29日出願の同60/443,490号、2003年4月11日出願の同60/462,450号、2003年4月21日出願の同60/464,314号、2003年5月14日出願の同60/470,403号、および2003年7月7日出願の同60/485,354号に先行する利益を主張する2003年7月29日出願の米国特許出願番号第10/629,308号の一部継続出願でもある。本出願は、35U.S.C.119(e)のもとに、2002年7月29日出願の米国特許仮出願番号第60/399,490号、2002年10月29日出願の同60/422,195号、2002年12月30日出願の同60/436,979号、2003年1月29日出願の同60/443,490号、2003年4月11日出願の同60/462,450号、2003年4月21日出願の同60/464,314号、2003年5月14日出願の同60/470,403号、および2003年7月7日出願の同60/485,354号に先行する利益を主張する2003年10月2日出願の米国特許仮出願番号第10/677,747号の一部継続出願でもある。本出願は、2002年7月29日出願の米国特許仮出願番号第60/399,490号、2002年10月29日出願の同60/422,195号、2002年12月30日出願の同60/436,979号、2003年1月29日出願の同60/443,490号、2003年4月11日出願の同60/462,450号、2003年4月21日出願の同60/464,314号、2003年5月14日出願の同60/470,403号および2003年7月7日出願の同60/485,354号に先行する利益を主張する2003年7月29日出願の国際特許出願PCT/US03/23512号の一部継続出願でもある。本出願は、2002年7月29日出願の米国特許仮出願番号第60/399,490号、2002年10月29日出願の同60/422,195号、2002年12月30日出願の同60/436,979号、2003年1月29日出願の同60/443,490号、2003年4月11日出願の同60/462,450号、2003年4月21日出願の同60/464,314号、2003年5月14日出願の同60/470,403号および2003年7月7日出願の同60/485,354号に先行する利益を主張する2003年10月2日出願の国際特許出願PCT/US03/31086号の一部継続出願でもある。これら先行する出願のそれぞれおよびその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
(2.技術分野)
本発明は、親油性の治療薬を含む水性医薬組成物に関する。具体的には、本発明は、化合物2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)含有の水性医薬組成物を提供する。
【0003】
(3.背景技術)
化合物2,6−ジイソプロピルフェノールは、一般にプロポフォールとして知られている周知の麻酔薬である。麻酔状態の開始は主に血液脳関門を通る薬物の拡散速度によって制御される。プロポフォールは親油性であり、この特性は化合物が迅速な麻酔作用をもたらす助けとなる。しかし、プロポフォールの親油性は、室温で液体である化合物を、比較的水に不溶性のものにもする。その結果、プロポフォールは、水中油型エマルジョンとして血流中に直接投与する(注入法かまたはボーラス注射法のどちらかによって)のが一般的である。そのような処方(formulation)は一般に薬物を可溶化させるための脂質成分を含む。しかし、脂質は細菌増殖にとって良好な基質であり、ベンジルアルコールなどの少なくともある程度水溶性である保存剤と相溶性がない可能性もある。さらに、大容量の脂質エマルジョンの非経口投与および/または長期間にわたる脂質エマルジョンの投与によって高脂血症がもたらされることがある。
【0004】
かかる水中油型エマルジョンのこれらの欠点にもかかわらず、プロポフォールは成功している麻酔薬であり、ヒトへの投与用にDiprivan(登録商標)注射可能エマルジョン(AstraZeneca;Diprivan(登録商標)はImperial Chemical Industries PLCの商標である)として市販されている。プロポフォールは、動物への使用のためにも、Rapinovet(商標)麻酔用注射液(Schering−Plough Animal Heath Corp.;Rapinovet(商標)はSchering−Plough Veterinary Corp.の商標である)およびPropoFlo(商標)麻酔用注射液(Abbott Laboratories;PropoFlo(商標)はAbbott Laboratoriesの商標である)として市販されている。
【0005】
Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンは、エマルジョンのミリリットル当たり10ミリグラムのプロポフォールに加え、100mg/mLの大豆油、22.5mg/mLのグリセロール、12mg/mLの卵レシチン、0.005%エデト酸二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含む白色の水中油型エマルジョンである。Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンは単回使用の非経口製品であると指示されている。Diprivan(登録商標)は、偶発的な外的汚染の場合における微生物の増殖を遅延させるためのエデト酸二ナトリウムを含有している。しかし、Diprivan(登録商標)はそれでも微生物の増殖を支援しうる。製品の同封説明書(Product insert)に認められるように、エマルジョンを取り扱う際の消毒技術の使用の失敗は、細菌汚染および関連した医学的合併症と関係しているという報告がなされている。したがって、細菌の汚染および増殖の可能性があるので、Diprivan(登録商標)の管に入った使い残しは12時間後には廃棄する必要がある。Diprivan(登録商標)はまた4〜22℃の非常に狭い温度範囲で保管しなければならない(Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンの製品同封説明書、AstraZeneca(2001))。
【0006】
PropoFlo(商標)麻酔用注射液は、エマルジョンのミリリットル当たり10ミリグラムのプロポフォールに加え、100mg/mLの大豆油、22.5mg/mLのグリセロール、12mg/mLの卵レシチンおよび水酸化ナトリウムを含む水中油型エマルジョンである。Diprivan(登録商標)と同様に、PropoFlo(商標)は微生物の増殖を支援する可能性がある。無菌操作に従い損なうと、細菌汚染および関連した医学的合併症を起こす結果となることがある。したがって、PropoFlo(商標)の使い残し部分は、バイアルに入れて6時間以内に処分しなければならない(PropoFlo(商標)麻酔用注射液の製品同封説明書、Abbott Laboratories(1998))。
【0007】
Rapinovet(商標)麻酔用注射液は、エマルジョンのミリリットル当たり10ミリグラムのプロポフォールに加え、100mg/mLの大豆油/mL、22.5mg/mLのグリセロール/mL、12mg/mLの卵レシチン/mL、0.25mg/mLのメタ重亜硫酸ナトリウム/mLおよび水酸化ナトリウムを含む白色の水中油型エマルジョンである。Diprivan(登録商標)およびPropoFlo(商標)と同様に、Rapinovet(商標)は微生物の増殖を支援する可能性がある(Rapinovet(商標)麻酔用注射液の製品同封説明書、Schering−Plough Animal Health(2000))。
【0008】
英国特許第GB−A−1,472,793号(米国特許第号4,056,635号、同4,452,817号および同4,798,846号も参照されたい)は麻酔薬としてのプロポフォールの使用を記載しており、その化合物の特定の注射可能処方を開示している。これらの処方は、ある範囲の非イオン性界面活性剤濃縮物を、アルコールまたはグリコールなどの水混和性の非水性共溶媒と一緒に使用して、有効濃度のプロポフォールを可溶化させている。例えば、そのような1つの処方は、プロポフォールを、プロピレングリコールおよびPluronic(登録商標)F68(PluronicはBASF Corporation、Parsippany、New Jerseyの登録商標である)として知られているポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーと水の中で混合する。Pluronic(登録商標)F68はポロキサマー(Poloxamer)188または‘P188’としても一般に知られている。しかし、そのような処方におけるプロピレングリコールおよび他の水混和性共溶媒の使用は、注射の際の随伴性疼痛、表在性の静脈血栓症および血管内溶血反応などの望ましくない医学的副作用を伴う。
【0009】
国際特許公開WO01/64187は、ポロキサマーブロックコポリマーを使用し、かつプロピレンおよび他の非水性共溶媒が存在しないプロポフォールの水性調製物を記載している。しかし、この公開は、ポロキサマーP188はプロポフォールを保持する能力が非常に限られている(P188の10%水溶液中にわずか0.8%のプロポフォール)ことを指摘している。結果として、この公開に記載の処方にはP188と、P407などの別のポロキサマー化合物を含めなければならない。しかし、今のところ、注射可能処方用にポロキサマーP188だけが米国食品医薬品局(FDA)によって認可されている。さらに、高いレベルでのポロキサマーおよび他のブロックコポリマーの使用も望ましくない副作用と関連している可能性があり、これは一般に望ましくない。例えば、BlonderらのLife Sci.(1999)65:PL261−266およびJohnstonらのJ.Cardiovasc.Pharmacol.(1999)34:831−842を参照されたい。
【0010】
国際特許公開WO00/78301はP188またはP407におけるプロポフォールの水性処方も記載している。しかし、この公開に開示されている処方は、やはりSolutol(登録商標)HS15(SolutolはBASF Corporation、Parsippany、New Jerseyの登録商標である)などの追加の界面活性剤または卵レシチンを含むか、またはエタノールおよび/またはポリエチレングリコールなどの共溶媒を含んでいる。しかし上記のように、卵レシチンの使用は微生物の増殖を支援する可能性があり、他方、エタノールおよびポリエチレングリコールなどの共溶媒も望ましくない副作用を伴う可能性がある。さらに、Solutol(登録商標)は望ましくない副作用にも関係しており、注射可能処方用としてFDAでは認可されていない。
【0011】
さらに他の公開は、オイルまたは脂質中にプロポフォールのマイクロエマルジョンを含む水性処方を記載している。例えば、国際特許公開WO00/10531を参照されたい。米国特許第6,140,374号、同6,150,423号および米国特許公開第2002/0120015A1も参照されたい。
【0012】
したがって、臨床症状のもとで無期限に滅菌性で安定しているプロポフォールの処方、特に、プロポフォールの注射可能な水性処方が依然として必要性である。同時に、有害であるかまたは望ましくない副作用をもたらすことがある界面活性剤、ブロックコポリマー、共溶媒および他の賦形剤の使用を最小限にするプロポフォールの水性処方が必要性である。
【0013】
本節において、また本明細書を通しての文献の引用および/または考察は、本発明の説明を単に明確にするために提供するものであり、そのようなどの文献も、本明細書で述べる本発明の「従来技術」であると是認するものではない。
【0014】
(4.発明の開示)
本発明は、親油性であり、そのため従来から均一な水溶液中での処方では受け入れられてきていない治療薬の水性医薬組成物(本明細書では「処方」とも称する)に関する。より具体的には、本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノール(すなわちプロポフォール)、その誘導体および類似体、ならびに薬剤として許容される塩の水性処方に関する。ポリエチレングリコールはブロックコポリマー乳化剤と混合し、同時に少量のこれらの賦形剤を用いることによって、多量のプロポフォールおよび他の親油性の化合物を溶解させるかまたは懸濁させることができることを見出した。その結果、オイルおよび/または脂質などの従来型の乳化剤を用いることなく、プロポフォールの安定した均一な水性処方を調製することができる。本発明の処方は調製が簡単であり、安定しており、かつ様々な異なる条件下で長期間容易に保存することができる。さらに、この組成物は、細菌増殖用の基質である従来の乳化剤の使用を回避するので、この組成物は容易に滅菌することができ、かつ、滅菌組成物として長期間保存することができる。
【0015】
本発明の好ましい組成物は、少なくとも2種の賦形剤と一緒に、水性媒体中でプロポフォールを含む水性プロポフォール処方である。2種の賦形剤は、(1)ブロックコポリマーおよび(2)ポリエチレングリコール(PEG)であることが好ましい。ブロックコポリマーは、例えばポロキサマー188(P188)、ポロキサマー407(P407)またはポロキサマー237(P237)のなどのポロキサマーであってよい。好ましい実施形態では、ブロックコポリマーはP188である。ポリエチレングリコールは、200(PEG−200)、300(PEG−300)、400(PEG−400)、600(PEG−600)、800(PEG−800)または1000(PEG−1000)の分子量を有するPEGであってよい。PEG−400が特に好ましい。
【0016】
本発明の処方は、一方で低レベルの賦形剤を用いながら、均一な懸濁液または溶液中に高レベルのプロポフォールを含むことができる。したがって、好ましい組成物は少なくとも1%(重量/容量)を含み、5%(重量/容量)ものプロポフォールを有することもできる。特に好ましい実施形態では、本発明の処方は約1〜2%(重量/容量)のプロポフォールを含む。1%(重量/容量)プロポフォールが特に好ましい。
【0017】
種々の実施形態では、本発明の処方中のブロックコポリマーの量は処方の約10%(重量/容量)未満であり、好ましい量は、処方の約5〜10%(重量/容量)、より好ましくは処方の約6〜8%(重量/容量)である。本発明の種々の実施形態におけるPEGの好ましい量は、処方の約5%(重量/容量)未満、より好ましくは処方の約3〜4%(重量/容量)である。
【0018】
他の実施形態では、本発明の処方は、張性調整剤、抗菌剤および/または保存剤などの1種または複数の追加の賦形剤を含むことができる。例えば、本発明は、ラクトース、デキストロース、無水デキストロース、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される張性調整剤を追加的に含む水性プロポフォール処方を提供する。好ましい実施形態では、張性調整剤はプロピレングリコールであり、その量は、好ましくは処方の5%(重量/容量)以下、より好ましくは処方の2%(重量/容量)以下である。
【0019】
さらに他の実施形態では、本発明の水性プロポフォール処方はクエン酸などの保存剤を、好ましくは2.5〜15mMの濃度で含むことができる。その濃度は約10mM(例えば、約2.0mg/ml)であることが特に好ましい。本発明は、水性プロポフォール処方が抗菌剤を含む他の実施形態を提供する。いくつかのそのような実施形態では、抗菌剤はエデト酸二ナトリウム、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、システインまたはその塩およびEDTAからなる群から選択することができる。特に好ましい実施形態では、抗菌剤はベンジルアルコールであり、好ましくは処方の0.5%(重量/容量)までの量である。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、(a)処方の6〜8%(重量/容量)の量のポロキサマー188、(b)処方の2〜4%(重量/容量)の量のPEG−400、(c)処方の2%(重量/容量)以下の量のプロピレングリコール、および(d)処方の1〜2%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール(すなわちプロポフォール)を含む水性プロポフォール処方を提供する。そのような実施形態では、処方は所望により、(e)2.5〜15mM(より好ましくは約10mMまたは2mg/ml)の濃度のクエン酸、および(e)処方の0.5%までの重量/容量(より好ましくは0.45%重量/容量)量のベンジルアルコールも含むことができる。
【0021】
水性プロポフォール処方の特定の好ましい実施形態では、以下の処方を含むものも提供する。
(1)処方の約3%(重量/容量)の量のP237、処方の約6%(重量/容量)の量のPEG−400および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(2)処方の約8%(重量/容量)の量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(3)処方の約8%(重量/容量)の量のP188、処方の約3%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(4)処方の約8%(重量/容量)の量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォールおよび実質的に存在しない量のプロピレングリコール、
(5)処方の約8%(重量/容量)の量のP188、処方の約3%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォールおよび実質的に存在しない量のプロピレングリコール、
(6)処方の約7%(重量/容量)の量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(7)処方の約7%(重量/容量)の量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォールおよび実質的に存在しない量のプロピレングリコール、
(8)処方の約7%(重量/容量)の量のP188、処方の約3%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(9)処方の約7%(重量/容量)の量のP188、処方の約3%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、および実質的に存在しない量のプロピレングリコール、
(10)処方の約6%(重量/容量)の量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(11)処方の約6%(重量/容量)量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約2%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(12)処方の約6%(重量/容量)の量のP188、処方の約6%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、
(13)処方の約8%(重量/容量)の量のP188、処方の約4%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、および実質的に存在しない量のプロピレングリコール、ならびに
(14)処方の約9%(重量/容量)の量のP188、処方の約2%(重量/容量)の量のPEG−400、処方の約1%(重量/容量)の量のプロポフォール、および実質的に存在しない量のプロピレングリコール。
【0022】
本明細書で提供する様々な他の実施形態において、上記の処方のいずれも、追加的にクエン酸を、好ましくは2.5〜15mMの濃度、より好ましくは10ミリリットルの処方当たり約20mgの量(すなわち約10mMの濃度)含むことができる。上記の処方のどれもが、ベンジルアルコールを、好ましくは処方の0.45%(重量/容量)の量で追加的に含むことができる様々な実施形態も提供する。
【0023】
他の態様では、本発明は、患者にプロポフォールを投与するための方法を提供し、かつ、患者に麻酔状態を誘発するか、またはそれを維持するための方法を提供する。これらの方法は、効果的な量(例えば、麻酔状態を誘発するかまたはそれを維持するのに効果的な)のプロポフォールが投与されるまで、患者に、上記の本発明の水性プロポフォール処方のいずれかを投与することを含む。
【0024】
(5.図面の簡単な記載)
図1は、後記の実施例に記載される、80℃で1、2、3および4週間保存した水性プロポフォール調製物のHPLC分析から由来の典型的なデータを示す。以下の処方のHPLC分析によるデータを示す。M841(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、4%PEG−400および1%プロピレングリコール)、M831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)およびM731(1%プロポフォール、7%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)である。すべてのサンプルはクエン酸(2mg/ml)およびベンジルアルコール(0.45%)を含む。様々な賦形剤および他の構成要素の割合は重量/容量である。
【0025】
図2A〜2Bは、後記の実施例にて、80℃で様々なpH条件のもとで保存したM831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)と称される、水性プロポフォール調製物の典型的なHPLC分析から由来のデータを示す。図2Aは、pH5.0、6.0および7.0で、1、2、3および4週間保存したサンプルによるデータを示す図である。図2Bは、pH6.0、6.2、6.4、6.5および6.6で保存したサンプルによるデータを示す図である。すべてのサンプルは0.45%ベンジルアルコールおよび2mg/mlクエン酸を含む。様々な賦形剤および他の構成要素の割合は重量/容量である。
【0026】
図3は、後記の実施例にて、種々の濃度のクエン酸(0.5、1および2mg/ml)を含む80℃で保存したM831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)と称される、水性プロポフォール調製物の典型的なHPLC分析から由来のデータを示す。すべてのサンプルは0.45%ベンジルアルコールを含む。様々な賦形剤および他の構成要素の割合は重量/容量である。
【0027】
図4は、後記の実施例にて記載の、M831およびM830と称される、水性プロポフォール調製物の典型的なHPLC分析から由来のデータを示す。サンプルは80℃、pH5.0で0、1、2および3週間保存した後分析する。これらのサンプル中のプロポフォール分解の程度は、特定の不純物3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル(不純物E)についての溶出曲線下の面積から、調製物の全不純物レベルを推定することによって求める。M831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール、0.45%ベンジルアルコールおよび2mg/mlクエン酸)、M830(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および0%プロピレングリコール、0.45%ベンジルアルコールおよび2mg/mlクエン酸)。様々な賦形剤および他の構成要素の割合は重量/容量である。
【0028】
図5は、プロポフォールとしても知られている2,6−ジイソプロピルフェノール(式I)の好ましい化学構造を示す図である。プロポフォールではRは水素(H)である。式(II)〜(VII)は、プロポフォールのいくつかの好ましい誘導体および/または類似体において、Rを置き換えることができる他の化学的部分の化学的構造を示す。
【0029】
(6.詳細な記載)
本発明は、親油性の治療薬の水性処方に関する。好ましい実施形態では、本出願は、一般にプロポフォールとしても知られている2,6−ジイソプロピルフェノールの水性処方に関する。便宜上、本明細書中、処方は活性成分としてプロポフォールを含むものとして説明する。しかし、本発明の処方は、実際には任意の活性成分または活性成分の組合せを含むことができる。好ましい実施形態では、本発明の処方は、親油性であり、そのため、通常は本来水性処方では使用されない少なくとも1種の活性成分を含むものとする。例えば、プロポフォールの伝統的な処方は油性または脂質エマルジョンを含んでおり、そのため、化合物の親油性の性質は、均一な水性処方で保存することを困難にしている。
【0030】
プロポフォールは、図5に示す式(I)の化学構造(ただし、部分RはHである)を有していると理解されている。しかし、プロポフォールの誘導体および類似体も知られており、本発明の処方で使用することができる。したがって、本発明での説明で使用する場合、用語「2,6−ジイソプロピルフェノール」および「プロポフォール」は図5の式(I)で示す化合物ならびにその誘導体、類似体を指す。「2,6−ジイソプロピルフェノール」および「プロポフォール」という用語は、本発明の文脈では、プロポフォールの薬剤として許容される塩、その誘導体および類似体も指すものとする。
【0031】
本発明で使用できるプロポフォール類似体および誘導体の例には、式I(図5)に示す化学構造を有する化合物が含まれる。ただし、部分Rは図5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)および(VII)で示す化学構造のいずれかを有する。好ましいプロポフォール類似体および誘導体には、Rが式(II)(xは2であり、プロポフォール類似体はプロポフォールのヘミコハク酸エステルである)で示す式を有する式(I)の化合物が含まれる。別の例としては、Rは式(II)(xは4であり、プロポフォール類似体はプロポフォールのヘミアジピン酸エステルである)で示す化学構造を有することができる。あるいは、Rは式(V)(R、RおよびRは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アレニル、アリール、アラルキル、あるいはハロまたはハロゲンからなる群から選択される同じか、または異なる化学的部分であってよい)で示す化学構造を有することができる。これらの部分(すなわちR、RおよびR)は置換されていても、またヘテロ原子を含有していてもよい。あるいは、Rは式(VI)(Yはベンジル、t−ブチルまたはアリル基であってよいホスホノ保護基である)に示す化学構造を有することができる。別の実施形態では、Rは式(VII)(Zは水素あるいは薬剤として許容される塩を形成する金属またはアミンである)で示す化学構造を有することができる。
【0032】
薬剤として許容される塩にはプロポフォールまたはその誘導体もしくは類似体の薬剤として許容されるすべての塩が含まれる。したがって、「薬剤として許容される塩」は、遊離酸または遊離塩基の生物学的有効性と特性を保持し、かつ、そうでない場合、薬剤としての使用に許容されないプロポフォール、その誘導体または類似体の塩を含む。プロポフォール誘導体の薬剤として許容される塩には、例えば、プロポフォール誘導体中に存在できる酸性基または塩基性基の塩が含まれる。性質が塩基性であるプロポフォールの誘導体は、種々の無機または有機の酸と様々な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬剤として許容される酸付加塩の調製に使用できる酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩(acid phosphate)、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サルチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸(acid citrate)、酒石酸塩、パントテンサン塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベンチシネート(bentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモン酸塩(すなわち1、1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩などの薬理学的に許容されるアニオンを含む塩を形成するものである。アミノ部分を含むプロポフォールどの誘導体も、上記の酸に加えて、様々なアミノ酸と薬剤として許容される塩を形成することができる。性質が酸性であるプロポフォールの誘導体は、種々の無機または有機の塩基と様々な塩を形成することができる。適切な塩基性塩は、カチオンを供与して非毒性の塩を形成する塩基から形成される。適切なカチオンには、これらに限定されないが、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛およびジエタノールアミン塩が含まれる。本発明でも使用できる薬剤として許容される塩のより包括的な概説は、Bergeらの(J.Pharm.Sci.(1977)66:1−19)に提供されている。
【0033】
(6.1 プロポフォール処方)
「組成物」および「処方」という用語は、本明細書では互換性をもって使用され、プロポフォール(活性成分として)および少なくとも1種の賦形剤を含む混合物を指す。本発明の好ましい処方はプロポフォールおよび少なくとも2種の賦形剤を含み、それらは、好ましくはブロックコポリマーおよびポリエチレングリコール(PEG)である。「賦形剤」および「添加剤」という用語は、本発明の説明のためには互換性をもって使用され、その主な構成要素以外(すなわちプロポフォール以外)または水以外に、処方中に含まれる任意の化合物を指す。賦形剤は不活性であってよく、また、化学的または物理的に他の組成物成分に影響を及ぼすものであってもよい。さらに、賦形剤または添加剤は、例えば安定剤または抗菌剤として、それ自体の他の特性を有することができる。賦形剤は、これらに限定されないが、表面活性薬剤(例えば、界面活性剤、乳化剤、洗剤、結合剤および湿潤剤)、塩、ポリマー、溶媒、抗菌剤、保存剤、充てん剤、診断薬、糖、アルコール、酸、塩基および緩衝剤を含むことができる。
【0034】
本発明およびその実施形態の説明を通して、本発明の処方中のプロポフォール、賦形剤および種々の他の構成要素の例示的な好ましい量または量の範囲を提供することを記しておく。しかし、当業者は、使用する構成要素の正確な量は本発明を実施するのに重要ではないことを理解されよう。むしろ、本発明の説明での任意の構成要素についての指定された量は概略のものである。その構成要素の好ましい量を説明するために、「約(about)」および/または「おおよそ(approximate)」という用語がここで使用されていない場合でも、ほぼ同じ量の特定の構成要素を含む処方も使用することができる。一般に、使用する量は、本明細書で指定された量の25%以内であってよい。しかし、使用する量は、より好ましくは指定された量の15%以内、10%以内、5%以内、2%以内または1%以内である。
【0035】
上記したように、本発明の処方は、好ましくは、プロポフォールと一緒に、均一で水性の相に存在する少なくとも2種の賦形剤を含む。好ましい実施形態では、2種の賦形剤は(1)ブロックコポリマーおよび(2)ポリエチレングリコール(PEG)である。具体的には、少量(例えば2〜6%)のポリエチレングリコールをブロックコポリマー界面活性剤と一緒に含めると、水性媒体に均一に懸濁できるプロポフォールなどの親油性の活性成分の量を著しく増大させる相乗効果を生み出すことを見出した。その結果、従来のプロポフォール調製物で使用されてきた量と比べて、本発明の処方で使用される賦形剤の総量は著しく低減される。
【0036】
一般に、賦形剤の濃度は、望ましくない賦形剤の影響のリスクを最少にするためにできるだけ低くしなければならない(例えば、Blonderら、Life Sci.(1999)65:PL261〜266、およびJohnstonら、Cardiovasc.Pharmacol.(1999)34:831〜842を参照されたい)。したがって、好ましい実施形態では、処方中の賦形剤の濃度は、約50%未満、より好ましくは約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、さらには約10%(重量/容量)未満である。
【0037】
例えば、好ましい実施形態では、処方中のブロックコポリマーの総量は、処方の約10%(重量/容量)未満、より好ましくは約5〜10%(重量/容量)である。特に好ましい実施形態では、本発明の処方のブロックコポリマーの総量は、処方の約6〜8%(重量/容量)である。
【0038】
本発明の処方で使用するブロックコポリマーは「ポロキサマー」であることが好ましい。ポロキサマーは、通常界面活性剤として使用され、一般に非毒性であるとされるポリ(a−オキシエチレン−b−オキシプロピレン−a−オキシエチレン)トリブロックコポリマーである。ポロキサマーの水への溶解度は一般に良好である。しかし、個々のポロキサマーの特性は、実質には大きく変化する可能性がある。ポロキサマーコポリマーは、Pluronic(登録商標)という登録商標でBASF Corporation (Parsippany、New Jersey)から入手することができる。本発明の処方で使用できる好ましいポロキサマーには、ポロキサマー124(P124)、ポロキサマー188(P188)、ポロキサマー237(P237)、ポロキサマー338(P338)およびポロキサマー407(P407)が含まれるが、どのポロキサマーも使用することができる。米国特許第5,990,241号に記載のような追加のポロキサマーも本発明の処方で使用することができる。好ましい実施形態では、本発明の処方で使用するポロキサマーは、薬剤調製物での使用(例えばヒトへの投与用に)、特に、静脈内および/または他の注射可能処方での使用のために認可されている(例えば、米国食品医薬品局によって)ものである。現在は、ポロキサマー188のみが、米国でのそのような使用に認可されているとされている。したがって、現時点では、ポロキサマー188が、本発明の処方において特に好ましい。しかし、P237などの他のポロキサマーは、実際にプロポフォールなどの親油性の化合物の優れた可溶化剤である。したがって、そのような他のポロキサマー化合物も、注射可能調製物、例えば静脈内投与での使用に許可されれば、それらは、本発明での使用に好ましいものとなることが期待される。
【0039】
本発明の組成物のために、より狭い範囲のポリマー分子量組成を有する精製したポロキサマーを選択することができる。精製ポロキサマーのより狭い範囲(例えば、市販のポロキサマー188またはポロキサマー237と比較して)は、例えば1.01、1.02、1.04、1.05、1.1、1.3、1.5、2、3または4の多分散値を有することができる。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーの多分散値は5〜1、4〜1、3〜1、2〜1、1.5〜1、1.3〜1、1.2〜1または1.1〜1である。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の2000〜15,000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の3000〜14,000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の4000〜13,000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の5000〜12,000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の5000〜11,000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の6000〜10000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の7000〜9000の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の7500〜8500の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、精製ポロキサマーは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の8000〜9500の分子量を有するポリマーを含む。
【0040】
本発明の好ましい処方は、ポロキサマーまたは他のブロックコポリマーと一緒にポリエチレングリコール(PEG)も含む。特に、PEGとブロックコポリマーを一緒にすると、水相懸濁液、溶液またはエマルジョン中に保持できるプロポフォールの量が著しく増大することを見出した。その結果、オイルまたは脂質をベースとしたエマルジョンを使用することなく、注射に適したプロポフォールの水性処方を作製できるようになる。本発明の処方中のPEGの量は、処方の約10%(重量/容量)以下、より好ましくは処方の約5%(重量/容量)以下であることが好ましい。しかし、種々の実施形態では、本発明のプロポフォール処方中のPEGの総量は、処方の15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%(重量/容量)もあってよい。本発明の特に好ましい処方は約2%〜約6%(重量/容量)のPEG、より好ましくは約2〜4%のPEGを含む。約200(すなわちPEG−200)、300(PEG−300)、400(PEG−400)、600(PEG−600)、800(PEG−800)または1000(PEG−1000)の分子量を有するポリエチレングリコールを使用することができる。しかし、PEG−400を使用するのが好ましい。
【0041】
PEGをポロキサマーなどのブロックコポリマー界面活性剤と一緒にすることによって、従来のオイルまたは脂質賦形剤を使用する必要なく、均一な水相(例えば溶液、懸濁液またはエマルジョン中)中に保持されるプロポフォールまたは他の親油性の活性成分の量を著しく増大できることを見出した。したがって、本発明の処方は従来の処方より高いレベルのプロポフォールも含むことができる。すなわち、例えば、本発明の処方は、処方の10%(重量/容量)ものプロポフォールの量を含むことができる。しかし、5%(重量/容量)またはそれ以下の量が一般により好ましい。そのようなより多い量のプロポフォールは、同じ治療効果を得るためには、より少ない容量の投与を必要とすることになり、一般に、より取り扱いにくいか、または安全に投与することが困難である。したがって、本発明のより好ましい処方は、プロポフォールを処方の約2%(重量/容量)以下の量で含む。好ましい処方は、プロポフォールを処方の0.5〜2%(重量/容量)、より好ましくは処方の1〜2%(重量/容量)の量で含む。約1%(重量/容量)の量が特に好ましい。
【0042】
本発明のプロポフォール組成物は、通常は賦形剤と見なされておらず、かつ生物学的に活性であってもよい他の構成要素をさらに含むことができる。例えば、本発明のプロポフォール組成物は1種または複数の追加の麻酔薬および/または抗酸化剤を含むことができる。あるいは、本発明のプロポフォール処方は1種または複数のそのような追加の活性剤と同時投与することができる。
【0043】
身体のデリケートな膜への施用を目的とする医薬組成物は、一般に体液のそれとおおよそ同じ張性(すなわち等張性)に調節される。等張性組成物は、それと接触した場合に、組織の最少の膨張または収縮を引き起こし、かつ、身体の組織に注入した場合に、不快な感じをほとんど与えないかまたはまったく与えないものである。プロポフォール組成物は実質的に等張性であることが好ましい。組成物は1種または複数の張性調整剤をさらに含むことができる。張性調整剤の例には、これらに限定されないが、ラクトース、デキストロース、無水デキストロース、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、プロピレングリコールおよびグリセロールが含まれる。
【0044】
本発明における等張剤として、プロピレングリコールを使用することが特に好ましい。したがって、本発明の好ましい処方は、上記のブロックコポリマーおよびポリエチレングリコール賦形剤に加えて、プロピレングリコールを含む。一般に、本発明の処方中のプロピレングリコールの量は処方の約5%(重量/容量)以下であり、約2%以下であることが好ましい。本発明の好ましい処方は約0%、1%または2%の量のプロピレングリコールを含む。
【0045】
本発明を実施するために必ずしも必要というわけではないが、好ましい水性プロポフォール組成物は所望により抗菌剤も含むことができる。例えば、本発明の処方はエデト酸二ナトリウム、メタ重亜硫酸塩またはベンジルアルコールなどの保存剤、あるいは、微生物の増殖を遅延させるためのシステインまたはその塩などの抗酸化剤を含むことができる。この実施形態では、本発明の組成物は、プロポフォール組成物を最も汚染する可能性の高いこれらの微生物に対して、微生物静力学的(microbiostatic)活性または殺菌活性を示すのに十分な濃度で、微生物静力学的で殺菌性の保存剤または抗酸化剤(例えばシステインまたはその塩)を含む。他の実施形態は、プロポフォールの水溶液を含み、所望により、微生物静力学的で殺菌性の保存剤、あるいはシステイン(またはその塩)などの抗酸化剤、EDTA、ベンジルアルコールまたはメタ重亜硫酸塩をさらに含む、非経口投与用の滅菌性医薬組成物を含む。ここで、前記水性プロポフォール溶液は、1つの試験(下記)で測定して、少なくとも24時間、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538、大腸菌(Escherichia coli)ATCC8739、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC9027およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)ATCC10231のそれぞれのせいぜい10倍の増殖の増大を阻止するのに十分であるか、またはせいぜい10倍の増殖の増大を支援することになる。その試験では、各前記有機体の洗浄された懸濁液を、別個の一定分量の前記組成物に、20℃〜25℃の範囲の温度でml当たりおおよそ50コロニー形成単位で加え、続いて、前記一定分量を20℃〜25℃で24時間インキュベートし、続いて前記有機体の生菌数を試験する。別の実施形態には、温血動物において麻酔状態をもたらす方法であって、それを必要とする前記動物に、プロポフォールの水溶液を含み、かつ微生物静力学的で殺菌性の保存剤、あるいはシステイン(またはその塩)などの抗酸化剤、EDTAまたはメタ重亜硫酸塩を所望によりさらに含む麻酔的に有効量の滅菌性医薬組成物を非経口で投与することを含む。ここで、前記水性プロポフォール溶液は、1つの試験(下記)で測定して、少なくとも24時間、黄色ブドウ球菌ATCC6538、大腸菌ATCC8739、緑膿菌ATCC9027およびカンジダアルビカンスATCC10231のそれぞれのせいぜい10倍の増殖の増大を阻止するのに十分であるか、またはせいぜい10倍の増殖の増大を支援することになる。その試験は、各前記有機体の洗浄された懸濁液を、別個の一定分量の前記組成物に、ml当たりおおよそ50コロニー形成単位で、20℃〜25℃の範囲の温度で加え、続いて、前記一定分量を20℃〜25℃で24時間インキュベートし、続いて前記有機体の生菌数を試験する。
【0046】
さらに、本発明の好ましい処方はクエン酸またはその塩も含むことができる。どの特定の理論にも拘泥するわけではないが、出願者等は、本発明の組成物中のクエン酸またはその塩が抗酸化特性および/またはキレート特性を示すものと考える。出願者等はクエン酸またはその塩を含む組成物が予想外に高い程度のプロポフォール安定性を有することを見出した。また、出願者等はアスコルビン酸またはその塩を含む組成物が予想外に著しいプロポフォール分解性を示すことも見出した。したがって、これらに限定されないが、pHを修飾するか、かつ/または(a)抗酸化特性、(b)組成物のキレート化効果、および/または(c)賦形剤または例えばプロポフォール化合物などの活性剤の安定性を、提供するか、または向上することを含む好都合な効果があるため、クエン酸またはその塩を本発明の組成物に加える。クエン酸またはその塩は、所望のpHおよび/または所望の抗酸化またはキレート化特性を最適化しバランスさせるのに十分な濃度で存在することが好ましい。一態様では、本発明は、クエン酸またはクエン酸の1種もしくは複数の塩を少なくとも約0.05%(重量/容量)、特に少なくとも約0.1%(重量/容量)の濃度でさらに含むプロポフォール含有組成物を対象とする。例えば、クエン酸またはその1種もしくは複数の塩は、本発明の処方中に、約0.05〜3%の量で存在することができる。約0.05〜0.2%の量が特に好ましい。好ましい実施形態では、クエン酸は、本発明の処方中に、約2.5〜15mMの濃度で存在することができる。約10mM(すなわち約2mg/ml)の濃度が特に好ましい。
【0047】
いくつかの実施形態では、賦形剤は、最も低い濃度で、プロポフォール含有組成物中に存在する。それは、安定な組成物(例えば、物理的に、熱力学的におよび/または化学的に安定な組成物)を生成するのを支援する。賦形剤の濃度をできるだけ低く保つことによって、望ましくない賦形剤の影響のリスクを最少化する助けとなる。プロポフォール含有組成物には、保存剤および/または抗菌剤が存在しないことが好ましい。組成物は滅菌性であり、ピロゲンが存在しないことも好ましい。
【0048】
本発明の好ましい処方には、従来のプロポフォール処方で通常使用されるレシチン、キャスターオイル、大豆油、リン脂質、脂肪酸、トリアブリセロール(triablycerol)などの脂質成分も実質的に存在しない。したがって、本発明の好ましい処方は細菌増殖を支援しないか、あるいは、従来の脂質含有処方におけるそのような増殖と比べて、これらの組成物における細菌増殖の速度は著しく遅い。
【0049】
本明細書では「実質的に存在しない」という用語は、示された成分を、あったとしてもごく僅かな量でしか含まない組成物を指す。例えば、本発明の組成物は、構成要素が「実質的に存在して」おらず、例えば、分解過程におけるものとしてその成分を微量含んでいてもよい。しかし、特定の成分が「実質的に存在しない」本発明の組成物は、その成分を、例えば約3%未満、より好ましくは約1%未満、約0.5%未満、または約0.1%未満の最小の濃度で含むことが好ましい。ある成分が「実質的に存在しない」という組成物は、その成分を約0.05%(重量/容量)未満、さらには約0.01%(重量/容量)未満で含むことがより好ましい。実際に、特定の成分が「実質的に存在していない」特に好ましい組成物は、その成分を測定可能かまたは検出可能な量で含むことはない。
【0050】
本発明の好ましい組成物は、プロポフォールの従来のエマルジョンおよび他の処方と比べて、細菌増殖を促進し、かつ/または容易にする賦形剤の濃度が実質的に低減されている。実際、本発明の特に好ましいプロポフォール処方は、そのような賦形剤が実質的に存在しないか、かつ/またはそれを含まない。これらには、プロポフォールを水性処方中に可溶化させるか、または懸濁させるのに通常使用される脂質および/またはオイルなどの賦形剤が含まれる。さらに、本発明の組成物には、媒体または長鎖脂肪酸(例えば、約C〜約C25脂肪酸)のエステル、例えば媒体または長鎖脂肪酸(例えば、モノ−、ジ−またはトリアシルグリセロール)のグリセリルエステルが存在しないか、または実質的に存在しないことが好ましい。本発明の組成物には、例えば、植物油(例えば、大豆油、キャスターオイル、ヒマワリ油およびチョウセンアザミ油)中に含有されているものなどのトリグリセロール(triaglycerol)も存在しないことが好ましい。他の実施形態では、組成物には、リン脂質(例えば、天然由来のリン脂質または合成的に作製され、修飾されるリン脂質)が存在しないか、または実質的に存在しない。
【0051】
本発明のいくつかの好ましい処方の例を、実施例の表1に示す処方を含む以下の実施例に記載する。これらのうち、M831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)と表示されている処方が特に好ましい。本発明の上記または他の処方のどれも、(上記したような)クエン酸などの保存剤および/または(これも上記したような)ベンジルアルコールなどの抗菌剤を追加的に含むことができる。本発明の好ましい処方は、クエン酸を、好ましくは約2.5〜15mMの濃度で含む。10ミリリットルの処方当たり20mgの濃度(すなわち約10mM)が特に好ましい。本発明の好ましい処方は他の上記賦形剤に加えてベンジルアルコールも含む。ベンジルアルコールは、抗菌剤として、処方の約0.45%(重量/容量)の量で存在することが好ましい。
【0052】
本発明の水性処方は、透明で透き通っており、滅菌性であることが好ましく、これらは、限外ろ過などの従来の通常の方法で容易に滅菌することができる。さらに、本発明の処方は、広範囲の異なる温度およびpH条件を含む広範囲の環境条件において、化学的にも物理的にも安定である。
【0053】
本発明の組成物は、とりわけ、巨視的な同質性によっても特徴づけることができる。巨視的に同質性の組成物は区別できる相分離が認められないことを特徴とする。従来のプロポフォールエマルジョンは見かけが乳白色である。それは、水相(すなわち水)中に懸濁された油滴などの2種以上のはっきりした相が存在することを示している。大きさが一般に約1ミクロンであるそのようなエマルジョン中の液滴は光を分散させ、その乳状または「濁った(hazy)」外観をもたらす。
【0054】
これに対して、本発明の組成物は、裸眼に対して透明であるか、または透き通っていることが好ましい。特定の作用のどの理論または機構にも限定されるものではないが、この目視での透明性は、そのような組成物中のプロポフォールが、プロポフォールの従来の処方例えば、水中油型エマルジョン中においてより、実質的により小さい粒子で懸濁していることを示していると考えられる。例えば、以下の実施例は、本発明の組成物中にナノスケールの粒子が存在し、それによって、光散乱が最少化され、その系が均一な組成物として見えることを示す動的光散乱および/または他の測定を記載している。
【0055】
長期にわたって目視下での透明性を維持する組成物(本発明のプロポフォール処方を含む)は、従来のエマルジョンが有する熱力学的安定性より高い安定性を有していると考えられる。一般に、高度の熱力学的安定性を有する溶液または混合物は、相当な期間および/または溶媒和または懸濁を持続するのに一般に不都合な条件下で、溶液中に粒子または粒子凝集体を維持するか、あるいは、液体中でその懸濁を保持する傾向がある。例えば、熱力学的に有利でない溶液または懸濁液は、一般に溶質または懸濁物質の沈澱などの相の分離を示す。長期間にわたって熱力学的に不利な状態に保持するように、環境条件を選択することができる。エマルジョン中における粒子の懸濁の維持を助けるために、例えば、冷蔵することがよく用いられる。
【0056】
一般に、本発明の組成物は、長期間にわたって(例えば、従来の水中油型プロポフォールエマルジョンと少なくとも同じ程度に)、かつ/または熱力学的安定性にとってより不都合な条件下で(例えば、より高い温度および/またはより過酷なpH条件下で)、その成分構成要素の溶媒和および/または懸濁を維持する。例えば、高温で長期間保存した場合でも、本発明の組成物は目視での透明性を示すことが好ましい。組成物の相分離は、光散乱または比濁法、あるいは当業者に周知の他の適切な方法によって微視的に評価することもできる。例えば、これに限定するものではないが、以下の実施例では、過酷な環境条件、例えば高い温度(80℃)および/またはpHのもとで保存した場合でも、本発明の水性プロポフォール処方が4週間以上安定であることを実証する実験について説明する。しかし、本発明の処方は、特に好都合な条件下で保存した場合、より長期間安定を維持することを理解されたい。例えば、本発明の処方は、最大で2週間、4週間、6週間、8週間、10週間、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上安定を維持すると予想される。実際、本発明の組成物は、特に、約10〜40℃の温度、より好ましくは約15〜25℃の温度で保存した場合、最大で1年、2年、3年、5年、10年またはそれ以上の期間でも保存し、その溶媒和または懸濁をなお維持することができる。組成物は約5.0±0.5のpHで保存することも好ましい。あるいは、本発明の組成物は、上記期間またはそれ以上冷蔵して保存することもできる。そのような条件下で保存した場合、本発明の組成物は濁ってくるが(懸濁または溶媒和が失われたことを示している)、以下の実施例に示すデータは、この懸濁/溶媒和の消失が可逆的であることを実証している。したがって、そのような条件下で保存した組成物は、室温と均衡してくると、再び透明になり、かつ/または透き通るようになる。これは、親油性のプロポフォール成分が再溶媒和または再懸濁していることを示している。
【0057】
本発明の組成物は組成物中に存在する粒子のサイズ(平均径)によって特徴づけることができる。特定のどの理論にも拘泥するわけではないが、いくつかの実施形態では、組成物中に含まれる粒子は種々のサイズのミセルの形態をとると考えられる。あるいは、いくつかの組成物または組成物の一部は、ミクロエマルジョンまたはナノエマルジョンの形態をとると考えられる。粒子サイズ(本明細書では粒子の幾何学的サイズまたは粒子の幾何学的直径とも称する)は、当技術分野で知られている技術のいずれかを用いて測定することができる。例えば、Malvern Instruments Zetasizerを組成物中の粒子のサイズを測定するのに使用することができる。測定システムのZetasizerラインは光子相関分光法(Photon Correlation Spectroscopy)(PCS)の技術を使用してサブミクロンの粒子サイズを測定する。流体中に分散されている粒子は、通常ブラウン運動と呼ばれる、絶え間ないランダム運動の状態にある。光子相関分光法はこの運動の速度を測定し、粒子の拡散速度を算出し、ストークスアインシュタイン(Stokes−Einstein)の式を用いて、これを粒子サイズに関係づける。当業者は、他の適切な粒子サイズ測定手段も用いることができる。
【0058】
光子相関分光法(PCS)に加えて、これらに限定されないが、顕微鏡(例えば光学顕微鏡および電子顕微鏡)、エレクトロゾーンまたはフォトゾーンセンシング(electrozone or photozone sensing)および他の光散乱技術(例えばレーザー回折)を含む、当業者に周知の粒子サイズ分析に関連の他の方法を用いることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、組成物は、約100nm(ナノメーター)未満、約10〜約100、約25〜約90nmまたは約30〜約75nmの平均粒子サイズ(平均径)を有する。本発明の組成物は、約90未満、約75nm未満、約65nm未満、約55nm未満、約50nm未満、約45nm未満、約40nm未満、約35nm未満、約30nm未満、約25nm未満、約20nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約5nm未満または約1nm未満の幾何学的直径を有する粒子からなる。いくつかの実施形態では、組成物は約50〜250nm、約50〜150nm、約150〜250nmおよび約100〜200nmの平均粒子サイズを有する。いくつかの組成物では、すべての粒子が比較的小さい粒子サイズを有する。比較的類似した粒子サイズは、米国食品医薬品局のヒト薬物の認可を得るのに薬剤製品に要求される粒子サイズおよび稠度(consistency)として定義される。所望により、本発明の組成物を濾過して、所望のサイズまたは平均サイズの粒子を含む組成物を作製する。そのような組成物を濾過する方法は当業者によく知られている。
【0060】
いくつかの実施形態では、現在市販されているプロポフォール処方または他の水性プロポフォール処方と比べて、本発明の組成物は優れた臨床的利益を有する。優れた臨床的利益には、これらに限定されないが、脂質レベルの低下、作用のより迅速なオンセット、作用のより迅速なオフセット、赤血球の損傷の減少、およびより少ない副作用を含むことができる。
【0061】
本発明の組成物は、粒子を含む治療薬、予防薬または診断薬の化学的安定性を特徴とすることができる。構成麻酔剤の化学的安定性は、保存寿命、適当な保存条件、投与に許容される環境、生物学的適合性および薬剤の有効性を含む医薬組成物の重要な特性に影響を及ぼす可能性がある。化学的安定性は当技術分野で周知の技術を用いて評価することができる。例えば、活性成分および賦形剤の両方についての、ストレス試験から得られる分解情報(例えば、酸および塩基による加水分解、熱分解、光分解ならびに酸化の生成物)を検出するためのアッセイが数多くある。化学的安定性を評価するのに用いることができる技術の1つの例は逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0062】
本発明の組成物はプロポフォール分解を実質的に示さない。例えば、室温での所与の試験期間にわたって、約5%以下、または約3%以下などのプロポフォール効力の損失である。あるいは、プロポフォール分解は、例えばキノンおよび二量体濃度などのプロポフォール分解物濃度を測定することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、プロポフォール分解物の実質的な増大を示さない。例えば、所与の試験期間にわたって、約0.05%以下、約0.1%以下または約0.2%以下のプロポフォール分解物濃度の増加である。好ましい実施形態では、その分解物の具体的な適格性認定がなされていないかぎり、どの単一の分解物も、国際調和会議(International Conference on Harmonization)(ICH)ガイドラインを超えないものとする。(ICH文書Q3Bを参照されたい)。
【0063】
一実施形態では、組成物は、冷蔵して保存した場合、少なくとも約6ヶ月の期間、実質的なプロポフォール分解を受けない。組成物は、冷蔵して保存した場合、少なくとも約1年間実質的なプロポフォール分解を受けないことが好ましい。組成物は、ほぼ室温かまたはそれ以下で保存した場合、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年間または最も好ましくは少なくとも約2年間実質的なプロポフォール分解を受けないことがさらにより好ましい。
【0064】
本発明の組成物は生理学的に中性のpH、例えば約5〜約9を有することが好ましい。プロポフォール含有組成物のpHは、例えば、塩基またはその塩、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを加えて、必要に応じて調節することができる。あるいは、塩酸、クエン酸等の酸またはその塩を、組成物のpHを調節するために使用することができる。本明細書では、「pH調節剤」という用語は、組成物のpHを調節するのに使用され、かつ当業者に周知の酸、塩基またはその塩などの物質を指す。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物の安定性はpHに敏感である。いくつかの組成物では、プロポフォール含有組成物は、約5〜6、約4.5〜6.5、約4.5〜5.5、約5〜7.5、約6〜7または約6.5〜7.5のpHでより高い安定性を有する。組成物のpHは薬剤として許容される酸または基で調節して所望のpHを得ることができる。いくつかの実施形態では、特定のpHは、組成物安定性または細菌増殖に影響を及ぼすことができる。
【0066】
(6.2 製造方法)
プロポフォール含有組成物は滅菌性医薬組成物として提供するかまたは投与することが好ましい。例えば、プロポフォール含有組成物は実質的に微生物が存在しない形で投与する。滅菌性医薬組成物の調製は当業者によく知られている。滅菌性プロポフォール含有組成物は、例えば最終製品の滅菌または無菌での製造などの従来の技術を用いて調製することができる。好ましい実施形態では、本発明の滅菌組成物には、Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンなどの現在入手できるプロポフォール組成物より、開封した後、より長い期間実質的に微生物が存在しない。
【0067】
本発明の組成物は、所望のプロポフォール濃度を有し、いつでも患者への直接投与ができるようになった形態で提供することができる。あるいは、組成物は、投与の前に例えば水または注射可能な溶液で希釈する必要のある濃縮形態で提供することができる。静脈内投与の場合、組成物は当業者に周知の静脈内投与に適した希釈剤と混合することができる。そのような希釈剤には、水と、注射可能な塩化ナトリウムおよびデキストロースの水溶液が含まれる。本発明の組成物の透明で均一な特徴によって、さらに希釈した場合、得られた希釈組成物も一般に均一で透明である。
【0068】
本発明の組成物は、2,6−ジイソプロピルフェノール、1種または複数の賦形剤および水と混合して形成させることができる。組成物成分を混合するのに種々の方法が考えられる。賦形剤は、賦形剤だけで、または水中の賦形剤として組成物と混合することができる。プロポフォールは、少なくとも1種または複数の賦形剤だけで、または少なくとも水中の1種または複数の賦形剤と混合することができる。2,6−ジイソプロピルフェノールを水中の少なくとも1種または複数の賦形剤と混合し、次いで(1)少なくとも1種または複数の賦形剤だけと一緒にするか、または(2)水中に混ぜた少なくとも1種または複数の賦形剤と一緒にすることができる。好ましい実施形態では、賦形剤を一緒に混合し、混合しながら水を加え、次いで混合しながらプロポフォールを加え、所望により最終的に追加の水を加えて混合物の容量を増加させる。水中の賦形剤を一緒に混合し、混合しながらプロポフォールを加え、所望により最終的に追加の水を加えて混合物の容量を増加させることも好ましい。ほとんどの実施形態では、プロポフォールは最後に加える。
【0069】
本発明の組成物で使用する水はヒトを含む動物への注射に適していることが好ましい。水はしかるべき政府および/またはヘルスケア産業標準(health care industry standard)に適合していなければならない。水は、注射用の医薬品グレードの水のための米国薬局方(United States Pharmacopeia)(USP)23標準に適合していることが好ましい。通常、水には添加物質を含んではならない。
【0070】
混合は当技術分野で周知の様々な方法のいずれによっても実施することができる。混合装置は回分式であっても連続式であってもよい。適切な混合装置の例には、とりわけ、ジェットミキサー、インジェクター、混合用ノズル、ポンプ、撹拌式ラインミキサー、充てん管、ガス撹拌槽、撹拌槽が含まれる。混合は、組成物成分を実質的に分解しない任意の温度で実施することができる。一般に、混合は室温かまたはその近傍で実施する。本発明の実施による利点は、プロポフォール組成物、例えば従来のプロポフォールエマルジョンを生成するのにしばしば必要とされる、例えばマイクロ流動化技術などの方法と比べて、組成物を容易に調製することができることである。
【0071】
組成物は、滅菌性を維持するのに適した任意の容器で提供、調製、保存または輸送することができる。容器には、例えば、孔を開けられるかまたは取り外せるシールなどの、水性組成物を分注するための手段を組み込むことができる。組成物は、患者に投与するために、例えば、シリンジで抜き出すかまたは組成物をデバイス(例えば、シリンジ、静脈内(IV)バッグまたは機械)内に直接注ぐことによって分注することができる。滅菌性医薬組成物を提供、調製、保存、輸送および分注するための他の手段は当業者によく知られている。
【0072】
一実施形態では、2,6−ジイソプロピルフェノールが酸化的分解を受け易いので、本発明の組成物は酸素の存在しない雰囲気下で製造、包装、保存または投与する。酸素フリーの雰囲気には、とりわけ窒素、アルゴンまたはクリプトンガスが含まれる。組成物は、窒素ガスの雰囲気下で製造、包装および保存することが好ましい。
【0073】
(6.3 プロポフォール処方の使用)
本発明は、麻酔を必要とする被験者に、2,6−ジイソプロピルフェノールを投与する方法であって、被験者に、滅菌性医薬組成物を静脈内でデリバリーすることを含む方法を対象とする。被験者にデリバリーするために許容される滅菌性医薬組成物を本明細書では説明する。一実施形態では、2,6−ジイソプロピルフェノールと1種または複数の賦形剤を含む滅菌性医薬組成物(この組成物にはトリアシルグリセロールが実質的に存在しない)を被験者に静脈内でデリバリーすることを含む、麻酔を必要とする被験者に、2,6−ジイソプロピルフェノールを投与為の方法を提供する。この組成物には、本明細書で説明するような媒体または長鎖脂肪酸の他のグリセリルエステルあるいはリン脂質も実質的に存在しなくてよい。
【0074】
本発明の組成物は、麻酔状態の誘発および/または維持のために、患者が麻酔状態を誘発するかまたは維持するのに効果的な量または用量のプロポフォールを受け入れるようにある量の組成物を患者投与することによって、患者に投与することができる。麻酔薬としてのプロポフォールの使用はよく知られている。麻酔状態を誘発および/または維持するためのその薬物の妥当な量または用量は評価されるものであり、当業者が容易に決定できるものである。一般に、成人のヒト患者において麻酔状態を誘発するためには、約60秒間にわたって、患者の体重キログラム当たり約0.5〜1.5mgのプロポフォールを投与しなければならないと予想される。同じ患者において麻酔状態を維持するためには、患者の体重キログラム当たり約100〜150μgのプロポフォールの用量を投与することが好ましい。
【0075】
組成物は、任意の動物、特にヒトに非経口で投与することができる。一実施形態では、プロポフォール含有組成物の投与は、単独の麻酔薬として、例えばボーラス注射法によって患者に組成物をデリバリーすることを含む。別の態様では、プロポフォール含有組成物の投与は、麻酔状態を誘発するために患者に組成物をデリバリーし、続いて、別の麻酔薬で麻酔状態を維持することを含む。あるいは、プロポフォール含有組成物の投与は、より長期間の麻酔状態の誘発および維持のために、例えば連続的注入によって患者に組成物をデリバリーすることを含む。さらに、麻酔状態の誘発および/または維持、ならびに本明細書で説明する方法の組成物の他の補助的な望ましい特性のために、組成物を筋肉内(すなわちIM)の手段、例えば、プロポフォールのIM注射によって患者にデリバリーすることができる。
【0076】
プロポフォール組成物は、プロポフォールに加えて活性剤を含むか、あるいは、それを他の活性剤を含む組成物と同時投与する。例えば、プロポフォール含有組成物は、1種または複数の局所麻酔薬を含むか、またはそれと同時投与して、注射による痛みを低減させるかまたは排除する。投与する場合、局所麻酔薬は、注射による痛みを低減させるかまたは排除するのに十分な濃度で投与することが好ましい。当業者は、所望の効果を実現するために、過度の実験を行うことなく、局所麻酔薬の濃縮物を選択し投与することができる。
【0077】
プロポフォール含有組成物は、当技術分野で周知の技術を用いて患者に投与することができる。例えば、ボーラス注射法または注入法によって組成物を患者の静脈内にデリバリーすることができる。プロポフォール含有組成物の注入は、組成物を直接注入するか、あるいは、0.9%塩化ナトリウム注射、5%デキストロース注射、または別の適合性のある注入溶液などの適当な注入溶液に、プロポフォール含有組成物を加えることによって行うことができる。
【0078】
一実施形態では、本発明の組成物は、投与する前に、例えばバイアルまたはバッグなどの単一の容器から抜き出して複数用量にする。例えば、前記組成物を含む単一のバイアル中に、例えばシリンジを複数回入れた後でも、本発明の組成物は細菌増殖への耐性がある。複数用量は、シリンジかまたは連続的静脈内注入などの連続的抜出しなどによって、個別的にまたは離散的に抜き出すことができる。例えば、本発明の組成物の用量は、治療の過程で単一のバイアルから繰り返して抜き出される。あるいは、単一の用量は治療の過程で容器から抜き出すことができる。
【0079】
一実施形態では、本発明の組成物は、マルチユース容器から使用することができる。例えば、マルチユース容器は、個々の用量を、別の時点または別の日に同じ容器から抜き出すようにすることができる。マルチユース容器は、当技術分野でよく知られている様々な構造または方法で構築することができる。マルチユース容器は動物の麻酔用に特に有用である。
【0080】
プロポフォールの量および投与の際の患者へのデリバリー方法は、投与を監督する医師によって適切に判断されたように変更することができる。
【0081】
プロポフォールの従来の使用、例えば麻酔でのその使用に加えて、本発明の組成物の投与は、それを必要とする患者に効果的な量のプロポフォールを投与すると抗酸化剤としても有用である。麻酔状態を望まないなら、多くの場合、麻酔域下用量で投与することができる。本発明のプロポフォール組成物は、虚血性再灌流障害などの酸化的障害を予防するか、弱めるかあるいは治療するのに使用することができる。プロポフォール組成物は、親水性かまたは親油性の基で誘発される酸化的損傷を阻害するのに使用することができる。プロポフォール組成物は、有効量のプロポフォールで個体を予備治療することによって、赤血球ならびに脳、肝臓、腎臓、心臓、肺および骨格筋の器官、組織および細胞を酸化的なストレスや障害から保護するために使用することができる。本発明のプロポフォール組成物は、血小板凝集を阻害するのに効果的な量のプロポフォールを投与することによって、血小板凝集を阻害するのにも有用である。プロポフォール、特に本発明のプロポフォール組成物の抗酸化剤能力と抗血小板作用の両方を増進させることによって、これは、特に冠動脈バイパス手術に有用なものになる。こうした徴候の場合、プロポフォールは、例えば、麻酔用量(例えば、サフェンタニル0.3microg×kg(−1)、プロポフォール1mg〜2.5mg×kg(−1)ボーラス、次いで先に100microg×kg(−1)分(−1)、およびCPBの際に50microg×kg(−1)×分(−1)、またはサフェンタニル0.3microg×kg(−1)、プロポフォール2mg〜2.5mg×kg(−1)ボーラス、次いで200microg×kg(−1)×分(−1)で使用することができる。
【0082】
少用量プロポフォールの鎮静作用によって、脊髄麻酔状態の患者における、反応性酸素種の生成を少なくし、止血帯誘発の虚血性再灌流障害での酸化なストレスおよび障害も軽減することができる。この使用の一例は、くも膜下腔内麻酔状態のもとで、選択的な人工膝関節置換を受けている患者であろう。
【0083】
プロポフォール組成物によって、例えば癌治療におけるビンクリスチンの副作用を制限すること、局所的または全体的な脳虚血における乳酸蓄積および浮腫生成を弱めて神経損傷を軽減すること、および、外傷や脳卒中に付随する酸素含有遊離による基脳障害を軽減することによって、神経防護作用をさらにもたらすことができる。
【0084】
本発明のプロポフォール組成物は鎮静作用のために使用することもできる。例えば、より少ない用量(例えば、麻酔に必要な用量と比べて)のプロポフォールは患者に対して鎮静効果をもたらす。救急処置室での手順の間、または手術の前に、患者に鎮静作用をもたらして、患者を落ち着かせることがしばしばある。
【0085】
本発明のプロポフォール組成物を投与しアッセイする方法は当技術分野では定常的なものである。アッセイの方法の例は、Runzerら、Anesth Analg 2002 Jan 94(1):89−93;Eur J Anaesthesiol 2000 Jan 17(1):18−22;De La Cruz JPら、Br J Pharmacol 1999 Dec;128(7):1538−1544;Ansley DMら、Can J Anaesth 1999 Jul 46(7):641−648;Murphy PGら、Br J Anaesth 1996 Apr 76(4):536−543;Daskalopoulos Rら、Glia 2002 Aug 39(2):124−132;Cheng YJら、Anesth Analg 2002 Jun 94(6):1617−1620;Wilson JXら、J Neurosurg Anesthesiol 2002 Jan 14(1):66−79;Ergun Rら、Neurosurg Rev 2002 Mar 25(1−2):95−98;Li CRら、Cell Biol Toxicol 2002 18(1):63−70に見ることができる。
【0086】
一態様では、本発明は、血液細胞の赤血球溶血に対して有益な効果を有するプロポフォールの組成物を対象とする。本発明の組成物は、これに限定されないが、Diprivanを含むエマルジョンプロポフォール組成物に比べて、より低い赤血球溶解を提供することができる。本発明の組成物は食塩水より低い赤血球溶解も提供することができる。本発明の別の態様では、本発明の組成物は血液細胞膜を安定化させることができる。
【0087】
一態様では、本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノールと1種または複数の賦形剤を含む滅菌水性医薬組成物を対象とする。ここで、プロポフォール赤血球−血漿分配係数(K)は約3、約4、約5、約6、約7、約8であり、3超、4超、5超、6超、7超、8超、9超または10超である。さらに、本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノールと1種または複数の賦形剤を含む滅菌水性医薬組成物を対象とする。ここで、組成物のプロポフォール赤血球−血漿分配係数(K)は、同一デリバリー条件下で、従来のプロポフォールエマルジョン(例えば、Diprivan(登録商標)またはPropoFlo(商標)またはRapinovet(商標))の投与に対して得られたKの少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍または少なくとも約5倍である。さらに、本発明は、プロポフォールを、麻酔を必要とする被験者にデリバリーする方法であって、ヒトまたは動物の患者に上記の滅菌水性医薬組成物を投与することを含む方法を含む。組成物は、2種以上の表面活性薬剤(例えば、2種以上の界面活性剤)などの2種以上の賦形剤を含むことが好ましい。組成物は、トリアシルグリセロールを実質的に含まないことが好ましい。組成物は、さらに、媒体または長鎖脂肪酸の他のグリセリルエステルあるいはリン脂質を含まなくてよい。一実施形態では、組成物のプロポフォール赤血球−血漿分配係数Kは、従来のプロポフォールエマルジョンを投与して得られるKの少なくとも約3倍である。他の実施形態では、本発明の組成物のプロポフォール赤血球−血漿分配係数Kは、少なくとも約3、少なくとも約4、または少なくとも約5である。
【0088】
別の態様では、本発明は、患者への薬物、例えば医薬品すなわちプロポフォールなどの治療薬、診断薬または予防薬の投与またはデリバリーによる血漿−赤血球の分配係数を操作する方法を対象とする。血漿−赤血球分配係数は、従来の薬物組成物の患者への投与またはデリバリーによる血漿−赤血球分配係数よりそれを超えて減少させることも、増大させることもできる。あるいは、他の方法を用いて調製した組成物より大きいかまたは小さい血漿−赤血球分配係数をもたらす本発明の方法を用いて、組成物を調製する。例えば、本発明の特定の処方は、Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンの投与またはデリバリーによる血漿−赤血球分配係数を凌いで、本発明のプロポフォール組成物の投与またはデリバリーによる血漿−赤血球分配係数を増大させるようである。その血漿−赤血球分配係数は、従来の薬物組成物の投与またはデリバリーによる血漿−赤血球分配係数より例えば2倍または3倍大きい。
【0089】
この方法は、薬物と1種または複数の賦形剤を含む医薬組成物を調製することを含み、その医薬組成物は、患者に投与またはデリバリーした際により小さい血漿−赤血球分配係数をもたらす1種または複数の脂質を含む代替の組成物の脂質濃度より低い脂質賦形剤の濃度を有する。一実施形態では、その薬物は親油性である(すなわちその薬物は、脂質と親和性があるか、脂質と混合される傾向があるか、または脂質中に溶解することができる)。好ましい実施形態では、医薬組成物は2種以上の賦形剤を含む。組成物の少なくとも1つの賦形剤は、これに限定されないが、界面活性剤などの表面活性薬剤であることが好ましい。好ましい実施形態では、トリアシルグリセロールを実質的に有していない組成物を調製する。一実施形態では、組成物は、上記のような媒体または長鎖脂肪酸の他のグリセリルエステルあるいはリン脂質を実質的に有していない。一実施形態では、医薬組成物は脂質賦形剤を実質的に有していない。
【0090】
その方法は、脂質賦形剤の濃度を操作して血漿と赤血球との間の薬物の分配に影響を及ぼすことを含む。例えば、脂質賦形剤の濃度を減少させて、赤血球内に入る薬物の量を増大させ、それによって血漿−赤血球分配係数を増大させる
【0091】
あるいは、本発明の賦形剤および賦形剤濃度を操作して、Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンなどの従来の薬物処方によって実現される血漿−赤血球分配係数と同じような分配係数をもたらす組成物を得ることができる。賦形剤および賦形剤濃度を操作して、従来の薬物処方によって実現される血漿−赤血球分配係数より小さい分配係数をもたらす組成物を得ることもできる。
【0092】
デリバリーされた薬物の血漿−赤血球分配係数を測定する方法は、当業者によく知られている。比較のためのプロポフォール赤血球−血漿分配係数は、Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンなどの従来のプロポフォールエマルジョンを投与して得ることが好ましい。Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンは広く市販されている医薬品である。Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンの組成についても本明細書で言及している。従来のプロポフォールエマルジョンと本発明の組成物は同一条件下でデリバリーされることが好ましい。当業者は、妥当な実験条件を選択し、必要以上の実験を行うことなくプロポフォール赤血球−血漿分配係数(K)を測定することができる。
【0093】
本発明の実施によって、従来のプロポフォール組成物、特にエマルジョン処方に優るいくつかの明確な利点が提供される。一態様では、本発明は、トリアシルグリセロールを含有しないプロポフォール含有組成物、および麻酔を必要とする患者へのその投与に関する。別の態様では、プロポフォール含有組成物はリン脂質を含有しない。そのような組成物は、これらの脂質が提供する可能性のある細菌増殖のための基質を排除する。それに対して、従来のプロポフォール処方の水中油型エマルジョンは、微生物の増殖を支援することができる例えば、大豆油やレシチンなどの脂質を含む。中性からアルカリ性のpHを有する等張性の環境における、脂質、グリセロールおよび大量の水からなる従来のプロポフォール処方は、多くの微生物の増殖を著しく助長する媒体を提供する。したがって、これらの水中油型エマルジョンは、厳格な取扱い、投与および保存要件を必要とする。脂質を支援するトリアシルグリセロールおよび他の微生物を低減させるか、またはその存在を排除し、物理的および化学的安定性を提供することによって、本発明の組成物を、取扱い、投与および保存においてより柔軟性のあるものにすることができる。より制約の少ない取扱いおよび保存要件によって、例えば遠隔地の簡易病院の設置において、投与の選択肢を改善し、拡大することが可能になる。さらに、脂質が低減されているかそれを含有していない本発明の組成物は、高脂質血症を助長するかまたはそれを引き起こす可能性を、排除しないまでも、それを最少化することになる。
【0094】
本発明の水性プロポフォール組成物は他の水性処方に優るいくつかの利点を提供する。
【0095】
本発明の水性プロポフォール組成物は、エデト酸二ナトリウムなどの抗菌剤またはベンジルアルコールなどの保存剤が微生物の増殖を遅延させるための要件を最少にするかまたはそれを排除しさえする。さらにこれらの組成物は、投与および包装における柔軟性および効率をより高いものにすることができる。例えば、滅菌性への懸念により必要とされている現在市販のプロポフォールエマルジョンの単一用量形態とは異なって、本発明の組成物は、複数用量を含む包装を可能にする。有利なことには、本発明の実施によって、ある期間にわたって、単一のバイアルから複数用量を抜き出すことが可能になる。本発明の実施によって、有利なことには、例えば、Diprivan(登録商標)注射可能エマルジョンなどの従来のプロポフォール組成物を用いて現在可能である現在推奨されている12時間より長期間、プロポフォール組成物のチュービング部分および開放されている部分の使用が可能になる。
【0096】
(7.実施例)
本発明を、以下の実施例によっても説明し実証する。しかし、本明細書における上記および他の実施例の使用は、どれも例示的なためだけであって、本発明または例示したどの用語の範囲および意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書で説明する特定のどの好ましい実施形態に限定するものでもない。実際、本明細書を読めば、本発明の多くの修正形態および変更形態が当業者には明らかであり、本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、そのような変更を行うことができる。したがって、本発明は、これらの特許請求項にその権利が付与されている均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の語句によってのみ限定される。
【0097】
(7.1 水性プロポフォールサンプルの調製)
例示的なプロポフォール組成物は、以下の通り本発明によって調製することができる。まず、以下の表Iにまとめた賦形剤を量りとり、室温で脱塩水中に予め溶解させる。次いで、2N水酸化ナトリウムを用いて各調製物の溶液pHを調節して、約5.0の最終pHを得る。脱塩水を加えて、各調製物の全容量を100ミリリットルまでにする。最後に、1000mgのプロポフォールと200mgのクエン酸を各調製物に加え、マグネチックスターラーを用いて調製物を、プロポフォールが完全に分散されるまで室温で撹拌する。調製物中に、ベンジルアルコールを0.45%(重量/容量)の量で含めてもよい。
【0098】
以下の表Iは、水100ml中の各構成要素についての重量/容量(W/V)での最終パーセント濃度と一緒に、各例示調製物の内容を示す。
【0099】
【表1】

【0100】
(7.2 水性プロポフォール調製物の物理的特性)
水性プロポフォール調製物、例えば上記実施例で説明したものなどの物理的特性は以下の通り評価することができる。まず、調製物の外観(透明、濁りまたはより少ない濁り)は裸眼で評価して、目視できる固形物が存在するかどうかを判断する。
【0101】
粒子サイズは、レーザー光散乱(LLS)粒子サイズ分析、例えばMalvern Instruments,Inc.(Southborough,Massachusetts)から入手できるZetasizer 300HSを用いて、メーカーの説明書によって推定することもできる。次いで、LLSデータを用いて、処方の多分散性指数を算出することができる。調製物の浸透圧は、例えば、WESCOR,Inc.(Logan,Utah)から入手できる蒸気圧浸透圧計(Vapor Pressure Osmometer)(VAPRO)を用いて測定できる。
【0102】
異なる調製物の物理的安定性は、まず、調製物を室温で保存し、上記の特性の1つまたは複数を定期的な間隔で(好ましくは少なくとも1日に1回)測定して、調製物内の粒子の数またはサイズが変化したかどうか、かつ/または何時それが変化したかを判断することによって推定することができる。
【0103】
上記実施例に記載の処方についての例示的な結果を以下の表IIに示す。
【0104】
【表2】

【0105】
2つの好ましい処方(M841およびM831)のより詳細な分析によるデータを以下の表IIIに示す。簡単に言えば、2mg/mlのクエン酸と0.45%ベンジルアルコールを含む調製物、あるいは、2mg/mlを含み、ベンジルアルコールを含まない調製物を80℃と4℃で保存する。各サンプルについて、保存の直前に最初の粒子サイズと多分散性指数を上記のようにして測定し、その後、定期的間隔で測定する。裸眼による各調製物の外観も測定して、プロポフォール粒子が溶液から分離しているかを示す、透明か曇っているかを判断する。
【0106】
これらの様々な温度にわたって4週間もの間、異なるプロポフォール処方は安定であり、ベンジルアルコールが存在していてもいなくても、これらの調製物の物理的安定性に悪影響を及ぼさない。約25〜80℃の保存温度で、調製物は透明な溶液として維持される。しかし、約25℃未満の温度で、調製物は曇ってきて相が分離する。したがって、この相分離が起こる温度は「雲り点」と呼ばれ、徐々に冷却しながら、調製物の物理的外観(透明または濁り)を評価することによってこれを測定することができる。例えば、処方M831(2mg/mlクエン酸および0.45%ベンジルアルコールで)の雲り点は約13℃と測定され、他方、ベンジルアルコールが存在しないM831(2mg/mlクエン酸)の雲り点は、非常にそれに近い約16℃である。以下の表IIIに示すデータは、雲り点より低い温度で保存した後でも、本発明の処方は、雲り点を超える温度で平衡化させることによって、透明な溶液に再度転換させることができることを示している。
【0107】
【表3】

【0108】
(7.3 水性プロポフォール調製物の化学的安定性)
上記実施例に記載のものなどの水性プロポフォール調製物の化学的安定性は普通の技術で評価することができる。例えば、プロポフォール含有組成物を様々な環境条件下に曝し、その後に、プロポフォールおよび/または賦形剤の安定性を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて評価することができる。簡単に述べると、サンプルを、60%アセトニトリルを含む水性混合物中に希釈し、45℃で動作するC18カラムに注入する。(a)水中の0.05%TFAと(b)アセトニトリル中の0.05%からなる2成分勾配移動相で稼動させる。稼働時間は、0.8ml/分の流速で好ましくは約55分間である。プロポフォールは典型的には、約21分でC18カラムから溶出する。272nmでの溶離液のUV吸収をモニターすることによって様々な不純物および分解生成物と一緒に溶出プロポフォールを検出することができる。異なる不純物の量は、HPLCクロマトグラムのピーク下の面積を測定し、その面積を、プロポフォールに相当するピーク下の面積に対して正規化することによって推定することができる。
【0109】
図1〜図4のそれぞれに、異なる環境条件下で時間をかけて(週で示す)保存した種々のプロポフォール調製物についてのそのような分析結果の例を示す。それぞれの場合、各調製物中に残留するプロポフォールの量(初期プロポフォール含量に対する割合で示す)は、プロポフォールの勾配運転に入って約21分でC18カラムから溶出するピーク面積から推定することができる。
【0110】
より詳細には、図1は、プロポフォール処方をそれに曝すことができる非理想的または「ストレスをかけた」保存条件をシミュレーションするために80℃で保存した、上記の表Iの種々のプロポフォール処方についての結果の例を示す。これらのデータは、組成物のすべてがそのような条件下で非常に安定であることを示している。これらの条件下に4週間保存した後でも、0.2%未満のプロポフォールの分解である。最少レベルの賦形剤を有する処方が一般に好ましいので、さらなる分析用に処方M831を選択した。
【0111】
図2A〜図2Bは、80℃で様々なpH条件のもとで保存したM831処方の分析によるデータの例を示す。これは、処方が約6.2という高いpHレベルで非常に安定であることを実証している。図3は、異なるレベルでクエン酸を含有するM831処方(80℃、pH5で保存)の分析によるデータの例を示す。これらのデータは、本発明の水性プロポフォール処方中にクエン酸が存在することによって(好ましくは約2mg/mlの濃度で)、安定性が著しく改善されることを実証している。
【0112】
図4は、1%と0%のプロピレングリコール(重量/容量)をそれぞれ含む処方M831およびM830のHPLC分析によるデータの例を示す。両方のサンプルは追加的にベンジルアルコール(0.45%重量/容量)とクエン酸(2mg/ml)を含む。これらのデータでは、各調製物の純度は、プロポフォール分解物生成に関連した曲線下の面積を測定することによって推定する。これらのデータは、プロピレングリコールを含まない処方において分解生成物の量が急速に増大しており、一方、少量(例えば約1%)のプロピレングリコールを含有する分解生成物では分解生成物のレベルが比較的安定に保たれていることを示している。
【0113】
(7.4 水性プロポフォール処方の商業ベースの製造)
本発明の水性プロポフォール処方は、上記実施例で説明した実験室サンプルの調製とほぼ同様の方法で容易に製造できる。例としてであって、特定の方法または実施形態に限定するものではないが、注射(WFI)用の精製水とブロックポリマー(例えばポロキサマー188)を、配合用容器中で混合し、撹拌してブロックポリマーを溶解させることができる。次いで、他の賦形剤(好ましくは、PEG−400などのポリエチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸およびベンジルアルコール)を加え、混合してこれらの構成要素をすべて溶解させる。水酸化ナトリウム溶液でpHを5.5±0.5に調節する。次いで、プロポフォールを加え、溶液を混合してプロポフォールを完全に溶解させる。
【0114】
次いで、注射用の水を加えて目標のバッチ重量とする。最終処方を、細孔径が公称0.2μmのフィルターで濾過して滅菌する。濾液は、無菌でガラスバイアルに入れ、ストッパーを取りつけてキャップする。包装する前に、粒子または他の欠陥がないか最後のバイアルを検査することが好ましい。
【0115】
上記の方法において、ブロックポリマーを好ましくは最初に加え、続いて順に、pH滴定し、プロポフォールを加える。他の構成要素を組成物に加える順番は重要ではない。
【0116】
(8.参考文献)
方法の説明において、特許、特許出願および種々の出版物を含む種々の文献が引用され考察されている。そのようなどの文献の引用および/または考察も、本発明の説明を明確にするためだけであり、どの文献もが本明細書で説明した本発明の「従来技術」であると是認するものではない。本明細書で引用および/または考察した文献全体を、各文献が個別に参照により組み込まれているのと同程度に、参照により本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】80℃で1、2、3および4週間保存した水性プロポフォール調製物のHPLC分析よるデータの例を示す図である。
【図2A−2B】80℃で様々なpH条件のもとで保存したM831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)として参照した水性プロポフォール調製物のHPLC分析よるデータの例を示す図である。
【図3】種々の濃度のクエン酸(0.5、1および2mg/ml)を含む80℃で保存したM831(1%プロポフォール、8%ポロキサマー188、3%PEG−400および1%プロピレングリコール)として参照した水性プロポフォール調製物のHPLC分析よるデータの例を示す図である。
【図4】M831およびM830として参照した水性プロポフォール調製物のHPLC分析よるデータの例を示す図である。
【図5】プロポフォールとしても知られている2,6−ジイソプロピルフェノール(式I)の好ましい化学構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ブロックコポリマー、
b.ポリエチレングリコール(PEG)および
c.2,6−ジイソプロピルフェノール
を含む水性処方。
【請求項2】
2,6−ジイソプロピルフェノールの量が、
a.前記処方の少なくとも1%(重量/容量)、
b.前記処方の1〜5%(重量/容量)、
c.前記処方の1〜2%(重量/容量)、または
d.前記処方の1%(重量/容量)
である請求項1に記載の処方。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーが、
a.前記処方の約10%(重量/容量)未満、
b.前記処方の5〜10%(重量/容量)、
c.前記処方の6〜8%(重量/容量)、
d.ポロキサマー、
e.P188、P407およびP237からなる群から選択される、または
f.P188
である請求項1に記載の処方。
【請求項4】
PEGの総量が、
a.前記処方の約5%(重量/容量)未満、
b.前記処方の3〜4%(重量/容量)、
c.PEG−200、PEG−300、PEG−400、PEG−600およびPEG−800からなる群から選択される、
d.PEG−400
である請求項1に記載の処方。
【請求項5】
処方が、
a.張性調整剤、
b.ラクトース、デキストロース、無水デキストロース、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される張性調整剤、
c.プロピレングリコール、
d.前記処方の5%(重量/容量)以下の量のプロピレングリコール、または
e.前記処方の2%(重量/容量)以下の量のプロピレングリコール
をさらに含む請求項1に記載の処方。
【請求項6】
a.クエン酸、
b.2.5〜10mMの濃度のクエン酸、
c.抗菌剤、
d.エデト酸二ナトリウム、メタ重亜硫酸塩、ベンジルアルコール、システインもしくはその塩およびEDTAからなる群から選択される抗菌剤、
e.ベンジルアルコール、または
f.前記処方の最大で0.5%(重量/容量)の量で存在するベンジルアルコール
をさらに含む請求項1に記載の処方。
【請求項7】
a.前記処方の6〜8%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の2〜4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の2%(重量/容量)以下の量のプロピレングリコール、および前記処方の1〜2%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
b.前記処方の約3%(重量/容量)の量のポロキサマー237、前記処方の約6%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
c.前記処方の約8%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
d.前記処方の約8%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約3%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
e.前記処方の約8%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール(ここで、前記処方には、プロピレングリコールは実質的に存在しない)、
f.前記処方の約8%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約3%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール(ここで、前記処方には、プロピレングリコールは実質的に存在しない)、
g.前記処方の約7%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
h.前記処方の約7%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール(ここで、前記処方には、プロピレングリコールは実質的に存在しない)、
i.前記処方の約7%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約3%(重量/容量)の量の、ポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
j.前記処方の約7%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約3%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール(ここで、前記処方には、プロピレングリコールは実質的に存在しない)、
k.前記処方の約6%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
l.前記処方の約6%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約4%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の約2%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
m.前記処方の約6%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約6%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、前記処方の約1%(重量/容量)の量のプロピレングリコール、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール、
n.前記処方の約6%(重量/容量)の量のポロキサマー188、前記処方の約6%(重量/容量)の量のポリエチレングリコール(PEG)−400、および前記処方の約1%(重量/容量)の量の2,6−ジイソプロピルフェノール(ここで、前記処方には、プロピレングリコールは実質的に存在しない)
を含む水性処方。
【請求項8】
a.2.5〜10mMの濃度のクエン酸、
b.前記処方10ミリリットル当たり約20mgの量のクエン酸、
c.前記処方の約0.45%(重量/容量)の量のベンジルアルコール
をさらに含む請求項7に記載の処方。
【請求項9】
a.患者にプロポフォールを投与する方法であって、前記患者に請求項1に記載の水性処方を投与することを含む方法、
b.患者を治療する方法であって、前記患者に請求項1に記載の水性処方を投与することを含む方法、
c.患者の麻酔状態を誘発させる方法であって、前記患者にある量の請求項1に記載の処方を投与し、それによって患者に、麻酔状態を誘発するのに効果的なプロポフォールの量をもたらす方法、および
d.患者の麻酔状態を保持する方法であって、前記患者にある量の請求項1に記載の処方を投与し、それによって患者に、麻酔状態を保持するのに効果的なプロポフォールの量をもたらす方法
からなる群から選択される方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−519732(P2007−519732A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551413(P2006−551413)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/002367
【国際公開番号】WO2005/072343
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(505036065)トランスフォーム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】TRANSFORM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】