説明

2H−1,2−チアジン1,1−ジオキシド誘導体

【課題】部分発作及び/又は全般発作の種々てんかん発作に対する治療薬若しくは予防薬として有用な化合物の提供。
【解決手段】式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩[式中RはC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、Rは水素原子又はC1−4アルキル等を表し、Rは置換されていてもよいC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、C4−6シクロアルキルアルキル又は水素原子等を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子等を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子等を表す]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てんかんの治療薬として有用な新規2H−1,2−チアジン 1,1−ジオキシド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、脳神経細胞の過剰興奮に由来する発作性の運動、意識、知覚の異常及び行動異常が反復する慢性疾患である。そして、この疾患の3例に1例が既存薬治療に抵抗を示す難治性てんかんである。てんかん発作は、部分発作及び全般発作に大きく分類される。部分発作は、片側大脳半球の限局した部位を発作起始とする行動異常と脳波像の異常を示す。部分発作は、さらに単純部分発作、複雑部分発作又は二次性全般化発作に分類される。一方、全般発作は、発作の起始症状が両側大脳半球に現れる発作である。全般発作の通常の臨床症状は、意識消失を伴う特徴的な全身の運動症状である。また、発作時の脳波は両側同期性である。欠神発作、ミオクロニー発作、強直発作、間代発作、強直間代発作、脱力発作、West症候群及びLennox-Gastaut症候群が全般発作に分類される。
【0003】
これらてんかん発作の治療は薬物治療が中心であり、古くから種々の抗てんかん薬が処方されている。また、部分発作及び全般発作(特に欠神発作やミオクロニー発作)に対し広範囲に有効な抗てんかん薬はバルプロ酸のみである。しかし、バルプロ酸は用量、効果、安全性の面で十分に満足される抗てんかん薬ではない。したがって、部分発作及び/又は全般発作に高い有効性を示し、安全性に優れた治療薬の開発が望まれている。
【0004】
非ステロイド性抗炎症薬として有用な下記一般式で表される3,4−ジヒドロ−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド類が文献に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、XとYは各々水素、フッ素、塩素、臭素、1ないし5個の炭素を有するアルキル等からなる群から選ばれる基であり;Rは−NHR等からなる群から選ばれる基であり、ここにおいてRは水素、1ないし5個の炭素原子を有するアルキル、8個までの炭素原子を有するシクロアルキル等からなる群から選ばれる基であり;Rは1ないし5個の炭素原子を有するアルキル等からなる群から選ばれる基であり;及びZは酸素等である。)
該化合物はベンゾチアジン環の4位がオキソであり、後記式(I)で表される化合物と基本的な化学構造が異なる。
【0007】
抗炎症作用を示す下記一般式で表される3−カルバモイル−2−(低級アルキル)−ベンゾチアジン−1,1−ジオキシド類が文献に開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Rは水素及び低級アルキルからなる群から選ばれる基である。)
該化合物は、後記式(I)で表される化合物とは、ベンゾチアジン環の4位置換基の化学構造が異なる。
【0010】
抗炎症作用を示す下記化合物が文献に開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
【化3】


該化合物は、後記式(I)で表される化合物とは、ベンゾチアジン環の3位置換基の化学構造が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,591,584号明細書
【特許文献2】米国特許第3,501,466号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Synthesis, 4, 591 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、抗てんかん薬として有用な新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、下記式(I)で表される新規化合物が強い抗痙攣作用を示すことを見出し、本発明を完成した。本発明によれば、下記式(I)で表される2H−1,2−チアジン 1,1−ジオキシド誘導体又はその製薬学的に許容される塩(以下、「本発明の化合物」と称することもある。)が提供される。
【0016】
[項1]下記式(I):
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、
環Arは、ベンゼン環又はチオフェン環を表し、
は、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、
は、水素原子又はC1−4アルキルを表し、
は、フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−4アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC1−6アルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−4アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−4アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC4−6シクロアルキルアルキル;又は水素原子を表すか、或いは
とRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜4個のカルボニルで置換されていてもよい4〜8員の飽和含窒素へテロ環(ここにおいて、該飽和含窒素ヘテロ環は1〜4個のC1−4アルキルで置換されてもよい。)を形成し、
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、C4−6シクロアルキルアルキルアミノ又はアミノを表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0019】
[項2]環Arが、ベンゼン環又はチオフェン環であり、
が、C1−3アルキル、C3−5シクロアルキル又はC4−5シクロアルキルアルキルであり、
が、水素原子又はC1−3アルキルであり、
が、フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC1−5アルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC3−5シクロアルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC4−5シクロアルキルアルキル;又は水素原子であるか、或いは
とRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1個のカルボニルで置換されていてもよい4〜7員の飽和含窒素へテロ環(ここにおいて、該飽和含窒素ヘテロ環は1〜4個のC1−3アルキルで置換されてもよい。)を形成し、
が、水素原子、ハロゲン原子、C1−3アルキル又はC3−5シクロアルキルであり、
が、水素原子、ハロゲン原子、ジ(C1−3アルキル)アミノ、C1−3アルキルアミノ、C3−5シクロアルキルアミノ又はアミノである、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0020】
[項3]環Arが、ベンゼン環又はチオフェン環であり、
が、C1−3アルキル、シクロプロピル及びシクロプロピルメチルであり、
が、水素原子、メチル又はエチルであり、
が、1〜3個のフッ素原子若しくは1個のメトキシで置換されていてもよいC1−4アルキル;シクロプロピル;シクロプロピルメチル;又は水素原子であるか、或いは
とRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、N−メチルピペラジン環、オキソピペラジン環、アゼチジン環又はモルホリン環を形成し、
が、水素原子、ハロゲン原子、C1−3アルキル又はシクロプロピルであり、
が、水素原子、ハロゲン原子、メチルアミノ、シクロプロピルアミノ又はアミノである、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0021】
[項4]環Arが、ベンゼン環であり、
が、メチル、エチル、シクロプロピル又はシクロプロピルメチルであり、
が、水素原子又はメチルであり、
が、1〜3個のフッ素原子若しくは1個のメトキシで置換されていてもよいC1−4アルキル;シクロプロピル;シクロプロピルメチル;又は水素原子であり、
が、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル、エチル又はシクロプロピルであり、
が、水素原子、ハロゲン原子又はアミノである、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0022】
[項5]環Arが、ベンゼン環であり、
が、メチル、エチル、シクロプロピル又はシクロプロピルメチルであり、
が、水素原子又はメチルであり、
が、C1−4アルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル又は水素原子であり、
が、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル又はエチルであり、
が、水素原子である、
項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0023】
[項6]式(I)で表される化合物が、
4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例1の化合物)、
4−クロロ−2−シクロプロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例4の化合物)、
4−クロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例6の化合物)、
4−クロロ−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例7の化合物)、
4−クロロ−N−シクロプロピル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例10の化合物)、
N−ブチル−4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例12の化合物)、
4−クロロ−2−メチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例13の化合物)、
4−クロロ−N−(2−メトキシエチル)−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例14の化合物)、
4−クロロ−N−シクロプロピルメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例15の化合物)、
4−クロロ−2−エチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシ(実施例22の化合物)、
4−クロロ−N−エチル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例23の化合物)、
4−クロロ−N−エチル−2−エチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例24の化合物)、
4−クロロ−2−シクロプロピル−N−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例27の化合物)、
4−クロロ−2−シクロプロピル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例28の化合物)、
4,8−ジクロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例29の化合物)、
N−シクロプロピル−4,8−ジクロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例30の化合物)、
6−ブロモ−4−クロロ−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例31の化合物)、
7−ブロモ−4−クロロ−N−シクロプロピルメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例33の化合物)、
4−クロロ−2−メチル−3−(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル−2H−1,2ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド 1塩酸塩(実施例38の化合物)、
N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例39の化合物)、
2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例40の化合物)、
N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例43の化合物)、
N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例44の化合物)、
2−メチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例45の化合物)、
N−シクロプロピル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例47の化合物)、
N−シクロプロピルメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例48の化合物)、
N−(2−フルオロエチル)−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例51の化合物)、
N−(2,2−ジフルオロエチル)−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例52の化合物)、
2−エチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例53の化合物)、
N,N−ジメチル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例54の化合物)、
N−エチル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例55の化合物)、
N−シクロプロピル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例56の化合物)、
2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例58の化合物)、
4−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例59の化合物)、
4−ブロモー2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例61の化合物)、
2,4−ジメチル−N−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例62の化合物)、
4−ブロモ−2−メチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例67の化合物)、
4−ブロモ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例68の化合物)、
4−クロロ−N−エチル−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例69の化合物)、
8−クロロ−N−シクロプロピル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例70の化合物)、
2,4−ジメチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例71の化合物)、
N,N−ジメチル−2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例72の化合物)、
2,4−ジメチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例73の化合物)、
4−エチル−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例74の化合物)、
N,N−ジメチル−4−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例75の化合物)、
4−ブロモ−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例76の化合物)、
2−シクロプロピルメチル−N,N−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例79の化合物)、
N,N −ジメチル−2−メチル−2H−チエノ[2,3−e][1,2]チアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド(実施例82の化合物)、及び
6−アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩(実施例86の化合物)、
からなる群から選択される項1記載の化合物。
【0024】
[項7]項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【0025】
[項8]項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする抗てんかん薬。
【0026】
[項9]Rが、水素原子、メチル又はエチルであり、
が、1〜3個のフッ素原子若しくは1個のメトキシで置換されていてもよいC1−4アルキル;シクロプロピル;シクロプロピルメチル;又は水素原子である項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0027】
[項10]Rが、水素原子又はメチルであり、
が、C1−4アルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル又は水素原子である項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0028】
[項11]Rが、ハロゲン原子、C1−3アルキル又はC3−5シクロアルキルである項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0029】
[項12]Rが、塩素原子、臭素原子、メチル又はエチルである項4又は項5に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0030】
[項13]Rが、水素原子である項1〜項4のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【0031】
式(I)の化合物における環Ar、R〜Rの好ましい具体例としては、以下のものが例示される。環Arは、ベンゼン環が好ましい;Rは、メチル、エチル又はシクロプロピルメチルが好ましい;Rは、水素原子又はメチルが好ましい;Rは、メチル、エチル、シクロプロピル又は水素原子が好ましい;Rは、水素原子又は塩素原子が好ましい;Rは、水素原子が好ましい。これらの例示の一つ又は任意の複数の組み合わせで限定された前記の各化合物群も好ましい式(I)の化合物の一つの態様になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の化合物は、抗てんかん薬の評価に用いられるモデル動物において抗痙攣作用を示すので、抗てんかん薬(例えば、単純部分発作、複雑部分発作及び意識消失を伴う持続的な二次性全般化発作等を含む部分発作、欠神発作、ミオクロニー発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、脱力発作、West症候群及びLennox-Gastaut症候群等の全般発作に対する予防薬及び/又は治療薬)として有用である。そして、これら本発明の一群の化合物は従来の薬物治療が奏功しない難治性てんかん発作に対する予防薬及び/又は治療薬としても期待される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
式(I)で表される化合物の製薬学的に許容される塩とは、構造中に酸付加塩を形成しうる基を有する式(I)の化合物の製薬学的に許容される酸付加塩を意味する。酸付加塩の具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。
【0034】
本発明の化合物は、水和物及び/又は溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物及び/又は溶媒和物もまた本発明の化合物に包含される。
【0035】
また、式(I)の化合物は、1個又は場合によりそれ以上の不斉炭素原子を有する場合があり、また幾何異性や軸性キラリティを生じることがあるので、数種の立体異性体として存在することがある。本発明においては、これらの立体異性体、それらの混合物及びラセミ体は本発明の式(I)で表される化合物に包含される。
【0036】
つぎに、本明細書における用語について以下に説明する。
【0037】
環Arがベンゼン環である式(I)の化合物とは、下記式(I−1):
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、R、R、R、R及びRは項1の定義に同じである。)
で表される化合物を意味し、
環Arがチオフェン環である式(I)の化合物とは、下記式(I−2a)、式(I−2b)又は式(I−2c):
【0040】
【化6】

【0041】
(式中、R、R、R、R及びRは項1の定義に同じである。)
で表される化合物を意味する。これらの一般式で表される化合物のうち、式(I−1)及び式(I−2a)で表される化合物が好ましく、式(I−1)で表される化合物は一層好ましい。
【0042】
「アルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、「C1−3アルキル」、「C1−4アルキル」、「C1−5アルキル」又は「C1−6アルキル」とは炭素原子数が1〜3、1〜4、1〜5又は1〜6の置換基をそれぞれ意味する。その具体例として、「C1−3アルキル」の場合には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等が、「C1−4アルキル」の場合には、前記に加えて、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が、「C1−5アルキル」の場合には、前記に加えて、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル等が、「C1−6アルキル」の場合には、前記に加えて、ヘキシル等が挙げられる。
【0043】
「C3−5シクロアルキル」又は「C3−6シクロアルキル」とは、炭素原子数が3〜5又は3〜6の単環式飽和炭化水素基を意味する。その具体例として、「C3−5シクロアルキル」の場合は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル等が挙げられ、「C3−6シクロアルキル」の場合は、前記に加えて、シクロへキシル等が挙げられる。
【0044】
「C4−5シクロアルキルアルキル」又は「C4−6シクロアルキルアルキル」とは、直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素上に単環式飽和炭化水素が結合する炭素原子数が4〜5又は4〜6の置換基を意味する。その具体例としては、「C4−5シクロアルキルアルキル」の場合は、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、1−シクロプロピルエチル、2−シクロプロピルエチル等が挙げられ、「C4−6シクロアルキルアルキル」の場合は、前記に加えて、1−シクロプロピルプロピル、2−シクロプロピルプロピル、1−シクロブチルエチル、2−シクロブチルエチル、3−シクロブチルエチル、シクロペンチルメチル等が挙げられる。
【0045】
「C1−3アルコキシ」又は「C1−4アルコキシ」とは、直鎖状又は分枝鎖状の炭素原子数が1〜3又は1〜4のアルコキシを意味する。その具体例としては、「C1−3アルコキシ」の場合は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ等が挙げられ、「C1−4アルコキシ」の場合は、前記に加えて、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
【0046】
「ジ(C1−3アルキル)アミノ」又は「ジ(C1−4アルキル)アミノ」とは、炭素原子数が1〜3又は1〜4の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基が同一又は異なって2つ置換されたアミノを意味する。その具体例として、「ジ(C1−3アルキル)アミノ」の場合には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、エチルメチルアミノ等が挙げられ、「C1−4アルキルアミノ」の場合には、前記に加えて、ジブチルアミノ、ジイソブチルアミノ等が挙げられる。
【0047】
「C1−3アルキルアミノ」又は「C1−4アルキルアミノ」とは、炭素原子数が1〜3又は1〜4の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基で置換されたアミノを意味する。その具体例として、「C1−3アルキルアミノ」の場合には、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ等が挙げられ、「C1−4アルキルアミノ」の場合には、前記に加えて、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ等が挙げられる。
【0048】
「C3−5シクロアルキルアミノ」又は「C3−6シクロアルキルアミノ」とは、炭素原子数が3〜5又は3〜6の単環式飽和炭化水素基で置換されたアミノを意味する。その具体例として、「C3−5シクロアルキル」の場合は、シクロプロピルアミノとシクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ等が挙げられ、「C3−6シクロアルキル」の場合は、前記に加えて、シクロへキシルアミノ等が挙げられる。
【0049】
「C4−6シクロアルキルアルキルアミノ」とは、前記の「C4−6シクロアルキルアルキル」で置換されたアミノを意味する。その具体例として、シクロプロピルメチルアミノ、2−シクロプロピルエチルアミノ、3−シクロプロピルプロピルアミノ、シクロブチルメチルアミノ、2−シクロブチルエチルアミノ、シクロペンチルメチルアミノ等が挙げられる。
【0050】
「フッ素原子で置換されたアルキル」としては、上記アルキルの1個ないし3個の置換可能な水素原子がフッ素原子で置換されたものを意味する。具体的には、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4−フルオロブチル、4,4,4−トリフルオロブチル等が挙げられる。フッ素原子で置換された以下の各置換基:シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルも同様である。
【0051】
同様に、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ又はC1−4アルコキシで置換されたアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルは、それぞれ1個ないし3個の置換可能な水素原子がヒドロキシ、C1−3アルコキシ又はC1−4アルコキシで置換されたアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルをいう。その他の置換される各置換基の具体例も同様に例示できる。
【0052】
「4〜7員の飽和含窒素へテロ環」又は「4〜8員の飽和含窒素へテロ環」とは、炭素原子以外に1個又は2個の窒素原子を含む4〜7又は4〜8個の原子で構成される飽和環(ここにおいて、該飽和環はさらに1個の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)を意味する。具体例としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ホモピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、アゼチジン環等が挙げられる。これらのうち、好ましいものはピペラジン環、モルホリン環、アゼチジン環であり、更に好ましいものはピペラジン環である。
【0053】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0054】
本発明の化合物の具体例として、後記実施例の化合物に加えて、その製薬学的に許容される塩又はその水和物若しくは溶媒和物が挙げられる。
【0055】
なお、本明細書において記載の簡略化のために、次に挙げる略号を用いることもある。Me:メチル、t−:tert−、n−:ノルマル、Boc:tert−ブトキシカルボニル、Tf:トリフルオロメタンスルホニル、THF:テトラヒドロフラン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、DME:エチレングリコールジメチルエーテル、DMSO:ジメチルスルホキシド、CDCl:重クロロホルム
【0056】
[製造法1]
が塩素原子である式(I)の化合物[下記式(Ia)の化合物]は、下記製造法に
より製造することができる。
【0057】
【化7】

【0058】
(式中、環Ar、R、R及びRは項1の定義に同じであり、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表し、AlkはC1−3アルキルを表す。)
[工程1]:化合物(II)を無溶媒下又は不活性溶媒中でクロル化剤と反応させると、化合物(III)が得られる。
【0059】
工程1で用いられるクロル化剤の具体例としては、五塩化リン、三塩化リン、オキシ塩化リン、塩化チオニル、オキサリルクロリド、塩化水素等が挙げられる。不活性溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは60〜150℃である。
【0060】
[工程2]:化合物(III)と各種アミン(R2−NH−R3)を、塩基存在下又は非存在下、適当な溶媒中で反応させると化合物(Ia)を製造することができる。R2及びR3が水素原子である化合物(Ia)は、本工程において各種アミンの代わりにヘキサメチルジシラザンを用いる反応から得られる反応生成物を酸や塩基などを用いて処理すること(トリメチルシリル基の脱離反応)によって製造される。
【0061】
工程2で用いられる塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属又はピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF等が挙げられる。なお、各種アミン(R−NH−R)は、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用され、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。また、過剰量の当該アミンを塩基として働かせることができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。
【0062】
また、R及びRが水素原子である化合物(Ia)の製造におけるトリメチルシリル基の脱離反応は、適当な反応条件のもと行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中で酸性条件下に水或いはアルコールを接触させることにより行われる。使用される試薬の具体例としては、メタノール、希塩酸、トシル酸/メタノール、酢酸/水、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃である。
【0063】
[製造法2]
が水素原子、臭素原子、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルである式(I)の化合物[下記式(Ib)の化合物]は、化合物(IV)から下記製造法により製造することができる。
【0064】
【化8】

【0065】
(式中、環Ar、R、R及びRは項1の定義に同じであり、R41は水素原子、臭素原子、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表し、AlkはC1−3アルキルを表す。)
【0066】
[工程1]:化合物(IV)を加水分解すると、化合物(V)が得られる。
【0067】
工程1の加水分解反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中で酸性又は塩基性条件下に化合物(IV)と水とを接触させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独或いは混合媒媒として使用することができる。使用される酸の具体例としては、塩酸、硫酸等の鉱酸が挙げられる。また、使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、t−ブトキシカリウム等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃である。
【0068】
[工程2]:化合物(V)をアミド化すると、化合物(Ib)が得られる。
【0069】
化合物(V)のアミド化反応は、常法に従って行うことができる。例えば、化合物(V)を反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル、活性エステル、酸無水物、酸ハライド等)に変換し、続いて各種アミンと反応させると化合物(Ib)が得られる。活性エステルの具体例としては、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル等が挙げられる。酸無水物の具体例としては、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル、イソ吉草酸、ピバリン酸等との混合酸無水物が挙げられる。
【0070】
また、化合物(Ib)は、化合物(V)と各種アミンとを縮合剤の存在下で反応させることによっても製造される。縮合剤の具体例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 1塩酸塩、N,N’−カルボジイミダゾール、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。これらの縮合剤は単独で、又は、これら縮合剤と、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール等のペプチド合成試薬とを組み合わせて用いることができる。
【0071】
化合物(V)と各種アミンとの反応は、溶媒中又は無溶媒下に行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF等が挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。なお、使用される各種アミンは、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用され、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。本反応は通常塩基の存在下で行われることもあり、使用される塩基の具体例としては、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、又は、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物の種類等により異なるが、通常、約−30℃〜約150℃、好ましくは約−10℃〜約70℃である。
【0072】
[製造法3]
が水素原子である式(I)の化合物[下記式(Ic)の化合物]は、下記反応式で示すとおり、前記の製造法1で製造される化合物(Ia)の脱クロル化によっても製造される。
【0073】
【化9】

【0074】
(式中、環Ar、R、R及びRは項1の定義に同じであり、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表す。)
【0075】
脱クロル化の方法としては、例えば塩基存在下での接触還元が挙げられる。接触還元に使用される触媒の具体例としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等が挙げられる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属又はピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。また原料に対する塩基の等量数は、0.5〜4等量、好ましくは0.8〜1.2等量である。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えば酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。反応における反応容器内の圧力は、1〜10atm、好ましくは1〜5atmであり、反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常−10〜120℃、好ましくは10〜50℃である。
【0076】
[製造法4]
がフッ素原子又はヨウ素原子である式(I)の化合物[下記式(Id)の化合物]は、化合物(VI)から下記製造法により製造することができる。
【0077】
【化10】

【0078】
(式中、環Ar及びRは項1の定義に同じであり、R42はフッ素原子、又はヨウ素原子を表し、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表す。)
【0079】
[工程1]:化合物(VI)を不活性溶媒中でハロゲン化アルカリ金属塩(例えば、フッ化カリウム等)と反応させると、化合物(VII)が得られる。
【0080】
工程1の置換反応に用いられる不活性溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF等が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは80〜180℃である。
【0081】
[工程2]:化合物(VII)を加水分解することで、化合物(Id)を製造することができる。
【0082】
工程2の加水分解反応は、適当な反応条件のもと行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中で酸性又は塩基性条件下に化合物(VII)と水とを接触させることにより行われる。使用される試薬の具体例としては、濃硫酸、35%塩酸、ポリリン酸、飽和塩化水素/ギ酸溶液、飽和塩化水素/イソプロパノール溶液、水酸化ナトリウム/t−ブタノール溶液、水酸化ナトリウム/DMSO溶液、塩基性イオン交換樹脂、アルカリ性過酸化水素等が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃である。
【0083】
[製造法5]
が、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、C4−6シクロアルキルアルキルアミノ又はアミノである式(I)の化合物[下記式(Ie)及び(Ig)の化合物]は、Rが臭素原子である式(Ia)〜(Id)の化合物[下記式(Iaa)の化合物]から下記製造法により製造することができる。
【0084】
【化11】

【0085】
(式中、環Ar、R、R、R及びRは項1の定義に同じであり、RはC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C4−6シクロアルキルアルキル又は水素原子を表し、RはC1−4アルキル又は水素原子を表し、PGはアミノ基の保護基を表す。但し、RがC1−4アルキルのとき、RはC1−4アルキルである。)
【0086】
[工程1]:化合物(Ie)及び(If)は、適当な溶媒中で、化合物(Iaa)と各種アルキルアミン又はN−保護アルキルアミンを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムに代表されるパラジウム触媒等の遷移金属触媒下、カップリング反応を行うことで得られる。
【0087】
工程1で用いられる各種アルキルアミン及びN−保護アルキルアミン(例えば、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチルアミンなど)は、市販されているか、或いは市販試薬から公知の方法に従って調整される。これらカップリング反応においては、上記試薬の他に炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)やリン酸カリウム等の無機塩基、或いはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、さらには塩化リチウム等の無機塩共存下で行う場合もある。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類や用いる試薬の種類に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは60〜150℃である。
【0088】
[工程2]:化合物(If)を脱保護すると、化合物(Ig)が得られる。
【0089】
工程2の脱保護反応は、常法に従って行うことができる。例えば、この反応は適当な溶媒中で酸性又は塩基性条件下に化合物(If)と水とを接触させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジオキサン、DME、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。使用される酸の具体例としては、塩酸、硫酸及びフッ化水素酸等の鉱酸及びトリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。また、使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、t−ブトキシカリウム等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリが挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃である。
【0090】
上記製造法1〜5で製造される式(I)の化合物は、クロマトグラフィー、再結晶等通常の化学操作により単離・精製することができる。
【0091】
次に、上記製造法1〜5で用いられる原料化合物は下記の方法により製造することができる。
【0092】
前記製造法1で用いられる化合物(II)は、下記反応式で示すとおり、化合物(VIII)と各種アルキルハライドと塩基存在下、適当な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0093】
【化12】

【0094】
(式中、環Ar及びRは項1の定義に同じであり、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表し、Xはハロゲン原子を表し、AlkはC1−3アルキルを表す。)
【0095】
使用される塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属又はピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。反応温度は、使用される原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常−10〜120℃、好ましくは10〜100℃である。
【0096】
化合物(VIII)は、市販されているか、或いは J. Org. Chem., 39, 1554 (1974) に記載の方法、米国特許第4,057,555号明細書に記載の方法、欧州特許0,001,113号明細書に記載の方法及びこれらの方法に準じた方法で製造される。なお、エチル 4−ヒドロキシ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシドは、市販品として入手可能である。
【0097】
また、前記製造法1で用いられる化合物(II)は、下記反応式で示す方法により製造することもできる。
【0098】
【化13】

【0099】
(式中、環Ar及びRは項1の定義に同じであり、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表し、Alk及びAlk’はC1−3アルキルを表す。)
【0100】
[工程1]:化合物(IX)と各種アルキル N−置換グリシネート(R−NHCHCOO−Alk’)を、塩基存在下又は非存在下、適当な溶媒中で反応させると化合物(X)を製造することができる。
【0101】
工程1で用いられる塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属又はピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF等が挙げられる。なお、各種アルキル N−置換グリシネート(R−NHCHCOO−Alk’)は、塩酸塩等の酸付加塩の形で使用され、反応系中で遊離塩基を生成させてもよい。また、過剰量の当該アミンを塩基として働かせることができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。
【0102】
[工程2]:化合物(X)を環化させると化合物(II)が得られる。
【0103】
工程2の環化反応は、常法に従って行われる。例えば、この反応は適当な溶媒中でルイス酸又は塩基性条件下に化合物(X)を反応させることにより行われる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばTHF、ジエチルエーテル、ジオキサン、DME、n−ヘキサン、ジクロロメタン、アセトニトリル又はDMFが挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。使用されるルイス酸の例としては、四塩化チタン、チタニウムイソプロポキシド、ボロントリフルオリドが挙げられる。また、塩基の具体例としては、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等やリチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属又はピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1−エチルピペリジン等の有機塩基が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常−78〜150℃、好ましくは−78〜50℃である。
【0104】
化合物(IX)はJ. Heterocyclic. Chem. 41, 435(2004)に記載の方法或いはこれに準じた方法により製造される。
【0105】
前記製造法2で用いられるR41が水素原子、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルである化合物(IV)[下記式(IV−1)の化合物]は、下記反応式で示す方法により製造することができる。
【0106】
【化14】

【0107】
(式中、環Ar及びRは項1の定義に同じであり、R411は水素原子、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表し、AlkはC1−3アルキルを表す。)
【0108】
[工程1]:化合物(XI)は、例えば、化合物(II)とトリフルオロメタンスルホン酸無水物とを塩基存在下、不活性溶媒中で反応させることにより製造される。
【0109】
使用される塩基の具体例としては、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルコキシアルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属又はピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常−10〜120℃、好ましくは10〜100℃である。
【0110】
[工程2]:化合物(IV−1)は、化合物(XI)を各種アルキルボロン酸[R411B(OH)]やトリメチルボロキシン等のホウ素試薬、或いはテトラメチルスズやトリメチルアルミニウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルジンククロリド等のアルキル金属試薬等又は、トリアルキルシリルヒドリド等の還元剤を、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムに代表されるパラジウム触媒等の遷移金属触媒下、クロスカップリング反応又は還元を行うことにより製造される。
【0111】
化合物(IV−1)は、適当な溶媒中で、化合物(XI)及びこれらカップリング試薬による反応においては、上記試薬の他に炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)やリン酸カリウム等の無機塩基、或いはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、さらには塩化リチウム等の無機塩共存下で行う場合もある。
【0112】
工程2で用いられる各種ホウ素試薬、或いはアルキル金属試薬は、市販されているか、或いは市販試薬から公知の方法に従って調整される。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類や用いる試薬の種類に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは60〜150℃である。
【0113】
前記製造法2で用いられるR41が臭素原子又はヨウ素原子である化合物(IV)[下記式(IV−3)の化合物]は、R41が水素原子である化合物(IV)[下記式(IV−2)の化合物]から下記反応式で示す方法により製造することができる。
【0114】
【化15】

【0115】
(式中、環Ar及びRは項1の定義に同じであり、R412は臭素原子又はヨウ素原子を表し、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表し、AlkはC1−3アルキルを表す。)
【0116】
化合物(IV−3)は、適当な溶媒中で、化合物(IV−2)及び臭素化試薬(例えば、N−ブロモスクシンイミド等)又はヨウ素化試薬(例えば、ヨウ素、N−ヨードスクシンイミド等)による反応において製造することができる。
【0117】
用いられる各種臭素化試薬又はヨウ素化試薬は、市販されているか、或いは市販試薬から公知の方法に従って調整される。溶媒の具体例としては、原料化合物の種類や用いる試薬の種類に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、DMF又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類及び水等が挙げられ、単独或いは混合溶媒として使用することができる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは60〜150℃である。
【0118】
前記製造法4で用いられる化合物(VI)は、下記反応式で示すとおり、化合物(XII)を無溶媒下又は不活性溶媒中でクロル化剤と反応させ、クロル化反応及び脱水反応を同時に進行させることにより製造される。
【0119】
【化16】

【0120】
(式中、環Ar及びRは項1の定義に同じであり、R51は水素原子、ハロゲン原子又はC1−4アルキルを表す。)
【0121】
クロル化及び脱水反応に用いられる試薬の具体例としては、五塩化リン、三塩化リン、オキシ塩化リン、塩化チオニル等が挙げられる。不活性溶媒の具体例としては、原料化合物の種類等に従って選択されるべきであるが、例えばトルエン、THF、ジオキサン、DME、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。反応温度は、用いられる原料化合物及び試薬の種類等によって異なるが、通常0〜200℃、好ましくは10〜150℃である。
【0122】
化合物(XII)はJ. Org. Chem. 39, 1554 (1974)に記載の方法に準じて製造される。
【0123】
各種アミン(R−NH−R)は、市販されているか、或いは市販試薬から公知の方法に従って調整される。
【0124】
本発明の化合物は、後述のとおり、抗てんかん薬として有用である。本発明の化合物の投与経路としては、経口投与、非経口投与又は直腸内投与のいずれでもよく、その一日投与量は、化合物の種類、投与方法、患者の症状・年齢等により異なる。例えば、経口投与の場合は、通常、ヒト又は哺乳動物1kg体重当たり約0.01〜1000mg、さらに好ましくは約0.1〜500mgを1〜数回に分けて投与することができる。静注等の非経口投与の場合は、通常、例えば、ヒト又は哺乳動物1kg体重当たり約0.01mg〜300mg、さらに好ましくは約1mg〜100mgを投与することができる。
【0125】
本発明の化合物は、上記のごとき医薬用途に使用する場合、通常、製剤用担体と混合して調製された製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明の化合物と反応しない無毒性の物質が用いられる。具体的には、例えばクエン酸、グルタミン酸、グリシン、乳糖、イノシトール、ブドウ糖、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、シクロデキストリン、デンプン、部分アルファー化デンプン、白糖、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、カルボキシビニルポリマー、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、プロピレングリコール、エタノール、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、水等が挙げられる。
【0126】
剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、注射剤、坐剤、点眼剤、軟膏剤、塗布剤、貼付剤、吸入剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製することができる。なお、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また、錠剤及び顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。さらに、これらの製剤は治療上価値ある他の成分を含有してもよい。
【実施例】
【0127】
以下に参考例、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、化合物の同定は元素分析値、マス・スペクトル、IRスペクトル、NMRスペクトル、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により行った。
【0128】
明細書の記載を簡略化するために実施例及び実施例中の表において以下に示すような略号を用いることもある。
【0129】
NMRに用いられる記号としては、sは一重線、dは二重線、tは三重線、qは四重線、mは多重線、及びbrはなだらかを意味する。
参考例1
【0130】
【化17】

【0131】
エチル 4−ヒドロキシ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド5.00gのDMF(50ml)溶液に、ナトリウムエトキシド1.26g及びヨウ化エチル1.49mlを添加し、室温で60時間攪拌した。反応混合物を水100mlに加え、酢酸エチル150mlで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−へキサン−酢酸エチル(4:1)で溶出・精製し、エチル 2−エチル−4−ヒドロキシ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド5.25gを粗結晶として得た。
【0132】
1H-NMR (CDCl3)δ:0.83 (t, 3H), 1.42 (t, 3H), 3.59 (q, 2H), 4.41 (q, 2H), 7.68-7.74 (m, 2H), 7.84-7.87 (m, 1H), 8.03-8.06 (m, 1H), 12.25 (s, 1H).
【0133】
参考例2−4
対応する原料化合物を用い、参考例1に記載の方法と同様に反応・処理して表1に示す化合物を得た。
【0134】
【表1】

【0135】
参考例5
【0136】
【化18】

【0137】
[工程1]:エチル N−メチルグリシネート塩酸塩8.28gのジクロロメタン(150ml)懸濁液に氷冷下でトリエチルアミン37.5mlを加えた。反応混合物にJ. Heterocyclic. Chem. 41, 435 (2004) に記載の方法に準じて製造したメチル 3−クロロ−2−(クロロスルホニル)ベンゾエート14.5gを加え、室温で4時間攪拌後、10%クエン酸水溶液100mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(2:1)で溶出・精製し、メチル 3−クロロ−2−[(2−エトキシ−2−オキソエチル)(メチル)スルファモイル]ベンゾエート13.6gを油状物として得た。
【0138】
[工程2]:窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン12.0mlをTHF100mlに溶解し、−78℃冷却下でn−ブチルリチウム(2.67mol/l ヘキサン溶液)32.0mlを加え、0℃で30分間攪拌後、再度−78℃に冷却した。反応混合物に上記で得られたメチル 3−クロロ−2−[(2−エトキシ−2−オキソエチル)(メチル)スルファモイル]ベンゾエート13.6gのTHF(100ml)溶液を40分かけて滴下し、−78℃で4.5時間攪拌した。反応混合物を0℃に昇温し、10%クエン酸水溶液50mlを加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、反応混合物を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(2:1)で精製し、エチル 8−クロロ−4―ヒドロキシ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド3.44gを粗結晶として得た。
【0139】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.43 (t, 3H), 3.05 (s, 3H), 4.42 (q, 2H), 7.59-7.70 (m, 2H), 7.96-7.99 (m, 1H), 12.1 (s, 1H).
【0140】
参考例6−9
対応する原料化合物を用い、参考例5に記載の方法と同様に反応・処理して表2に示す化合物を得た。
【0141】
【表2】

【0142】
参考例10
【0143】
【化19】

【0144】
エチル 4−ヒドロキシ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド10.0gの無水ジクロロメタン(100ml)溶液に、氷冷下でピリジン8.6ml及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物7.1mlを加え、室温で終夜攪拌した。反応混合物を10%クエン酸水溶液50ml及び飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(4:1)で溶出・精製し、エチル 2−メチル−4−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド14.3gを粗結晶として得た。
【0145】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.44 (t, 3H), 3.22 (s, 3H), 4.46 (q, 2H), 7.71-7.85 (m, 3H), 7.91-7.93 (m, 1H).
【0146】
参考例11−15
対応する原料化合物を用い、参考例10に記載の方法と同様に反応・処理して表3に示す化合物を得た。
【0147】
【表3】

【0148】
参考例16
【0149】
【化20】

【0150】
参考例10で得られたエチル 2−メチル−4−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド19.6gのDMF(200ml)溶液に、トリフェニルホスフィン4.95g、トリエチルシラン7.5ml及び酢酸パラジウム(II)1.06gを加え、アルゴン雰囲気下70℃で終夜攪拌した。反応混合物を室温まで冷却後、減圧留去し、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(4:1)で溶出・精製し、エチル 2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート
1,1−ジオキシド9.66gを粗結晶として得た。
【0151】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.42 (t, 3H), 3.26 (s, 3H), 4.39 (q, 2H), 7.55-7.57 (m, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.62-7.69 (m, 2H), 7.91-7.93 (m, 1H).
【0152】
参考例17−21
対応する原料化合物を用い、参考例16に記載の方法と同様に反応・処理して表4に示す化合物を得た。
【0153】
【表4】

【0154】
参考例22
【0155】
【化21】

【0156】
参考例10で得られたエチル 2−メチル−4−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド1.00gのTHF(20ml)溶液に、メチルボロン酸0.22g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.28g及び2mol/l炭酸ナトリウム水溶液2mlを加え、窒素雰囲気下で18時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却後、水20mlを加え、酢酸エチル60mlで抽出した。抽出液を飽和食塩水30mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(4:1)で溶出・精製し、エチル 2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド584mgを油状物として得た。
【0157】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.42 (t, 3H), 2.53 (s, 3H), 3.05 (s, 3H), 4.40 (q, 2H), 7.60-7.73 (m, 3H), 7.88-7.91 (m, 1H).
【0158】
参考例23及び24
対応する原料化合物を用い、参考例22に記載の方法と同様に反応・処理して表5に示す化合物を得た。
【0159】
【表5】

【0160】
参考例25
【0161】
【化22】

【0162】
参考例16で得られたエチル 2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド4.00gのDMF(200ml)溶液に、N−ブロモスクシンイミド7.99gを加え、窒素雰囲気下70℃で終夜攪拌した。反応混合物を室温まで冷却後、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1)で溶出・精製し、エチル 4−ブロモ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド4.04gを粗結晶として得た。
【0163】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.44 (t, 3H), 3.21 (s, 3H), 4.46 (q, 2H), 7.61-7.67 (m, 1H), 7.70-7.76 (m, 1H), 7.86-7.89 (m, 1H), 7.98-8.02 (m, 1H).
【0164】
参考例26
【0165】
【化23】

【0166】
参考例17で得られたエチル 2−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド3.46gのTHF−水(1:1、40ml)溶液に、水酸化リチウム・1水和物0.74gの水(40ml)溶液及びメタノール40mlを加え、室温で1時間攪拌した。反応混合物に、AMBERLITE(登録商標)IR−120 PLUS (H)を加え、溶液をpH4とした後、濾過し濾液を濃縮し、有機溶媒を留去した。析出した結晶をろ取し、2−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボン酸 1,1−ジオキシド2.28gを粗結晶として得た。
【0167】
1H-NMR (CDCl3)δ:0.60-0.68 (m, 3H), 1.33-1.43 (m, 2H), 2.86 (br, 1H), 3.80-3.93
(m, 2H), 7.55-7.76(m, 4H), 7.85-7.95 (m, 1H).
【0168】
参考例27−34
対応する原料化合物を用い、参考例26に記載の方法と同様に反応・処理して表6に示す化合物を得た。
【0169】
【表6】

【0170】
参考例35
【0171】
【化24】

【0172】
J. Org. Chem. 39, 1554 (1974)に記載の方法に準じて製造した4−ヒドロキシ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド6.6g及び五塩化リン10.8gの混合物を、110℃で3時間加熱した。反応混合物をクロロホルム100mlに溶解し、該クロロホルム溶液を氷水100mlに加え、炭酸ナトリウムを徐々に加えてpH8〜9とし、クロロホルム層を抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をエタノールで結晶化し、4−クロロ−3−シアノ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド3.92gを粗結晶で得た。
【0173】
1H-NMR (CDCl3)δ:3.44 (s, 3H), 7.75-7.84 (m, 2H), 7.95-7.99 (m, 2H).
【0174】
参考例36
【0175】
【化25】

【0176】
エチル 4−ヒドロキシ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド20.0g及び五塩化リン29.4gの混合物を、135℃で2時間攪拌した。反応混合物を冷却後、トルエン10mlで2回共沸し、4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボニルクロリド 1,1−ジオキシド21.2gを粗結晶で得た。
【0177】
参考例37
【0178】
【化26】

【0179】
[工程1]:エチル 6−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド4.50g及び五塩化リン6.84gの混合物を、135℃で2時間攪拌した。反応混合物を冷却後、トルエン10mlで2回共沸し、4−クロロ−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボニルクロリド 1,1−ジオキシド4.63gを粗結晶で得た。
【0180】
[工程2]:4−クロロ−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボニルクロリド 1,1−ジオキシド4.63gのメタノール(50ml)懸濁液に、トリエチルアミン6.2mlを加え、室温で13時間攪拌した。反応混合物に10%クエン酸水溶液50mlを加え、酢酸エチル100mlで抽出した。抽出液を飽和食塩水50mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1)で溶出・精製し、メチル 4−クロロ−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド2.63gを結晶として得た。
【0181】
[工程3]:メチル 4−クロロ−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシレート 1,1−ジオキシド2.63gのTHF(15ml)溶液に、水酸化リチウム・1水和物1.08gの水(15ml)溶液及びメタノール15mlを加え、室温で18時間攪拌した。反応混合物にAMBERLITE(登録商標)IR−120 PLUS (H)を加え、溶液をpH4とした後、濾過した。濾液を濃縮し、4−クロロ−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボン酸 1,1−ジオキシド2.51gを結晶として得た。
【0182】
実施例1
4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0183】
【化27】

【0184】
参考例36で得られた4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボニルクロリド 1,1−ジオキシド21.0gの無水ジクロロメタン(100ml)溶液に、氷冷下でヘキサメチルジシラザン44.8mlの無水ジクロロメタン(100ml)溶液を滴下した。反応混合物を室温で終夜攪拌した後、メタノール20mlを加え、30分間攪拌した後、5%硫酸水溶液で2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣を含水エタノールから再結晶し、4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド6.50gを結晶として得た。
【0185】
1H-NMR (DMSO-d6) δ:3.20 (s, 3H), 7.75-7.92 (m, 2H), 7.94 (s, 2H), 8.20 (br, 1H), 8.38 (br, 1H).
【0186】
実施例2−5
対応する原料化合物を用いて参考例36及び実施例1と同様に反応・処理し、表7に示す化合物を得た。
【0187】
【表7】

【0188】
実施例6
4−クロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0189】
【化28】

【0190】
参考例36で得られた4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボニルクロリド 1,1−ジオキシド5.30gのTHF(30ml)溶液に、氷冷下で70%エチルアミン水溶液11.3mlを滴下し、室温で2時間攪拌した。反応混合物に水50mlを加え、酢酸エチル100mlで抽出し、10%クエン酸水溶液50mlで洗浄した。さらに、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をトルエンから再結晶し、4−クロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド1.70gを結晶として得た。
【0191】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.28 (t, 3H), 3.14 (s, 3H), 3.50 (q, 2H), 6.37 (br, 1H), 7.64-7.78 (m, 2H), 7.88-8.00 (m, 2H).
【0192】
実施例7−37
対応する原料化合物を用い、参考例36及び実施例6と同様に反応・処理し、表8に示す化合物を得た。
【0193】
【表8】

【0194】
【表9】

【0195】
【表10】

【0196】
【表11】

【0197】
【表12】

【0198】
実施例38
4−クロロ−2−メチル−3−(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド 1塩酸塩
【0199】
【化29】

【0200】
対応する原料を用いて実施例6と同様の方法で反応・処理し、4−クロロ−2−メチル−3−(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシドを油状物として得た。該化合物250mgを酢酸エチル5mlに溶解し、4mol/l塩化水素/酢酸エチル(5ml)溶液を加え、室温で7時間攪拌した後に、析出した結晶を濾取した。ジイソプロピルエーテル10mlで洗浄し、4−クロロ−2−メチル−3−(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド 1塩酸塩266mgを結晶として得た。
【0201】
1H-NMR (DMSO-d6)δ:2.82 (s, 3H), 3.00-3.25 (m, 4H), 3.36 (s, 3H), 3.40-3.70 (m,2H), 3.92 (brs, 1H), 4.52 (brs, 1H), 7.78-7.86 (m, 1H), 7.90-8.00 (m, 3H), 11.0 (br s, 1H).
【0202】
元素分析:C15H19Cl2N3O3S(392.30): 計算値 C 45.92, H 4.88, N 10.71, S 8.17, Cl 18.07; 実測値 C 45.97, H 4.90, N 10.70, S 8.10, Cl 17.82.
【0203】
実施例39
N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0204】
【化30】

【0205】
実施例6で得られた4−クロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド0.51gのエタノール(25ml)溶液に、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液0.85ml及び10%パラジウム−炭素50mgを加え、常圧で水素雰囲気下、接触還元に付し、15時間室温で攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣を含水エタノールより再結晶し、N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド0.39gを結晶として得た。
【0206】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.27 (t, 3H), 2.96 (s, 3H), 3.48 (q, 2H), 6.63 (br, 1H), 7.51-7.69 (m, 5H).
【0207】
実施例40−57
対応する原料化合物を用い、実施例39と同様に反応・処理し、表9に示す化合物を得た。
【0208】
【表13】

【0209】
【表14】

【0210】
【表15】

【0211】
実施例58
2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0212】
【化31】

【0213】
参考例30で得られた2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボン酸 1,1−ジオキシド479mgの無水ジクロロメタン(20ml)懸濁液に、オキサリルクロリド130mgを加え、室温で1時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、トルエン10mlで共沸後、残渣を無水THF20mlに溶解し、ヘキサメチルジシラザン1.2mlを加え、室温で5時間攪拌した。反応混合物にメタノール5ml及び10%硫酸20mlを加え、酢酸エチル30mlで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣を酢酸エチルから再結晶し、2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド280mgを結晶として得た。
【0214】
1H-NMR (CDCl3)δ:2.54 (s, 3H), 2.95 (s, 3H), 5.83 (br, 1H), 6.66 (br, 1H), 7.61-7.66 (m, 1H), 7.71-7.73 (m, 2H), 7.90-7.92 (m, 1H).
【0215】
実施例59−61
対応する原料化合物を用い、実施例58の方法と同様に反応・処理し、表10に示す化合物を得た。
【0216】
【表16】

【0217】
実施例62
2,4−ジメチル−N−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0218】
【化32】

【0219】
参考例30で得られた2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボン酸 1,1−ジオキシド450mgのジクロロメタン(15ml)懸濁液に、1mol/l オキサリルクロリド ジクロロメタン溶液3.6mlを加えた後、室温で1時間攪拌した。反応混合物を濃縮後、残渣をトルエンに懸濁させて共沸し、乾固させた。得られた粗結晶のTHF(15ml)溶液に、70%エチルアミン水溶液1.2mlを加え、室温で終夜攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後に、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。粗結晶をジイソプロピルエーテルで洗浄し、2,4−ジメチル−N−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド378mgを結晶として得た。
【0220】
1H-NMR (CDCl3)δ:1.26 (t, 3H), 2.51 (s, 3H), 2.90 (s, 3H), 3.43-3.50 (m, 2H), 6.70 (br, 1H), 7.59-7.64 (m, 1H), 7.70-7.71 (m, 2H), 7.89-7.91 (d, 1H).
【0221】
実施例63−70
対応する原料化合物を用い、実施例62の方法と同様に反応・処理し、表11に示す化合物を得た。
【0222】
【表17】

【0223】
【表18】

【0224】
実施例71
2,4−ジメチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0225】
【化33】

【0226】
参考例30で得られた2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボン酸 1,1−ジオキシド400mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩484mg、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール 一水和物341mg及びメチルアミン塩酸塩213mgのDMF(10ml)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.10mlを加え、室温で終夜攪拌した。反応混合物に10%クエン酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(1:1)で溶出・精製し、2,4−ジメチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド334mgを結晶として得た。
【0227】
1H-NMR (CDCl3)δ:2.52 (s, 3H), 2.88 (s, 3H), 2.99 (d, 3H), 6.74 (br, 1H), 7.59-7.64 (m, 1H), 7.71-7.72 (m, 2H), 7.89-7.91(m, 1H).
【0228】
実施例72−83
対応する原料化合物を用い、実施例71の方法と同様に反応・処理し、表12に示す化合物を得た。
【0229】
【表19】

【0230】
【表20】

【0231】
実施例84
4−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド
【0232】
【化34】

【0233】
[工程1]:参考例35で得られた4−クロロ−3−シアノ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド950mgのDMF(10ml)溶液に、フッ化カリウム433mgを加え、150℃で3.5時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却後、水30mlを加え、酢酸エチル50mlで抽出した。抽出液を10%硫酸水溶液30ml及び飽和食塩水30mlで洗浄し、抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン−酢酸エチル(2:1)で溶出・精製し、3−シアノ−4−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド676mgを粗結晶として得た。
【0234】
[工程2]:上記で得られた3−シアノ−4−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド228mgと90%硫酸10mlの混合物を、90℃で4時間攪拌した。反応混合物に氷水50mlを加え、20分間攪拌後、析出した結晶を濾取した。水で洗浄し、4−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド182mgを結晶として得た。
【0235】
1H-NMR (CDCl3)δ:3.00 (d, 3H), 7.82-7.94 (m, 4H), 7.98 (br, 1H), 8.06 (br, 1H).
【0236】
実施例85
4−クロロ−6−シクロプロピルアミノ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド
【0237】
【化35】

【0238】
実施例32で得られた6−ブロモ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド494mg、ナトリウム t−ブトキシド125mg、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)11.9mg及び(±)−2、2’−ビス−ジフェニルホスフィノ−1、1’−ビナフタレン16.2mgのトルエン(4.0ml)溶液に、シクロプロピルアミン0.14mlを加え、7.5時間80℃で攪拌した。反応混合物を冷却後、ジエチルエーテル100mlを加え攪拌後、反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチルで溶出・精製し、4−クロロ−6−シクロプロピルアミノ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド276mgを結晶として得た。
【0239】
1H-NMR(CDCl3)δ:0.56 (t, 2H), 0.85 (q, 2H), 2.50-2.52 (m, 1H), 3.13 (s, 3H), 3.14 (s, 3H), 3.22 (s, 3H), 4.73 (br, 1H), 6.87 (q, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.65 (d, 1H).
【0240】
実施例86
6−アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩
【0241】
【化36】

【0242】
[工程1]:実施例32で得られた6−ブロモ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド413mg、N−t−ブトキシカルボニルアミン161mg、炭酸セシウム498mg、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム9.91mg及び4,5−ビスジフェニルホスフィノ−9,9−ジメチルキサンテン9.45mgのジオキサン(3.0ml)溶液を、100℃で16.5時間攪拌した。反応混合物を冷却後、ジエチルエーテル100mlを加え攪拌後、反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチルで溶出・精製し、6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド544mgを結晶として得た。
【0243】
1H-NMR(CDCl3)δ:1.54 (s, 9H), 3.13 (s, 3H), 3.14 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 6.98 (br, 1H), 7.69 (q, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.83 (d, 1H).
【0244】
[工程2]:6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド529mgの4N塩酸−ジオキサン(5.0ml)溶液を、室温で2時間攪拌した。反応混合液を濃縮後、得られた粗結晶をジエチルエーテルで洗浄し、6−アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩318mgを結晶として得た。
【0245】
1H-NMR (DMSO-d6)δ:3.01 (s, 6H), 3.09 (s, 3H), 5.89 (br, 2H), 6.79 (q, 1H), 6.93 (d, 1H), 7.55 (d, 1H).
【0246】
実施例87
7−アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩
【0247】
【化37】

【0248】
対応する原料化合物を用い、実施例86に記載の方法と同様に反応・処理して化合物を得た。
【0249】
1H-NMR(DMSO-d6)δ:2.99 (s, 3H), 3.02 (s, 3H), 3.05 (s, 3H), 6.95-6.98 (m, 1H), 7.03 (d, 1H), 7.53 (d, 1H)
【0250】
実施例88
4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−6−メチルアミノ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩
【0251】
【化38】

【0252】
[工程1]:実施例32で得られた6−ブロモ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド305mg、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチルアミン132mg、炭酸セシウム380mg、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)8.00mg及び4,5−ビスジフェニルホスフィノ−9,9−ジメチルキサンテン7.01mgのジオキサン(2.0ml)溶液を、100℃で18時間攪拌した。反応混合物を冷却後、ジエチルエーテル100mlを加え攪拌後、反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチルで溶出・精製し、6−(N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル)アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド381mgを結晶として得た。
【0253】
1H-NMR(CDCl3)δ:1.49 (s, 9H), 3.14 (s, 3H), 3.14 (s, 3H), 3.27 (s, 3H), 3.34 (s, 3H),7.53 (q, 1H), 7.76 (d, 1H), 7.83 (d, 1H).
【0254】
[工程2]:6−(N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル)アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド306mgの4N塩酸−ジオキサン(3.0ml)溶液を、室温で2時間攪拌し、反応混合物を濃縮し、乾固させた。得られた粗結晶をジエチルエーテルで洗浄し、4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−6−メチルアミノ−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩207mgを結晶として得た。
【0255】
1H-NMR (DMSO-d6)δ:2.77 (d, 3H), 3.01 (s, 6H), 3.10 (s, 3H), 6.78-6.80 (m, 2H), 6.90-6.95 (m, 1H), 7.60 (d, 1H).
【0256】
試験例
以下に、本発明の代表的化合物の薬理試験結果を示し、該化合物についての薬理作用を説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0257】
抗てんかん薬の評価には、一般的に最大電撃痙攣モデル(MES)評価、皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価及びラット扁桃核キンドリングモデル評価が用いられる。これらのモデルにおいて抗痙攣作用を示す化合物は、臨床において抗てんかん薬として期待される。また、MES評価とscPTZ評価いずれにおいても抗痙攣作用を示す化合物は、部分発作及び全般発作に対して広い抗てんかんスペクトルを示すことが期待され、臨床上有用な治療薬となり得る。
【0258】
試験例1:最大電撃痙攣モデル(MES)評価
本試験は、薬物の抗痙攣作用を評価する試験である。この試験で用いる動物モデルは、全般性強直間代発作や二次性全般化部分発作の表現系である。Slc:ddY系雄性マウス(一群3匹、体重20〜30g)に被験化合物400及び100mg/kgを経口投与し、1時間後に角膜より電気刺激(60Hz,25mA,0.2秒間)を与え、誘発される後肢の強直性伸展痙攣の発現抑制を観察した。なお、コントロールは0.5%トラガント液を投与した。結果を以下の表13に示す。
【0259】
試験例2:皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価
本試験は、試験例1と同様に薬物の抗痙攣作用を評価する試験である。この試験で用いる動物モデルは、試験例1の表現系とは異なり、全般性の欠神発作やミオクロニー発作の表現系である。Slc:ddY系雄性マウス(一群3匹、体重20〜30g)に被験化合物400及び100mg/kgを経口投与し、1時間後にペンテトラゾール85mg/kgを皮下投与した。その後、30分間における間代性痙攣の発現の有無を観察した。なお、コントロールは0.5%トラガント液を投与した。結果を以下の表13に示す。
【0260】
【表21】

【0261】
【表22】

【0262】
【表23】

【0263】
表13に示すように、本発明の化合物は経口投与で最大電撃痙攣モデル(MES)評価及び皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価において抗痙攣作用を示した。実施例6、10、22、28、40、44、45、47、48、56、76、79及び86の化合物は、両評価において強い抗痙攣作用を示した。
【0264】
試験例3:ラット扁桃核キンドリングモデル評価
本試験は、薬物の抗痙攣作用を評価する試験である。この試験で用いる動物モデルは、焦点性の単純部分発作、複雑部分発作及び二次性全般化部分発作の臨床所見に類似する動物モデルとして、一般的に用いられる。Slc:Wistar系雄性ラット(体重170〜220g)の大脳皮質、視床、扁桃核に慢性電極を留置し、術後1週間目より扁桃核へ1日1回、2週間前後にわたり電気刺激(50Hz,400μA,1秒)を与えた。刺激条件は、Loscherらの方法[Epilepsy Res., 40:63-77(2000)]に従った。また、Racineらの方法[Motor seizure. Electroenceph. Clin. Neurophysiol., 32:281-294(1972)]に基づいた発作重症度stage5の発作が連続10回発現するまで刺激を継続し、モデルを完成させた。完成したモデルに、試験化合物を各々100mg/kgを経口投与し、投与1時間後に、発作が誘発される閾値刺激電流(発作閾値)、脳波上に認められる後発射の持続時間(後発射時間)及び発作重症度(stage score 1〜5)を指標に評価した。発作閾値ならびに後発射時間は試験化合物投与前の各値に対する変化率で表した。なお、コントロールは0.5%トラガント液を投与した。結果を表14に示す。
【0265】
【表24】

【0266】
表14に示すように、実施例1、6、13及び40の化合物は100mg/kgの経口投与でラット扁桃核キンドリングモデルの指標に対して有効性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0267】
以上で説明したように、本発明の化合物は、抗てんかん薬の評価モデルである最大電撃痙攣モデル(MES)評価、皮下注射ペンテトラゾールモデル(最小痙攣モデル、scPTZ)評価及びラット扁桃核キンドリングモデル評価において強い抗痙攣作用を示す。したがって、本発明の化合物は抗てんかん薬(例えば、単純部分発作、複雑部分発作及び意識消失を伴う持続的な二次性全般化発作を含む部分発作、欠神発作、ミオクロニー発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、脱力発作、West症候群及びLennox-Gastaut症候群等の全般発作に対する予防薬及び/又は治療薬)として有用である。加えて、本発明の化合物は未だ薬物治療が奏功しない難治性てんかん発作に対する予防及び/又は治療薬としても期待される。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】


[式中、
環Arは、ベンゼン環又はチオフェン環を表し、
は、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、
は、水素原子又はC1−4アルキルを表し、
は、フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−4アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC1−6アルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−4アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC3−6シクロアルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−4アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC4−6シクロアルキルアルキル;又は水素原子を表すか、或いは
とRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜4個のカルボニルで置換されていてもよい4〜8員の飽和含窒素へテロ環(ここにおいて、該飽和含窒素ヘテロ環は1〜4個のC1−4アルキルで置換されてもよい。)を形成し、
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はC4−6シクロアルキルアルキルを表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−4アルキル、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、C4−6シクロアルキルアルキルアミノ又はアミノを表す]
で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項2】
環Arが、ベンゼン環又はチオフェン環であり、
が、C1−3アルキル、C3−5シクロアルキル又はC4−5シクロアルキルアルキルであり、
が、水素原子又はC1−3アルキルであり、
が、フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC1−5アルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC3−5シクロアルキル;フッ素原子、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシからなる群から選ばれる1〜3個の原子又は基で置換されていてもよいC4−5シクロアルキルアルキル;又は水素原子であるか、或いは
とRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1個のカルボニルで置換されていてもよい4〜7員の飽和含窒素へテロ環(ここにおいて、該飽和含窒素ヘテロ環は1〜4個のC1−3アルキルで置換されてもよい。)を形成し、
が、水素原子、ハロゲン原子、C1−3アルキル又はC3−5シクロアルキルであり、
が、水素原子、ハロゲン原子、ジ(C1−3アルキル)アミノ、C1−3アルキルアミノ、C3−5シクロアルキルアミノ又はアミノである、
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
環Arが、ベンゼン環又はチオフェン環であり、
が、C1−3アルキル、シクロプロピル及びシクロプロピルメチルであり、
が、水素原子、メチル又はエチルであり、
が、1〜3個のフッ素原子若しくは1個のメトキシで置換されていてもよいC1−4アルキル;シクロプロピル;シクロプロピルメチル;又は水素原子であるか、或いは
とRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、N−メチルピペラジン環、オキソピペラジン環、アゼチジン環又はモルホリン環を形成し、
が、水素原子、ハロゲン原子、C1−3アルキル又はシクロプロピルであり、
が、水素原子、ハロゲン原子、メチルアミノ、シクロプロピルアミノ又はアミノである、
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
環Arが、ベンゼン環であり、
が、メチル、エチル、シクロプロピル又はシクロプロピルメチルであり、
が、水素原子又はメチルであり、
が、1〜3個のフッ素原子若しくは1個のメトキシで置換されていてもよいC1−4アルキル;シクロプロピル;シクロプロピルメチル;又は水素原子であり、
が、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル、エチル又はシクロプロピルであり、
が、水素原子、ハロゲン原子又はアミノである、
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
環Arが、ベンゼン環であり、
が、メチル、エチル、シクロプロピル又はシクロプロピルメチルであり、
が、水素原子又はメチルであり、
が、C1−4アルキル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル又は水素原子であり、
が、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル又はエチルであり、
が、水素原子である、
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−2−シクロプロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−シクロプロピル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−ブチル−4−クロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−2−メチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−(2−メトキシエチル)−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−シクロプロピルメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−2−エチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−エチル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−エチル−2−エチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−2−シクロプロピル−N−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−2−シクロプロピル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4,8−ジクロロ−N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−シクロプロピル−4,8−ジクロロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
6−ブロモ−4−クロロ−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
7−ブロモ−4−クロロ−N−シクロプロピルメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−2−メチル−3−(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル−2H−1,2ベンゾチアジン 1,1−ジオキシド 1塩酸塩、
N−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2−メチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−シクロプロピル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−シクロプロピルメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−(2−フルオロエチル)−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−(2,2−ジフルオロエチル)−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2−エチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N,N−ジメチル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−エチル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N−シクロプロピル−2−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−ブロモー2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2,4−ジメチル−N−エチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−ブロモ−2−メチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−ブロモ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−クロロ−N−エチル−6−フルオロ−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
8−クロロ−N−シクロプロピル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2,4−ジメチル−N−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N,N−ジメチル−2,4−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2,4−ジメチル−N−プロピル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−エチル−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N,N−ジメチル−4−エチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
4−ブロモ−N−メチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
2−シクロプロピルメチル−N,N−ジメチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、
N,N−ジメチル−2−メチル−2H−チエノ[2,3−e][1,2]チアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド、及び
6−アミノ−4−クロロ−N,N−ジメチル−2−メチル−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド 1,1−ジオキシド 1塩酸塩、
からなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする抗てんかん薬。

【公開番号】特開2010−173960(P2010−173960A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17447(P2009−17447)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】