説明

3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製方法およびそのクエン酸塩

【課題】3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを安定にかつ工業的に有利な方法により精製できる方法の提供。
【解決手段】メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される少なくとも1つの溶媒の存在下、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とを接触させて3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を調製する工程、該クエン酸塩を晶析させる工程、固液分離により晶析したクエン酸塩を取得する工程、および取得したクエン酸塩を塩基で処理して3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを遊離化した後、単離する工程を含む、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン等の3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンは医薬中間体として有用な化合物であり、これまで種々合成法が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/055858号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製方法は具体的に記載されていない。蒸留による精製が考えられるが、化合物の安定性の点から、高真空で蒸留する設備が必要と想定されるため、工業的には問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを安定にかつ工業的に有利な方法により精製できる方法について、鋭意検討した結果、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンをクエン酸塩とすることにより、安定にかつ工業的に適した操作(特に濾過性)で3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを精製できることを見出し、本発明を完成した。なお、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩は新規な塩である。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される少なくとも1つの溶媒の存在下、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とを接触させて3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を調製する工程、該クエン酸塩を晶析させる工程、固液分離により晶析したクエン酸塩を取得する工程、および取得したクエン酸塩を塩基で処理して3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを遊離化した後、単離する工程を含む、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製方法。
[2]3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンが光学活性である、上記[1]に記載の方法。
[3]3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩。
[4](S)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩。
[5](R)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンをクエン酸塩とすることにより、安定にかつ工業的に適した操作(特に濾過性)で3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを精製できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施例1で得られた(S)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩のNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンは、特許文献1に記載の方法等によって製造できる。また、光学活性な3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンも同様の方法で製造することができる。
【0009】
本発明では、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製は、以下の工程により行う。
メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される少なくとも1つの溶媒の存在下、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とを接触させて3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を調製する工程(工程(1))、該クエン酸塩を晶析させる工程(工程(2))、固液分離により晶析したクエン酸塩を取得する工程(工程(3))、および取得したクエン酸塩を塩基で処理して3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを遊離化した後、単離する工程(工程(4))。
各工程について説明する。
【0010】
工程(1)は、溶媒の存在下、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とを接触させて、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を調製する工程である。
【0011】
この接触は、溶媒、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンおよびクエン酸を混合することにより行われ、その混合順序は3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とが十分接触する限り、特に限定されない。
また、混合は、予め、溶媒と3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとから3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン溶液を、溶媒とクエン酸とからクエン酸溶液をそれぞれ調製し、これらの溶液を混合することにより行うことが好ましい。
【0012】
ここで、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを十分溶解するため、溶媒の温度を所定の温度に調整した後、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを溶解してもよい。3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン溶液とクエン酸溶液とを混合する際には、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン溶液をクエン酸溶液に添加してもよいし、クエン酸溶液を3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン溶液に添加してもよいが、前者が好ましい。また、混合は滴下により行うことが好ましい。また、混合する温度は、使用する溶媒の沸点以下、好ましくは25〜65℃の範囲である。
【0013】
クエン酸は、通常市販の1水和物、無水和物いずれでも使用することができる。
クエン酸の使用量は、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン1モルに対して、1〜1.3モルの範囲が好ましい。
【0014】
工程(1)に使用する溶媒としては、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、メタノールとイソプロパノールとの混合溶媒、またはエタノールである。ここで、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン溶液とクエン酸溶液とを混合する場合、各溶液の調製に上記溶媒が使用され、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン溶液の調製にはイソプロパノールまたはエタノールを、クエン酸溶液の調製にはメタノールまたはエタノールを使用することが特に好ましい。
【0015】
工程(1)に使用する溶媒の使用量は、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とがそれぞれ溶解する程度であればよいが、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの溶解には該化合物1重量部に対して、4〜7重量倍の範囲が好ましい。クエン酸の溶解にはクエン酸1重量部に対して、3.5〜7重量倍の範囲が好ましい。
【0016】
かくして、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸が十分接触して、塩が形成される。ここでいう塩とは、例えば、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとしてラセミ体の3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを使用した場合は、ラセミの3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩であり、(S)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの場合は、(S)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩であり、(R)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの場合は、(R)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩である。
【0017】
工程(2)は、工程(1)で得られた混合物中の3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を晶析させる工程である。
なお、工程(1)において、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とを混合している途中で、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩が析出する場合は、工程(1)および工程(2)を同時に実施することができる。また、必要に応じて、工程(1)で得られた混合物を冷却して3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を晶析させてもよい。あるいは、工程(1)で混合物を得るときには、均質な溶液になるように溶媒の沸点以下の温度で保温しておき、工程(2)では、該混合物を0〜25℃の温度範囲、好ましくは0〜10℃の温度範囲まで冷却することにより、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を晶析させてもよい。なお、工程(2)で該混合物を冷却する場合、最終的に得られる3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩の化学純度や光学純度の観点からは徐々に冷却することが好ましい。冷却の速度としては、1〜25℃/時間が好ましく、5〜15℃/時間がより好ましい。また、晶析効率を高めるために、目的とする3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩の結晶を予め準備しておき、これを種晶として使用することもできる。
【0018】
工程(3)は、工程(2)で得られた混合物中から、固液分離により、晶析した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を取得する工程である。
固液分離には、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の分離操作を具体的に挙げることができる。また、分離操作により取得した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を必要に応じて、適切な溶媒で洗浄することもできる。
かくして3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を固体として取り出すことができる。
工程(3)においては、上述の固液分離により、充分純度の高い3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を得ることができる。3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩は濾過性が良好という効果もあり、この点からも工業的製法として有用である。得られた3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩は、より純度を高めるために、再結晶等の精製操作を行ってもよい。
【0019】
工程(4)は、工程(3)で取得した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を塩基で処理して3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを遊離化した後、単離する工程である。
工程(3)で取得した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩においては、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンがクエン酸と塩形成しているので、適当な塩基で処理することにより、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを遊離化することができる。以下、このような3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの遊離化に関して説明する。
【0020】
かかる塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコラート、第三級アミンが使用可能である。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコラートとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる
第三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。
塩基の使用量は、その種類にもよるが、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩1モルに対して、3〜4モルの範囲が好ましく、後述する、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩と塩基との接触がpH12以上の条件下で行われるような量でよい。
【0021】
工程(3)で取得した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を塩基で処理するには、該3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩と塩基とを溶媒存在下に接触させるとよい。ここで使用する溶媒としては、水、1−ブタノール等のアルコール溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられ、中でも、水と1−ブタノールとの混合溶媒が好ましい。該溶媒の使用量は、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩1gに対して、1〜10mLの範囲が好ましい。
【0022】
3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩と塩基とを接触させる際の温度は、0〜30℃の範囲が好ましい。
接触時間は1分〜24時間の範囲から選択される。
【0023】
3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を塩基で処理した後の反応混合物には、遊離化した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸が含有され、該クエン酸は用いた塩基により塩を形成していることもある。該混合物から3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを単離するには、抽出、ろ過、濃縮等の処理操作を行えばよい。
【0024】
工程(4)の具体例として、抽出により3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを単離する操作を説明する。まず、工程(3)で取得した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩と溶媒とを混合して溶液または分散液とし、これに塩基を加えて塩基性(pH12以上が好ましい)とする。続いて、所定の温度で保温した後、水との相溶性が低い有機溶媒を加えて攪拌すると、有機溶媒層(有機層)に3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンが、水層にクエン酸と塩基とからなる塩が抽出される。その後、有機層と水層とが充分分離するまで静置した後、分液により有機層を取り出せば、当該有機層から3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを得ることができる。塩基で処理した後、水層に食塩等の無機塩を加えて、抽出してもよい。
抽出に使用する有機溶媒としては、例えば、ブタノール、ペンタノール等のC〜Cのアルコール類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できるが、中でも、ブタノールが好ましい。該有機溶媒の使用量は、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩1gに対して、1〜10mLの範囲が好ましい。
なお、必要により、有機層を水洗してもよい。また、前記分液で分離した水層から再度抽出操作を行って3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの収率を上げることもできる。かくして得られた有機層を濃縮することにより3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを単離することができる。
単離した3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンは、必要により、カラムクロマトグラフィー等の処理操作により精製してもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0026】
実施例1 (S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩
300mLの4つ口フラスコ内にクエン酸1水和物18.9g(89.8ミリモル)とメタノール100mLを仕込み、35℃に加温調整して溶解した。これとは別に、(S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジン18g(GC純度98.9%(面積百分率)、光学純度98.7%e.e)をイソプロパノール100mLに溶解した。この溶液を、35℃〜40℃にて先に調製したクエン酸のメタノール溶液に滴下した。同温度で1時間攪拌後、約10℃/1hで冷却し、5℃で3時間攪拌した。ブフナーロートにて晶析した結晶を濾取し、ケーキをイソプロパノール30mLで洗浄した。約200mLのスラリーをφ7cmのブフナーロートで濾過に要した時間は約40秒であった。バス温45℃で減圧乾燥1時間を実施したのち、真空ポンプで3時間掃引し、乾燥減量に変化がなくなったことを確認した。表題化合物の得量は24.8g、GC含量は99.6%、光学純度は99.5%e.eであった。融点:204.1〜207.8℃ NMRのチャートは図1の通りである。
IR:(KBr)cm−1 3440, 2986, 1736, 1656, 1553, 1482, 1443, 1368, 1305, 1280, 1227, 1171, 1126, 876, 569, 513
【0027】
<光学純度分析条件>
カラム:CHIRALCEL(登録商標)AS−RH(4.6×150mm,5μm)
移動相:A=水、B=アセトニトリル、A/B=60/40
流量:1.0mL/分
検出:UV254nm
保持時間:S体=12分、R体=11分
サンプル処理方法:THF2mL-15%苛性ソーダ水溶液1mLにサンプル10mgを溶解し、攪拌後分液した。THF層に0.2mLの水、トリエチルアミンを数滴添加し、3,5-ジニトロベンゾイルクロライド20mgを添加攪拌した。THF層を2滴採り、アセトニトリル1.5mLで希釈後、5μLをインジェクトした。
【0028】
<GC分析条件>
カラム:DB-5(SPL3.0)、スプリット比1/30
キャリアガス:ヘリウム(線速度:40cm/sec)
注入口:250℃
検出口:250℃
カラム温度:50℃(5分保持)→10℃/分、昇温→300℃(5分保持)
サンプル処理方法:tert-ブタノール2mL-15%苛性ソーダ水溶液1mLにサンプル10mgを溶解し、攪拌後分液した。tert-ブタノール層0.1mLを、tert-ブタノール1.5mLで希釈後、5μLをインジェクトした。
【0029】
実施例2 (S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジン
(S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩4g(10ミリモル)を1-ブタノール8mLと水4mLの混合溶液に溶解した。これに攪拌下、11.8%苛性ソーダ水溶液11.8g(35ミリモル)を加えpH12とした後、分液した。さらに分液した水層に1-ブタノール8mLを加えて再抽出を行い分液した。有機層を先の有機層と合わせ、重曹水で洗浄後、1-ブタノールを加熱下で減圧留去した。さらにトルエンを加え減圧濃縮し、1-ブタノールをトルエンに置換し、溶媒を濃縮乾固して、(S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジン2gを得た。収率は97.9%、光学純度は99.6%であった。光学純度分析条件は実施例1と同様である。
【0030】
比較例1
200mlの4つ口フラスコ内にフマル酸5.8g(50ミリモル)、イソプロパノール50mLを仕込み、35℃に加温調整して溶解した。これとは別に、(S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジン10g(光学純度95.9%)(50ミリモル)をイソプロパノール50mLに溶解し、35℃〜40℃にて先に調製したフマル酸のイソプロパノール溶液に滴下した。同温度で1時間攪拌後、約10℃/1hで冷却し、10℃で3時間攪拌した。ブフナーロートにて晶析した結晶を濾取し、ケーキをイソプロパノール15mLで洗浄した。約100mLのスラリーをφ7cmのブフナーロートで濾過に要した時間は約3時間であった。バス温40℃で減圧乾燥を1時間実施したのち、真空ポンプで3時間掃引し、乾燥減量に変化がなくなったことを確認した。表題化合物の得量は12.1g、光学純度は96.9%e.eであった。光学純度分析条件は実施例1と同様である。
【0031】
実施例3
フラスコにクエン酸1水和物190mgとエタノール1.5mLを仕込み、加温して溶解した。別に(S)-3-アミノ-1-tert-ブトキシカルボニルピペリジン180mgをエタノール1.5mLに溶解し、この溶液をクエン酸のエタノール溶液に滴下した。スラリーとなったので昇温して溶解し、室温で攪拌後、冷却し、約5℃で3時間攪拌した。晶析した結晶を濾取、乾燥して結晶280mgを得た。実施例1と同様に濾過性は問題なかった。収率は79.1%で、光学純度は実施例1と同様であった。
【0032】
比較例2
フマル酸の溶解のための溶媒をイソプロパノールの代わりにエタノールとしたこと以外は、比較例1と同様の条件で行ったところ、比較例1と同様に微細な結晶で、濾過性は悪かった
【0033】
比較例3
クエン酸の代わりにマレイン酸を用いたこと以外は、実施例3と同様の条件で行ったところ、結晶は生成しなかった。
【0034】
比較例4
クエン酸の代わりに蓚酸を用いたこと以外は、実施例3と同様の条件で行ったところ、ゼリー状〜シャーベット状の結晶で濾過はできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明から明らかなように、本発明の精製方法によれば、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンをクエン酸塩とすることにより、高真空設備等を使用せず、安定にかつ工業的に適した操作(特に濾過性)で3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを精製できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される少なくとも1つの溶媒の存在下、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンとクエン酸とを接触させて3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩を調製する工程、該クエン酸塩を晶析させる工程、固液分離により晶析したクエン酸塩を取得する工程、および取得したクエン酸塩を塩基で処理して3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンを遊離化した後、単離する工程を含む、3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンの精製方法。
【請求項2】
3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンが光学活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩。
【請求項4】
(S)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩。
【請求項5】
(R)−3−アミノ−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジンのクエン酸塩。

【図1】
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【公開番号】特開2011−63569(P2011−63569A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218047(P2009−218047)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】