説明

3−アリール−クマリン、又は3−アクリル−キノリン−2−オンから派生した抗増殖性の化合物、及びその使用

本発明は、3−アリール−クマリン、又は3−アリール−キノリン−2−オンから派生する分子であって、特に腫瘍細胞に対して抗増殖性及び/又は細胞毒性の活性を有する分子に関する。本発明は、多種の癌の治療のための、これら分子の治療への応用における使用にも関する。本発明では、癌治療を目的とする薬剤の製造のための前記化合物の使用も開示する。また、本発明は、本発明に係る化合物と前記細胞との接触を含む細胞増殖の阻害のための方法にも関わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、癌、及び腫瘍の治療に用いることができる抗増殖性の特性を有する化合物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、世界中で最も広まっている疾患の1つである。患者への治療法が進歩しているにもかかわらず、薬剤は、多くのケースでは効果が乏しく、劇的な副作用に耐えさせる治療は通常困難であるし、しばしば腫瘍の影響を受けた組織や器官の外科的切除を避けられない。患者の死は、いまだに高い頻度で発生している。
【0003】
特に、最近の腫瘍の診断及び治療の進歩にもかかわらず、依然として腫瘍細胞の進行及び転移は、腫瘍患者の発病及び死亡の大半の原因となっている。腫瘍の形成、進行、転移に寄与する機構の分子生物学的及び細胞生物学的な理解は、腫瘍研究の大きな挑戦であり、特に、腫瘍細胞の細胞増殖を抑制する機構の理解は必要とされる。
【0004】
今日まで使用されているほとんどの抗腫瘍剤は、プログラム細胞死又はアポトーシスとして知られる細胞の自殺を引き起こすための細胞内在性の医学生物学的な経路を活性化することにより、腫瘍細胞を殺すものである。アポトーシスは、遺伝的にプログラムされた細胞死である。アポトーシスは、正常発生の過程において、細胞の数と増殖の調節にも重要である。幾つかの化学治療法剤は、アポトーシスを直接的に誘導するのではないにもかかわらず、細胞毒性薬によって損傷を受けた細胞が辿る多種の経路の最終的な部分には、共通の経路としてしばしばプログラム細胞死がある。
【0005】
しかしながら、多くの悪性細胞は、アポトーシスの経路を調節する遺伝子の制御に欠陥を有して発生するため、このような細胞では化学療法に対する抵抗性を示す。多剤耐性遺伝子発現、化学療法剤の膜ポンプによる押し出し、腫瘍低酸素、腫瘍血管形成の減少、不都合な細胞周期動態を含む、多くのメカニズムは、従来用いられる化学療法剤の効果に対する非感受性の原因と提言されていた。化学療法効果と同様に、アポトーシスへの耐性は、腫瘍がプログラムされた老化や死を回避するメカニズムを介した別のメカニズムでもある。アポトーシスへの耐性の発達は、従来用いる化学療法剤への応答の悪化を導くことが報告されてきた。
【0006】
細胞がアポトーシスへ入る多くの経路があるにもかかわらず、FasLのような細胞表面の死受容体よりも、むしろ細胞カスパーゼ(cellular caspase)のシトクロムc(cytochrome c)活性化を担うミトコンドリアへの作用を介して、大多数の化学療法剤が細胞死を誘導することが明らかになっている。BCL−2ファミリータンパク質は、ミトコンドリアによるアポトーシス恒常性の主要な調節因子である。主にフォスファチジルイノシトール3(PI3)キナーゼシステムが主に担うリン酸化イベントの相互作用、及びアポトーシス促進性(pro−apoptotic)と抗アポトーシス性のBCL−2タンパク質との間で調整されるバランスは、細胞がプログラム細胞死へのプロセスに入るか回避するかを決定する。
【0007】
ガン原遺伝子であるBCL−2ファミリーは、アポトーシスのきわめて重要な調節因子であり、リンパ腫を含むヒトの腫瘍において、発現が変化する。Bcl−2は、B細胞の非ホジキンリンパ腫(non−Hodgkin‘s lymphoma,NHL)から、一般に認められる染色体の転位座が関与することにより、このファミリーの中で初めて同定されたメンバーである。
【0008】
Bcl−2ファミリーは、タンパク質の大きなファミリーであり、BCL−2ホモロジー(BH)領域として知られる幾つかのホモロジー(相同性)のある領域を共通して有する2つのサブファミリーに大別され、第1のクラスは抗アポトーシス性のものであり、第2のクラスはアポトーシス促進性のものである。これらたんぱく質の主要な活性機構は、ミトコンドリア膜の透過性の調節であると想定されている。BCL−2スーパーファミリーの中のアポトーシス促進性のメンバーは、ミトコンドリア膜の透過性を増加し、対して、BCL−2スーパーファミリーの中の抗アポトーシス性のメンバーは、このミトコンドリア膜の透過性増加に対して反対の作用をする。
【0009】
アポトーシス促進性のBCL−2ファミリーのメンバーには、Bax、Bak、Bad、Bcl−Xs、Bid、Bik、Bim、Hrkがあり、抗アポトーシス性のBCL−2ファミリーメンバーには、Bcl−2、Bcl−xL、Bcl−W、Bfl−1、Mcl−1がある。
【0010】
抗アポトーシス性のBCL−2ファミリーのメンバーは、シトクロム−cの放出をブロックすることによりアポトーシスに対するリプレッサーとして働き、対して、アポトーシス促進性のBCL−2ファミリーメンバーは、アポトーシスに対するプロモーターとして働く。BCL−2ファミリーのメンバーが、ミトコンドリア膜の透過性を調節する幾つかの想定される機構がある。
【0011】
BCL−2ファミリーの抗アポトーシス性のメンバーは、染色体の転位座なしに、多くの腫瘍において過剰に発現している。抗アポトーシス性BCL−2メンバーの発現の増加は、化学療法剤や放射線療法への耐性を引き起こし、逆に、抗アポトーシス性のBCL−2メンバーの発現の減少は、抗腫瘍剤に対するアポトーシスの応答を促進すると推察される。加えて、抗アポトーシス性メンバーのBcl−2の過剰な発現は、細胞周期のG期に細胞を蓄積させ、化学療法剤耐性に寄与する。
【0012】
抗アポトーシス性メンバーのBCL−2ファミリーの1つ、Bcl−xLに言及すると、過去に以下のことが証明された:
―Bcl−xLは主要な抗アポトーシス性のタンパク質である;
―Bcl−xL(及び他のBcL−2様たんぱく質群)が多くの腫瘍において過剰に発現していることが観察された;
―Bcl−xLの基底レベルの発現は、多様なクラスの抗腫瘍分子に対する化学療法剤耐性と強く相関している。
【0013】
したがって、Bcl−xLの抗アポトーシス性活性の低分子阻害剤は、単独又は既知の細胞毒性剤との組み合わせにより、広い範囲の腫瘍に対して抗腫瘍作用を発揮することが推測される。
【0014】
それゆえ、BCL−2ファミリータンパク質、特にBcL−xLは、薬剤デザインのための魅力的な標的となる。アポトーシス性の細胞死の中枢の調節因子として、抗腫瘍作用のためにBCL−2の機能を操作する論理は、腫瘍治療のために提案される分子レベルの目標の1つである。さらに、アポトーシス性のタンパク質の発現レベルの上昇は、あらゆるタイプのヒトの腫瘍において実際に証明されている。
【0015】
最初の試みは、BCL−2ホモロジー(BH)ファミリー内でのタンパク質−タンパク質相互作用を乱すことが中心となった。この課題の続く進展は、分子モデリングや創薬を生んだ。
【0016】
BCL−2ファミリータンパク質を標的とする以下の異なる分子群は、とりわけ前臨床試験中又は臨床試験中である。
【0017】
―ABT−737(Oltersdorf et al.,2005):標的分子:BcL−xL、BcL−2、Bcl−w。ABT−737は、小細胞肺癌(small cell lung carcinoma,SCLC)及びリンパ様細胞(lymphoid cell)のアポトーシスを誘導し、マウスモデルにおいてSCLCの腫瘍抑制を引き起こす。
【0018】
―IPI−983L(http://www.ipi.com/science bio.html):標的分子:Bcl−xL、Bcl−2。
【0019】
―Gossypol(Mohammad RM et al.,1995):標的分子:BCL−2様タンパク質。この分子は、肺癌及び前立腺癌の細胞株の増殖をインビトロ系(in vitro)において阻害することが示されている。
【0020】
―GX15−070(Contractor R. et al.及びGalan et al.):標的分子:BCL−2様タンパク質(BcL−w及びMCL−1との解離定数(Kd)は0.5mM以下)。この分子は、黒色腫、乳癌、肺癌、頸部腫瘤、前立腺癌、結腸癌の各腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されている。しかしながら、この分子は低い最大耐性量(MTD(Maximal tolerated dode);おおよそ16mg/kg)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者等は、現在、BcL−xLを標的とする新規の潜在的な抗腫瘍分子を得ている。この分子ファミリーは、3−アリール−クマリン又は3−アクリル−キノリン−2−オンから派生するものである。本発明は、これら化合物、及びこれら化合物の治療への使用法、特に多くのタイプの腫瘍の治療への使用に関するものである。
【0022】
本発明の構成において、以下の用語は、以下の定義に従って定められる。
【0023】
アポトーシス(Apoptosis)は、プログラム細胞死、及び細胞の規則な分解として定義される。急性の細胞障害からもたらされる細胞死である壊死(necrosis)とは対照的に、アポトーシスは、生体の生命周期の中で、好都合をもたらす規則的なプロセスの中で実行される。アポトーシスの主要な機能は、隣接する細胞に対してダメージ又はストレスを生じさせることなく、細胞を処分することにある。アポトーシスは、食細胞による取り込まれるアポトーシス小体へ細胞が規則的に分解されることも関係する。このアポトーシス小体の取り込みは、ネクローシスに関連した炎症反応を回避する。アポトーシスは、実施例において、実施例7にて説明する検出法を用いて検出できる。
【0024】
抗アポトーシス性(Anti−apoptic):アポトーシスを妨げ、減少させ、又は遅らせること。
【0025】
アポトーシス促成性(Pro−apoptotic):アポトーシスを活性化又は促進すること。
【0026】
増殖(Proliferation):数を多数化又は増加すること。生物学では、細胞増殖は、細胞分裂によって生じる。
【0027】
抗増殖性(Anti−proliferation):細胞の増殖を減少させる又は遅らせること。したがって、抗増殖性の化合物による処理後、細胞数は、恒常的なままであるか、又は、非処理よりも増加速度が低い、又は、減少する。抗増殖性の活性は、細胞増抑制性の作用、細胞毒性の作用、又は、両者による。化合物の抗増殖性の活性は、実施例のパートで詳しく説明する方法に従って、試験と測定を行うことができる(実施例3Cを参照)。ある分子により72時間処理した際、統計的見地での細胞数が、コントロール又は未処理と比較して有意に減少している場合、その分子が、本発明のいう抗増殖性活性を有するという。
【0028】
細胞毒性(Cytotoxic):細胞の死をもたらすもの。ある化合物で処理して72時間後の細胞数が、当初の細胞数よりも統計的見地から有意に減少している場合、その化合物には、細胞毒性があると考えられる。実施例2Aの記述では、化合物の細胞毒性の活性の規定のための方法を詳しく述べている。本発明に従うと、細胞毒性の特性を有する化合物は、例えば、抗増殖性の化合物である。細胞毒性は、とりわけ壊死(necrosis)、又はアポトーシスにより、細胞の死を引き起こすと思われる。
【0029】
細胞増殖抑制性(cytostatic):細胞分裂を阻害又は抑制するもの。本発明に従えば、細胞増殖抑制の特性を持つ化合物としては、例えば、抗増殖性化合物がある。
【0030】
癌(Cancer):未分化細胞の増殖により特徴付けられる多種の悪性な腫瘍(新生物)である。この未分化細胞は、周囲組織へ侵入や、体の新たな部位へ転位する傾向を有する。
【0031】
抗癌性(anticancer、anticancerous):癌の治療に効果のあること。
【0032】
腫瘍(tumor):異常な細胞成長。この異常な細胞成長は、制御不能で進行性の細胞の増加、及び生理機能を果たさないことの結果として生じる。英語の別名、neoplasm。
【0033】
抗腫瘍性(antitumor、又は、antitumoral):悪性腫瘍の形成への拮抗、又は抑制。抗癌性。
【0034】
アルキル(alkyl):直鎖又は分岐鎖の炭素鎖を表し、これら炭素鎖は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、最も好ましくは1〜5個の炭素原子を含む。低級アルキルは、1〜4個の炭素原子を含み、C、C、C、又はC炭素鎖といわれる。
【0035】
シクロアルキル(cycloalkyl):分岐又は非分岐の飽和炭素環を表し、この飽和炭素環は、3〜20個の炭素原子からなり、好ましくは3〜7個の炭素原子、最も好ましくは5又は6個の炭素原子からなる。前記炭素環は、任意に、1又は複数のハロ(halo)、アルキル(alkyl)、水酸(hydroxy)、アルコキシル(alkoxy)、フェノキシ(phenoxy)、CF、アミノ(amino)、アルキルアミノ(alkylamino)、ジアルキルアミノ(dialkylamino)、−COOR(Rは、水素、又はアルキル)、−NO、−C≡N、OH、O−CH、CO−NH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CH、により置換される。前記炭素環は、1置換または2置換であることが好ましい。シクロアルキルは、好ましくは200個未満、又は100個未満、よりこの好ましくは、60個未満、又は40個未満の原子を含む。
【0036】
ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl):分岐又は非分岐の飽和炭素環を表し、この炭素環は、3〜15個の炭素原子を含み、好ましくは4〜6個の炭素原子を含む。この炭素環は、以下から選択される1〜3個のヘテロ基を挿入している。選択されるヘテロ基は、−O−、−S−、−NR(Rは、例えば、−C(O)N(H)、−CHC(O)N(H)、−CHO、−C(O)−O−H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロアリール)。ヘテロシクロアルキルは、炭素環が1又は2個のヘテロ基を挿入しているものが好ましい。ヘテロシクロアルキルは、好ましくは、200個未満、100個未満、より好ましくは、60個未満、又は40個未満の原子を含む。好ましいヘテロシクロアルキルは、フラン(furan)、チオフェン(thiophene)、ピロール(pyrrole)、チアゾール(thiazole)、ピラゾール(pyrrazole)、及びオキサゾール(oxazole)である。
【0037】
アリール(aryl、アリールオキシ(aryloxy)とアラルキル(aralkyl)のアリールモイティを含む):6〜15個の炭素原子を含み、少なくとも1個の芳香族環を有する炭素環基を表し、前記炭素環基は、任意に、1又複数の、ハロ、アルキル、ヘテロシクロアルキル(例えば、N−アルキル−ピペラジン(N−アルキル−ピペラジン、モルフォリン)、水酸、アルコキシ、フェノキシ、CF、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−COOR(Rは水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル)、NO、−C≡N、OH、O−CH、CO−NH、CO−OH、CO−OCH、O−CO−CH、により置換される。前記炭素環基は、1置換又は2置換が好ましい。アリールは、好ましくは、200未満、又は100個未満、より好ましくは、60個未満、又は40個未満の原子を含む。
【0038】
ヘテロアリール(heteroaryl):酸素、硫黄、又は窒素から選ばれた少なくとも1個のヘテロ原子を有し、任意に置換されている環状基を表す。前記へテロ原子は、炭素環構造に挿入され、芳香族性を付与するために、十分な数の非局在化π電子を有する。この芳香族性複素環基は、2〜14個の炭素原子を含むことが好ましい。この芳香族性複素環基は、任意に、アリールの定義で述べた置換基の1又は複数により置換されている。前記炭素環は、1又は2個のヘテロ原子が挿入されていることが好ましい。ヘテロアリールは、好ましくは、200個未満、又は100個未満、より好ましくは、60個未満、又は40個未満の原子を含む。
【0039】
アラルキル(aralkyl、アリールアルキル(aralalkyl)の略):アリール基とアルキル基の双方から構成される基を表す。
【課題を解決するための手段】
【0040】
コンピューターシュミレーションによる仮想的なスクリーニングによって、本発明者等は、Bcl−xLタンパク質と相互作用する可能性のある分子を同定した。Bcl−xLタンパク質は、三次元構造は知られている(Scattlerら)。この分子は、インビトロ系(in vitro)及びインビボ系(in vivo)でテストし、効果的な抗増殖性剤であることが証明された。
【0041】
特に、化合物01と名づけた化合物は、インビトロ系において、多種のヒト癌細胞の増殖を阻害する。また、化合物01は、マウスを用いたインビボ系での異種移植モデルにおいて、非小細胞肺癌の成長を阻害する。化合物01を手掛かりとした最適化は、癌治療に有用な類似の特性を有する化合物01に関連した構造の分子のファミリーの同定を可能にする。
【0042】
化合物01は、(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド、である。化合物01のコア構造を保持した多数の誘導体は、今、化合物01の有意な抗増殖性の特性を増進するため、及び薬剤として適合する目的の改良のため、本発明者によってテストされている。これら分子は、本質的に以下のコア構造を有する。
【0043】
【化1】

【0044】
第1の態様に従うと、本発明は、以下の一般式のうちの1つを有する化合物が包含される。
【0045】
【化2】

【0046】
但し、上記式(a),(a’)及び(b)中、
環(I)、(II)、及び(III)は、1位、2位、3位、又は4位の置換可能な炭素原子が、Br、Cl、F、I、OH、O−CH、COOH、及び(CH−Rからなる群から選択される基と任意に置換され、Rは、H、CH、OH、O−CH、COOH、NH、CO−NH、NH−CO−フェニル、アルキル、へテロアリール、又はヘテロシクロアルキルを表し、そして、m=1、2、3、又は4であって、
Yは、H、CH、又はCO−CHを表し、
は、O、NR16であって、R16は、H、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、又はN−(CH)p−Rであって、Rは、OH,CCOR16、CO−NHR16、NH16,O−CH16、CN、O−CO−CH16,CO−へテロシクロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又は下記ラジカル:アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、F、Cl、NH、C≡N、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CH3、の1つ又はそれ以上の基により置換可能であって、p=0、1、2、3、4、5、又は6、そして、R16は、H、又は1、2、3又は4個の炭素原子を含むアルキルであって、
は、H、又は4個より少ない炭素原子を含むアルキルを表し、
は、式(a)中では、S、O、又はNHを表し、式(a’)中では、S−(CH−R10、又はNH−(CH−R10を表すものであって、R10は、Rと同義であり、q=0、1、2、3、又は4であって、
は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又はCH=CH−R11を表すものであって、R11は、Rと同義であり、Rの分子量は、500Da未満であって、
さらに、
がOを表すとき、Rは、N−R、又はO−Rであって、Rは、Rと同義であり、NはNH、又はN(CH)を表すか、
がNH、S−(CH−R10、又はNH−(CH−R10を表すとき、Rは、R、又はN−CO−Rであって、RはRと同義であり、Nは、NH、又はN(CH)を表すか、
がSを表すとき、
Rは、N−(CH−R12であって、R12は、Rと同義であり、n=0、1、2、3、又は4であり、Nは、NH、又はN(CH)を表すか、
Rは、N−CO−Rであって、−Rは、t−ブチルを除く直鎖又は分岐鎖のアルキル、−Rは、−(CH−COを表し、S=1,2、3又は4、Rは、アルキル、−F、−Cl、−NH、−C≡N、−OH、−CO−NH、−O−CH、−CO−OH、−CO−OCH、もしくは−O−CO−CHによりパラ位が1置換されたフェニルラジカルを表すか、又は、
Rは、N−CO−R17であって、R17は、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又はCH=CH−R18を表すものであって、そして、R18はR17と同義であり、R17の分子量は500Da未満であって、Nは、NH、又はN(CH)を表し、RはOでないものである。
【0047】
前記化合物のアルカリ及び酸付加塩、幾何異性体、光学異性体、並びにジアステレオ異性体に関しても同様である。
【0048】
各々の置換基は、他の置換基とは独立に選択される。
【0049】
本発明の実施形態に従えば、分子は、一般式(a)に表す構造を有する。
【0050】
他の実施形態に従えば、本発明に係る分子は、一般式(a’)に表す構造を有する。
【0051】
さらに、他の実施形態に従えば、本発明に係る分子は、一般式(b)に表す構造を有する。
【0052】
化合物の全分子量は、1000Da未満であることが好ましい。化合物の全分子量は、800Da未満がより好ましく、700Da未満、650Da未満又は600Da未満がさらに好ましい。特に、化合物は、細胞膜を通過できるものが好ましい。それゆえ、化合物の分子量は、できれば最小化する。
【0053】
本発明の第1の態様に従えば、化合物は、抗増殖性の特性を有することが好ましく、その場合には、抗腫瘍剤として有用である。本発明に係る化合物は、腫瘍細胞、癌性細胞、又は不死化細胞の集団を主な標的とした抗増殖性の作用を有することが好ましい。腫瘍細胞、癌性細胞、又は不死化細胞の集団を主な標的とするとは、換言すると、抗増殖性(又は細胞毒性)について、腫瘍細胞又は癌性細胞の集団に対する方が、正常細胞(不死化していない)の集団に対するよりも、少なくとも10%は高い場合をいうことができる。例えば、本発明の態様に従った化合物とともに細胞の集団をインキュベートした後、正常細胞の集団よりも、腫瘍細胞又は癌性細胞の集団の方が、細胞の増殖率が、10%低下する。この正常細胞の集団と比較した腫瘍細胞又は癌性細胞の集団への作用の差は、好ましくは、少なくとも20%、さら好ましくは、少なくとも30%、さらには、少なくとも50%、又はそれ以上がなお一層好ましい。
【0054】
抗増殖性の活性は、実施例の部分に詳しく記述した方法に従って試験及び測定できる(実施例2Cを参照)。
【0055】
前記化合物は、細胞毒性又はアポトーシス促進性を有することがより好ましい。このアポトーシス促進性は、腫瘍細胞に対して優先的な作用であることが好ましい。同様に、この腫瘍細胞に優先的な作用とは、細胞毒性又はアポトーシス促進性の作用に関し、腫瘍細胞又は癌性細胞の集団の方が、正常細胞の集団よりも、少なくとも10%は作用が大きいことを意味する。
【0056】
アポトーシス促進性活性は、実施例の部分に詳しく記述した方法に従って試験及び測定できる(実施例7)。
【0057】
本発明のこの態様により定義される化合物は、治療、予防的又は根治的処置に用いることが好ましい。
【0058】
ここに定義された化合物は、特に癌性細胞の除去に有用であり、これらは、それゆえ、癌、白血病、又はあらゆるタイプの腫瘍の治療に大変有用である。
【0059】
本発明の第1の態様に従う化合物は、患者に投与されることが好ましく、この患者とは、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトの患者である。それゆえ、動物に対する免疫原性を化合物に与えやすい置換基、二次的な毒性作用を起こしやすい置換基、又は最大耐量の減少しやすい置換基は、回避することが好ましい。さらには、置換基は、化合物の溶解性、特に動物の体液への溶解性を改善するために、選択されることが好ましい。
【0060】
式(a)、(a’)、及び(b)における置換基の好適なものを決定するため、下にゆくに従って重要性が低下するように分類されている次の基準を適用する:又は
―化合物全体に対して抗増殖性の活性の促進を付与する;又は
―化合物全体に対して腫瘍細胞へ正確に標的される抗増殖性の活性を付与する;
―より少ない免疫原性又は毒性を化合物に付与する;又は
―化合物全体に対してより優れた溶解性を付与する;又は
―化合物の代謝保護性(metabolic protection)を付与し、生物学的利用率(bioavailability)又は半減期を増加する;又は
―より少ない分子量を有する。
【0061】
本発明の構成における種々の構造では、すなわち、式(a)、(a’)、又は(b)において、Rは酸素原子、又はNHが好ましい。
【0062】
式(a)、(a’)、又は(b)において、Rモイティの性質とは独立して、Rモイティは、メチルが好ましい。好ましくは、RがOであってRがCHであるか、又は、R1がNHであってRがCHである。
【0063】
本発明のこの態様に従った化合物では、環(I)及び(II)のうち少なくとも一方が置換されていることが好都合である。特に、この発明の構成において適している置換基は、化合物の抗増殖性の活性を増加できる置換基であり、化合物の溶解性を増加できる置換基であり、化合物の抗原活性を減少できる置換基であり、非常に重要なのは代謝保護性を化合物に付与する置換基である。このような可能性のある置換基は、熟達者には知られている。
【0064】
環(I)単独、環(II)単独、又は環(I)及び(II)が置換されていることが好ましい。環(III)もまた、置換されているものでもよい。環(I)、(II)、及び(III)それぞれが、既に式(a)、(a’)、及び(b)に存在する置換基に加えて、さらに1つだけ置換基が付加されることが好ましい。
【0065】
環(I)及び(II)の好ましい置換基としては、フッ素(F)及び(CH−Rであって、(CH−R中、m=1、又は2であり、−(R)は、以下の化学式に表される構造のいずれかである。
【0066】
【化3】

【0067】
このような置換基は、環(III)にも適用できると思われる。
【0068】
本発明の他の好ましい実施形態によると、式(a)、又は(b)において、Yは、水素を表す。
【0069】
本発明の他の好ましい実施形態によると、式(a)、(a’)、及び(b)において、RはO及び/又はRは−CHである。
【0070】
他の実施形態によると、Rは、N−(CH−CO−N−メチルピペラジンであり、好ましくはN−CO−N−メチルピペラジンである。
【0071】
さらに他の好ましい実施形態によると、R16は、H、又はCHであり、最も好ましくは、R16は、Hである。
【0072】
さらに他の好ましい実施形態によると、R17は、フラン、チオフェン、ピロール、チアゾール、ピラゾール、又はオキサゾールモイティであり、このケースではRがOでない。また、この実施形態では、R17がフランモイティであることが好ましい。
【0073】
本発明に係る好ましい化合物としては、式(a)において、RがOであり、−Rが−CHであり、RがOであり、YがHであり、RがNH−Rであって、但し、Rが、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、又はアリラキルであり、好ましくは、Rが、フェニル、ベンジル、又は−C−N(CHである。
【0074】
本発明に係る他の好ましい化合物としては、式(a)において、RがO、−Rが−CH、RがNH、YがH、及び−(R)が下記化学式に表す構造のいずれかであり、上記化学式中のフランモイティが、1〜4個の炭素原子を含むアルキル、NH、O、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CHによって任意に置換されているものである。
【0075】
【化4】

【0076】
あるいは、上記式中のフランモイティが、任意に他のヘテロシクロアルキル、例えば、チオフェン、ピロール、チアゾール、ピラゾール、又はオキサゾールモイティに置き換えることもでき、また、これらの構造は上述のように任意に置換される。
【0077】
任意に、Rは、Oの代わりにNHにもできる。
【0078】
本発明の第1の形態において、さらに他の望ましい化合物としては、式(b)において、RがOであり、−Rが−CHであり、YがHであり、−(R)が以下の化学式に表す構造のいずれかである。
【0079】
【化5】

【0080】
本発明において、他の好ましい化合物としては、式(a)において、Rが、O、又はNHであり、−Rが、−CHであり、Rが、NHであり、Yが、Hであり、−Rが、−NH−CO−Cである。
【0081】
本発明の構成において、好ましい他の分子は、一般式(a)において、Rが、Oであり、Rが、H、又はCHであり、Rが、Sであり、Yが、Hであり、Rが、NH−(CH−R12であり、n=0でり、−(R12)が以下の化学式に表す構造のいずれかである。
【0082】
【化6】


【0083】
先の式では、任意に、Rが、Sの代わりに、Oともできる。
【0084】
また、一般式(a)と同じ構造を有するさらに他の分子で、本発明の構成のうち特に好ましいものは、RがOであり、−Rが−CHであり、RがSであり、YがHであり、RがNH−(CH−R12で、n=0、R12がCである。任意に、Rは、Sの代わりに、Oとできる。
【0085】
他のクラスで一般式(a)と同じ構造の好ましい化合物としては、RがOであり、−Rが−CHであり、RがSであり、YがHであり、RがNH−CO−Rであり、Rが−CH−CH−CO、又は(−R)が以下の化学式に表す構造のものであって、下記化学式中、R13がC〜Cのアルキルである。
【0086】
【化7】

【0087】
これに代わるものとして、本発明に係る化合物で他の好ましい化合物としては、式(a)において、RがOであり、−Rが−CHであり、RがSであり、RがNH−(CH−Rで、n=1、Rが−Cのものである。
【0088】
一般式(a’)の構造を有する本発明に係る化合物において、好ましい置換基としては、RがOであり、−RがCHであり、RがS−CHであり、(−R)が下記化学式に表される構造のいずれかに該当するものであって、下記化学式中、フランモイティが、1〜4個の炭素を有するアルキル、NH、O、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CHによって任意に置換される。
【0089】
【化8】

【0090】
これに代わるものとして、フランモイティは、他のヘテロシクロアルキル、特に、チオフェン、ピロール、チアゾール、ピラゾール、又はオキサゾールモイティが上述のように任意に置換されているものに置き換えてもよい。
【0091】
例えば、特に好ましい化合物としては、以下のものである。
【0092】
化合物03:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニル−尿素;
化合物04:1−[3−メトキシ−4−(2オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニルチオ尿素;
化合物05:4−フルオロ−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボチオイル)ベンズアミド;
化合物06:1−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]尿素;
化合物07:N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)ベンズアミド;
化合物08:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−3−(6−モルフォリン−4−イルピリジン−3−イル)チオ尿素;
化合物09:メチル5−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}スルホニル)−1−メチル−1 H−ピロール−2−カルボキシレート;
化合物10:メチルN−[(2E)−3−(2−フリル−)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−N−メチルイミドチオカルバメート;
化合物12:(2E)−3−(2フリル)−N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)アクリルアミド;
化合物13:N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−2,5−ジメチルフラン−3−スルホアミド;
化合物14:メチル N−[(2E)−3−(2−フリル)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]イミドチオカルバメート、
化合物15:(2E)−3−(2−フリル)−N−([3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ)カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物16:メチル N−(4−フルオロベンゾイル)−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−N−メチルイミドチオカルバメート;
化合物17:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物18:1−[3−(ジメチルアミノ)フェニル]−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]尿素;
化合物19:N’−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−N−メチル−グアニジン;
化合物20:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル−3−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−チオ尿素;
化合物21:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−{4−[1−(ヒドロキシ−エチル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−3−メトキシ−フェニル}−チオ尿素;
化合物22:N−ベンゾイル−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]−グアニジン;
化合物23:2,5−ジメチル−フラン−3−スルホン酸アセチル−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−アミド;
化合物24:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素;及び、
化合物25:1−(4−フルオロ−ベンゾイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素。
【0093】
第2の態様によると、本発明は、以下の一般式に表す構造を有するものに関する。
【0094】
【化9】

【0095】
但し、上記式(c)中、
環(I)、(II)、及び(III)は、1位、2位、3位、又は4位の炭素原子が、BrCl、F、I、OHO−CH、COOH、及び(CH−Rからなる群から選択される基と任意に置換可能であって、Rは、H、CH、OH,O−CH3、COOH、NH、CO−NH、NH−CO−フェニル、アルキル、へテロアリール、又はヘテロシクロアルキルを表し、m=1、2、3、又は4であって、
は、O、NR16であって、R16は、H、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、又はN−(CH)p−Rであって、Rは、OH,COOR16、CO−NHR16、NHR16,O−CH−R16、CN、O−CO−CH16,CO−へテロシクロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又は下記ラジカル:アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、F,Cl、NH、−C≡N、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CH、の1つ又はそれ以上の基で置換可能であって、そして、p=0、1,2、3、4、5、又は6であり、R16は、H、又は1、2、3又は4個の炭素原子を含むアルキルであって、
は、H、又は4個未満の炭素原子を含むアルキルを表し、
14及びR15は、独立して、分子量400Da未満の多種の置換基であって、R14とR15は同時に酸素であることはない。
【0096】
前記化合物は、治療に用いる。
【0097】
本発明では、前記化合物のアルカリ及び酸付加塩、幾何異性体、光学異性体、及びジアステレオ異性体も治療に使用する。
【0098】
各々の置換基は、他の置換基とは独立に選択される。
【0099】
第1の態様に従った化合物のように、置換基は、化合物全体に対して抗増殖性の活性の促進を付与するためのものから選択することが好ましく、より少ない免疫原性又は毒性を化合物に付与するためのものから選択することが好ましく、化合物全体に対してより優れた溶解性(特に動物の体液への溶解性)を付与するためのものから選択することが好ましく、化合物の代謝保護性(metabilc protection)を付与して生物学的利用率(bioavailability)又は半減期を増加するためのものから選択することが好ましく、又は、化合物全体の分子量を減らすためのものから選択することが好ましい。
【0100】
化合物の全分子量は、1000Da未満であることが好ましい。化合物の全分子量は、800Da未満がより好ましく、700Da未満、650Da未満又は600Da未満がさらに好ましい。特に、化合物は、細胞膜を通過できるものが好ましい。それゆえ、化合物の分子量は、できれば最小化する。
【0101】
このような化合物の治療における使用は、予防的又は根治的な目的である。
【0102】
本発明の第2の態様に従えば、化合物は、抗増殖性の特性を有することが好ましい。この化合物は、腫瘍細胞、癌性細胞、又は不死化細胞の集団を主な標的として抗増殖性(細胞増殖抑制性)の作用を有することが好ましい。例えば、細胞の集団をこの化合物に接触させた後、腫瘍細胞又は癌細胞の集団の細胞数の減少が、正常細胞の集団の細胞数の減少よりも10%以上大きいことをいう。正常細胞の集団への作用に比較した、腫瘍細胞又は癌細胞の集団への作用の違いは、この好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、又は少なくとも50%、あるいはそれ以上であることがなお一層好ましい。
【0103】
さらに好ましくは、前記化合物は、細胞毒性又はアポトーシス促進性を有する。このアポトーシス促進性は、腫瘍細胞に対して優先的な作用であることが好ましい。同様に、この腫瘍細胞に優先的な作用とは、細胞毒性又はアポトーシス促進性の作用について、腫瘍細胞又は癌性細胞の集団に対する方が、正常細胞の集団に対するよりも、少なくとも10%は作用が強いことを意味する。
【0104】
好適な置換基を選択する際に適用される基準は、本発明の第1の態様と同じである。
【0105】
ここに定義された化合物は、癌性細胞の除去に有用であり、これらは、それゆえ、癌、白血病、又はあらゆるタイプの腫瘍の治療に大変有用である。
【0106】
本発明の第2の態様による化合物としては、ヒトの治療、又は獣医による治療に使用するためのものであり、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトの患者に投与するためのものである。それゆえ、動物に対する免疫原性を化合物に与えやすい置換基、二次的な毒性作用を起こしやすい置換基、又は最大耐量の減少しやすい置換基は、回避することが好ましい。好ましい患者(治療対象)は、哺乳類、特に家畜やペット、そしてヒト(小児又は成人)である。
【0107】
本発明の第2の態様において、別の好ましい構造としては、すなわち、式(c)において、Rが好ましくは酸素原子、又はNHである。
【0108】
モイティとは独立に、Rモイティがメチルであることが好ましい。好ましくは、RがOであってRがCH、又は、RがNHであってRがCHである。
【0109】
本発明のこの態様による化合物は、環(I)と環(II)の少なくとも1つは置換されていると好都合である。本発明のこの構成において、適した置換基は、化合物の抗増殖性の活性を増加できる置換基であり、化合物の溶解性を増加できる置換基であり、化合物の抗原活性を減少できる置換基であり、非常に重要なのは代謝保護性(metabolic protection)を化合物に付与する置換基である。このような可能性のある置換基は、熟達者には知られている。
【0110】
環(I)単独、環(II)単独、又は環(I)及び(II)が置換されていることが好ましい。環(III)もまた、置換されていてもよい。環(I)、(II)、及び(III)それぞれが、式(c)中の既に存在する置換基に加えて、1つだけ付加的な置換基を有することが好ましい。
【0111】
環(I)及び(II)の置換基としては、フッ素(F)及び(CH−Rであることが好ましい。(CH−R中、m=1、又は2であり、Rが、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、又はアリラキル、及び、好ましくは(−R)が、下記化学式に表された構造のいずれかに該当するものである。
【0112】
【化10】

【0113】
本発明の他の好ましい実施形態によると、Yは、水素を表す。
【0114】
本発明の他の好ましい実施形態によると、RがO、及び/又はRが−CHである。
【0115】
本発明に係る好ましい化合物では、R14、R15、NR14、及びNR15のうち少なくとも1つが、アミド、スルホンアミド、ケトン、フラン、チオフェン、ピロール、チアゾール、ピラゾール、オキサゾール、尿素、チオ尿素基、ベンジル、フェニル、アクリル、グアニジンを含む。
【0116】
14とR15が異なることが好ましい。
【0117】
他の好ましい実施形態によれば、R14とR15のうち少なくとも1つが、H、又はCHである。
【0118】
一般式(c)によれば、R14及びR15は、窒素と一重結合により連結することに留意したい。しかしながら、R14及びR15が、共に酸素原子でないときは、二重結合もまたありうる。
【0119】
16が,H、又はCHであることが好ましい。
【0120】
他の実施形態によると、Rは、N−(CH−CO−N−メチルピペラジンであり、好ましくはN−CO−N−メチルピペラジンである。
【0121】
この第2の態様の好ましい化合物は、本発明の第1の態様において例示されたものであり、換言すると、化合物03、04、05、06、07、08、09、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、及び25である。
【0122】
本発明の第2の態様によると、他の好ましい化合物は以下のものである:
化合物01:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物02:N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)ベンズアミド。
【発明を実施するための最良の形態】
【0123】
以下においては、本発明に係る化合物としては、本発明の第1の態様、及び第2の態様に従った化合物を参照する。
【0124】
本発明は、本発明に係る化合物の塩も含まれ、例えば、塩酸塩(chlorhydrate salts)、特に医薬的に許容される本発明に係る化合物の塩である。
【0125】
さらに、本発明には、本発明に係る化合物の代謝物も含まれ、特に生体内(in vivo)で形成される代謝物が含まれる。さらに進んで、本発明には、本発明に係る化合物のプロドラッグ(prodrug)も関わる。なお、ここにいうプロドラッグとは、前記化合物へ生体内で転換したものである。
【0126】
重要なことに、本発明に係る化合物には、本発明に係る化合物の立体異性体及び/又は互変異性も含み、これら異性体の混合物も同様に含まれることに留意する。
【0127】
先に述べたように、本発明に係る化合物は、細胞毒性、又は細胞増殖抑制性の特性を腫瘍細胞に対して有することが好ましい。対象として好ましい腫瘍細胞は、肺、前立腺、胸部、結腸、メラノーマ、リンパ腫、及び/又は脊髄、の腫瘍細胞である。
【0128】
先に述べたように、本発明に係る化合物は、水溶性であることが好ましく、多種の体液に溶解性があることが好ましい。水溶性の観点では、本発明に係る化合物は、モル濃度において50×10−6 mol/L超にて水に溶解できるものが好ましく、さらに、500×10−6 mol/L超、さらに好ましくは800×10−6 mol/L超又は約1 mmol/L(言い換えれば約1×10−3mol/L)超であることがなお一層好ましい。
【0129】
本発明の好ましい実施形態によれば、先に定義された化合物は、直接的又は間接的に、抗アポトーシスタンパク質Bcl−xLと相互作用できる。本発明に係る化合物は、Bcl−xLたんぱく質に、少なくともインビトロ系(in vitro)において結合し、好ましくは解離係数(Kd)が1μM未満、より好ましくは100nM未満、又はそれより少なく、例えば、20nM未満、又は10nM未満であることがなお一層好ましい。このような化合物は、特に好ましい。
【0130】
分子とBcl−xLたんぱく質との相互作用の解離係数(Kd)を規定するために適切な方法としては、本出願の実施例に挙げられている(実施例5参照)。
【0131】
また、本発明は、本発明に係る化合物を含む製剤処方も包含するため、化合物の生体利用効率(bioavailability)が少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも80%、90%、又は95%であるとよい。
【0132】
また、本発明は、第1の態様、又は第2の態様に従って規定される化合物と、少なくも1つの他の活性含有物とを合わせた組成物も関連する。前記他の活性化合物は、あらゆるタイプの治療剤、例えば、抗炎症剤、又は本発明に係る化合物の副作用を緩和する(前記潜在的な副作用を減少、撤廃、又は遅延する)ものでよい。
【0133】
好都合なものとしては、本発明に係る化合物は、抗腫瘍剤又は化学療法剤、又は放射線療法と合わせて使用又は与えられる。特に、発明者等の観察では、本発明に係る化合物の抗癌作用は、他の抗癌性の治療薬と併用すると、増強される。本発明に係る化合物と、少なくとも2つ、3つ又はそれ以上の他の化学療法薬とを合わせた組成物は、好都合である。
【0134】
本発明に係る化合物と組み合わせて適用できる抗癌剤としては、例えば、タキソール(パクリタキセル)、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、レチノイン酸、タモキシフェン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、又はラパマイシンである。ただし、このリストは、すべてを挙げたものではなく、他の多種の化学療法薬を本発明に係る化合物と合わせることもできる。
【0135】
このような組成物として好ましいものは、本発明に係る化合物と抗増殖性の特性、言い換えると、腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性の活性、を有する他の化学療法薬とを含むものである。
【0136】
本発明は、上に述べたような組成物の使用も関連する。この使用は、治療中の癌、又は、その他、制御不能な進行性の細胞の増殖による組織の異常成長、又は不要なもしくは病的な持続性の細胞の増殖を治療するための対象への投与を目的とする薬剤の製造のためのものである。
【0137】
本発明は、本発明に係る化合物と、さらに他の活性薬剤、好ましくは他の抗腫瘍剤を含み、治療において、同時に、個別に、又は連続的に使用する混合製剤としての産生物も包含する。本発明に係る化合物及び他の抗腫瘍剤は、産生物の活性成分であることが好ましい。
【0138】
同時の療法のための混合製剤とは、本発明に係る化合物とさらに他の薬剤、好ましくは抗腫瘍剤とを同時に投与することを含む治療として定義される。前記化合物及び薬剤は、一緒にパッケージ化、又は2つの別々の物として同時に与えられる。
【0139】
連続の療法のための混合製剤とは、他の薬剤単独、この好ましくは他の抗腫瘍剤単独の投与に続く、本発明に係る化合物単独の連続的な投与、又は、この逆の順序による投与を含む治療として定義される。
【0140】
個別の治療のための混合製剤とは、本発明に係る化合物の投与、及び他の薬剤、好ましくは他の抗腫瘍剤の投与を含む治療として定義され、両治療は同時であるが、投与は全てを同時にされるものではない。
【0141】
また、本発明は、本発明に従った、還元すれば、本発明の第1の態様又は第2の態様に従った化合物と医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物にも関連する。活性含有物とは反対に、医薬的に許容可能な担体とは、賦形剤であり、それ自身には治療活性が欠けているものである。医薬領域の熟達者は、選択された投与の様式に依存して、本発明の化合物と組合せられる能力を持った医薬的に許容可能な担体を定義できる。ここにおいて、多種の担体は、想定可能であり、この医薬的組成物に組み込まれうる。さらに、本発明に係る化合物は、1つ以上の担体と組み合わせることもでき、例えば、少なくとも2つ、3つ、それ以上の担体と組み合わせることも可能である。他の含有物は、本発明の係る医薬組成物に添加することもできる。この他の含有物としては、例えば、治療の観点から活性又は非活性である香味剤や色素などがある。
【0142】
先に述べたように、この好ましい添加含有物は、他の抗癌剤、特に抗増殖性の活性を有する抗癌剤、例えば少なくとも既に選択されているものとは別の本発明に係る化合物である。
【0143】
本発明の好ましい実施形態によると、医薬組成物は、本発明に係る化合物、適用できる担体、及びタキソールを含むものであるものがよい。それぞれの含有物の好ましい割合は、医薬領域の当業者によって決定できる。
【0144】
本発明に係る医薬組成物は、病巣内、腹腔内、筋内、又は静脈内への注射を介した投与;注入(インフュージョン、infusion)を介した投与;リポソームが介在したデリバリー;局所、鼻、経口、肛門、皮下、膣、舌下腺、尿道、経皮、髄腔、眼、又は耳へのデリバリーを介した投与のためにデザインできる。
【0145】
投与の様式は、治療される病状に依存して決定できる。
【0146】
さらに、例えば固形腫瘍、転移癌への治療のために、投与の異なる様式も想定できる。
【0147】
本発明は、治療中の癌、又は、制御不能な進行性の細胞の増殖による組織の異常成長、又は、不要な若しくは病的な持続性の細胞の増殖、を治療する対象に投与することを目的とした薬剤の製造のための、本発明に係る化合物も包含する。
【0148】
治療される対象は、好ましくは、哺乳類、特にネコ、イヌ、ウマ、及びヒトである。特に、好ましい患者は、ヒトである。
【0149】
本発明のこの実施形態によれば、調製された薬剤は、病巣内、腹腔内、筋内、又は静脈内への注射を介した投与;注入(インフュージョン、infusion)を介した投与;リポソームが介在したデリバリー;局所、鼻、経口、肛門、皮下、膣、舌下腺、尿道、経皮、髄腔、眼、又は耳へのデリバリーを介した投与、のために調製される。ただし、代替の投与様式は、想定可能である。
【0150】
本発明には、癌、異常な細胞増殖による特徴づけられる他の病態の治療を対象とする、同時に、個別に、又は連続的に、他の薬剤、好ましくは他の抗腫瘍剤又は化学療法剤とともに投与する目的の薬剤の製造のための本発明に係る化合物の使用も関連する。先に述べたように、本発明は、1つの他の薬剤の添加に限られず、定義したように、いくつかの異なる薬剤を組成物の中に入れることができる。
【0151】
適用が可能な他の抗腫瘍剤の例としては、例えば、タキソール(パクリタキセル)、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、レチノイン酸、タモキシフェン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、又はラパマイシンである。但し、このリストは、全てを列挙したわけではない。
【0152】
また、本発明は、本発明に係る化合物(第1又は第2の態様)と細胞との接触を含む細胞増殖の阻害のための方法にも関連する。この方法は、生体内(in vivo)又は生体外(ex vivo)で行われるが、好ましくはインビトロ(in vitro)で行われる。
【実施例】
【0153】
実施例1:発明に係る化合物の合成:
1.A クマリン誘導体の合成:
適用される主なステップ及び条件は、以下の反応スキームに要約されている。
R及びRは、先に定義したように、式(a)、(a’)、(b)、及び(c)中の環(I)及び(III)の可能性のある置換基である。R、6R、及びRは、先に定義したように、式(a)、(a’)、(b)、及び(c)に従った化合物を得るための可能性のある置換基を表す。
【0154】
【化11】


【0155】
さらに具体的に述べると:
【0156】
【化12】

【0157】
ステップ1:2−(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−マロン酸ジエチルエステルの調製:
マロン酸ジエチル(253mmol)は、室温で、DMSO(140ml)を溶媒としたNaH(オイル中に60%、シクロヘキサンにて洗浄)(275mmol)の懸濁液へ、ゆっくりと添加した。2−クロロ−5−ニトロアニソール(105.5mmol)の添加前に、反応液は、20分間攪拌した。110℃で5時間の攪拌後、溶液は、水(1.5L)へ注ぎ、それから濃HClを添加することにより、pH=1へ酸性化した。この溶液は、さらに20分間攪拌した。反応溶液は、濾過して固形物を回収し、これを水で洗浄、及び乾燥することにより、赤色固形物27.1gを得た。この残留物(得られた物)は、氷冷したメタノール中で粉砕し、濾過、冷メタノールでの洗浄、及び乾燥により、19.4gの目的産物を得た。
【0158】
ステップ2:(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−酢酸の調製:
基質(62.3nmol)(ステップ1にて調製)は、メタノール(50ml)に溶解し、氷浴(ice bath)中で冷却した。この溶液に、6M NaOH(31mL)を15分間のうちに加え、得られた混合液をさらに5分間、0℃にて撹拌した。次いで、この反応混合液は、50℃となるように加温し、50℃で90分間撹拌した。さらに、減圧下で、メタノールを除去した。残留物は、0℃まで冷却し、濃HClを添加してpH=1に酸性化した。反応混合液は、濾過し、固形物を水で洗浄した。酢酸エチルを濾液に添加し、二層性溶液を抽出した。有機層は、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過、減圧下で蒸発させて、9.4gの目的物を得た。
【0159】
ステップ3:(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−酢酸メチルエステルの調製:
基質(39.3mmol)(ステップ2にて調製)は、メタノール(45mL)と2,2−ジメトキシプロパン(16mL)との混合液に溶解した。クロロトリメチルシラン(0.5mL)を加え、溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒は、減圧下で除去した。残留物は、酢酸エチルに溶解し、NaHCO、水、及び飽和させた含水塩化ナトリウムで洗浄した。有機層は、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過、減圧下で蒸発させて、8.4gの有機固形物を得た。
【0160】
ステップ4:3−(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−クロメン−2−オンの調製:
サリチルアルデヒド(29nmol)を、室温で、ピペリジン(20mL)を溶媒とした基質(19.5mmol)(ステップ3にて調製)の溶液に加えた。この反応混合物を還流下で4時間撹拌した。反応の最後で、溶液を0℃まで冷却し、エタノールを加えた。沈殿物は、濾過し、エタノールで洗浄して、黄色粉末の表題の化合物3.6gを得た。
【0161】
ステップ5:3−(4−アミノ−2−メトキシ−フェニル)−クロメン−2−オンの調製:
エタノール(40mL)を溶媒とした基質(ステップ4にて調製)の溶液へ、塩化スズ(II)二水和物(61mmol)を加えた。得られた反応混合液を、還流下で2.5時間撹拌した。溶液は、室温まで冷却し、1M NaOHを加え、1時間撹拌した。混合液は、セリット(celite)で濾過し、エタノールで洗浄した。エタノールを減圧下で除去し、得られた溶液は酢酸エチルでの抽出を3回行った。有機層は、1つにまとめ、1MのNaOH、水、及び飽和させた含水塩化ナトリウムで洗浄した。有機層は、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過、減圧下で蒸発させて、黄色粉末2.8gを得た。
【0162】
【化13】

【0163】
ステップ6:(E)−3−フラン−2−イル−アクリロイルイロチアネートの調製:
3−(2−フリル)アクリル酸(Aldrich社より入手;72.4mmol)をDCM(50mL)に溶解した。この溶液には、続けて塩化オキサリル(145mmol)及びDMF(0.5mL)を加えた。反応液は、室温で、1時間撹拌した。溶媒は、減圧下で蒸発させ、トルエンと供沸した。残留物は、アセトン(50ml)に溶解した。この溶液に対して、チオシアン酸カリウム(145mmol)を加え、そして、この溶液をさらに30分間撹拌した。溶媒は蒸発させ、残留物は、フラッシュカラムクロマトグラフィー(flash column chromatography)(100%DCN)によって精製し、黄色オイル10.6gを得た。
【0164】
【化14】

【0165】
1.A.1:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド(化合物01)
(別名:1((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−チオ尿素)の調製:
3−(4−アミノ−2−メトキシ−フェニル)−クロメン−2−オン(6mmol)(ステップ5にて調製)及び(E)−3−フラン−2−イル−アクリロイルイロチアネート(24mmol)(ステップ6にて調製)をDCM(50mL)に溶解した。反応溶液は、室温で、2時間撹拌した。溶媒は、減圧下で蒸発させた。残留物は、エタノールに溶解し、溶液をさらに30分間撹拌した。溶液は、濾過し、得た固形物を洗浄することにより、黄色粉末2.6g(mp 227−230℃)を得た。
【0166】
LCMS(M+H=447、100%)、NMR(250MHz、DMSO):δ12.89(br s, 1 H)、11.72(br s, 1 H)、8.07(s, 1 H)、7.93(s, 1 H)、7.80−7.30(m, 8H)、 7.01(d, J 3.5, 1 H)、 6.82(d, J 15.5, 1 H)、6.70−6.67(m, 1 H)、3.78(s, 3H)。
【0167】
【化15】

【0168】
1.A.2:1−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−3−[−3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−尿素塩酸塩(化合物06塩酸塩)の調製:
3−(4−アミノ−2−メトキシ−フェニル)−クロメン−2−オン(12.8mmol)(ステップ5にて調製)及び4−(ジメチルアミノ)フェニル イソシアネート(15.4mmmol)をDCM(35mL)に溶解した。反応は、室温で、6日間撹拌した。溶媒は、減圧下で蒸発させた。残留物は、ジエチルエーテルとともに粉末化し、濾過し、固形物をジエチルエーテルで洗浄して、5.6gの固形物を得た。この固形物は、メタノールに溶解した。メタオールに溶かした塩化水素を、得られた混合溶液に加え、20分間撹拌した。溶媒は、真空下で蒸発させた。得られた残留物は、ジエチルエーテルで洗浄し、淡黄色粉末5.7gを得た。
【0169】
LCMS(M+H=430,100%)、NMR(250MHz,DMSO):δ9.43−9.30(m, 2H)、8.00(s 1H)、7.73 (d, J 7.8, 1 H)、7.65−7.30(m, 8H)、7.25 (d, J 8.0, 1 H)、7.01(dd, J 8.2 and 1.7, 1 H)、3.74(s, 3H)、3.16(s, 6H)。
【0170】
【化16】

【0171】
1.A.3:N−[3−メトキシ−4−(オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−2,5−ジメチルフラン−3−スルホンアミド(化合物13)
(別名:2,5−ジメチル−フラン−3−スルホン酸−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル)−フェニル]−アミド)の調製:
3−(4−アミノ−2−メトキシ−フェニル)−クロメン−2−オン(5.6mmol)(ステップ5にて調製)、及び2,5−ジメチル−フラン−3−スルホニルクロリド(Maybridge社より入手;6.2mmol)を、ピリジン(10mL)に溶解した。反応混合液は、室温で、12時間撹拌した。溶液は、1MのHCl溶液に注ぎ、DCMにて抽出し、1MのHCl溶液、水、及び飽和させた含水塩化ナトリウムで洗浄した。溶媒は、減圧下で蒸発させた。残留物は、ジエチルエーテルともに粉末化し、濾過、ジエチルエーエルで洗浄して、ベージュ色粉末1.7gを得た。
【0172】
LCMS(M+H= 426、100%)、NMR(250 MHz、DMSO):δ10.41(br s, 1H) 7.98(br s, 1H)、7.71(dd、J 7.7 and 1.2, 1 H)、7.61(td、J 8.2 and 1.5, 1 H) 7.45−7.25 (m, 2H)、7.23 (d、J 8.2、1H)、6.85(d, J 1.7, 1 H)、6.75(dd、J 8.2 and 2、 1H)、6.26(S 1H) 3.68 (S, 3H)、2.41 (s, 3H)、2.21(s, 3H)。
【0173】
1.B オキソキノリン誘導体の合成:
R及びRは、先に定義したように、式(a)、(a’)、(b)及び(c)中の環(I)、(II)、及び(III)の可能性のある置換基である。Rは、先に定義したように、式(a)、(a’)、(b)及び(c)に従う化合物を得るための可能性のある置換基である。
【0174】
適用される主なステップ及び条件は、以下の反応スキームに要約されている。
【0175】
【化17】


【0176】
さらに具体的に述べると:
【0177】
【化18】

【0178】
ステップ1:3−(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−1H−キノリン−2−オンの調製:
o−アミノベンズアルデヒド(Org. Synth., coll. Vol. 3、56に記述の方法に従って調製した)は、室温で、(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−酢酸メチルエステル(15mmol)(実施例1Aのステップ3にて調製)をピペリジンに溶かした溶液(15mL)に加えた。反応混合液は、還流下で2時間、撹拌した。反応の最後に、溶液を室温まで冷却し、エタノール(50mL)を加えた。混合液は、30分間撹拌し、それから0℃まで冷却した。沈殿物は、濾過し、黄色粉末として、表題の化合物2.2gを得た。
【0179】
ステップ2:3−(2−メトキシ−4−ニトロ−フェニル)−1−メチル−1H−キノリン−2−オンの調製:
基質(7.4mmol)(ステップ1にて調製)は、DMF(20mL)を溶媒とするNaH(オイル中60%、シクロヘキサンで洗浄)の懸濁液に、0℃にて、ゆっくり加えた。反応液は、5分間、0℃で撹拌し、ヨウ化メチル(11.1mmol)を加えた。0℃で1時間の撹拌後、溶液を水(150mL)に注ぎ、濾過した。残留物は、EtOAcに溶解し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒は、減圧下で除去し、黄色固形物として、目的産物2.1gを得た。
【0180】
ステップ3:3−(4−アミノ−2−メトキシ−フェニル−1−メチル−1H−キノリン−2−オンの調製:
エタノール(100ml)を溶媒とした基質(6.8mmol)(ステップ2にて調製)の溶液へ、塩化スズ(II)二水和物(33.8mmol)を加えた。得られた反応混合物は、還流下で2時間、撹拌した。溶媒は、減圧下で除去し、残留物を得て、これを酢酸エチルに溶解し、含水炭酸水素ナトリウムの飽和溶液、及び含水塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層は、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過、減圧下で蒸発させ、黄色固形物1.9gを得た。
【0181】
1B.1:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド(化合物17)(別名:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−[3−メトキシ−4−(1−メトキシ−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)−フェニル]−チオ尿素)の調製:
3−(4−アミノ−2−メトキシ−フェニル)−1−メチル−1H−キノリン−2−オン(6.8mmol)(ステップ3にて調製)、及び(E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル イソチアネート(13.7mmol)(実施例1Aのステップ6にて調製)は、DCM(5mL)に溶解した。反応液は、室温、2時間、撹拌した。溶媒は、減圧下で蒸発させた。残留物は、エタノールに溶解し、この溶液は、濾過して、黄色固形物2.2gを得た。
【0182】
LCMS(M+H=460,99%)、NMR(250MHz、DMSO):δ12.88(br s、1H)、11.71 (br s,1H),7.95−7.85(m,2H),7.74(d,J 7.7,1H),7.70−7.50(m,4H),7.28−7.20(m,3H),7.01(d,J 3.5,1H),6.82(d,J 15.5,1H),6.70−6.68(m,1H),3.73(s,3H),3.68(S 3H)。
【0183】
1.C:メチル化条件
化合物14は、実施例1.A.1で生成された化合物(化合物01)とKCO(2当量)、Mel(1.5当量)とのアセトン中の反応により生成した。反応物は、加熱し、4時間、還流した。
【0184】
【化19】

【0185】
1.D
実施例1.A、1.B、及び1.C及び適当なバリエーションの操作によって得られた本発明に係る代表的な化合物の特徴は、以下に報告する。
【0186】
LC_MS(液体クロマトグラフィー質量分析)の詳細は以下の通りである。
自動注入器:注入量が10μl;
カラム:THERMO HYPERSIL HYPERPREP RP C18、8μm、150M.6mm;
UV 検知装置:Agilent G1315A diode array detector [190−400nm];
ELSD(蒸発光散乱検出)装置:Polymerlabs ELS2100、T° nebulizer=50°C,T° evaporator=90°C,gaz flow rate:1.6 SLM。
【0187】
【表1】

【0188】
【化20】

【0189】
化合物02:N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)ベンズアミド
(別名:1−ベンゾイル−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−チオ尿素)。
NMR(250MHzDMSO):δ 12.75(s,1H),11.65(s,1H),8.08(s,1H),8.02−7.95(m,2H) 7.80−7.35(m,10H),3.78(S,3H).LCMS 98%(431,M+1)。
【0190】
【化21】

【0191】
化合物03:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニル−尿素:
淡黄色固形物。
NMR(250MHz,DMSO):δ 8.88(s,1H),8.74(s,1H),8.00(S 1H),7.73(d,J 7.7, 1H),7.61(t, J 8.5,1H),7.52−7.40(m,8H),7.15−6.85(m,2H),3.75(s,3H).LC−MS 純度:100%。
【0192】
【化22】

【0193】
化合物04:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニル−チオ尿素:
白色固形物。
NMR(250MHz,DMSO):δ 9.94(br s,2H),8.02(s,1H),7.74(dd,J 6.2 and 1.2,1H) 7.62(td,J7.0 and 1.2, 1H),7.50(d,J 6.2,2H);7.45−7.25(m,6H),7.20−7.10(m,2H),3.74(s,3H)。LC−MS 純度: 100%。
【0194】
【化23】

【0195】
化合物05:4−フルオロ−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボチオイル)ベンズアミド
(別名:1−(4−フルオロ−ベンゾイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−チオ尿素)
白色固形物。
NMR (250 MHz DMSO): δ 12.66 (br s, 1 H), 11.70 (br s, 1H), 8.15−8.05 (m, 3H), 7.75 (d, J 8.2,1H), 7.70−7.60 (m, 2H), 7.50−7.35 (m, 6H), 3.77 (s, 3H)。 LC−MS 純度: 100%。
【0196】
【化24】

【0197】
化合物06:1−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−尿素.塩化水素:
淡黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 9.43−9.30 (m, 2H), 8.00 (s, 1H) 7.73 (d, J 7.8, 1 H), 7.65−7.30 (m,8H), 7.25 (d, J 8.0, 1 H), 7.01 (dd, J 8.2 and 1.7, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.16 (s, 6H)。LC−MS 純度: 98%。
【0198】
【化25】

【0199】
化合物08:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−(6−モルフォリン−4−イル−ピリジン−3−イル)−チオ尿素:
黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 9.87 (s, 1 H), 9.62 (s, 1H), 8.10 (d, J 2.7, 1 H), 8.01 (s, 1H) 7.75 (dd,J 8.2 and 0.7, 1 H), 7.70−7.55 (m, 2H), 7.45−7.25 (m, 4H), 7.12 (dd, J 8.0 and 1.5, 1H), 6.83 (d, J8.7, 1 H), 3.80−3.65 (m, 7H), 3.45−3.35 (m, 4H)。LC−MS 純度: 92%。
【0200】
【化26】

【0201】
化合物09:メチル5−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}スルホニル)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボキシレート:(別名:5−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルスルファモイル]−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボン酸メチルエステル}。
黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 10.30 (br s, 1H), 7.96 (s, 1 H), 7.78 (d, J 2.0, 1 H), 7.70 (dd, J 8.0 and 1.5, 1 H), 7.60 (td, J 8.2 and 1.5, 1H), 7.45−7.30 (m, 2H), 7.21 (d, J 8.2, 1 H), 7.03 (d, J 2.0, 1 H), 6.86 (d, J 2.0, 1 H), 6.77 (dd, J 8.2 and 2.0, 1 H), 3.86 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.68 (s, 3H)。 LC−MS 純度: 96%。
【0202】
【化27】

【0203】
化合物13:N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−2,5−ジメチルフラン−3−スルホアミド。(別名:2,5−ジメチルフラン−3−スルホン酸[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−アミド)。
灰色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 10.41 (s, 1 H), 7.98 (s, 1 H), 7.71 (d, J 7.5, 1 H), 7.61 (t, J 8.0, 1 H), 7.43−7.33 (m, 2H), 7.23 (d, J 8.0, 1 H), 6.84 (s, 1 H), 6.75 (d, J 8.2, 1 H), 6.26 (s, 1 H), 3.68 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.21 (s, 3H)。 LC−MS 純度: 97%。
【0204】
【化28】

【0205】
化合物14:メチル N−[(2E)−3−(2−フリル)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]イミドチオカルバメート(別名:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−2−メチル−イソチオ尿素):
黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 8.20−8.05 (m, 3H), 7.85−7.60 (m, 2H), 7.55−7.20 (m, 6H), 7.15−7.05 (m, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.45 (s, 3H), 2.19 (s, 3H)。LC−MS 純度: 97%。
【0206】
【化29】

【0207】
化合物25:1−(4−フルオロ−ベンゾイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素:
白色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 8.20−8.05 (m, 3H), 7.85−7.60 (m, 2H), 7.55−7.20 (m, 6H), 7.15−7.05 (m, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.45 (s, 3H), 2.19 (s, 3H)。 LC−MS 純度: 97%。
【0208】
【化30】

【0209】
化合物18:1−(3−ジメチルアミノ−フェニル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−尿素.塩化水素:
灰色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 8.85 (br s, 1H), 8.65 (br s, 1 H), 8.00 (s, 1H), 7.74 (dd, J 7.5 and0.75, 1 H), 7.61 (td, J 7.9 and 1.5, 1 H), 7.45−6.95 (m, 7H), 6.90−6.75 (m, 1 H), 6.50−6.35 (m, 1H),3.75 (S, 3H), 2.91 (s, 6H)。LC−MS 純度: 99%。
【0210】
【化31】

【0211】
化合物15:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ)カルボノチオイル)アクリルアミド。(別名:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル)−フェニル]−チオ尿素):
黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 12.87 (s, 1 H), 11.84 (s, 1 H), 11.70 (s, 1 H), 8.00−7.85 (m, 2H), 7.75− 7.22 (m, 7H), 7.18 (t, J 7.5, 1 H), 7.01 (d, J 3.2, 1 H) 6.81 (d, J 15.5, 1 H), 6.70−6.66 (m, 1H), 3.74 (S, 3H)。 LC−MS 純度: 92%。
【0212】
【化32】

【0213】
化合物17:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド。
(別名:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−[3−メトキシ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル)−フェニル]−チオ尿素):
黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 12.88 (br s, 1 H), 11.71 (br s, 1H), 7.95−7.85 (m, 2H), 7.74 (d, J 7.7,1 H), 7.70−7.50 (m, 4H), 7.28−7.20 (m, 3H), 7.01 (d, J 3.5, 1 H), 6.82 (d, J 15.5, 1 H), 6.70−6.68 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.68 (s, 3H)。LC−MS 純度: 93%。
【0214】
【化33】

【0215】
化合物19:N’−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−N−メチル−グアニジン:
灰色固形物。
NMR (250 MHz, CDCI3): δ 8.06 (br s, 1H), 7.85−6.95 (m, 9H), 6.80−6.75 (m, 1H), 6.60−6.55 (m, 1H), 6.31 (d, J 15.5, 1 H), 3.79 (br s, 3H), 3.56 (br s, 3H)。 LC−MS 純度: 99%。
【0216】
【化34】

【0217】
化合物20:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−チオ尿素:
黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 9.70 (br s, 2H), 7.99 (s, 1 H), 7.73 (d, J 7.7, 1 H), 7.61 (t, J 7.2, 1 H),7.45−7.20 (m, 6H), 7.10 (dd, J 8.5 and 1.7, 1 H), 6.91 (d, J 8.7, 2H) 3.75−3.65 (m, 7H), 3.10−3.3.05 (m, 4H)。 LC−MS 純度: 93%。
【0218】
【化35】

【0219】
化合物21:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−{4−[1−(ヒドロキシ−エチル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−3−メトキシ−フェニル}−チオ尿素:
淡黄色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 12.87 (br s, 1 H), 11.70 (br s, 1 H), 7.95−7.85 (m, 2H), 7.90−7.55 (m, 5H), 7.20−7.10 (m, 3H), 7.01 (d, J 3.5, 1H), 6.82 (d, J 15.7, 1 H), 6.70−6.60 (m, 1 H), 4.95 (t, J 5.2, 1H), 4.37 (t, J 6.5, 2H), 3.80−3.60 (m, 5H). LC−MS 純度: 97%
【0220】
【化36】

【0221】
化合物22:N−ベンゾイル−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]−グアニジン:
白色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 11.82 (s, 1 H), 9.40 (br s, 1 H), 8.17−8.12 (m, 2H), 7.87 (s, 1 H), 7.66(d, J 8.0, 1 H), 7.60−7.25 (m, 8H), 7.20 (t, J 7.5, 1H) 7.02 (d, J 6.7, 1 H) 3.77 (s, 3H)。LC−MS 純度: 93%。
【0222】
【化37】

【0223】
化合物23:2,5−ジメチル−フラン−3−スルホン酸アセチル−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−アミド:
白色泡沫。
NMR (250 MHz, CDCI3): δ 7.83 (s, 1 H), 7.65−7.45 (m, 3H), 7.45−7.20 (m, 2H), 6.95−6.70 (m,2H), 6.26 (S, 1 H), 3.85 (s, 3H), 2.57 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 2.01 (s, 3H)。 LC−MS 純度: 86%。
【0224】
【化38】

【0225】
化合物24:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素:
黄色泡沫。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 8.02 (br s, 1H) 7.85 (br S 1 H), 7.72 (d, J 8.2, 1 H) 7.61 (t, J 7.5, 1H), 7.45−7.20 (m, 4H), 6.92 (br s, 1 H), 6.70−6.35 (m, 4H), 3.55 (br s, 3H), 3.05 (br s, 3H), 2.55 (br s, 3H)。 LC−MS 純度: 98%。
【0226】
【化39】

【0227】
化合物07:N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)ベンズアミド。
(別名:N−ベンゾイル−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−グアニジン)。
白色固形物:
NMR (250 MHz CDCI3): δ 8.17−8.12 (m, 2H), 7.74 (s, 1 H), 7.60−7.20 (m, 8H), 6.85−6.75 (m, 2H), 3.73 (S, 3H). LC−MS 純度: 100%。
【0228】
【化40】

【0229】
化合物12:(2E)−3−(2フリル)−N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)アクリルアミド。
(別名:N−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−グアニジン)
白色固形物。
NMR (250 MHz, DMSO): δ 11.82 (br s, 1 H), 10.93 (br s, 1H), 9.13 (br s, 1H) 8.03 (s, 1H) 7.96(s, 1 H) 7.79 (d, J 7.7, 1 H) 7.70−7.60 (m, 2H), 7.55−7.35 (m, 3H) 7.19 (d, J 1.0, 1 H) 7.15−7.00(m, 2H) 6.80−6.60 (m, 2H) 3.79 (br s, 3H)。LC−MS 純度: 95%。
【0230】
実施例2.インビトロ系(in vitro)での増殖/生存、及び細胞周期の特定のための試験:
2A.ヨウ化プロピジウム染色(Propidium iodide staining)(細胞毒性試験)
ヨウ化プロピジウム(PI)は、正常では細胞膜を通過できない。そのため、生存細胞は排除されるが、損傷を受けた細胞膜を有して死につつある細胞又は死んだ細胞では、ヨウ化プロピジウム(PI)が、核酸二重鎖に挿入され、波長488nmの光線照射時に蛍光を発する。
【0231】
化合物の細胞毒性を決定するため、2×10個の細胞を化合物と共にインキュベートした。このインキュベートは、時間(hr)単位から日(day)単位の範囲で行い、その後、細胞を回収した。この細胞の回収は、細胞が懸濁液中で培養されていれば簡単にピペッティングにより行い、又は、接着細胞をマイルドなトリプシン処理した後に行った。細胞は、1200rpmで5分間の緩やかな遠心分離を4℃にて行うことによりペレットとし、それから上精を捨て、新しい培養液1mL加えることにより培養液を入れ換えた。FACSチューブ中において、100μLのヨウ化ピロピジウムを400μLの細胞懸濁液に加え、生存率をフローサイトメトリーによって測定した。FL−3チャンネルで0及び2の間を含む蛍光記録を示す細胞の割合(百分率)を測定した。
【0232】
2B.細胞周期分析:
化合物の細胞増殖抑制性の決定のため、2×10個の細胞を化合物と共にインキュベートした。このインキュベートは、時間(hr)単位から日(day)単位の範囲で行い、その後、細胞を回収した。細胞は、1200rpmで5分間の緩やかな遠心分離を4℃で行うことによりペレットとし、それから上精を捨て、細胞は、1mLの70%エタノール/PBSにより、−20℃で固定した。その後、チューブは、1200rpmで5分間の遠心分離を行い、上清を除いた。それから、ペレットは、450μLのPBSに再懸濁し、次いで、50μLのRNase(1mg/mL)、及び5μLのヨウ化ピロピジウムを加えた。各チューブは、37℃で30分間静置してインキュベートした後、直ちにフローサイトメトリーで分析した。
【0233】
バイパラメトリックドットプロット(biparametric dot plot)は、FL3ピーク対FL3整数をプロットし、対角線上に位置する細胞をゲーティングして、FL3ピークの機能として細胞数を表すヒストグラムを解析した。細胞周期のサブG1期、G1期、S期、又はG2期における細胞の相対比率を規定する基準点(カーソル)の相対的位置を算出するため、G1期及びG2期のピークを、最初に規定した:
G1期のピークは、未処理でのメジャーピークとして規定した(一般にX=200);
G2期のピークは、G1ピークの値の2倍の値を中心に置いた(一般にX=400)。
サブG1期の細胞は、G1期のピークに先立つヒストグラムのパートにプロットされた(一般にX<200)。そして、S期の細胞は、G1期とG2のピークの間の領域の中に収まった。以上から、このグラフ上において、細胞周期のサブG1期、G1期、S期、及びS/M期が規定された。
【0234】
2C.増殖試験;(ViaLight(R) HS High Sensitivity Cytotoxicity and Cell Proliferation BioAssay Kit):
この方法では、化合物の細胞増殖抑制性及び細胞毒性の活性を決定できる。この試験は、細胞培養系の哺乳類細胞に対して、基本的に製造業者が推奨するものに従って実施した。
【0235】
細胞は、15mLの各培養液に懸濁し、細胞数を数えた。細胞は、以下のものが得られるように希釈を行った:
―MRC5細胞の場合、1ウェル当り、培養液90μL中、2500個の細胞となるようにした;
―他の細胞株の場合、1ウェル当り、培養液90μL中、5000個の細胞となるようにした。
【0236】
次いで、細胞は、96ウェルの細胞培養用プレートにまき、少なくとも4時間、37℃、5%COに設定したインキュベータに配置してインキュベートした。
【0237】
試験対象の分子は、DMSOを含有するDMEMへ以下の希釈率となるように希釈した:
―250μMの分子/1%DMSO;
―50μMの分子/1%DMSO;
―10μMの分子/1%DMSO;
―2μMの分子/1%DMSO;
―400nMの分子/1%DMSO;
―80nMの分子/1%DMSO。
【0238】
90μLの細胞懸濁液が含まれる各ウェルに対し、10μLの試験する化合物の溶液を、上述の6つの異なる条件にて添加した。次いで、細胞培養用プレートは、72時間インキュベートした。コントロール用の細胞培養用プレートには、10μLの1%DMSOを含有したDMEMで化合物を含有しないものを用いた。その後、50μLの溶解バッファー(lysis buffer)(test vialight(R) lysis buffer)をコントロール用の細胞培養用プレートの各ウェルに加え、フード(hood)下で10分間インキュベートした。
【0239】
続いて、100μLのテストバッファー(test vialight(R) test buffer)をコントロール用の細胞培養用プレートの各ウェルに加え、2分間インキュベートした。発光は、ウェル毎に検出した。各種細胞の発光の平均は、T0と称した。
【0240】
72時間のインキュベート後、生存率を決定するため、50μLの溶解バッファー(lysis buffer)(test vialight(R) lysis buffer)を細胞培養用プレートの各ウェルへ加え、フード(hood)下で、プレートを10分間インキュベートした。
【0241】
その後、100μLのテストバッファー(test vialight(R) test buffer)を各ウェルに加え、細胞培養用プレートを2分間インキュベートした。発光は、ウェル毎に検出した。各種の細胞について、化合物を含有しないウェルの発光の平均は、C72と称し、試験する化合物を含有するウェルの発光の平均は、T72と称した。各希釈(試験する化合物の濃度)に対して、T0及びT72の値を比較した。
【0242】
T72が、T0よりも高い、又は同じ場合、以下の式が、成長率(増殖率)を決定するためのものとして適用される。
Y=Growth(%)=(T72−T0)/(C72−T0)×100
【0243】
T72が、T0よりも低い場合、以下の式が、致死率を決定するためのものとして適用される。
Y=LC(%)=(T72−T0)/T0×100
【0244】
グラフは、化合物の種々の濃度に対してプロットされた。
【0245】
GI50は、(50%の成長阻害)が決定され、これは、50%の細胞成長(細胞増殖)を生じる用量である(Y=50での交点)。
【0246】
TGI(全成長阻害)は、グラフ上で決定され、細胞増殖の全てが阻まれる用量である(Y=0での交点)。
【0247】
LC50(50%の致死濃度)は、50%の細胞が致死する用量である(Y=−50での交点)。
【0248】
実施例3.インビトロ系(in vitro)での化合物01による細胞増殖の阻害:
本発明に係る化合物、化合物(01):(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド、の細胞増殖への作用を、種々の濃度にて、種々の細胞を用いて試験した。この種々の細胞とは、すなわち、MRC5(normal non−transformed lung fibroblasts、正常非形質転換肺繊維芽細胞)、H146(肺小細胞癌)、H69(肺小細胞癌)、H69AR(肺小細胞癌、アドリアマイシン抵抗性(adriamycin resistant))、U937(組織球性リンパ腫)、BL41(バーキットリンパ腫(Burkitt Lymphoma))、Val(リンパ腫)、RS4−11(急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukaemia))、H460(非小細胞肺癌)、PC3(前立腺癌)、MDA231(乳房上皮癌(breast epithelial adenocarcinoma))、Lovo(結腸直腸腺癌(colorectal adenocarcinoma))、及び、A375(メラノーマ)である。方法は、実施例2Cに詳しく述べる。
【0249】
結果は、図1A及び1Bに表した。
【0250】
細胞成長の負の割合(百分率)の値は、抗細胞増殖抑制性の作用の加え、細胞毒性の作用を示す。
【0251】
結論として、化合物(01)は、肺、前立腺、乳房、結腸、メラノーマ、及び骨髄の腫瘍細胞に成長(増殖)を、IC50が50nMから1μMの範囲にて、阻害することが見られた。生存率及び細胞周期プロファイルは、500nMの化合物(01)で試験した。
【0252】
【表2】

【0253】
結論として、化合物(01)((2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド)は、リンパ系腫瘍及び骨髄腫瘍の細胞に対して、アポトーシス性の細胞周期プロファイルを生じさせ、細胞毒性の作用を有する。また、化合物(01)は、前立腺及び肺の腫瘍細胞には、有糸分裂へ移行する時期の細胞周期を停止させる細胞増殖抑制性を有する。なお、この実験において、コントロールの非形質転換細胞(MRC5)は、化合物(01)と接触しても影響が及ばなかった。
【0254】
実施例4.インビボ系(in vivo)での腫瘍成長の阻害:
この実験のため、Swiss系統のヌードマウス(Swiss nude mice)には、5×106個の肺癌細胞NCL−H460細胞(NSCLC)を、皮下へ異種移植(subcutaneous xenograft)した。処理当初の腫瘍の大きさに対する腫瘍の大きさの成長の割合(百分率(%))を、15日間にわたり4種の処理を受けたそれぞれのマウス(1種の処理の群当たり12匹のマウス)についてプロットした。
【0255】
第1の処理は、コントロールに相当する。この処理では、マウスは、溶媒対照(Vehicle)を腹腔内へ2日間隔で与えた(2QD)。溶媒対照(Vehicle)の組成は、10%DMSO;10%PEG−400;30%(エタノール/Cremorhor(1/2));50%滅菌水、とした。
【0256】
第2の処理は、本発明の係る化合物である化合物(01)を投与量18mg/kgにて2日間隔で投与した(2QD)。
【0257】
第3の処理は、タキソールを投与量8mg/にて間欠投与(Q3D×5;1日目;4日目;7日目;10日目;13日目)するものに相当する。
【0258】
第4の処理は、化合物(01)の投与量18mg/kgの投与(2QD)とタキソールの投与量8mg/kgの投与(Q3D×5)とを組み合わせたものに相当する。
【0259】
結果は、図2に表す。
【0260】
化合物(01)((2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド)は、異種移植モデルにおいて、攻撃性の肺腫瘍の成長を阻害することが結論づけられた。また、腫瘍の成長を減少させる化合物の作用は、他の抗腫瘍剤との組み合わせ、特にタキソールとの組合せにより、亢進されることが観察された。また、この阻害は、用量依存的に生じることが観察された。
【0261】
実施例5.化合物(01)のBcl−xLへの直接的な結合の蛍光阻害(fluorescence interference)による決定:
実験は、蛍光分光計(SLM−Aminco 8000C spectrofluorometer)を用い、2nm及び4nmそれぞれのスペクトルバンド幅において、励起と放出を行った。
【0262】
0.5μMの精製された6×His−Bcl−XLは、25℃にて1.2mLの事前に平衡化された以下の緩衝液によって希釈した。この緩衝液は、10 mM Tris−HCI, pH= 7.4;100 mM NaCI;1 mM β−メルカプトエタノール、及び10%グリセロール、という組成とした。
【0263】
蛍光の測定は、100%DMSOを溶媒として、100nMから7.5μMまで化合物(01)の濃度を増加させながら実施した。
【0264】
Bcl−xLのトリプトファン内在性の蛍光は、295nmの励起光に対する310〜390nmの放出光の検出によって測定された。化合物(01)の結合は、化合物(01)の濃度の増加に伴う蛍光の増加によって観察された。内部フィルター効果(innerfilter effect)の補正及びDMOSOの希釈は、NATA(N−acetyltryptophanamide)を用いて決定した。全てのスペクトルでは、緩衝液の作用及び希釈を補正した。曲線適合は、Grafit(Erithacus software)を用い、蛍光の増加に対する以下の方程式により実施した。
【0265】
F=Fmin+{(Fmax−Fmin)[(Et+L+Kd)−((Et+L+Kd)2−4EtL)1/2]}/2Et
【0266】
但し、
F=相対的蛍光強度、Fmin=滴定開始時の蛍光強度;
Fmax=化合物(01)濃度の飽和時の蛍光(リガンド(Ligand)=L);
Et=6×His−Bcl−xLの全濃度;
Kd=6×His−Bcl−xL/化合物(01)複合体の見掛けの解離定数
【0267】
実施例6.小分子のプルダウンアッセイ(Pull down assay):
ペプチドアプタマー(BF8と呼ぶ)は、BCL−2ファミリーのメンバーである抗アポトーシス性たんぱく質Bfl1に対して選択された。BF8は、Bcl−xLが属するBCL−2ファミリーの他のメンバーとの相互作用も示された。以下の2つの根拠は、BF8が、抗アポトーシス性BCL−2様たんぱく質の疎水性溝(hydrophobic groove)に結合することを示す。第1に、可変部位のアミノ酸配列は、BCL−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバーのBH3ドメインの配列との類似性を持つ。BCL−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバーは、Bak又はBaxのようなものであり、この疎水性溝を介して抗アポトーシス性のたんぱく質と結合することが知られる。第2に、BF8は、前記疎水性溝内にアミノ酸置換を有するBfl−1の変異型にはもはや結合しない。
【0268】
Bcl−xL/BF8インビトロ相互作用アッセイは、ペプチドアプタマーとの競合によって、本発明に係る化合物が、この結合を崩す能力を有するのか検証するために開発した。6×His−Bcl−xL及びGST−BF8の組換え融合タンパク質は、大腸菌(E.coli)に発現させ、アフニティークロマトグラフィーを用いて精製した。GST−BF8融合タンパク質(又はGST−コントロールアプタマー融合タンパク質)は、グルタチオン−セファロース固相と結合させ、各種の分子の存在下において、溶解性の6×6×His−Bcl−xLをこの固相に加えた。固相に捕捉された6×His−Bcl−xL分子は、抗6×His抗体を用いて、ウェスタンブロット実験により検出した。
【0269】
方法の詳細は、以下に示す。
【0270】
(1)事前にリンスした25μLのグルタチオン−セファロースビーズは、10μgの精製されたGST−BF8融合タンパク質を含有するプルダウンバッファー(pull down buffer)(5OmM Tris−HCI,pH=8.0; 10OmM NaCI; 1mM DTT et 0,01% Tween20)と混合した。混合液は、室温で、30分間インキュベートした。
【0271】
(2)ビーズは、遠心分離と1mLのプルダウンバッファーによる希釈とによる洗浄を行った。その後、ビーズは、遠心分離し、上清を除くことにより、回収した。
【0272】
(3)4℃で2時間のプレインキュベートした5%DMSO及び化合物(50μM)を含有するプルダウンバッファーへ、0.5μgの精製された6×His−Bcl−xL融合タンパク質を添加した。この混合液は、コンスタントな攪拌下、2時間インキュベートした。
【0273】
(4)その後、ビーズは、濃縮と1mLのプルダウンバッファーによる希釈とを3回繰り返すことにより洗浄した。
【0274】
(5)ビーズを回収し、上清を除き、ビーズは、SDS−PAGE用の1×Laemli buffer(0.25 M Tris−HCI, pH= 6.8; 5 % SDS; 0.025 % bromophenol blue; 0.6 M β−メルカプトエタノール、及び 10%グリセロール)に再び懸濁した。この混合液は、100℃で10分間加熱し、次いでSDS−PAGEを行った。
【0275】
(6)ウェスタンブロット分析は、抗Hisタグ抗体を用いて行った。
【0276】
図3に示す結果から、化合物(01)((2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド)、及び、化合物(02)((N−({[3−メトキシ−4−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル]フェニル}アミノ)カルボノチオイル)ベンズアミド)は、インビトロ系での6×His−Bcl−xLとGST−BF8との相互作用を阻害することが、結論づけられた。
【0277】
実施例7.アポトーシス:
アポトーシスの誘導(BCL−2様たんぱく質への標的から想定される)により引き起こされる本発明に係る化合物の細胞毒性の活性を証明するため、アポトーシスを特異的に検出する3種の異なるアッセイを、化合物(01)で24時間にわたり処理したU937細胞を用いて実施した。活性化カスパーゼ3(Caspase 3)及びホスファチジルセリンの細胞膜外層への露出を示す細胞の割合(百分率比(%))をフローサイトメトリーによって決定した。両アッセイは、アポトーシスの初期マーカーを検出できる。サブG1期のDNA含量を示す細胞の割合(百分率比(%))もまたフローサイトメトリーによって決定した。このDNA含量は、アポトーシスのマーカーとして古典的に用いられている。図4に示す実験において、G2/M期のDNA含量を示す細胞の割合(百分率比(%))も決定した。最後に、この同じ実験において、死細胞の割合(百分率比(%))を、ヨウ化プロピジンの取り込みにより決定した。
【0278】
方法の詳細は、以下に示す。
【0279】
細胞培養及び化合物(01)処理:
ヒト組織球性リンパ腫のU937細胞は、European Collection of Cell Cultures(ECACC 85011440)より入手し、10%熱不活化ウシ胎児血清(heat decomplemented fetal bovine serum)、100UI/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、及び2mM グルタマックスI(gltamax I)を含有するRPMI1640培養液に懸濁して維持した。
【0280】
化合物(01)を添加する12時間前に、U973細胞は、12ウェルの細胞培養用プレートに細胞密度が(5×10細胞数/900μL培養液)となるようにまいた。
【0281】
細胞には、4〜24時間までの間の多種の処理時間での100μLの5μM 化合物(01)/1%DMSO(最終濃度 0.5μM/0.1%DMSO)による処理、又はDMSO単独による10時間及び24時間の処理(それぞれコントロール1及びコントロール2)を行った。
【0282】
4、6、8、10時間インキュベーションのウェル、及びコントロール1のウェルは、1日目に分析した。
【0283】
12、14、16、20、24時間インキュベーションのウェル、及びコントロール2のウェルは、2日目に分析した。
【0284】
Annexin−V結合分析及びヨウ化プロピジン(PI)染色は、Annexin−V FITCキット(IM3546.; Beckman Coulter; Villepinte)を用いたフローサイトメトリーを製造者の説明に従って実施した。
【0285】
5×10個の細胞は、1600rpmで4℃の遠心分離によって素早くペレットとし、1μLのAnnexin V−FITC、5μLのPI(250μg/mL)、及び100μLの氷冷1×Annexin−V binding Bufferを混合した液に再懸濁した。氷上で暗闇にて15分間インキュベートした後、400μLの1×binding bufferを添加し、調製した細胞をフローサイトメトリーで分析した。
【0286】
カスパーゼ−3,7(Caspase−3,7)の活性の分析は、CaspglowTM kit(K−183/biovision; Mountain View)を製造者の説明に従って使用したフローサイトメトリーにより実施した。
【0287】
5×10個の細胞は、1600rpmで4℃の遠心分離によって素早くペレットとし、300μLの細胞培養液に再懸濁した。1μLのFITC−DEVD−FMKを各チューブに添加し、37℃、5%COに設定したインキュベータ中に30分間静置した。細胞は、2度遠心分離(3000rpm/5分間)し、0.5mLのWash Bufferで洗浄した後、300μLのWash Bufferに再懸濁し、フローサイトメトリー分析まで氷上においた。
【0288】
フローサイトメトリー:
全ての実験は、空冷アルゴンイオンレザー488nmが設定されたCytomics Flow Cytometer 500(Beckman Coulter)により実施した。全ての分析は、CXP software(Beckman Coulter)を用いて行った。
【0289】
各データポイントに対し、最小で20000細胞を分析した。
【0290】
カスパーゼ3,7の活性及びAnnexin−Vの結合は、FL−1チャンネルを用いて定量化し、PI染色は、FL−4チャンネルを用いて定量化した。
【0291】
細胞周期分析は、先に記述したように、実施した。
【0292】
ここに示す結果及び図4から、化合物(01)(((2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド)は、U973細胞に対する細胞増殖抑制性の作用を発揮し(細胞周期のG2/M期中の細胞群の初期の増加により判明)、及び、アポトーシスを誘導する(活性化カスパーゼ3、ホスファチジルセリンの膜への露出、及びサブG1期のDNA含量を示す細胞の割合(百分率比(%))の漸増により判明)ことが結論づけることができる。
【0293】
実施例8.増殖試験:
実施例2Cに記述した方法に従い、本発明に従う種々の化合物について、細胞培養系における哺乳類細胞(特にU937細胞)に対する細胞増殖抑制性及び細胞毒性の活性をテストした。
【0294】
GI50(50%の成長阻害)は、以下の全ての化合物に決定した。GI50は、換言すると、50%の細胞成長阻害を生じる化合物の用量である。
【0295】
得られた結果は、以下の表に示す。GI50が数値範囲の形式で表中に与えられている場合、多数回の実験が実施され、その結果がこの数値範囲内に現れたことを意味する。そうでない場合、個別の実験の結果が表中に与えられている。
【0296】
【表3】

【0297】
【表4】

【0298】
【表5】

【0299】
[参考文献]
Contractor R, Konopleva M, Samudio I et al. Inhibition of Bcl−2 signaling by small molecule BH3 inhibitor GX15−070 as a novel therapeutic strategy in AML. Blood . 2005;106:942a, abstract * 3372.
【0300】
Galan PP, Roue G, Billamor N, et al. The small molecule pan=Bcl−2 inhibitor GX15−070 induces apoptosis in vitro in mantle cell lymphoma (MCL) cells and exhibits a synergistic effect in combination with the proteasome inhibitor bortezomib (Velcade(R)). Blood. 2005; 106:429a, abstract #1490.
【0301】
Mohammad RM Wang S, Aboukameel A, Chen B Wu X Chen J, Al−Katib A. Preclinical studies of a nonpeptidic small−molecule inhibitor of Bcl−2 and BcI−X(L) [(−)−gossypol] against diffuse large cell lymphoma. MoI Cancer Ther. 2005 Jan;4(1): 13−21.
【0302】
Oltersdorf T. et al. An inhibitor of Bcl−2 family proteins induces regression of solid tumours. Nature. 2005; 435 (7042): 677−81.
【0303】
Sattler M. et al. Structure of Bcl−xL−Bak peptide complex: recognition between regulators of apoptosis. Sicence. 1997; 275 (5302): 983−986.
【図面の簡単な説明】
【0304】
【図1A】インビトロ(in vitro)での細胞増殖の阻害。このグラフは、本発明の化合物(化合物01)の濃度を増加した際の14個の異なる細胞の群の成長の割合(百分率)で表す。
【図1B】インビトロ(in vitro)での細胞増殖の阻害。このグラフは、本発明の化合物(化合物01)の濃度を増加した際の14個の異なる細胞の群の成長の割合(百分率)で表す。
【図2】インビトロ系での腫瘍の成長の阻害。このグラフは、マウスに腫瘍を移植し、15日間にわたり各種の治療を施した際における、当初の腫瘍の大きさを基準とした腫瘍の大きさの成長を表す。ひし形:溶媒対照(Vehicle、活性成分が非含有)の腹腔内投与(2日間隔の間欠投与、2QD)を受けたマウスより回収し、測定した腫瘍の成長の推移。三角形:化合物(01)の用量18mg/kgの腹腔内投与(2日間隔の間欠投与、2QD)を受けたマウスより回収し、測定した腫瘍の成長の推移。丸:タキソール(taxol)の用量8mg/kgの腹腔内投与(Q3D×5、1日目、4日目、7日目、10日目、13日目に投与)を受けたマウスより回収し、測定した腫瘍の成長の推移。クロス:化合物(01)の用量18mg/kgの腹腔内投与(2日間隔の間欠投与、2QD)とタキソール(taxol)の用量8mg/kgの腹腔内投与(Q3D×5、1日目、4日目、7日目、10日目、13日目に投与)との組み合わせを受けたマウスより回収し、測定した腫瘍の成長の推移。
【図3】Bcl−xLとBF3との相互作用の阻害。BF8は、BCL−2ファミリーメンバーの疎水性溝(hyrophobic groove)を標的とするペプチドアプタマーである。この写真は、本発明の化合物(01)及び(02)が存在及び非存在の際の、GST−BF8に捕捉された6×His−Bcl−xL融合タンパク質に関するウェスタンブロット(Western blot)解析を表す。C−:コントロールペプチドアプタマー(Bcl−xLとは相互作用しない)。C+:5%DMSO中においてGST−BF8に捕捉された6×His−Bcl−xL融合タンパク質。(02):化合物(02)50μMが溶解した5%DMSO中でのGST−BF8に捕捉された6×His−Bcl−xL融合タンパク質。(01):化合物(01)50μMが溶解した5%DMSO中でのGST−BF8に捕捉された6×His−Bcl−xL融合タンパク質。
【図4】0.5μMの化合物(01)に誘導されたU937細胞での細胞効果の時間的経過を表す。X軸:化合物(01)で処理された時間(時間、hr)。Y軸:陽性細胞の割合(%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗増殖性の特性を有し、下記一般式(a)、(a’)及び(b)のいずれか1つにて表される化合物、前記化合物のアルカリ又は酸付加塩、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の光学異性体、又は前記化合物のジアステレオ異性体に属する化合物。
【化1】

(但し、上記式(a)、(a’)及び(b)中、
環(I)、(II)、及び(III)は、1位、2位、3位、又は4位の置換可能な炭素原子が、Br、Cl、F、I、OH、O−CH、COOH、及び(CH−Rからなる群から選択される基と任意に置換され、Rは、H、CH、OH、O−CH、COOH、NH、CO−NH、NH−CO−フェニル、アルキル、へテロアリール、又はヘテロシクロアルキルを表し、そして、m=1、2、3、又は4であって、
Yは、H、CH、又はCO−CHを表し、
は、O、NR16であって、R16は、H、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、又はN−(CH−Rであって、Rは、OH、COOR16、CO−NHR16、NHR16、O−CH−R16、CN、O−CO−CH16、CO−へテロシクロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又は下記ラジカル:アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、F、Cl、NH、C≡N、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CH3、の1つ又はそれ以上の基により置換可能であって、p=0、1、2、3、4、5、又は6、そして、R16は、H、又は1、2、3又は4個の炭素原子を含むアルキルであって、
は、H、又は4個より少ない炭素原子を含むアルキルを表し、
は、式(a)中では、S、O、又はNHを表し、式(a’)中では、S−(CH−R10、又はNH−(CH−R10を表すものであって、R10は、Rと同義であり、q=0、1、2、3、又は4であって、
は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又はCH=CH−R11を表すものであって、R11は、Rと同義であり、Rの分子量は、500Da未満であって、
さらに、
がOを表すとき、Rは、N−R、又はO−Rであって、Rは、Rと同義であり、NはNH、又はN(CH)を表すか、
がNH、S−(CH−R10、又はNH−(CH−R10を表すとき、Rは、R、又はN−CO−Rであって、RはRと同義であり、Nは、NH、又はN(CH)を表すか、
がSを表すとき、
Rは、N−(CH−R12であって、R12は、Rと同義であり、n=0、1、2、3、又は4であり、Nは、NH、又はN(CH)を表すか、
Rは、N−CO−Rであって、−Rは、t−ブチルを除く直鎖又は分岐鎖のアルキル、−Rは、−(CH−COを表し、S=1、2、3又は4、Rは、アルキル、−F、−Cl、−NH、−C≡N、−OH、−CO−NH、−O−CH、−CO−OH、−CO−OCH、もしくは−O−CO−CHによりパラ位が1置換されたフェニルラジカルを表すか、又は、
Rは、N−CO−R17であって、R17は、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又はCH=CH−R18を表すものであって、そして、R18はR17と同義であり、R17の分子量は500Da未満であって、Nは、NH、又はN(CH)を表し、RはOでないものである。)
【請求項2】
前記Rが、酸素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Rが、メチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記環(I)及び(II)のうち少なくとも一方は、F、又は(CH−Rにて置換され、m=1又は2であって、Rは下記式に表される構造のいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項5】
前記式(a)において、Rが、Oであり、−Rが、−CHであり、Rが、Oであり、Yが、Hであり、Rが、NH−Rであって、Rが、フェニル、ベンジル、又は−C−N(CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記式(a)において、Rが、O、又はNHであり、−Rが、−CHであり、Rが、NHであり、Yが、Hであり、−(R)が下記式にて表される構造であって、下記式において、フランモイティは、例えばチオフェン、ピロール、チアゾール、ピラゾール、又はオキサゾールモイティである他のヘテロシクロアルキル、と任意に置き換わり、さらに、前記モイティは、1〜4個の炭素を有するアルキル、NH、O、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CHによって任意に置換される、請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項7】
前記式(b)において、Rが、Oであり、−Rが、−CHであり、Yが、Hであり、−(R)が下記式に表す構造のいずれかである、請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項8】
前記式(a)において、Rが、O、又はNHであり、−Rが、−CHであり、Rが、NHであり、Yが、Hであり、−Rが、−NH−CO−Cである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記式(a)において、Rが、Oであり、Rが、H又はCHであり、RがSであり、YがHであり、RがNH−(CH−R12であって、n=0であり、−(R12)が下記式に表す構造のいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【化5】

【請求項10】
前記式(a)において、Rが、Oであり、−Rが、−CHであり、Rが、Sであり、Yが、Hであり、RがNH−(CH−R12であって、n=0、R12が、Cである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記式(a)において、Rが、Oであり、−Rが、−CHであり、Rが、Sであり、Yが、Hであり、Rが、NH−CO−Rであって、Rが、−CH−CH−CO、又は下記式に表される構造であって、そして、下記式中、R13は、C〜Cのアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【化6】

【請求項12】
式(a)において、Rが、Oであり、−Rが、−CHであり、Rが、Sであり、Rが、NH−(CH−Rであって、n=1、Rが−Cである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式(a’)において、Rが、Oであり、−Rが、CHであり、Rが、S−CHであり、(−R)が、下記式に表される構造であって、そして、下記式中、フランモイティが、例えばチオフェン、ピロール、チアゾール、ピラゾール又はオキサゾールモイティなどの他のヘテロシクロアルキルに任意に置き換えられ、さらに、前記モイティは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、NH、O、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CHによって任意に置換される、請求項1に記載の化合物。
【化7】

【請求項14】
以下の化合物の中の1つを有する、請求項1に記載の化合物:
化合物03:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニル尿素;
化合物04:1−[3−メトキシ−4−(2オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニルチオ尿素;
化合物05:4−フルオロ−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボチオイル)ベンズアミド;
化合物06:1−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]尿素;
化合物07:N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)ベンズアミド;
化合物08:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−3−(6−モルフォリン−4−イルピリジン−3−イル)チオ尿素;
化合物09:メチル5−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}スルホニル)−1−メチル−1 H−ピロール−2−カルボキシレート;
化合物10:メチルN−[(2E)−3−(2−フリル−)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−N−メチルイミドチオカルバメート;
化合物12:(2E)−3−(2フリル)−N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)アクリルアミド;
化合物13:N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−2,5−ジメチルフラン−3−スルホアミド;
化合物14:メチル N−[(2E)−3−(2−フリル)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]イミドチオカルバメート、
化合物15:(2E)−3−(2−フリル)−N−([3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ)カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物16:メチル N−(4−フルオロベンゾイル)−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−N−メチルイミドチオカルバメート;
化合物17:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物18:1−[3−(ジメチルアミノ)フェニル]−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]尿素;
化合物19:N’−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−N−メチル−グアニジン;
化合物20:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル−3−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−チオ尿素;
化合物21:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−{4−[1−(ヒドロキシ−エチル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−3−メトキシ−フェニル}−チオ尿素;
化合物22:N−ベンゾイル−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]−グアニジン;
化合物23:2,5−ジメチル−フラン−3−スルホン酸アセチル−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−アミド;
化合物24:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素;及び、
化合物25:1−(4−フルオロ−ベンゾイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素。
【請求項15】
治療に用いられ、抗増殖性の特性を有し、下記一般式(c)にて表される化合物、前記化合物のアルカリ又は酸付加塩、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の光学異性体、又は前記化合物のジアステレオ異性体に属する化合物。
【化8】

(但し、上記式(c)中、
環(I)、(II)、及び(III)は、1位、2位、3位、又は4位の炭素原子が、BrCl、F、I、OHO−CH、COOH、及び(CH−Rからなる群から選択される基と任意に置換可能であって、Rは、H、CH、OH、O−CH、COOH、NH、CO−NH、NH−CO−フェニル、アルキル、へテロアリール、又はヘテロシクロアルキルを表し、そして、m=1、2、3、又は4であって、
は、O、NR16であって、R16は、H、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル、又はN−(CH−Rであって、Rは、OH、COOR16、CO−NHR16、NHR16、O−CH−R16、CN、O−CO−CH16、CO−へテロシクロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又は下記ラジカル:アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、F、Cl、NH、−C≡N、OH、CO−NH、O−CH、CO−OH、CO−OCH、又はO−CO−CH、の1つ又はそれ以上の基で置換可能であって、そして、p=0、1、2、3、4、5、又は6であり、そして、R16は、H、又は1、2、3又は4個の炭素原子を含むアルキルであって、
は、H、又は4個未満の炭素原子を含むアルキルを表し、
14及びR15は、独立して、分子量400Da未満の多種の置換基であって、R14とR15は同時に酸素であることはない。)
【請求項16】
14、R15、NR14、及びNR15のうち少なくともいずれかが、アミド、スルホンアミド、ケトン、フラン、尿素、チオ尿素基、ベンジル、フェニル、アクリル、又はグアニジンを含む、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記環(I)及び(II)のうち少なくとも一方は、F、又は(CH−Rにて置換されるものであって、m=1又は2であり、Rは下記式に表される構造のいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【化9】

【請求項18】
14とR15とが異なる構造を有する、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
14、及びR15のうち少なくとも一方は、H、又はCHである、請求項15又は18に記載の化合物。
【請求項20】
以下の化学物から選択される、請求項15に記載の化合物:
化合物01:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物02:N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)ベンズアミド;
化合物03:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニル尿素;
化合物04:1−[3−メトキシ−4−(2オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−3−フェニルチオ尿素;
化合物05:4−フルオロ−N−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボチオイル)ベンズアミド;
化合物06:1−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]尿素;
化合物07:N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)ベンズアミド;
化合物08:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−3−(6−モルフォリン−4−イルピリジン−3−イル)チオ尿素;
化合物09:メチル5−({[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}スルホニル)−1−メチル−1 H−ピロール−2−カルボキシレート;
化合物10:メチルN−[(2E)−3−(2−フリル−)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−N−メチルイミドチオカルバメート;
化合物12:(2E)−3−(2フリル)−N−(イミノ{[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]アミノ}メチル)アクリルアミド;
化合物13:N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−2,5−ジメチルフラン−3−スルホアミド;
化合物14:メチル N−[(2E)−3−(2−フリル)プロプ−2−エノイル]−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]イミドチオカルバメート、
化合物15:(2E)−3−(2−フリル)−N−([3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ)カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物16:メチル N−(4−フルオロベンゾイル)−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]−N−メチルイミドチオカルバメート;
化合物17:(2E)−3−(2−フリル)−N−({[3−メトキシ−4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]アミノ}カルボノチオイル)アクリルアミド;
化合物18:1−[3−(ジメチルアミノ)フェニル]−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニル]尿素;
化合物19:N’−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−N−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−N−メチル−グアニジン;
化合物20:1−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル−3−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−チオ尿素;
化合物21:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)−3−{4−[1−(ヒドロキシ−エチル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−3−イル]−3−メトキシ−フェニル}−チオ尿素;
化合物22:N−ベンゾイル−N’−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−イル)フェニル]−グアニジン;
化合物23:2,5−ジメチル−フラン−3−スルホン酸アセチル−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−アミド;
化合物24:1−((E)−3−フラン−2−イル−アクリロイル)3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素;及び、
化合物25:1−(4−フルオロ−ベンゾイル)−3−[3−メトキシ−4−(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−フェニル]−1,2−ジメチル−イソチオ尿素。
【請求項21】
腫瘍細胞に対する細胞毒性の特性を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制性の特性を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記腫瘍細胞が、肺、前立腺、胸部、結腸、メラノーマ、リンパ腫、又は脊髄由来の腫瘍細胞である、請求項21又は22に記載の化合物。
【請求項24】
モル濃度50×10−6mol/L超、好ましくは500×10−6mol/L超にて水に溶解できる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
解離定数Kdが1μM未満、好ましくは100nM未満にてBcl−xLタンパク質に結合する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物であって、
少なくとも1つの治療薬ともに用い、好ましくは他の抗腫瘍剤ともに用いる、組成物。
【請求項27】
前記抗腫瘍剤が、タキソール(パクリタキセル)、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、レチノイン酸、タモキシフェン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、トポテカン、イリノテカン、ゲムシタビン、又はラパマイシンである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物と他の抗腫瘍剤とを含み、治療において、同時に、個別に、又は連続的に使用する混合製剤としての産生物。
【請求項29】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物と、
医学的に許容され得る担体と、を含む医薬組成物。
【請求項30】
病巣内、腹腔内、筋内、若しくは静脈内への注射を介した投与、インフュージョンを介した投与、リポソームが介在したデリバリー、局所、鼻、経口、肛門、皮下、膣、舌下腺、尿道、経皮、髄腔、目、又は耳へのデリバリーを介した投与、のための請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
癌治療の対象への投与を目的とする薬剤の製造のための、請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項32】
前記薬剤は、病巣内、腹腔内、筋内、若しくは静脈内への注射を介した投与;インフュージョンを介した投与;リポソームが介在したデリバリー;局所、鼻、経口、肛門、皮下、膣、舌下腺、尿道、経皮、髄腔内、目、又は耳へのデリバリーを介した投与、のためのものである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
癌治療の対象への投与を目的とする薬剤の製造のための、請求項26又は27に記載の組成物の使用。
【請求項34】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、
癌の治療の対象へ、前記化合物と少なくとも他の抗腫瘍剤とを、同時に、個別に、又は連続的に投与することを目的とする薬剤の製造のための化合物の使用。
【請求項35】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の化合物と細胞とのインビトロ系での接触を含む、インビトロ系における細胞増殖を阻害するための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−538290(P2009−538290A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511607(P2009−511607)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002179
【国際公開番号】WO2007/135565
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508344648)イオス(エシカル オンコロジー サイエンス)エス.ピー.エー. (1)
【Fターム(参考)】