説明

3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン

Gタンパク質共役受容体GPR119の活性を調節する式(I)の化合物、および動物における、Gタンパク質共役受容体GPR119の調節と関連付けられる疾患の治療のためのその使用が本明細書に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な部類の3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、それらの化合物を含有する医薬組成物、およびGタンパク質共役受容体GPR119の活性を調節するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、異常なグルコース恒常性の結果として高濃度の血中グルコースが存在する障害である。最も一般的な形態の糖尿病は、I型糖尿病(インスリン依存型糖尿病とも呼ばれる)およびII型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病とも呼ばれる)である。すべての糖尿病症例のおよそ90%を占めるII型糖尿病は、微小血管合併症(網膜症、神経障害、および腎障害を含める)、ならびに大血管合併症(加速性のアテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、および卒中を含める)をもたらす深刻な進行性疾患である。
【0003】
現在、糖尿病の治療法は存在しない。この疾患の標準的な治療は限られており、血中グルコース濃度をコントロールして、合併症を最小限に抑える、または遅らせることに集中している。現行の治療は、インスリン抵抗性(メトホルミン、チアゾリジンジオン)、またはβ細胞からのインスリン放出(スルホニル尿素、エキサナチド(exanatide))のどちらかをターゲットとしている。β細胞の脱分極を介して働くスルホニル尿素および他の化合物は、循環グルコース濃度とは無関係にインスリン分泌を刺激するので、低血糖を促進する。認可されている薬物の1つであるエキサナチドは、高グルコースの存在下でのみインスリン分泌を刺激するが、経口による生物学的利用能を欠くので、注射しなければならない。ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤であるシタグリプチンは、インクレチンホルモンの血中濃度を上昇させる新しい薬物であり、そのインクレチンホルモンは、インスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を減少させることができ、あまり特徴付けられていない他の効果ももち得る。しかし、シタグリプチンおよび他のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、他のホルモンおよびペプチドの組織濃度にも影響を及ぼすことがあり、このより広範な影響による長期的な結果については、十分な調査がなされていない。
【0004】
II型糖尿病では、筋細胞、脂肪細胞、および肝細胞がインスリンに正常に反応しない。この状態(インスリン抵抗性)は、細胞のインスリン受容体の数の減少、細胞のシグナル伝達経路の破綻、またはこの両方に起因する可能性がある。最初のうち、β細胞は、インスリン産生量を増加させてインスリン抵抗性の埋め合わせをする。しかし結局、β細胞は、正常なグルコース濃度(正常血糖)を維持するのに十分なインスリンを産生できなくなり、II型糖尿病への進行を示す。
【0005】
II型糖尿病では、β細胞の機能不全と相まったインスリン抵抗性により空腹時高血糖が生じる。β細胞異常機能不全には2つの態様がある。すなわち、1)(非刺激性の低グルコース濃度で起こる)基礎インスリン放出の増加(これは、II型糖尿病だけでなく、肥満のインスリン抵抗性前糖尿病段階でも認められる)、および2)高血糖負荷に反応して、インスリン放出が、すでに上昇している基礎レベルを上回って増加しないこと(この現象は、前糖尿病段階では起こらず、正常血糖のインスリン抵抗性段階から明らかなII型糖尿病へと移行する前兆となる場合もある)。後者の態様を治療する現行の療法としては、内在性の貯蔵インスリンの放出を誘発するためのATP感受性β細胞カリウムチャネルの阻害剤、および外因性インスリンの投与が挙げられる。どちらも血中グルコース濃度の的確な正常化を実現するものでなく、また低血糖を惹起するリスクを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、グルコース依存的に機能する薬剤の発見に大きな関心が寄せられている。このように機能する生理学的なシグナル伝達経路は、腸管ペプチドのGLP−1およびGIPを含めて、よく知られている。これらのホルモンは、同種のGタンパク質共役受容体を介して信号を送って、膵臓β細胞におけるcAMPの産生を刺激する。cAMPが増加しても、空腹時または食事前の状態の間はインスリン放出が刺激されないようである。しかし、ATP感受性カリウムチャネル、電位感受性カリウムチャネル、および開口分泌機構を含めた、cAMPのいくつかの生化学的ターゲットは、食後のグルコース刺激によるインスリン分泌が顕著に強化されるように調節される。したがって、同様に機能する、GPR119を含めた新規なβ細胞GPCRのアゴニスト調節因子も、II型糖尿病患者において、内在性インスリンの放出を刺激し、グルコース濃度の正常化を促進するということになる。たとえばGLP−1が刺激された結果としてcAMPが増加すると、β細胞増殖が促進され、β細胞死が抑制され、したがって膵島質量が向上することもわかっている。β細胞質量に対するこのプラスの効果は、インスリンが十分に産生されないII型糖尿病において有益となるはずである。
【0007】
代謝性疾患が他の生理系に悪影響を及ぼすことはよく知られており、複合的な疾患状態(たとえば、「シンドロームX」におけるI型糖尿病、II型糖尿病、不十分な耐糖能、インスリン抵抗性、高血糖、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、異脂肪症、肥満、または心血管疾患)、または腎疾患や末梢神経障害などの、糖尿病に引き続いて生じる続発性疾患がしばしば併発される。したがって、糖尿病状態の治療は、このような相互に関連した疾患状態にとって有益であるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、新規な部類の3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナンが発見された。これらの化合物は、以下に示す式I
【0009】
【化1】

[式中、
は、CO−O−R、または次式
【0010】
【化2】


によって表される置換ピリミジンであり、
は、水素またはメチルであり、
は、水素、ハロゲン、シアノ、CF、OCF、C〜Cアルコキシ、およびC〜Cアルキルからなる群から選択される置換基であり、
は、存在しないか、またはSO−R、CO−NR、テトラゾール、C〜Cアルキル、NH、−NH−C〜Cアルキル、−NH−CO−C〜Cアルキル、NH−(CH−OHであり、
は、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり、
は、CF、C〜Cアルキル、ハロゲン、シアノ、またはC〜Cシクロアルキルであり、
は、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルキル、NH、または(CH−OHであり、
は、水素またはC〜Cアルキルであり、
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、CH−CH−OH、CH−CH−O−CH、CH−CH−CH−O−CH、CH−CH−CH−OH、3−オキセタニル、3−ヒドロキシシクロブチルであり、
、A、A、A、およびAは、それぞれ独立に、CH、N−オキシド、またはNであり、
但し、
1)A、A、A、A、およびAのうちの2つ以下は、Nであり、
2)A、A、A、A、およびAのうちの1つ以下は、N−オキシドである]
または薬学的に許容できるその塩
によって表すことができる。
【0011】
式Iの化合物は、Gタンパク質共役受容体の活性を調節する。より詳細には、式Iの化合物は、GPR119を調節する。そのため、前記化合物は、糖尿病などの、GPR119の活性が疾患の病理または症状の一因となる疾患の治療に有用である。そのような状態の例として、高脂血症、I型糖尿病、II型糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早発性2型糖尿病(EOD)、若年性非定型糖尿病(YOAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、冠動脈心疾患、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞(たとえば、壊死およびアポトーシス)、異脂肪症、食後脂肪血症、耐糖能障害(IGT)状態、空腹時血漿グルコース異常(impaired fasting plasma glucose)状態、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満、骨粗鬆症、高血圧、うっ血性心不全、左室肥大、末梢動脈疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性ニューロパシー、メタボリック症候群、シンドロームX、月経前症候群、冠動脈心疾患、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、一過性脳虚血発作、卒中、血管再狭窄、高血糖、高インスリン血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝障害、耐糖能障害状態、空腹時血漿グルコースの異常状態、肥満、勃起機能不全、皮膚および結合組織の障害、足の潰瘍化および潰瘍性大腸炎、内皮障害、ならびに血管伸展性の障害が挙げられる。式Iの化合物は、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害などの神経障害の治療に使用することもできる。式Iの化合物は、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群などの胃腸疾患においても有益となる。上述のように、式Iの化合物は、肥満患者、特に糖尿病に罹患している肥満患者において体重減少を刺激するのにも使用することができる。
【0012】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物を含有する医薬組成物を対象とする。そのような製剤は通常、少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤と混和された式Iの化合物を含有する。そうした製剤はまた、少なくとも1種の追加の(本明細書に記載の)薬剤を含有してもよい。そのような薬剤の例として、(後述する)抗肥満薬および/または抗糖尿病薬が挙げられる。本発明の追加の態様は、糖尿病および本明細書に記載の関連状態を治療する医薬の調製における式Iの化合物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本文書内の見出しは、読者が文書に手早く目を通せるようにするために利用されるにすぎない。それらの見出しは、本発明または特許請求の範囲をいかなる形でも限定しないものと解釈すべきである。
【0014】
定義および例示
特許請求の範囲を含めた本出願全体において、以下の用語は、別段特に指摘しない限り、以下で定義する意味を有する。複数形および単数形は、数字の表記を除き、区別なく扱うべきである。
a.「ハロゲン」とは、塩素、フッ素、ヨウ素、または臭素原子を指す。
b.「C〜Cアルキル」とは、1〜5個の炭素原子を含んでいる分枝状または直鎖状アルキル基、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチルなどを指す。
c.「C〜Cアルコキシ」とは、1〜5個の炭素原子を含んでいる直鎖または分枝鎖アルコキシ基、たとえば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシなどを指す。
d.「C〜Cシクロアルキル」とは、完全に水素化され、単環として存在する、非芳香族の環を指す。そのような炭素環の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
e.「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、状態、または障害を治療もしくは予防する、(ii)特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状を緩和し、寛解させ、もしくは除去する、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状の発症を予防し、もしくは遅らせる、本発明の化合物の量を意味する。
f.「患者」とは、温血動物、たとえば、モルモット、マウス、ラット、アレチネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、サル、チンパンジー、およびヒトを指す。
g.「治療する」とは、化合物が、患者の疾患(もしくは状態)または疾患に関連する任意の組織損傷を軽減し、解消し、またはその進行を緩慢にし得ることを指す。
h.用語「調節された」、「調節すること」、または「調節する」とは、本明細書では、別段指摘しない限り、本発明の化合物を用いた、Gタンパク質共役受容体GPR119の活性化を指す。
i.「薬学的に許容できる」とは、物質または組成物が、製剤を構成する他の成分および/またはそれによる治療を受ける哺乳動物と化学的および/または毒物学的に適合性でなければならないことを示す。
j.「塩」とは、薬学的に許容できる塩、および化合物の調製などの工業的プロセスでの使用に適する塩を指すものとする。
k.「薬学的に許容できる塩」とは、化合物の実際の構造に応じて、薬学的に許容できる酸付加塩」または「薬学的に許容できる塩基付加塩」のどちらかを指すものとする。
l.「薬学的に許容できる酸付加塩」とは、式Iまたはその中間体のいずれかによって表される塩基化合物の非毒性のいかなる有機酸または無機酸付加塩にも該当するものとする。適切な塩を形成する無機酸の実例として、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸、ならびにオルトリン酸一水素ナトリウム(sodium monohydrogen orthophosphate)や硫酸水素カリウムなどの酸金属塩が挙げられる。適切な塩を形成する有機酸の実例として、モノ、ジ、およびトリカルボン酸が挙げられる。そのような酸の実例は、たとえば、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、アルタル酸(artaric acid)、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ−安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ならびにメタンスルホン酸や2−ヒドロキシエタンスルホン酸などのスルホン酸である。このような塩は、水和した形態または実質的に無水の形態のどちらで存在してもよい。一般に、こうした化合物の酸付加塩は、水および種々の親水性有機溶媒に可溶性である。
m.「薬学的に許容できる塩基付加塩」とは、式Iまたはその中間体のいずれかによって表される化合物の非毒性のいかなる有機または無機塩基付加塩にも該当するものとする。適切な塩を形成する塩基の実例として、水酸化ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物;アンモニア;ならびにメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピコリンなどの、脂肪族、脂環式、または芳香族有機アミンが挙げられる。
n.「式Iの化合物」、「本発明の化合物」、および「化合物」は、本出願全体にわたり区別なく使用しており、同義語として扱うべきである。
「異性体」とは、以下で定義するような「立体異性体」および「幾何異性体」を意味する。
o.「立体異性体」とは、1つまたは複数のキラル中心を有する化合物を意味し、各中心は、RまたはS立体配置で存在し得る。立体異性体として、すべてのジアステレオ異性体、鏡像異性体、およびエピマーの形態、ならびにそのラセミ体および混合物が挙げられる。
p.「幾何異性体」とは、シス、トランス、アンチ、シン、エントゲーゲン(E)、およびツザンメン(Z)の形態、ならびにその混合物として存在し得る化合物を意味する。
【0015】
式(I)の化合物のいくつかは、幾何異性体として存在し得る。式(I)の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有し、したがって2種以上の立体異性体形態として存在することもある。本発明は、式(I)の化合物のすべての個々の立体異性体および幾何異性体ならびにその混合物を包含する。個々の鏡像異性体は、キラル分離によって、または合成の際に関連する鏡像異性体を使用して得ることができる。
【0016】
加えて、本発明の化合物は、溶媒和していない形で存在しても、水、エタノールなどの薬学的に許容できる溶媒と溶媒和した形で存在してもよい。一般に、本発明の目的では、溶媒和した形態は、溶媒和していない形態と同等であるとみなす。化合物は、1種または複数の結晶状態、すなわち多形体で存在する場合もあり、または非晶質固体として存在する場合もある。そのようなすべての形態が特許請求の範囲に包含される。
【0017】
式Iの化合物はすべて、以下で図示するように、エーテル結合を介してピロロ−ピリミジン環に結合したアザビシクロ−ノナン環を含んでいる。このアザビシクロ−ノナンは、幾何異性体として存在し、以下で図示するシンまたはアンチ異性体のいずれかとして存在し得る。
【0018】
【化3】

【0019】
式Iの化合物はすべて、以下で図示するように、フェニル環または含窒素芳香族を含んでいる。
【0020】
【化4】

【0021】
〜Aは、2個まで窒素原子とすることができ、残りはCHとなる。すなわち、この芳香環は、たとえば、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、またはピラジニルになることができる。Rは、水素、または上で規定した置換基の1つでよい。Rは、水素でないとき、(ピロロ−ピリミジン部分に結合した炭素を除いて)環のどの炭素原子に結合していてもよい2個までの置換基とすることができる。Rは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、(ピロロ−ピリミジン部分に結合した炭素を除いて)環上のどの炭素原子に結合していてもよい。
【0022】
加えて、A〜Aの1つは、N−オキシド部分であってもよい。A〜Aによって表されるアリール部分が置換されている任意の状況では、当業者には容易にわかるとおり、関連する炭素原子は、CRまたはCRとなり、CHではない。
【0023】
そのような含窒素環の例として、以下のものが挙げられる。
【0024】
【化5】

【0025】
より詳細な実施形態では、
a)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素である、
b)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはフェニル環を形成している、
c)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはフェニル環を形成しており、Rはフルオロである、
d)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはフェニル環を形成しており、Rはフルオロであり、Rは存在し、−SO−Rまたは−NH−CO−C〜Cアルキルである、
e)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはフェニル環を形成しており、Rはフルオロであり、Rは存在し、−SO−Rである、
f)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはフェニル環を形成しており、Rはフルオロであり、Rは存在し、NH−(CH−OHである、
g)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはフェニル環を形成しており、Rはフルオロおよびシアノである、
h)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはピリジル環を形成している、
i)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはピリジル環を形成しており、Rはフルオロである、
j)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはピリジル環を形成しており、Rはフルオロであり、Rは存在し、−SO−Rまたは−NH−CO−C〜Cアルキルである、
k)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはピリジル環を形成しており、Rはフルオロであり、Rは存在し、−SO−Rである、
l)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはピリジル環を形成しており、Rはフルオロであり、Rは存在し、NH−(CH−OHである、
m)RはC(O)−O−C〜Cアルキルであり、Rは水素であり、A〜Aはピリジル環を形成しており、Rはフルオロおよびシアノである。
【0026】
合成
本発明の化合物は、化学分野でよく知られている方法と類似した方法を包含する合成経路によって、特に本明細書に収められている記述に照らして、合成することができる。出発材料は、Aldrich Chemicals(ウィスコンシン州ミルウォーキー)などの市販品供給元から一般に入手可能であり、または当業者に知られている方法を使用して容易に調製される(たとえば、Louis F.FieserおよびMary Fieser、Reagents for Organic Synthesis、1〜19巻、Wiley、ニューヨーク(1967〜1999年版)、またはBeilsteins Handbuch der organischen Chemie、第4版、ベルリン、Springer−Verlag編(増刊を含める)(Beilsteinオンラインデータベースからも入手可能)に一般に記載されている方法によって調製される)。
【0027】
例示する目的で、以下で図示する反応スキームにより、本発明の化合物ならびに重要中間体を合成する潜在的経路を示す。個々の反応ステップのより詳細な説明については、以下の実施例の部を参照されたい。当業者なら、本発明の化合物の合成に他の合成経路を使用してもよいことがわかるであろう。詳細な出発材料および試薬をスキームの中で示し、以下で論じるが、他の出発材料および試薬で容易に置き換えて、様々な誘導体および/または反応条件を準備することができる。加えて、以下で述べる方法によって調製される化合物の多くは、当業者によく知られている従来の化学を使用し、この開示に照らしてさらに改変することができる。
【0028】
式Iの化合物は、当技術分野で同様に知られているエーテル生成の方法を使用して調製することができる。1)Hughes,D.L.、Organic Reactions 1992、42、米国ニュージャージー州ホーボーケン、2)Tikad,A.、Routier,S.、Akssira,M.、Leger,J.−M.l、Jarry,C.、Guillaumet,G.、Synlett 2006、12、1938〜42、および3)Loksha,Y.M.、Globisch,D.、Pedersen,E.B.、La Colla,P.、Collu,G.、Loddo,R.、J.Het.Chem.2008、45、1161〜6などの、そうした反応についてより詳細に記載している教本に目を向けられたい。
【0029】
【化6】

【0030】
上に図示するとおり、出発材料の一方は、構造1として記載する3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナノールである。Rは通常、最終生成物で所望されるものと同じ置換基となる。以下の反応スキームIIで、このようなアルコールの生成方法を教示する。
【0031】
他方の出発材料は、構造2の塩化物である。R、R、R、およびA〜Aは通常、最終生成物で所望されるのと同じ部分となる。こうした化合物は、当技術分野で知られてもいる。その調製方法は、WO2008/008895に記載されており、同様に当技術分野でも知られている。
【0032】
求核反応は、当技術分野で知られているとおりに実施する。通常、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒中で、ほぼ等価な量の構造1のアルコールと構造2の塩化物を接触させる。次いで、反応物を、0.9〜10当量の範囲の量の、水酸化ナトリウム、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムt−アミルオキシドなどの塩基と、室温〜110℃の温度範囲で接触させる。通常、反応は、不活性雰囲気中で、15分〜14時間の範囲の時間をかけて進行させる。
【0033】
反応が完了した後、所望の式Iの化合物は、当技術分野で知られているとおりに回収し、単離することができる。化合物は、当技術分野で知られているように、蒸発、抽出などによって回収することができる。化合物は、場合により、クロマトグラフィー、再結晶、蒸留、または先行技術で知られている他の技術によって精製してもよい。
【0034】
これも当業者には容易にわかるとおり、RおよびRで表される置換基の多くは、式Iの核を生成した後に操作することができる。そのような変形形態は、当業者によく知られており、本発明の一部とみなすべきである。
【0035】
すぐ後の反応スキームIIでは、上で構造1として記載したアザビシクロ−ノナンの生成方法を教示する。反応スキーム#2の化合物#1は、当技術分野で知られている。その合成は、Arjunan,P.、Berlin,K.D.、Barnes C.L.、Van der Helm、D.J.Org.Chem.、1981、46(16)、3196〜3204で教示されている。
【0036】
【化7】

【0037】
上に示すとおり、反応の最初のステップは、構造1からベンジル保護基を除去することである。これを水素化分解によって実現して、化合物2を得ることができる。この反応の典型的な条件として、水素、および5〜20%パラジウム担持炭素や10〜20%水酸化パラジウムなどのパラジウム触媒の利用が挙げられる。この反応の典型的な溶媒は、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、または酢酸エチルである。
【0038】
最終生成物中にピリミジン置換基が所望される場合、エタノールやメタノールなどのプロトン性溶媒中、または1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒中にて、炭酸セシウムやジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下、化合物2を、構造4として示す適切に置換された2−クロロピリミジンに付加して、構造5を生成することができる。こうした反応は、室温〜110℃の範囲の温度で実施することができる。別法として、溶媒を使用せずジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下、または化合物2を過剰に使用する場合では塩基または溶媒を使用せずに、構造2と構造4の化合物を一緒に加熱することもできる。
【0039】
最終生成物中にカルバメート置換基が所望される場合、ジクロロメタンまたはクロロホルム中にて、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基の存在下、等価な量の構造6のアルキルハロホルメートホルメートを、構造2の化合物と接触させる。別法として、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフランなどの溶媒中にて、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、トリエチルアミンなどのアミン塩基の存在下、二炭酸ジ−tert−ブチル(BOC無水物)や二炭酸ジイソプロピルなどの二炭酸ジアルキルを使用して、構造2の化合物から構造3の化合物を生成することもできる。
【0040】
最終の構造3または5(すなわち、反応スキーム1の構造#1)は、当技術分野で知られているとおりに単離し、精製することができる。所望なら、この最終構造を分離ステップにかけて所望のシンまたはアンチ異性体を得てから、反応スキームIで利用することもできる。
【0041】
当業者には容易にわかるように、中間体の遠位官能基(たとえば、第一級または第二級アミン)を保護する必要がある場合もある。そのような保護の必要性は、その遠位官能基の性質および調製方法の条件に応じて異なってくる。適切なアミノ保護基(NH−Pg)として、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、および9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。同様に、「ヒドロキシ保護基」とは、ヒドロキシ官能基を封鎖または保護する、ヒドロキシ基の置換基を指す。適切なヒドロキシル保護基(O−Pg)として、たとえば、アリル、アセチル、シリル、ベンジル、para−メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。このような保護の必要性は、当業者によって容易に決定される。保護基およびその使用に関する総説については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1991を参照されたい。
【0042】
上述のとおり、本発明の化合物の一部は、酸性であり、薬学的に許容できるカチオンと塩を形成する。本発明の化合物の一部は、塩基性であり、薬学的に許容できるアニオンと塩を形成する。そのような塩はすべて、本発明の範囲内にあり、従来の方法によって、たとえば、適宜、水性、非水性、または部分的に水性の媒質中にて、酸性実体と塩基性実体とを、通常は化学量論比で合わせるなどして調製することができる。塩は、適宜、濾過、非溶媒で沈殿させてからの濾過、溶媒の蒸発、または水溶液の場合では凍結乾燥によって回収する。化合物は、エタノール、ヘキサン、水/エタノール混合物などの適切な(1種または複数の)溶媒に溶解させるなどの、当技術分野で知られている手順に従って、結晶の形で得る。
【0043】
上述のとおり、化合物の一部は、異性体として存在する。そうした異性体混合物は、その物理化学的差異に基づき、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶などの当業者によく知られている方法によって、その個々の異性体に分離することができる。鏡像異性体は、鏡像異性体混合物を、光学活性のある適切な化合物(たとえば、キラルアルコールやMosherの酸塩化物などのキラル助剤)と反応させてジアステレオ異性体混合物に変換し、ジアステレオ異性体を分離し、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋な鏡像異性体に変換する(たとえば、加水分解する)ことにより、分離することができる。鏡像異性体は、キラルなHPLCカラムを使用して分離することもできる。別法として、光学活性のある出発材料の使用、光学活性のある試薬、基質、触媒、もしくは溶媒を使用する不斉合成、または不斉転位による一方の立体異性体の他方への変換によって、特定の立体異性体を合成することもできる。
【0044】
本発明は、原子質量または質量数が自然界で通常見られる原子質量または質量数と異なっている原子で1個または複数の原子が置き換えられていること以外は本明細書で列挙したものと同一である、同位体標識された本発明の化合物も包含する。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の例として、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I、36Clなどの、それぞれ、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、および塩素の同位体が挙げられる。
【0045】
特定の同位体標識された本発明の化合物(たとえば、Hおよび14Cで標識された化合物)は、化合物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム、14C、35S、および125Iが組み込まれている特定の同位体標識されたリガンドは、放射リガンド結合アッセイにおいて有用となり得るはずである。トリチウム化(すなわちH)およびカーボン14(すなわち14C)同位体は、調製しやすく、検出性がよいので、特に好ましい。さらに、ジュウテリウム(すなわちH)などのより重い同位体での置換は、代謝安定性がより高いために生じる特定の治療上の優位性(たとえば、in vivo半減期の延長または投与必要量の減少)をもたらす場合もあり、したがって、状況によっては好ましいこともある。15O、13N、11C、18Fなどの陽電子放射同位体は、受容体占有率を調べるための陽電子放射断層撮影(PET)研究に有用である。本発明の同位体標識された化合物は、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに同位体標識された試薬を用いて、スキームおよび/または後述の実施例で開示する手順と類似した手順に従って調製することができる。
【0046】
特定の本発明の化合物は、2種以上の結晶形で存在する場合もある(一般に「多形体」と呼ばれる)。多形体は、種々の条件下での結晶化によって、たとえば、結晶化の際に、異なる再結晶用溶媒もしくは溶媒混合物、異なる温度での結晶化、および/または超急速冷却から超緩速冷却の範囲の種々の冷却モードを使用して、調製することができる。多形体は、本発明の化合物を加熱または溶融した後、徐々にまたは急速に冷却して得ることもできる。多形体の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定、粉末X線回折、または他のそのような技術によって判定することができる。
【0047】
医学的使用
本発明の化合物は、Gタンパク質共役受容体GPR119の活性を調節する。そのため、前記化合物は、糖尿病などの、GPR119の活性が疾患の病理または症状の一因となる疾患の予防および治療に有用である。したがって、本発明の別の態様は、個体において代謝性疾患および/または代謝関連障害を治療する方法であって、そのような治療が必要である個体に、治療有効量の本発明の化合物、前記化合物の塩、またはそのような化合物を含有する医薬組成物を投与することを含む方法を包含する。代謝性疾患および代謝関連障害は、限定はしないが、高脂血症、I型糖尿病、II型糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早発性2型糖尿病(EOD)、若年性非定型糖尿病(YOAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、冠動脈心疾患、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞(たとえば、壊死およびアポトーシス)、異脂肪症、食後脂肪血症、耐糖能障害(IGT)状態、空腹時血漿グルコースの異常状態、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満、骨粗鬆症、高血圧、うっ血性心不全、左室肥大、末梢動脈疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性ニューロパシー、メタボリック症候群、シンドロームX、月経前症候群、冠動脈心疾患、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、卒中、血管再狭窄、高血糖、高インスリン血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝障害、耐糖能障害状態、空腹時血漿グルコースの異常状態、肥満、勃起機能不全、皮膚および結合組織の障害、足の潰瘍化、内皮障害、高アポBリポタンパク質血症(hyper apo B lipoproteinemia)、ならびに血管伸展性の障害から選択される。さらに、本発明の化合物は、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害などの神経障害の治療に使用することもできる。本発明の化合物は、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群などの胃腸疾患においても有益となる。上述のように、本発明の化合物は、肥満患者、特に糖尿病に罹患している肥満患者において体重減少を刺激するのにも使用することができる。
【0048】
前述の内容によれば、本発明はさらに、その必要がある対象において、上述の疾患または障害のいずれかの症状を予防し、または寛解させる方法であって、治療有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。本発明の別の態様は、糖尿病およびその関連合併症を治療する医薬の調製を包含する。
【0049】
上述の治療特性を示すためには、化合物は、Gタンパク質共役受容体GPR119の活性化を調節するのに十分な量で投与する必要がある。この量は、治療する特定の疾患/状態、患者の疾患/状態の重症度、患者、投与する特定の化合物、投与経路、および患者内の他の基礎病態の存在などに応じて様々となり得る。全身に投与するとき、化合物は通常、上で挙げた疾患または状態のいずれに対しても、約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の投与量範囲でその効果を示す。毎日の連続投与が望ましい場合もあり、上で概略を述べた状態に応じて異なってくる。
【0050】
本発明の化合物は、様々な経路によって投与することができる。本発明の化合物は、経口投与することができる。本発明の化合物は、非経口(すなわち、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、またはくも膜下腔内)、直腸、または局所投与することもできる。
【0051】
共投与
本発明の化合物は、本明細書に記載の疾患、状態、および/または障害を治療するための他の薬剤と共に使用することもできる。したがって、本発明の化合物を他の薬剤と組み合わせて投与することを含む治療方法も提供する。本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる適切な薬剤として、抗肥満薬(食欲抑制薬を含める)、抗糖尿病薬、抗高血糖薬(anti−hyperglycemic agent)、高脂血症治療薬、および降圧薬が挙げられる。
【0052】
適切な抗糖尿病薬として、アセチル−CoAカルボキシラーゼ2(ACC−2)阻害剤、ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ1(DGAT−1)阻害剤、ホスホジエステラーゼ(PDE)10阻害剤、スルホニル尿素(たとえば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ジアビネース(diabinese)、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド(glipentide)、グリキドン、グリソラミド、トラザミド、およびトルブタミド)、メグリチニド、α−アミラーゼ阻害剤(たとえば、テンダミスタット(tendamistat)、トレスタチン、およびAL−3688)、α−グルコシドヒドロラーゼ阻害剤(たとえば、アカルボース)、α−グルコシダーゼ阻害剤(たとえば、アジポシン、カミグリボース、エミグリテート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシンQ、およびサルボスタチン(salbostatin))、PPARγ作動薬(たとえば、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン(isaglitazone)、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、およびトログリタゾン)、PPARα/γ作動薬(たとえば、CLX−0940、GW−1536、GW−1929、GW−2433、KRP−297、L−796449、LR−90、MK−0767、およびSB−219994)、ビグアナイド(たとえば、メトホルミン)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)作動薬(たとえば、エキセンディン3およびエキセンディン4)、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤(たとえば、トロダスケミン(trodusquemine)、ヒルチオサール抽出物(hyrtiosal extract)、およびZhang,S.ら、Drug Discovery Today、12(9/10)、373〜381(2007)で開示されている化合物)、SIRT−1阻害剤(たとえば、レセルバトロール(reservatrol))、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤(たとえば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、およびサクサグリプチン)、インスリン分泌刺激物質、脂肪酸酸化阻害剤、A2拮抗薬、c−junアミノ末端キナーゼ(JNK)阻害剤、インスリン、インスリン模倣物、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、VPAC2受容体作動薬、およびSGLT2阻害剤(ナトリウム依存性グルコース輸送体阻害剤、たとえば、ダパグリフロジンなど)が挙げられる。好ましい抗糖尿病薬は、メトホルミンおよびDPP−IV阻害剤(たとえば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、およびサクサグリプチン)である。
【0053】
適切な抗肥満薬として、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1(11β−HSD1型)阻害剤、ステアロイルCoAデサチュラーゼ1(SCD−1)阻害剤、MCR−4作動薬、コレシストキニンA(CCK−A)作動薬、モノアミン再取込み阻害剤(シブトラミンなど)、交感神経様作動薬、βアドレナリン作動薬、ドーパミン作動薬(ブロモクリプチンなど)、メラノサイト刺激ホルモン類似体、5HT2c作動薬、メラニン濃縮ホルモン拮抗薬、レプチン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチン作動薬、ガラニン拮抗薬、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、すなわちオルリスタットなど)、食欲抑制薬(ボンベシン作動薬など)、ニューロペプチドY拮抗薬(たとえば、NPY Y5拮抗薬、PYY3−36(その類似体を含める)、甲状腺模倣薬(thyromimetic agent)、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、糖質コルチコイド作動薬または拮抗薬、オレキシン拮抗薬、グルカゴン様ペプチド1作動薬、毛様体神経栄養因子(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.、ニューヨーク州タリータウン、およびProcter&Gamble Company、オハイオ州シンシナティーから入手可能なAxokine(商標)など)、ヒトアグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害剤、グレリン拮抗薬、ヒスタミン3拮抗薬または逆作動薬、ニューロメジンU作動薬、MTP/ApoB阻害剤(たとえば、ジルロタピド(dirlotapide)などの消化管選択的MTP阻害剤)、オピオイド拮抗薬、オレキシン拮抗薬などが挙げられる。
【0054】
本発明の組み合わせ態様で使用するのに好ましい抗肥満薬として、消化管選択的MTP阻害剤(たとえば、ジルロタピド(dirlotapide)、ミトラタピド(mitratapide)およびイミプリタピド(implitapide)、R56918(CAS番号403987)、およびCAS番号913541−47−6)、CCKa作動薬(たとえば、PCT公開第WO2005/116034号または米国公開第2005−0267100A1号に記載のN−ベンジル−2−[4−(1H−インドール−3−イルメチル)−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−2,3,6,10b−テトラアザ−ベンゾ[e]アズレン−6−イル]−N−イソプロピル−アセトアミド)、5HT2c作動薬(たとえば、ロルカセリン)、MCR4作動薬(たとえば、US6,818,658に記載の化合物)、リパーゼ阻害剤(たとえば、セチリスタット)、PYY3−36(本明細書では、「PYY3−36」は、ベグ化PYY3−36(たとえば、米国公開2006/0178501に記載のもの)などの類似体を包含する)、オピオイド拮抗薬(たとえば、ナルトレキソン)、オレオイル−エストロン(CAS番号180003−17−2)、オビネピチド(obinepitide)(TM30338)、プラムリンチド(Symlin(登録商標))、テソフェンシン(NS2330)、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エクセナチド(Byetta(登録商標))、AOD−9604(CAS番号221231−10−3)、およびシブトラミンが挙げられる。本発明の化合物および併用療法は、運動および賢明な食生活と合わせて投与することが好ましい。
【0055】
上で引用した米国特許および公開はすべて、参照により本明細書に援用する。
【0056】
医薬製剤
本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤と混和された治療有効量の化合物または薬学的に許容できるその塩を含む医薬組成物も提供する。医薬組成物は、経口、局所、または非経口の使用に適合させた形態の組成物を包含し、上述のような糖尿病および関連状態の治療に使用することができる。
【0057】
医薬組成物は、皮下、吸入、経口、局所、非経口などの、当技術分野で知られている任意の経路による投与用に製剤することができる。医薬組成物は、限定はしないが、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、ロゼンジ、または経口もしくは滅菌非経口溶液もしくは懸濁液などの液体製剤を含めて、当技術分野で知られているどんな形態でもよい。
【0058】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、単位用量体裁にすることができ、従来の賦形剤、たとえば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシンなどの充填剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカなどの打錠滑沢剤;バレイショデンプンなどの崩壊剤;またはラウリル硫酸ナトリウムなどの許容される湿潤剤を含有してよい。錠剤は、標準の薬務でよく知られている方法に従ってコーティングしてもよい。
【0059】
経口液体製剤は、たとえば、水性もしくは油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、もしくはエリキシルの形にすることもでき、または使用前に水もしくは適切な他のビヒクルで再形成する乾燥製品としての体裁にすることもできる。このような液体製剤は、従来の添加剤、たとえば、ソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、水素添加食用脂などの懸濁化剤;レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、アカシアなどの乳化剤;扁桃油、グリセリンのような油性エステル、プロピレングリコール、エチルアルコールなどの非水性ビヒクル(食用油を含めてもよい);p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、ソルビン酸などの保存剤、および所望なら、従来の着香剤または着色剤を含有してよい。
【0060】
非経口投与では、化合物および無菌ビヒクル(水が好ましい)を利用して、流動性の単位剤形を調製する。化合物は、使用するビヒクルおよび濃度に応じて、ビヒクルまたは適切な他の溶媒に懸濁または溶解させることができる。溶液の調製では、化合物を、注射用の水に溶解させ、濾過滅菌した後、適切なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することができる。有利にするため、局所麻酔剤、保存剤、緩衝剤などの薬品をビヒクルに溶解させることができる。安定性を高めるために、組成物をバイアルに充填した後凍結させ、真空中で水を除去することができる。次いで、凍結乾燥した乾燥粉末をバイアルに密閉し、使用前に液体を再形成するための付属のバイアルの注射用水を支給することができる。非経口懸濁液は、化合物をビヒクルに溶解させる代わりに懸濁させること、および滅菌が濾過によって実現できないことを除き、実質上同じようにして調製する。無菌ビヒクルに懸濁させる前にエチレンオキシドにさらすことにより、化合物を滅菌することができる。組成物に界面活性剤または湿潤剤を組み込んで、化合物の均一な分布を促進すると有利である。
【0061】
組成物は、投与方法に応じて、たとえば約0.1重量%〜約99重量%の活性材料を含有してよい。組成物が投与量単位を構成する場合、各単位は、たとえば、約0.1〜900mg、より典型的な場合では1mg〜250mgの活性成分を含有することになる。
【0062】
本発明の化合物は、他の抗糖尿病薬による類推によって、ヒト医学または獣医学で使用するための好都合な任意の方法における投与用に製剤することができる。そのような方法は、当技術分野で知られており、上で概略を述べている。そうした製剤の調製に関するより詳細な論述については、University of the Sciences in PhiladelphiaによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第21版に目を向けられたい。
【0063】
以下の実施例によって、本発明の実施形態を例示する。しかし、本発明の実施形態は、実施例の詳細な項目を限定せず、このためそれらの他の変形形態が、当業者には知るところとなり、またはこの開示に照らして明白となることを理解されたい。
【実施例】
【0064】
別段指定しない限り、出発材料は一般に、Aldrich Chemicals Co.(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Lancaster Synthesis,Inc.(ニューハンプシャー州Windham)、Acros Organics(ニュージャージー州フェアローン)、Maybridge Chemical Company,Ltd.(英国コーンウォール)、Tyger Scientific(ニュージャージー州プリンストン)、AstraZeneca Pharmaceuticals(英国ロンドン)、Mallinckrodt Baker(ニュージャージー州フィリップスバーグ)、EMD(ニュージャージー州Gibbstown)などの市販品供給元から入手可能である。
【0065】
一般実験手順
一般実験手順
プロトン分析について、NMRスペクトルは、Varian Unity(商標)400(DG400−5プローブ)または500(DG500−5プローブ)(共にVarian Inc.、カリフォルニア州パロアルトから入手可能)を用い、室温にてそれぞれ400MHzまたは500MHzで記録した。化学シフトは、内部標準としての残存溶媒を基準とした百万分率(δ)で表示する。ピーク形状は、次のとおりに表記する。すなわち、s:一重線、d:二重線、dd:二重二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、bs:ブロード一重線、2s:2本の一重線。
【0066】
大気圧化学イオン化質量スペクトル(APCI)は、Waters(商標)分光計(Micromass ZMD、キャリヤーガス:窒素)(Waters Corp.、米国マサチューセッツ州ミルフォードから入手可能)を用い、0.3mL/分の流量で、50:50の水/アセトニトリル溶離液系を利用して取得した。エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ES)は、Waters(商標)(Micromass ZQまたはZMD機器(キャリヤーガス:窒素)(Waters Corp.、米国マサチューセッツ州ミルフォード)の液体クロマトグラフィー質量分析計を用い、各溶媒に0.01%のギ酸を加えた95:5〜0:100の勾配の水アセトニトリル溶液を利用して取得した。これらの機器には、3.75分間1mL/分または1.95分間2mL/分の流量で、Varian Polaris 5 C18−A20×2.0mmカラム(Varian Inc.、カリフォルニア州パロアルト)を用いた。
【0067】
カラムクロマトグラフィーは、Flash 40 Biotage(商標)カラム(ISC,Inc.、コネティカット州シェルトン)またはBiotage(商標)SNAPカートリッジKPsilまたはRedisep Rfシリカ(Teledyne Isco Incより)のいずれかを用い、シリカゲルを使用して窒素圧下で実施した。
【0068】
真空中での濃縮とは、ロータリーエバポレーターを使用して、減圧下で溶媒を蒸発させることを指す。
【0069】
薬理学的データ
Gタンパク質共役受容体GPR119の本発明の化合物によるアゴニスト活性化によって調節される疾患を治療する本発明の実施は、後述するプロトコールの少なくとも1つにおける活性によって証明することができる。供給元は括弧内に示す。
【0070】
in−vitroアッセイ
GPR119アゴニストについてのアッセイでは、ヒトGPR119のアゴニスト活性化を、環状AMP反応要素(CRE)によってβ−ラクタマーゼ産生と合体させた、細胞を主体とした(hGPR119 HEK293−CRE β−ラクタマーゼ)レポーター構築物を利用する。そしてGPR119活性は、FRETを可能にするβ−ラクタマーゼ基質であるCCF4−AM(Live Blazer FRET−B/G Loadingキット、Invitrogenカタログ番号K1027)を利用して測定する。詳細には、hGPR119−HEK−CRE−β−ラクタマーゼ細胞(Invitrogen 2.5×10/mL)を液体窒素貯蔵庫から取り出し、プレーティング培地(ダルベッコ変法イーグル培地高グルコース(DMEM、Gibcoカタログ番号11995−065)、10%熱不活性化ウシ胎児血清(HIFBS、Sigmaカタログ番号F4135)、1×MEM非必須アミノ酸(Gibcoカタログ番号15630−080)、25mMのHEPES pH7.0(Gibcoカタログ番号15630−080)、200nMのクラブラン酸カリウム(Sigmaカタログ番号P3494)に希釈した。細胞プレーティング培地を使用して細胞濃度を調節し、この細胞懸濁液(12.5×10生細胞)50μLを、ポリ−d−リシンでコートされた黒色透明底384ウェルプレート(Greiner Bio−Oneカタログ番号781946)の各ウェルに加え、5%の二酸化炭素を含有する加湿した環境において37℃でインキュベートした。4時間後、プレーティング培地を除去し、40μLのアッセイ培地(アッセイ培地は、クラブラン酸カリウムおよびHIFBSを含有しないプレーティング培地である)と入れ替えた。次いで、試験対象の様々な濃度の各化合物を10uLの体積(最終DMSO≦0.5%)で加え、5%の二酸化炭素を含有する加湿した環境において細胞を37℃で16時間インキュベートした。プレートをインキュベーターから取り出し、約15分間かけて室温に平衡化させた。10uLの6×CCF4/AM作用色素溶液(Live Blazer FRET−B/G Loadingキット(Invitrogenカタログ番号K1027)に入っている説明書に従って調製)をウェル毎に加え、暗所にて室温で2時間インキュベートした。EnVision蛍光定量プレートリーダー(励起405nm、発光460nm/535nm)で蛍光を測定した。4パラメータロジスティック用量反応方程式を使用した曲線適合プログラムで分析を行ったアゴニスト反応曲線から、EC50を決定した。
【0071】
以下の結果が得られた。
【0072】
【表1】

【0073】
出発材料の調製
調製例#1
スキームAに、シンおよびアンチの9−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキシレートの調製を図解する。実験の細目は以下で詳述する。
【0074】
【化8】

【0075】
ステップA. 7−ベンジル−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−塩酸塩(2)の合成:テトラヒドロ−4H−ピラン−4−オン1(60.0g、0.60mol)、ベンジルアミン(63.4g、0.60mol)、および氷酢酸(35.9g、0.60mol)を無水メタノール(1.2L)に溶かした溶液を、パラホルムアルデヒド(39.6g、1.3mol)を無水メタノール(1.2L)に懸濁させた撹拌した懸濁液に、65℃で75分間かけて加えた。2回目の分のパラホルムアルデヒド(39.6g、1.3mol)を加え、混合物を65℃で1時間撹拌した。反応を水(1.2L)および1M水酸化カリウム水溶液(600mL)で失活させた。混合物を酢酸エチル(3L×3)で抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空中で濃縮乾燥した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1〜2:1)によって精製して、褐色の油状物を得た。残渣を6M無水塩酸ジオキサン溶液(500mL)で希釈し、混合物を室温で30分間撹拌した。真空中で溶媒を除去し、アセトン(500mL)を加えた。得られる混合物を室温で30分間音波処理して白色の沈殿物を生成させた。混合物を濾過し、固体をアセトンで洗浄し、次いで真空中で乾燥させて、所望の生成物を白色の固体(21g、13%)として得た。1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.43 - 7.42 (m, 5H), 4.66 (s, 2H), 3.95 - 3.90 (m, 4H), 3.54 - 3.47
(m, 4H); 1.96 (bs, 2H); MS (ES+): 232.0 (M + 1).
【0076】
ステップB. 7−ベンジル−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール(シンおよびアンチ異性体の混合物)(3)の合成:7−ベンジル−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン塩酸塩(4.40g、16.9mmol)をエタノール(40mL)および無水テトラヒドロフラン(40mL)に懸濁させた。混合物を氷浴で冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(1.5g、37.3mmol)を1回で加えた。混合物を4時間かけてゆっくりと室温に温めた。次いで反応液を真空中で濃縮して、エタノールおよびテトラヒドロフランの大部分を除去した。混合物をメチルtert−ブチルエーテルと1.0M水酸化ナトリウム水溶液とに分配した。溶液を30分間撹拌した後、2つの層を分離した。水層をメチルtert−ブチルエーテルで抽出した。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濾過し、真空中で濾液を濃縮して透明な油状物を得、これを静置すると部分的に凝固して油性の白色固体(3.71g、94%)になった。このシンおよびアンチの7−ベンジル−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール異性体の混合物を、それ以上精製せずに次のステップで使用した。MS (ES+): 234.1 (M + H).
【0077】
ステップC. 3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール(シンおよびアンチ異性体の混合物)(4)の合成:シンおよびアンチの7−ベンジル−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オール異性体の出発混合物(3.71g、15.9mmol)をエタノール(120mL)に溶解させ、Pd(OH)(450mg)を加えた。Parrシェーカーにおいて混合物を50psiの水素中で2.5時間振盪した。混合物をCelite(登録商標)で濾過し、収集した固体をメタノールで3回洗浄した。真空中で濾液を濃縮して油性の固体を得た。この油性の固体を酢酸エチルに溶解させ、ヘプタンを加えた。真空中で溶液を濃縮して、3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オールのシンおよびアンチ異性体混合物を白色の固体(2.08g、91%)として得た。この材料をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。MS (ES+): 144.1 (M + H).
【0078】
ステップD.9−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピル(シンおよびアンチ異性体の混合物)(5)の合成:3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オールのシンおよびアンチ異性体混合物(2.08g、14.5mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2.80mL、16.0mmol)の0℃のジクロロメタン(15mL)溶液に、クロロギ酸イソプロピル(14.2mL、14.2mmol、1.0Mトルエン溶液)を滴下した。反応混合物を14時間かけて室温に温めた。次いで反応液を1M塩酸水溶液(50mL)で希釈し、水層を分離した。有機層を水(50mL)およびブライン(50mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濾過し、濾液を真空中で濃縮して無色の油状物を得た。この油状物を酢酸エチルに溶解させ、ヘプタンを加え、混合物を濃縮した。得られる油状物を真空中で乾燥させて、9−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピルのシンおよびアンチ異性体混合物を透明な油状物(2.74g、82%)として得た。MS (ES+): 230.1 (M + H).
【0079】
ステップE.9−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキン酸イソプロピルのシンおよびアンチ異性体の分離:それぞれ65mL/分の流量の85:15の二酸化炭素およびメタノールを移動相とした、Chiralpak AD−Hカラム(21×250mm)を利用する分取高圧液体クロマトグラフィーによって、9−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピルのシンおよびアンチ異性体混合物(5.04g、35.1mmol)を分離した。分離をモニターする波長は210nmとした。それぞれ2.5mL/分の流量の85:15の二酸化炭素およびメタノールを移動相とした、Chiralpak AD−H(4.6mm×25cm)カラムを用いた分析用高圧クロマトグラフィーを使用して、分析による各異性体の純度を決定した。ピークをモニターする波長は210nmとした。以下の2種の異性体が得られた。
9−シン−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキシレート(6)(1.34g):透明な油状物であったが、静置すると凝固した。保持時間(R)=2.3分、1H NMR (400 MHz, DMSO-d6,):
δ 5.12 (d, 1H, J=2.8Hz), 4.76 - 4.71 (m, 1H), 4.20 (d,
1H, J=13Hz), 4.16 (d, 1H, J=13Hz), 3.96 - 3.92 (m, 3H), 3.79 (d, 1H, J=3Hz),
3.55 (s, 1H), 3.52 (S, 1H), 3.08 (d, 1H, J=13Hz), 2.98 (d, 1H, J=13Hz), 1.47
(m, 2H) 1.16 (d, 3H, J=3Hz), 1.15 (d, 3H, J=3Hz); MS (ES+): 230.2 (M + H).
9−アンチ−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキシレート(7)(1.70g):琥珀色の油状物、R=3.08分、1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 5.11 (d, 1H, J=2.8Hz), 4.74 - 4.67 (m, 1H), 3.89 (d, 1H, J=13Hz),
3.84 - 3.78 (m, 3H, J=11Hz), 3.80 (d, 1H, J=6Hz), 3.78 (d, 1H, J=3Hz), 3.52 -
3.47 (m, 2H), 3.35 - 3.30 (m, 1H), 3.24 - 3.20 (m, 1H), 1.53 (s, 1H), 1.51 (s,
1H), 1.13 (d, 3H, J=1Hz), 1.16 (d, 3H, J=1Hz); MS (ES+): 230.2 (M)
【0080】
実施例
(実施例1)
9−シン−({7−[2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}オキシ)−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピル
【0081】
【化9】

既知の化合物4−クロロ−7−(2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(WO2008/008895)(45mg、0.14mmol)および9−シン−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキシレート(33mg、0.14mmol)をバイアルに入れ、無水ジオキサン(1mL)を加えた。混合物を窒素雰囲気中にて95℃で加熱した。次いで、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドをトルエンに溶かした1M溶液(0.192mL、0.192mmol)を加えた。反応混合物を95℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(30mL)および水(20mL)で希釈した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を蒸発にかけた。未精製材料を、0〜6%の勾配のジクロロメタン/メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、9−シン−({7−[2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}オキシ)−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピルを白色の固体45mg(64%)として得た。LCMS: 521.0 (M+1). 1H NMR (400 MHz, ジュウテロクロロホルム) δ 1.24 (d, J=6.25 Hz, 6 H) 1.92 (d,
J=13.27 Hz, 2 H) 3.04 (s, 3 H) 3.12 - 3.25 (m, 3 H) 3.29 (d, J=13.86 Hz, 1 H)
3.83 (d, J=11.71 Hz, 1 H) 3.91 (d, J=11.32 Hz, 1 H) 4.08 (t, J=10.93 Hz, 2 H)
4.17 - 4.27 (m, 2 H) 4.45 (d, J=13.86 Hz, 1 H) 4.61 (d, J=13.86 Hz, 1 H) 4.90 -
5.00 (m, 1 H) 5.36 (t, J=3.51 Hz, 1 H) 7.67 - 7.75 (m, 2 H) 8.03 (dd, J=8.78,
7.42 Hz, 1 H) 8.26 (s, 1 H).
【0082】
(実施例2)
9−アンチ−({7−[2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}オキシ)−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピル
【0083】
【化10】

4−クロロ−7−(2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル)−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(42mg、0.13mmol)および9−アンチ−ヒドロキシ−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキシレート(29.5mg、0.13mmol)をバイアルに入れ、無水ジオキサン(1mL)を加えた。混合物を窒素雰囲気中にて95℃で加熱した。次いで、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドをトルエンに溶かした1M溶液(0.18mL、0.18mmol)を加えた。反応混合物を95℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(30mL)および水(20mL)で希釈した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を蒸発にかけた。未精製材料を、0〜6%の勾配のジクロロメタン/メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して、9−アンチ−({7−[2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}オキシ)−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボキシレートを白色の固体45mg(68%)として得た。LCMS: 521.2 (M+1).
1H NMR (400 MHz, ジュウテロクロロホルム) δ1.23 (dd, J=6.34, 2.64 Hz, 6 H) 1.93 -
2.06 (m, 2 H) 3.03 (s, 3 H) 3.14 (t, J=8.69 Hz, 2 H) 3.33 - 3.50 (m, 2 H) 3.81
(t, J=9.57 Hz, 2 H) 4.05 - 4.34 (m, 6 H) 4.89 - 5.02 (m, 1 H) 5.41 (t, J=3.61
Hz, 1 H) 7.65 - 7.74 (m, 2 H) 8.02 (dd, J=8.78, 7.42 Hz, 1 H) 8.25 (s, 1 H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物:
【化1】

[式中、
は、CO−O−R、または次式
【化2】

によって表される置換ピリミジンであり、
は、水素またはメチルであり、
は、水素、シアノ、ハロゲン、CF、OCF、C〜Cアルコキシ、およびC〜Cアルキルからなる群から選択される置換基であり、
は、存在しないか、またはSO−R、CO−NR、テトラゾール、C〜Cアルキル、NH、−NH−C〜Cアルキル、−NH−CO−C〜Cアルキル、NH−(CH−OHであり、
は、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり、
は、CF、C〜Cアルキル、ハロゲン、シアノ、またはC〜Cシクロアルキルであり、
は、C〜Cアルキル、NH、または(CH−OH、C〜Cシクロアルキルであり、
は、水素またはC〜Cアルキルであり、
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、CH−CH−OH、CH−CH−O−CH、CH−CH−CH−O−CH、CH−CH−CH−OH、3−オキセタニル、3−ヒドロキシシクロブチルであり、
、A、A、A、およびAは、それぞれ独立に、CH、N−オキシド、またはNであり、
但し、
a)A、A、A、A、およびAのうちの2つ以下は、Nであり、
b)A、A、A、A、およびAのうちの1つ以下は、N−オキシドである]
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
〜Aがフェニル環を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
〜Aがピリジル環を形成している、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がSO−Rである、請求項2または3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
がフルオロまたは水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
が−C(O)−O−C〜Cアルキルである、請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
9−アンチ−({7−[2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}オキシ)−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピル、薬学的に許容できるその塩、または薬学的に許容できるその共結晶。
【請求項9】
9−シン−({7−[2−フルオロ−4−(メチルスルホニル)フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}オキシ)−3−オキサ−7−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸イソプロピル、薬学的に許容できるその塩、または薬学的に許容できるその共結晶。
【請求項10】
少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤と混和された、治療有効量で存在する請求項1から9のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
抗肥満薬および抗糖尿病薬からなる群から選択される少なくとも1種の追加の薬剤をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗肥満薬が、ジルロタピド、ミトラタピド、イミプリタピド、R56918(CAS番号403987)、CAS番号913541−47−6、ロルカセリン、セチリスタット、PYY3−36、ナルトレキソン、オレオイル−エストロン、オビネピチド、プラムリンチド、テソフェンシン、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エクセナチド、AOD−9604(CAS番号221231−10−3)、およびシブトラミンからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗糖尿病薬が、メトホルミン、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ジアビネース、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド、トラザミド、トルブタミド、テンダミスタット、トレスタチン、アカルボース、アジポシン、カミグリボース、エミグリテート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシンQ、サルボスタチン、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、エキセンディン3、エキセンディン4、トロダスケミン、レセルバトロール、ヒルチオサール抽出物、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、およびサクサグリプチンからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
有効量の請求項1から9のいずれかに記載の化合物の、その必要がある患者への投与を含む、糖尿病の治療方法。
【請求項15】
治療有効量の請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物を患者に投与するステップを含む、代謝性または代謝関連の疾患、状態、または障害の治療方法。
【請求項16】
高脂血症、I型糖尿病、II型糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早発性2型糖尿病(EOD)、若年性非定型糖尿病(YOAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠糖尿病、冠動脈心疾患、虚血発作、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞(たとえば、壊死およびアポトーシス)、異脂肪症、食後脂肪血症、耐糖能障害(IGT)状態、空腹時血漿グルコース異常状態、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満、骨粗鬆症、高血圧、うっ血性心不全、左室肥大、末梢動脈疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性ニューロパシー、メタボリック症候群、シンドロームX、月経前症候群、冠動脈心疾患、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、卒中、血管再狭窄、高血糖、高インスリン血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝障害、耐糖能障害状態、空腹時血漿グルコース異常状態、肥満、勃起機能不全、皮膚および結合組織の障害、足の潰瘍化および潰瘍性大腸炎、内皮障害および血管伸展性の障害、高アポBリポタンパク質血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ならびに過敏性腸症候群からなる群から選択される状態の治療方法であって、有効量の請求項1から9のいずれかに記載の化合物の投与を含む方法。
【請求項16】
代謝性または代謝関連の疾患、状態、または障害の治療方法であって、そのような治療の必要がある患者に、
(i)請求項10に記載の第一の組成物、および
(ii)抗肥満薬および抗糖尿病薬からなる群から選択される少なくとも1種の追加の薬剤と少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤とを含む第二の組成物
を含む2種の別個の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項17】
前記第一の組成物と前記第二の組成物が同時に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一の組成物と前記第二の組成物が逐次的に、任意の順序で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
Gタンパク質共役受容体GPR119の活性を調節する疾患、状態、または障害を治療するための医薬の製造における、請求項1から9に記載の化合物の使用。
【請求項20】
糖尿病または前記糖尿病に付随する病的状態を治療するための医薬の調製における、請求項1から9のいずれかに記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−520868(P2012−520868A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500340(P2012−500340)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050945
【国際公開番号】WO2010/106457
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】