説明

3−ニトロフタル酸の製造方法

【課題】資源を有効に使い、高い生産性で、かつ大気汚染など環境に悪影響を与えない、工業的に有利な3−ニトロフタル酸の製造方法の提供。
【解決手段】無水フタル酸あるいはフタル酸に硝酸と硫酸の混酸を反応させて、ニトロ反応を行うにあたり、硝酸を無水フタル酸あるいはフタル酸に対して1.0から1.5倍モル、かつ、硫酸を無水フタル酸あるいはフタル酸に対して1.5から3.0倍モルを使用して、温度75℃以下にコントロールし、次いで、生成する反応混合物を加水分解し、3−ニトロフタル酸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆剤、農薬原料、樹脂原料などとして有用な化合物である3−ニトロフタル酸の製造方法に関する。さらに詳しくは、環境に対し悪影響を与えることなく、かつ、工業的に有利に3−ニトロフタル酸を製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、3−ニトロフタル酸の工業的製造方法として、フタル酸または無水フタル酸を硝酸などでニトロ化する方法がある。この中でフタル酸または無水フタル酸のニトロ化剤として硝酸を単独で用いる方法がある(特許文献1参照)。この方法は、硝酸をフタル酸または無水フタル酸に対して、10モル倍以上使用するため、硝酸の損失量が多いだけでなく、目的物の濃度が低く生産性が悪い。
【0003】
また、無水フタル酸を硝酸と硫酸の混酸でニトロ化し、加水分解する方法がある(特許文献2参照)。この方法は、ニトロ化反応及び加水分解反応での温度が100℃以上になり、反応条件が適切でないため、生産工程で硝酸が分解して多量に窒素酸化物ガスが発生し、環境に対し悪い影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表昭61−500617号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第1405143号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、資源を有効に使い、高い生産性で、かつ大気汚染など環境に悪影響を与えない、工業的に有利な3−ニトロフタル酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フタル酸または無水フタル酸に、硝酸と硫酸とからなる混酸を作用させ、特定の低温条件でニトロ化して、次いで、生成する反応混合物を特定の条件で加水分解する3−ニトロフタル酸の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法は、原料の使用量が少なく、生産効率高く、かつ、大気汚染がない、あるいは、大気汚染対策が容易である。本発明の製造方法は、工業的に有利に、3−ニトロフタル酸を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、無水フタル酸或いはフタル酸に、硝酸と硫酸の混酸を特定の混合比で使用し、温度75℃以下にコントロールしてニトロ化反応を行い、次いで、生成する反応混合物を加水分解して、3−ニトロフタル酸を製造する方法である。
【0009】
本発明で用いる無水フタル酸あるいはフタル酸の製造方法には、特に制限はない。本発明で用いる無水フタル酸あるいはフタル酸の製造方法は、たとえば、ナフタレンあるいは0−キシレンの空気酸化などを挙げることができる。
【0010】
本発明で用いる硝酸の使用量は、無水フタル酸あるいはフタル酸に対して、1.0から1.5倍モルである。硝酸の使用量が少ないとニトロ化反応が完結せず、使用量が多いと原料としての損失が多くなり、さらに加水分解反応で多量の窒素酸化物ガスが発生する。
【0011】
本発明で用いる硫酸の使用量は、無水フタル酸あるいはフタル酸に対して、1.5から3.0倍モルである。硫酸の使用量が少ないとニトロ化反応が完結せず、反応混合物の流動性がなくなり取扱いが困難になる。硫酸の使用量が多いと原料としての損失が多くなり、さらに加水分解反応で窒素酸化物ガスの発生が多くなる。
【0012】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法では、無水フタル酸或いはフタル酸に硝酸と硫酸の混酸を反応させて、ニトロ化反応する温度は、75℃以下にコントロールし、75℃を超えない。より好ましくは、反応温度を、40から70℃にコントロールする。反応温度が低いと反応速度が遅くなり、反応温度が高いと大気汚染の原因となる非常に有害な窒素酸化物ガスが、反応中にニトロ化混合物の気相に発生する。さらに、有害な窒素酸化物ガスが、加水分解反応で除害できないほど多量に発生し、また加水分解後の3−ニトロフタル酸の固液分離の作業環境を著しく汚染する。
【0013】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法では、ニトロ化反応における反応時間、即ち、無水フタル酸あるいはフタル酸に硝酸と硫酸の混酸を作用させる時間は、通常3時間以上、好ましくは、5時間以上であり、より好ましくは、6から12時間である。反応時間が短いとニトロ化反応が完結せず、さらに加水分解反応で多量の窒素酸化物ガスが発生する場合がある。反応時間が長いと生産性が悪くなる場合がある。反応圧力は、通常、常圧であるが、加圧下でもよい。
【0014】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法では、ニトロ化反応における、無水フタル酸あるいはフタル酸と、硝酸と硫酸の混酸との反応方法においては、通常、無水フタル酸あるいはフタル酸を仕込んだ反応器に硝酸を添加、混合して行う手順を取る。また、硝酸と硫酸との混酸を仕込んだ反応器に、無水フタル酸あるいはフタル酸を添加することもできる。好ましくは、無水フタル酸あるいはフタル酸と硫酸との混合物を仕込んだ反応器に、硝酸、あるいは、硝酸と硫酸の混酸を添加する。
【0015】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法では、ニトロ化において、無水フタル酸あるいはフタル酸と、硫酸との混合物に、硝酸を5時間以上かけて添加することが、さらに好ましい。
【0016】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法においては、無水フタル酸あるいはフタル酸と硝酸と硫酸の混酸との反応後、ニトロ化混合物を水と接触させ加水分解する。この加水分解反応においては、通常、水を仕込んだ反応器にニトロ化混合物を添加するが、特に添加方法に制限はない。
【0017】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法では、加水分解で用いる水量は、通常、反応に使用した無水フタル酸あるいはフタル酸に対して、1倍から5倍重量、好ましくは、1.5倍から2倍重量である。使用量が少ないと加水分解が不完全となり、反応混合物の流動性がなくなり取扱いが困難になる場合がある。使用量が多いと目的物が溶解して損失が大きくなり廃液量も多くなる場合がある。
【0018】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法では、加水分解における反応温度は、通常、0から110℃、好ましくは、10から90℃、さらに好ましくは、20から80℃である。温度が低いと反応混合物の流動性がなくなり、温度が高いと反応混合物からの窒素酸化物ガスの発生が急激になり危険である場合がある。反応時間は特に制限がないが、反応時間は、好ましくは、1〜10時間であり、反応時間が短いと反応混合物からの窒素酸化物ガスの発生が急激になり危険性を伴い、長いと生産性が悪くなる場合がある。
【0019】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法においては、反応の終わった加水分解物を加熱し、目的物の結晶を固液分離作業する前に、含有する窒素酸化物ガスを追い出すことが好ましい。この加熱温度は、通常80℃以上、好ましくは85℃以上120℃以下、さらに好ましくは90以上110℃以下である。温度が低いと固液分離作業前に窒素酸化物ガスがなくならず、温度が高いと加熱に不必要な熱量や時間を要する場合がある。
【0020】
本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法においては、通常、加水分解物を加熱した後、目的物の3−ニトロフタル酸の単離、精製を行う。一般に加熱後の加水分解物は3−ニトロフタル酸および4−ニトロフタル酸の混合物がスラリー状態になっており、まずこれを混酸類から固液分離し、ウェット状態の3−ニトロフタル酸および4−ニトロフタル酸の混合物である1次結晶を得る。次いで、例えば取得した1次結晶と水とを混合し、溶解性の高い4−ニトロフタル酸を混合物の攪拌のみで溶解除去し、あるいは加熱溶解後に冷却晶析して除去した後、固液分離してウェット状態の3−ニトロフタル酸が主成分の2次結晶を得ることができる。さらに目的物の純度を上げるには、1次結晶と同様にして、2次結晶を水と混合し、純度の高い3−ニトロフタル酸の3次結晶を得ることができる。
【0021】
ウェット結晶の乾燥条件には、通常、特に制限はない。例えば、1から48時間、80から100℃、常圧で空気中であっても、減圧下であっても乾燥できる。
【0022】
なお、本発明の3−ニトロフタル酸の製造方法においては、副生する4-ニトロフタル酸を取得することができる。例えば、3-ニトロフタル酸の単離、精製において2次結晶を固液分離して生じる濾液を濃縮や冷却などの操作により、4−ニトロフタル酸を晶析し、固液分離して純度の高い4-ニトロフタル酸を製品化することも可能である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
実施例1
0.5Lガラス製容器へ無水フタル酸150g(1.01モル、分子量148.1)および硫酸226g(97重量%、2.24モル〔無水フタル酸に対して2.2倍モル〕、分子量98.08)を仕込み、水浴で45℃にする。次いで硝酸70.9g(99重量%、1.11モル〔無水フタル酸に対して1.1倍モル〕、分子量63.02)を8時間かけて、反応温度45〜50℃にコントロールし滴下した。滴下後2時間、同温度で熟成反応した。ニトロ化混合物の気相部は無色透明で窒素酸化物ガス(赤褐色)はなかった。
【0025】
次に1Lビーカーに水250gを入れ、その中にニトロ化反応物を0.5時間かけて滴下し、加水分解した。気相部に赤褐色の窒素酸化物ガスが発生した。水上置換によりガスを捕集量したところ、0.9Lであった。温度は20℃から60℃に上昇した。さらに1時間、90〜95℃で加熱した。次いで25℃に冷却し晶析した。析出した1次結晶を遠心分離機でろ過し、3−ニトロフタル酸95.9g(0.455モル、分子量211.1)、および4−ニトロフタル酸115g(0.545モル、分子量211.1)、および未反応のフタル酸0.0g(0モル、分子量166.1)を含むウェット1次結晶301g(含液率30重量%)を得た。3−ニトロフタル酸の反応収率は45%、残存フタル酸は2%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの発生はなかった。
【0026】
さらにウェット1次結晶を水300gと1時間、20℃で混合し、不溶の2次結晶を遠心分離機でろ過し、3−ニトロフタル酸71.6g(0.339モル)、および4−ニトロフタル酸17.0g(0.081モル)を含むウェット2次結晶102g(含液率13重量%)を得た。
【0027】
最後にウェット2次結晶を水80gと90℃にて水浴で加熱溶解し、水浴で1時間かけて25℃まで冷却し晶析した。析出した3次結晶を遠心分離機でろ過し、遠心分離機上で水15gによって洗浄し、取得したウェット3次結晶を70℃で乾燥し、3−ニトロフタル酸61.7g(0.292モル、)および4−ニトロフタル酸0.7g(0.003モル)を含む3次結晶62.4gを得た。3−ニトロフタル酸の単離収率は29%、純度は98.9%であった。
【0028】
フタル酸類の分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、次の分析条件にて行った。
HPLC装置: 島津LC−10A
UV検出装置: 島津SPD−10A
UV検出条件: 波長254nm(Abs 0.04)
記録装置: 島津C−R6A
カラム本体: 島津Shim−pack CLC−ODS、長さ150mm×内径4.6mmφ
移動層組成: MeOH−水、25:75(体積)、0.1体積%リン酸
移動層流量: 1.0mL/min
カラム温度: 40℃
カラム圧力: 11MPa
分析用サンプル: フタル酸類水溶液約1mg/mL
注入量: 4.00μL。
【0029】
実施例2
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を行った。但し、ニトロ化において6時間、50〜55℃にコントロールし、また加水分解後、95〜100℃加熱した。
【0030】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスはなかった。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが発生した。水上置換によるガス捕集量は1.0Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は45%、残存フタル酸は4%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの発生はなかった。
【0031】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は27%、純度は98.3%であった。
【0032】
実施例3
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を行った。但し、ニトロ化において硫酸255g(97重量%、2.53モル〔2.5倍モル〕)を用い、7時間、55〜60℃にコントロールし、また加水分解後、100〜105℃加熱した。
【0033】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスはなかった。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが発生した。水上置換によるガス捕集量は1.2Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は43%、残存フタル酸は4%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの発生はなかった。
【0034】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は26%、純度は98.2%であった。
【0035】
実施例4
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を行った。但し、ニトロ化において硫酸255g(97重量%、2.53モル〔2.5倍モル〕)および硝酸77.2g(99重量%、1.21モル〔1.2倍モル〕)を用い、9時間、60〜65℃にコントロールし、また加水分解後、90〜95℃加熱した。
【0036】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスはなかった。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが発生した。水上置換による窒素酸化物ガス捕集量は1.3Lであった(無水フタル酸1.5tスケールでの工業的生産では,除害設備で十分に大気放散を回避できた)。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は47%、残存フタル酸は0%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの発生はなかった。
【0037】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は27%、純度は98.5%であった。
【0038】
比較例1
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において6時間、85〜90℃にコントロールし、また加水分解後、75〜80℃加熱した。
【0039】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスが多量に見られた。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが多量に発生した。水上置換による窒素酸化物ガス捕集量は3.0Lであった(無水フタル酸1.5tスケールでの工業的生産では,除害設備で大気放散を回避できず、生産を中止した)。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は37%、残存フタル酸は14%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの多量に発生し、著しく作業環境を汚染した。
【0040】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は23%、純度は97.5%であった。
【0041】
比較例2
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において2時間、77〜82℃にコントロールし、また加水分解後、75〜80℃加熱した。
【0042】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスが多量に見られた。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが多量に発生した。水上置換によるガス捕集量は2.8Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は42%、残存フタル酸は9%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの多量に発生し、著しく作業環境を汚染した。
【0043】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は24%、純度は97.9%であった。
【0044】
比較例3
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において硫酸255g(97重量%、2.53モル〔2.5倍モル〕)を用い、2時間、90〜95℃にコントロールし、また加水分解後、90〜95℃加熱した。
【0045】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスが非常に多量に見られた。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが多量に発生した。水上置換によるガス捕集量は3.5Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は42%、残存フタル酸は12%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの多量に発生し、著しく作業環境を汚染した。
【0046】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は25%、純度は97.9%であった。
【0047】
比較例4
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において硫酸255g(97重量%、2.53モル〔2.5倍モル〕)および硝酸61.1g(99重量%、0.96モル〔0.95倍モル〕)を用い、9時間、60〜65℃にコントロールし、また加水分解後、90〜95℃加熱した。
【0048】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスはなかった。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが発生した。水上置換によるガス捕集量は1.5Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は34%、残存フタル酸は25%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスの発生はなかった。
【0049】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は22%、純度は97.9%であった。
【0050】
比較例5
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において硫酸255g(97重量%、2.53モル〔2.5倍モル〕)および硝酸103g(99重量%、1.62モル〔1.6倍モル〕)を用い、9時間、60〜65℃にコントロールし、また加水分解後、90〜95℃加熱した。
【0051】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスは少量見られた。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが発生した。水上置換によるガス捕集量は2.4Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は44%、残存フタル酸は0%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスが発生し、作業環境を汚染した。
【0052】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は25%、純度は98.0%であった。
【0053】
比較例6
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において硫酸132g(97重量%、1.31モル〔1.3倍モル〕)および硝酸83.6g(99重量%、1.31モル〔1.3倍モル〕)を用い、1時間、75〜80℃にコントロールしたところ、熟成反応後、ニトロ化混合物に流動性がなくなり、加水分解のために滴下することが困難になり、反応を中止した。
【0054】
比較例7
実施例1と同様にして3−ニトロフタル酸の製造を試みた。但し、ニトロ化において硫酸357g(97重量%、3.64モル〔3.6倍モル〕)および硝酸77.2g(99重量%、1.21モル〔1.2倍モル〕)を用い、1時間、60〜65℃にコントロールし、また加水分解後、70〜75℃加熱した。
【0055】
ニトロ化混合物の気相部に窒素酸化物ガスは少量見られた。加水分解の気相部に窒素酸化物ガスが発生した。水上置換によるガス捕集量は2.0Lであった。ウェット1次結晶から3−ニトロフタル酸の反応収率は43%、残存フタル酸は5%であった。遠心分離時に窒素酸化物ガスが発生し、作業環境を汚染した。
【0056】
3次結晶から3−ニトロフタル酸の単離収率は24%、純度は97.8%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水フタル酸あるいはフタル酸に硝酸と硫酸の混酸を反応させて、ニトロ反応を行うにあたり、硝酸を無水フタル酸あるいはフタル酸に対して1.0から1.5倍モル、かつ、硫酸を無水フタル酸あるいはフタル酸に対して1.5から3.0倍モルを使用して、温度75℃以下にコントロールし、次いで、生成する反応混合物を加水分解する3−ニトロフタル酸の製造方法。
【請求項2】
ニトロ化反応において、無水フタル酸あるいはフタル酸と、硫酸との混合物に、硝酸を5時間以上かけて添加する請求項1に記載の3-ニトロフタル酸の製造方法。
【請求項3】
硝酸を無水フタル酸あるいはフタル酸に対して1.05から1.3倍モルを使用する請求項1または2に記載の3-ニトロフタル酸の製造方法。
【請求項4】
温度を、40〜70℃にコントロールしてニトロ化反応を行う請求項1から3に記載の3-ニトロフタル酸の製造方法。
【請求項5】
加水分解反応において、水を添加した後、生成する加水分解物を温度85〜100℃に加熱する請求項1から4のいずれかに記載の3−ニトロフタル酸の製造方法。

【公開番号】特開2011−68586(P2011−68586A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220204(P2009−220204)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】