説明

3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン化合物を調製するための改良法

【課題】3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン化合物を調製するための方法の提供。
【解決手段】ラセミ3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物の酵素を触媒とするエナンチオ選択的加水分解を含む、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(I)の化合物、または(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(Ia)の化合物を調製するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン化合物を調製するための方法に関する。特に、本発明は、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンまたはそのエナンチオマー(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンを調製するための方法に関する。さらに、本発明は、上記化合物からのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の既知化合物、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンは、強力なPNP阻害剤が含まれる特定の本出願人の阻害化合物を合成するための重要な中間化合物である(例えば、PCT/NZ03/000186を参照)。式(I)の化合物のエナンチオマーは、式(Ia)の化合物であり、これも、PNP阻害剤を合成するための中間体として有用である。
【化1】



【0003】
MakinoおよびIchikawa(K.MakinoおよびY.Ichikawa、Tetrahedron Letters(1998)39、8245)は、化合物(I)の合成を報告している。化合物(I)の必要なキラリティーは、シャープレス不斉エポキシ化を用いて導入される。
【0004】
KarissonおよびHogberg(KarissonおよびHogberg、Tetrahedron:Asymmetry(2001)12、1977)は、代替合成法について記載している。この方法において、キラリティーは、キラルなスルタム補助剤を用いて導入される。
【0005】
Galeazzi他(R.Galeazzi、G.Martelli、G.Mobbili、M.OrenaおよびS.Rinaldi、Tetrahedron:Asymmetry(2004)15、3249)は、2−シリルオキシ−3−メトキシカルボニル−ブタ−3−エン酸エチルへの(S)−1−フェニルエチルアミンの付加により化合物(I)を調製した。
【0006】
Filichev他(V.V.FilichevおよびE.B.Pedersen、Tetrahedron(2001)57、9163;V.V.Filichev、M.BrandtおよびE.B.Pedersen、Carbohydrate Research(2001)333、115)は、キラルな出発材料を用いて化合物(I)を製造している。例えば、化合物(I)は、ジアセトン−D−グルコースまたはD−キシロースから調製することができる。しかしながら、両合成手順は、複雑であり、多くの反応ステップを必要とする。
【0007】
キラリティーを導入するための代替法は、生物触媒を使用するものである。例えば、HansenおよびBols(S.U.HansenおよびM.Bols、Acta Chemica Scandinavica(1998)52、1214)は、カンジダアンタークチカ(Candida antarctica)およびムコールミエヘイ(Mucor miehei)由来の固定化リパーゼを用いるラセミのトランス−4−ヒドロキシメチルピロリジン−3−オールのN−Boc誘導体の酵素的分割を試みた。この方法は、酵素的手段によりジオールの分割を試みることに焦点を合わせている。しかしながら、この方法では不十分なエナンチオマー過剰率が得られ、ほんの少量の化合物(I)が他の化合物の調製における中間体として使用できるようになるという結果であった。低い生成物収率は、かなりの損耗量ひいては高い総費用を意味する。
【0008】
公表されている化合物(I)の合成は、この価値ある中間化合物に対する商業的に実行可能な経路として不満足と見なされる。ほんのわずかな反応ステップを用い、許容可能な全生成物収率の改良法を開発することによりこの問題を克服する必要性が引き続き存在している。
【0009】
O−アシル化による炭素環式のシスおよびトランス−β−ヒドロキシエステルのリパーゼを触媒とする分割は、高収率でエナンチオマー純度の高い化合物を提供できることが知られている(L.M.Levy、J.R.DehliおよびV.Gotor、Tetrahedron:Asymmetry(2003)14、2053)。しかしながら、潜在的基質に対する酵素の反応性を予測することは極めて困難である。酵素の特異性は、当技術分野においてよく知られている。たとえ特定の化合物が酵素基質であることが分かっている場合でも、生成物の反応収率およびエナンチオマー純度に関してほとんど確実性がないことが多い。
【0010】
本出願人は、リパーゼを触媒とするエステル化を介し、(±)−トランス−1−N−保護−4−ヒドロキシピロリジン−3−カルボン酸アルキルエステルから高い収率および高いエナンチオマー過剰率で化合物(I)を調製することができることを明らかにしている(国際公開第2005/033076号パンフレット)。しかしながら、その調製方法には、いくつかの重要な欠点がある。特に、この方法は、クロマトグラフ精製ステップを必要とする。そのようなステップは、費用のかかる処理ステップである。そのようなステップは、方法全体にかなりの費用を追加し、通常は、化合物の低収率をもたらす。これらの欠点は、この方法が大規模に行われる場合は特に明白である。したがって、特に、商業生産に必要とされるプロセスの規模のために、これらの欠点を回避する式(I)および(Ia)の化合物を調製するための改良法が必要とされてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今回、本出願人は、容易に入手できる出発材料を用い、3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン化合物を調製するための改良法を開発した。この新たな経路は、アキラルな出発材料を用いる合成で遭遇することが多い問題点を克服する。この経路は、公表されている方法よりも少ない化学変換を含み、高い収率およびエナンチオマー過剰率での望ましい化合物の調製を可能にする。最も重要なことだが、この改良法は、あらゆるクロマトグラフ精製ステップの必要性を回避する。この驚くべき発見は、国際公開第2005/033076号パンフレットに記載されている方法が含まれる既知の方法を上回る利点を提供し、3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン化合物、およびそれらから調製することができるPNP阻害剤などの他の化合物への著しく簡単かつ対費用効果の高い経路を可能にする。
【0012】
したがって、3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン化合物を調製するための改良法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本発明は、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(I)の化合物、または(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(Ia)の化合物を調製するための方法であって、
【化2】



以下のステップ、すなわち
ステップ(a):ラセミの式(II)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物の酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解であって、
【化3】



[ここで、Rは、ベンジルまたはベンズヒドリルであり、それらの各々は、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシにより置換されていてもよく、Rは、アリールまたは直鎖もしくは分岐鎖のアルキルもしくはアラルキルであり、それらのいずれも、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシにより置換されていてもよい]
混合物(i):式(III)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物および式(IV)の未反応ピロリジン化合物か、
【化4】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
混合物(ii):式(IIIa)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物および式(IVa)の未反応ピロリジン化合物のどちらかを得るための加水分解、
【化5】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
(ここで、酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解は、化合物(III)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素か、化合物(IIIa)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素のどちらかを用いて行われる)
ステップ(b):混合物(i)における式(IV)の化合物からの式(III)の化合物の分離、または混合物(ii)における式(IVa)の化合物からの式(IIIa)の化合物の分離、および
ステップ(c):式(III)の化合物もしくは式(IVa)の化合物の式(I)の化合物への変換、または式(IV)の化合物もしくは式(IIIa)の化合物の式(Ia)の化合物への変換
を含む方法を提供する。
【0014】
ステップ(a)における酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解は、化合物(III)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素を用いて行われることが好ましい。
【0015】
ステップ(a)における酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解が、式(III)と(IV)の化合物の混合物を生じさせる場合、化合物(III)のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約80%であることが好ましく、少なくとも約90%であることが最も好ましい。あるいは、ステップ(a)における酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解が、式(IIIa)と(IVa)の化合物の混合物を生じさせる場合、化合物(IIIa)のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約80%であることが好ましく、少なくとも約90%であることが最も好ましい。
【0016】
さらに、ステップ(a)における酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解において使用される酵素は、リパーゼまたはエステラーゼであることが好ましい。一実施形態において、酵素は、リパーゼ、好ましくはカンジダアンタークチカ(Candida antarctica)由来である。別の実施形態において、酵素は、エステラーゼ、好ましくはブタ肝臓エステラーゼである。
【0017】
式(III)の化合物が、式(I)の化合物に変換される場合、変換は、式(V)または式(Va)の3,4−トランス−二置換ピロリジン化合物を得るための式(III)または式(IIIa)の化合物の還元のステップを含む方法により行われることが好ましい。
【化6】



[ここで、Rは、上記で定義した通りである]
【0018】
還元は、水素化リチウムアルミニウムまたはボランを用いて行われることが好ましく、ボランを用いて行われることが最も好ましい。
【0019】
変換には、式(V)または式(Va)の化合物のR基を水素で置換し、式(I)または式(Ia)の化合物を得るステップをさらに含むことが好ましい。これは、水素化分解により行われることが好ましい。
【0020】
また、ステップ(b)における式(IV)の化合物からの式(III)の化合物の分離は、第1の水不混和性溶媒を用い、式(IV)の化合物および式(III)の化合物のカルボン酸塩体を含有する水溶液から式(IV)の化合物を抽出し、次いで、得られる混合物のpHを低下させて式(III)の化合物のカルボン酸塩体を(III)の化合物のカルボン酸体に変換し、次いで、得られる混合物を第2の水不混和性溶媒で再度抽出することにより行われることが好ましい。
【0021】
水不混和性溶媒は、ジクロロメタンまたはクロロホルムであり、第2の水不混和性溶媒は、酢酸エチルであることが好ましい。
【0022】
場合により、式(I)または式(Ia)の化合物を、式(VI)または式(VIa)の3,4−トランス−二置換ピロリジン化合物に変換してもよい。
【化7】



[ここで、Rは、N保護基である]
【0023】
は、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルであることが好ましい。Rは、tert−ブトキシカルボニル、メトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルであることが最も好ましい。
【0024】
が、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルである場合、式(I)の化合物は、トリエチルアミンまたは水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下または非存在下でのアルコキシカルボニル化剤、アリールオキシカルボニル化剤またはアラルコキシカルボニル化剤による式(I)の化合物の処理により式(VI)の化合物に変換されることが好ましい。
【0025】
さらに、式(II)の化合物は、式(VII)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物のN−O結合の還元的切断、および式(II)の化合物を得るためのin situ環化のステップを含む方法により調製されることが好ましい。
【化8】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
【0026】
式(VII)の化合物は、式(VIII)のニトロンと式(IX)のアルケンの1,3−環化付加により調製されることが最も好ましい。
【化9】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
【0027】
1,3−環化付加は、式(VIII)のニトロンを生成させ、次いで、それを、式(IX)のアルケンとin situで反応させることにより行われることが好ましい。Rがベンジルの場合、式(VIII)のニトロンは、N−ベンジルヒドロキシルアミンとHCHOの反応により生成されることが好ましい。
【0028】
は、ベンジルであることが好ましい。さらに、Rは、アルキルであることが好ましい。Rは、メチルまたはエチルであることが最も好ましい。
【0029】
また、還元的切断およびin situ環化は、水素化分解によるか、あるいは酸の存在下でZnを用いることにより行われることが好ましい。
【0030】
本発明の方法には、式(I)または(Ia)の化合物を式(X)または(Xa)の化合物に変換するステップをさらに含むことが好ましい。
【化10】



[ここで、Rは、H、OHおよびSHから選択されるか、またはそれらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキルオキシ、アラルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アラルキルチオ、およびアリールチオから選択される]
【0031】
好ましい実施形態において、本発明の方法には、式(I)または(Ia)の化合物を式(X)または(Xa)の化合物に変換し、次いで、式(X)または(Xa)の化合物を式(XI)の化合物と反応させて式(XII)または(XIIa)の化合物を得るステップも含む。
【化11】



【化12】



【化13】



[ここで、Rは、上記で定義した通りであり、
Aは、N、CHおよびCRから選択され、ここで、Rは、ハロゲン、OHおよびNHから選択されるか、あるいは、Rは、アルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、それらの各々は、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいか、あるいは、Rは、NHR、NRおよびSRから選択され、ここで、R、RおよびRは、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Bは、OH、NH、NHR10、SH、水素およびハロゲンから選択され、ここで、R10は、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Dは、OH、NH、NHR11、水素、ハロゲンおよびSCHから選択され、ここで、R11は、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Eは、NおよびCHから選択される]
【0032】
反応は、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価体を用いて行われることが好ましい。
【0033】
代替実施形態において、式(XI)の化合物は、式(XIII)の化合物に変換され、次いで、式(X)または(Xa)の化合物を式(XIII)の化合物と反応させると式(XII)または(XIIa)の化合物が得られる。
【化14】



[ここで、A、B、DおよびEは、それらの各々を上記で定義した通りであり、5員環内のNHは、適当な保護基で保護されていてもよい]
【0034】
本発明の方法には、式(II)の化合物を調製するステップをさらに含み、式(I)または(Ia)の化合物を式(X)または(Xa)の化合物に変換するステップをさらに含むことが好ましい。
【化15】



[ここで、Rは、H、OHおよびSHから選択されるか、またはそれらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキルオキシ、アラルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アラルキルチオ、およびアリールチオから選択される]
【0035】
この方法には、式(X)または(Xa)の化合物を式(XI)の化合物と反応させて式(XII)または(XIIa)の化合物を得るステップをさらに含む。
【化16】



【化17】



【化18】



[ここで、R、A、B、DおよびEは、上記で定義した通りである]
【0036】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(I)の化合物、または(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(Ia)の化合物を調製するための方法であって、
【化19】



(i)式(4)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物を得るための式(2)のニトロンと式(3)のアルケンの1,3−環化付加のステップ、
【化20】



(ii)式(4)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物のN−O結合の還元的切断、および式(5)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物を得るためのin situ環化のステップ、
【化21】



(iii)式(6)の化合物と式(5)の未反応化合物の混合物、または式(6a)の化合物と式(5a)の未反応化合物の混合物を得るための式(5)の化合物の酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解のステップ、
【化22】



(iv)式(5)の化合物からの式(6)の化合物の分離、または式(5a)の化合物からの式(6a)の化合物の分離のステップ、
(v)式(7)の化合物を得るための式(6)もしくは(5a)の化合物の還元、および式(7a)の化合物を得るための式(6a)もしくは(5)の化合物の還元のステップ、
【化23】



(vi)式(I)の化合物を得るための式(7)の化合物における水素によるCHPh基の置換、または式(Ia)の化合物を得るための式(7a)の化合物における水素によるCHPh基の置換のステップを含む方法を提供する。
【0037】
別の実施形態において、この方法は、
(vii)式(I)の化合物の式(8)の化合物への変換、または式(Ia)の化合物の式(8a)の化合物への変換であって、
【化24】



二炭酸ジ−tert−ブチルまたは二炭酸ジ−tert−ブチルによる式(I)の化合物、または式(Ia)の化合物の処理による変換のステップを含む。
【0038】
式(I)の化合物、または式(Ia)の化合物は、場合により単離されず、ステップ(vii)において、式(I)の化合物の式(8)の化合物への変換、または式(Ia)の化合物の式(8a)の化合物への変換は、in situで行われる。
【0039】
また、本発明は、本発明の方法により調製される(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、および本発明の方法により調製される(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンを提供する。
【0040】
さらに、本発明は、本発明の方法により調製される式(XII)の化合物、および本発明の方法により調製される式(XIIa)の化合物を提供する。
【0041】
さらに、本発明は、式(III)の化合物を提供する。
【化25】



[ここで、Rは、上記で定義した通りである]
【0042】
また、本発明は、式(IV)の化合物を提供する。
【化26】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、そのどちらも、特定の強力な酵素阻害剤の合成に有用である(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンならびにそのエナンチオマー(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンへの好都合な経路を提供する。
【0044】
本発明の方法によれば、キラリティーは、生物触媒を用いて好都合に導入され、分割ステップにおいて一切のクロマトグラフ精製は必要とされない。有利には、この方法は、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンの調製のための中間体である式(III)の化合物への経路を提供する。また、この方法は、(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンの調製のための中間体である式(IIIa)の化合物への経路を提供する。この方法の別の利点は、この方法が、式(IV)および(IVa)の化合物への経路を容易に提供することである。式(IV)および(IVa)の化合物は、他の応用例における使用を見出すことができる。
【0045】
有利には、化合物(III)および(IV)は、優れたエナンチオ選択性とともに高収率で製造され、容易に分離される。
【0046】
この方法の他の利点は、酵素の選択により、この方法が、式(IIIa)の化合物から容易に分離し、望ましい化合物、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンに変換することができる化合物(IVa)への経路も提供できることである。
【0047】
当業者には当然のことながら、本発明によれば、式(VII)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物および式(II)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物のラセミ混合物が得られる。有利には、容易に入手できる出発材料を用い、ほんの2ステップで、かつ高収率で式(II)の化合物を初めに製造することができる。続く式(II)の化合物のエナンチオ選択的加水分解は、純粋なエナンチオマー体、または少なくとも、一方のエナンチオマーに極めて富んだ混合物を提供する。
【0048】
当業者には明らかであるが、基RおよびRは、上記で定義されているように、それ自体が場合により置換されていてもよい。例えば、Rは、ハロゲンおよび直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。同様に、Rは、ハロゲンまたは直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアルコキシ、例えば、p−メトキシで置換されていてもよい。
【0049】
当然のことながら、置換基BおよびDを有する任意の化合物の表示は、Bおよび/またはDがヒドロキシ基である場合、対応するアミドのエノール型互変異性体であり、大部分はアミド体で存在するはずである。エノール型互変異性表示の使用は、単に、より少ない構造式で本発明の化合物を表すためである。
【0050】
同様に、当然のことながら、置換基BおよびDを有する任意の化合物の表示は、Bおよび/またはDがチオール基である場合、対応するチオアミドのエノール型互変異性体であり、大部分はチオアミド体で存在するはずである。チオエノール型互変異性表示の使用は、単に、より少ない構造式で本発明の化合物を表すためである。
【0051】
式(VI)の化合物は、tert−ブチルカルボニルN−保護基を組み入れることが好ましいが、当業者には明らかであるが、他のN−保護基を用いることができる(例えば、TheodoraW.GreeneおよびPeter G.M.Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」、Wiley−Interscinece、第3版(1999年5月15日)を参照)。他の適当な保護基には、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アシルまたはスルホニル誘導体が含まれる。
【0052】
本明細書で使用するように、「楔」記号を示す構造式、例えば、下式は、トランス異性体の純粋なエナンチオマー体を表すことを意図している。
【化27】



【0053】
同様に、「長方形」記号を示す構造式、例えば、下式は、トランス異性体のラセミ混合物を表すことを意図している。
【化28】



【0054】
化合物の合成
本発明の好ましい実施形態(スキーム1)において、化合物(+)−8は、マレイン酸ジエチル3およびニトロン2から調製される。スキーム1に示す続く環化付加、還元的切断および転位ステップは、これまでシス−トランス混合物の分別結晶によってのみ得られていた(Kametani,T.、Kigawa,Y.、Ihara,M.Tetrahedron、1979、313−316)純粋なトランス−置換ピロリジノン(±)−5を効率的に提供する。
【0055】
イソオキサゾリジンをもたらす2などのニトロンのアルケンとの1,3−環化付加反応は、当業者に知られている反応である。この環化付加は、イソオキサゾリジンのC−4およびC−5における相対的立体化学が、アルケン上の置換基の幾何学的関係によって常に制御されるように、特異的にシス形式で進行する。
【0056】
最も一般的には水素化分解または亜鉛と酸によるイソオキサゾリジンのN−O結合の還元的切断は、βアミノアルコールを生じさせる。5−アルコキシカルボニルイソオキサゾリジンから誘導されるアミノアルコールは、C−4またはC−5(イソオキサゾリジンナンバリング)におけるエピマー化なしにピロリジノンへ容易に環化する。したがって、4,5−シス−二置換イソオキサゾリジンは、3,4−トランス−二置換ピロリジノンを生じる。
【0057】
【化29】



【0058】
上記化学反応の生成物(±)−4および(±)−5は、ラセミ混合物である。エナンチオ選択的加水分解の使用は、純粋なエナンチオマー体、または少なくとも、一方のエナンチオマー[(+)−6、(+)−7、(+)−1、(+)−8]に極めて富んだ混合物を提供する。したがって、この方法は、医薬生成物の構築における使用に適している。
【0059】
リパーゼは、エステルの立体選択的およびエナンチオ選択的加水分解によく使用される(Faber,K.Biotransformationsin Organic Chemistry.Springer−Verlag、Berlin、2004、94−119)。近年、酵母カンジダアンタークチカ(Candidaantarctica)由来のB−リパーゼ(CALB)は、多くのエナンチオ選択的な反応を触媒する特に効率的かつ強力な酵素であることが明らかにされている(Faber,K.Biotransformationsin Organic Chemistry.Springer−Verlag、Berlin、2004、94−119;Anderson,E.M.、Larson,K.M.;Kirk,O.BiocatalysisBiotransformation、1997、16、181−204)。
【0060】
市販製品ノボザイム(登録商標)435などのCALBの固定化形態は、強化された安定性を有し、反応生成物から容易に分離される(Anderson,E.M.、Larson,K.M.;Kirk,O.BiocatalysisBiotransformation、1997、16、181−204)。
【0061】
本発明の方法は、ノボザイム(登録商標)435を用いてラセミエステル(±)−5を分割することが好ましい。エナンチオ選択的加水分解は、エステル(−)−5(ee>97%)と一緒に、良好な収率(ラセミ化合物に基づき36〜45%)および優れたエナンチオマー過剰率(94〜96%)で(+)−(3R,4S)−酸6を生じさせる。
【0062】
カルボン酸およびラクタム部分の還元は、最も一般的には、水素化リチウムアルミニウムか、ボランのどちらかを用いて行われる(Barrett,A.G.M.(ComprehensiveOrganic Synthesis、(Trost,B.M.およびFleming,I編)、Pergamon、Oxford、1991、8、237−238および249−251))。
【0063】
本出願人は、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を用いる水素化ホウ素ナトリウムからのボランのinsitu生成が、(+)−6をN−ベンジルピロリジン(+)−7へ還元し、次いで、水素化分解により(+)−1へ変換するための好都合な方法であることを見出した。対応するBoc−カルバメート(+)−8は、当業者に知られている様々な方法によって形成させることができる。本発明の好ましい実施形態において、メタノール中の二炭酸ジ−tert−ブチルおよび水酸化ナトリウムまたはトリエチルアミンなどの塩基が、このステップで使用される。
【0064】
有利には、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンを合成するための新たな方法は、これまでに知られている方法よりも少ない化学変換を含む。望ましい化合物は、高収率で得られる。さらに、この方法は、より大量(例えば、数キログラム)が必要とされる場合に問題となるクロマトグラフ精製の使用を回避または低減し、薬学的使用のための大量な化合物の調製におけるスケールアップに極めて適した方法にしている。
【0065】
本方法の他の利点は、N−ベンジルピロリジン(+)−7を結晶化し、エナンチオマー過剰率をさらに改善できることである。さらに、化合物(+)−1は、結晶性材料、N−tert−ブトキシカルボニル誘導体(+)−8へ容易に変換することができる。化合物(+)−8は、極めて安定な中間体であり、簡単な酸処理により、もとの(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン(+)−1へ好都合に変換される。
【0066】
場合により、望ましい化合物のエナンチオマー純度を高めるために再結晶ステップを加えることができる。
【0067】
PNP阻害剤の調製における中間体として式(I)または(Ia)の化合物を使用するための方法は、国際公開第2004/018496号パンフレット(PCT/NZ2004/000186)および国際公開第2004/069856号パンフレット(PCT/NZ2004/000017)に詳細に記載されている。
【0068】
ヒドロラーゼのスクリーニング
以下に示すスクリーニング方法により、任意の酵素が本発明の酵素的分割ステップに有効であるか否かを判定することができる。したがって、当然のことながら、本発明は、記載されているか、あるいは特許請求の範囲に記載されているいかなる特異的酵素にも限定されるものではない。この方法により、ある群から任意の酵素を選択し、望ましい収率およびエナンチオマー過剰率についてその酵素をスクリーニングし、本発明の方法においてその酵素を使用するか、あるいは代わりの酵素を選択することができる。
【0069】
【化30】



【0070】
合計22種のリパーゼ、エステラーゼ、およびプロテアーゼ(表1)を、それらのスキーム1に示す加水分解を触媒する能力について試験した。各酵素(5〜50mg、表1)を、ラセミエステル(±)−5(50mg)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE、0.1mL)、リン酸塩緩衝液(0.1M、pH7.5、0.1mL)、水(1mL)およびフェノールレッド指示薬と一緒に撹拌した。加水分解が進行したら、生成物の酸(6)を、フェノールレッド終点まで水酸化ナトリウム(0.1M)により滴定した。したがって、水酸化ナトリウムの消費は、反応の程度の尺度である。酵素のうち15種類は、24時間で10%の変換を行えなかったため放棄した。50%の変換に到達したか[ブタ肝臓エステラーゼ(PLE)、サブチリシン、ノボザイム435]、それ以上の変換が観察されないか[パンクレアチン、シュードモナス属リポタンパク質リパーゼ、クロモバクテリウムビスコサム(Chromobacteriumviscosum)リポタンパク質リパーゼ、リポザイム]のどちらかの場合、残りの7つの反応物に抽出処理を行った。エステル5および酸6の両方を含有する抽出物を、トリメチルシリルジアゾメタンで処理し、酸を、対応するメチルエステルに変換した。次いで、5および6のエナンチオマー純度を、HPLC(ChiracelOD−H)により決定した。ブタ肝臓エステラーゼ、ノボザイム435およびパンクレアチンは、中程度から高いエナンチオマー過剰率で5および6を与えたが(表1)、パンクレアチンは、高い酵素負荷で極めてゆっくりと反応したに過ぎなかった。したがって、これらの酵素のうち最初の2種を、さらなる試験のために選択した。それらは各々、エステル5の異なるエナンチオマーを優先的に加水分解する。ノボザイム435は、(+)酸6および(−)エステル5を生じさせるが、PLEは、(−)6および(+)5を生じさせる。
【0071】
【表1】



【0072】
PLEは、いくつかの共溶媒の存在下で5の加水分解を触媒した。回収されたエステルおよび酸のエナンチオマー過剰率は、共溶媒とほとんど無関係であった(表2)。加水分解反応を70%完了まで進行させた場合、未反応エステル(+)−5は、優れたエナンチオマー過剰率で得られたが(表3)、同時に、収率は低下した。
【0073】
【表2】



【0074】
【表3】



【0075】
ノボザイム435は、共溶媒なしに、およびアセトン存在下の両方で、(±)−5を、各々良好なe.e.(約95%)で酸(+)−6およびエステル(−)−5に分割した。エステル5は、中程度の収率で、ボラン−ジメチルスルフィド錯体によりN−ベンジルピロリジン7に還元された。
【実施例】
【0076】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明する。当然のことながら、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
(±)−2−N−ベンジル−イソオキサゾリジン−4,5−シス−ジカルボン酸ジエチルエステル[(±)−4])
N−ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩(144.8g、0.91mol)および無水酢酸ナトリウム(82g、1mol)を、周囲温度にて30分間、エタノール(800mL)中で一緒に撹拌した後、37%ホルムアルデヒド水溶液(134mL、1.8mol)を加え、撹拌を1時間続けた。マレイン酸ジエチル3(134mL、0.83mol)を加え、混合物を1時間撹拌し、続いて2時間還流下で加熱した。冷却後、混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、残渣を酢酸エチル(1.5L)に取り、飽和重炭酸ナトリウムで3回(各200mL)洗浄した。有機層を取り出して乾燥し(MgSO)、溶媒を蒸発させると、黄色の油状物として粗生成物(±)−4(250.3g、マレイン酸ジエチルの量に基づいて98%)が得られた。少量を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:EtOAc:ヘキサン、2:8v/v)により精製した。分析データは以下の通りである。HNMR(CDCl)δ ppm:7.40〜7.20(m,5H)、4.76(br.d,1H)、4.29〜4.08(m,5H)、4.02(br.d,1H)、3.77(q,1H,J=8.7Hz)、3.60〜3.00(br.m,2H)、1.28(t,3H,J=7.2Hz)、1.25(t,3H,J=7.2Hz)。13CNMR(CDCl)δ ppm:169.7(s)、169.1(s)、136.4(s)、129.0(d)、128.4(d)、127.6(d)、77.0(d)、62.5(t)、61.4(t)、61.3(t)、56.8(br.t)、50.4(br.d)、14.0(q)。EIMS(+ve):m/zC1621NO(M)の計算値:307.14197;実測値:307.14184
【0078】
(実施例2)
(±)−トランス−1−N−ベンジル−3−ヒドロキシ−2−ピロリジノン−4−カルボン酸エチルエステル[(±)−5)]
粗製の2−N−ベンジル−イソオキサゾリジン−4,5−シス−ジカルボン酸ジエチルエステル(±)−4(250.3g、0.81mol)の酢酸(2L)溶液に、粉末亜鉛(106g、1.62mol)を一度に加えた。氷水浴を数分間用い、極めて緩やかな放熱を制御した。混合物を15分間撹拌し、次いで、セライトに通して濾過した。溶媒を蒸発させ、残渣をジクロロメタン(1.5L)に取り、脱ガスがもはや観察されなくなるまで重炭酸ナトリウムの飽和溶液300mLで洗浄した。有機層を取り出して乾燥し(MgSO)、溶媒を蒸発させると、淡褐色の油状物として粗生成物(±)−5(193.6g、91%)が得られた。少量を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル:ヘキサン、1:1v/v)により精製した。分析データは以下の通りである。融点65〜66℃(酢酸エチル−ヘキサン)、文献値62〜63.5℃。H NMR(CDCl)δ ppm:7.38〜7.19(m,5H)、4.67(dd,1H,J=8.3,3.4Hz,DO交換でd,J=8.5Hzとなった)、4.62(d,1H,J=3.5Hz,DO交換で消失)、4.53(d,J=14.6Hz,ABシステムのA)、4.42(d,1H,J=14.7Hz,ABシステムのB)、4.19(q,2H,J=7.1Hz)、3.44(t,1H,J=9.6Hz)、3.34(t,1H,J=9.2Hz)、3.14(q,1H,J=8.8Hz)、1.26(t,3H,J=7.1Hz)。13CNMR(CDCl)δ ppm:172.9(s)、171.4(s)、135.1(s)、128.9(d)、128.2(d)、128.0(d)、72.3(d)、61.5(t)、47.0(t)、46.1(d)、45.1(t)、14.1(q)。EIMS:m/zC1417NO(M)の計算値:263.11576。実測値:263.11538。
【0079】
(実施例3)
(3R,4S)−1−N−ベンジル−3−ヒドロキシ−2−ピロリジノン−4−カルボン酸[(±)−6]および(3S,4R)−1−N−ベンジル−3−ヒドロキシ−2−ピロリジノン−4−カルボン酸エチルエステル[(−)−5]
リン酸カリウム緩衝液(0.1M、0.1M NaCl、pH7.5、10L)中の粗製エステル(±)−5(191.8g、0.72mol)の懸濁液を、25℃にて5時間、ノボザイム(登録商標)435(20.0g)上で撹拌した。酵素を濾過により除去し、濾液を塩化ナトリウムで飽和させた。未反応エステル(−)−5は、クロロホルム(3×5L)による抽出により除去した。次いで、水性混合物をHCl(6N)でpH1とし、クロロホルム(9×5L)でさらに抽出した。次いで、水相を半分の容量のEtOAcで抽出した。合わせた抽出物を乾燥し(MgSO)、減圧下で濃縮すると、淡褐色の固体として粗製の表題化合物(+)−6(66.7g、39%)が得られた。小バッチ(3.95mmol)のクロマトグラフにより精製した(±)−5の酵素的加水分解から得られる(+)−6(収率:1.78mmol、44%)および(−)−5(収率:1.85mmol、46%)についての分析データは以下の通りである。
【0080】
(+)−6の分析データ:融点(酢酸エチル)144〜146℃。[α]20+62.3(c=1,EtOH)。エナンチオマーの過剰(ChiralcelOD−H上のメチルエステルのHPLC)94.8%。H NMR(CDCl):δppm:7.37〜7.21(5H,bm)、4.76(4H,bs,2×OH,HO)4.70(1H,d,J=8.2Hz)、4.46(2H,dd,J=4.6,10.3)、3.44(2H,m)、3.19(1H,m)。13CNMR(CDCl):δ ppm:174.7、173.8、135.1、129.3、128.6、128.5、72.6、47.6、46.1、45.5。元素分析:実測値,C 61.36,H 5.56,N 5.92.C1213NO計算値C 61.27,H 5.57,N 5.95。
【0081】
(−)−5の分析データ:[α]20−46.8(c=1.1、EtOH)。エナンチオマー過剰率(ChiracelOD−H上のHPLC)97.7%。
【0082】
(実施例4)
(3R,4R)−1−N−ベンジル−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン[(+)−7]
BFOEt(170mL、1382mmol)を、0℃にて、THF(1L)中の酸(+)−6(62g、264mmol)およびNaBH(40g、1057mmol)の懸濁液に滴加した。混合物を72時間放置した。次いで、反応を、氷冷下、MeOH(500mL)でクエンチし(脱ガス)、溶媒を蒸発させた。次いで、残渣を6NHCl水性液(1L)で10分間処理し、続いて蒸発させた。pH12〜14までNaOH(15%水溶液、250mL)を加えた。得られた溶液を真空下で濃縮して固体とし、次いで、これをクロロホルム(1L)に懸濁した。セライトに通す濾過後、濾液を蒸発乾固させると油状物が得られ、これをトルエンからゆっくりと結晶化させた。真空下でさらに乾燥すると、白色の結晶性固体として化合物(+)−7(54g、261mmol、収率99%)が得られた。[α]20+37.3(c=1、MeOH)、融点54〜56℃。
【0083】
(実施例5)
(3R,4R)−1−N−tert−ブトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン[(+)−8]
前ステップからの粗製(+)−7(60g)をメタノール(800mL)に取り、10%Pd/C(12g、湿ったDegussaタイプ)を加え、混合物を水素の雰囲気中で12時間撹拌すると、粗製の(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン(+)−1が得られた。触媒を濾過により除去し、メタノール溶液にトリエチルアミン(30mL、216mmol)および二炭酸ジ−tert−ブチル(47.5g、218mmol)を加え、混合物を、室温にて1時間撹拌した(わずかな放熱)。次いで、混合物を、シリカゲルに前吸収させ、乾式フラッシュクロマトグラフィー(溶離液:CHCl:EtOAc:MeOH、5:2:1v/v/v)によりクロマトグラフを行うと、淡いオレンジ色のシロップとして(+)−8(25.4g、(+)−6から59%)が得られた。最終生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、1:4)により除去できる可能性のあるトリエチルアンモニウム塩約15%(w/w)を含有していた。完全に精製された(+)−8についてのデータは以下の通りである:[α]20+15.4(c=0.5、MeOH)。H NMR(MeOH−d):δ ppm:4.14(m、1H)、3.58〜3.45(m、4H)、3.24〜3.18(m、2H)、2.24(m、1H)、1.46(s、9H)。13CNMR(MeOH−d):δ ppm(一部のピークは、回転異性体の遅い相互変換のため2本になっている):156.99、81.31、(73.10、72.40)、63.06、(54.45、54.03)、(50.42、49.75)、(48.47、48.03)、29.18。
【0084】
(実施例6)
(3S,4R)−3−ヒドロキシ−4−(メチルチオメチル)−ピロリジン
【化31】



保護アミン(7.75g、35.7mmol)およびジブチルスズオキシド(10.66g、42.8mmol)をトルエン(10mL)に懸濁し、ディーンスターク条件下で加熱還流した。反応物は、約100℃で均一になった。溶液をさらに1.5時間還流下で加熱し、−10℃まで冷却し、次いで、塩化メタンスルホニル(3.34mL、42.8mmol)を加えた。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてモニターした。1時間後、反応が不完全に見えたので、撹拌しながら室温まで温め、一夜放置すると、反応は完了したように見えた。ジクロロメタン中の5%v/vMeOHで溶出されるシリカゲルのカラム上に直接ロードされた溶液のカラムクロマトグラフィーにより、無色の油状物としてメシレート(10.0g、33.9mmol、収率95%)が得られた。
【0085】
【化32】



【0086】
メシレート(10g、33.9mmol)をDMFに溶かし、ナトリウムチオメトキシド(4.75g、67.7mmol)を少しずつ加えた。溶液を一夜撹拌し、トルエンで希釈し、水および食塩水で洗浄し、乾燥して(MgSO)真空中で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液ジクロロメタン中の5%v/vMeOH)により、黄色の油状物としてN−保護3−ヒドロキシ−4−(メチルチオメチル)−ピロリジン(8.2g、33.2mmol、収率98%)が得られた。
【0087】
【化33】



【0088】
N−保護3−ヒドロキシ−4−(メチルチオメチル)−ピロリジン(8.2g、33.2mmol)をメタノール(40mL、33.2mmol)に溶かし、これに塩酸(10mL、326mmol)を加え、得られた溶液を真空中で濃縮した。このステップを繰り返すと、TLC(MeOH−ジクロロメタン中の10%v/v7N NH)は、完全な脱保護を示した。MeOH−ジクロロメタン中の10〜20% 7N NHで溶出されるシリカ上のカラムクロマトグラフィーにより、表題化合物(4.3g、29.2mmol、収率88%)が得られた。
【0089】
(実施例7)
ヒドロラーゼのスクリーニング
ラセミエステル(±)−5(50±5mg、0.2mmol)を、試験管中でMTBE(0.1mL)と一緒に撹拌し、次いで、リン酸塩緩衝液(0.1M、0.1M NaClで、pH7.5、0.1mL)、水(1.0mL)およびフェノールレッド溶液(0.1%水溶液、0.01mL)を加えた。酵素調製物(5〜50mg)を加えて反応を開始させ、指示薬をピンクがかった赤色に維持するため必要に応じてNaOH(0.1M)を注射器から加えた。1.0±0.1mLのNaOH溶液(約50%の加水分解を示す)が消費された場合(または23時間後か、あるいは反応が停止したように見えた場合)、pH1までHCl(1M)を添加することにより反応を停止させ、酵素調製物を濾過または遠心分離により除去した。濾液または上清をNaCl(約750mg)で飽和させ、EtOAc(3×1mL)で抽出した。乾燥した(MgSO)抽出液を減圧下で濃縮し、乾燥メタノール(2mL)に取った。この溶液を、氷水浴中、アルゴン下で冷却し、試薬の黄色が残存するまでトリメチルシリルジアゾメタン(2.0Mヘキサン溶液)を加えた。溶液を室温にて5分間撹拌し、次いで、減圧下で濃縮した。得られたエチルエステルとメチルエステルの混合物を、ヘキサン−イソプロパノールで溶出されるChiralcelOD−Hカラムを用いるHPLCにより分析した。
【0090】
(実施例8)
ブタ肝臓エステラーゼ(PLE)による加水分解
方法(a)。−エステル(±)−5(0.5g、1.98mmol)のトルエン(0.2mL)溶液を、リン酸塩緩衝液(1.0M、pH7.5、2.0mL)およびPLE(5mg)と一緒に54時間撹拌した。反応混合物をアセトンで希釈し、Whatman50濾紙上でセライトのパッドに通して濾過した。濾液を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を乾燥して(MgSO)減圧下で濃縮すると、(+)−5(0.25g、50%、84%e.e.)が得られた。
【0091】
方法(b)。−ラセミエステル(±)−5(50mg、0.2mmol)のトルエン(0.1mL)溶液を、リン酸塩緩衝液(0.1M、0.1MNaClで、pH7.5、0.1mL)、水(1.0mL)、フェノールレッド溶液(0.1%水溶液、0.01mL)およびPLE(4.6mg)と一緒に撹拌した。指示薬をピンクがかった赤色に維持するため必要に応じてNaOH(0.1M)を注射器から加えた。1.4mLのNaOH溶液が消費された場合(約70%の変換を示す)、反応混合物をアセトンで希釈し、Whatman50濾紙上でセライトのパッドに通して濾過した。濾液を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた抽出液を乾燥して(MgSO)減圧下で濃縮すると、(+)−5(10mg、93%e.e.)が得られた。
【0092】
(実施例9)
共溶媒としてアセトンを用いるノボザイム435による加水分解
粗製エステル(±)−5(319g、1.21mol)をアセトン(320mL)に溶かし、この溶液に、KHPO緩衝液(3.2L、0.5M、pHメーターを用い、0.5MKHPOでpHを7.5に調整する)を加えた。ノボザイム(登録商標)435(30.0g)を加え、得られた懸濁液を27℃にて6時間撹拌した。次いで、酵素をセライトに通す濾過により除去し、残渣をKHPO緩衝液(300mL)で洗浄した。濾液をNaCl(約750g)で飽和させ、未反応エステル(−)−5をクロロホルム(3×400mL)による抽出により除去した。次いで、水性混合物をcHCl(150mL;12N)でpH1とし、NaCl(100g)で再飽和させ、酢酸エチル(6×400mL)でさらに抽出した。合わせた抽出液を乾燥し(MgSO)、減圧下で濃縮すると、灰色がかった白色の固体として粗製の表題化合物(+)−6が得られ、それを酢酸エチルから結晶化すると、白色の固体として(+)−6(106g、72%)が得られた。融点144〜146℃。[α]20+62.3(c=1.0、EtOH)。
【0093】
(実施例10)
エステル5の還元による1−N−ベンジル−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン
エステル5(3.1g、12.4mmol)のTHF(100mL)溶液を氷水浴中で冷却し、次いで、注射器を介してボラン−ジメチルスルフィド錯体(6.0mL、58mmol)を加えた。溶液を室温まで温め、次いで、2時間還流下で加熱した。反応物を冷却し、メタノールを少しずつ加えることによりクエンチし、シリカゲル(約15mL)で減圧下で濃縮した。シリカを、酢酸エチルで溶出される短いシリカゲルカラムの上部に入れた。生成物を含有する溶離液分画を減圧下で濃縮し、残渣を、TFA−水(1:1、30mL)中で一夜撹拌した。溶媒の蒸発およびイオン交換カラムクロマトグラフィー(AmberliteIRA−900、Cl型、メタノール−水、1:1v/vで溶出)通過により、油状物が得られ、それを、シリカゲルカラムクロマトグラフにさらにかけると(溶出液としてジクロロメタン−メタノール6:1〜4:1)、表題化合物(1.50g、7.2mmol、58%)が得られた。
【0094】
本発明を一例として説明してきたが、当然のことながら、本発明の範囲を逸脱することなく変更または改変を行うことができる。さらに、具体的特徴に対して既知の等価体が存在する場合、そのような等価体は、あたかも本明細書において具体的に言及されるかのように組み込まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンおよびそのエナンチオマー(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジンを調製するための改良法を提供し、そのどちらも、プリンヌクレオシドホスホリラーゼの阻害剤の調製において価値ある中間化合物である。そのような阻害剤は、様々な疾患、特に癌を治療する可能性のある治療薬である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(I)の化合物、または(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(Ia)の化合物を調製するための方法であって、
【化1】



以下のステップ、すなわち
ステップ(a):ラセミの式(II)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物の酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解であって、
【化2】



[ここで、Rは、ベンジルまたはベンズヒドリルであり、それらの各々は、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシにより置換されていてもよく、Rは、アリールまたは直鎖もしくは分岐鎖のアルキルもしくはアラルキルであり、それらのいずれも、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシにより置換されていてもよい]
混合物(i):式(III)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物および式(IV)の未反応ピロリジン化合物か、
【化3】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
混合物(ii):式(IIIa)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物および式(IVa)の未反応ピロリジン化合物のどちらかを得るための加水分解、
【化4】



[ここで、RおよびRは、上記で定義した通りである]
(ここで、酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解は、化合物(III)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素か、化合物(IIIa)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素のどちらかを用いて行われる)
ステップ(b):混合物(i)における式(IV)の化合物からの式(III)の化合物の分離、または混合物(ii)における式(IVa)の化合物からの式(IIIa)の化合物の分離、および
ステップ(c):式(III)の化合物もしくは式(IVa)の化合物の式(I)の化合物への変換、または式(IV)の化合物もしくは式(IIIa)の化合物の式(Ia)の化合物への変換
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)は、化合物(III)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素を用いて混合物(i)を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物(III)のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約80%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物(III)のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約90%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)は、化合物(IIIa)のエナンチオマー過剰率を引き起こすことができる酵素を用いて混合物(ii)を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物(IIIa)のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約80%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
化合物(IIIa)のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約90%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)において使用される酵素は、リパーゼまたはエステラーゼである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酵素はリパーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リパーゼは、カンジダアンタークチカ(Candida antarctica)由来のリパーゼである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酵素はエステラーゼである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
エステラーゼは、ブタ肝臓エステラーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)は、式(III)の化合物から式(I)の化合物へ変換するステップである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)は、式(IIIa)の化合物から式(Ia)の化合物へ変換するステップである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
変換は、式(V)または式(Va)の3,4−トランス−二置換ピロリジン化合物を生じさせるために、式(III)または式(IIIa)の化合物を還元するステップを含む方法により行われる、請求項13または14に記載の方法。
【化5】



[ここで、Rは、請求項1で定義した通りである]
【請求項16】
還元は、水素化リチウムアルミニウムまたはボランを用いて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
はベンジルであり、かつ、式(V)または式(Va)の化合物は、そのエナンチオマー過剰率を改善するために再結晶される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
式(I)または式(Ia)の化合物を得るため、式(V)または式(Va)の化合物のR基の水素による置換のステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
基の水素による置換は、水素化分解により行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)における式(III)の化合物を式(IV)の化合物から分離することは、第1の水不混和性溶媒を用い、式(IV)の化合物および式(III)の化合物のカルボン酸塩体を含有する水溶液から式(IV)の化合物を抽出し、次いで、得られる混合物のpHを低下させて式(III)の化合物のカルボン酸塩体を式(III)の化合物のカルボン酸体に変換し、次いで、得られる混合物を第2の水不混和性溶媒で再度抽出することにより行われる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
水不混和性溶媒は、ジクロロメタンまたはクロロホルムである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の水不混和性溶媒は、酢酸エチルである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
式(I)または式(Ia)の化合物は、式(VI)または式(VIa)の3,4−トランス−二置換ピロリジン化合物に変換される、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【化6】



[ここで、Rは、N保護基である]
【請求項24】
は、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
は、tert−ブトキシカルボニル、メトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
式(VI)または(VIa)の化合物は、そのエナンチオマー過剰率を改善するために再結晶される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
式(I)の化合物は、場合により塩基の存在下で、アルコキシカルボニル化剤、アリールオキシカルボニル化剤またはアラルコキシカルボニル化剤による処理によって、式(VI)の化合物に変換される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
塩基は、トリエチルアミンまたは水酸化ナトリウムである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
式(II)の化合物は、式(VII)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物のN−O結合の還元的切断、および式(II)の化合物を得るためのin situ環化のステップを含む方法により調製される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【化7】



[ここで、RおよびRは、請求項1で定義した通りである]
【請求項30】
式(VII)の化合物は、式(VIII)のニトロンと式(IX)のアルケンとの1,3−環化付加により調製される、請求項29に記載の方法。
【化8】



[ここで、RおよびRは、請求項1で定義した通りである]
【請求項31】
1,3−環化付加は、式(VIII)のニトロンを生成させ、次いで、それを、式(IX)のアルケンとin situで反応させることにより行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
は、ベンジルである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
式(VIII)のニトロンは、N−ベンジルヒドロキシルアミンとHCHOの反応により生成される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
は、アルキルである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
は、メチルまたはエチルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
還元的切断およびin situ環化は、水素化分解によるか、あるいは酸の存在下でZnを用いることにより行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
式(I)または(Ia)の化合物を式(X)または(Xa)の化合物に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【化9】



[ここで、Rは、H、OHおよびSHから選択されるか、またはそれらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキルオキシ、アラルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アラルキルチオ、およびアリールチオから選択される]
【請求項38】
式(I)または(Ia)の化合物を式(X)または(Xa)の化合物に変換し、次いで、式(X)または(Xa)の化合物を式(XI)の化合物と反応させて式(XII)または(XIIa)の化合物を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【化10】



【化11】



【化12】



[ここで、Rは、請求項37で定義した通りであり、
Aは、N、CHおよびCRから選択され、ここで、Rは、ハロゲン、OHおよびNHから選択されるか、あるいは、Rは、アルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、それらの各々は、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいか、あるいは、Rは、NHR、NRおよびSRから選択され、ここで、R、RおよびRは、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Bは、OH、NH、NHR10、SH、水素およびハロゲンから選択され、ここで、R10は、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Dは、OH、NH、NHR11、水素、ハロゲンおよびSCHから選択され、ここで、R11は、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Eは、NおよびCHから選択される]
【請求項39】
反応は、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価体を用いて行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
式(XI)の化合物は、式(XIII)の化合物に変換され、次いで、式(X)または(Xa)の化合物を式(XIII)の化合物と反応させて式(XII)または(XIIa)の化合物を得る、請求項38に記載の方法。
【化13】



[ここで、A、B、DおよびEは、それらの各々を請求項36で定義した通りであり、5員環内のNHは、適当な保護基で保護されていてもよい]
【請求項41】
請求項31に記載の方法により式(II)の化合物を調製するステップをさらに含み、式(I)または(Ia)の化合物を式(X)または(Xa)に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【化14】



[ここで、Rは、H、OHおよびSHから選択されるか、またはそれらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキルオキシ、アラルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アラルキルチオ、およびアリールチオから選択される]
【請求項42】
式(X)または(Xa)の化合物を式(XI)の化合物と反応させて式(XII)または(XIIa)の化合物を得るステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【化15】



【化16】



【化17】



[ここで、Rは、請求項37で定義した通りであり、
Aは、N、CHおよびCRから選択され、ここで、Rは、ハロゲン、OHおよびNHから選択されるか、あるいは、Rは、アルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、それらの各々は、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいか、あるいは、Rは、NHR、NRおよびSRから選択され、ここで、R、RおよびRは、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Bは、OH、NH、NHR10、SH、水素およびハロゲンから選択され、ここで、R10は、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Dは、OH、NH、NHR11、水素、ハロゲンおよびSCHから選択され、ここで、R11は、それらの各々が、ハロゲン、分岐鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシ、アラルキルオキシまたはアリールオキシにより置換されていてもよいアルキル、アラルキルおよびアリールから選択され、
Eは、NおよびCHから選択される]
【請求項43】
(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(I)の化合物、または(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン、式(Ia)の化合物を調製するための方法であって、
【化18】



(i)式(4)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物を得るための式(2)のニトロンと式(3)のアルケンの1,3−環化付加のステップ、
【化19】



(ii)式(4)の4,5−シス−二置換イソオキサゾリジン化合物のN−O結合の還元的切断、および式(5)の3,4−トランス−二置換ピロリジノン化合物を得るためのin situ環化のステップ、
【化20】



(iii)式(6)の化合物と式(5)の未反応化合物の混合物、または式(6a)の化合物と式(5a)の未反応化合物の混合物を得るための式(5)の化合物の酵素触媒によるエナンチオ選択的加水分解のステップ、
【化21】



(iv)式(6)の化合物の式(5)の化合物からの分離、または式(6a)の化合物の式(5a)の化合物からの分離のステップ、
(v)式(7)の化合物を得るための式(6)もしくは(5a)の化合物の還元、および式(7a)の化合物を得るための式(6a)もしくは(5)の化合物の還元のステップ、
【化22】



(vi)式(I)の化合物を得るための式(7)の化合物における水素によるCHPh基の置換、または式(Ia)の化合物を得るための式(7a)の化合物における水素によるCHPh基の置換のステップ
を含む方法。
【請求項44】
(vii)式(I)の化合物の式(8)の化合物への変換、または式(Ia)の化合物の式(8a)の化合物への変換であって、
【化23】



二炭酸ジ−tert−ブチルまたは二炭酸ジ−tert−ブチルによる式(I)の化合物、または式(Ia)の化合物の処理による変換のステップをさらに含む請求項43に記載の方法。
【請求項45】
式(I)の化合物、または式(Ia)の化合物は、単離されず、ステップ(vii)において、式(I)の化合物の式(8)の化合物への変換、または式(Ia)の化合物の式(8a)の化合物への変換は、in situで行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1に記載の方法により調製される(3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン。
【請求項47】
請求項1に記載の方法により調製される(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルピロリジン。
【請求項48】
請求項38に記載の方法により調製される請求項38に定義されている式(XII)の化合物。
【請求項49】
請求項38に記載の方法により調製される請求項38に定義されている式(XIIa)の化合物。
【請求項50】
式(III)の化合物。
【化24】



[ここで、Rは、請求項1で定義した通りである]
【請求項51】
式(IV)の化合物。
【化25】



[ここで、RおよびRは、請求項1で定義した通りである]

【公開番号】特開2012−211136(P2012−211136A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108801(P2012−108801)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2007−514966(P2007−514966)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(500084016)インダストリアル リサーチ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】