説明

3−フラアルデヒド誘導体の製造法

【課題】入手しやすい原料から3−フラアルデヒド誘導体を工業的に効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】アルデヒドと、下記式(3)


(式中、R2は水素原子又は有機基を示し、R3、R4は、同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とを反応させて、下記式(4)


(式中、R1、R2は前記に同じ)で表される3−フラアルデヒド誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3−フラアルデヒド誘導体(3-furaldehyde derivatives)の製造法、より詳しくは、アルデヒド又はその等価体とカルボニル化合物又はその等価体とを反応させて3−フラアルデヒド誘導体を製造する方法に関する。3−フラアルデヒド誘導体は、染料、医薬品、生理活性物質、ポリマー原料等の精密化学品や高機能品材料の合成中間体、その他の有機化学品の中間原料などとして有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、フラン化合物の製造法として、1,4−ジカルボニル化合物を出発原料として、酸触媒の存在下で環化脱水させる方法が知られている(非特許文献1参照)。しかし、この方法は、原料の入手が困難であり、汎用性のある技術ではなく、フラン化合物の工業的に効率のよい製法とは言い難い。また、特に、3−フラアルデヒド誘導体を入手しやすい原料から工業的に効率よく製造する方法はほとんど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chem, Lett., 1983, 1007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、入手しやすい原料から3−フラアルデヒド誘導体を工業的に効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、アルデヒド又はその等価体とカルボニル化合物又はその等価体とを反応させると、カップリングによる環化反応が円滑に進行して、対応する3−フラアルデヒド誘導体が良好な収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は有機基を示す)
で表されるアルデヒド又はその等価体と、下記式(2)
【化2】

(式中、R2は水素原子又は有機基を示す)
で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は下記式(3)
【化3】

(式中、R2は水素原子又は有機基を示し、R3、R4は、同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3、R4は、互いに結合して、隣接する2つの酸素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい)
で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とを反応させて、下記式(4)
【化4】

(式中、R1、R2は前記に同じ)
で表される3−フラアルデヒド誘導体を得ることを特徴とする3−フラアルデヒド誘導体の製造法を提供する。
【0007】
この製造法において、式(1)で表されるアルデヒド又はその等価体として式(2)で表されるアルデヒド又はその等価体を用いて、下記式(4a)
【化5】

(式中、R2は水素原子又は有機基を示す)
で表される3−フラアルデヒド誘導体を得てもよい。
【0008】
反応をパラジウム化合物触媒(A)の存在下で行ってもよい。また、パラジウム化合物触媒(A)に加えて、さらにヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)、又は全体として、P又はSiの元素と、V、Mo及びWから選択された少なくとも1つの元素とを含むオキソ酸若しくはその塩の混合物(B2)からなる助触媒(B)の存在下で反応を行うこともできる。前記ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)としては、構成元素として、P又はSiの元素と、V、Mo及びWから選択された少なくとも1つの元素とを含むものを好ましく使用できる。また、前記ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)として、下記式
3+n[PMo12-nn40
(式中、Aは水素原子、NH4、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種を示し、nは0〜10の整数である)
で表されるリンバナドモリブデン酸若しくはリンモリブデン酸又はそれらの塩を使用することができる。
【0009】
上記製造法において、パラジウム化合物触媒(A)に加えて、さらにルイス酸(C)の存在下で反応を行うのも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、入手しやすい原料から、温和な条件下で3−フラアルデヒド誘導体を工業的に効率よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[反応成分]
本発明では、前記式(1)で表されるアルデヒド又はその等価体と、前記式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は前記式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とを反応させる。式(1)で表されるアルデヒド又はその等価体の反応の相手として、式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体を用いる場合と、式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体を用いる場合とで同じ生成物が得られるのは、式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体が、反応の過程で、式(3)で表されるカルボニル化合物と等価な反応中間体を経ることによるものと考えられる。式(1)で表されるアルデヒド又はその等価体と式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とは、カップリングによる環化によりフラン環を形成する。
【0012】
式(1)中、R1は水素原子又は有機基を示す。式(2)中、R2は水素原子又は有機基を示す。式(3)中、R2は前記と同じく水素原子又は有機基を示し、R3、R4は、同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3、R4は、互いに結合して、隣接する2つの酸素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい。
【0013】
1、R2における有機基としては、反応を損なわないような基であればよく、例えば、炭化水素基、複素環式基、置換オキシ基、N−置換アミノ基、アシル基及びこのカルボニル基保護体、置換オキシカルボニル基、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、置換又は無置換イミノアルキル基、硫黄酸エステル基、及びこれらが複数個結合した基などが挙げられる。カルボキシル基などは慣用の保護基で保護されていてもよい。有機基の炭素数は特に限定されないが、例えば1〜20、好ましくは1〜10程度である。
【0014】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ビニル、アリル、1−プロペニル、エチニル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基)などが挙げられる。
【0015】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、アダマンチル、ノルボルニル基などの炭素数3〜20(好ましくは炭素数3〜15)程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、橋かけ環式炭化水素基等)などが挙げられる。
【0016】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0017】
これらの炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、オキソ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、シアノ基、複素環式基などを有していてもよい。前記保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0018】
前記有機基のうち複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。これらの複素環式基は、置換基[例えば、前記炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)]を有していてもよい。
【0019】
前記有機基のうち置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基などのアルコキシ基(炭素数1〜10程度のアルコキシ基等);フェノキシ、ナフチルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;シクロヘキシルオキシ基などのシクロアルキルオキシ基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基(炭素数1〜10程度のアシルオキシ基等)などが挙げられる。N−置換アミノ基には、例えば、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、ピペリジノ基などが含まれる。
【0020】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、(メタ)アクリロイル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル、ベンゾイル、ナフトイル、ピリジルカルボニル基などの脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式アシル基(炭素数1〜10程度のアシル基等)が挙げられる。アシル基のカルボニル保護体としては、ジメチルアセタール、ジエチルアセタール、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のアセタール体;S,S′−ジメチルジチオアセタールなどのジチオアセタール体などが挙げられる。
【0021】
置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基などのアルケニルオキシカルボニル基;シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル;フェノキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの複素環−オキシカルボニル基;アシルオキシカルボニル基(酸無水物基)などが挙げられる。
【0022】
置換又は無置換カルバモイル基としては、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、1−ピロリジニルカルボニル、ピペリジノカルボニル基などが挙げられる。硫黄酸エステル基には、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル基などのスルホン酸エステル基、スルフィン酸メチル、スルフィン酸エチル基などのスルフィン酸エステル基などが含まれる。
【0023】
好ましいR1、R2には、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基[例えば、C1-20脂肪族炭化水素基(特にC1-10脂肪族炭化水素基など)、C6-20芳香族炭化水素基(フェニル基、ナフチル基など)、C3-20脂環式炭化水素基(3〜8員程度のシクロアルキル基、橋かけ環式炭化水素基など)、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基などのC1-6ハロアルキル基、特にC1-4ハロアルキル基)など]、複素環式基、置換オキシ基(C1-10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、C1-10アシルオキシ基など)、アシル基、アシル基のカルボニル保護体、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-6アルコキシ−カルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、硫黄酸エステル基などが含まれる。
【0024】
3、R4における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ビニル、アリル、1−プロペニル、エチニル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基などの炭素数3〜20(好ましくは炭素数3〜15)程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、橋かけ環式炭化水素基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。これらの炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、オキソ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、ニトロ基、アシル基、シアノ基、複素環式基などを有していてもよい。前記保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0025】
3、R4が互いに結合して隣接する2つの酸素原子及び炭素原子とともに形成する環としては、例えば、1,3−ジオキソラン環、1,3−ジオキサン環などが挙げられる。
【0026】
式(1)で表されるアルデヒドの代表的な例として、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、アミルアルデヒド(バレルアルデヒド)、イソアミルアルデヒド、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ドデカナール、フェニルアセトアルデヒドなどが挙げられる。式(1)で表されるアルデヒドの等価体としては、式(1)で表されるアルデヒドと同じ反応生成物を与える化合物、例えば、パラアルデヒド(アセトアルデヒドの三量体)などの多量体、ホルミル基が保護基(アセタール又はヘミアセタールを形成する保護基等)で保護された誘導体(アセタール、ヘミアセタール等)などが挙げられる。
【0027】
式(2)で表されるアルデヒドの代表的な例として、例えば、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド(バレルアルデヒド)、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ドデカナールなどが挙げられる。式(2)で表されるアルデヒドの等価体としては、式(2)で表されるアルデヒドと同じ反応生成物を与える化合物、例えば、ホルミル基が保護基(アセタール又はヘミアセタールを形成する保護基等)で保護された誘導体(アセタール、ヘミアセタール等)などが挙げられる。
【0028】
式(3)で表されるカルボニル化合物の代表的な例として、例えば、3,3−ジメトキシプロピオンアルデヒド;4,4−ジメトキシ−2−ブタノン、4,4−ジエトキシ−2−ブタノン等の3−オキソブチルアルデヒドのホルミル基がアセタール保護された化合物;5,5−ジメトキシ−3−ペンタノン、5,5−ジエトキシ−3−ペンタノン等の3−オキソアミルアルデヒドのホルミル基がアセタール保護された化合物;6,6−ジメトキシ−4−ヘキサノン、6,6−ジエトキシ−4−ヘキサノン等の3−オキソヘキサノールのホルミル基がアセタール保護された化合物;1−オキソ−1−フェニル−3,3−ジメトキシプロパン、1−オキソ−1−フェニル−3,3−ジエトキシプロパン等の3−オキソ−3−フェニルプロピオンアルデヒドのホルミル基がアセタール保護された化合物などが挙げられる。式(3)で表されるカルボニル化合物の等価体としては、式(3)で表されるカルボニル化合物と同じ反応生成物を与える化合物、例えば、カルボニル基が保護基(アセタールを形成する保護基等)で保護された誘導体などが挙げられる。
【0029】
[触媒]
本発明の方法は必ずしも触媒を必要としないが、反応を促進させるため触媒を用いるのが好ましい。触媒としては、例えば酸化反応で用いられる触媒(白金族金属化合物触媒等)を用いることができるが、なかでもパラジウム化合物触媒(A)が好ましい。
【0030】
パラジウム化合物触媒(A)としては、例えば、金属パラジウム(単体)、0価のパラジウム錯体などの0価のパラジウム化合物;酢酸パラジウム(II)、シアン化パラジウム(II)などの2価のパラジウムの有機酸塩、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)などの2価のパラジウムの有機錯体、フッ化パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)などの2価のパラジウムのハロゲン化物、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)などの2価のパラジウムの酸素酸塩、酸化パラジウム(II)、硫化パラジウム(II)、セレン化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物などの2価のパラジウムの無機錯体などの2価のパラジウム化合物などが例示できる。
【0031】
これらのパラジウム化合物のなかでも、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナートなどの2価のパラジウムの有機酸塩又は有機錯体、塩化パラジウム(II)などの2価のパラジウムのハロゲン化物、硫酸パラジウム(II)などの2価のパラジウムの酸素酸塩などの2価のパラジウム化合物が好ましい。
【0032】
パラジウム化合物は活性炭、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの担体に担持した形態で用いてもよい。また、パラジウム化合物としては、パラジウムをハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト等の天然鉱物の構成元素として組み込んだ形態で使用することもできる。パラジウム化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
パラジウム化合物の使用量は、原料成分のうち少量用いる方の化合物1モルに対して、例えば、0.00001〜0.6モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.05〜0.3モル程度である。
【0034】
[助触媒]
本発明においては、触媒とともに助触媒を用いることができる。例えば、触媒としてパラジウム化合物触媒(A)を用いる場合には、該パラジウム化合物触媒(A)とともに、ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)、又は全体として、P又はSiの元素と、V、Mo及びWから選択された少なくとも1つの元素とを含むオキソ酸若しくはその塩の混合物(B2)からなる助触媒(B)を用いてもよい。助触媒(B)を用いることにより、反応速度及び目的化合物の収率が増大する。
【0035】
ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)において、ヘテロポリ酸とは、種類の異なる2種以上の中心イオンを含む酸素酸の縮合物であり、異核縮合酸ともいう。ヘテロポリ酸は、例えば、P、As、Sn、Si、Ti、Zrなどの元素の酸素酸イオン(例えば、リン酸、ケイ酸など)と、V、Mo、Wなどの元素の酸素酸イオン(例えば、バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸など)とで構成されており、その組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。
【0036】
ヘテロポリ酸を構成する酸素酸のヘテロ原子は特に限定されず、例えば、Cu、Be、B、Al、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Ce、Th、N、P、As、Sb、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、U、Se、Te、Mn、I、Fe、Co、Ni、Rh、Os、Ir、Ptなどが例示できる。好ましいヘテロポリ酸は、P、Si、V、Mo、Wの少なくとも一種の元素を含有しており、さらに好ましくはP又はSiと、V、Mo及びW(特に、V及びMo)の少なくとも1つの元素とを含有している。
【0037】
ヘテロポリ酸又はその塩を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できるが、好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は、XM1240で表すことができる。この組成式において、Xは、Si、Pなどの元素であり、Mは、Mo、W、Vなどの元素である。このような組成を有するヘテロポリ酸アニオンとして、例えば、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸のアニオンなどが例示できる。
【0038】
ヘテロポリ酸は遊離のヘテロポリ酸であってもよく、ヘテロポリ酸のカチオンに相当する水素原子の少なくとも一部を他のカチオンで置換して、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。前記水素原子と置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム(NH4など)、アルカリ金属(Cs、Rb、K、Na、Liなど)、アルカリ土類金属(Ba、Sr、Ca、Mgなど)などが例示できる。
【0039】
前記ヘテロポリ酸又はその塩のなかでも、下記式で表されるリンバナドモリブデン酸若しくはリンモリブデン酸又はそれらの塩が好適に用いられる。
3+n[PMo12-nn40
[式中、Aはヘテロポリ酸カチオンを表し、nは0〜10(好ましくは1〜10)の整数である]
【0040】
Aで表されるカチオンとしては、水素原子のほか、前記のカチオンが例示できる。なかでも、完全プロトン型のリンバナドモリブデン酸又はリンモリブデン酸、及び、一部又はすべてのプロトンがNH4で置換されたリンバナドモリブデン酸アンモニウム又はリンモリブデン酸アンモニウムが特に好ましい。この場合、通常、nは0〜4(好ましくは1〜4)である。完全プロトン型のリンバナドモリブデン酸として、H4PMo11VO40、H5PMo10240、H6PMo9340、H7PMo8440などが挙げられる。
【0041】
ヘテロポリ酸又はその塩は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよい。また、ヘテロポリ酸又はその塩は活性炭等の担体に担持した形態で用いてもよい。この場合、ヘテロポリ酸又はその塩とパラジウム化合物とを同一の担体上に分散担持させてもよい。ヘテロポリ酸及びその塩は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
オキソ酸若しくはその塩の混合物(B2)としては、全体として、P又はSiの元素と、V、Mo及びWから選択された少なくとも1つの元素とを含むオキソ酸又はその塩の混合物であれば特に限定されない。なお、本明細書では、「オキソ酸」をヘテロポリ酸を含む意味に用い、ヘテロポリ酸を含まない意味に用いる場合は「狭義のオキソ酸」という。
【0043】
P、Si、V、Mo又はWを含むヘテロポリ酸としては、例えば、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンバナジン酸、リンバナドモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイバナジン酸などが挙げられる。P、Si、V、Mo又はWを含む狭義のオキソ酸としては、例えば、リン酸、ケイ酸、バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸などが挙げられる。ヘテロポリ酸の塩、狭義のオキソ酸の塩としては、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0044】
オキソ酸若しくはその塩の混合物(B2)の態様として、(i)2種以上のヘテロポリ酸又はその塩の混合物(例えば、リンモリブデン酸又はその塩とリンバナナジン酸又はその塩との混合物など)、(ii)ヘテロポリ酸又はその塩と狭義のオキソ酸又はその塩との混合物(例えば、リンモリブデン酸又はその塩とバナジン酸又はその塩との混合物、リンバナジン酸又はその塩とモリブデン酸又はその塩との混合物など)、及び(iii)2種以上の狭義のオキソ酸又はその塩の混合物(例えば、リン酸又はその塩とモリブデン酸又はその塩とバナジン酸又はその塩との混合物)などが挙げられる。オキソ酸又はその塩は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよい。
【0045】
なお、ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)の場合には、組成の異なるヘテロポリ酸又はその塩を2種以上混合することにより、各元素の比率を上記の範囲に調整することができる。例えば、前記式A3+n[PMo12-nn40]で表されるリンバナドモリブデン酸又はその塩(n=1〜10)の組成の異なるものを2種以上混合したり、式A3+n[PMo12-nn40]で表されるリンバナドモリブデン酸又はその塩(n=1〜10)と、式A3PMo1240で表されるリンモリブデン酸又はその塩とを混合することにより、各元素の比率が上記の範囲に入る触媒を調製することができる。
【0046】
助触媒(B)の使用量は、特に限定されないが、原料成分のうち少量用いる方の化合物1モルに対して、例えば、0.00001〜0.5モル、好ましくは0.0001〜0.1モル、さらに好ましくは0.001〜0.05モル程度である。
【0047】
前記パラジウム化合物触媒(A)を用いる場合、該パラジウム化合物触媒(A)とともに、又は該パラジウム化合物触媒(A)及び助触媒(B)とともに、ルイス酸(C)を用いてもよい。ルイス酸(C)を用いることにより、反応速度及び目的化合物の収率が増大する。
【0048】
ルイス酸(C)としては、特に限定されず、例えば、周期表3族、4族、12族、13族、14族または15族元素を含む化合物が挙げられる。ルイス酸は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。周期表3族元素には、スカンジウム;イットリウム;ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、イッテルビウムなどのランタノイド;アクチウム、トリウムなどのアクチノイドが含まれる。周期表4族元素には、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどが含まれる。周期表12族元素には、亜鉛、カドミウムが含まれる。周期表13族元素には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが含まれる。周期表14族元素には、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛などが含まれる。周期表15族元素には、アンチモン、ビスマスなどが含まれる。これらの元素を含む化合物としては、例えば、該元素のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、トリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸塩)などが挙げられる。
【0049】
ルイス酸の代表的な例として、塩化セリウム(CeCl3)、塩化ガドリニウム(GdCl3)、イッテルビウムトリフラート[Yb(OTf)3]、サマリウムトリフラート[Sm(OTf)3]、ガドリニウムトリフラート[Gd(OTf)3]などの周期表3族元素のハロゲン化物又はトリフラート;塩化ジルコニウム(ZrCl2)などの周期表4族元素のハロゲン化物又はトリフラート;塩化鉄(FeCl3)などの周期表8族元素のハロゲン化物又はトリフラート;塩化亜鉛(ZnCl2)などの周期表12族元素のハロゲン化物又はトリフラート;塩化インジウム(InCl3)、臭化インジウム(InBr3)などの周期表13族元素のハロゲン化物又はトリフラート;塩化スズ(SnCl2)などの周期表14族元素のハロゲン化物又はトリフラート;塩化ビスマスなどの周期表15族元素のハロゲン化物又はトリフラートなどが例示される。これらのなかでも、周期表3族元素(特に、セリウム)のハロゲン化物又はトリフラートが特に好ましい。また、安価で入手しやすい点から、塩化鉄が好ましい。
【0050】
前記ルイス酸の使用量は、原料成分のうち少量用いる方の化合物1モルに対して、例えば、0.00001〜0.6モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.05〜0.3モル程度である。
【0051】
本発明の方法においては、上記の触媒等のほか、反応速度を速くしたり反応の選択性を向上させるため、パラジウムに対して配位性を有する化合物(配位性化合物)を反応系に添加してもよい。
【0052】
[反応]
反応は溶媒の存在下又は非存在下、好ましくは溶媒の存在下で行われる。溶媒は原料との種類等により適宜選択できる。溶媒として、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などのカルボン酸等の有機酸;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。これらの溶媒のなかでも、酸素原子を含有するプロトン性の溶媒(例えば、−OHの構造を有する溶媒)、より具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸などの有機酸;これらの混合液などが好ましい。
【0053】
式(1)で表されるアルデヒド若しくはその等価体と、式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体との比率は、両方の化合物の種類や組み合わせなどに応じて適宜選択できるが、反応性などの点から、通常、前者[式(1)で表されるアルデヒド若しくはその等価体]/後者[式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体](モル比)=0.8〜50程度、好ましくは1.5〜30程度、さらに好ましくは2〜20程度である。
【0054】
[酸素]
本発明の方法では、必ずしも酸素を必要としないが、酸素を用いるのが好ましい。酸素としては分子状酸素が好ましく用いられる。分子状酸素としては、特に限定されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスで希釈した酸素や空気を使用してもよい。酸素は、触媒(パラジウム化合物など)の再酸化剤として機能しうる。
【0055】
酸素の使用量(O2として)は、原料成分のうち少量用いる方の化合物1モルに対して、通常0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは1〜50モル程度である。酸素は大過剰量用いてもよい。
【0056】
本発明の方法では、比較的温和な条件であっても円滑に反応が進行する。反応温度は、原料化合物の種類等に応じて適宜選択できるが、通常、0〜200℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは20〜120℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。反応は、好ましくは酸素の存在下又は流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。反応成分、触媒等の添加順序は特に限定されないが、例えば、触媒を含む混合液(必要に応じて助触媒、ルイス酸を含む)中に、式(1)で表されるアルデヒド若しくはその等価体と、式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とを含む混合液を滴下する方法、触媒と式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とを含む混合液(必要に応じて助触媒、ルイス酸を含む)中に、式(1)で表されるアルデヒド若しくはその等価体を含む溶液を滴下する方法などが好ましく用いられる。
【0057】
この方法によれば、式(1)で表されるアルデヒド若しくはその等価体と、式(2)で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は式(3)で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体との間で、カップリング反応(その前に脱水素反応やアセタール化反応が起こる場合もある)が進行し、前記式(4)で表される3−フラアルデヒド誘導体が生成する。式(4)において、R1、R2は前記に同じである。
【0058】
この製造法において、式(1)で表されるアルデヒド又はその等価体として式(2)で表されるアルデヒド又はその等価体を用いることにより[式(2)で表される化合物は式(1)で表される化合物に含まれる]、式(2)で表されるアルデヒド又はその等価体の2量体に相当する前記式(4a)で表される3−フラアルデヒド誘導体を製造することができる。式(4a)中、R2は前記に同じである。例えば、式(2)で表される化合物のみを反応原料として用いることにより、該化合物が二量化された式(4a)で表される化合物が得られる。
【0059】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせることにより分離精製できる。
【0060】
本発明の方法により得られる3−フラアルデヒド誘導体は、染料、医薬品、ポリマー原料等の精密化学品や高機能材料の合成中間体、その他の有機化学品の中間原料などとして使用できる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0062】
実施例1
反応器に、酢酸パラジウム(II)[Pd(OAc)2](0.2mmol)、H4PMo11140(14μmol)、塩化セリウム7水塩(CeCl3・7H2O)(0.2mmol)、メタノール(1.0ml)、酢酸(2.0ml)及びバレルアルデヒド(2mmol)を仕込み、酸素1気圧(0.1MPa)の雰囲気下、80℃で15時間反応させた。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−エチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが36%の収率で生成していた。ほかに、3−プロピオニル−5−プロピルフランが8%の収率で生成していた。バレルアルデヒドの転化率は97%であった。
【0063】
実施例2
塩化セリウム7水塩(CeCl3・7H2O)の代わりに塩化鉄6水塩(FeCl3・6H2O)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−エチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが7%の収率で生成していた。バレルアルデヒドの転化率は66%であった。
【0064】
実施例3
塩化セリウム7水塩(CeCl3・7H2O)の代わりに塩化ガドリニウム6水塩(GdCl3・6H2O)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−エチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが6%の収率で生成していた。バレルアルデヒドの転化率は75%であった。
【0065】
実施例4
バレルアルデヒド(2mmol)の代わりにデカナール(2mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−ヘプチル−5−オクチル−3−フラアルデヒドが34%の収率で生成していた。ほかに、4−オクタノイル−2−オクチルフランが6%、2−ノネナールが1%、デカン酸メチルが4%の収率で生成していた。デカナールの転化率は96%であった。
【0066】
実施例5
バレルアルデヒド(2mmol)の代わりにデカナール(2mmol)を用いるとともに、メタノール(1.0ml)の代わりに水(0.4ml)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−ヘプチル−5−オクチル−3−フラアルデヒドが23%の収率で生成していた。ほかに、4−オクタノイル−2−オクチルフランが2%、2−ノネナールが17%の収率で生成していた。デカナールの転化率は94%であった。
【0067】
実施例6
メタノール(1.0ml)の代わりに水(0.4ml)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−エチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが22%の収率で生成していた。ほかに、2−プロピル−2−ヘプテナールが7%の収率で生成していた。バレルアルデヒドの転化率は99%以上であった。
【0068】
実施例7
メタノール(1.0ml)の代わりにエタノール(1.4ml)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−エチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが12%の収率で生成していた。ほかに、4−プロピオニル−2−プロピルフランが2%、2−プロピル−2−ヘプテナールが6%の収率で生成していた。バレルアルデヒドの転化率は99%以上であった。
【0069】
実施例8
反応器に、酢酸パラジウム(II)[Pd(OAc)2](0.1mmol)、H4PMo11140(7μmol)、塩化セリウム7水塩(CeCl3・7H2O)(0.1mmol)、メタノール(1.0ml)、酢酸(2.0ml)、4,4−ジメトキシ−2−ブタノン(1mmol)及びバレルアルデヒド(1mmol)を仕込み、酸素1気圧(0.1MPa)の雰囲気下、50℃で4時間反応させた。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−メチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが34%の収率で生成していた。ほかに、4−アセチル−2−プロピルフランが4%の収率で生成していた。4,4−ジメトキシ−2−ブタノンの転化率は83%であった。
【0070】
実施例9
バレルアルデヒドを3mmol用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−メチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが72%の収率で生成していた。ほかに、4−アセチル−2−プロピルフランが9%の収率で生成していた。4,4−ジメトキシ−2−ブタノンの転化率は93%であった。
【0071】
実施例10
バレルアルデヒドを5mmol用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−メチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが83%の収率で生成していた(単離収率72%)。ほかに、4−アセチル−2−プロピルフランが11%の収率で生成していた。4,4−ジメトキシ−2−ブタノンの転化率は97%であった。
【0072】
実施例11
バレルアルデヒドを10mmol用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−メチル−5−プロピル−3−フラアルデヒドが49%の収率で生成していた。ほかに、4−アセチル−2−プロピルフランが11%の収率で生成していた。4,4−ジメトキシ−2−ブタノンの転化率は96%であった。
【0073】
実施例12
バレルアルデヒド(1mmol)の代わりにプロピオンアルデヒド5mmolを用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2,5−ジメチル−3−フラアルデヒドが94%以上の収率で生成していた。ほかに、3−アセチル−2,5−ジメチルフランが6%の収率で生成していた。
【0074】
実施例13
バレルアルデヒド(1mmol)の代わりにブチルアルデヒド5mmolを用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−エチル−2−メチル−3−フラアルデヒドが73%の収率で生成していた。ほかに、3−アセチル−5−エチル−2−メチルフランが7%の収率で生成していた。
【0075】
実施例14
バレルアルデヒド(1mmol)の代わりにイソバレルアルデヒド5mmolを用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、5−イソプロピル−2−メチル−3−フラアルデヒドが59%の収率で生成していた。ほかに、3−アセチル−5−イソプロピル−2−メチルフランが6%の収率で生成していた。
【0076】
実施例15
バレルアルデヒド(1mmol)の代わりにデカナール5mmolを用いた以外は実施例8と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−メチル−5−オクチル−3−フラアルデヒドが82%の収率で生成していた。ほかに、3−アセチル−2−メチル−5−オクチルフランが痕跡量生成していた。
【0077】
実施例16
反応器に、酢酸パラジウム(II)[Pd(OAc)2](0.2mmol)、H4PMo11140(14μmol)、塩化セリウム7水塩(CeCl3・7H2O)(0.2mmol)、メタノール(1.0ml)、酢酸(2.0ml)、アセトアルデヒド(1mmol)及びプロピオンアルデヒド(1mmol)を仕込み、酸素1気圧(0.1MPa)の雰囲気下、80℃で15時間反応させた。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3−フラアルデヒドが同様に生成していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は有機基を示す)
で表されるアルデヒド又はその等価体と、下記式(2)
【化2】

(式中、R2は水素原子又は有機基を示す)
で表されるアルデヒド若しくはその等価体又は下記式(3)
【化3】

(式中、R2は水素原子又は有機基を示し、R3、R4は、同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示す。R3、R4は、互いに結合して、隣接する2つの酸素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい)
で表されるカルボニル化合物若しくはその等価体とを反応させて、下記式(4)
【化4】

(式中、R1、R2は前記に同じ)
で表される3−フラアルデヒド誘導体を得ることを特徴とする3−フラアルデヒド誘導体の製造法。
【請求項2】
式(1)で表されるアルデヒド又はその等価体として式(2)で表されるアルデヒド又はその等価体を用いて、下記式(4a)
【化5】

(式中、R2は水素原子又は有機基を示す)
で表される3−フラアルデヒド誘導体を得る請求項1記載の3−フラアルデヒド誘導体の製造法。
【請求項3】
反応をパラジウム化合物触媒(A)の存在下で行う請求項1又は2記載の3−フラアルデヒド誘導体の製造法。
【請求項4】
パラジウム化合物触媒(A)に加えて、さらにヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)、又は全体として、P又はSiの元素と、V、Mo及びWから選択された少なくとも1つの元素とを含むオキソ酸若しくはその塩の混合物(B2)からなる助触媒(B)の存在下で反応を行う請求項3記載の3−フラアルデヒド誘導体の製造法。
【請求項5】
ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)が、構成元素として、P又はSiの元素と、V、Mo及びWから選択された少なくとも1つの元素とを含む請求項4記載の3−フラアルデヒド誘導体の製造法。
【請求項6】
ヘテロポリ酸若しくはその塩(B1)が、下記式
3+n[PMo12-nn40
(式中、Aは水素原子、NH4、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された少なくとも1種を示し、nは0〜10の整数である)
で表されるリンバナドモリブデン酸若しくはリンモリブデン酸又はそれらの塩である請求項4又は5記載の3−フラアルデヒド誘導体の製造法。
【請求項7】
パラジウム化合物触媒(A)に加えて、さらにルイス酸(C)の存在下で反応を行う請求項3〜6の何れかの項に記載の3−フラアルデヒド誘導体の製造法。

【公開番号】特開2010−209002(P2010−209002A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57463(P2009−57463)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】