説明

3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法およびその中間体

本発明は、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を用いた以下の(1)〜(3)の3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の効率的な製造方法に関する。(1)3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を光学活性アミンを用いて塩とした後、光学分割し、次いでアンモニアを用いてエポキシ基を開環した後、保護基を導入する反応に付す方法、(2)3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を光学活性アミンと反応させてエポキシ基を開環し、光学分割し、次いで脱保護反応に付した後、保護基を導入する反応に付す方法、(3)3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸をエステル化した後、擬似移動床式クロマトグラフィーにより光学分割し、次いでアンモニアを用いて、エポキシ基を開環した後、保護基を導入する反応に付す方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は医薬品の原料として有用な3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法およびその製造中間体化合物に関する。
【背景技術】
3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体は、医薬品として有用な中間体である。例えば、(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸は、抗エイズ薬原料として特開2003−55358号に記載されている化合物である。この文献には、(2S,3R)−2,3−エポキシ−3−シクロヘキシルプロピオン酸をベンジルアミンで開環した後、加水素分解して(2R,3R)−2−アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸とし、t−ブチルオキシカルボニル化する(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸の製造方法が記載されている。
また、(2R,3R)−2−アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸については、特開平06−165693号に、ラセミ−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸に、L−アロスレオニンアルドラーゼを作用させるD−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の製造法が知られている。
これらの重要な中間体である(2S,3R)−2,3−エポキシ−3−シクロヘキシルプロピオン酸については、先の特開2003−55358号に3−シクロヘキシル−2−プロペノールを不斉エポキシ化して(2R,3R)−2,3−エポキシ−3−シクロヘキシルプロパノールを得、それを酸化して(2S,3R)−2,3−エポキシ−3−シクロヘキシルプロピオン酸とする方法が知られている。
しかし、この方法は、不斉エポキシ化工程においてハロゲン系の溶剤を使用する必要があり、工業レベルで(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸を得る手段としては満足できるものではない。
【発明の開示】
医薬品またはその中間体のような有用物質を工業レベルで効率的に生産するには、個々の反応のみならず、原料から目的物質を得るまでの総合的な効率性が求められる。本発明は3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体、特に(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸の工業レベルでの高い生産性を有する製造方法を提供することを課題とするものである。
すなわち、本発明は、
1.3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(4)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(5)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(6)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(7)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンを用いて塩とした後、光学分割し、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸の光学活性アミン塩とし、酸処理して3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を得、次いでアンモニアを用いてエポキシ基を開環した後、保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法、
2.3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(4)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(5)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(6)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(7)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンを用いて、塩とした後、光学分割することを特徴とする、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物と光学活性アミンとの塩の製造方法、
3.3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とアンモニアを用いて、エポキシ基を開環し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法、
4.塩が(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩である前記1、2または3記載の製造方法、
5.3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物と
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(4)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(5)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(6)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(7)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンとの塩、
6.3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物の3位の置換基が、置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である前記5記載の塩、
7.3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物の3位の置換基が、1−メチルエチル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−1−シクロペンテン−4−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基である前記6記載の塩、
8.(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩である前記7記載の塩、
9.3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン、
(4)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(5)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(6)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(7)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(8)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンと反応させてエポキシ基を開環し、光学分割し、一般式(I)

(式中、Rは置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表わし、Rは保護されたアミノ基であり、(R)−1−フェニルエチルアミノ基、(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミノ基、(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミノ基、(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミノ基、(R)−β−メチルフェニルエチルアミノ基、(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミノ基、(1R,2S)−1,2−ジフェニルエタノール−2−アミノ基、または(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミノ基を表わす。)
で示される化合物とし、次いで脱保護反応に付した後、保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法、
10.3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン、
(4)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(5)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(6)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(7)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(8)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンと反応させてエポキシ基を開環し、光学分割することを特徴とする一般式(I)

(式中の記号は請求項9と同じ意味を表わす。)
で示される化合物の製造方法、
11.一般式(I)

(式中の記号は請求項9と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を脱保護反応に付し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法、
12.一般式(I)

(式中、Rは置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表わし、Rは保護されたアミノ基であり、(R)−1−フェニルエチルアミノ基、(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミノ基、(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミノ基、(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミノ基、(R)−β−メチルフェニルエチルアミノ基、(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミノ基、(1R,2S)−1,2−ジフェニルエタノール−2−アミノ基、または(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミノ基を表わす。)
で示される化合物、
13.Rが(R)−1−フェニルエチルアミノ基である前記11記載の化合物、
14.化合物が(2R,3R)−2−((R)−1−フェニルエチル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸である前記13記載の化合物、
15.3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで必要に応じてエステル化した後、クロマトグラフィーにより、光学分割し、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸誘導体とし、次いでアンモニアを用いて、エポキシ基を開環し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法、
16.3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで必要に応じてエステル化した後、クロマトグラフィーにより、光学分割し、3−置換−(2R,3S)−2,3−エポキシプロピオン酸誘導体とし、次いでアンモニアを用いて、エポキシ基を開環し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2S,3S)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法、
17.2位のアミノ基の保護基がt−ブトキシカルボニル基またはベンジルオキシカルボニル基である前記1、3、9、11、15または16記載の製造方法、
18.2位のアミノ基の保護基がt−ブトキシカルボニル基である前記1、3、9、11、15または16記載の製造方法、および
19.3位の置換基が1−メチルエチル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−シクロペンテン−4−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基である前記1〜3、9〜11、15〜17のいずれかに記載の製造方法に関する。
本発明の3位の置換基としては、いずれの置換基であってもよく、特に限定されない。例えば、置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
本明細書中、「置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」としては、例えば、炭素環または複素環が挙げられる。
炭素環としては、例えばC3〜15の単環、二環または三環式炭素環、スピロ結合した二環式炭素環または架橋した二環式炭素環等が挙げられる。C3〜15の単環、二環または三環式炭素環には、C3〜15の単環、二環または三環式炭素環不飽和炭素環、その一部または全部が飽和されている炭素環が含まれる。例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、ベンゼン、ペンタレン、パーヒドロペンタレン、アズレン、パーヒドロアズレン、インデン、パーヒドロインデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、パーヒドロナフタレン、ヘプタレン、パーヒドロヘプタレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロ[5.5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン、アダマンタン、ノルアダマンタン環等が挙げられる。
複素環としては、例えば酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含む、3〜15員の単環、二環または三環式複素環、スピロ結合した二環式複素環または架橋した二環式複素環等が挙げられる。酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含む3〜15員の単環、二環または三環式複素環には、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含む3〜15員の単環、二環または三環式不飽和複素環、その一部または全部が飽和されている複素環が含まれる。例えばピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、チアジアゼピン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジチアナフタレン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノリジン、プリン、フタラジン、プテリジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、クロメン、ベンゾオキセピン、ベンゾオキサゼピン、ベンゾオキサジアゼピン、ベンゾチエピン、ベンゾチアゼピン、ベンゾチアジアゼピン、ベンゾアゼピン、ベンゾジアゼピン、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、カルバゾール、β−カルボリン、アクリジン、フェナジン、ジベンゾフラン、キサンテン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェノキサチイン、チアンスレン、フェナントリジン、フェナントロリン、ペリミジン、アジリジン、アゼチジン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、オキシラン、オキセタン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、チイラン、チエタン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾフラン、パーヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、パーヒドロイソベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、パーヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、パーヒドロイソベンゾチオフェン、ジヒドロインダゾール、パーヒドロインダゾール、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、パーヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、パーヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、パーヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、パーヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、パーヒドロキナゾリン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、パーヒドロシンノリン、ベンゾオキサチアン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ピラジノモルホリン、ジヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロベンゾアゼピン、ジヒドロベンゾジアゼピン、テトラヒドロベンゾジアゼピン、ベンゾジオキセパン、ジヒドロベンゾオキサゼピン、テトラヒドロベンゾオキサゼピン、ジヒドロカルバゾール、テトラヒドロカルバゾール、パーヒドロカルバゾール、ジヒドロアクリジン、テトラヒドロアクリジン、パーヒドロアクリジン、ジヒドロジベンゾフラン、ジヒドロジベンゾチオフェン、テトラヒドロジベンゾフラン、テトラヒドロジベンゾチオフェン、パーヒドロジベンゾフラン、パーヒドロジベンゾチオフェン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、ジオキサインダン、ベンゾジオキサン、クロマン、ベンゾジチオラン、ベンゾジチアン、アザスピロ[4.4]ノナン、アザスピロ[4.5]デカン、アザスピロ[5.5]ウンデカン、アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン環等が挙げられる。
「置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基」における「脂肪族炭化水素基」としては、「直鎖状または分枝状の脂肪族炭化水素基」が挙げられ、「直鎖状または分枝状の脂肪族炭化水素基」としては、「直鎖状または分枝状のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基」が挙げられる。「直鎖状または分枝状のアルキル基」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の直鎖状または分枝状C1〜10アルキル基等が挙げられる。「直鎖状または分枝状のアルケニル基」としては、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、ヘプタジエニル、オクテニル、オクタジエニル、ノネニル、ノナジエニル、デセニル、デカジエニル基等の直鎖状または分枝状C2〜10アルケニル基等が挙げられる。「直鎖状または分枝状のアルキニル基」としては、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ブタジイニル、ペンチニル、ペンタジイニル、ヘキシニル、ヘキサジイニル、ヘプチニル、ヘプタジイニル、オクチニル、オクタジイニル、ノニニル、ノナジイニル、デシニル、デカジイニル基等の直鎖状または分枝状C2〜10アルキニル基等が挙げられる。
「置換基を有していてもよい環状基」または「置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、(a)置換されていてもよいアルキル基、(b)置換されていてもよいアルケニル基、(c)置換されていてもよいアルキニル基、(d)置換基を有していてもよい炭素環基、(e)置換基を有していてもよい複素環基、(f)置換されていてもよい水酸基、(g)置換されていてもよいチオール基、(h)置換されていてもよいアミノ基、(i)置換されていてもよいカルバモイル基、(j)置換されていてもよいスルファモイル基、(k)カルボキシ基、(l)アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等のC1〜6アルコキシカルボニル基等)、(m)スルホ基(−SOH)、(n)スルフィノ基、(o)ホスホノ基、(p)ニトロ基、(q)オキソ基、(r)チオキソ基、(s)シアノ基、(t)アミジノ基、(u)イミノ基、(v)−B(OH)基、(w)ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、(x)アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル等のC1〜6アルキルスルフィニル基等)、(y)アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル等のC6〜10アリールスルフィニル基等)、(z)アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等のC1〜6アルキルスルホニル基等)、(aa)アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル等のC6〜10アリールスルホニル基等)、(bb)アシル基(例えばホルミル、アセチル、プロパノイル、ピバロイル等のC1〜6アルカノイル基、例えばベンゾイル等のC6〜10アリールカルボニル基等)等が挙げられ、これらの任意の置換基は置換可能な位置に1〜5個置換していてもよい。置換基としての「置換されていてもよいアルキル基」における「アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の直鎖状または分枝状のC1〜10アルキル基等が挙げられる。ここでアルキル基の置換基としては水酸基、アミノ基、カルボキシ基、ニトロ基、モノ−またはジ−C1〜6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等)、C1〜6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、C1〜6アルキルカルボニルオキシ基(例えばアセトキシ、エチルカルボニルオキシ等)、フェニル基およびハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)等が挙げられ、これらの任意の置換基は置換可能な位置に1〜4個置換していてもよい。置換基としての「置換されていてもよいアルケニル基」における「アルケニル基」としては、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、ヘプタジエニル、オクテニル、オクタジエニル、ノネニル、ノナジエニル、デセニル、デカジエニル基等の直鎖状または分枝状のC2〜10アルケニル基等が挙げられる。ここでアルケニル基の置換基としては、前記「置換されていてもよいアルキル基」における置換基と同じ意味を表わす。置換基としての「置換されていてもよいアルキニル基」における「アルキニル基」としては、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ブタジイニル、ペンチニル、ペンタジイニル、ヘキシニル、ヘキサジイニル、ヘプチニル、ヘプタジイニル、オクチニル、オクタジイニル、ノニニル、ノナジイニル、デシニル、デカジイニル基等の直鎖状または分枝状のC2〜10アルキニル基等が挙げられる。ここでアルキニル基の置換基としては、前記「置換されていてもよいアルキル基」における置換基と同じ意味を表わす。置換基としての「置換基を有していてもよい炭素環基」における炭素環としては、前記した「置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」中の炭素環と同じ意味を表わす。ここで炭素環の置換基としては、例えば、直鎖状または分枝状のC1〜10アルキル基(前記「置換されていてもよいアルキル基」におけるアルキル基と同じ意味を表わす。)、直鎖状または分枝状C2〜10アルケニル基(前記「置換されていてもよいアルケニル基」におけるアルケニル基と同じ意味を表わす。)、直鎖状または分枝状C2〜10アルキニル基(前記「置換されていてもよいアルキニル基」におけるアルキニル基と同じ意味を表わす。)、水酸基、C1〜6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、チオール基、C1〜6アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等)、アミノ基、モノ−またはジ−C1〜6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ等)、ハロゲン原子(前記したものと同じ意味を表わす)、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられ、これらの任意の置換基は置換可能な位置に1〜5個置換していてもよい。置換基としての「置換基を有していてもよい複素環基」における複素環としては、前記した「置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」中の複素環と同じ意味を表わす。ここで複素環の置換基としては前記した「置換基を有していてもよい炭素環基」における置換基と同じ意味を表わす。置換基としての「置換されていてもよい水酸基」、「置換されていてもよいチオール基」および「置換されていてもよいアミノ基」における「置換基」としては、例えば(i)置換されていてもよいアルキル基(前記したものと同じ意味を表わす)、(ii)置換されていてもよいアルケニル基(前記したものと同じ意味を表わす)、(iii)置換されていてもよいアルキニル基(前記したものと同じ意味を表わす)、(iv)置換基を有していてもよい炭素環基(前記したものと同じ意味を表わす)、(v)置換基を有していてもよい複素環基(前記したものと同じ意味を表わす)、(vi)アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ピバロイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル等のC1〜6アルカノイル基またはそれらの異性体基等、例えば、ベンゾイル等のC6〜10芳香族炭素環カルボニル等)、(vii)置換されていてもよいカルバモイル基(後記したものと同じ意味を表わす。)、(viii)アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等のC1〜6アルキルスルホニル基等)、(ix)アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル等のC6〜10アリールスルホニル基等)等が挙げられる。置換基としての「置換されていてもよいカルバモイル基」としては、無置換のカルバモイル基、N−モノ−C1〜6アルキルカルバモイル(例えば、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−ブチルカルバモイル、N−イソブチルカルバモイル、N−(tert−ブチル)カルバモイル、N−ペンチルカルバモイル、N−ヘキシルカルバモイル等)、N−フェニルカルバモイル等のN−モノ−C6〜10アリールカルバモイル、N,N−ジC1〜6アルキルカルバモイル(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N,N−ジプロピルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N,N−ジペンチルカルバモイル、N,N−ジヘキシルカルバモイル、N−メチル−N−エチルカルバモイル等)、N,N−ジフェニルカルバモイル等のN−ジ−C6〜10アリールカルバモイル、N−C6〜10アリール−N−C1〜6アルキルカルバモイル(例えば、N−フェニル−N−メチルカルバモイル、N−フェニル−N−エチルカルバモイル、N−フェニル−N−プロピルカルバモイル、N−フェニル−N−ブチルカルバモイル、N−フェニル−N−ペンチルカルバモイル、N−フェニル−N−ヘキシルカルバモイル等)等が挙げられる。置換基としての「置換されていてもよいスルファモイル基」としては、無置換のスルファモイル基、N−モノ−C1〜6アルキルスルファモイル(例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N−プロピルスルファモイル、N−イソプロピルスルファモイル、N−ブチルスルファモイル、N−イソブチルスルファモイル、N−(tert−ブチル)スルファモイル、N−ペンチルスルファモイル、N−ヘキシルスルファモイル等)、N−フェニルスルファモイル等のN−モノ−C6〜10アリールスルファモイル、N,N−ジC1〜6アルキルスルファモイル(例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジブチルスルファモイル、N,N−ジペンチルスルファモイル、N,N−ジヘキシルスルファモイル、N−メチル−N−エチルスルファモイル等)、N,N−ジフェニルスルファモイル等のN−ジ−C6〜10アリールスルファモイル、N−C6〜10アリール−N−C1〜6アルキルスルファモイル(例えば、N−フェニル−N−メチルスルファモイル、N−フェニル−N−エチルスルファモイル、N−フェニル−N−プロピルスルファモイル、N−フェニル−N−ブチルスルファモイル、N−フェニル−N−ペンチルスルファモイル、N−フェニル−N−ヘキシルスルファモイル等)等が挙げられる。
3位の置換基として好ましくは、C3〜8の単環式炭素環、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含む、3〜8員の単環式複素環、直鎖状または分枝状C1〜10アルキル基であり、より好ましくは、1−メチルエチル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−シクロペンテン−4−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基であり、最も好ましくは、シクロヘキシル基である。
本発明のアミノ基の保護基としては、特に限定されず、いずれの保護基であってもよい。
例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシズ、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ発行、1999年等記載されたもの等が挙げられる。好ましくは、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エトキシカルボニル(Bpoc)基、トリフルオロアセチル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル(BOM)基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)基であり、より好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基であり、最も好ましくは、t−ブトキシカルボニル基である。
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように

[発明の実施の形態]
本発明の製造方法の出発物質である3−置換−トランス−2−プロペン酸は、それ自体公知であるか、公知の方法よって製造することができる。例えば、トランス−3−シクロヘキシル−2−プロペン酸は、特開昭62−106039号公報に記載されているように、1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒドをパラジウム系触媒存在下で接触還元してヘキサヒドロベンズアルデヒドとし、これとJ.Chem.Soc.,26(1928)記載の方法に従ってマロン酸を反応させることにより得ることができる。
3−置換−トランス−2−プロペン酸誘導体は、タングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とすることができる。タングステン酸塩としては、例えばタングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウムなどのタングステン酸のアルカリ金属塩、タングステン酸等が挙げられるが、タングステン酸ナトリウム2水和物が好ましい。量としては、3−置換−トランス−2−プロペン酸に対して0.05〜1.0モル倍が好ましく、0.1〜0.3モル倍が最も好ましい。これに過酸化水素を加えて酸化することにより目的物を得ることができる。過酸化水素は一般に入手可能な過酸化水素水として添加すればよい。
反応は、メタノール、エタノール、アセトン等の水と任意の割合で混和する溶媒存在下で行うのが好ましい。最も好ましいのはメタノールである。濃度としてはメタノールの場合溶媒中のメタノール濃度は10〜60質量%程度が好ましい。反応温度は、30〜60℃の範囲で好ましく行われ、40℃前後が最も好ましい。反応時のpHは3.0〜6.5であればよいが、4.0〜6.0の範囲で好ましい結果が得られる。上記pH、温度の条件範囲外では反応速度の低下、または反応副生物が増加する。反応時間は、適宜設定でき、通常10〜30時間であるが、例えば40℃前後であれば、15時間程度で終了する。
反応終了後は、チオ硫酸ナトリウム等で余分な過酸化水素を分解し、溶媒を留去した後、pH調製の後、クロマト分離、蒸留、溶媒抽出等の公知の手法により3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸として得ることができる。また3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とアルカリ金属の水酸化物の水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)と処理することで3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸のアルカリ金属塩として得ることもできる。
3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸またはその塩の光学分割方法としては、例えば、クロマトグラフィーによる方法、リパーゼ等の不斉識別可能な微生物や酵素を用いる加水分解酵素による方法、光学活性アミンとの塩を生成させ分別晶析する方法、適当な光学活性アミンと反応させた後分別晶析する方法等を適用することができる。
クロマトグラフィーによる光学分割に関しては通常の光学分割用充填剤や市販カラムを用いて行うことができるが、効率的な製造のためには、擬似移動床式クロマトグラフィーで行うことが好ましい。この方法は、特開平6−170111号、特開平6−239767号、特開平7−89950号等により公知である。
光学分割用充填剤としては、光学活性な高分子化合物、例えば多糖誘導体(セルロース、アミロース、β−1,4−キトサン、キチン、β−1,4−マンナン、β−1,4−キシラン、イヌリン、α−1,3−グルカン、β−1,3−グルカンのエステルやカルバメート)、ポリアクリレート誘導体、ポリアミド誘導体をシリカゲルに担持させたもの、またはポリマーそのものを粒状にしたもの、さらに光学分割能を有する低分子化合物、例えばクラウンエーテル、シクロデキストリン誘導体をシリカゲルに担持させたものを用いることができ、市販品を適宜選択して使用することもできる。例えば、それぞれダイセル化学工業(株)製のCHIRALCEL OD(登録商標)、CHIRALCEL OJ(登録商標)、CHIRALCEL OF(登録商標)、CHIRALPAK AS(登録商標)、CHIRALPAK AD(登録商標)等を好ましい例として挙げることができる。
充填剤の平均粒径は、分割しようとする光学異性体の種類、擬似移動床内に流通する溶媒の体積流通速度等に応じて様々に変化するのであるが、通常1〜100μm、好ましくは5〜75μmである。最も、擬似移動床内での圧損を小さく抑制するのであれば、15〜75μmに充填剤の平均粒径を調整しておくのが望ましい。充填剤の平均粒径が上記範囲内にあると擬似移動床における圧損を少なくすることができ、例えば10kgf/cm以下に抑制することもできる。一方、充填剤の平均粒径が大きくなればなるほど吸着理論段数は低下する。したがって、実用的な吸着理論段数が達成されることだけを考慮するなら、前記充填剤の平均粒径は、通常1〜50μmである。
脱離液導入口に供給される脱離液としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ヘキサン等の炭化水素類、アセトニトリルなどの有機溶媒、例えば硫酸銅水溶液や過塩素酸塩水溶液等の塩を含有する水溶液を挙げることができる。いずれの脱離液が好ましいかは、光学分割しようとする化合物の種類に応じて適宜に決定される。
擬似移動床式クロマトグラフィーによる分離に際しては、溶媒への溶解性、カラムへの負荷可能量を考慮して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を公知の方法によって3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルへ変換して行うことが好ましい。エステル化は、例えば特開昭55−8577号、特開平11−269166号、第4版実験化学講座22 有機合成IV−酸・アミノ酸・ペプチド−44頁、平成4年11月30日発行、社団法人日本化学会編、発行所 丸善株式会社等に記載の通常の方法で行われ、光学分割後は、例えば特開平9−59229号等記載の通常の方法で脱エステル化できる。メチルエステルの場合が最も好ましい結果が得られる。擬似移動床式クロマトグラフィーによる分離は、公知の方法に準じて適宜最適条件を決められるが、試料濃度:110〜250g/l、ステップタイム:0.75〜15分、カラム本数:3〜20本、カラム内径:1〜100cmの範囲で実施することが好ましい。フィード、エクストラクト、ラフィネート、エリュエント、リサイクリングの各流量は、上記条件と、装置の耐圧能力により、適宜調整される。
本発明で用いられる擬似移動床式クロマトグラフィー装置を図1に例示する。
また、クロマトグラフィーによる分離では、通常の溶媒を用いた方法だけでなく、超臨界流体を媒体とした超臨界流体クロマトグラフィー、超臨界流体−擬似移動床式クロマトグラフィーも使用できる。
また、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解酵素で処理することにより、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解し、生成する3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を得ることもできる。また、同様に3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解酵素で処理することにより、3−置換−(2R,3S)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解し、残存する3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを得ることもできる。
本発明に使用する酵素は、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルから3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸またはそのエステルを与えるものであれば特に制限はない。微生物、植物または動物由来の市販加水分解酵素(リパーゼ、プロテアーゼ等)、各種保存菌株の微生物由来の酵素および自然界より新たに単離された微生物由来の酵素等が使用可能である。本発明において、例えば、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解酵素で処理することにより、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解し、生成する(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸を得るために使用する市販の加水分解酵素としては、例えば、Biocatalysts Ltd.製のPenicillium cyclopiumリパーゼ、Novozymes社製のリポザイムIM 60(Mucor属由来)、ノボザイム435(Candida属由来)、天野エンザイム社製のリパーゼF(Rhizopus属由来)、リパーゼA(Aspergillus属由来)、リパーゼM(Mucor属由来)、リパーゼAY(Candida属由来)、リパーゼD(Rhizopus属由来)、リパーゼCE、リパーゼGC、リパーゼGT、リパーゼPS−D(Pseudomonas属由来)、アシラーゼ(Aspergillus属由来)、プロテアーゼM(Aspergillus属由来)、プロテアーゼA(Aspergillus属由来)、ニューラーゼF(Rhizopus属由来)、プロテアーゼS(Bacillus属由来)、プロテアーゼP(Aspergillus属由来)、Fluka製のLipase from Pseudomonas fluorescens、Lipase from Penicillium roqueforti、名糖産業製のリパーゼOF、旭化成製のリパーゼ、ダイセル化学製のリパーゼS16−19B(特開平05−123179号)、リパーゼS10−071(特開平05−304949号)等が挙げられる。
また、本発明において、例えば、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解酵素で処理することにより、(2R,3S)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを加水分解し、残存する(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを得るために使用する市販の加水分解酵素としては、例えば、Biocatalysts Ltd.製のパンクレアティックリパーゼ(豚膵臓由来)、天野エンザイム社製のリパーゼL(Candida属由来)、プロレザー(Bacillus属由来)、プロテアーゼN(Bacillus属由来)、東洋紡製のImmobilized Lipase等が挙げられる。
本発明における3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルの加水分解反応は、次のようにして行うことができる。すなわち、反応媒体に酵素反応の基質である3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを添加し、溶解または懸濁し、触媒として酵素を加える。反応媒体としては、例えば、イオン交換水または緩衝液等を用いることができる。反応液中の基質濃度としては、0.1〜70質量%の間で特に制限はないが、基質の溶解度および変換率等を考慮して、好ましくは0.5〜20質量%で行うことができる。また、基質の溶解性を向上させるためにアセトニトリル、ジメチルスルフォキシド等の親水性有機溶媒を系内に添加することもできる。もしくは、ヘキサン、トルエン等の疎水性有機溶媒を系内に添加し、水系と有機溶媒の2相として反応することも可能である。反応温度は、酵素の至適温度と基質の安定性等を考慮して、5〜80℃、好ましくは10〜60℃で行うことができる。反応液のpHは、酵素の至適pHと基質の安定性等を考慮して、2.0〜10.0、好ましくは6.0〜9.0の範囲で行うことができる。反応の進行に伴ってpHが変動する場合は、適当な中和剤を添加し、最適pHを維持することが望ましい。
反応終了液からの生成物の分離精製は、イオン交換樹脂を用いた分離、晶析法、蒸留、溶媒抽出等の公知の方法を組み合わせることにより行うことができる。例えば溶媒抽出による方法は次のようにして行うことができる。生成した3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を分離精製する場合は、中性付近で一般的な有機溶媒、例えば、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム等を用いて抽出操作を行うことにより、3−置換−(2R,3S)−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを抽出分離した後、抽出残渣に硫酸や塩酸等の強酸を添加し、pHを2.0程度に調整し、上記と同様の一般的な抽出操作を行うことにより抽出分離することができる。また、残存する3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸エステル誘導体を分離精製する場合は、中性付近で上記と同様の一般的な抽出操作を行うことにより抽出分離することができる。
また、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸は光学活性アミンとの塩を形成させ、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸の光学活性アミンとの塩として分別晶析することも可能である。光学活性アミンとしては、(R)−1−フェニルエチルアミン、(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン等が用いられるが、好適な例としては(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンが挙げられる。
分別晶析に要する光学活性アミンの使用量は(R)−1−フェニルエチルアミンの場合、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸に対して0.5〜1.5モル倍の範囲で用いるのが好ましい。
分別晶析時の溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類等から適宜選択できるが、(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンの場合は、酢酸エチルが好ましく、t−ブチルメチルエーテル等の貧溶媒を添加することで晶析収率を上昇させることもできる。
晶析温度としては−20〜50℃の範囲が好ましいが、0〜10℃の範囲がさらに好ましい。晶析時間としては5〜30時間である。例えば(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミンの場合、0℃で15時間である。
晶析には種晶を用いることが出来、種晶を添加することによって晶析時間を短縮することができる。種晶は分別晶析に用いる光学活性アミンと同じ光学活性アミンの3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸誘導体との塩を用いるのが好ましい。
単離した3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸の光学活性アミンとの塩を再び上記の溶媒を用いて再び分別晶析を行うことで塩のジアステレオ選択性を向上させることができる。例えば、60%d.e.の(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸塩を再び分別晶析を行うことで99.2%d.e.まで向上した。
晶析後は、遠心分離、ろ過等通常の手法により3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸の光学活性アミンとの塩を得ることができる。
分割に用いた光学活性アミンは塩単離後のろ液および3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸の光学活性アミンとの塩から3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸誘導体を単離した後に容易に回収が可能である。
3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸またはその塩は、Tetrahedron Lett.,35,31,5023(1990)およびSynth.Commun.,3,3,177(1973)等公知の記載の手法でアンモニアでエポキシ基を開環した後、公知手法(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシズ、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ発行、1999年等記載等)によりアミンの保護基を導入する反応に付し、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸とすることができる。例えば、アミンの保護基がt−ブチルオキシカルボニル基の場合は、特開2003−55358号記載の方法等の公知手法により、t−ブチルオキシカルボニル化し、3−置換−(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸とすることができる。
t−ブチルオキシカルボニル化は、例えば水と混和する有機溶媒と水との混合溶媒中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等の塩基とジ−t−ブチルジカーボネートの存在化で行われる。反応は通常20〜40℃、5〜25時間で終了する。
さらに、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸は光学活性アミンと反応させてエポキシ基を開環して、3−置換−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体とした後、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体を分別晶析させることもできる。
光学活性アミンとしては、(R)−1−フェニルエチルアミン、(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン、(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン等が用いられるが、好適な例としては、(R)−1−フェニルエチルアミンが好ましく用いられる。
塩の誘導体化は、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン等のベンゼン系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、水、酢酸、酢酸エチル等、またはこれらの混合溶媒中、1〜3当量の塩基を用いて行われる。使用する塩基は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、トリエチルアミン、ピリジン等の三級アミン等である。また、開環反応に用いる光学活性アミン自体を塩基として使用してもよい。この場合、用いる光学活性アミンの量は、1.5〜8当量、より好ましくは2〜6当量となる。
塩の誘導体化に用いる光学活性アミンは、それ自体を塩基として用いない場合には、基質に対して0.5〜5当量、より好ましくは1〜3当量添加する。
反応は通常、60〜120℃、より好ましくは90〜100℃で、8〜24時間で終了する。
3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体晶析は、この上記反応物から溶媒留去し、塩基性水溶液を添加して行われる。塩基性水溶液は、適宜塩酸水溶液などでpH調整できるが、好ましくは9〜12、より好ましくは10.5〜11.5に調整する。
上記で得られた、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体は、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシズ、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ発行、579頁、1999年等記載の公知の脱保護手法で3−置換−(2R,3R)−2−アミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸とし、前記と同様の手法により、アミンの保護基を導入する反応に付して、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸とすることができる。
脱保護反応は、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン等のベンゼン系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、水、酢酸、酢酸エチル等、またはこれらの混合溶媒中、パラジウム−炭素、パラジウム黒、パラジウム、水酸化パラジウム、白金−炭素、二酸化白金、ニッケル、塩化ルテニウム等の触媒存在下、塩酸、硫酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の酸存在下、常圧または加圧下の水素雰囲気下で行われる。反応は通常20〜60℃、2〜20時間で終了する。
3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸はクロマト分離、ろ過、濃縮、晶析、再結晶等の分離精製手段やこれらを組み合わせた手段等により精製することができる。
精製物の構造は、H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、マススペクトル、元素分析等公知の手法により確認でき、光学純度は、光学分割カラムを用いたHPLC分析により測定することができる。
【発明の効果】
本発明によれば、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸、特に(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸を高い生産性を有する工業レベルで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、8本の単位カラムを有する擬似移動床を用いる、この発明の擬似移動床式クロマト分離法を示す概略説明図である。図中、1〜8は単位カラム、A〜Eは第1〜5ロータリーバルブ、7a〜7hは電磁弁、13は脱離液供給ライン、14はエクストラクト抜き出しライン、15は光学異性体混合物含有液供給ライン、16はラフィネート抜き出しライン、17は循環流路、18は循環ポンプ、19は脱離液供給ライン(リサイクル時)を表わす。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
なお、以下に記載する「d.e.」は(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸またはその塩、あるいは(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルの場合、{([R,S一体の量]−[R,R一体の量])/([R,S一体の量]+[R,R一体の量])}×100で表される数値を意味し、2−アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の場合、{([R,R一体の量]−[R,S一体の量])/([R,R一体の量]+[R,S一体の量])}×100で表される数値を意味し、「e.e.」は、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸またはその塩、あるいは(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルの場合、{([S,R一体の量]−[R,S一体の量])/([S,R一体の量]+[R,S一体の量])}×100で表される数値を、2−アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の場合、{([R,R一体の量]−[S,S一体の量])/([R,R一体の量]+[S,S一体の量])}×100で表される数値を意味する。
実施例1:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の製造(1)
トランス−3−シクロヘキシル−2−プロペン酸147gにメタノール356gを加え溶解させた。これに水306gおよびタングステン酸ナトリウム2水和物32.1gを加え、40℃まで加温した。加温後25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH5.0〜5.5に調整した。調整後30%過酸化水素水143gを40℃にて滴下した。25%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを5.0〜5.5の範囲を保ちながら、40℃にて15時間反応させた。反応終了後、反応液を10℃以下まで冷却した。40%チオ硫酸ナトリウム水溶液を20℃以下で過酸化水素が完全に分解されるまで滴下した。過酸化水素分解後、減圧下メタノールを留去した。メタノールを留去後、濃塩酸を添加して、反応液のpHを2.0〜3.0に調整した。t−ブチルメチルエーテル676gを加え30分以上撹拌した後、静置した。分液ロートにて下層水を分液後、上層をろ過した。このろ液を減圧下で濃縮することで淡黄色油状の(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸131g(81%)を得た。
H−NMR(CDCl)ppm:1.10−1.39(m,6H,CH),1.70−1.86(m,5H,CH,CH),2.98(dd,1H,J=6.21,0.81 CH),3.30(d,1H,J=2.16,CH)。
実施例2:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の製造(2)
タングステン酸ナトリウム2水和物4.3gに水64.4gを加え溶解させ、40℃に加温した。これに40℃でトランス−3−シクロヘキシル−2−プロペン酸20gを含むメタノール溶液35.8gを加え、さらに40℃で30%過酸化水素水29.4gを滴下した。25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、反応液のpHを4.5〜5.0の範囲を保ち40℃にて20時間反応させた。反応終了後10℃以下まで冷却し、35%重亜硫酸ナトリウムおよび25%水酸化ナトリウム水溶液を20℃以下、pH4.0〜6.0を保ち滴下し、過酸化水素を分解した。分解後、減圧条件下にてメタノールを留去した後、濃塩酸を用いて反応液のpHを2.0〜3.0に調整した。t−ブチルメチルエーテル676gを加え30分以上撹拌した後、30分以上静置した。分液ロートにて下層水を分液した後、上層をろ過した。このろ液を減圧下で濃縮することで淡黄色油状の(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸16.2g(73%)を得た。
H−NMR(CDCl)ppm:1.10−1.39(m,6H,CH),1.70−1.86(m,5H,CH,CH),2.98(dd,1H,J=6.21,0.81 CH),3.30(d,1H,J=2.16,CH)。
比較例1:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の製造(無触媒系)
トランス−3−シクロヘキシル−2−プロペン酸1gにアセトン8.6gおよび水11gを加えた。これに30%過酸化水素水2.2gを加え50℃で撹拌したが(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸は生成しなかった。3M水酸化ナトリウム水溶液にてpHを3.0から14.0まで変化させたがいずれのpHにおいても目的物の生成は認められなかった。
比較例2:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の製造(無溶媒系)
トランス−3−シクロヘキシル−2−プロペン酸10gに過酸化水素水22.1gおよびタングステン酸ナトリウム2水和物1.06gを加え撹拌した。これに25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、反応液のpHを5.0に調製した。(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸溶解に必要な50℃にてpHを4.5から5.0に保ちながら15時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル45gを加え分液ロートにて下層水を分液した。得られた上層を濃縮することで(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸2.99g(27%)を含む淡黄色油状の残渣9.0gを得た。主な副生物はシクロヘキサンカルボン酸であった。
H−NMR(CDCl)ppm:1.10−1.39(m,6H,CH),1.70−1.86(m,5H,CH,CH),2.98(dd,1H,J=6.21,0.81 CH),3.30(d,1H,J=2.16,CH)。
シクロヘキサンカルボン酸:H−NMR(CDCl)ppm:1.10−1.39(m,6H,CH),1.70−1.86(m,4H,CH),2.35(m,1H,CH)。
実施例3:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸メチルの光学分割
[(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸メチルの合成]
(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸ナトリウム塩150gをメタノール1500mLに溶解し、硫酸53.6gを加えて、30〜40℃で5時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を3℃まで冷却し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを7.0〜7.5に調整した。この混合物を、外温30〜40℃で、80Torrまで減圧することにより、メタノールを留去した。ここへ水500mLを加え、1200mLのt−ブチルメチルエーテルで2回抽出した。このようにして得た有機層を濃縮し、目的とする(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸メチルを134g得た。
[SMB法による光学分割]
小型擬似移動床式クロマトグラフ分取装置(図1参照)を用いて、上記実施例で合成した(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸メチルの光学分割を行った。
運転を通して各種操作条件を調整し、得た最適運転条件を以下に記す。
カラム:ダイセル化学(株)製 CHRALPAK(登録商標)AD、
サイズ:φ3cm×10cm、
カラム本数:8本、
移動相:メタノール100%、
試料濃度:110g/l、
Feed流量:4.5mL/min、
Extract流量:79mL/min、
Raffinate流量:18mL/min、
Eluent流量:92.5mL/min、
Recycle流量:152mL/min、
Step time:1.18min。
小型擬似移動床式クロマトグラフ分取装置運転の結果得られた前成分(Raffinate)光学純度、後成分(Extract;目的とする異性体)光学純度および生産性を表1に記載する。最適運転条件により、目的化合物の(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸メチルを、目的とする光学純度98%e.e.以上の光学純度で得ることができた。その際の生産性(小型擬似移動床式クロマトグラフ分取装置に充填した分割剤の単位質量あたり、一日に取得できる光学活性体の質量)は、0.96kg−enan./kg−csp/dayだった。
このようにして得た(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸メチル1.0gを、5mLのメタノールに溶解し、5mLの1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて19℃で6時間撹拌した。反応終了後、40℃でメタノールを留去し、塩酸を加えて系を酸性とした後、メチルターシャリーブチルエーテルにより抽出することにより、目的とする(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸を0.89g(収率96%)得た。
実施例4:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸ベンジルの光学分割
実施例3と同じ小型擬似移動床式クロマトグラフ分取装置を用いて、実施例3に準じて合成した(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸ベンジルの光学分割を行った。
運転を通して各種操作条件を調整し、得た最適運転条件を以下に記す。
カラム:ダイセル化学(株)製 CHRALPAK(登録商標)AD、
サイズ:φ3cm×10cm、
カラム本数:8本、
移動相:メタノール100%、
試料濃度:120g/l、
Feed流量:3.5mL/min、
Extract流量:96mL/min、
Raffinate流量:13mL/min、
Eluent流量:105.5mL/min、
Recycle流量:169mL/min、
Step time:1.48min。
小型擬似移動床式クロマトグラフ分取装置運転の結果得られた前成分(Raffinate)光学純度、後成分(Extract;目的とする異性体)光学純度および生産性を表1に記載する。最適運転条件により、最適運転条件での目的化合物の(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸ベンジルを、目的とする光学純度98%e.e.以上の光学純度で得ることができた。その際の生産性(小型擬似移動床式クロマトグラフ分取装置に充填した分割剤の単位質量あたり、一日に取得できる光学活性体の質量)は、0.77kg−enan./kg−csp/dayだった。
このようにして得た(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸ベンジル1.0gを、5mLのメタノールに溶解し、5mLの1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて19℃で6時間撹拌した。反応終了後、40℃でメタノールを留去し、塩酸を加えて系を酸性とした後、t−ブチルメチルエーテルにより抽出することにより、目的とする(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸を0.61g(収率94%)得た。

実施例5:加水分解酵素を用いた(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルの光学分割による(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸またはそのエステルの生産
(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを基質とした加水分解反応での速度論的光学分割による(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の生産に適した酵素の探索、および(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを基質として速度論的光学分割により(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを残存させるような酵素の探索を次のように行った。(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルが100g/Lとなるように調製された0.1mLのジメチルスルフォキシド溶液に100mM KPB(pH7.0)を0.9mL加えて撹拌した。これに表2に示した各酵素粉末をそれぞれ記載した量を加え、30℃で撹拌させながら反応させた。反応液は0.1N−HClを1mL添加することにより停止させ、これを反応終了液とした。反応終了液を遠心分離し、不溶性成分を除去した後、生成した(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸またはそのエステルを以下に示す「分析方法1」で定量した。また、生成した(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸またはそのエステルの光学純度を以下に示す「分析方法2」で分析した。結果および使用した各酵素量および反応時間を表1に示す。各酵素の評価は、選択性の指標として、変換率と生成物(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸またはそのエステルの光学純度から導かれる鏡像体選択率(E値,E=ln[(1−c)(1−ee(S)]/ln[(1−c)(1+ee(S)]=ln[1−c(1+ee(P)]/ln[1−c(1−ee(P)],S:基質,P:生産物,c:変換率,ee:光学純度)を評価することによって行った。光学純度が正の値であるものは、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを基質として(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸を表に記載したE値で加水分解反応により生産するものであり、光学純度が負の値であるものは、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを基質として(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸エステルを表に記載したE値で残存させる酵素である。
「分析方法1」
カラム:Inertsil ODS−2(150mm×4.6mm)(GLサイエンス(株)製)
温度:40℃
検出:UV 210nm
溶離液:50mM KPB(pH2.5):アセトニトリル=6:4
流速:1.0mL/min
「分析方法2」
カラム:CHIRALPAK AS−H(ダイセル化学工業(株)製)
温度:25℃
検出:RI
溶離液:H/I/T=95/5/0.1
流速:1.0mL/min

実施例6:(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の光学分割(分別晶析)
(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸1gを酢酸エチル3gに溶解させた。溶解後(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン1gおよびt−ブチルメチルエーテル15gを加え混合し、0℃で15時間静置した。析出した結晶をろ過しt−ブチルメチルエーテル5gで洗浄し減圧下40℃で乾燥することで(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩0.86gを86%d.e.で得た。
[α]=+15.6,86%d.e.(CHCl,20℃,c=1.04)
(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩のd.e.および(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸のe.e.は以下の方法にて決定した。
(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩10mgにt−ブチルメチルエーテル1gおよび1N塩酸1gを加えよく振り混ぜた。上層を分取し、減圧下で溶剤を留去した。残渣をHPLCにて分析することのより、光学純度を決定した。
[分析条件]
カラム:CHIRALCEL OD−H、
カラム温度:25℃、
移動層:n−ヘキサン:2−プロパノール:トリフルオロ酢酸=90:10:0.1、
流量:1.0mL/min、
検出波長:220nm、
保持時間:目的物4.9min(2R,3S)体5.9min。
実施例7:2−アミノ−3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の光学分割((2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸の開環反応による)
室温で50mL三口フラスコに、(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸5.00g(純度:90.6wt%),2N−NaOH水溶液14.6mLを滴下した。40℃に加熱した撹拌溶液中へ、(R)−1−フェニルエチルアミン6.46gを35分かけて滴下後、90℃まで加熱した。さらに同温度で23.5時間撹拌した。反応溶液を放冷後、100mLビーカー中の2N−HCl水溶液26.6mL/t−ブチルメチルエーテル3.0mLの混合溶液へ、0〜10℃で反応溶液を逆滴下し、2−((1R)−1−フェニルエチルアミノ)−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸を晶出させた。三口フラスコを脱イオン水10mLでリンスした。この撹拌溶液のpHを3.0〜4.0に調整した。さらに室温下、30分撹拌した。このスラリー溶液をろ過し、脱イオン水50mLでリンスした。ろ物を一旦取り出し、100mLビーカー中で、脱イオン水50mLと1時間撹拌し、(R)−1−フェニルエチルアミンの塩酸塩を完全に除去した。この撹拌混合物をろ過し、脱イオン水/アセトン(25mL/25mL)で二回リンスした。この湿結晶を50〜60℃、真空条件下乾燥し、2−((1R)−1−フェニルエチルアミノ)−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸5.61g(71%)を僅かに茶色が着色した白色結晶として得た。
[ジアステレオ分割]
室温で10mLビーカー中、2−((1R)−1−フェニルエチルアミノ)−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸875mgの3N−NaOH水溶液2.0mL撹拌溶液(pH13.72)中へ、1N−HCl水溶液2.7mLを滴下した(pH11.0)。さらに同温度で2時間撹拌した。このスラリー溶液(pH11.5)をろ過し、脱イオン水、アセトンにてリンスした。得られた湿結晶を50〜60℃、真空乾燥条件下乾燥し、(2R,3R)−2−((1R)−1−フェニルエチルアミノ)−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸(211mg,23.5%,94.6%d.e.)を白色結晶として得た。目的物のジアステレオ比は、以下の条件でHPLC分析することにより決定した。
[HPLC分析条件]
カラム:YMC−Pack ODS−A,A−302(4.6mmI.D.×150mm)、
移動相:アセトニトリル/20mMリン酸二水素カリウム(pH3.0)=2/8
※リン酸にてpH調整、
検出波長:254nm、
カラム温度:30℃、
流量:1.0mL/min、
注入量:20μL、
保持時間:必要成分(R,R,R)体,13.5min.,不要成分(S,S,R)体,15.1min.、
サンプル:試料10mgをMeCN 4mLと1N−HClaq 1mLに溶解し調整した。
実施例8:(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸への誘導
100mLガラス内筒中の(2R,3R)−2−((1R)−1−フェニルエチルアミノ)−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸1.31g(88.9%d.e.)へ、MeOH7.9mLおよび1N−NaOH水溶液2.3mLを滴下した。引き続き、Pd(OH)/C 131mg(Aldrich,Lot.02709KF,Pd content20%,Moisuture content≦50%)を添加した。これをオートクレーブへ移し、オートクレーブ内を、N置換(5.0kgf/cm×3),漏れテスト(5.0kgf/cm),H置換(5.0kgf/cm×3)後、H充填(5.0kgf/cm)し、50℃で加熱撹拌した。さらに同温度で4時間撹拌した。放冷・解圧後、3N−NaOH水溶液0.75mLを滴下し、30分撹拌した。Pd(OH)/Cをろ別後、脱イオン水2.0mLでリンスした。得られたろ液へ、室温でBocO1.18gを加え、27〜33.5℃で18時間撹拌した。TLC(下記条件)にて原料消失を確認、反応溶液を濃縮後、t−ブチルメチルエーテル8.0mLを加えた。水層のpHを3N−NaOH水溶液でpH13とし、不純物を逆抽出した。氷冷下、この分液下層水へ1N−HCl水溶液を滴下し、pH3.25にて(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸を晶出させた。氷冷下、粘性の高い状態で晶出してきたため、これを室温下撹拌することで結晶として得た。1時間撹拌後、pH3.2に調整し、さらに30分撹拌した。晶出溶液をろ過し、脱イオン水でリンスした。得られた湿結晶を50〜60℃、真空条件下乾燥し、(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸908mg(70%,93.3%e.e.)を白色結晶として得た。
[TLC分析条件]
展開溶媒:n−BuOH/AcOH/HO=4/2/1、
発色剤:ニンヒドリン、
Rf値:原料(脱フェネチル体)0.54,BCHP0.88、
目的物のジアステレオ比は以下の条件でのHPLC分析で決定した。
[HPLC分析条件]
カラム:CHIRALCEL OD−H(4.6mmφ×250mmL)、
移動相:Hex/IPA/TFA=95/5/0.1、
検出機器:UV,210nm、
カラム温度:室温、
流量:1.0mL/min、
注入量:20μL、
保持時間:不要成分(R,S)体,6.89min.,必要成分(R,R)体,8.38min.、
サンプル:10mgを移動相20mLに溶解した。
【産業上の利用可能性】
本発明の方法によって効率的に製造される3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸、特に(2R,3R)−2−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸は、医薬品の原料(例えば、抗エイズ薬)として有用である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(4)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(5)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(6)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(7)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンを用いて塩とした後、光学分割し、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸の光学活性アミン塩とし、酸処理して3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸を得、次いでアンモニアを用いてエポキシ基を開環した後、保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(4)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(5)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(6)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(7)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンを用いて、塩とした後、光学分割することを特徴とする、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物と光学活性アミンとの塩の製造方法。
【請求項3】
3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とアンモニアを用いて、エポキシ基を開環し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
塩が(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩である請求の範囲1、2または3記載の製造方法。
【請求項5】
3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物と
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(4)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(5)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(6)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(7)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンとの塩。
【請求項6】
3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物の3位の置換基が、置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である請求の範囲5記載の塩。
【請求項7】
3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸化合物の3位の置換基が、1−メチルエチル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−1−シクロペンテン−4−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基である請求の範囲6記載の塩。
【請求項8】
(2S,3R)−3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン塩である請求の範囲7記載の塩。
【請求項9】
3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン、
(4)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(5)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(6)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(7)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(8)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンと反応させてエポキシ基を開環し、光学分割し、一般式(I)

(式中、Rは置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表わし、Rは保護されたアミノ基であり、(R)−1−フェニルエチルアミノ基、(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミノ基、(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミノ基、(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミノ基、(R)−β−メチルフェニルエチルアミノ基、(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミノ基、(1R,2S)−1,2−ジフェニルエタノール−2−アミノ基、または(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミノ基を表わす。)
で示される化合物とし、次いで脱保護反応に付した後、保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法。
【請求項10】
3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで
(1)(R)−1−フェニルエチルアミン、
(2)(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミン、
(3)(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミン、
(4)(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミン、
(5)(R)−β−メチルフェニルエチルアミン、
(6)(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、
(7)(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、または
(8)(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
から選択される光学活性アミンと反応させてエポキシ基を開環し、光学分割することを特徴とする一般式(I)

(式中の記号は請求項9と同じ意味を表わす。)
で示される化合物の製造方法。
【請求項11】
一般式(I)

(式中の記号は請求項9と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を脱保護反応に付し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法。
【請求項12】
一般式(I)

(式中、Rは置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表わし、Rは保護されたアミノ基であり、(R)−1−フェニルエチルアミノ基、(R)−1−(4−メチルフェニル)エチルアミノ基、(S)−N,N−ジメチル−1−フェニルエチルアミノ基、(+)−シス−N−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキシルアミノ基、(R)−β−メチルフェニルエチルアミノ基、(R)−N−ベンジル−1−フェニルエチルアミノ基、(1R,2S)−1,2−ジフェニルエタノール−2−アミノ基、または(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミノ基を表わす。)
で示される化合物。
【請求項13】
が(R)−1−フェニルエチルアミノ基である請求の範囲11記載の化合物。
【請求項14】
化合物が(2R,3R)−2−((R)−1−フェニルエチル)アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸である請求の範囲13記載の化合物。
【請求項15】
3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで必要に応じてエステル化した後、クロマトグラフィーにより、光学分割し、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸誘導体とし、次いでアンモニアを用いて、エポキシ基を開環し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2R,3R)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法。
【請求項16】
3−置換−トランス−2−プロペン酸をタングステン酸またはその塩の存在下、過酸化水素で処理して、3−置換−(2S,3R)−2,3−エポキシプロピオン酸とし、次いで必要に応じてエステル化した後、クロマトグラフィーにより、光学分割し、3−置換−(2R,3S)−2,3−エポキシプロピオン酸誘導体とし、次いでアンモニアを用いて、エポキシ基を開環し、次いで保護基を導入する反応に付すことを特徴とする、3−置換−(2S,3S)−2−保護されたアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸誘導体の製造方法。
【請求項17】
2位のアミノ基の保護基がt−ブトキシカルボニル基またはベンジルオキシカルボニル基である請求の範囲1、3、9、11、15または16記載の製造方法。
【請求項18】
2位のアミノ基の保護基がt−ブトキシカルボニル基である請求の範囲1、3、9、11、15または16記載の製造方法。
【請求項19】
3位の置換基が1−メチルエチル基、1−エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−シクロペンテン−4−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基である請求の範囲1〜3、9〜11、15〜17のいずれかに記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/040099
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515044(P2005−515044)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016070
【国際出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】