説明

3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸およびそのエステルの合成

本願は、不飽和部位および/または酸素官能基も含有する化合物に、モリブデンVI/VIIペルオキソ錯体で媒介されるオキシム官能基の直接的(1ステップ)酸化によって、ニトロ基官能基を導入する方法を提供し、該方法は、(a)オキシム官能基を含有する式Iの基質を提供するステップ(化学式は、紙面の要約に見られるようにここに挿入されるべきであり、式中、RおよびRは、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル基および直鎖、分枝、または環式アルケニル基から独立に選択され、但し、RまたはRの少なくとも一方は、炭素/炭素二重結合を含有する)、ならびに(b)式Iの前記基質をモリブデン酸化錯体と接触させて、前記オキシム官能基をニトロ官能基に酸化して、式IIIの構造を得るステップを含む。化学式は、紙面の要約に見られるようにここに挿入されるべきである。式中、RおよびRは、先に定義の通りである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本願は、ペルオキソモリブデン酸化錯体で媒介されるオキシムの酸化によって、ニトロ置換化合物を調製する新規方法に関する。より具体的には、本発明は、対応するオキシムの直接酸化による、不飽和官能基を含有するニトロ置換化合物の調製を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
トロンビンは、異なる細胞型において様々な活性を有することが知られており、トロンビン受容体は、ヒト血小板、血管平滑筋細胞、内皮細胞、および線維芽細胞などの細胞型に存在することが知られている。したがって、トロンビン受容体アンタゴニストは、血栓疾患、炎症性疾患、アテローム硬化性疾患、および線維増殖性疾患、ならびにトロンビンおよびその受容体が病理学的役割を担う他の疾患の治療に有用となることが期待される。
【0003】
トロンビン受容体アンタゴニストペプチドは、構造活性研究を基にして同定され、トロンビン受容体上でのアミノ酸の置換を含む。非特許文献1には、テトラ−およびペンタペプチドが、強力なトロンビン受容体アンタゴニスト、例えばN−トランス−シンナモイル−p−フルオロPhe−p−グアニジノPhe−Leu−Arg−NHおよびN−トランス−シンナモイル−p−フルオロPhe−p−グアニジノPhe−Leu−Arg−Arg−NHであると開示されている。ペプチドトロンビン受容体アンタゴニストも、1994年2月17日公開のWO94/03479に開示されている。
【0004】
ヒンバシン、ピペリジンアルカロイドは、ムスカリン性受容体アンタゴニストとして同定されている。(+)−ヒンバシンの全合成は、Chackalamannilら、J.Am.Chem Soc.、118、9812〜9813頁(1996年)に開示されている。
【0005】
トロンビン受容体アンタゴニストは、当技術分野で知られている。かかる化合物の例は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1に開示されており、トロンビン受容体アンタゴニストは、血栓疾患、炎症性疾患、アテローム硬化性疾患、および線維増殖性疾患、ならびにトロンビンおよびその受容体が病理学的役割を担う他の疾患の治療に有用である。
【0006】
ヒンバシン類似体を調製するための様々な方法が当技術分野では説明されている。特許文献1に開示のものに加えて、ヒンバシン類似体の調製方法を説明している他の同時継続の出願には、全て2006年1月12日に出願され、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/331,324号、同第11/330,935号、同第11/330,936号、および同第11/330,521号が含まれる。以下のスキームVIIに例示されるように、これらの出願に開示されている方法の1つでは、経口投与可能なトロンビン受容体アンタゴニスト(11)の調製方法において、中間体である化合物3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸(6)を使用する。同時継続の米国特許出願第11/331,324号(’324出願)および第11/330,936号(’936出願)のそれぞれには、ヒンバシン類似体の調製において、3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸を中間体として利用する方法も開示されている。1つの予備スキームの一例が、’324出願に記載の以下のスキームVIIであり、これは、ヒンバシン類似体化合物11を提供するにおいて、酸(スキームVIIの化合物6)を利用するものである。
【0007】
【化1】


【0008】
参照によって本明細書に組み込まれる’324および’936出願には、アクロレインおよびニトロメタンからの3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸の調製が記載されている。しかし、記載されている該方法は、多数の方法ステップを必要とし、低収率および低純度の酸をもたらし、適切な純粋な材料を提供するための追加のステップを必要とする。
【0009】
酸中間体の調製を改善する1つの可能な手法は、3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸のオキシム類似体(以下に例示の式IAの化合物)を単離し、次いでオキシム官能基をニトロ官能基に酸化することである。
【0010】
当技術分野では、オキシムを、対応するニトロ化合物に酸化するための様々な反応が知られている。例えば、Olahら、SYNLETT、337〜39頁(1992年4月)には、氷酢酸中で過ホウ酸ナトリウムを使用して、対応するオキシムからニトロ化合物を形成することが記載されている。EmmonsおよびPagano、J.Am.Chem.Soc.、77、4557〜59頁(1955年)は、酸化剤としてペルオキシトリフルオロ酢酸を使用する。BoseおよびVanajathaは、アセトニトリル中でOXONE(ペルオキシモノ硫酸カリウム)を使用して、オキシムをニトロアルカンに酸化する(Synth.Common.、28、4531〜4535頁(1998年))。IfflandおよびYen、J.Am.Chem.Soc.、76、4083〜85頁(1954年)には、N−ブロモ−アセトアミドおよび酸化亜鉛を使用して、対応するオキシムからニトロアルカンを調製することが開示されている。Ifflandによって開示されている他の方法は、J.Am.Chem.Soc.、75、4044〜46頁および4047〜4048頁(1954年)およびJ.Am.Chem.Soc.、75、4083〜85頁(1954年)に記載されている。これらの酸化方法のそれぞれは、オキシム中に存在する他の酸化しやすい基、例えば不飽和結合、例えば炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合を酸化すると思われる試薬および条件を使用して実施される。したがってこれらの方法は、例えば、対応するオキシムの酸化によって3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸を提供するには不適切であろう。
【0011】
アニオン性モリブデン−ペルオキソ錯体は、非極性溶媒中での第1級および第2級アルコールの効果的な酸化剤となることが、当技術分野では知られている。Bortoliniら、J.Org.Chem.、52、5467〜69頁(1987年)参照。Ballistreriら、SYNLETT、1093〜4頁(1996年11月)には、アセトニトリル中Mo(VI)オキシジペルオキソ錯体触媒を使用することによって、アルキルオキシムを対応するニトロアルカンに酸化することが記載されているが、それに開示されている化合物は、オキシム置換基以外の反応性官能基を含有していないものであった。
【0012】
TamamiおよびYeganeh、Eur.Polym.J.35、1445〜1450頁(1999年)には、2つのポリマー担持アニオン性ペルオキソモリブデン化合物が記載されており、これは、オキシムを含む様々な有機化合物のための酸化剤として使用することができるが、これらの試薬は、オキシムから対応するアルデヒドを生成することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,063,847号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Bernatowiczら、J.Med.Chem.、39、4879〜4887頁(1996年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(発明の目的)
前述を考慮すると、他の反応性官能基を含有するオキシムから、ニトロ含有化合物を直接合成する新規方法が依然必要とされている。さらに、オキシムを十分に選択的なニトロ官能基に酸化して、該方法において基質部分にも存在する二重結合(複数)が、少なくとも実質的な度合いまでは酸化されず、または異性化されないようにする効率的な方法が依然必要とされている。さらに、トロンビン受容体アンタゴニストとして有用な化合物の合成、ならびにこれらの化合物を調製するために使用される中間体の合成に関連して、二重結合および追加の酸化しやすい官能基を含有する基質に存在するオキシム官能基を酸化する、効率的で選択的な方法を開発する必要がある。
【0016】
トロンビン受容体アンタゴニストの重要性を考慮すると、かかるアンタゴニストを提供するための中間体のかつてない新規な調製方法が、常に関心の対象となっている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
これらおよび他の利点が、本発明によって満たされる。
【0018】
一実施形態では、本発明は、不飽和部位および/または酸素官能基も含有する化合物に、モリブデンVI/VIIペルオキソ錯体で媒介されるオキシム官能基の直接的(1ステップ)酸化によって、ニトロ基官能基を導入する方法を提供し、該方法は、
(a)オキシム官能基を含有する式Iの基質を提供するステップ
【0019】
【化2】

(式中、RおよびRは、カルボン酸、エステル、ハロ、フェニル、シアノ、アルキル、アルケニルアリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、−N(アルキル)、−N(シクロアルキル)、−カルボキシ、および−C(O)O−アルキル官能基で、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル基および直鎖、分枝、または環式アルケニル基から独立に選択されるか、あるいはRおよびRが一緒になって、直鎖、分枝、または環式アルキルおよび直鎖、分枝、または環式アルケニル官能基から選択される1つまたは複数の基で、任意で置換されたシクロアルケニル置換基を形成し、そのそれぞれは、アルケニル、−カルボキシ、エステル、ハロ、フェニル、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、−N(アルキル)、および−N(シクロアルキル)、官能基で、任意で置換されていてもよく、但し、RまたはRの少なくとも一方は、炭素/炭素二重結合を含有する)、ならびに
(b)式Iの前記基質をモリブデン酸化錯体と接触させて、前記オキシム官能基をニトロ官能基に酸化して、式III
【0020】
【化3】

(式中、RおよびRは、先に定義の通りである)
の構造を得るステップを含む。
【0021】
本方法の幾つかの実施形態では、ステップ「b」で使用されるモリブデン酸化錯体は、式IIのモリブデン酸化錯体である。
【0022】
【化4】

式中、Rはベンジル基またはアリール基であり、そのそれぞれは、アルキル置換基で任意で置換されており、Rは、12個までの炭素原子の直鎖、分枝、または環式アルキルから選択される。式IIのモリブデン酸化錯体が使用される場合、酸化される基質の量に対して少なくとも1当量の錯体を添加することが好ましい。殆どの適用について、酸化される基質の量に対して1当量を超える量の式IIの錯体を使用することがより好ましい。式IIのモリブデン酸化錯体が使用される場合、極性の非プロトン性溶媒中で、より好ましくはアセトンおよびアセトニトリルから選択される溶媒中で反応を実施することが好ましい。好ましくは、反応は約0℃〜約100℃の温度で実施される。
【0023】
本発明の方法の幾つかの実施形態では、モリブデン酸化錯体は、モリブデン酸ナトリウムおよび過酸化物(本明細書では便宜上、時に「NaMolyOx」と呼ぶ)を反応媒体に個別に、または同時に添加することによって調製される。使用されるモリブデン酸化錯体がNaMolyOxである場合、酸化される基質のモル数に対して、モリブデン酸ナトリウム約0.1当量〜約2.0当量、より好ましくはモリブデン酸ナトリウム約0.5当量〜約1.5当量、より好ましくはモリブデン酸ナトリウム1.0当量に等しい量のモリブデン酸ナトリウムを使用することが好ましい。同様に、NaMolyOx錯体が使用される場合、酸化される基質のモル数に対して、過酸化物約1.0当量〜約3.0当量、より好ましくは過酸化物約1.2当量〜約2.0当量、より好ましくは過酸化物1.5当量に等しい量の過酸化物を使用することが好ましい。NaMolyOx錯体が使用される場合、水混和性溶媒、例えば、アセトニトリル(ACN)、アセトン、およびジメチルホルムアミド(DMF)を含む溶媒中で反応を実施することが好ましい。好ましくは、反応は、約0℃〜約100℃の温度、より好ましくは約40℃〜約60℃の温度で実施される。
【0024】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式IAの化合物の構造を有する。
【0025】
【化5】

式中、Rは、H、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル、および任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルケニルであり、任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルの1つまたは複数から選択され、そのそれぞれは任意で置換されている。
【0026】
したがって、モリブデン酸化錯体での処理後、式IIIAの構造を有する化合物が提供される。
【0027】
【化6】

式中、「R」は先に定義の通りである。
【0028】
幾つかの好ましい実施形態では、式IAのオキシムは、
(a)式IVの構造の保護ケタール化合物を提供するステップ、
【0029】
【化7】

(b)式IVの化合物を加水分解し、したがって式IVの化合物からケタール保護基を除去して、式Vの化合物を形成するステップ、
【0030】
【化8】

ならびに
(c)式Vの化合物をヒドロキシルアミンと接触させて、式Vの化合物を式IAの構造のオキシムに変換するステップ
【0031】
【化9】

を含む方法によって調製される。
【0032】
酸化されるオキシムを提供するためのこの方法を利用する本発明の幾つかの実施形態では、変換ステップ「c」は、ステップ「b」で調製されたケトンを単離することなく、ステップ「b」で形成されたケトンの溶液にヒドロキシルアミンをin situで添加することによって実施される。酸化されるオキシムを提供するためのこの方法を利用する本発明の幾つかの実施形態では、ケトンは、加水分解ステップ「b」の実施後に単離され、オキシム形成ステップ「c」は、加水分解とは別の時間および/または空間で実施される。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式IBの化合物の構造を有する。
【0034】
【化10】

式中、「R」は先に定義の通りであり、本方法によるオキシムの酸化によって、式IB’の構造の化合物が提供される。
【0035】
【化11】

式IBの構造のオキシム化合物が使用される場合、モリブデン酸ナトリウムおよび過酸化物(NaMolyOx)によって提供されるモリブデン酸化錯体を使用して、酸化反応を実施することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の説明)
先におよび本明細書を通して使用されるように以下の用語は、別段の指定がない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0037】
「ニトロ含有化合物」は、少なくとも1つのニトロ官能基(即ち、−NO基)を含有する任意の有機化合物を意味する。
【0038】
「オキシム」は、少なくとも1つのオキシム官能基(即ち、−C=N−OH基)を含有する任意の有機化合物を意味する。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、Wikipedia、http://en.wilkipedia.org/wilki/oxime参照。
【0039】
「アルキル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、鎖中に約1〜約20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖中に約1〜約12個の炭素原子を含有する。より好ましいアルキル基は、鎖中に約1〜約6個の炭素原子を含有する。分枝とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、直鎖アルキル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキル」は、直鎖であっても分枝であってもよい鎖中に約1〜約6個の炭素原子を有する基を意味する。「置換アルキル」という用語は、アルキル基が、同じでも異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいことを意味し、各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルからなる群から独立に選択される。適切なアルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびt−ブチルが含まれる。
【0040】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有し、直鎖あっても分枝であってもよく、鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルケニル基は、鎖中に約2〜約12個の炭素原子、より好ましくは鎖中に約2〜約6個の炭素原子を有する。分枝とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、直鎖アルケニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルケニル」は、直鎖であっても分枝であってもよい鎖中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。適切なアルケニル基の非限定的な例には、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニル、およびデセニルが含まれる。「置換アルケニル」という用語は、アルケニル基が、同じでも異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいことを意味し、各置換基は、アルキル、アリールおよびシクロアルキル、カルボン酸、エステル、ハロ、フェニル、シアノ、アルキル、アルケニルアリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、−N(アルキル)、−N(シクロアルキル)、−カルボキシ、および−C(O)O−アルキル官能基からなる群から独立に選択される。
【0041】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有し、直鎖であっても分枝であってもよく、鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、鎖中に約2〜約12個の炭素原子、より好ましくは鎖中に約2〜約4個の炭素原子を有する。分枝とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、直鎖アルキニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキニル」は、直鎖であっても分枝であってもよい鎖中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。適切なアルキニル基の非限定的な例には、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、および3−メチルブチニルが含まれる。「置換アルキニル」という用語は、アルキニル基が、同じでも異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいことを意味し、各置換基は、アルキル、アリール、およびシクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0042】
「アリール」という用語は、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは約6〜約10個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式環系を意味する。アリール基は、同じでも異なっていてもよい本明細書で定義される1つまたは複数の「環系置換基」で、任意で置換することができる。適切なアリール基の非限定的な例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0043】
「ヘテロアリール」は、約5〜約14個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む芳香族単環式または多環式環系を意味し、その中の環原子の1つまたは複数は、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、または硫黄の単独または組合せである。好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を含有する。「ヘテロアリール」は、同じでも異なっていてもよい本明細書で定義される1つまたは複数の「環系置換基」で、任意で置換することができる。ヘテロアリールの根幹名の前の接頭辞アザ、オキサ、またはチアは、それぞれ少なくとも1つの窒素、酸素、または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、対応するN−オキシドに任意で酸化することができる。適切なヘテロアリールの非限定的な例には、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリル等が含まれる。
【0044】
「シクロアルキルエーテル」は、1つの酸素原子および2〜6個の炭素原子を含む、3〜7員の非芳香族環を意味する。環の酸素に隣接している置換基が、酸素、窒素または硫黄原子を介して環に結合したハロまたは置換基を含まない場合、環の炭素原子を置換することができる。
【0045】
「シクロアルケニル」は、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する非芳香族単環式または多環式環系を意味する。シクロアルケニル環は、同じでも異なっていてもよい先に定義されている1つまたは複数の環系置換基で、任意で置換することができる。好ましいシクロアルケニル環は、約5〜約7個の環原子を含有する。適切な単環式シクロアルケニルの非限定的な例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等が含まれる。適切な多環式シクロアルケニルの非限定的な例はノルボルニレニルである。
【0046】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アリールおよびアルキルが先に記載の通りである、任意の置換基を含むアリール−アルキル−基を意味する。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例には、ベンジル、2−フェネチル、およびナフタレニルメチルが含まれる。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0047】
「アルキルアリール」は、アルキルおよびアリールが先に記載の通りである、任意の置換基を含むアルキル−アリール基を意味する。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例はトリルである。親部分への結合は、アリールを介する。
【0048】
「シクロアルキル」は、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む、非芳香族の単環式または多環式環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5〜約7個の環原子を含有する。シクロアルキルは、同じでも異なっていてもよく先に定義されている1つまたは複数の「環系置換基」で、任意で置換されていてもよい。適切な単環式シクロアルキルの非限定的な例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が含まれる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的な例には、1−デカリニル(decalinyl)、ノルボルニル、アダマンチル等が含まれる。
【0049】
「アリールシクロアルキル」は、本明細書で定義されているアリールおよびシクロアルキルが縮合したものに由来する基を意味する。好ましいアリールシクロアルキルは、アリールがフェニルであり、シクロアルキルが約5〜約6個の環原子からなるものである。アリールシクロアルキルは、1つまたは複数の「環系置換基」で、任意で置換することができる。適切なアリールシクロアルキルの非限定的な例には、インダニルおよび1,2,3,4−テトラヒドロナフチル等が含まれる。親部分への結合は、非芳香族炭素原子を介する。
【0050】
「アリールヘテロシクロアルキル」は、本明細書で定義されているアリールおよびヘテロシクロアルキルが縮合したものに由来する基を意味する。好ましいアリールシクロアルキルは、アリールがフェニルであり、ヘテロシクロアルキルが約5〜約6個の環原子からなるものである。アリールヘテロシクロアルキルは、1つまたは複数の「環系置換基」で、任意で置換することができる。適切なアリールヘテロシクロアルキルの非限定的な例には、
【0051】
【化12】

が含まれる。
【0052】
親部分への結合は、非芳香族炭素原子を介する。
【0053】
「アルコキシ」は、アルキル基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアルキル−O−基を意味する。適切なアルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、およびヘプトキシが含まれる。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0054】
「アルキオキシアルキル」は、任意の置換基を含む、先に記載の通りのアルコキシおよびアルキルに由来する基を意味する。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0055】
「アリールアルケニル」は、任意の置換基を含む、先に記載の通りのアリールおよびアルケニルに由来する基を意味する。好ましいアリールアルケニルは、アリールがフェニルであり、アルケニルが約3〜約6個の原子からなるものである。親部分への結合は、非芳香族炭素原子を介する。
【0056】
「アリールアルキニル」は、任意の置換基を含む、本明細書で定義の通りのアリールおよびアルケニルに由来する基を意味する。好ましいアリールアルキニルは、アリールがフェニルであり、アルキニルが約3〜約6個の原子からなるものである。親部分への結合は、非芳香族炭素原子を介する。
【0057】
アルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル等に付く接尾辞「エン」は、二価の部分を示し、例えば−CHCH−はエチレンであり、
【0058】
【化13】

は、パラ−フェニレンである。
【0059】
「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましいのは、フッ素、塩素、または臭素であり、より好ましいのは、フッ素および塩素である。
【0060】
「環系置換基」は、芳香族または非芳香族環系に結合した、例えば該環系の利用可能な水素を置換する置換基を意味する。環系置換基は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立に、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−、およびYNSO−からなる群から選択され、ここでYおよびYは、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から独立に選択される。
【0061】
「ヘテロシクリル」は、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む非芳香族飽和単環式または多環式環系を意味し、該環系の原子の1つまたは複数は、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、または硫黄の単独または組合せである。該環系中には、隣接する酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含有する。ヘテロシクリルの根幹名の前の接頭辞アザ、オキサ、またはチアは、それぞれ少なくとも1つの窒素、酸素、または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリル環中に、例えば−N(Boc)、−N(CBz)、−N(Tos)基などの保護された任意の−NHが存在することができ、かかる保護部分も、本発明の一部分とみなされる。ヘテロシクリルは、同じでも異なっていてもよい本明細書で定義されている1つまたは複数の「環系置換基」で、任意で置換されていてもよい。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は、対応するN−オキシド、S−オキシド、またはS,S−ジオキシドに任意で酸化することができる。適切な単環式ヘテロシクリル環の非限定的な例には、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル等が含まれる。
【0062】
本発明のヘテロシクリル環系では、N、O、またはSに隣接する炭素原子上のヒドロキシル基は存在せず、別のヘテロ原子に隣接する炭素上のNまたはS基も存在しないことに留意されたい。したがって、例えば環
【0063】
【化14】

において、2および5を記した炭素に直接結合する−OHは存在しない。
【0064】
「アルキニルアルキル」は、アルキニルおよびアルキルが先に定義の通りである、任意の置換基を含むアルキニル−アルキル−基を意味する。好ましいアルキニルアルキルは、低級アルキニルおよび低級アルキル基を含有する。親部分への結合は、アルキルを介する。適切なアルキニルアルキル基の非限定的な例には、プロパルギルメチルが含まれる。
【0065】
「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールおよびアルキルが先に定義の通りである、任意の置換基を含むヘテロアリール−アルキル−基を意味する。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含有する。適切なアラルキル基の非限定的な例には、ピリジルメチルおよびキノリン−3−イルメチルが含まれる。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0066】
「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリルおよびアルキルが先に定義の通りである、任意の置換基を含むヘテロシクリル−アルキル基を意味する。好ましいヘテロシクリルアルキルは、低級アルキル基を含有する。適切なヘテロシクリルアルキル基の非限定的な例には、ピペリジルメチル、ピペリジルエチル、ピロリジルメチル、モルホリニルプロピル、ピペラジニルエチル、アジンジル(azindyl)メチル、アゼチジルエチル、オキシラニルプロピル等が含まれる。親部分への結合は、アルキル基を介する。
【0067】
「ヘテロシクレニル」(または「ヘテロシクロアルケニル」)は、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含有する非芳香族単環式または多環式環系を意味し、該環系の原子の1つまたは複数は、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、または硫黄の単独または組合せである。該環系中には、隣接する酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクレニル環は、約5〜約6個の環原子を含有する。ヘテロシクレニルの根幹名の前の接頭辞アザ、オキサ、またはチアは、それぞれ少なくとも1つの窒素、酸素、または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロシクレニルは、1つまたは複数の環系置換基で、任意で置換することができ、ここで「環系置換基」は先に定義の通りである。ヘテロシクレニルの窒素または硫黄原子は、対応するN−オキシド、S−オキシド、またはS,S−ジオキシドに任意で酸化することができる。適切な単環式アザヘテロシクレニル基の非限定的な例には、1,2,3,4−テトラヒドロピリジル、1,2−ジヒドロピリジル、1,4−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル等が含まれる。適切なオキサヘテロシクレニル基の非限定的な例には、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニル等が含まれる。適切な多環式オキサヘテロシクレニル基の非限定的な例は、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニルである。適切な単環式チアヘテロシクレニル環の非限定的な例には、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニル等が含まれる。
【0068】
「ヒドロキシアルキル」は、アルキルが先に定義の通りの、任意の置換基を含むHO−アルキル−基を意味する。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含有する。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的な例には、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが含まれる。
【0069】
「アシル」は、カルボン酸基の−OHが、幾つかの他の置換基で置換された有機酸基を意味する。適切な非限定的な例には、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、ヘテロシクリル−C(O)−、およびヘテロアリール−C(O)−基が含まれ、その様々な基は、先に記載される通りである。親部分との結合は、カルボニルを介する。好ましいアシルは、低級アルキルを含有する。適切なアシル基の非限定的な例には、ホルミル、アセチル、およびプロパノイルが含まれる。
【0070】
「アロイル」は、アリール基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアリール−C(O)−基を意味する。親部分への結合は、カルボニルを介する。適切な基の非限定的な例には、ベンゾイルおよび1−ナフトイルが含まれる。
【0071】
「アルコキシ」は、アルキル基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアルキル−O−基を意味する。適切なアルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、およびn−ブトキシが含まれる。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0072】
「アリールオキシ」は、アリール基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアリール−O−基を意味する。適切なアリールオキシ基の非限定的な例には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0073】
「アラルキルオキシ」は、アラルキル基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアラルキル−O−基を意味する。適切なアラルキルオキシ基の非限定的な例には、ベンジルオキシおよび1−または2−ナフタレンメトキシが含まれる。親部分への結合は、エーテル酸素を介する。
【0074】
「アルキルチオ」は、アルキル基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアルキル−S−基を意味する。適切なアルキルチオ基の非限定的な例には、メチルチオおよびエチルチオが含まれる。親部分への結合は、硫黄を介する。
【0075】
「アリールチオ」は、アリール基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアリール−S−基を意味する。適切なアリールチオ基の非限定的な例には、フェニルチオおよびナフチルチオが含まれる。親部分への結合は、硫黄を介する。
【0076】
「アラルキルチオ」は、アラルキル基が先に記載の通りである、任意の置換基を含むアラルキル−S−基を意味する。適切なアラルキルチオ基の非限定的な例は、ベンジルチオである。親部分への結合は、硫黄を介する。
【0077】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的な例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0078】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール−O−C(O)−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例には、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが含まれる。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0079】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例は、ベンジルオキシカルボニルである。親部分への結合は、カルボニルを介する。
【0080】
「アルキルスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルであるものである。親部分への結合は、スルホニルを介する。
【0081】
「アリールスルホニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。親部分への結合は、スルホニルを介する。
【0082】
同様に、「ヘテロアリールアルキル」、「シクロアルキルアルキル」、および「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびアルキルが先に記載された通りのヘテロアリール−、シクロアルキル−、またはヘテロシクロアルキル−アルキル−基を意味する。また、「アリールシクロアルキルアルキル」、「ヘテロアリールシクロアルキルアルキル」、「アリールヘテロシクロアルキルアルキル」、「ヘテロアリールヘテロシクロアルキルアルキル」、「ヘテロアリールシクロアルキル」、「ヘテロアリールヘテロシクロアルキル」、「アリールシクロアルケニル」、「ヘテロアリールシクロアルケニル」、「ヘテロシクロアルケニル」、「アリールヘテロシクロアルケニル」、「ヘテロアリールヘテロシクロアルケニル」、「シクロアルキルアリール」、「ヘテロシクロアルキルアリール」、「ヘテロシクロアルケニルアリール」、「ヘテロシクロアルキルヘテロアリール」、「シクロアルケニルアリール」、および「ヘテロシクロアルケニルアリール」という用語も同様に、任意の置換基を含む、先に記載の基アリール−、シクロアルキル−、アルキル−、ヘテロアリール−、ヘテロシクロアルキル−、シクロアルケニル−、およびヘテロシクロアルケニル−の組合せによって表されることを理解されたい。好ましい基は、低級アルキル基を含有する。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0083】
「任意で置換された」という用語は、1つまたは複数の利用可能な位置における、特定の基、ラジカル、または部分での任意の置換を意味する。
【0084】
シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキル部分の置換には、環部分および/または基のアルキル部分での置換が含まれる。
【0085】
1つの基に2回以上変数が現れる、または構造中に2回以上変数が現れる場合、それらの変数は、同じでも異なっていてもよい。
【0086】
化合物の部分(例えば、置換基、基、または環)の数に関して別段定義されない限り、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」という句は、化学的に許容されるだけの数の部分であり得ることを意味し、かかる部分の最大数の決定は当業者に知られている。
【0087】
「置換された」という用語は、指定された原子上の1つまたは複数の水素が、企図された群から選択されたものによって置換されることを意味し、但し、現状の下で指定された原子の通常の原子価を超えず、その置換によって安定な化合物が得られるものとする。置換基および/または変数の組合せは、かかる組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。「安定な化合物」または「安定な構造」は、反応混合物から有用な度合いの純度に単離し、有効な治療剤に配合されるまで残るのに十分強力な化合物を意味する。
【0088】
「任意で置換された」という用語は、特定の基、ラジカル、または部分での任意の置換を意味する。
【0089】
本明細書の本文、スキーム、および実施例の未充足の原子価を有する任意のヘテロ原子は、その原子価を満たすための水素原子を有すると推定されることにも留意されたい。
【0090】
化合物中の官能基が「保護されている」と呼ばれる場合、これは化合物が反応を受ける際に、その基が、保護部位での望ましくない副反応を排除するための改変形態になっていることを意味する。適切な保護基は、当業者によって認識され、例えばT.W.Greeneら、Protective Groups in organic Synthesis(1991年)、Wiley、New Yorkなどの標準書を参照することによって認識されよう。
【0091】
任意の変数が、任意の構成要素または式に2回以上発生する場合、各存在についてのその定義は、他の発生ごとにその定義は独立している。
【0092】
本明細書で使用される「塩(複数)」という用語は、無機および/または有機酸で形成された酸性塩、ならびに無機および/または有機塩基で形成された塩基性塩を示す。さらに化合物が、それに限定されるものではないがピリジンまたはイミダゾールなどの塩基性部分と、それに限定されるものではないがカルボン酸などの酸性部分の両方を含有する場合、両性イオン(「内塩」)を形成することができ、本明細書で使用される「塩(複数)」という用語に含まれる。医薬として許容可能な(即ち、非毒性の生理学的に許容可能な)塩が好ましいが、他の塩も有用である。化合物の塩は、例えば、塩が沈殿するものなどの媒体または水性媒体中で、化合物を当量などの量の酸または塩基と反応させた後、凍結乾燥させることによって形成することができる。
【0093】
例示的な酸付加塩には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られる)等が含まれる。さらに、基本的な医薬化合物から医薬として有用な塩を形成するのに適していると一般にみなされている酸は、例えばS.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977年)66(1)、1〜19頁;P.Gould、International J.of Pharmaceutics(1986年)33 201〜217頁;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996年)、Academic Press、New Yorkによって、およびThe Orange Book(Food & Drug Administration、Washington、D.C.ウェブ上)で論じられている。これらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0094】
例示的な塩基性塩には、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミンなどの有機塩基との塩(例えば有機アミン)、ならびにアルギニン、リシン等のアミノ酸との塩が含まれる。塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、および硫酸ジブチル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、およびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、アラルキルハロゲン化物(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)、ならびにその他などの薬剤で四級化することができる。
【0095】
かかる全ての酸性塩および塩基性塩は、本発明の範囲内の医薬として許容可能な塩であることが企図され、全ての酸性塩および塩基性塩が、本発明の目的の対応する化合物の遊離形態に相当するとみなされる。
【0096】
本発明はまた、1つまたは複数の原子が、通常天然に見られる原子質量および質量数とは異なる原子質量および質量数を有する原子によって置換されることを除き、本発明に列挙されるものと同一の同位体標識された本発明の化合物を包含する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体が含まれる。
【0097】
同位体標識された化合物は一般に、当技術分野で公知のものと類似の手順に従って、非同位体標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いることにより調製することができる。
【0098】
驚くべきことに本発明者らは、酸化しやすい官能基、例えばケトン官能基、アルデヒド官能基、エステル官能基、および二重結合、例えば、二重結合特性を有する他の官能基、例えばケトンおよびエステルと共有結合した二重結合を含有する化合物のオキシム官能基が、基質に存在する他の酸化しやすい官能基の部位で著しい酸化を生じることなく、二重結合を再配列することなく、直接酸化によって酸化してニトロ官能基をもたらし得ることを発見した。驚くべきことにかかる酸化は、本明細書に記載のモリブデン酸化錯体によって媒介することができる。したがって本発明は、オキシムおよび追加の酸素に反応しやすい官能基の両方を担持するニトロ基官能基を基質に提供する方法である。さらにケトン官能基は、オキシム官能基に選択的に変換することができるので、本発明は、他の酸化しやすい官能基と共にケトン官能基を含有するニトロ官能基を基質に導入する方法である。
【0099】
さらに本発明は、トロンビン受容体アンタゴニストの提供に非常に重要な中間体、例えばスキームVIIに示される方法で化合物11を調製するために使用される化合物6である、式IIIAの構造のニトロ化合物を提供する方法である。
【0100】
本発明の方法は、水性バッファーを含有する極性溶媒中に、酸化されるオキシムを含有する溶液を提供し、オキシムをモリブデン酸化錯体と接触させるステップを含む。事前に形成されたモリブデン酸化錯体、例えば式IIのモリブデン錯体を使用することができる。
【0101】
【化15】

式中、Rはベンジル基またはアリール基であり、そのそれぞれは、アルキル置換基で任意で置換されており、Rは、12個までの炭素原子の直鎖、分枝、または環式アルキルから選択される。好ましい一モリブデン酸化錯体は[BzOMo(OButであり、ここでRはベンジルである。例えばBallistreriらによるSynlett、1093〜4頁(1996年11月)に記載の、公知の他のアニオン性モリブデン酸化触媒も適している。
【0102】
驚くべきことに本発明者らは、25%の水性H 1.5当量(酸化される基質のモル数に対する当量)の存在下、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸カリウム1当量を使用することによって、本発明の方法においてオキシム酸化を媒介するのに適したモリブデン酸化錯体をin situで製造できることを見出した。
【0103】
さらに本発明者らは、モリブデン酸ナトリウム約10モル%(酸化される基質の量に対する)と、酸化される基質の量に対して過酸化物約1.2当量〜過酸化物約1.6当量を利用して、モリブデン酸ナトリウムと過酸化物とから調製されたモリブデン酸化錯体を、触媒的に使用できることを見出した。生成物の分解を防止するために、基質の完全な酸化に見合う最小量の過酸化物を使用することが好ましい。
【0104】
本発明の酸化方法の結果物は、酸化媒体のpHに対して感受性が高い。したがって、バッファーの存在下で酸化反応を実施することが好ましい。適切なバッファーは、例えば、ホスホン酸ナトリウム一塩基から製造された通常の水性バッファーを添加して、反応混合物を約pH4.5〜約pH8.5のpHに緩衝することによって製造できる。バッファーは、ホスホン酸ナトリウム一塩基性塩を溶解することによって製造される。反応媒体を約pH4.5〜約pH8.5のpHに維持する量のバッファー系を使用することが好ましい。
【0105】
反応媒体は水性バッファーを利用するので、水混和性の極性溶媒を使用することが好ましい。適切な溶媒の例には、アセトン、アセトニトリル、DMF、およびNMPが含まれる。
【0106】
酸化反応は、酸化反応中約0℃〜約100℃の温度で実施することができ、好ましくは、温度は約40℃〜約60℃に維持される。この温度範囲内で、基質は約1〜約3時間で完全に消費される(約5モル%未満が残る)。より長い時間を使用することができるが、本発明のオキシム酸化のニトロ官能基生成物は、より弱い塩基性の反応条件下でケトンに変換される。したがって長時間反応は、ニトロ化合物の収率を低減する恐れがある。
【0107】
好ましい一実施形態では、式
R−CH−NO(IB’)
の化合物
(式中、Rは、直鎖、分枝、または環式アルキル、直鎖、分枝、または環式アルケニル、直鎖、分枝、または環式のアルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、複素環(heterocycl)、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、先の定義部分で定義されるように任意で置換されている)は、

R−HC=N−OH(IB)
(式中、Rは先に定義の通りである)のオキシムを、先に記載のNaMolyOxモリブデン酸化錯体を使用してpH約6〜約7.5に緩衝した溶媒の存在下、過酸化水素中、モリブデン酸ナトリウムで酸化するステップを含む方法で調製される。
【0108】
オキシム出発材料の調製物は、例えば市販でまたは公知の改変手順によって順に得られる化合物である対応するヒドロキシル誘導体化合物から出発する、当技術分野で公知の手順から製造することができる。当業者は、Chemical AbstractsおよびBeilsteinなどの文献を自由に閲覧し、特定の出発材料を調製するための公知の合成経路を改変することができよう。
【0109】
一実施形態では、本発明は、式I
【0110】
【化16】

(式中、Rは、H、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル、および任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルケニルであり、該任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルの1つまたは複数から選択され、そのそれぞれは任意で置換されている)の化合物を、

【0111】
【化17】

の化合物から調製する方法に関し、
前記方法は、
(a)加水分解によってケタール保護基を式IIの化合物から除去して、式
【0112】
【化18】

の化合物を形成するステップ、
(b)式Vの化合物を、式IA
【0113】
【化19】

のオキシムに変換するステップ、
ならびに
(b)式(IV)の化合物を、ペルオキソモリブデン錯体またはモリブデン酸ナトリウム/過酸化水素触媒で酸化するステップ
を含む。
【0114】
本方法のRについての好ましい値は、水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、または置換ベンジル、H、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル、および任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルケニルであり、該任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルの1つまたは複数から選択され、そのそれぞれは任意で置換されている。本方法のRについてのより好ましい値は、Rが水素、アルキル、または置換アルキルであり、該置換基がハロ、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルである化合物である。特に好ましいのは、Rが水素またはメチルである化合物である。
【0115】
ケタール(化合物IV)の加水分解が終了した後、得られたケトン(化合物V)を加水分解媒体から単離して、加水分解とは別の時間および/または場所でオキシムに変換することができ、あるいはケトンを単離せずにオキシム(化合物IA)の変換をin situで実施することができる。式IVの化合物は、当技術分野で知られており、または公知の合成を改変することによって製造することができる(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,063,847号参照。
【0116】
加水分解は、溶媒中に酸を使用して、約pH4.5〜約pH8.5のpHで実施される。加水分解のための好ましい酸には、HCl、HBr、またはHSO、HPOなどの鉱酸、ならびに有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、およびルイス酸が含まれ、p−トルエンスルホン酸が最も好ましい。好ましい溶媒には、極性溶媒および中程度の極性溶媒、例えば、アルコール、ニトリル、ケトン、エステル、およびエーテルが含まれる。好ましい溶媒は、アセトニトリル、アセトン、およびテトラヒドロフラン(「THF」)であり、アセトニトリルおよびアセトンが特に好ましい。
【0117】
加水分解は、0℃から、選択された溶媒の還流温度までの温度範囲、好ましくは約20℃〜約40℃で実施することができる。
【0118】
オキシムは、式IIのケトンの単離を伴って、または伴わずに調製することができる。オキシムは、ヒドロキシルアミンなどの通常の試薬、および例えば参照によって本明細書に組み込まれる2006年1月12日出願の同時継続の米国特許出願第11/331,324号に詳説されるような塩基で、好ましくはヒドロキシルアミン塩酸塩およびピリジンで形成することができる。オキシムが単離なしに酸化される場合、ケタール(化合物IV)を、混合アセトニトリル/水中、p−トルエンスルホン酸で加水分解することが好ましい。加水分解反応の終了後、適切な量の水性水酸化ナトリウムを添加することによって、反応混合物を約pH7のpHに調節し、次いでヒドロキシルアミンおよびピリジンを加水分解混合物に直接添加して、オキシムの調製を実施する。
【0119】
必要なら、式IAのオキシムの酸化によって式IIIAの化合物を調製した後、酸化生成物を結晶化法によって精製することができる。幾つかの実施形態では、化合物、アセトニトリル、および水を含む酸性溶液から化合物を結晶化することが好ましく、好ましくは、該溶液は約pH3より酸性のpHを有し、より好ましくは、pHは約pH3〜約pH2である。酸性再結晶化溶液を使用する幾つかの実施形態では、周囲温度で粗生成物を蒸解、次いでその溶液から粗生成物が沈殿する温度まで、溶液を冷却することが好ましい。幾つかの実施形態では、溶液を0℃未満の温度に冷却することが好ましい。
【0120】
幾つかの実施形態では、式IAの化合物の酸性化溶液を調製することが好ましく、アセトニトリルおよび水性リン酸ナトリウム一塩基性/水酸化ナトリウムバッファーを含む中性溶液に、式Iの粗化合物を溶解し、該溶液を好ましくは少なくとも40℃の温度に加熱し、該溶液を周囲温度以下に冷却し、好ましくは約10℃未満の温度に冷却し、好ましくは少なくとも約pH3のpH、より好ましくは約pH3〜約pH2のpHに該溶液を酸性化することによって、溶液から該化合物を結晶化する。好ましくはこの手順に従う場合、酸性化の後、溶液の温度を約5℃以下の温度に低下する。
【0121】
幾つかの実施形態では、結晶化手順後、真空濾過によって沈殿物を収集し、濾過ケーキを冷水で洗浄し、洗浄した濾過ケーキを、約45℃の温度の気流オーブンで乾燥することが好ましい。
【0122】
以下の非限定的な例は、本発明をさらに例示するために提供される。本開示、ならびに材料、方法、および反応条件に対して多くの改変、変形、および変更を実施できることが当業者には明らかとなろう。かかる全ての改変、変形、および変更は、本発明の趣旨および範囲内に含まれるものとする。
【実施例】
【0123】
別段の記載がない限り、以下の略語を下の実施例で使用する。
ml=ミリメートル
g=グラム
m.p.=融点
DMSO−d=ジメチル−dスルホキシド。
【0124】
全てのNMRデータは、別段の指定がない限り400MHzのNMR分光計で収集される。
【0125】
3−(5−オキシムシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸(2)の調製
【0126】
【化20】

撹拌子、温度計、および窒素入口を備えた3の三つ口フラスコに、水660mL、p−トルエンスルホン酸一水和物99g(0.52モル)、および110gの1(0.52モル)を添加した。反応混合物を20℃で20時間撹拌し、次いで0℃に冷却した。水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって、pHを6.5に調節した。水220mLに溶解したヒドロキシルアミン塩酸塩40g(0.58モル)を、温度を0℃に維持しながら、反応混合物にゆっくり添加した。化合物2が白色固体結晶として沈殿した。収率:74g(77%)、
【0127】
【化21】


【0128】
3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸(6)の調製
【0129】
【化22】

撹拌子、温度計、および窒素入口を備えた3の三つ口フラスコに、水730mLおよびリン酸ナトリウム一塩基性一水和物100g(0.72モル)を添加した。25%水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって、反応混合物のpHを6.4に調節した。(2)73g(0.40mol)、モリブデン酸ナトリウム二水和物97.8g(0.40mol)、およびCHCN730mLを反応混合物に添加した。得られた混合物を50℃に加熱した後、50℃の温度を維持しながら、30%過酸化水素水溶液62mLをゆっくり添加した。反応混合物を50℃で1〜2時間撹拌し、次いで20℃に冷却した。次に、亜硫酸ナトリウム10.22gの水溶液73mLを反応混合物に添加した。次いで反応混合物を20℃で30分間撹拌し、真空下で濃縮した。反応混合物に水365mLを添加し、反応混合物を5℃に冷却し、37%塩酸水溶液を添加することによってpHを2〜3に調節した。化合物6が沈殿し、次いで濾過し、洗浄し乾燥して淡褐色固体55gを得た。収率69%、
【0130】
【化23】


【0131】
3−(5−ニトロシクロヘキサ−1−エニル)アクリル酸(化合物6)の精製
実施例1に従って調製した化合物6を、2つの精製手順の1つによって精製した。
【0132】
手順1
撹拌子、温度計、および窒素入口を備えた2Lの三つ口フラスコに、上で調製した50.0gの化合物6、水500mL、およびアセトニトリル350mLを添加した。5%の塩酸水溶液を用いて、20℃で溶液のpHを2.5に調節した。懸濁液を20℃で1時間撹拌し、次いで0℃に冷却し、さらに1時間0℃で撹拌し、濾過によって収集した。収集した化合物6を冷水で洗浄し、45℃の温度に設定した気流オーブンで乾燥して、44.1gの化合物6をオフホワイト色固体として得た(収率88.2%w/w、純度97.0%w/w)。精製した化合物6は、融点162.8℃(DSC開始点)および
【0133】
【化24】

を特徴としていた。
【0134】
手順2
撹拌子、温度計、および窒素入口を備えた2Lの三つ口フラスコに、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物69gおよび水500mLを添加した。25%水酸化ナトリウム水溶液(27.5mL)を添加して、pHを6.5に調節した。先の溶液に、50.0gの化合物6およびアセトニトリル350mLを添加した。追加の25%水酸化ナトリウム水溶液で、pHを7.0に調節した。混合物を40℃に加熱し、15分間撹拌した。15分の最後に、混合物を10℃未満の温度に冷却した。冷却した溶液に、37%の塩酸水溶液60mLを添加して、溶液のpHをpH2〜pH3に調節した。懸濁液を形成しながら、精製化合物6が溶液から沈殿し始めた。懸濁液を5℃未満の温度に冷却し、懸濁液を5℃未満の温度に維持しながら、さらに1時間撹拌した。1時間後に、濾過によって固体化合物6を収集した。収集した化合物6を冷水で洗浄し、45の温度に設定した気流オーブンで乾燥して、44.7gの化合物6を、オフホワイト色固体として得た(収率89.4%w/w、純度98.1%w/w)。こうして得られた精製化合物6は、m.p.162.8℃(DSC開始点)および
【0135】
【化25】

を特徴としていた。
【0136】
先に示した特定の実施形態と共に本発明を記載してきたが、当業者には、多くのその代替、改変、および変形形態が明らかとなろう。かかる全ての代替、改変、および変形は、本発明の趣旨および範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化26】

(式中、Rは、H、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル、および任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルケニルであり、前記任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルの1つまたは複数から選択され、そのそれぞれは任意で置換されており、前記任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキル、ハロ、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルの1つまたは複数から選択される)
の化合物を、式
【化27】

の化合物から調製する方法であって、
(a)加水分解によってケタール保護基を式IIの化合物から除去して、式
【化28】

の化合物を形成し、
その後、式IIIの化合物を、単離を伴って、または伴わずに、式
【化29】

のオキシムに変換するステップ、
ならびに
(b)式(IV)の化合物を、ペルオキソモリブデン錯体またはモリブデン酸ナトリウム/過酸化水素触媒で酸化するステップ
を含む方法。
【請求項2】
Rが、水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、または置換ベンジルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、水素、アルキル、または置換アルキルであり、前記置換基が、ハロ、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アミノである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rが、水素、メチル、低級アルキル、ベンジル、または置換ベンジルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加水分解が、溶媒中に酸を使用して約pH4.5〜約pH8.5のpHで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、p−トルエンスルホン酸、鉱酸、またはSACであり、前記溶媒が、アセトニトリル、アセトン、またはテトラヒドロフランである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸がp−トルエンスルホン酸であり、前記溶媒がテトラヒドロフランまたはアセトニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塩基中にヒドロキシルアミン塩酸塩を使用して、前記ケトンを式の前記オキシムに変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記変換がケトンの単離なしに生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒がペルオキソモリブデン錯体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ペルオキソモリブデン錯体が[BzOMo(OBuである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒がモリブデン酸ナトリウム/過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
酸化のための前記触媒がモリブデン酸ナトリウム/過酸化水素であり、酸化のための前記溶媒がアセトニトリルである、請求項7に記載の方法。
【請求項14】

【化30】

の化合物
(式中、Rは、H、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたシクロアルケニル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたアリールアルキル、任意で置換されたアルキルアリール、任意で置換されたヘテロアリール、任意で置換された複素環、任意で置換されたヘテロシクロアルケニル、任意で置換されたアリールシクロアルキル、または任意で置換されたアリールヘテロシクロアルキルである)。
【請求項15】
Rが、H、任意で置換されたアルキル、または任意で置換されたフェニルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
RがHまたはメチルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
オキシムをモリブデン酸ナトリウムおよび過酸化水素で酸化するステップを含む、オキシムからニトロ含有化合物を形成する方法。
【請求項18】
前記オキシム化合物が、炭素−炭素二重結合および酸化されやすい官能基から選択される少なくとも1つの部分も含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記モリブデン酸ナトリウムが触媒量で存在する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】

R−CH2−NO(V)
の化合物
(式中、Rは、H、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル、および任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルケニルであり、前記任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルの1つまたは複数から選択され、そのそれぞれは任意で置換されており、前記任意の置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環アルキル、任意で置換されたヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキル、ハロ、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルの1つまたは複数から選択される)
の調製方法であって、

R−HC=N−OH(IB)
(式中、Rは先に定義の通りである)
のオキシムを、溶媒の存在下で過酸化水素中、モリブデン酸ナトリウムで酸化するステップ
を含む方法。
【請求項21】
前記溶媒がアセトニトリルまたはアセトンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記反応が、約pH6.7〜約pH7.5のpHで実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
Rが、アルキル、任意で置換されたアルキル、シクロアルケニル、任意で置換されたシクロアルケニル、アリール、および任意で置換されたアリールである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
不飽和部位および/または酸素官能基も含有する化合物に、モリブデンVI/VIIペルオキソ錯体で媒介されるオキシム官能基の直接的(1ステップ)酸化によって、ニトロ基官能基を導入する方法であって、
(a)オキシム官能基を含有する式Iの基質を提供するステップ
【化31】

(式中、RおよびRは、カルボン酸、エステル、ハロ、フェニル、シアノ、アルキル、アルケニルアリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、−N(アルキル)、−N(シクロアルキル)、−カルボキシ、および−C(O)O−アルキル官能基で、任意で置換された直鎖、分枝、または環式アルキル基および直鎖、分枝、または環式アルケニル基から独立に選択されるか、あるいはRおよびRが一緒になって、直鎖、分枝、または環式アルキルおよび直鎖、分枝、または環式アルケニル官能基から選択される1つまたは複数の基で、任意で置換されたシクロアルケニル置換基を形成し、その官能基のそれぞれは、アルケニル、−カルボキシ、エステル、ハロ、フェニル、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、−N(アルキル)、および−N(シクロアルキル)官能基で、任意で置換されていてもよく、但し、RまたはRの少なくとも一方は、炭素/炭素二重結合を含有する)、ならびに
(b)式Iの前記基質をモリブデン酸化錯体と接触させて、前記オキシム官能基をニトロ官能基に酸化して、式III
【化32】

(式中、RおよびRは、先に定義の通りである)
の構造を得るステップ
を含む方法。
【請求項25】
前記モリブデン酸化錯体が、過酸化水素ならびにモリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムから選択されるモリブデン酸塩の混合物を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モリブデン酸化錯体が、アニオン性モリブデン過酸化物錯体を含む、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2009−542675(P2009−542675A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518296(P2009−518296)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/015152
【国際公開番号】WO2008/005344
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】