説明

3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸の製薬的な塩

3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)の塩を開示する。具体的には、DSBのN−メチル−D−グルカミンおよびアルカリ金属塩の調製、薬学的評価、およびin vivo でのバイオアベイラビリティー評価を開示する。これらの塩を含有する医薬組成物はHIVおよび関連疾患を処置する方法に用いる。さらに、DSBの塩の製造方法および医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「DSB」としても知られる3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸の新規な塩の形態に関する。本発明はさらに、DSBの塩の形態を含有する医薬組成物を用いてHIVおよび関連疾患を処置する方法に関する。本発明はさらに、DSBの塩を含有する医薬組成物の投与剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、レトロウイルスのサブファミリーであるレンチウイルスの仲間である。HIVが感染すると免疫系の細胞に侵入する;HIVは体の免疫系を破壊し患者は日和見感染症や新生物に罹りやすくなる。免疫異常は進行性、かつ不可逆性であって数年間における死亡率は高く100%に達する。
【0003】
HIV−1は、T4リンパ球、OKT4としても知られる細胞表面分化抗原CD4を発現する免疫系細胞、T4およびleu3に対して栄養性かつ細胞変性的である。ウイルス指向性はウイルスエンベロープの糖タンパク質、gpl20と細胞表面のCD4分子との間の相互作用のためである(Dalgleish et al., Nature,312:763-767(1984))。この相互作用は、感受性細胞のHIVによる感染を媒介するのみならず、HIVは、細胞表面に分化抗原CD4(OKT4、T4およびleu3としても知られる)を発現する免疫系細胞であるT4リンパ球に対して栄養性で細胞変性でもある。このウイルスの親和性はウイルスエンベロープの糖タンパク質であるgp120と細胞表面のCD4分子との間の相互作用に起因している(Dalgleish et al., Nature 312:763-767, 1984)。これらの相互作用は、HIVによる感受性細胞の感染を媒介するだけでなく、感染および非感染T細胞のウイルス誘導性の融合の要因でもある。この細胞融合の結果、AIDS患者において巨大多核合胞体、細胞死およびCD4細胞の進行性欠乏がもたらされる。これら事象はさらにHIV誘発の免疫低下とこれに続く続発症、日和見感染および新生物をもたらす。
【0004】
CD4+T細胞に加えて、HIV宿主としては、血液単球を含む単核食細胞系統(Dalgleish et al., supra)、組織マクロファージ、皮膚のランゲルハンス細胞、およびリンパ節内の樹枝状細網細胞が挙げられる。HIVはまた向神経性であって、中枢神経系の単球やマクロファージに感染し重篤な神経損傷を与える可能性がある。マクロファージや単球はHIVの主たる蓄積場所である。これらはCD4を有するT細胞と相互作用し融合してT細胞を枯渇させAIDSの発病に寄与している。
【0005】
HIV治療のための薬剤は大きく進歩した。HIV治療薬としては、特に限定はされないが、AZT、3TC、ddC、d4T、ddI、テノホビル、アバカビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インディナビル、ネルフィナビル、ロピナビル、アンプレナビルおよびアタザナビル、またはその他の任意の抗レトロウイルス薬若しくは抗体で相互の組み合わせ若しくは生物学的な基礎の治療薬と関連したもの、例えば、gp41由来のペプチド・エンフュービルタイド(フューゼオン;チメリス−ロシュ)または可溶性CD4、CD4に対する抗体、およびCD4若しくは抗CD4の複合体、または本明細書においてさらに示したものが少なくともひとつ含まれる。これら薬物の組み合わせは特に効果的で血漿中のウイルスRNAレベルを検出不可な程度にまで低下させウイルス抵抗の発達を遅らせることができ、患者の健康状態及び寿命の改良をもたらす。
【0006】
これらの進歩にも拘わらず、現在可能な薬物療法には依然として問題がある。多くの薬物は重篤な毒性と副作用(例えば、脂肪の再分配)を有し、複雑な投与計画が必要なためにコンプライアンスを低下させて結果的にその効果を制限する。組み合わせ療法においてさえ期間を超えるとHIVの耐性種がしばしば出現する。これら薬剤の高い費用もまた、特に先進国外において幅広い使用を制限するものとなっている。
【0007】
これらの問題を回避するため、更に薬剤を開発する必要性が依然として存在する。理想的には、組み合わせ療法の道具に加えてウイルス・ライフサイクルの異なるステージを標的とし、毒性は最小でと製造コストの低いものがよい。
【0008】
ベツリン酸とプラタン酸は、Syzigium claviflorumから単離されており、抗HIV活性を有することが示されている。ベツリン酸およびプラタン酸はH9リンパ球細胞内のHIV複製に対してEC50がそれぞれ1.4μM、6.5μM、T.I.値がそれぞれ9.3および14であった。ベツリン酸を水素化するとジヒドロベツリン酸が得られ、これはわずかに強い抗HIV効果を有していてEC50が0.9、治療指数(T.I.)の値が14を示した(Fujioka,T., et al., J.Nat.Prod., 57:243-247(1994))。ベツリン酸を、例えば3’,3’−ジメチルグルタリルおよび3’,3’−ジメチルサクシニルのような置換アシル基でエステル化するとより活性の強い誘導体が得られる(Kashiwada,Y., et al., J.Med.Chem., 39:1016-1017(1996))。アシル化ベツリン酸およびジヒドロベツリン酸誘導体は強力な抗HIV剤であって米国特許第5,679,828号にも記載がある。抗HIV分析によって、3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)−ベツリン酸およびジヒドロベツリン酸アナログはいずれも、後天的に感染したH9リンパ球において非常に強力な抗HIV活性を示した(それぞれ、EC50は1.7×10-5μM未満)。これらの化合物は、それぞれ970,000および400,000を超える顕著な治療指数値を示した。
【0009】
米国特許第5,468,888号は、ルパンの28−アミド誘導体を開示し、これらがHIV感染細胞に関して細胞保護効果を有することが記載されている。
【0010】
ベツリン酸を含め数多くのトリペルテノイド類は、抗癌薬としての用途を含めいくつかの医学的応用が知られている。Andersonらは、WO95/04526において、細胞が最適な速度で増殖するのに必要なポリアミンに対するそれらの活性を含め、癌治療において用いられているトリテルペノイドの誘導体について検討している。これらトリテルペノイドのいくつかは、特にオルニチン脱カルボキシル化により、最適な細胞増殖に必要なポリアミンの酵素合成を妨害し、癌細胞の増殖を阻害することが分かっている。ベツリン酸はまた、抗炎症活性を有することが報告されており、これは、5−リポキシゲナーゼを含むロイコトリエン生合成に関与する酵素を阻害する能力によるものである。
【0011】
Chan(英国特許第1,425,601)は、ジヒドロベツリン酸のカルボキシル化された誘導体を医薬組成物に含有させることができることを開示しているが、これら化合物がどのような用途を有するかについての示唆はない。
【0012】
特開平1−143832号は、ベツリンおよびその3,28−ジエステルが癌治療の分野において有用であることを開示している。
【0013】
本明細書の一部を構成する米国特許第6,172,110B1には、次式:
【化1】

[式中、
1はC2−C20置換または非置換のカルボキシアシルであり、R2はC2−C20置換または非置換のカルボキシアシルであり、R3は水素ハロゲンアミノ置換されていることもあるモノ−またはジ−アルキルアミノ、または−OR4であり、R4は水素、C1-4アルカノイル、ベンゾイル、またはC2−C20置換または非置換のカルボキシアシルであり、場合により点線はC20とC29との間の二重結合を示す]
を有するベツリンおよびジヒドロベツリン誘導体またはそれらの製薬的に許容し得る塩が開示されている。
【0014】
米国特許第6,172,110号に記載の誘導体は、ベツリンおよびジヒドロベツリンのC3ヒドロキシまたはC28ヒドロキシ基のC2〜C20置換または非置換アシル基を導入して対応の3−O−アシルおよび/または28−O−アシル誘導体を得ることによって形成される。これらの化合物は、少なくとも1つの上記のベツリン誘導体を、場合により1またはそれ以上の公知の抗AIDS治療剤または免疫賦活剤と組み合わせて投与することにより、レトロウイルス、特にHIVに感染した患者を処置するのに有用であると記載されている。
【0015】
米国特許第60/413451号には、3,3−ジメチルサクシニルベツリンが開示されており、本明細書の一部を構成するZhu, Y-M. et al., Bioorg. Chem Lett. 11:3115-3118 (2001);Kashiwada Y. et al., J. Nat. Prod. 61:1090-1095 (1998);Kashiwada Y. et al., J. Nat. Prod. 63:1619-1622 (2000);およびKashiwada Y. et al., Chem. Pharm. Bull. 48:1387-1390 (2000)には、ジメチルサクシニルベツリン酸およびジメチルサクシニルオレアノール酸が開示されている。コハク酸によるベツリンの3’炭素のエステル化により、HIV−1活性を阻害することが可能な化合物が生じた(Pokrovskii, A.G. et al., Gos. Nauchnyi Tsentr Virusol. Biotekhnol."Vector," 9:485-491 (2001))。
【0016】
国際公開公報WO02/26761には、真菌感染の処置のためのベツリンおよびそのアナログの使用が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ウイルスの薬物耐性株に対して有効な新しいHIV阻害方法が必要とされている。一態様では、本発明は承認されている治療法とは異なる方法でウイルスを阻害する治療方法および化合物を提供する。具体的な態様では、本発明は、溶解度およびバイオアベイラビリティーが増大した、承認されている治療法とは異なる方法でin vivo でウイルスを阻害するDSBの塩を含有する治療組成物を提供する。本発明の組成物はヒトにおけるHIV−1感染を処置するために使用することができる。
【0018】
本発明の化合物および方法は、新規の作用メカニズムを有するものであり、それゆえ現在の治療法では効かないHIV株に対して活性である。したがって、本発明はHIV/AIDSの処置について完全に新しい方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要旨
本発明は、3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸(“DSB”)の特定の塩の形態、その製造、それを含有する医薬組成物およびその使用方法に関する。具体的には、本発明はアミン塩、例えばDSBのN−メチル−D−グルカミン(NmG)塩の形態に関する。本発明はまた、DSBのこれら塩の形態を含有する医薬組成物および投与剤形に関する。これら組成物および投与剤形はHIVおよび関連疾患の処置方法において使用することができる。さらに、DSBの塩および医薬組成物の製造方法もまた提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な記載
本発明の第1の態様は、3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸(以下「DSB」と称する)の塩の形態に関する。DSBは、以下の式:
【化2】

を有する。
【0021】
本発明の第2の態様は、DSBのNmG塩に関する。一態様では、DSBのグルカミン塩は、DSBのジ−(N−メチル−D−グルカミン)塩である(ジ−NmG塩)。DSBのジ−(NmG)塩は、DSB1分子あたり2つのNmG分子が結合しており、分子式はC5090216、分子量975.28であり、以下の式:
【化3】

を有する。
【0022】
本発明の第3の態様は、医薬組成物に関する。DSBのジ−(N−メチル−D−グルカミン)塩等のDSBのNmG塩および製薬的な担体または希釈剤を含有する医薬組成物に関する。
【0023】
本発明の第4の態様は、DSBのNmG塩の製造方法に関する。本発明の一態様では、この塩の製造方法はNmGおよびDSBを水溶液中で混合して3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸,N−メチル−D−グルカミン塩を得ることを含んでなる。混合は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリンの存在下で行うことができる。
【0024】
本発明の第5の態様は、DSBのNmG塩の医薬組成物を含んでなる、経口用錠剤等の投与剤形に関する。本投与剤形は、ヒトの患者において、HIV等のレトロウイルス感染を処置するために用いることができる。
【0025】
本発明の第6の態様は、ヒトの患者において、HIV等のレトロウイルス感染を処置するためのDSBのNmG塩を含有する医薬組成物の使用方法に関する。
【0026】
DSBの任意の非毒性の製薬的に許容し得るアミンまたは4級アンモニウム塩を本発明において用いることができる。これらの塩は、化合物の最後の単離および精製中に in situで製造する、または別途、遊離酸の形態の精製された化合物を適当な有機酸と反応させ、形成した塩を単離することにより製造することができる。これらには、非毒性のアンモニウム、4級アンモニウムおよびアミンカチオンが含まれ、例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、N−メチルグルカミンなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0027】
特に興味深いのは、DSBのNmG塩、即ち3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸N−メチル−D−グルカミン塩およびアルカリ金属塩の形態である。これらの塩の形態はDSBと、NmGまたはアルカリ金属水酸化物とを混合して、DSBのモノおよびジ塩を形成することにより製造した。本発明の塩の形態は増大したバイオアベイラビリティーを有する。
【0028】
本発明の塩は抗レトロウイルス活性を有し、場合により、抗レトロウイルス化合物、抗HIV化合物および/または免疫賦活化合物または抗ウイルス抗体またはその断片等のさらなる製薬的に活性な成分とともに、レトロウイルス感染の処置に適した化合物および組成物を提供する。
【0029】
「抗レトロウイルス活性」または「抗HIV活性」なる語は、下記の少なくとも一つを阻止する能力を意図する;
(1)宿主細胞遺伝子内へのウイルスのプロDNAの集積
(2)レトロウイルスの細胞への結合
(3)ウイルスの細胞内への侵入
(4)ウイルス複製を許す細胞代謝
(5)ウイルスの細胞間拡散阻止
(6)ウイルス抗原の合成および/または細胞発現
(7)ウイルス出芽または成熟化
(8)ウイルスコード酵素(例えば、逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼ等)の活性、および/または
(9)既に知られている、例えば免疫低下等のレトロウイルス若しくはHIVの病原性作用のいずれか。
【0030】
本発明のDSBの塩は、単独でまたは当分野で公知の他の治療形態と組み合わせて、レトロウイルス(例えばHIV)感染の処置のために使用することができる。但し、本発明のDSBの塩は、正常な細胞に対する毒性が比較的低いか、あるいは実質的に毒性がないので、それらの有用性は確立したレトロウイルス感染に限定されない。例えば、本発明のDSBの塩は、例えば血液バンクで維持されている血液製剤の処置に使用することができる。現在、国の血液供給はHIV抗体について試験されている。しかしながら、その試験は依然として完全ではなく、試験結果が陰性であってもHIVウイルスを含むサンプルが存在し得る。血液および血液製剤を本発明のDSBの塩で処理すれば、検出されなかったレトロウイルスを除去し若しくは低減させて安全性の幅を更に追加することができる。
【0031】
本発明のDSBの塩は、他のHIV−1治療法によっては十分に処置されない患者におけるHIVの処置に用いることができる。したがって、本発明はさらに、その細胞が感染しているHIV−1が他のHIV−1治療法に応答しない、そのような処置が必要な処置方法に関する。さらに別の態様では、本発明の方法は、HIV感染に用いられる薬物に対して耐性であるHIVに感染した患者に対して実施される。種々の応用において、HIVは、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、侵入阻害剤、ヌクレオシドアナログ、ワクチン、結合阻害剤、免疫調節剤および/または他の任意の阻害剤の1またはそれ以上に対して耐性である。いくつかの態様では、本発明の組成物および方法は、HIV感染の処置に用いられる1またはそれ以上の薬物に対して耐性であるHIVに感染した患者に対して実施される。例えば、ジドブジン、ラミブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、アバカビル、ネビラピン、デラビルジン、エムトリシタビン、エファビレンツ、サクイナビル、リトナビル、ロピナビル、インディナビル、ネルフィナビル、テノホビル、アンプレナビル、アデフォビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、エンフュービルタイド、ヒドロキシ尿素、AL−721、アンプリゲン、ブチル化ヒドロキシトルエン;ポリマンノアセテート、カスタノスペルミン;コントラカン;クリームファーマテックス、CS−87、ペンシクロビル、ファムシクロビル、アシクロビル、シトフォビル、ガンシクロビル、デキストラン硫酸塩、D−ペニシラミンアミン三ナトリウムホスホノギ酸塩、フシジン酸、HPA−23、エフロルニチン、ノンオキシノール、ペンタミジンイソチオネート、ペプチドT、フェニトイン、イソニアジド、リバビリン、リファブチン、アンサマイシン、トリメトトレキセート、SK−818、スラミン、UA001、およびそれらの組合せが挙げられるがこれに限定されない。
【0032】
更に、本発明のDSBの塩は個人間のHIV感染の伝染を予防するための予防薬として使用することができる。例えば、DSBの塩をHIV感染の妊娠した女性および/または胎児に対して経口的にまたは注射により妊娠中または誕生直前、誕生時若しくは誕生後に投与して新生児の感染の可能性を低減させることができる。また、DSBの塩を誕生直前に膣投与して新生児が産道から感染することを予防できる。さらには、DSBの塩の一つ以上を含む局所組成物のレトロウイルス阻害有効量を性的交渉の前に膣またはその他の粘膜に適用することによって、本発明のDSBの塩は性的交渉の間のHIV感染を予防するために使用することができる。例えば、感染した男性から未感染の女性への伝染またはその逆の場合の伝染を予防するため、本発明のDSBの塩を使用することができる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、場合により1またはそれ以上の上記のさらなる成分と組み合わせて少なくとも1つのDSBの塩を含有しうる。同様に、処置方法は、本明細書に記載の少なくとも1つのDSBの塩を、単独または本明細書にさらに記載するさらなる成分と組み合わせて含有する医薬組成物を用いる。処置のそのような様式としては、本明細書に記載した少なくとも1つのさらなる薬物による化学療法が挙げられる。
【0034】
一態様では、本発明の医薬組成物は少なくとも一つの他の抗ウイルス剤を含有しうる。例えば限定はされないが、AZT(ジドブジン、レトロビル(登録商標)、グラクソスミスクライン)、3TC(ラミブジン、EPIVIR(登録商標)、グラクソスミスクライン)、AZT+3TC(COMBIVIR(登録商標)、グラクソスミスクライン)、AZT+3TC+アバカビル(TRIZIVIR(登録商標)、グラクソスミスクライン)、ddI(ジダノシン、VIDEX(登録商標)、ブリストルマイヤーズ・スクイブ)、ddC(ザルシタビン、HIVID(登録商標)、ホフマン・ラロシュ)、D4T(スタブジン、ZERIT(登録商標)、ブリストルマイヤーズ・スクイブ)、テノフォビル(VIREAD(登録商標)、ギリード)、アバカビル(ZIAGEN(登録商標)、グラクソスミスクライン)、ネビラピン(VIRAMUNE(登録商標)、ベーリンガー・インゲルハイム)、デラビルジン(Pfizer)、エファビレンツ(SUSTIVA(登録商標)、デュポン・ファーマシューティカルズ)、サキナビル(INVIRASE(登録商標)、FORTVASE(登録商標)、ホフマン・ラロシュ)、リトナビル(NORVIR(登録商標)、アボット・ラボラトリーズ)、インディナビル(CRIXIVAN(登録商標)、メルクアンドカンパニー)、ネルフィナビル(VIRACEPT(登録商標)、ファイザー)、ロピナビル、アムプレナビル(AGENERASE(登録商標)、グラクソスミスクライン)、アデフォビル(PREVEON(登録商標)、HEPSERA(登録商標)、ギリード・サイエンシス)、アタザナビル(ブリストルマイヤーズ・スクイブ)、フォスアムプレナビル(LEXIVA(登録商標)、グラクソスミスクライン)、およびヒドロキシウレア(HYDREA(登録商標)、ブリストルマイヤーズ・スクイブ)、または他の任意の抗レトロウイルス薬若しくは抗体をそれら互いどうしを組合せて、あるいは例えばgp41由来のペプチドエンフビルチド(FUZEON(登録商標);ロシュ・トリメリス)、T−1249、可溶性CD4、CD4に対する抗体、CD4のコンジュゲート若しくは抗CD4、または本明細書においてさらに記載するような生物学的な治療剤と組み合わせて含むことができる。
【0035】
少なくとも1つのDSBの塩とともに最適に用いられるさらなる適当な抗ウイルス薬としては、アムホテリシンB(FUNGIZONE(登録商標));ヘミスフェリックス・バイオファルマによって開発されたアンプリジェン(ミスマッチRNA);BETASERON(登録商標) (β-インターフェロン、カイロン);ブチル化ヒドロキシトルエン;カロシン(ポリマンノアセテート);カスタノスペルミン;コントラカン(ステアリン酸誘導体);クリーム・ファルマテクス(塩化ベンザルコニウムを含む);ジドブジンの5−無置換誘導体;ペンシクロビル(DENAVIR(登録商標)、ノバルティス);ファムシクロビル(FAMVIR(登録商標)、ノバルティス);アシクロビル(ZOVIRAX(登録商標)、グラクソスミスクライン);シトフォビル(VISTIDE(登録商標)、ギリード);ガンシクロビル(CYTOVENE(登録商標)、ホフマン・ラロシュ);硫酸デキストラン;D−ペニシラミン(3-メルカプト-D-バリン);FOSCARNET(登録商標)(ホスホノギ酸三ナトリウム、アストラゼネカ);フシジン酸;グリチルリチン(甘草成分);HPA−23(アンモニウム-21-タングスト-9-アンチモン酸塩);ORNIDYL(登録商標)(エフロルニチン、アベンティス);ノノキシノール;ペンタミジン・イセチオネート(PENTAM-300);ペプチドT(オクタペプチド・シーケンス、ペニンシュラ・ラボラトリーズ);フェニトイン(ファイザー);INHまたはイソニアジド;リバビリン(VIRAZOLE(登録商標)、バリーント・ファーマシューティカルズ);リファブチン、アンサマイシン(MYCOBUTIN(登録商標)、ファイザー);CD4−IgG2(プロジェニクス・ファーマシューティカルズ)またはその他のCD−4含有若しくはCD−4関連分子;トリメトレキサート(メディミューン);スマミンおよびその類縁体(バイエル);およびWELLFERON(登録商標)(α-インターフェロン、グラクソスミスクライン)が挙げられるがこれに限定されない。
【0036】
本発明の薬学的組成物はまたさらに免疫調節薬を含むことができる。本発明に従って、ベツリン酸またはベツリン誘導体とともに最適に使用される適当な免疫調節薬としては、ABPP(ブロプリリミン);Ampligen(ミスマッチRNA、Hemispherx Biopharma)、抗ヒトインターフェロンα抗体;アスコルビン酸およびその誘導体;インターフェロン−β;シアメキソン;シクロスポリン;シメチジン;CL−246,738;GM−CSFを含むコロニー刺激因子;ジニトロクロロベンゼン;HE2000(ホリス・エデン・ファーマスーティカルズ);インターフェロン−γ;グルカン;ハイパーイミューン・γ−グロブリン(バイエル);イミュチオール(ジエチルチオカルバメートナトリウム);インターロイキン−1(ホフマン・ラロシュ、アムジェン);インターロイキン−2(IL−2)(カイロン);イソプリノシン(イノシン・プラノベクス);クレスチン;LC−9018(ヤクルト);レンチナン(山之内);LF−1695;メチオニン−エンケファリン;ミノファーゲンC;ムラミルトリペプチド、MTP−PE;ナルトレキソン(バール・ラボラトリーズ);RNA免疫調節剤;REMUNE(登録商標)(イミューンレスポンス・コーポレーション);RETICULOSE(登録商標)(アドバンスト・ウイルス・リサーチ・コーポレーション);小柴胡湯;朝鮮人参;胸腺体液性因子;チモペンチン;胸腺因子5;チモシン1(ZADAXIN(登録商標)、サイクロン);チモスチミュリン;TNF(腫瘍壊死因子、ジュネンテック);およびビタミン製剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0037】
本発明の医薬組成物はまた、抗癌治療薬をさらに含有することができる。最適な使用のための適当な抗癌治療薬剤としては、組合せ治療に用いることができる抗癌剤の化合物または製薬上許容される塩もしくはプロドラッグを含む新生物の阻害に有効な抗癌組成物例えば、アルキル化剤(ブスルファン、シス−プラチン、マイトマイシンC、およびカルボプラチン)、抗分裂剤(コルヒチン、ビンブラスチン)、タキソール(パクリタキセル(タキソール(登録商標)ブリストル−マイヤーズ・スクイブ)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)アベンティス)等)、トポI阻害剤(カンプトセシン、イリノテカンおよびトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)グラクソスミスクライン)等)、トポII阻害剤(ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびエトポシド(VP16))、RNA/DNA代謝拮抗剤(5−アザシチジン、5−フルオロウラシルおよびメトトレキセート)、DNA代謝拮抗剤(5−フルオロ−2’−デオキシウリジン、アラ−C、ヒドロキシ尿素、チオグアニン)、および抗体(trastuzumab(HERCEPTIN(登録商標)ジェネンテック)、およびリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)ジェネンテックおよびバイオジェン−アイデック))、メルファラン、クロラムブチル、シクロホスファミド、イフォスファミド、ビンクリスチン、ミトグアゾン、エピルビシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、エリプチニウム、フルダラビン、オクトレオチド、レチノイン酸、タモキシフェン、アラノシン、およびそれらの組み合わせ等が挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
本発明はさらに、本発明の化合物および製薬的に許容し得るその塩と組み合わせて使用するための、抗菌治療薬、抗寄生虫治療薬および抗真菌治療薬を提供する方法を提供する。抗微生物治療薬の例としては、ペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、シクラシリン、エピシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、カルベニシリン、セファレキシン、セファラジン、セファドキシル、セファクロル、セフォキシチン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフィネノキシン、セフトリアキソン、モキサラクタム、イミペネム、クラブラン酸塩、チメンチン、スルバクタム、エリスロマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、メトロニダゾール、クロロアムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、キノロン、リファンピン、スルホンアミド、バシトラシン、ポリミキシンB、バンコマイシン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、アムホテリシンB、シクロセリン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、イソニアジド、エタンブトール、およびナリジクス酸、並びにそれら化合物の各々の誘導体および関連する形態等が挙げられる。
【0039】
抗寄生虫治療薬の例としては、ビチオール、クエン酸ジエチルカルバマジン、メベンダゾール、メトリホネート、ニクロサミン、ニリダゾール、オキサムニキンおよび他のキニン誘導体、クエン酸ピペラジン、プラジカンテル、ピランテルパモ酸塩およびチアベンダゾール、並びにそれら化合物の各々の誘導体および関連する形態等が挙げられる。
【0040】
抗真菌治療薬の例としては、ムホテリシンB、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾールおよびミコナゾール、並びにそれら化合物の各々の誘導体および関連する形態等が挙げられる。アクレアシンAおよびパピュロカンジンBもまた抗真菌化合物として挙げられる。
【0041】
本発明の好ましい対象動物はヒトである。具体的な態様では、本発明はヒトの患者の治療に有用である。
【0042】
「治療」なる語は、レトロウイルス関連病変の予防、軽減または治癒の目的で本発明のDSBの塩を対象に投与することを意味する。
【0043】
薬物が同時に患者に提供される場合、または各薬物の投与間隔が生物学的活性の重複を許容するような時間である場合、互いに組み合わせて提供されたと考えられる。
【0044】
本発明の一態様では、医薬組成物は3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸のジ−(N−メチル−D−グルカミン)塩を含有する。
【0045】
本発明によれば投与のための薬学的組成物は本発明のDSBの塩を少なくとも一つ、薬学的に許容される形態で含み、任意で薬学的に許容される担体と組み合わせ得る。これら組成物はその目的を達成するための任意の手段で投与することができる。本発明のDSBの塩の投与計画および投与量はレトロウイルス病変治療の臨床技術の専門家により決定することができる。
【0046】
例えば、皮下、静脈内、筋肉内、経皮または口腔内のような非経口的投与が可能である。或いは、若しくは並行して経口投与も可能である。投与量は患者の年齢、健康状態および体重;同時治療か前治療か;あるならば治療の回数;および望まれる効果の性質に依存する。
【0047】
本発明の範囲内の組成物は、意図した目的を達成するのに有効な量の少なくとも一つの本発明のDSBの塩を含有するすべての組成物を包含する。必要な量は個々に変わるが、各成分の最適な有効量の決定は当業者の技術範囲内でなされる。少なくとも1つのDSBの塩の典型的な用量は約0.05〜約100mg/kg体重を含む。ある態様では、1またはそれ以上のDSBの塩の有効投与量は約0.1〜約100mg/kg体重の活性成分、好ましくは約0.1〜約20mg/kg体重の活性成分を含む。またある態様では、1またはそれ以上のDSBの塩のより好ましい用量は、約0.2〜約10mg/kg体重を含む。1またはそれ以上のDSBの塩の有効な投与量は約0.5〜約5mg/kg体重を含む。またある態様では、1またはそれ以上のDSBの塩の投与量は約10〜約100mg/kg体重を含む。
【0048】
種々の用量の本発明の組成物を投与して、DSBが種々の血漿レベルでもたらされる。ある態様では、好ましい用量は、患者の血漿中のDSBのトラフ濃度が約1マイクロモル濃度(μM)〜約1ミリモル濃度(mM)となるような量である。ある態様では、用量は、患者の血漿中のDSBのトラフ濃度が約4μM(2.34μg/mL)〜約1000μM、約40μM〜約1000μM、あるいは約400μM〜約1000μMとなるような量である。ある態様では、用量は、患者の血漿中のDSBのトラフ濃度が約4μM(2.34μg/mL)〜約200μM、約10μM〜約200μM、あるいは約40μM〜約200μMとなるような量である。ある態様では、用量は、患者の血漿中のDSBのトラフ濃度が約4μM(2.34μg/mL)またはそれ以上、少なくとも約10μMかそれ以上、少なくとも約40μMかそれ以上、少なくとも約100μMかそれ以上、または少なくとも200μMかそれ以上となるような量である。ある態様では、用量は、患者の血漿中のDSBのトラフ濃度が約400μMとなるような量である。「トラフ濃度」とは、患者に次の投薬を行う直前の血漿中のDSBの濃度である。
【0049】
種々の量の1またはそれ以上の本発明の塩を本発明にしたがって投与することができる。ある態様では、約10mg〜約1000mgの本発明の1またはそれ以上の塩の活性成分を1日1回投与することができる。ある態様では、約50mg〜約500mgの本発明の1またはそれ以上の塩の活性成分を1日1回投与することができる。ある態様では、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは500mgの本発明の1またはそれ以上の塩の活性成分を1日1回投与することができる。1日に投与する1またはそれ以上の塩の量は、24時間で投与される1またはそれ以上の塩の合計量によって決定される。本発明の1またはそれ以上の塩を24時間で複数回投与することを指示する投与レジメは、24時間で投与した蓄積量が上記に挙げた範囲内であれば本発明の範囲内である。
【0050】
また、治療のための投与は、少なくとも一つのさらなる本発明のDSBの塩または抗ウイルス薬や免疫賦活剤等の他の治療薬を、先に、同時に、続いて若しくは補助的に投与することを包含する。そのようなアプローチにおいては、第二の薬物の投与量は第一の薬物投与量と同等か、または異なってもよい。本発明のある態様では、各薬物の推奨量を毎日交代で投与する。
【0051】
本発明化合物の投与はまた、追加免疫薬若しくは免疫調節薬を用いる、先の、同時の、続いてのまたは補助的な治療を包含し得る。薬学的な活性化合物に加えて、本発明の薬学的組成物は賦形剤および補助物を含む薬学的に許容される適切な担体を含むことが可能であって、これら担体は該活性化合物を薬学的に使用される製剤に加工することを容易にする。ある態様においては、これらの製剤は、特に経口的に投与され製剤は、例えば錠剤、糖衣錠、カプセルであり、また経直腸的に投与される製剤は例えば坐剤であり、注射若しくは経口投与のための適切な溶液も同様に、約0.01%から約99%の活性成分を賦形剤とともに含有する。さらに別の態様では、製剤は、約20%〜約75%の活性化合物を賦形剤とともに含有する。
【0052】
本発明の医薬製剤は、それ自身公知の、例えば慣用的な混合、造粒、打錠、溶解、または凍結乾燥工程等の方法で製造する。こうして、経口のための薬学的製剤は活性化合物を賦形剤と組み合わせて、状況により得られた混合物をすりつぶして、適切な補助剤を加えた後、顆粒混合物を加工し、必要ならまたは望ましいならば錠剤若しくは糖衣錠核を得る。
【0053】
適切な賦形剤としては、例えば単糖類のような充填剤(例えば乳糖、スクロース、マンニトール、ソルビトール等);セルロース類および/またはリン酸カルシウム、例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン等を用いたデンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンのような結合剤がある。望ましいなら、上記のデンプンやカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸の塩のような崩壊剤を加えることもできる。補助剤は何よりも流動調節剤および滑沢剤であり、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸若しくはステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムのようなステアリン酸塩、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠核は適切なコーティングをして提供され、望ましいならば胃液に抵抗的なコーティングがされる。この目的のため、単糖類の濃縮溶液が使用され、任意でアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、適切な有機溶媒若しくは溶媒混合物等を含む。胃液に抵抗的な被膜化のためには、アセチルセルロースフタレートやヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのような適切なセルロース剤の溶液が使用される。例えば、薬物の同定や有効成分量の特徴づけのため、染料や顔料を錠剤や糖衣錠コーティングに加えることもできる。
【0054】
経口的に使用されるその他の薬学的製剤には、ゼラチン製の押し込み型カプセルのほか、ゼラチンとグリセロールやソルビトールのような可塑剤でできた軟かい密閉カプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトースのような充填剤、デンプン類のような結合剤、および/またはタルク、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、および任意で安定化剤と混合した顆粒状の活性化合物を含むことができる。軟カプセルにおいては、活性化合物を脂肪油または液体パラフィン中に溶解若しくは懸濁させる。さらに、安定化剤を添加することもできる。
【0055】
経直腸的な使用が可能な薬学的製剤には、例えば活性化合物と坐剤の基剤を組み合わせた坐剤が含まれる。適切な坐剤の基剤には例えば天然または合成トリグリセリド、またはパラフィン炭化水素がある。更には、活性化合物と基剤より構成されるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。可能な基剤としては、例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素が含まれる。
【0056】
非経口投与のための適切な剤形には、水溶性形態、例えば水溶性塩とした活性化合物の水溶液が含まれる。さらには、適切な油性注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液を投与することもできる。適切な親油性溶媒若しくは基剤には、ゴマ油のような脂肪油、オレイン酸エチルやトリグリセリドのような合成脂肪酸エステルが含まれる。懸濁液の粘度を増大させる物質を含み得る水性注射用懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む。状況により、該懸濁液は安定化剤を含むことができる。
【0057】
経口投与のための液体の投与剤形としては、製薬的に許容し得るエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。この液体の投与剤形は、活性化合物に加えて、当分野で一般的に用いられている不活性な希釈剤(例えば水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば水または他の溶媒)、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロデキストリン(例えばヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸塩、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物等の可溶化剤および乳化剤を含有していてもよい。
【0058】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、セルロース、微晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、およびそれらの組合せ)を含有していてもよい。
【0059】
本発明の全身投与のための薬学的剤形は腸溶性、非経口または局所投与のための剤形とすることができる。実際、これら三つのタイプの剤形は有効成分の全身投与を達成するために同時に使用することができる。
【0060】
経口投与のための適切な剤形としては、硬若しくは軟ゼラチンカプセル、糖衣錠、丸剤、錠剤(コーティングされた錠剤を含む)、エリキシル、懸濁液、シロップまたは吸入用製剤とその徐放性製剤を含む。
【0061】
経口投与用のこれら剤形に加えて固体の投与量形態には直腸坐剤が含まれる。
【0062】
また、本発明のDSBの塩は、生分解性の徐放性担体と調合してインプラントの形態で投与することができる。あるいは、本発明のDSBの塩を活性成分の継続的な放出のための経皮パッチとして製剤化することができる。
【0063】
局所投与のための適当な製剤としては、クリーム、ジェル、ゼリー、粘液、ペースト、および軟膏が挙げられる。適当な注射用溶液としては、皮下、静脈内および筋肉内注射が可能な溶液が挙げられる。あるいは、DSBの塩を輸注溶液、鼻内吸入またはスプレー、粘膜または膣へのデリバリーシステム(例えば、リング、泡、クリーム、ジェル)、坐薬およびタンポンの剤形で投与することができる。
【0064】
性交渉や出産の際の個人間におけるHIV感染を予防するための予防的局所組成物は、一つ以上のDSBの塩と少なくとも一つの薬学的に許容される局所用担体若しくは希釈剤を含む。該局所組成物は、例えば、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、ペースト、ゼリー、スプレー、フォーム、またはスポンジの形態とすることができる。予防的局所製剤中のDSBの塩の用量は、一般に、約1000mgより少なく、ある態様では約0.01mgから約100mgである。該局所製剤は他の予防的成分を含むことができる。担体および希釈剤は製剤中の他の成分との混合可能性および患者への無害性の意味で許容できるものである必要がある。
【0065】
予防的局所製剤は経膣、経直腸または局所投与に適したものを含む。該製剤は適当な場合には、別個の投与量単位でもって都合よく提供され、製剤学の既知の方法で製造され得る。そのような方法はすべて活性成分を液状の担体、ジェル、若しくは粉砕した固体の担体またはその両方になじませて、必要な場合は生成物を所望の形態に形成する工程を含む。
【0066】
経膣投与に適した予防的剤形は、活性成分のほか、技術的に知られている適切な担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、ゼリー、フォーム、スプレー、または水性若しくは油性懸濁液、溶液または乳液(液状剤形)として提供され得る。液状剤形は例えば懸濁剤、乳化剤、食用油のような非水系基剤、または保存剤のような慣用的な添加剤を含むことができる。これらの製剤は性的交渉の際のHIV感染および新生児の産道感染の両方を予防するのに有用である。一つの例では、性的交渉の前または出産の直前に経膣投与を行なうことができる。
【0067】
ある態様では、経直腸または経膣投与に適した固体の担体を有する予防的製剤は単位投与量坐剤として表される。適切な担体にはカカオバターおよびその他の当該分野で通常使用される物質が含まれる。例えば坐剤は、一つ以上のDSBの塩を一つ以上の軟化させた若しくは溶融させた担体と混合し、型に入れて冷却し成型して製造し得る。
【0068】
本発明の予防的剤形はまたドロップの形状とすることができ、一つ以上の分散剤、可溶化剤または懸濁剤を含む水性若しくは非水性基剤でもって製剤化され得る。液状スプレーは加圧パックから提供され得る。
【0069】
本発明の予防的剤形は遅延型輸送を与えるように適合可能である。また、該予防的剤形は例えば殺精子薬、抗菌薬および抗ウイルス薬のようなその他の活性成分を含むことができる。
【0070】
本発明の誘導体は、生分解性の徐放性担体と結合させて埋め込み型の形態で投与することも可能である。あるいは、本発明の誘導体は、有効成分を連続的に放出する経皮投与用パッチとしての剤形も可能である。
【0071】
本発明の塩は、塩基またはカチオン形成化合物(例えばNmG)とDSBとを水溶液中で混合することにより製造する。混合はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリンの存在下で行う。DSBの遊離酸は、米国特許第5,679,828号に記載されている合成法によって得ることができる。
【0072】
ここに、本発明を一般的に説明したが、本発明は、以下の実施例を参照すれば、より容易く理解されよう。
【実施例】
【0073】
実施例1
3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸のジ−(N−メチル−D−グルカミン)塩の製造
N−メチル−D−グルカミン2.09740gをメチルアルコール250mLに溶解した。一晩攪拌しながらDSB3.13295gを加えると、懸濁液は透明になった。溶媒を窒素ガス気流で除去した。粘稠な無色の油状物が形成した。メチルアルコール200mLを加えてこの油状物を溶解させた。攪拌した混合物にジエチルエーテル200mLをゆっくりと加えて、白色の固体を得た。真空濾過により固形物を単離して5.51993gの結晶性の固体を得た。この固体を72時間真空下で乾燥して4.9737gの物質を得た。
【0074】
実施例2
3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸のジ−ナトリウム塩の製造
DSB1.35531gをメタノール50mLに溶解した。固形の水酸化ナトリウム0.18758gを脱イオン水2.0mLに溶解した。2つの混合物を混合し、メタノール15mLでさらに希釈した。混合物が透明になったら、メタノール混合物を、窒素気流により25mLになるまで濃縮した。ジエチルエーテル90mLを加えた。真空濾過の後、常温で真空乾燥して1.45986gの二ナトリウム塩を得た。
【0075】
実施例3
3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸二カリウム塩の製造
DSB4.14657gをメタノール50mLに溶解した。固形の85%水酸化カリウム0.95287gを脱イオン水10mLに溶解した。2つの混合物を混合し、メタノール250mLでさらに希釈した。混合物が透明になったら、窒素気流によりメタノールを除去した。得られた白色の固体をメタノール50mLに溶解し、ジエチルエーテル200mLで析出させた。真空濾過の後、常温で真空乾燥して4.29679gの二カリウム塩を得た。
【0076】
実施例4
本発明の塩の評価および比較例
A.溶解度
DSBの、NmG、カリウムおよびナトリウム塩(それぞれDSB−(NmG)2、DSB−K2およびDSB−(Na)2)の溶解度に関する定量的な結果を、それぞれTable1、2および3に示す。濃度は、賦形剤を重量で加える場合を除いて、mg/mLで示す。これらの濃度はmg/gで示す。表示した濃度は、純度またはさらなる塩のモル質量に関して補正因子を考慮に入れていない。大部分の場合において、良好な製剤は透明の溶液と記載されている。しかし、いくつかの製剤では、薬物を溶解させても、やや着色しているかまたは濁りがみられた。大部分の製剤は、マグネティック・スターラー・プレート上、室温にて混合した。ビタミンE TPGS(ジ−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩)を含む製剤は、混合物を液体に保つために40〜45℃に維持した。
【0077】
特に興味深いことに、これら塩は水中に10%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する溶媒中で形成した。この溶媒系中の27.7mg/mLのDSB−(Na)2の溶液は濁っているが、この溶媒中50.0mg/mLのDSB−(NmG)2の溶液は透明である。このことは、この溶媒中でのDSB−(NmG)2の溶解度は、DSB−(Na)2よりも高いことを示唆している。
【0078】
pHに対するDSB−(NmG)2の溶解度を25℃で測定した。DSB−(NmG)2は、塩基性および中性条件で可溶性であると肉眼で観察された。pH9.461での溶解度は7.537mg/mL、pH10.691での溶解度は7.463mg/mLであると観察された。DSB−(NmG)2は、25℃で強酸性の溶液に不溶性であると肉眼で観察された。
【0079】
DSB−(NmG)2の、どちらも極性溶媒である脱イオン水およびプロピレングリコールにおいては平衡定数が非常に高かった(Table 4参照)。脱イオン水中でのDSB−(NmG)2の溶解度(>18mg/mL、誘電率=88.0)と比較して、メタノール中(37.03mg/mL、誘電率=32.6)とエタノール中(24.99mg/mL、誘電率=24.3)では、溶解度が誘電率と共に減少している。これは、DSB−(NmG)2のイオンの性質と一致している。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0080】
B.インビボバイオアベイラビリティー
雄性のSprague Dawleyラットにおいて経口バイオアベイラビリティー試験を行った。この試験の目的は、遊離酸あるいはNmG、NaまたはKの塩のうちの一形態としてとして投与されるDSBの種々の製剤の薬物動力学を比較することであった。遊離酸または塩の溶液または懸濁液を経口ゾンデを用いて強制経口投与し、ノミナルの経口用量を25mg/kgとした。投与した各塩について、投与量は相当する遊離酸の量を基準にした。グループ番号と製剤を以下に示す。
グループ番号および製剤
グループ1:25mg/mL DSB遊離酸[2%DMA(ジメチルアセトアミド)、14%ビタミンE TPGS、84%Captex(選択された高純度植物脂肪酸とプロピレングリコールから形成されたジエステル(トリグリセリド))中]
グループ2:25mg/mL DSB遊離酸[水中の4%ビタミンE TPGSおよび96%カルボキシメチルセルロース(CMC)(0.5%)の懸濁液中]
グループ3:41.7mg/mL DSB−(NmG)2塩[84%水、4%エタノール、および12%PEG400中](25mg/mLの遊離酸に相当)
グループ4:41.7mg/mL DSB−(NmG)2塩[84%水、4%エタノール、および10%PEG400、2%ビタミンE TPGS(25mg/mLの遊離酸に相当)中]
グループ5:41.7mg/mL DSB−(NmG)2塩[水中、10%ヒドロキシ−β−シクロデキストリン中](25mg/mLの遊離酸に相当)
グループ6:25mg/mL 微粉化DSB遊離酸[0.5%CMC懸濁液中]
グループ7:25mg/mL 微粉化DSB遊離酸[0.5%CMC懸濁液およびビタミンE TPGS中]
グループ8:28.3mg/mL DSB−K2塩[水中、10%ヒドロキシ−β−シクロデキストリン中](25mg/mLの遊離酸に相当)
グループ9:13.5mg/mL DSB−(Na)2塩[水中、10%ヒドロキシ−β−シクロデキストリン中](12.5mg/mLの遊離酸に相当)
グループ10:25mg/mL DSB遊離酸[96%Captex200、4%ビタミンE TPGS中]
【0081】
血液サンプルを以下の時間(0.25、0.5、1、2、4、6、12および24時間)で心臓穿刺により採取した(n=ラット2頭/製剤/時点)。経口製剤のバイオアベイラビリティーは、ラットにおけるDSB試験から得られた静脈内投与後に報告された投与量調整したAUCINF(AUCINF=63.3μgh/mL)に対する、投与量調節の割合を仮定して経口投与量調整したAUCINFの比として計算した。
【0082】
この試験の結果をTable 5に示す。NmG塩の製剤は、49〜71%の範囲にある最も高い経口バイオアベイラビリティーを示した。投与量が同じグループ5、8、9の、10%ヒドロキシ−β−シクロデキストリン水溶液の溶媒中でのバイオアベイラビリティーは、NmG>カリウム>ナトリウム塩の順であった。
【表6】

【0083】
実施例5
HIV感染のSCID−hu Thy/LivモデルマウスにおけるDSB−(NmG)2の in vivoでの抗HIV効果のキャラクタリゼーション
この試験を行い、1日2回、22日間強制経口投与で処置した雄性のSCID−huThy/Livマウス(7頭/群)において、DSB(DSB−(NmG)2)のNmG塩100および300mg/kg/日の用量の抗ウイルス活性を評価した(投与量は遊離酸の量として換算、即ち用量中に存在するDSBの量)。300mg/kg/日の投与量レベルで、非感染のSCID−huThy/Livマウスの群に投与してこの投与量レベルの許容性を調べた。ポジティブコントロールとして、30mg/kg/日にて3TC(ラミブジン)を1日一回22日間経口強制投与した。6週齢の雄性のC.B17SCIDマウスを入手し、単一のドナーから得たヒト胎児組織を移植した。14週目に、マウスにヒト胎児肝臓およびヒト胎児胸腺の断片を腎臓被膜下に移植し、SCID−huThy/Livマウスを作製した。移植片がおよそ30mm3に達したら、ラットを実験に付した。BSL3ガイドラインに従い、制限された動物防護施設内で、麻酔下にSCID−huThy/LivマウスにHIV−1を接種した。各Thy/Liv移植片を50μL(1、000TCID50)のNL4−3バッチJKWS1D3(希釈率1:2)またはRPMI1640培地とともに1〜3カ所に250μLのハミルトンガラス注射筒と30ゲージ×1/2インチの先のとがっていない針を用いて注射した。この実験のために、移植片を組織移植から18週間後に接種した。接種後21日目にすべての移植片を回収した。
【0084】
投与用ビークルを10%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液とした。各投与前に投与用溶液を新たに調製し、DSB遊離酸を100および300mg/kg/日で投与するために12および38mg/mLの濃度にした。
【0085】
1日2回マウスに経口強制投与を行い(200μL/投与)、毒性の兆候について観察した。300mg/kg/日で処置したマウスにおいて毒性が観察されたので、5日間の回復期間(処置せず)の後、処置の開始後7日目から投与量のレベルを150mg/kg/日に減らした。処置したマウスは、投与時に毒性の兆候について観察し、2〜5日毎に体重を測定した。最初の投与から1日後にNL4−3をマウスに接種し(AM投与から1〜2時間後)、投与を22間行った。
【0086】
接種から21日後に、Thy/Liv移植片を外科的に切除し、冷却した滅菌PBS/2%FBS(ウシ胎児血清)を含有する6ウェルの組織培養プレートに移した。滅菌したナイロンメッシュ袋に移植片を入れ、これを60mm組織培養皿内のPBS/2%FBS中に浸し、ピンセットを用いて組織をナイロンの層と層との間で散らすことにより、単細胞懸濁液を作製した。細胞をCoulterカウンターで計数し、適当な数の細胞を各々の分析のために分注した。p24ELISAのために、2.5×106細胞のペレットを400μLのp24溶解緩衝液に再懸濁し、4℃で一晩旋回させ−20℃に保存した。branched DNA assayによるRNA定量のため、5×106細胞の乾燥ペレットを凍結し、−80℃に保存した。FACS解析のために、106細胞/ウェルを96ウェルプレートに加えて固定、染色し、同じ日に4色FACS解析により解析した。
【0087】
ウイルス接種の24時間前から開始したDSB−(NmG)2の100および150mg/kg/日での1日2回の経口強制投与は、この試験において、NL4−3に対し、強力で、用量依存的な抗ウイルス活性を示した。最も高い投与量レベルでは、p24は99%減少し(未処置の106細胞あたり440pgのp24に対し、14pg)およびHIV−1RNAは97%(106細胞あたり103.4対105.6コピー)減少し、CD4+CD8+胸腺細胞におけるMHC−I発現はより正常なレベルにまで減少した(平均蛍光強度250対530)。100mg/kg/日で、移植片のp24およびウイルスRNAについて、顕著ではないが統計的に有意な減少が認められ(106細胞あたりp24 69pgおよび104.0コピー)、10%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンビークル単独での処置の後では減少は認められなかった(106細胞あたりp24 590pgおよび105.6コピー)。
【0088】
ウイルス接種の24時間前から開始した3TCの100mg/kg/日での1日一回の経口強制投与により、p24は97%減少し(106細胞あたりp2435pg対440pg)、HIV−1RNAは96%減少し(106細胞あたり104.2対105.6コピー)、胸腺細胞の生存率は維持され(胸腺細胞の生存率71%)、この試験において抗ウイルス活性が実証された。
【0089】
これらのデータは、DSB−(NmG)2がインビボでHIV−1複製の強力な阻害剤であることを示している。このモデルでは、DSB−(NmG)2は3TCと同様の効力を示した。
【0090】
まとめ
DSBのこれらの塩はすべて、遊離酸の水溶解度(約100μg/mL)と比較して有意に高い水溶解度を示した。DSBのNmG塩は、10%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン水溶液中での溶解度が、カリウム塩とナトリウム塩の両方と比較して明らかに高かった。ラットのバイオアベイラビリティー試験では、5種類のDSBのこれら塩の製剤(NmG塩3種、ナトリウム塩1種およびカリウム塩1種)と遊離酸を含有する5種類の製剤を調べた。NmG塩の製剤は、49%〜71%の範囲の最も高い経口バイオアベイラビリティーを示した。さらに、SCID−huマウスを用いた実験では、DSG−(NmG)2が in vivo でHIV複製の強力な阻害剤であることが示された。
【0091】
上記の具体的な態様は、一般的な概念から逸脱することなく、現状の知見を適用することにより、様々な応用に対してこのような具体的態様を容易に修飾および/または適合化することができるという本発明の性質を十分に明らかにするものであり、そのような適合化や修飾は、開示した態様の均等の意味と範囲に含まれると解釈されると意図するものである。本明細書における表現や用語は、説明を目的としたものであって限定を意味するものではないと理解されるものである。
【0092】
本明細書において引用した文献はすべて参考のために援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸のN−メチル−D−グルカミン塩。
【請求項2】
3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸のジ−(N−メチル−D−グルカミン)塩。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塩および製薬的に許容し得る担体または希釈剤を含有する医薬組成物。
【請求項4】
担体または希釈剤が無水溶媒である請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
さらにシクロデキストリンを含有する請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらにヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
有効量の請求項2記載の塩を対象に投与することを含んでなるHIV感染を処置する方法。
【請求項8】
前記塩を少なくとも1つのさらなる活性成分と組み合わせて投与する請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらなる活性成分が抗ウイルス剤である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記塩を免疫調節剤、抗癌剤、抗菌剤、抗真菌剤またはその組合せと組み合わせて患者に投与する請求項7記載の方法。
【請求項11】
対象に有効量の請求項3記載の医薬組成物を投与することを含んでなるHIV感染を処置する方法。
【請求項12】
前記医薬組成物を少なくとも1つのさらなる活性成分と組み合わせて投与する請求項11記載の方法。
【請求項13】
さらなる活性成分が抗ウイルス剤である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記化合物を、免疫調節剤、抗癌剤、抗菌剤、抗真菌剤またはその組合せと組み合わせて患者に投与する請求項11記載の方法。
【請求項15】
有効量の請求項4記載の医薬組成物を患者に投与することを含んでなるHIV感染を処置する方法。
【請求項16】
前記医薬組成物を少なくとも1つのさらなる活性成分と組み合わせて投与する請求項15記載の方法。
【請求項17】
有効量の請求項5記載の医薬組成物を患者に投与することを含んでなるHIV感染を処置する方法。
【請求項18】
前記医薬組成物を少なくとも1つのさらなる活性成分と組み合わせて投与する請求項17記載の方法。
【請求項19】
有効量の請求項6記載の医薬組成物を投与することを含んでなるHIV感染を処置する方法。
【請求項20】
前記医薬組成物を少なくとも1つのさらなる活性成分と組み合わせて投与する請求項19記載の方法。
【請求項21】
N−メチル−D−グルカミンと3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸とを無水溶媒中で混合して3−O−(3’,3’−ジメチルスクシニル)ベツリン酸N−メチル−D−グルカミン塩を得ることを含んでなる請求項1記載の塩の製造方法。
【請求項22】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの存在下で混合を行う請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項3記載の医薬組成物を含んでなる投与剤形。
【請求項24】
固体の経口投与剤形、非経口の投与剤形、液体の投与剤形、懸濁液の投与剤形または直腸坐薬である請求項23記載の投与剤形。
【請求項25】
錠剤である請求項23記載の投与剤形。

【公表番号】特表2007−529544(P2007−529544A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504115(P2007−504115)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/008935
【国際公開番号】WO2005/090380
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500407787)パナコス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】