説明

3型メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP−3)に結合するポリペプチド、組成物および方法

本発明は、TIMP−3結合組成物、こうした組成物を産生する方法、および多様な状態の治療における使用法を含めた、こうした組成物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、35U.S.C.§119に基づいて、2009年7月31日出願の米国仮出願第61/230,445号、および2010年7月22日出願の米国仮出願第61/366,783号の優先権を主張し、これらの出願は、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表についての言及
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。配列表は、2010年7月27日に作成されたA−1487−WO−PCT Seq List.txtと題されるファイルとして提供されており、サイズは39.9KBである。配列表の電子形式の情報は、その全体が本明細書に援用される。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般的に、メタロプロテイナーゼ阻害剤に、そして該阻害剤に結合するタンパク質に関する。特に本発明は、メタロプロテイナーゼ3(「TIMP−3」)の組織阻害剤、および該阻害剤が、スカベンジャー受容体低密度リポタンパク質関連タンパク質1(「LRP−1」)に結合する能力に関する。
【背景技術】
【0004】
結合組織および関節軟骨は、細胞外マトリックス合成および分解の反対の影響による動的平衡に維持される。マトリックスの分解は、主に、マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)およびトロンボスポンジン・モチーフを含むディスインテグリン−メタロプロテイナーゼ(ADAMTS)を含むメタロプロテイナーゼの酵素作用によってもたらされる。これらの酵素は、多くの天然プロセス(発生、形態形成、骨リモデリング、創傷治癒および血管形成を含む)において重要であるが、レベルの上昇は、関節リウマチおよび変形性関節症を含む結合組織の変性疾患、ならびに癌および心臓血管状態において役割を果たすと考えられる。
【0005】
メタロプロテイナーゼの内因性阻害剤には、血漿アルファ2−マクログロブリンおよびメタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP)が含まれ、このうち、ヒトゲノムには4つがコードされることが知られている。TIMP−3は、すべての主な軟骨分解メタロプロテアーゼを阻害し、そして多数の証拠によって、該阻害剤が軟骨を保護することが示される。軟骨外植片に該タンパク質を添加すると、サイトカイン誘導性の分解が防止され、そして関節内に注射すると、変形性関節症のラット内側半月板断裂モデルにおいて、軟骨損傷が減少する。しかし、MMP活性の療法的阻害剤としてのTIMP−3開発は、TIMP−3の組換え型の産生が困難であり、そして半減期が短いことによって妨げられてきている。
【0006】
LDL受容体関連タンパク質(LRP−1)は、プロテイナーゼおよびプロテイナーゼ阻害剤のホメオスタシスにおける役割を含めて多様な生物学的役割を持つ、低密度リポタンパク質(LDL)受容体遺伝子ファミリーのメンバーである。LDL受容体遺伝子ファミリーの他のメンバーと同様、LRP−1の構造は、細胞外ドメインにおける4つの共通の構造単位で形成され、この単位の各々は、さらに、システイン・リッチ反復、および上皮増殖因子受容体様システイン・リッチ反復を含む、より小さい反復ドメインで構成される。このスカベンジャー受容体構造に関するより詳細な情報は、例えば、HerzおよびStrickland,J.Clin.Invest.108:779(2001)において入手可能である。
【0007】
LRP−1は、Pro−MMP−2/TIMP−2複合体のエンドサイトーシス性クリアランスを仲介することが示されてきている(Emonardら,J.Biol.Chem.279:54944;2004)。さらに、CaPPSと称される、ブナ材由来の化学的に硫酸化されたキシロピラノースが、TIMP−3の軟骨レベルを増加させることが示されてきている(Troebergら,FASEB J 22:3515;2008)。この効果は、LRP−1の一般的な阻害剤であり、やはり培養軟骨細胞培地中のTIMP−3のレベルを増加させる受容体関連タンパク質(RAP)の効果との類似性のために、LRP−1を介したTIMP−3のエンドサイトーシスが遮断されるためであると示唆された。。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】HerzおよびStrickland,J.Clin.Invest.108:779(2001)
【非特許文献2】Emonardら,J.Biol.Chem.279:54944;2004
【非特許文献3】Troebergら,FASEB J 22:3515;2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当該技術分野において、TIMP−3がLRP−1と直接相互作用するかどうかを決定し、そして十分な正確さで、いかなるこうした相互作用も定義して、TIMP−3生物学的活性におけるLRP−1およびTIMP−3間のいかなる結合の影響の決定も可能にする必要性がある。さらに、TIMP−3の量を増加させるように、こうした相互作用に特異的に作用する、特にTIMP−3生物学的活性に不都合に作用することなく上記のように作用することが可能な剤を同定する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、TIMP−3に結合し、そしてLRP−1によるTIMP−3の内在化を阻害する、TIMP−3結合タンパク質を提供する。TIMP−3結合タンパク質は、抗体またはLRP−1ペプチドであってもよい。1つの側面において、TIMP−3結合タンパク質は、TIMP−3によるMMP−13の阻害を30%未満減少させる(すなわちTIMP−3がMMP−13を阻害する能力に比較的わずかな干渉しか示さない)。
【0011】
本発明はさらに、TIMP−3に結合し、そしてLRP−1によるTIMP−3の内在化を阻害するTIMP−3結合タンパク質を、TIMP−3と接触させることによって、細胞外マトリックス中のTIMP−3を増加させる方法を提供する。TIMP−3結合タンパク質は、抗体またはLRP−1ペプチドであってもよい。1つの側面において、請求するTIMP−3結合タンパク質は、TIMP−3によるMMP−13の阻害を30%未満減少させる(すなわちTIMP−3がMMP−13を阻害する能力に比較的わずかな干渉しか示さない)。in vivo、ex vivoまたはin vitroで、TIMP−3をTIMP−3結合タンパク質と接触させ;TIMP−3結合タンパク質を哺乳動物に投与することによって、in vivoでのTIMP−3とTIMP−3結合タンパク質の接触を達成してもよい。
【0012】
本発明はまた、マトリックス・メタロプロテイナーゼが有害な役割を果たす状態に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、LRP−1によるTIMP−3の内在化を阻害するTIMP−3結合タンパク質を哺乳動物に投与する工程を含む、前記方法も提供する。TIMP−3結合タンパク質は、抗体またはLRP−1ペプチドであってもよい。1つの側面において、TIMP−3結合タンパク質は、TIMP−3によるMMP−13の阻害を30%未満減少させる(すなわちTIMP−3がMMP−13を阻害する能力に比較的わずかな干渉しか示さない)。状態は、炎症、癌、および細胞外マトリックスの過剰な分解によって特徴付けられる状態からなる群より選択可能であり;例えば、状態は変形性関節症および鬱血性心不全からなる群より選択可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、TIMP−3に結合するポリペプチド、例えば天然存在ポリペプチド(すなわちLRP−1ポリペプチド)およびその断片、抗TIMP−3抗体、抗体断片、および抗体誘導体に関する組成物、キット、および方法を提供する。やはり提供されるのは、TIMP−3に結合するポリペプチドのすべてまたは一部をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、ならびにその誘導体および断片、例えば、こうしたTIMP−3結合タンパク質のすべてまたは一部をコードする核酸、こうした核酸を含むプラスミドおよびベクター、ならびにこうした核酸および/またはベクターおよびプラスミドを含む細胞または細胞株である。提供される方法には、例えば、TIMP−3に結合する分子、例えば抗TIMP−3抗体を作製するか、同定するか、または単離する方法、分子がTIMP−3に結合するかどうかを決定する方法、分子がTIMP−3活性をアゴナイズするかまたはアンタゴナイズするかどうかを決定する方法、ならびに分子がTIMP−3の集積を促進するかどうかを決定する方法が含まれる(例えば、軟骨細胞様細胞または細胞株の培養において、あるいはex vivo軟骨外植片において)。
【0014】
TIMP−3は、哺乳動物において、多様な細胞または組織によって発現され、そして細胞外マトリックスに存在する;こうして発現されるTIMP−3は、本明細書において、「内因性」TIMP−3と称される。哺乳動物において、内因性TIMP−3の量を増加させるか、上昇させるかまたは増進させることが好適であろう、多くの状態が存在する。したがって、やはり本明細書において、TIMP−3に結合する分子を含む薬学的組成物などの組成物を作製する方法、およびTIMP−3に結合する分子を含む組成物を被験体に投与するための方法、例えばTIMP−3の集積を促進することによって、TIMP−3の内因性の量を増加させることによって、細胞に対するTIMP−3の結合を阻害することによって、TIMP−3の内在化を減少させることによって、そして/またはTIMP−3の生物学的活性をin vivo、ex vivoまたはin vitroでアゴナイズすることによって、状態を治療するための方法も提供する。
【0015】
標準的1文字または3文字略語を用いて、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を示す。別に示さない限り、各ポリペプチド配列は、左側にアミノ末端および右側にカルボキシ末端を有し;各一本鎖核酸配列、および各二本鎖核酸配列の上部鎖は、左側に5’末端および右側に3’末端を有する。特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列はまた、参照配列とどのように異なるかを説明することによっても記載可能である。
【0016】
本明細書において、別に定義しない限り、本発明と関連して用いられる科学的および技術的用語は、一般の当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別に必要とされない限り、単数形の用語は複数のものを含み、そして複数形の用語は単数形を含むものとする。一般的に、本明細書に記載する、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連して用いられる術語、ならびにそれらの技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に用いられるものである。本発明の方法および技術は、別に示さない限り、一般的に、当該技術分野に周知の慣用法にしたがって、そして本明細書全体で引用され、そして論じられる、多様な一般的な参考文献およびより特異的な参考文献に記載されるように、行われる。例えば、本明細書に援用される、SambrookらMolecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)、ならびにAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1990)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載するように、製造者の指定にしたがって行われる。本明細書記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医学的および薬学的化学と関連して用いられる専門用語、ならびにこうした化学の実験法および技術は、当該技術分野に周知であり、そして一般的に知られるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、配合、および送達、ならびに患者の治療には、標準的技術を用いてもよい。
【0017】
以下の用語は、別に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである:
用語「単離分子」は(分子が、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である場合)、その起源または派生供給源によって、(1)天然状態で該分子に付随する、天然に会合する構成要素と関連していないか、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、または(4)人の介入なしに天然には存在しない分子である。したがって、化学的に合成されたか、または天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成される分子は、天然に関連する構成要素から「単離されている」であろう。分子はまた、当該技術分野に周知の精製技術を用いた単離によって、天然に会合する構成要素を実質的に含まないようにされうる。当該技術分野に周知のいくつかの手段によって、分子純度または均一性をアッセイしてもよい。例えば、当該技術分野に周知の技術を用いて、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用い、そしてゲルを染色してポリペプチドを視覚化して、ポリペプチド試料の純度をアッセイしてもよい。特定の目的のため、HPLCまたは当該技術分野に周知の精製のための他の手段を用いることによって、より高い解像度を提供してもよい。
【0018】
本明細書記載の「TIMP−3アゴニスト」は、例えば、TIMP−3が1またはそれより多くのメタロプロテイナーゼを阻害する能力を有意に減少させることなく、in vitro、ex vivoまたはin vivoで、TIMP−3の量(集積)を増加させることによって、TIMP−3の少なくとも1つの機能を検出可能に増加させる分子である。TIMP−3機能の任意のアッセイが使用可能であり、その例を本明細書に提供する。TIMP−3アゴニストによって増加させうるTIMP−3機能の例には、MMP−13を含むマトリックス・メタロプロテイナーゼの阻害が含まれる。例えば、TIMP−3アゴニストは、軟骨外植片、または軟骨細胞培養からのMMP−13阻害活性を増加させることも可能であり、あるいは、in vivoでTIMP−3のレベルを増進させ、それによって、in vivoでMMP−13阻害活性を増加させることも可能である。TIMP−3アゴニストのタイプの例には、限定されるわけではないが、TIMP−3結合ポリペプチド、例えばLRP−1由来のポリペプチド、ならびに抗原結合タンパク質(例えばTIMP−3抗原結合タンパク質)、抗体、抗体断片、および抗体誘導体が含まれる。
【0019】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、各々、ペプチド結合によって互いに連結された2またはそれより多いアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの用語は、例えば天然および人工的タンパク質、タンパク質断片、およびタンパク質配列のポリペプチド類似体(突然変異タンパク質(mutein)、変異体、および融合タンパク質など)、ならびに翻訳後、あるいは別の共有的または非共有的修飾タンパク質を含む。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、単量体性または多量体性であってもよい。
【0020】
用語「ポリペプチド断片」は、本明細書において、対応する全長タンパク質に比較した際、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。断片は、例えば、少なくとも長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、70、80、90、100、150または200アミノ酸であってもよい。断片はまた、例えば、最大で、長さ1,000、750、500、250、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11、または10アミノ酸であってもよい。断片は、さらに、どちらかまたは両方の端に、1またはそれより多いさらなるアミノ酸、例えば異なる天然存在タンパク質(例えばFcまたはロイシンジッパードメイン)または人工的アミノ酸配列(例えば人工的リンカー配列またはタグタンパク質)由来のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0021】
本発明のポリペプチドには、例えば:(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させ、(2)酸化に対する感受性を減少させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合アフィニティを改変し、(4)結合アフィニティを改変し、そして(4)他の物理化学特性または機能特性を与えるかまたはこうした特性を修正するように、いずれかの方式で、そしていずれかの理由のために修飾されているポリペプチドが含まれる。類似体には、ポリペプチドの突然変異タンパク質が含まれる。例えば、単数または多数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を天然存在配列において(例えば、分子間接触を形成するドメイン(単数または複数)外のポリペプチドの部分において)行うことも可能である。コンセンサス配列を用いて、置換するアミノ酸残基を選択してもよく;当業者はさらなるアミノ酸残基もまた置換可能であることを認識する。
【0022】
「保存的アミノ酸置換」は、親配列の構造特徴を実質的に変化させないものである(例えば置換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを中断させるか、あるいは親配列を特徴付けるかまたはその機能に必要な他のタイプの二次構造を破壊する傾向があってはならない)。当該技術分野に認識されるポリペプチド二次構造および三次構造の例が、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton監修,W.H. Freeman and Company,ニューヨーク(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze監修,Garland Publishing,ニューヨーク州ニューヨーク(1991));およびThorntonらNature 354:105(1991)に記載され、これらは各々、本明細書に援用される。
【0023】
本発明はまた、TIMP−3結合ポリペプチドの非ペプチド類似体も提供する。非ペプチド類似体は、テンプレート・ペプチドのものに類似の特性を持つ薬剤として、薬学的産業において一般的に用いられる。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」(「peptide mimetics」または「peptidomimetics」)と称され、例えば、本明細書に援用される、Fauchere,J. Adv. Drug Res.15:29(1986);VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);ならびにEvansらJ.Med.Chem.30:1229(1987)を参照されたい。療法的に有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、同等の療法効果または予防効果を生じることも可能である。一般的に、ペプチド模倣体は、ヒト抗体などの模範(paradigm)ポリペプチド(すなわち所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)、例えばヒト抗体に構造的に類似であるが、当該技術分野に周知の方法によって:−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−−CH−−、−−CH=CH−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−、および−−CHSO−−からなる群より選択される連結により、場合によって置換された1またはそれより多いペプチド連結を有する。コンセンサス配列の1またはそれより多いアミノ酸を、同じタイプのD−アミノ酸(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)で体系的に置換して、より安定なペプチドを生成することも可能である。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変動を含む、制約された(constrained)ペプチドを、当該技術分野に知られる方法(本明細書に援用される、RizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992))によって生成することも可能であり、これは例えば、ペプチドを環化する、分子内ジスルフィド架橋を形成可能な内部システイン残基を付加することによる。
【0024】
ポリペプチド(例えば抗体)の「変異体」は、別のポリペプチド配列に比較して、1またはそれより多いアミノ酸残基がアミノ酸配列内に挿入され、該配列から欠失し、そして/または該配列内で置換された、アミノ酸配列を含む。本発明の変異体には融合タンパク質が含まれる。
【0025】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば別の化学部分(例えばポリエチレングリコール、またはアルブミン、例えばヒト血清アルブミンなど)へのコンジュゲート化、リン酸化、およびグリコシル化を介して、化学的に修飾されているポリペプチド(例えば抗体)である。別に示さない限り、用語「抗体」には、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、変異体、断片、および突然変異タンパク質が含まれ、それらの例を以下に記載する。
【0026】
「抗原結合タンパク質」は、抗原に結合する部分、および場合によって、抗原結合部分が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進するコンホメーションを採用するのを可能にする足場またはフレームワーク部分を含む、タンパク質である。抗原結合タンパク質の例には、抗体、抗体断片(例えば抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体類似体が含まれる。抗原結合タンパク質は、例えば移植されたCDRまたはCDR誘導体を含む別のタンパク質足場または人工的足場を含むことも可能である。こうした足場には、限定されるわけではないが、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化させるために導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成の足場が含まれる。例えば、Korndorferら,2003,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,第53巻,第1号:121−129;Roqueら,2004,Biotechnol.Prog.20:639−654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体模倣体(「PAM」)、ならびにフィブロネクチン構成要素を足場として利用する抗体模倣体に基づく足場を使用してもよい。
【0027】
抗原結合タンパク質は、例えば、天然存在免疫グロブリンの構造を有することも可能である。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然存在免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一ポリペプチド鎖の対で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識に関与する、約100〜110またはそれより多いアミノ酸の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する、定常領域を明示する。ヒト軽鎖は、カッパまたはラムダ軽鎖と分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンと分類され、そしてそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12またはそれより多いアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖はまた、約10またはそれより多いアミノ酸の「D」領域も含む。一般的に、Fundamental Immunology 第7章(Paul,W.監修,第2版 Raven Press,ニューヨーク(1989))(あらゆる目的のため、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、損なわれていない(intact)免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
【0028】
天然存在免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって連結される、比較的保存されるフレームワーク領域(FR)の、同じ一般構造を示す。軽鎖および重鎖はどちらも、N末端からC末端に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、KabatらのSequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,米国保健社会福祉省,PHS,NIH,NIH刊行物第91−3242号,1991の定義にしたがう。免疫グロブリン鎖中のアミノ酸に関する他の番号付け系には、IMGT(登録商標)(国際ImMunoGeneTics情報系;Lefrancら,Dev.Comp.Immunol.29:185−203;2005)およびAHo(HoneggerおよびPluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657−670;2001)が含まれる。
【0029】
多様な抗原特異性を有する免疫グロブリンを含有する血清または血漿などの供給源から、抗体を得てもよい。こうした抗体をアフィニティ精製に供すると、特定の抗原特異性に関して濃縮可能である。抗体のこうした濃縮調製物は、通常、特定の抗原に関する特異的結合活性を有する、約10%未満の抗体で構成される。これらの調製物をアフィニティ精製に数回供すると、抗原に関して特異的結合活性を有する抗体の比率を増加させうる。この方式で調製される抗体は、しばしば、「単一特異性」と称される。単一特異性抗体調製物は、特定の抗原に関する特異的結合活性を有する抗体、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または99.9%で構成されうる。
【0030】
「抗体」は、別に明記しない限り、損なわれていない免疫グロブリン、または特異的結合に関して、損なわれていない抗体と競合する、その抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、あるいは損なわれていない抗体の酵素的切断または化学的切断によって、産生可能である。抗原結合部分には、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)断片、可変領域断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ならびに少なくとも、ポリペプチドへの特異的抗原結合性を与えるのに十分な免疫グロブリン部分を含有するポリペプチドが含まれる。
【0031】
Fab断片は、V、V、CおよびC1ドメインを有する一価断片であり;F(ab’)断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を有する二価断片であり;Fd断片は、VおよびC1ドメインを有し;Fv断片は、抗体の単一アームのVおよびVドメインを有し;そしてdAb断片は、Vドメイン、Vドメイン、あるいはVまたはVドメインの抗原結合断片を有する(米国特許第6,846,634号、第6,696,245号、米国出願公報第05/0202512号、第04/0202995号、第04/0038291号、第04/0009507号、第03/0039958号、Wardら,Nature 341:544−546,1989)。
【0032】
一本鎖抗体(scFv)は、VおよびV領域がリンカー(例えばアミノ酸残基の合成配列)を介して連結されて、連続タンパク質鎖を形成する抗体であり、ここでリンカーは、タンパク質鎖が、それ自体、折り畳まれ、そして一価抗原結合部位を形成するのを可能にするのに十分に長い(例えば、Birdら,1988,Science 242:423−26およびHustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83を参照されたい)。ディアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であって、各ポリペプチド鎖は、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成するのを可能にするにはあまりにも短く、したがって各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補ドメインと対形成するのを可能にするリンカーによって連結されたVおよびVドメインを含む(例えば、Holligerら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−48、およびPoljakら,1994,Structure 2:1121−23を参照されたい)。ディアボディの2つのポリペプチド鎖が同一であるならば、その対形成から生じるディアボディは、2つの同一の抗原結合部位を有するであろう。異なる配列を有するポリペプチド鎖を用いて、2つの異なる抗原結合部位を持つディアボディを作製することも可能である。同様に、トリアボディおよびテトラボディは、それぞれ、3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、そして、同じであってもまた異なってもよい、それぞれ、3つおよび4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0033】
Kabatら、上記;Lefrancら、上記および/またはHoneggerおよびPluckthun、上記に記載される系を用いて、所定の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)を同定してもよい。1またはそれより多いCDRを共有的または非共有的のいずれかで分子内に取り込んで、抗原結合タンパク質にすることも可能である。抗原結合タンパク質は、より長いポリペプチド鎖の一部としてCDR(単数または複数)を取り込むことも可能であるし、別のポリペプチド鎖にCDR(単数または複数)を共有結合させることも可能であるし、または非共有的にCDR(単数または複数)を取り込むことも可能である。CDRは、抗原結合タンパク質が、関心対象の特定の抗原に特異的に結合するのを可能にする。
【0034】
抗原結合タンパク質は、1またはそれより多い結合部位を有してもよい。1より多い結合部位がある場合、結合部位は、互いに同一であっても、また異なってもよい。例えば、天然存在ヒト免疫グロブリンは、典型的には2つの同一の結合部位を有し、一方、「二重特異性」または「二官能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0035】
用語「ヒト抗体」には、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1またはそれより多い可変領域および定常領域を有する抗体すべてが含まれる。1つの態様において、可変ドメインおよび定常ドメインのすべてがヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、多様な方法で調製可能であり、その例を以下に記載し、これらには、ヒト重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝子修飾されたマウスの、関心対象の抗原での免疫を通じたものが含まれる。
【0036】
ヒト化抗体は、ヒト被験体に投与された際、非ヒト種抗体に比較すると、免疫応答を誘導する可能性がより低く、そして/またはより重度でない免疫応答を誘導するように、1またはそれより多いアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって、非ヒト種に由来する抗体の配列と異なる配列を有する。1つの態様において、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸を突然変異させて、ヒト化抗体を産生する。別の態様において、ヒト抗体由来の定常ドメイン(単数または複数)を、非ヒト種の可変ドメイン(単数または複数)に融合させる。別の態様において、非ヒト抗体の1またはそれより多いCDR配列中の1またはそれより多いアミノ酸残基を変化させて、ヒト被験体に投与された際、非ヒト抗体のありうる免疫原性を減少させ、ここで抗原へのヒト化抗体の結合が、抗原への非ヒト抗体の結合より有意に劣らないように、変化させるアミノ酸残基は、抗原への抗体の免疫特異的結合にそれほど重要でないか、または作製されるアミノ酸配列への変化が保存的変化であるか、いずれかである。ヒト化抗体をどのように作製するかの例を、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、および第5,877,293号に見出すことも可能である。
【0037】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1またはそれより多い領域および1またはそれより多い他の抗体由来の1またはそれより多い他の領域を含有する抗体を指す。1つの態様において、1またはそれより多いCDRが、ヒト抗TIMP−3抗体に由来する。別の態様において、すべてのCDRが、ヒト抗TIMP−3抗体に由来する。別の態様において、1より多いヒト抗TIMP−3抗体由来のCDRを混合し、そしてキメラ抗体中でマッチングさせる。例えば、キメラ抗体は、第一のヒト抗TIMP−3抗体の軽鎖由来のCDR1、第二のヒト抗TIMP−3抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3、ならびに第三の抗TIMP−3抗体由来の重鎖由来のCDRを含んでもよい。他の組み合わせが可能であり、そして本発明の態様内に含まれる。
【0038】
さらに、フレームワーク領域は、同じ抗TIMP−3抗体の1つに、ヒト抗体などの1またはそれより多い異なる抗体に、またはヒト化抗体に由来してもよい。キメラ抗体の1つの例において、重鎖および/または軽鎖の部分は、特定の種由来であるか、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体と同一であるか、該抗体に相同であるか、または該抗体に由来する一方、鎖(単数または複数)の残りは、別の種由来であるか、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体(単数または複数)と同一であるか、該抗体に相同であるか、または該抗体に由来する。やはり含まれるのは、所望の生物学的活性(すなわちTIMP−3に特異的に結合する能力)を示す、こうした抗体の断片である。例えば米国特許第4,816,567号およびMorrison,1985,Science 229:1202−07を参照されたい。
【0039】
「LRP−1阻害抗体」は、本明細書において実施例に記載するものなどのアッセイを用いて、過剰な抗TIMP−3抗体が、相互作用の量を、少なくとも約20%減少させる場合の、LRP−1とTIMP−3の相互作用を阻害する抗体である。多様な態様において、抗原結合タンパク質は、LRP−1とTIMP−3の相互作用を、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、および99.9%減少させる。他の態様において、抗原結合タンパク質は、TIP−3の集積を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、および99.9%増加させる。
【0040】
いくつかのLRP−1阻害抗体は、LRP−1へのTIMP−3の結合を阻害する可能性もあり、そしてまた、TIMP−3がMMPを阻害する能力に干渉する可能性もある。しかし、いくつかのLRP−1阻害抗体は、TIMP−3がMMPを阻害する能力に不都合に影響を及ぼすことなく、LRP−1へのTIMP−3の結合を阻害し;こうした抗体は、本明細書において、「アゴナイズ性」または「アゴニスト性」抗体と称される。アゴニスト性抗体は、一般的に、MMP阻害活性の40%未満、30%、20%、10%、5%、1%、または1%未満の減少を生じるであろう。
【0041】
抗体の断片または類似体は、本明細書の解説にしたがって、そして当該技術分野に周知の技術を用いて、一般の当業者によって、容易に調製可能である。断片または類似体のアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能ドメインの境界近傍に存在する。公共のまたは私有の(proprietary)配列データベースに、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを比較することによって、構造ドメインおよび機能ドメインを同定することも可能である。コンピュータ比較法を用いて、既知の構造および/または機能を持つ他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンホメーションドメインを同定してもよい。既知の三次元構造にフォールディングするタンパク質配列を同定する方法が知られる。例えばBowieら,1991,Science 253:164を参照されたい。
【0042】
「CDR移植抗体」は、特定の種またはアイソタイプの抗体由来の1またはそれより多いCDR、および同じまたは異なる種またはアイソタイプの別の抗体のフレームワークを含む抗体である。
【0043】
「多重特異性抗体」は、1またはそれより多い抗原上の1より多いエピトープを認識する抗体である。このタイプの抗体のサブクラスは、同じまたは異なる抗原上の2つの別個のエピトープを認識する「二重特異性抗体」である。
【0044】
抗原結合タンパク質は、1ナノモルまたはそれより低い解離定数で、抗原に結合する場合、抗原(例えばヒトTIMP−3)に「特異的に結合する」。
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用して、そして抗原に対する抗原結合タンパク質の特異性およびアフィニティに寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含有する抗原結合タンパク質の部分である。抗原に特異的に結合する抗体に関しては、CDRドメインの少なくとも1つの少なくとも部分を含むであろう。
【0045】
「エピトープ」は、抗原結合タンパク質によって(例えば抗体によって)結合される分子の部分である。エピトープは、分子の非隣接部分を含んでもよい(例えばポリペプチド中、ポリペプチドの一次配列においては隣接しないが、ポリペプチドの三次構造および四次構造の背景においては、互いに、抗原結合タンパク質によって結合されるのに十分に近い、アミノ酸残基)。エピトープはまた、抗原結合タンパク質以外の結合タンパク質が結合する分子部分を指す際にも使用可能であり、そして同様に、分子の直鎖、連続、または非連続部分も含んでもよい。
【0046】
タンパク質配列および三次元構造の分析は、多くのタンパク質が、「単量体ドメイン」と称される多くの別個の単位で構成されることを明らかにしてきた。別個の単量体ドメインタンパク質の大部分は細胞外であるか、または膜結合タンパク質の細胞外部分を構成する。
【0047】
別個の単量体ドメインの重要な特性は、単独で、または何らかの限定された補助をもってフォールディングする能力である。限定された補助には、シャペロニン(単数または複数)(例えば受容体関連タンパク質(RAP))の補助が含まれうる。金属イオン(単数または複数)の存在もまた、限定された補助を提供しうる。単独でフォールディングする能力は、新規のタンパク質環境に挿入された際、ドメインのミスフォールディングを防止する。この特性は、別個の単量体ドメインが進化的に可動性であることを可能にしてきた。その結果、別個のドメインは進化中に分散してきており、そして現在、そうでなければ関連しないタンパク質中に存在する。フィブロネクチンIII型ドメインおよび免疫グロブリン様ドメインを含むいくつかのドメインが、多くのタンパク質に存在する一方、他のドメインは限定された数のタンパク質中にしか見られない。
【0048】
これらのドメインを含有するタンパク質は、多様なプロセス、例えば、細胞輸送体、コレステロール移動、発生および神経伝達に関与するシグナル伝達およびシグナル機能に関与する。Herz,Trends in Neurosciences 24:193(2001);GoldsteinおよびBrown,Science 292:1310(2001)を参照されたい。別個の単量体ドメインの機能は、しばしば、特異的であるが、また、タンパク質またはポリペプチドの全体の活性にも寄与する。例えば、LDL受容体クラスAドメイン(クラスAモジュール、補体型反復またはAドメインとも称される)は、リガンド結合に関与する一方、ビタミンK依存性血液凝固タンパク質中に見られるガンマ−カルボキシグルタミン酸(gamma-carboxyglumatic acid)(Gla)ドメインは、リン脂質膜への高アフィニティ結合に関与する。他の別個の単量体ドメインには、例えば、肝臓細胞への結合を仲介し、そしてそれによって循環からのこの線維素溶解酵素のクリアランスを制御する組織型プラスミノーゲンアクチベーター中の上皮増殖因子(EGF)様ドメイン、および受容体仲介エンドサイトーシスに関与するLDL受容体の細胞質テールが含まれる。
【0049】
個々のタンパク質が1またはそれより多い別個の単量体ドメインを所持する可能性もある。これらのタンパク質はしばしばモザイクタンパク質と呼ばれる。例えば、LDL受容体ファミリーのメンバーは、4つの主な構造ドメイン:システイン・リッチAドメイン反復、上皮増殖因子前駆体様反復、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含有する。
【0050】
LDL受容体ファミリーには:1)細胞表面受容体であり;2)細胞外リガンドを認識し;そして3)リソソームによる分解のためにこれらを内在化する;メンバーが含まれる。Hussainら,Annu.Rev.Nutr.19:141(1999)を参照されたい。例えば、いくつかのメンバーには、超低密度リポタンパク質受容体(VLDL−R)、アポリポタンパク質E受容体2、LDLR関連タンパク質(LRPまたはLRP−1)およびメガリンが含まれる。ファミリーメンバーは、以下の特性を有する:1)細胞表面発現;2)Aドメイン反復からなる細胞外リガンド結合;3)リガンド結合のためのカルシウム要求性;4)受容体関連タンパク質およびアポリポタンパク質(apo)Eの認識;5)YWTD反復を含有する上皮増殖因子(EGF)前駆体相同性ドメイン;6)単一の膜貫通領域;および7)多様なリガンドの受容体仲介性エンドサイトーシス。Hussain、上記を参照されたい。しかし、メンバーはいくつかの構造的に似ていないリガンドに結合する。
【0051】
「LRP−1ポリペプチド」または「LRP−1ペプチド」は、本明細書において、LRP−1の断片、例えばLRP−1の細胞外ドメイン(または「外部ドメイン」)の断片であることによって、LRP−1に関連するポリペプチド(またはペプチド)である。ポリペプチドはLRP−1の1つの(またはそれより多い)リガンド結合クラスターを含んでもよい(例えば、HerzおよびStrickland、上記、および本明細書の実施例を参照されたい)。ポリペプチド(またはペプチド)は、リガンド結合クラスターの一部、例えば別個の単量体ドメイン、例えばAドメインを含んでもよい。ポリペプチドは、さらに、別個の単量体ドメイン、例えばAドメインの多量体(例えば、二量体または三量体、あるいはより高次の多量体)からなってもよい。多量体には、1より多い構造的に別個の(すなわち異なるアミノ酸配列を有する)単量体ドメインが含まれてもよいし、または単一の単量体ドメインの多数の反復が含まれてもよいし、または多数の反復単量体ドメインおよび構造的に別個のドメインの両方が含まれてもよい。
【0052】
「LRP−1阻害ポリペプチド」は、本明細書において実施例に記載するものなどのアッセイを用いて、過剰なポリペプチドが、相互作用の量を少なくとも約20%減少させる場合の、LRP−1とTIMP−3の相互作用を阻害するポリペプチドである。多様な態様において、ポリペプチドは、LRP−1とTIMP−3の相互作用を、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、および99.9%減少させる。他の態様において、ポリペプチドは、TIMP−3の集積を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、および99.9%増加させる。
【0053】
いくつかのLRP−1阻害ポリペプチドは、LRP−1へのTIMP−3の結合を阻害することも可能であり、そしてまた、TIMP−3がMMPを阻害する能力に干渉することも可能である。しかし、いくつかのLRP−1阻害ポリペプチドは、TIMP−3がMMPを阻害する能力に不都合に影響を及ぼすことなく、LRP−1へのTIMP−3の結合を阻害する;こうしたポリペプチドは、本明細書において、「アゴナイズ性」または「アゴニスト性」ポリペプチドと称される。アゴニスト性ポリペプチドは、一般的に、MMP阻害活性の40%未満、30%、20%、10%、5%、1%または1%未満の減少を生じるであろう。
【0054】
2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、デフォルト・パラメータを用い、GAPコンピュータ・プログラム(GCGウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.3(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ)の一部)を用いて、配列を比較することによって決定される。
【0055】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書全体を通じて交換可能に用いられ、そしてDNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチド類似体(例えばペプチド核酸および非天然存在ヌクレオチド類似体)を用いて生成されるDNAまたはRNAの類似体、およびそれらのハイブリッドを含む。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であることも可能である。1つの態様において、本発明の核酸分子は、本発明の抗体、あるいはその断片、誘導体、突然変異タンパク質、または変異体をコードする、隣接オープンリーディングフレームを含む。
【0056】
2つの一本鎖ポリヌクレオチドは、ギャップを導入することなく、そしていずれの配列の5’端または3’端にも、対形成しないヌクレオチドを伴わずに、一方のポリヌクレオチド中のすべてのヌクレオチドが、他方のポリヌクレオチド中の相補的ヌクレオチドと反対であるように、逆平行配向で整列可能であるならば、互いに「相補体」である。ポリヌクレオチドは、中程度にストリンジェントな条件下で、2つのポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズ可能であるならば、別のポリヌクレオチドに「相補的」である。したがって、ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドの相補体であることなく、該ポリヌクレオチドに相補的であることも可能である。
【0057】
「ベクター」は、連結された別の核酸を、細胞内に導入するために使用可能な核酸である。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、その内部にさらなる核酸セグメントを連結可能な、直鎖または環状二重鎖DNA分子を指す。別のタイプのベクターはウイルスベクター(例えば複製不全レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)であり、ここで、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内に導入可能である。特定のベクターは、導入された宿主細胞において、自律的に複製可能である(例えば細菌複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。宿主細胞内への導入に際して、宿主細胞のゲノム内に他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)を組み込んで、そしてそれによって宿主ゲノムと一緒に複製させる。「発現ベクター」は、選択したポリヌクレオチドの発現を指示することも可能なベクターのタイプである。
【0058】
ヌクレオチド配列は、制御配列が該ヌクレオチド配列の発現(例えば発現のレベル、時期、または位置)に影響を及ぼすならば、該制御配列に「機能可能であるように連結されて」いる。「制御配列」は、機能可能であるように連結されている核酸の発現(例えば発現のレベル、時期、または位置)に影響を及ぼす核酸である。制御配列は、例えば、制御される核酸に対して直接、あるいは1またはそれより多い他の分子(例えば制御配列および/または核酸に結合するポリペプチド)の作用を通じて、その効果を発揮する。制御配列の例には、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節要素(例えばポリアデニル化シグナル)が含まれる。制御配列のさらなる例は、例えば、Goeddel,1990,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ、およびBaronら,1995,Nucleic Acids Res.23:3605−06に記載される。
【0059】
「宿主細胞」は、核酸、例えば本発明の核酸を発現するために使用可能な細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば大腸菌(E.coli)であってもよいし、または真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば酵母(yeast)または他の真菌)、植物細胞(例えばタバコ(tobacco)またはトマト(tomato)植物細胞)、動物細胞(例えばヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)またはハイブリドーマであってもよい。宿主細胞の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら,1981,Cell 23:175を参照されたい)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはVeggie CHOなどのその誘導体および血清不含培地中で増殖する関連細胞株(Rasmussenら,1998,Cytotechnology 28:31を参照されたい)またはDHFRが欠損しているCHO株DX−B11(Urlaubら,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−20を参照されたい)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル(African green monkey)腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株(McMahanら,1991,EMBO J.10:2821を参照されたい)、ヒト胚性腎細胞、例えば293、293 EBNAまたはMSR 293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代組織のin vitro培養由来の細胞株、初代外植片、HL−60、U937、HaKまたはJurkat細胞が含まれる。典型的には、宿主細胞は、その後、宿主細胞で発現可能なポリペプチドをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクションされることが可能な培養細胞である。句「組換え宿主細胞」を用いて、発現しようとする核酸で形質転換されているかまたはトランスフェクションされている宿主細胞を示すことも可能である。宿主細胞はまた、核酸を含むが、機能可能であるように核酸と連結されるように制御配列が宿主細胞に導入されない限り、所望のレベルで該核酸を発現しない細胞であってもよい。用語、宿主細胞は、特定の対象の細胞だけでなく、こうした細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。例えば、突然変異または環境的影響によって、続く世代で特定の修飾が起こりうるため、こうした子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性もあるが、なお、本明細書において、この用語の範囲内に含まれる。
【0060】
抗原結合タンパク質
1つの側面において、本発明は、TIMP−3、例えばヒトTIMP−3に結合する、抗原結合タンパク質(例えば抗体、抗体断片、抗体誘導体、抗体突然変異タンパク質、および抗体変異体)を提供する。
【0061】
異なる抗原結合タンパク質は、TIMP−3の異なるドメインまたはエピトープに結合するか、あるいは異なる作用機構によって作用することも可能である。例には、限定されるわけではないが、TIMP−3がLRP−1に結合する能力に干渉するか、またはTIMP−3がMMPを阻害する能力を阻害する、抗原結合タンパク質が含まれる。さらなる例には、TIMP−3がLRP−1に結合する能力に干渉するが、TIMP−3がMMPを阻害する能力を阻害しない抗原結合タンパク質(すなわちTIMP−3アゴニスト)が含まれる。特定の疾患を治療する際のTIMP−3結合性抗原結合タンパク質の特定の作用機構の本明細書の考察は、例示のみであり、そして本明細書に提示する方法は、それに束縛されない。
【0062】
本発明の範囲内の抗TIMP−3抗体の他の誘導体には、抗TIMP−3抗体ポリペプチドのN末端またはC末端に融合した異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現によるなどの、他のタンパク質またはポリペプチドとの抗TIMP−3抗体またはその断片の共有または凝集コンジュゲートが含まれる。例えば、コンジュゲート化されるペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド、例えば酵母アルファ因子リーダー、またはエピトープタグなどのペプチドであってもよい。抗原結合タンパク質を含有する融合タンパク質は、抗原結合タンパク質の精製または同定を促進するために付加されるペプチド(例えばポリHis)を含んでもよい。また、抗原結合タンパク質を、Hoppら,Bio/Technology 6:1204,1988、および米国特許第5,011,912号に記載されるような、FLAG(登録商標)ペプチド、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号2)に連結してもよい。FLAG(登録商標)ペプチドは、非常に抗原性であり、そして特異的モノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAG(登録商標)ペプチドが所定のポリペプチドに融合される融合タンパク質を調製するのに有用な試薬が、商業的に入手可能である(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)。
【0063】
1またはそれより多い抗原結合タンパク質を含有するオリゴマーをTIMP−3アゴニストとして使用してもよい。オリゴマーは、共有結合したまたは非共有結合した、二量体、三量体、またはより高次のオリゴマーの形であることも可能である。2またはそれより多い抗原結合タンパク質を含むオリゴマーが使用のために意図され、一例がホモ二量体である。他のオリゴマーには、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体等が含まれる。
【0064】
1つの態様は、抗原結合タンパク質に融合したペプチド部分間の共有相互作用または非共有相互作用を介して連結された、多数の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーに向けられる。こうしたペプチドは、ペプチド・リンカー(スペーサー)、またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであってもよい。以下により詳細に記載するように、ロイシンジッパー、および抗体由来の特定のポリペプチドが、それに付着した抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促進可能なペプチドの中にある。
【0065】
特定の態様において、オリゴマーは、2〜4の抗原結合タンパク質を含む。オリゴマーの抗原結合タンパク質は、上述の型のいずれか、例えば変異体または断片などの、いかなる型であってもよい。好ましくは、オリゴマーは、TIMP−3結合活性を有する、抗原結合タンパク質を含む。
【0066】
1つの態様において、免疫グロブリン由来のポリペプチドを用いて、オリゴマーを調製する。抗体由来ポリペプチドの多様な部分(Fcドメインを含む)に融合した特定の異種ポリペプチドを含む、融合タンパク質の調製は、例えばAshkenaziら,1991,PNAS USA 88:10535;Byrnら,1990,Nature 344:677;およびHollenbaughら,1992“Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,Current Protocols in Immunology中,補遺4,10.19.1−10.19.11ページによって記載されてきている。
【0067】
本発明の1つの態様は、抗TIMP−3抗体のTIMP−3結合断片を、抗体のFc領域に融合させることによって生成される2つの融合タンパク質を含む二量体に向けられる。二量体は、例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子融合体を、適切な発現ベクター内に挿入し、組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞において、遺伝子融合体を発現させ、そして発現された融合タンパク質を抗体分子とそっくりに集合させて、その際、Fc部分間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるのを可能にして、二量体を生じることによって、作製可能である。
【0068】
用語「Fcポリペプチド」には、本明細書において、抗体のFc領域由来のポリペプチドの天然型および突然変異タンパク質型が含まれる。二量体化を促進するヒンジ領域を含有する、こうしたポリペプチドの一部切除(truncated)型もまた含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(およびそこから形成されるオリゴマー)は、プロテインAまたはプロテインGカラム上のアフィニティクロマトグラフィーによって精製が容易であるという利点を提供する。
【0069】
1つの適切なFcポリペプチドは、PCT出願WO 93/10151(本明細書に援用される)に記載される、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端ヒンジ領域から天然C末端に渡る一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaumら,1994,EMBO J.13:3992−4001に記載されるFc突然変異タンパク質である。この突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変化し、アミノ酸20がLeuからGluに変化し、そしてアミノ酸22がGlyからAlaに変化していることを除けば、WO 93/10151に示される天然Fc配列のものと同一である。該突然変異タンパク質は、Fc受容体に対し、減少したアフィニティを示す。
【0070】
他の態様において、抗TIMP−3抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分を、抗体重鎖および/または軽鎖の可変部分に対して置換してもよい。
あるいは、オリゴマーは、ペプチド・リンカー(スペーサー・ペプチド)を含むかまたは含まない、多数の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質である。適切なペプチド・リンカーの中には、米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されるものがある。
【0071】
オリゴマー性抗原結合タンパク質を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を伴う。ロイシンジッパードメインは、該ドメインが見られるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、元来、いくつかのDNA結合タンパク質で同定され(Landschulzら,1988,Science 240:1759)、そして以来、多様な異なるタンパク質で発見されてきた。既知のロイシンジッパーの中には、二量体化または三量体化する天然存在ペプチドおよびその誘導体がある。可溶性オリゴマー性タンパク質を産生するのに適したロイシンジッパードメインの例が、本明細書に援用される、PCT出願WO 94/10308に記載され、そして肺界面活性タンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーが、Hoppeら,1994,FEBS Letters 344:191に記載される。融合された異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする、修飾ロイシンジッパーの使用が、Fanslowら,1994,Semin.Immunol.6:267−78に記載される。1つのアプローチにおいて、ロイシンジッパーペプチドに融合した抗TIMP−3抗体断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質を、適切な宿主細胞において発現させて、そして形成される可溶性オリゴマー性抗TIMP−3抗体断片または誘導体を、培養上清から回収する。
【0072】
1つの側面において、本発明は、LRP−1へのTIMP−3の結合に干渉する抗原結合タンパク質を提供する。TIMP−3、あるいはその断片、変異体または誘導体に対して、こうした抗原結合タンパク質を作製し、そしてLRP−1へのTIMP−3の結合に干渉する能力に関して、慣用的なアッセイでスクリーニングしてもよい。適切なアッセイの例は、本明細書に開示され、そしてこれには、例えば培養中またはex vivoで、LRP−1への結合を阻害する能力に関して、抗原結合タンパク質を試験するアッセイ、またはTIMP−3の量を増加させる能力に関して、抗原結合タンパク質を試験するアッセイが含まれる。抗原結合タンパク質を試験する、さらなるアッセイには、TIMP−3ポリペプチドへの既知の抗原結合タンパク質の結合に対して、TIMP−3ポリペプチドへの抗原結合タンパク質の結合を、定性的にまたは定量的に比較するものが含まれ、そのいくつかの例を本明細書に開示する。
【0073】
別の側面において、本発明は、種選択性を示す抗原結合タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合タンパク質は、1またはそれより多い哺乳動物TIMP−3に、例えばヒトTIMP−3に、そしてマウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ(gerbil)、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類TIMP−3の1またはそれより多くに結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、1またはそれより多い霊長類TIMP−3に、例えば、ヒトTIMP−3に、そしてカニクイザル(cynomologus)、マーモセット(marmoset)、アカゲザル(rhesus)、タマリン(tamarin)およびチンパンジー(chimpanzee)TIMP−3の1またはそれより多くに結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、ヒト、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、タマリンまたはチンパンジーTIMP−3に特異的に結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、および非ヒト霊長類TIMP−3の1またはそれより多くに結合しない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、マーモセットなどの新世界ザル種には結合しない。
【0074】
別の態様において、抗原結合タンパク質は、TIMP−3以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、哺乳動物TIMP−3以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、霊長類TIMP−3以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、ヒトTIMP−3以外の天然存在タンパク質のいずれにも特異的結合を示さない。別の態様において、抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの非ヒト霊長類、例えばカニクイザル、およびヒトTIMP−3に特異的に結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、非ヒト霊長類、カニクイザル、およびヒトTIMP−3に、類似の結合アフィニティで、特異的に結合する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、非ヒト霊長類、カニクイザル、およびヒトTIMP−3の活性を遮断する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載するようなアッセイにおいて、非ヒト霊長類、カニクイザル、およびヒトTIMP−3に対して、類似のIC50またはEC50を有する。
【0075】
当該技術分野に周知の方法を用いて、そして本明細書の解説にしたがって、TIMP−3に対する抗原結合タンパク質の選択性を測定してもよい。例えば、ウェスタンブロット、FACS、ELISAまたはRIAを用いて、選択性を測定してもよい。
【0076】
慣用的技術によって、本発明の抗原結合タンパク質の抗原結合断片を産生してもよい。こうした断片の例には、限定されるわけではないが、FabおよびF(ab’)断片が含まれる。遺伝子操作技術によって産生される抗体断片および誘導体もまた意図される。
【0077】
さらなる態様には、キメラ抗体、例えば非ヒト(例えばネズミ)モノクローナル抗体のヒト化型が含まれる。既知の技術によって、こうしたヒト化抗体を調製してもよく、そしてこうした抗体は、ヒトに投与された際、免疫原性が減少しているという利点を提供する。1つの態様において、ヒト化モノクローナル抗体は、ネズミ抗体の可変ドメイン(あるいはその抗原結合部位のすべてまたは一部)およびヒト抗体由来の定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、ネズミモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体由来の可変ドメイン断片(抗原結合部位を欠く)を含んでもよい。キメラ抗体およびさらに操作されたモノクローナル抗体の産生法には、Riechmannら,1988,Nature 332:323,Liuら,1987,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 84:3439,Larrickら,1989,Bio/Technology 7:934,およびWinterら,1993,TIPS 14:139に記載されるものが含まれる。1つの態様において、キメラ抗体はCDR移植抗体である。抗体をヒト化するための技術は、例えば米国特許出願第10/194,975号(2003年2月27日公開)、米国特許第5,869,619号、第5,225,539号、第5,821,337号、第5,859,205号、Padlanら,1995,FASEB J.9:133−39,およびTamuraら,2000,J.Immunol.164:1432−41に論じられる。
【0078】
非ヒト動物において、ヒト抗体または部分的ヒト抗体を生成するための方法が開発されてきている。例えば、1またはそれより多い内因性免疫グロブリン遺伝子が、多様な手段によって不活性化されたマウスが用意されてきている。ヒト免疫グロブリン遺伝子が該マウスに導入され、不活性化されたマウス遺伝子が置換されている。該動物において産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝物質にコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を取り込む。1つの態様において、TIMP−3ポリペプチドに対して向けられる抗体がトランスジェニックマウスなどの非ヒト動物において生成されるように、該動物をTIMP−3ポリペプチドで免疫する。適切な免疫原の一例は、TIMP−3のLRP−1結合ドメインを含むポリペプチドなどの可溶性ヒトTIMP−3、または他の免疫原性断片TIMP−3である。適切な免疫原の別の例は、高レベルのTIMP−3を発現している細胞、または該細胞に由来する細胞膜調製物である。
【0079】
ヒト抗体または部分的ヒト抗体の産生用のトランスジェニック動物の産生および使用のための技術の例が、米国特許第5,814,318号、第5,569,825号、および第5,545,806号、Davisら,2003,“Production of human antibodies from transgenic mice,”Lo監修 Antibody Engineering:Methods and Protocols中,Humana Press,NJ:191−200,Kellermannら,2002,Curr Opin Biotechnol.13:593−97,Russelら,2000,Infect Immun.68:1820−26,Galloら, 2000,Eur J Immun.30:534−40,Davisら,1999,Cancer Metastasis Rev.18:421−25,Green,1999,J Immunol Methods.231:11−23,Jakobovits,1998,Adv Drug Deliv Rev 31:33−42,Greenら,1998,J Exp Med.188:483−95,Jakobovits A,1998,Exp.Opin.Invest.Drugs.7:607−14,Tsudaら,1997,Genomics.42:413−21,Mendezら,1997,Nat Genet.15:146−56,Jakobovits,1994,Curr Biol.4:761−63,Arbonesら,1994,Immunity.1:247−60,Greenら,1994,Nat Genet.7:13−21,Jakobovitsら,1993,Nature.362:255−58,Jakobovitsら,1993,Proc Natl Acad Sci U S A.90:2551−55.Chen,J.ら 1993,Int Immunol 5:647−656,Choiら,1993,Nature Genetics 4:117−23,Fishwildら,1996,Nat Biotechnology 14:845−51,Hardingら,1995,Ann NY Acad Sci,Lonbergら,1994,Nature 368:856−59,Lonberg,1994,“Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies”Handbook of Experimental Pharmacology中113:49−101,Lonbergら,1995,Int Rev Immunol 13:65−93,Neuberger,1996,Nat Biotechnol 14:826,Taylorら,1992,Nucleic Acids Research 20:6287−95,Taylorら,1994,Int Immunol 6:579−91,Tomizukaら,1997,Nat Gen 16:133−43,Tomizukaら,2000,Proc Natl Acad Sci USA 97:722−27,Tuaillonら,1993,Proc Natl Acad Sci USA 90:3720−24,およびTuaillonら,1994,J Immunol 152:2912−20に記載される。これらの例および他の例はまた、米国特許出願公報2007−0098715、2007年5月3日公開に論じられる。
【0080】
別の側面において、本発明は、TIMP−3に結合するモノクローナル抗体を提供する。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えば、免疫スケジュールの完了後に、トランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって、モノクローナル抗体を産生してもよい。当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、例えば、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを産生することによって、脾臓細胞を不死化してもよい。ハイブリドーマを産生する融合法で使用するための骨髄腫細胞は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、そして所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地中で増殖することが不可能であるようにする酵素不全を有する。マウス融合体で使用するのに適した細胞株の例には、Sp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulが含まれ;ラット融合体で使用する細胞株の例には、R210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210が含まれる。細胞融合に有用な他の細胞株は、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6である。
【0081】
1つの態様において、動物(例えばヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)をTIMP−3免疫原で免疫し;免疫した動物から脾臓細胞を採取し;採取した脾臓細胞を骨髄腫細胞株と融合させ、それによってハイブリドーマ細胞を生成し;ハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立し、そしてTIMP−3ポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することによって、ハイブリドーマ細胞株を産生する。こうしたハイブリドーマ細胞株、およびこれらに産生される抗TIMP−3モノクローナル抗体が、本発明に含まれる。
【0082】
当該技術分野に知られるいかなる技術を用いて、ハイブリドーマ細胞株に分泌されるモノクローナル抗体を精製してもよい。ハイブリドーマまたはmAbをさらにスクリーニングして、TIMP−3が誘導する活性を遮断する能力などの、特定の特性を持つmAbを同定してもよい。こうしたスクリーニングの例を以下の実施例に提供する。
【0083】
また、遺伝子免疫と称されるプロセスを用いて、モノクローナル抗体を産生してもよい。例えば、ウイルスベクター(アデノウイルスベクターなど)内に、関心対象の抗原をコードする核酸を取り込んでもよい。次いで、生じたベクターを用いて、適切な宿主動物(例えば、非肥満糖尿病またはNODマウス)において、関心対象の抗原に対する免疫応答を発展させる。この技術は、Ritterら,Biodrugs16(1):3−10(2002)に実質的に記載され、該文献の開示は本明細書に援用される。
【0084】
1つの側面において、本発明は、本発明の抗TIMP−3抗体の抗原結合断片を提供する。こうした断片は、完全に抗体由来配列からなってもよいし、またはさらなる配列を含んでもよい。抗原結合断片の例には、Fab、F(ab’)2、一本鎖抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびドメイン抗体が含まれる。他の例が、Lundeら,2002,Biochem.Soc.Trans.30:500−06に提供される。
【0085】
アミノ酸架橋(短いペプチド・リンカー)を介して、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)断片を連結して、単一ポリペプチド鎖を生じることによって、一本鎖抗体を形成してもよい。こうした一本鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメイン・ポリペプチド(VおよびV)をコードするDNA間に、ペプチド・リンカーをコードするDNAを融合させることによって、調製されてきている。2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに応じて、生じるポリペプチドは、それ自体、折り畳まれて、抗原結合性単量体を形成することも可能であるし、または多量体(例えば二量体、三量体、または四量体)を形成することも可能である(Korttら,1997,Prot.Eng.10:423;Korttら,2001,Biomol.Eng.18:95−108)。異なるVおよびVを含むポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することも可能である(Kriangkumら,2001,Biomol.Eng.18:31−40)。一本鎖抗体産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号;Bird,1988,Science 242:423;Hustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879;Wardら,1989,Nature 334:544,de Graafら,2002,Methods Mol Biol.178:379−87に記載されるものが含まれる。
【0086】
本発明の抗原結合タンパク質(例えば抗体、抗体断片、および抗体誘導体)は、当該技術分野に知られる定常領域いずれを含んでもよい。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒト・カッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域であってもよい。重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型、またはミュー型重鎖定常領域、例えばヒト・アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型、またはミュー型重鎖定常領域であってもよい。1つの態様において、軽鎖または重鎖定常領域は、天然存在定常領域の断片、誘導体、変異体、または突然変異タンパク質である。
【0087】
関心対象の抗体から、異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を得るための技術、すなわちサブクラス・スイッチングが知られる。したがって、例えば、IgM抗体からIgG抗体を得ることも可能であり、そして逆も可能である。こうした技術は、所定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を所持するが、親抗体のものと異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスと関連する生物学的特性もまた示す、新規抗体の調製を可能にする。組換えDNA技術を使用してもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードする、クローニングされたDNA、例えば所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAを、こうした方法において使用してもよい。Lanttoら,2002,Methods Mol.Biol.178:303−16もまた参照されたい。さらに、IgG4が望ましい場合、本明細書に援用される、Bloomら,1997,Protein Science 6:407に記載されるようなヒンジ領域中の点突然変異(CPSCP→CPPCP)を導入して、IgG4抗体における不均一性を導きうる、H鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減することが望ましい可能性もまたある。
【0088】
さらに、異なる特性(すなわち結合する抗原に対する多様なアフィニティ)を有する抗原結合タンパク質を得るための技術もまた知られる。チェインシャッフリング(chain shuffling)と呼ばれる1つのこうした技術は、糸状バクテリオファージの表面上に免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーをディスプレイすることを伴い、しばしばファージ・ディスプレイと呼ばれる。チェインシャッフリングは、Marksら,1992,BioTechnology,10:779に記載されるように、ハプテン2−フェニルオキサゾール−5−オンに対する高アフィニティ抗体を調製するのに用いられてきている。
【0089】
抗体結合部位の中央の相補性決定領域(CDR)の分子進化もまた、増加したアフィニティを持つ抗体、例えばSchierら,1996,J.Mol.Biol.263:551に記載されるように、c−erbB−2に対して増加したアフィニティを有する抗体を単離するのに用いられてきている。したがって、こうした技術は、TIMP−3に対する抗体を調製する際に有用である。
【0090】
1つの態様において、本発明はTIMP−3からの低い解離定数を有する抗原結合タンパク質を提供する。1つの態様において、抗原結合タンパク質は、100pMまたはそれより低いKを有する。別の態様において、Kは10pMまたはそれより低く;別の態様において、5pMまたはそれより低く、あるいは1pMまたはそれより低い。別の態様において、Kは、本明細書において実施例に記載する抗体と実質的に同じである。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体と実質的に同じKで、TIMP−3に結合する。
【0091】
本発明は、多重特異性抗原結合タンパク質、例えば、二重特異性抗原結合タンパク質、例えば、2つの異なる抗原結合部位または領域を介して、TIMP−3の2つの異なるエピトープに、またはTIMP−3のエピトープおよび別の分子のエピトープに結合する、抗原結合タンパク質をさらに提供する。さらに、本明細書に開示するような二重特異性抗原結合タンパク質は、他の刊行物に言及して、本明細書に記載するものを含めて、本明細書に記載する抗体の1つ由来のTIMP−3結合部位および本明細書に記載する別の抗体由来の第二のTIMP−3結合領域を含むことも可能である。あるいは、二重特異性抗原結合タンパク質は、本明細書に記載する抗体の1つに由来する抗原結合部位、および当該技術分野に知られる別のTIMP−3抗体由来、あるいは既知の方法または本明細書に記載する方法によって調製される抗体由来の第二の抗原結合部位を含んでもよい。
【0092】
二重特異性抗体を調製する多くの方法が当該技術分野に知られ、そして2001年4月20日出願の米国特許出願09/839,632(本明細書に援用される)に論じられる。こうした方法には、Milsteinら,1983,Nature 305:537、および他のもの(米国特許第4,474,893号、米国特許第6,106,833号)に記載されるようなハイブリッド−ハイブリドーマの使用、ならびに抗体断片の化学的カップリングの使用(Brennanら,1985,Science 229:81;Glennieら,1987,J. Immunol.139:2367;米国特許第6,010,902号)が含まれる。さらに、例えばロイシンジッパー部分(すなわち、優先的にヘテロ二量体を形成する、FosおよびJunタンパク質由来のもの;Kostelnyら,1992,J.Immnol.148:1547)または米国特許第5,582,996号に記載されるような、他の錠前および鍵の相互作用ドメイン構造を用いることによって、組換え手段を介して、二重特異性抗体を産生可能である。さらなる有用な技術には、Korttら、1997、上記;米国特許第5,959,083号;および米国特許第5,807,706号に記載されるものが含まれる。
【0093】
TIMP−3結合タンパク質に関する使用
TIMP−3結合タンパク質は、例えばin vitroまたはin vivoのいずれかで、TIMP−3またはTIMP−3を発現する細胞の存在を検出するアッセイにおいて使用可能である。TIMP−3結合タンパク質はまた、イムノアフィニティクロマトグラフィーによってTIMP−3タンパク質を精製する際にも使用可能である。LRP−1およびTIMP−3の相互作用をさらに遮断することも可能なTIMP−3結合タンパク質を用いて、in vitro、ex vivoまたはin vivoで、TIMP−3の集積を増加させ、そして/またはTIMP−3の内因性レベルを増進することも可能である。TIMP−3がMMPを阻害する能力に不都合に影響を与えることなく、TIMP−3の集積を増加させるTIMP−3結合タンパク質(すなわちTIMP−3アゴニストとして)を用いて、TIMP−3の生物学的活性を増加させることも可能である。TIMP−3アゴニストとして機能するTIMP−3結合タンパク質を、限定されるわけではないが、炎症状態を含む、より高いレベルのTIMP−3活性が望ましい任意の状態(すなわち、MMP、および/またはTIMP−3によって阻害される他のプロテイナーゼが役割を果たす状態)を治療する際に使用してもよい。1つの態様において、こうした状態を治療する際に、トランスジェニックマウスの免疫を伴う方法によって生成されるヒト抗TIMP−3モノクローナル抗体を使用する。
【0094】
TIMP−3結合タンパク質を、in vitro法で使用してもよく、またはin vivoで投与して、TIMP−3の集積を増加させ、TIMP−3の内因性レベルを上昇させ、そして/またはTIMP−3が誘導する生物学的活性を増進させてもよい。このようにして、その例が本明細書に提供される、TIMP−3阻害可能プロテイナーゼによって引き起こされるかまたは悪化させられる(直接または間接的に)障害を、治療してもよい。1つの態様において、本発明は、TIMP−3が誘導する生物学的活性を増加させるのに有効な量で、その必要がある哺乳動物に、アゴニスト性TIMP−3結合タンパク質をin vivo投与する工程を含む療法を提供する。別の態様において、本発明は、TIMP−3の内因性レベルを上昇させるのに有効な量で、その必要がある哺乳動物に、アゴニスト性TIMP−3結合タンパク質をin vivo投与する工程を含む療法を提供する。
【0095】
本発明のTIMP−3結合タンパク質には、部分的ヒトおよび完全ヒト・モノクローナル抗体、ならびにLRP−1ポリペプチドまたはペプチドが含まれる。1つの態様は、TIMP−3の活性を少なくとも部分的にアゴナイズする、ヒト・モノクローナル抗体に向けられる。1つの態様において、TIMP−3免疫原でトランスジェニックマウスを免疫することによって、抗体を生成する。別の態様において、免疫原は、ヒトTIMP−3ポリペプチド(例えばTIMP−3を発現するよう形質転換またはトランスフェクションされた細胞、あるいはTIMP−3を天然に発現する細胞)である。こうした免疫マウスから得られるハイブリドーマ細胞株であって、TIMP−3に結合するモノクローナル抗体を分泌する、前記ハイブリドーマ細胞株もまた、本明細書に提供する。
【0096】
ヒト抗体、部分的ヒト抗体、またはヒト化抗体は、多くの適用、特にヒト被験体への抗体の投与を伴うものに適切であろうが、特定の適用には、他のタイプの抗体が適切であろう。本発明の非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(サル(例えばカニクイザルまたはアカゲザル)または類人猿(例えばチンパンジー)など)などの抗体産生動物いずれに由来してもよい。
【0097】
本発明の非ヒト抗体を、例えばin vitroおよび細胞培養に基づく適用、あるいは本発明の抗体に対する免疫応答が起こらないか、重要でないか、防止可能であるか、それに関する懸念がないか、またはそれが望ましい、他の適用いずれかにおいて、使用してもよい。1つの態様において、本発明の非ヒト抗体を、非ヒト被験体に投与する。別の態様において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体において、免疫応答を誘発しない。別の態様において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体と同じ種由来であり、例えば本発明のマウス抗体をマウスに投与する。
【0098】
特定の種由来の抗体を、例えば、その種の動物を所望の免疫原(例えばTIMP−3を発現している細胞、または可溶性TIMP−3ポリペプチド)で免疫するか、またはその種の抗体を生成するための人工的系(例えば特定の種の抗体を生成するための細菌またはファージ・ディスプレイに基づく系)を用いることによって、あるいは例えば抗体の定常領域を他の種由来の定常領域で置換することにより、1つの種由来の抗体を別の種由来の抗体に変換することによって、あるいは他の種由来の抗体の配列により緊密に似るように、抗体の1またはそれより多いアミノ酸残基を置換することによって、作製してもよい。1つの態様において、抗体は、2またはそれより多い異なる種由来の抗体に由来するアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。
【0099】
いくつかの慣用的技術のいずれによって、TIMP−3結合タンパク質を調製してもよい。例えば、当該技術分野に知られる技術いずれかを用いて、天然に該タンパク質を発現する細胞から精製してもよいし(例えば抗体を産生するハイブリドーマから抗体を精製してもよい)、または組換え発現系で産生してもよい。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Kennetら(監修),Plenum Press,ニューヨーク(1980);ならびにAntibodies:A Laboratory Manual,HarlowおよびLand(監修),Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1988)を参照されたい。
【0100】
当該技術分野に知られるいかなる発現系を用いて、本発明の組換えポリペプチドを作製してもよい。一般的に、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターで、宿主細胞を形質転換する。使用可能な宿主細胞の中には、原核生物、酵母またはより高次の真核細胞がある。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌またはバチルス(bacilli)が含まれる。より高次の真核細胞には、昆虫細胞および哺乳動物起源の樹立細胞株が含まれる。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら, 1981, Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMcMahanら,1991,EMBO J.10:2821に記載されるような、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株が含まれる。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主で使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターが、Pouwelsら(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,ニューヨーク,1985)に記載される。
【0101】
ポリペプチドの発現を促進する条件下で形質転換細胞を培養し、そして慣用的なタンパク質精製法によってポリペプチドを回収してもよい。1つのこうした精製法には、例えば結合したTIMP−3のすべてまたは一部を有するマトリックス上での、アフィニティクロマトグラフィーの使用が含まれる。本明細書において使用が意図されるポリペプチドには、混入する内因性物質を実質的に含まない、実質的に均質な組換え哺乳動物TIMP−3結合ポリペプチドが含まれる。
【0102】
いくつかの既知の技術のいずれによって、TIMP−3結合タンパク質を調製し、そして所望の特性に関してスクリーニングしてもよい。特定の技術は、関心対象のTIMP−3結合タンパク質(例えば抗TIMP−3抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部)をコードする核酸を単離し、そして組換えDNA技術を通じて核酸を操作することを伴う。核酸を、関心対象の別の核酸に融合させるか、または改変して(例えば突然変異誘発または他の慣用的技術によって)、例えば、1またはそれより多いアミノ酸残基を付加するか、欠失させるか、または置換してもよい。
【0103】
1つの側面において、本発明は、例えばTIMP−3の集積を増加させるかまたは内因性TIMP−3のレベルを上昇させることによって、TIMP−3の活性をアゴナイズするTIMP−3結合タンパク質を提供する。別の態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体と実質的に同じ量で、TIMP−3の活性をアゴナイズする。
【0104】
1つの態様において、本発明のTIMP−3結合タンパク質は、TIMP−3に対して1000pMまたはそれより低い見かけのアフィニティを有する。他の態様において、TIMP−3結合タンパク質は、500pMまたはそれより低い、200pMまたはそれより低い、100pMまたはそれより低い、あるいは80pMまたはそれより低い、見かけのアフィニティを示す。別の態様において、TIMP−3結合タンパク質は、本明細書において実施例に記載する抗体またはLRPペプチドのものと実質的に同じ見かけのアフィニティを示す。
【0105】
別の態様において、本発明は、TIMP−3への結合に関して、本明細書に開示するTIMP−3結合タンパク質と競合するTIMP−3結合タンパク質を提供する。当該技術分野に周知の方法によって、例えばELISAなどのアッセイにおけるTIMP−3への結合における競合によって、または本明細書に記載する別のアッセイにおける競合によって、こうした競合能を決定してもよい。1つの側面において、TIMP−3への結合に関して、本明細書に開示するポリペプチドと競合するTIMP−3結合タンパク質は、該ポリペプチドと同じエピトープまたは重複する(または隣接する)エピトープに結合する。別の側面において、TIMP−3への結合に関して、本明細書に開示するポリペプチドと競合するTIMP−3結合タンパク質は、TIMP−3の活性をアゴナイズする。
【0106】
別の側面において、本発明は、in vitroまたはin vivoで(例えばヒト被験体に投与した際)、少なくとも1日の半減期を有するTIMP−3結合タンパク質を提供する。1つの態様において、TIMP−3結合タンパク質は、少なくとも3日の半減期を有する。別の態様において、TIMP−3結合タンパク質は、4日またはそれより長い半減期を有する。別の態様において、TIMP−3結合タンパク質は、8日またはそれより長い半減期を有する。別の態様において、非誘導体化または非修飾TIMP−3結合タンパク質に比較した際、TIMP−3結合タンパク質が、より長い半減期を有するように、TIMP−3結合タンパク質を誘導体化するかまたは修飾する。別の態様において、TIMP−3結合タンパク質は、本明細書に援用される、2000年2月24日公開のWO 00/09560に記載されるような、血清半減期を増加させる1またはそれより多い点突然変異を含有する。
【0107】
別の側面において、本発明のポリペプチド(抗原結合タンパク質を含む)は、ポリペプチドの誘導体を含む。誘導体化ポリペプチドは、特定の使用における半減期増加など、ポリペプチドに望ましい特性を与える分子または物質いずれかを含んでもよい。誘導体化ポリペプチドは、例えば、検出可能(または標識)部分(例えば放射性、比色、抗原性または酵素性分子、検出可能ビーズ(磁気ビーズまたは電子密度が高い(electrodense)(例えば金)ビーズなど)、または別の分子に結合する分子(例えばビオチンまたはストレプトアビジン))、療法または診断部分(例えば放射性、細胞傷害性、または薬学的活性部分)、あるいは特定の使用(例えばヒト被験体などの被験体への投与、あるいは他のin vivoまたはin vitro使用)のためのポリペプチドの適合性を増加させる分子を含むことも可能である。1つのこうした例において、例えばWO2008063291および/またはRothenfluhら,NatureMaterials 7:248(2008)に開示されるように、関節軟骨組織に特異的に結合するリガンドで、ポリペプチドを誘導体化する。
【0108】
ポリペプチドを誘導体化するのに使用可能な分子の例には、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。当該技術分野に周知の技術を用いて、ポリペプチドのアルブミン連結誘導体およびPEG化誘導体を調製することも可能である。1つの態様において、ポリペプチドをトランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体にコンジュゲート化するかまたは別の方式で連結させる。TTRまたはTTR変異体を、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルピロリドン(pyurrolidone))、ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコール・ホモポリマー、酸化ポリプロピレン/酸化エチレン・コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される化学薬品で化学的に修飾してもよい(米国特許出願第20030195154号)。
【0109】
別の側面において、本発明は、本発明のTIMP−3結合タンパク質を用いて、TIMP−3に結合する分子に関してスクリーニングする方法を提供する。いかなる適切なスクリーニング技術を用いてもよい。1つの態様において、本発明のTIMP−3結合タンパク質が結合するTIMP−3分子またはその断片を、本発明のTIMP−3結合タンパク質および別の分子と接触させ、ここで、他の分子が、TIMP−3へのTIMP−3結合タンパク質の結合を減少させるならば、該分子はTIMP−3に結合する。適切な方法いずれか、例えばELISAを用いて、TIMP−3結合タンパク質の結合を検出してもよい。TIMP−3へのTIMP−3結合タンパク質の結合の検出は、上に論じるように、TIMP−3結合タンパク質を検出可能に標識することによって、単純化可能である。別の態様において、TIMP−3結合分子をさらに分析して、TIMP−3活性をアゴナイズする(すなわちTIMP−3の集積を増加させ、そして/またはTIMP−3の内因性レベルを増進する)かどうかを決定する。
【0110】
組成物
やはり本発明に含まれるのは、本発明のポリペプチド産物の有効量を、TIMP−3療法(すなわち、TIMP−3の内因性レベルの増加が有用である状態)において有用な、薬学的に許容されうる希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはキャリアーと一緒に含む薬学的組成物である。こうした組成物には、多様な緩衝液内容物(例えばTris−HCl、アセテート、ホスフェート)、pHおよびイオン強度の希釈剤;界面活性剤および可溶化剤(例えばTween80、ポリソルベート80)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えばチメロサール、ベンジルアルコール)および膨張性物質(例えばラクトース、マンニトール)などの添加剤;タンパク質へのポリエチレングリコールなどのポリマーの共有結合(上に論じるとおり、例えば本明細書に援用される米国特許第4,179,337号を参照されたい);ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の微粒子調製物への、またはリポソーム内への物質の取り込みが含まれる。こうした組成物は、TIMP−3結合タンパク質の物理的状態、安定性、in vivo放出速度、およびin vivoクリアランス速度に影響を及ぼすであろう。例えば、本明細書に援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(1990,Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州イーストン 18042)1435−1712ページを参照されたい。
【0111】
一般的に、レシピエントの年齢、体重および状態または疾患の重症度によって、本発明のポリペプチドの有効量を決定する。本明細書に援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences,上記,697−773ページを参照されたい。典型的には、約0.001g/kg体重〜約1g/kg体重の間の投薬量を用いてもよいが、当業者が認識するであろうように、より多い量またはより少ない量を用いてもよい。局部(すなわち非全身性)適用、例えば局所または関節内適用に関しては、投薬量は、約0.001g/cm〜約1g/cmの間であってもよい。投薬は、毎日1回またはそれより多いか、またはより少ない頻度であってもよく、そして本明細書に記載するような他の組成物と組み合わせてもよい。本発明が本明細書に言及する投薬量に限定されないことに注目すべきである。
【0112】
関連分野で理解されるように、本発明の分子を含む薬学的組成物を、適応症に適した方式で、被験体に投与する。限定されるわけではないが、非経口、局所、または吸入によるものを含む、いかなる適切な技術によって、薬学的組成物を投与してもよい。注射する場合、薬学的組成物を、例えば、動脈内、静脈内、筋内、病巣内、腹腔内または皮下経路を介して、ボーラス注射によって、あるいは連続注入によって、投与してもよい。局在化投与、例えば疾患部位または傷害部位での投与が意図され、経皮送達および移植物からの持続放出も同様である。吸入による送達には、例えば、鼻または経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル型での吸入等が含まれる。他の代替物には、点眼剤;丸剤、シロップ、ロゼンジまたはチューインガムを含む経口調製物;ならびにローション、ジェル、スプレー、および軟膏などの局所調製物が含まれる。
【0113】
細胞外マトリックスおよび組織の動的平衡を維持するため、複数の剤が協調して作用する。平衡が歪んだ状態の治療において、1またはそれより多い他の剤を本発明のポリペプチドと組み合わせて用いてもよい。これらの他の剤を同時投与するか、または連続して投与するか、あるいはその組み合わせで投与してもよい。一般的に、これらの他の剤は、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、マトリックス分解酵素阻害剤、細胞内酵素、細胞接着調節剤、ならびに細胞外マトリックス分解プロテイナーゼおよびその阻害剤の発現を制御する因子からなるリストから選択されてもよい。特定の例を以下に列挙するが、当業者は、さらなる剤、または列挙する剤の他の形(例えば合成的に産生されるもの、組換えDNA技術を介するもの、ならびにその類似体および誘導体など)を含めて、同等の機能を実行する他の剤を認識するであろう。
【0114】
細胞外マトリックス分解の増加またはより特異的な防止が望ましい場合、他の分解阻害剤もまた用いてもよい。アルファ2マクログロブリン、妊娠性血漿タンパク質、オボスタチン、アルファ1−プロテイナーゼ阻害剤、アルファ2−抗プラスミン、アプロチニン、プロテアーゼ・ネキシン−1、プラスミノーゲン・アクチベーター阻害剤(PAI)−1、PAI−2、TIMP−1、およびTIMP−2からなる群より阻害剤を選択してもよい。当業者が認識するであろうように、他のものを用いてもよい。
【0115】
細胞内酵素もまた、本発明のポリペプチドと組み合わせて使用可能である。細胞内酵素もまた、細胞外マトリックス分解に影響を及ぼす可能性もあり、そしてこれには、リソソーム(lysozomal)酵素、グリコシダーゼおよびカテプシンが含まれる。
【0116】
細胞接着調節剤もまた、本発明のポリペプチドと組み合わせてもよい。例えば、本発明のポリペプチドを用いて、細胞外マトリックス分解の阻害前、阻害中、または阻害後に、細胞外マトリックスへの細胞接着を調節しようと望む可能性もある。細胞外マトリックスへの細胞接着を示してきた細胞には、破骨細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、キラーT細胞およびマスト細胞が含まれる。細胞接着調節剤には、「RGD」モチーフを含有するペプチド、あるいは類似体または模倣体アンタゴニストまたはアゴニストが含まれる。
【0117】
細胞外マトリックス分解プロテイナーゼの発現を制御する因子およびその阻害剤には、サイトカイン、例えばIL−1およびTNF−アルファ、TGF−ベータ、グルココルチコイド、およびレチノイドが含まれる。望ましい効果が、こうした細胞性効果と組み合わせて、本発明のポリペプチドを用いて、細胞外マトリックスの分解を阻害することである場合、細胞増殖および/または分化を達成する他の増殖因子もまた、用いてもよい。例えば、炎症中、細胞外マトリックスの維持(酵素活性の阻害を介して)が望ましいが、好中球の産生が望ましい可能性もある;したがって、G−CSFを投与してもよい。他の因子には、エリスロポエチン、インターロイキン・ファミリーメンバー、SCF、M−CSF、IGF−I、IGF−II、EGF、FGFファミリーメンバー、例えばKGF、PDGF、および他のものが含まれる。インターフェロン、例えばインターフェロン・アルファ、ベータ、ガンマ、またはコンセンサス・インターフェロンの活性がさらに望ましい可能性もある。細胞内剤には、Gタンパク質、プロテインキナーゼCおよびイノシトール・ホスファターゼが含まれる。本発明のポリペプチドの使用は、炎症療法に関与する1またはそれより多い剤を伴って、療法的利点を提供しうる。
【0118】
細胞輸送剤もまた使用可能である。例えば、炎症は、細胞外マトリックスの分解、ならびに傷害部位への細胞の移動または輸送を伴う。細胞外マトリックス分解の防止は、こうした細胞輸送を防止しうる。したがって、本発明のポリペプチドを細胞輸送調節剤のアゴニストまたはアンタゴニストと組み合わせて使用すると、炎症治療に望ましい可能性もある。細胞輸送調節剤は、内皮細胞表面受容体(例えばE−セレクチンおよびインテグリン);白血球表面受容体(L−セレクチン);ケモカインおよび走化性因子からなるリストより選択可能である。炎症に関与する組成物の概説に関しては、本明細書に援用される、Carlosら,Immunol.Rev.114:5−28(1990)を参照されたい。
【0119】
さらに、組成物には、neu分化因子、「NDF」が含まれてもよく、そして治療法には、TIMP−3の投与前の、投与と同時の、または投与後のNDFの投与が含まれてもよい。NDFは、TIMP−2の産生を刺激することが見出されてきており、そしてNDF、TIMP−1、−2および/または−3の組み合わせは、腫瘍を治療する際、利点を提供しうる。
【0120】
本発明のポリペプチド産物を、検出可能なマーカー物質と会合させる(例えば125Iで放射標識する)ことによって「標識」して、固形組織、および血液または尿などの液体試料において、TIMP−3の検出および定量化に有用な試薬を提供してもよい。本発明の核酸産物もまた、検出可能マーカー(例えば放射標識および非同位体標識、例えばビオチン)で標識して、そして例えば相当する遺伝子を同定するためのハイブリダイゼーションプロセスにおいて使用してもよい。
【0121】
本明細書記載のTIMP−3結合組成物は、病因形成を修飾し、そしてマトリックス分解および/または炎症によって特徴付けられる疾患または状態、すなわちメタロプロテイナーゼが有害な役割を果たすものに関して、有益な療法を提供する。TIMP−3結合組成物を、単独で、またはこうした状態を治療する際に用いられる1またはそれより多い剤と組み合わせて使用してもよい。したがって、本発明のTIMP−3結合組成物は、メタロプロテイナーゼ活性によって、過剰なマトリックス喪失が引き起こされるいかなる障害の治療にも有用でありうる。本発明のTIMP−3結合タンパク質は、コラゲナーゼ、アグリカナーゼ、あるいは他のマトリックス分解または炎症促進酵素(単数または複数)の過剰産生に関連する多様な障害の治療に有用であり、こうした障害には、栄養障害型表皮水疱症、変形性関節症、ライター症候群、偽痛風、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、強直性脊椎炎、強皮症、歯周病、角膜の潰瘍、上皮の潰瘍、または胃潰瘍を含む潰瘍、術後の創傷治癒、および再狭窄が含まれる。過剰なコラーゲンおよび/またはプロテオグリカン分解が役割を果たす可能性があり、そしてしたがってTIMP−3結合タンパク質を適用可能である、他の病的状態には、肺気腫、骨のパジェット病、骨粗鬆症、強皮症、褥瘡におけるような骨または組織の圧迫萎縮、真珠腫、および創傷治癒異常が含まれる。TIMP−3結合タンパク質をさらに、他の創傷治癒促進剤に対する補助剤として適用して、例えば治癒プロセス中のコラーゲンの代謝回転を調節してもよい。
【0122】
多くのメタロプロテイナーゼはまた、炎症促進活性も示し;したがって、さらなる態様には、炎症および/または自己免疫障害を治療する方法が含まれ、こうした障害には、限定されるわけではないが、軟骨炎症、および/または骨分解、関節炎、関節リウマチ、小関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身開始型関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸炎性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、血管炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、血管炎、筋炎(myolitis)、多発性筋炎、皮膚筋炎、変形性関節症、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、強皮症、硬化症、原発性硬化性胆管炎、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、尋常性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アテローム性動脈硬化症、ループス、スティル病、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患、潰瘍性腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯熱スプルー)、血清陰性関節症と関連する腸疾患、顕微鏡的またはコラーゲン大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除術および回腸肛門吻合術後に生じる嚢炎、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、多発性硬化症(MS)、喘息(外因性および内因性喘息、ならびに気道の関連慢性炎症性状態、または応答性亢進を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、すなわち慢性気管支炎、肺気腫)、急性呼吸器障害症候群(ARDS)、呼吸促迫症候群、嚢胞性線維症、肺高血圧症、肺血管収縮、急性肺傷害、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気管支炎、アレルギー性気管支拡張症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、喘息様障害、サルコイド、反応性気道疾患(または機能障害)症候群、綿肺、間質性肺疾患、好酸球増加症候群、鼻炎、副鼻腔炎、および肺寄生虫症、ウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、ライノウイルス(RV)およびアデノウイルス)誘導性状態に関連する気道過敏、ギラン−バレー病、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、自己免疫肝炎、GVHD等が含まれる。
【0123】
TIMP−3結合タンパク質はまた、TIMP−3の相対的レベルの減少(すなわち、TIMP−3量の減少またはメタロプロテアーゼ量の増加の結果でありうる、メタロプロテアーゼに対する内因性TIMP−3の比の減少)が、例えば心筋虚血、再灌流傷害における、および鬱血性心不全への進行中の、病的影響に関連する症例において、適用を有する。
【0124】
TIMP−3が結合組織分解を阻害する能力に基づいて、アゴナイズ性TIMP−3結合タンパク質は、血管形成阻害が、例えば腫瘍発展を防止するかまたは遅延させる際、および寄生虫侵入の防止の際に有用である症例において適用を有する。例えば、腫瘍浸潤および転移の分野において、いくつかの特定の腫瘍の転移能は、コラゲナーゼを合成し、そして分泌する能力の増加と、そして有意な量のメタロプロテイナーゼ阻害剤を合成し、そして分泌する能力がないことと相関する。TIMP−3結合タンパク質はまた、原発性腫瘍の除去中、化学療法および放射線療法中、汚染された骨髄の採取中、ならびに癌性腹水のシャント中の、腫瘍細胞播種を阻害する際にも療法的適用を有する。診断的に、腫瘍標本におけるTIMP−3産生の非存在およびその転移能は、予後指標として、ならびにありうる防止療法の指標として、有用である。
【0125】
さらに、本発明の組成物および方法は、美容目的のために適用可能であり、この際、結合組織分解の局所阻害は、組織の外見を改変しうる。
MMPはまた、血液脳関門(BBB)を開くための経路の一部として、脳の基底膜および密着結合タンパク質に作用し、脳内への細胞および炎症の可溶性仲介因子の進入を促進する。したがって、本発明の組成物および方法は、BBBの過剰なまたは不適切な透過化によって特徴付けられる神経系障害の治療に有用でありうる。さらに、ニューロン周囲のマトリックスタンパク質の分解は、接触の喪失および細胞死を生じる可能性もあり;したがって、TIMP−3結合組成物は、神経細胞を取り巻く基底膜を保持することによって、神経細胞を損傷から保護しうる。本発明のTIMP−3結合組成物は、傷害、例えば脳虚血に対する神経炎症反応を治療するかまたは軽減する際に有用である。本明細書開示の組成物はまた、炎症が、疾患の根底にある原因である神経変性疾患、例えば多発性硬化症の治療の際に、ならびに多様な型のニューロパシーおよび/またはミオパシー、脊髄傷害、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療の際に有用であるであろう。したがって、本発明の組成物の使用は、BDNF、NT−3、NGF、CNTF、NDF、SCF、あるいは他の神経細胞増殖または増殖調節因子との同時投与を伴いうる。
【0126】
上記のように、本発明のTIMP−3結合タンパク質は、多様な障害において広い適用を有する。したがって、本明細書に意図される別の態様は、細胞外マトリックスの分解を伴う障害を治療するため、本発明のポリペプチド、および場合によって1またはそれより多いさらなる上記組成物を含むキットである。さらなる態様は、パッケージング材料および前記パッケージング材料内の薬学的剤を含む製品であって、前記薬学的剤が、本発明のポリペプチド(単数または複数)を含有し、そして前記パッケージング材料が:癌、炎症、関節炎(変形性関節症等を含む)、栄養障害性表皮水疱症、歯周病、潰瘍、肺気腫、骨障害、強皮症、創傷治癒、赤血球不全、美容的組織再構築、受精または胚移植調節、および神経細胞障害からなる群より選択される適応症に対して、前記薬学的剤を使用してもよいことを示すラベルを含む、前記製品である。この製品には、場合によって、他の組成物または他の組成物のラベル説明が含まれてもよい。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、本発明の特定の態様または特徴を例示する目的のために提供され、そしてその範囲を限定しない。
実施例1
本実施例は、共焦点顕微鏡によって調べた際の、外因性TIMP−3の内在化を記載する。A549細胞(II型肺胞上皮細胞の特性を持つヒト肺癌由来の連続腫瘍細胞株、野生型またはLRP−1遺伝子を欠くA549細胞のいずれか)を、多様な前処理(ヘパリンを含む)を伴いまたは伴わずに、典型的には1μG/mlのTIMP−3と4℃で30分間インキュベーションし、次いで洗浄し、固定し、そして蛍光標識抗TIMP−3抗体で染色するか、または洗浄し、そして次いで固定および染色前に、4℃または37℃でさらにインキュベーションした。また、実質的に本明細書に記載するように、ウェスタンブロットまたはELISAによって、培地中のTIMP−3の集積に関しても、細胞をアッセイした。
【0128】
LRP−1を欠く細胞は、野生型細胞よりも高い度合いで培地中にTIMP−3を集積させることが見出された。共焦点顕微鏡分析によって、TIMP−3が細胞表面に結合し、細胞を37℃でインキュベーションした際に迅速に消滅するが、4℃では消滅せず、そして、クロロキンであらかじめ処理すると、細胞内に集積してリソソーム分解を防止することが示された。さらに、細胞表面へのTIMP−3の結合は、ヘパリンの存在下で減少した。
【0129】
実施例2
本実施例は、LRP−1ペプチドの調製および精製を記載する。LRP−1の外部ドメイン由来の多様なペプチドを大腸菌(E. coli)において発現させ、以下に記載するように精製し、そしてプレートに基づくおよびビーズに基づく結合アッセイ両方によって、TIMP−3への結合に関して試験した。LRP−1のアミノ酸配列を配列番号1に示し;以下の表1は、LRP−1のアミノ酸配列に言及して、発現された多様なペプチドを列挙する。ペプチドは、本明細書において、単量体(例えばLA3、LA4、LA5、および単一の数字によって示される他のペプチド)または多量体(例えばLA3−5、LA5−7、LA8−10、および複数の数字によって示される他のペプチド)として言及される。
【0130】
表1:LRP−1ペプチド
【0131】
【表1】

【0132】
大腸菌細菌における標準的組換えタンパク質技術を用いて、LRP−1ペプチドを調製する。関心対象の各ペプチドに関して、単一の形質転換大腸菌コロニーから、40μG/mLカナマイシンを含有する3mLの2xYT培地(大腸菌の組換え株用の栄養的に豊富な増殖培地)内に培養を接種し、そして飽和するまで、300rpm、37℃で一晩増殖させる。翌朝、1.8mLの一晩培養を、40μG/mLカナマイシンを含有する2xYTの500mL振盪フラスコ内に接種し、そして振盪しながら300rpm、37℃で、OD600が0.8〜1.0の間になるまで(約3時間)増殖させる。500μLの1M IPTG(イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトシド;1mM最終)で培養を誘導し、そして振盪しながら300rpm、37℃で3時間、増殖を続ける。次いで、培養を500mL Nalgeneボトル(Thermo Fisher Scientific、ニューヨーク州ロチェスター)に移し、そして8000rpmで12分間遠心分離して、細胞をペレットにする。上清を取り除き、そしてペレットを20mLの平衡/結合/洗浄緩衝液(20mM Tris pH7.5、20mMイミダゾール、1mM CaCl、300mM NaCl)中に再懸濁する。再懸濁した細胞を30mL Oak Ridge遠心管(VWR、ペンシルバニア州ウェストチェスター)内に移し、そして80℃の水槽中で15分間加熱することによって溶解する。溶解した細胞を氷水上で約10分間冷却し、次いで、18,000rpm、4℃で30分間遠心分離する。
【0133】
平衡/結合/洗浄緩衝液で3回アガロースを洗浄して、エタノールを除去することによって、ペプチドあたり1.5mLのアガロース(緩衝液を含めて総体積3mL)に関して十分なNi−NTAアガロース(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を調製する。3回目の洗浄後、同じ緩衝液を用いて、元来の体積まで、Ni−NTAアガロースを再懸濁する。次に、3mLのアガロース/緩衝液混合物を50mLフラットトップ・スクリューキャップ・ポリプロピレン試験管(FalconTM、BD Bioscience、カリフォルニア州サンノゼより入手可能)に添加する。溶解した細胞をペレットにした後、各タンパク質上清を取り除き、そして3mL洗浄Ni−NTAアガロースを含有する試験管に添加する。振盪しながら、室温で0.5時間、タンパク質をNi−NTAアガロースに結合させる。次いで、真空マニホールド(Qiagen)に搭載した使い捨て引力カラム(Clontech、カリフォルニア州マウンテンビュー)に、Ni−NTA樹脂に加えて結合したタンパク質を移す。次に、結合したタンパク質を含むNi−NTA樹脂を、洗浄中に樹脂が乾燥しないようにしながら、少なくとも30カラム体積の平衡/結合/洗浄緩衝液で洗浄する。次いで、洗浄した樹脂を含有するカラムを清浄な15mLポリプロピレン収集試験管(FalconTM)の最上部に乗せ、そしてタンパク質を2mLのNi−NTA溶出緩衝液(20mM Tris pH7.5、200mMイミダゾール、1mM CaCl、300mM NaCl)で2回(総計4mL)で溶出させる。次いで、溶出したタンパク質を、レドックス試薬[20mM Tris pH7.5、50mM NaCl、1mM CaCl]に加えて1mM 2−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)および250μM 2−ヒドロキシエチルジスルフィド(Sigma−Aldrich)を含有する緩衝液内に、4℃で一晩透析する。翌日、タンパク質を、レドックス試薬を含まない緩衝液(20mM Tris pH7.5、50mM NaCl、1mM CaCl)内に、4℃で3時間透析する。次いで、これを反復する。次いで、0.2ミクロンフィルター(Pall Corporation、ニューヨーク州イーストヒルズ)を用いて、タンパク質をろ過し、そして次の精製工程まで、4℃で保存する。
【0134】
次の工程のため、ペプチドあたり1.3mLのQ−SepharoseTM(四級アンモニウム強陰イオンを持つイオン交換クロマトグラフィー樹脂;〜1mL樹脂;GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)のスラリーを15mL使い捨て重力カラム(gravity column)(Clontech)に添加する。カラムを10mLの平衡緩衝液(20mM Tris pH 7.5、1mM CaCl、50mM NaCl)で2回平衡化して、そして重力によって排出させる。次に、〜3.9mLのNi−NTA精製タンパク質を、Q−SepharoseTM樹脂に穏やかに添加し、そしてフロースルーを15mLポリプロピレン試験管(BD FalconTM、BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)内に収集する。樹脂を、5mLの洗浄緩衝液(20mM Tris pH 7.5、1mM CaCl、50mM NaCl)で5回洗浄する。LRP−1ペプチドの単量体または多量体型に関して用いたNaCl塩勾配(以下を参照されたい)を用いて、樹脂からタンパク質を溶出させ、そして96ウェル2mLポリプロピレンプレート内に収集する。各NaCl濃度に関して、タンパク質あたり1.3mLを2分画用いて溶出を行う。単量体型に関するNaCl勾配は:[80mM、110mM、150mM、180mM、200mM、250mM]であり、そして多量体型に関しては:[100mM、150mM、180mM、220mM、250mM、300mM]であった。タンパク質が溶出されたら、タンパク質を含有する分画を選択するため、ブラッドフォードアッセイを行う。選択した精製分画のゲルを泳動する−5μL/ウェルのNi−NTA精製装填タンパク質および10μL/ウェルの溶出Q−SepharoseTM分画。タンパク質を含有する分画を選択し、プールし、そして4℃(短期)または−80℃(長期)で保存する。
【0135】
実施例3
本実施例は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)およびAlphaScreen(登録商標)を用いて評価した際の組換えヒトおよびマウスTIMP−3へのLRP−1ペプチドの結合を記載する。
【0136】
直接コーティングTIMP−3結合ELISA:
MaxiSorpTMプレート(混合親水性/疎水性ドメインを持つ分子に高いアフィニティを持つ96ウェルポリスチレンプレート;Nunc Thermo Fisher Scientific、デンマーク・ロスキレ)を、コーティング緩衝液(TBS[pH7.5]、1mM CaCl)中で希釈した100nMヒトまたはマウスTIMP−3 100μL/ウェルでコーティングし、そして4℃で一晩インキュベーションする。インキュベーション後、コーティング溶液を取り除き、そして250μL/ウェルのブロッキング緩衝液(1%BSA、TBS[pH7.5]、1mM CaCl)と交換し、そして振盪しながら室温で1時間インキュベーションする。次いで、プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液1(TBS[pH7.5]、1mM CaCl)で3回洗浄する。LRP−1ペプチドを、別個のポリプロピレン未処理丸底96ウェルプレート(BD FalconTM)中、アッセイ緩衝液(0.1%BSA、TBS[pH7.5]、1mM CaCl、0.02%Tween−20)中、1μM濃度で開始し、そして次いで8ポイントに関して連続4倍希釈し、最終ポイントを緩衝液のみにして、滴定する。次いで、100μL/ウェルの希釈LRP−1ペプチド滴定をTIMP−3コーティングプレートに添加し、そして振盪しながら室温で1.5時間結合させる。インキュベーション後、プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液2(TBS[pH7.5]、1mM CaCl、0.02%Tween−20)で3回洗浄する。100μG/mLラット抗HA(クローン3F10)−HRP(西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼにコンジュゲート化された、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のペプチド配列を認識する高アフィニティ・ラット・モノクローナル抗体)の1:5K希釈をアッセイ緩衝液中100μL/ウェルで添加し、そしてプレート振盪装置上で室温で1時間インキュベーションする。次いで、アッセイプレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液2で3回洗浄する。100μL/ウェルのTMBおよびHの1:1混合物(Pierce、Fisher Thermo Scientific、イリノイ州ロックフォード)を添加することによってプレートを現像し、100μL/ウェルの2N HSO(VWR)を添加することによって反応を停止し、そしてSOFTmax Proソフトウェア、バージョン3.1.2を用い、OD450nmでSpectraMaxマイクロプレート読み取り装置(Molecular Devices、カリフォルニア州サニーベール)上で読み取る。GraphPad Prism 4.01ソフトウェアを用いてデータを分析する。TIMP−3へのLRP−1ペプチドの結合を結合EC50として表わす。
【0137】
抗TIMP−3中和抗体を介して提示される、TIMP−3との間接結合ELISA:
MaxiSorpTMプレートを、コーティング緩衝液(TBS[pH7.5]/1mM CaCl)中で希釈した100μL/ウェルの10nMマウス抗ヒトTIMP−3抗体(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、中和抗体クローン277128、マウスTIMP−3に結合しない)でコーティングし、そして4℃で一晩インキュベーションする。インキュベーション後、プレート内容物を廃棄し、そして250μL/ウェルのブロッキング緩衝液(1%BSA、TBS[pH7.5]、1mM CaCl)をプレートに添加し、これを振盪しながら室温で1時間インキュベーションする。次いで、プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液1(TBS[pH7.5]、1mM CaCl)で3回洗浄した後、100μLの20nM組換えヒトTIMP−3を添加する。プレートを室温で1時間インキュベーションする。LRP−1ペプチドを先に記載するように滴定し、そして100μL/ウェルの希釈LRP−1ペプチド滴定をTIMP−3コーティングプレートに添加し、そして振盪しながら室温で1.5時間結合させる。インキュベーション後、プレートを洗浄し、そして実質的に、直接結合ELISAに関して先に記載するように、ELISAを行う。
【0138】
TIMP−3 AlphaScreen結合アッセイ:
実質的に製造者の指示にしたがって、広い範囲の生物学的相互作用および活性のスクリーニングを可能にする、非常に高感度の非放射性均一アッセイ技術であるAlphaScreen(登録商標)(発光増幅近接均一アッセイ;PerkinElmer、マサチューセッツ州ウォルサム)によってもまた、ペプチドを評価した。簡潔には、すべての希釈を、AlphaScreen(登録商標)緩衝液:[40mM HEPES pH 7.5、100mM NaCl、1mM CaCl2、0.1% BSA、0.05% Tween−20]中で作製する。LRP−1ペプチドを、別個のポリプロピレン96ウェルプレート(Falcon)中、4μM濃度で開始し、そして次いで12ポイントに関して連続3倍希釈し、最終ポイントを緩衝液のみにして、滴定する。最初に、2μL/ウェルのタンパク質滴定曲線を、2つ組で、白色小体積384ウェルアッセイプレート(Greiner Bio−One、英国ストーンハウス)に添加する。次に、2μLのビオチン化(AFS、社内コンジュゲート化(conjmicroGation))組換えヒトまたはマウスTIMP−3を、アッセイプレートに12nM(または3nM最終アッセイ濃度)で添加する。最後に、抑えた光の下で、どちらも20μG/mL(10μG/mL最終アッセイ濃度)に希釈したストレプトアビジン・ドナー・ビーズ、抗マウスIgGアクセプター・ビーズ(PerkinElmer)の混合物、および2nM(1nM最終濃度)のラット抗HA(クローン3F10)−HRP(Roche Diagnostics)をプレートに添加する。8μL最終アッセイ体積を含有するプレートを、TopSeal Aで覆い(蒸発を防止するため)、1000rpmで迅速に回転させ、そして一晩インキュベーションし(光曝露を防止するため、ホイルで覆って)、その後、AlphaScreen(登録商標)パラメーター(励起680nMおよび発光520〜620nm)を用いて、Fusionプレート読み取り装置(PerkinElmer)上で読み取る。GraphPad Prism 4.01ソフトウェアを用いてデータを分析する。TIMP−3への結合を総シグナル(cps)として報告する。いくつかの実験の結果を以下の表2〜3に示す。
【0139】
表2:ELISAおよび/またはAlphaScreen(登録商標)によるLRP−1ペプチドの結合
【0140】
【表2−1】

【0141】
【表2−2】

【0142】
ND:未実施
表3:TIMP−3結合ELISAにおけるLRP−1ペプチドのEC50
【0143】
【表3】

【0144】
クラスターII(8リガンド結合ドメインを含有する)およびクラスターIVの一部を含む多重外部ドメインLRP−1ペプチドは、マイクロモル未満のアフィニティでTIMP−3に結合した。TIMP−3に結合したペプチドを、蛍光−消光基質を用いて、MMP−13のTIMP−3による阻害への干渉に関して、そしてHTB−94細胞培養におけるTIMP−3集積の促進に関して、以下に記載するように試験した。
【0145】
実施例4
本実施例は、TIMP−3がMMP−13を阻害する能力に対する、TIMP−3結合タンパク質(試験分子としても称され、LRP−1ペプチド、およびTIMP−3に対する抗体を含む)の影響(単数または複数)を測定するのに有用なMMP−13阻害アッセイを記載した。最初に、MMP−13のTIMP−3による阻害の滴定を行って、TIMP−3のIC50を実験的に決定する。典型的には、MMP−13に対するTIMP−3のIC50は、0.5nM〜1nMであり、そしてIC50を用いて、試験分子を性質決定するのに用いる濃度を選択する。簡潔には、試験分子をアッセイ緩衝液中で滴定し、そして黒いポリスチレン96または384ウェルアッセイプレート(Griener Bio−One、ドイツ)に添加する。試験分子の濃度は、分子の活性に依存する;例えば、滴定を1000、2000または3000nMで始め、そして滴定のために5倍希釈で用いてもよいが、他のタイプの滴定を用いてもよいし、または単一濃度を試験してもよい。次いで、組換えTIMP−3をアッセイ緩衝液(20mM Tris、10mM CaCl、10μM ZnCl、0.01%Brij35(Calbiochem/EMD、カリフォルニア州サンディエゴ)、pH7.5)中であらかじめ決定した濃度(例えば3nMが典型的な濃度であるTIMP−3のIC70)に希釈して、試験分子に添加し、そして室温で10分間回転させる。活性MMP−13(Calbiochem/EMD)をアッセイ緩衝液中で希釈して、1.46nMの最終アッセイ濃度にし、試験分子滴定/TIMP−3混合物に添加し、そして50μLの最終体積中、室温で10分間インキュベーションする。あるいは、プロ−MMP−13(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)をアミノフェニル水銀アセテート(APMA;Calbiochem/EMD)で、37℃で2時間活性化し、そしてアッセイに用いた。
【0146】
Mca−PLGL−Dpa−AR−NH2蛍光性MMP基質またはMca−KPLGL−Dpa−AR−NH2蛍光性ペプチド基質(R&D Systems)などの蛍光性基質を、アッセイ緩衝液中、20μMの最終アッセイ濃度に調製し、そしてMMP−13酵素/huTIMP−3/試験分子溶液に添加する。Molecular Devices蛍光プレート読み取り装置を用いて、MMP−13活性を動力学的に20分間測定する。試験される分子の影響を、MMP−13酵素活性の予期される最大TIMP−3阻害のパーセントとして表す。
【0147】
また、上記のものと実質的に類似であるが、TIMP−3の非存在下でのアッセイにおけるMMP−13活性の直接阻害に関しても、試験分子を分析する。アッセイ緩衝液中の試験分子の滴定を1000nMで開始し、そして滴定のため、5倍希釈を用いたが、他のタイプの滴定を用いてもよいし、または単一濃度を試験してもよい。活性MMP−13をアッセイ緩衝液中で希釈して、1.46nMの最終アッセイ濃度を得て、試験分子滴定に添加し、そして50μLの最終体積中、室温で10分間インキュベーションする。蛍光性基質を、アッセイ緩衝液中、20μMの最終アッセイ濃度に調製し、そしてMMP−13酵素/試験分子溶液に添加する。Molecular Devices蛍光プレート読み取り装置を用いて、MMP−13活性を動力学的に20分間測定する。試験される分子の影響を、MMP−13酵素活性の減少パーセントとして表す。
【0148】
以下の表4は、MMP−13のTIMP−3による阻害に対する多様なLRP−1ペプチドの影響を比較する実験セットの結果、ならびにMMP13活性に対するその直接の影響を提示する。TIMP−3単独で生じる阻害の90%より高い阻害を示すペプチドは、TIMP−3がMMP−13を阻害する能力に有意に影響を及ぼさないと見なされた;TIMP−3がMMP−13を阻害する能力が10%またはそれより多く減少したペプチド(すなわち、TIMP−3単独で観察される阻害活性の90%またはそれ未満を生じるもの)は、TIMP−3の阻害能に負の影響を有すると見なされた。それ自体がMMP−13の活性を10%またはそれより多く減少させるペプチドは、MMP−13活性に有意に影響を及ぼすと見なされた。
【0149】
表4:MMP−13のTIMP−3による阻害に対する、および/またはMMP−13活性に対する、LRP−1ペプチドの影響
【0150】
【表4−1】

【0151】
【表4−2】

【0152】
ND:未実施
注:特定のペプチドはMMP−13活性を増加させるようであった;これらを減少%列に負の数字で示す。
【0153】

クラスターIV配列は、MMP−13のTIMP−3による阻害を実質的に損なったが、クラスターIIはこの阻害活性に対して最小限の影響しか持たなかった。
【0154】
実施例5
本実施例は、培養細胞培地中のTIMP−3集積を評価するアッセイを記載する。HTB−94TM細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、バージニア州マナサスより入手可能な軟骨細胞株)を、1ml増殖培地(RPMI1640、10%FBS、1%PSG)中、ウェルあたり1x10^5細胞で24ウェル組織培養プレートにプレーティングし、そして37℃、5%CO2で一晩インキュベーションする。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、そしてウェルに250μLの血清不含培地(RPMI1640、1%PSG;以下の表中にSFと示す)を補充し、これに試験しようとするポリペプチドまたは対照(例えばヘパリン、1mg/mlを含有する培地)を添加する。試験しようとするタンパク質を、例えば以下の表に示すように、適切な濃度に希釈し、そして細胞に添加する。次いで、細胞を37℃、5%CO2でさらに2日間インキュベーションし、第2日に馴化培地(CM)試料を収集し、そして遠心分離(すなわち10K RPMで5分間)によって清澄化し、そして上清液を収集し、そしてアッセイするまで−20℃に保存する。製造者のプロトコル(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)にしたがって、ウェスタンブロットによって、または標準的ヒトTIMP−3 ELISAを用いることによってのいずれかで、100μL CM試料に対して分析を行う。
【0155】
ウェスタンブロットによる分析によって、LRP−1のクラスターII(C II)由来のポリペプチドが、HTB−94TM細胞由来の馴化培地中のTIMP−3の集積を増進し、クラスターI、クラスターIIIおよびクラスターIVポリペプチドは有意な集積を生じないことが示された。また、CMをELISAによっても試験し、そして値を標準曲線に比較することによって、TIMP−3の適切な濃度を決定した;いくつかのこうした実験の結果を以下の表5〜7に示す。
【0156】
表5:LRP−1クラスターIおよびクラスターIIドメインポリペプチドの存在下でのTIMP3の集積
【0157】
【表5】

【0158】
表6:LRP−1ペプチド(2μM)の存在下でのTIMP−3の集積
【0159】
【表6】

【0160】
表7:LRP−1ペプチド(2μM)の存在下でのTIMP−3の集積
【0161】
【表7】

【0162】
いくつかのクラスターIIペプチドは、TIMP−3が細胞表面に結合するのを防止すると考えられるヘパリンの存在下で見られるものに匹敵する、HTB−94細胞培養中のTIMP−3の集積を生じた。
【0163】
実施例6:モノクローナル抗体の調製
XenoMouseTMトランスジェニックマウスを免疫することによって、TIMP−3に対する完全ヒト抗体を生成し、用いた系統には、XMG2−KLおよびXMG4−KL(Mendez MJら,Nat Gen,1997、およびKellermanら,Curr Opin Biotech 2002)が含まれた。マウスを、特異的免疫応答を示すのに十分な時間、および十分な免疫で(すなわち腹部内への腹腔内注射または尾の基部での皮下注射の交互の注射経路を用いて、最初の4週間に2週間ごとに、その後、同じ交互の注射経路を用いて、最後の6週間に週1回、全部で約2.5ヶ月)、可溶性TIMP3−Hisタンパク質で免疫した。TIMP−3pHisコーティングプレートを利用した酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、血清力価を監視した。特異的抗TIMP−3免疫応答を示すマウスを屠殺し、そして抗体生成に用いた。
【0164】
ELISA結合スクリーンを用いて、TIMP3に特異的に結合する抗体を同定した。このアッセイのため、384ウェルELISAプレートを、10μG/mlニュートラビジン(ストレプトアビジンの脱グリコシル化型、Pierce Fisher Thermo Scientificより入手可能)で、4℃で一晩コーティングする。次いで、プレートに1μG/mlのビオチン化TIMP3pHisを装填する。TIMP−3への結合に関して、陽性と同定された上清(TIMP−3−ポリHis免疫キャンペーン由来の86の陽性結合上清およびTIMP−3pHis/KLH免疫キャンペーン由来の33の陽性結合上清)を、TIMP−3によるMMP13の阻害への干渉、特異的IgG濃度の相対的定量化、および低抗原設定におけるTIMP3への相対的アフィニティを含む、いくつかの異なるアッセイにおいて、評価し、そしてランク付けした。実施例5に実質的に記載される培養上清液において、TIMP−3の集積に対する影響に関してもまた、抗体を評価した;結果を以下に示す。
【0165】
表8:TIMP−3特異的抗体の存在下でのTIMP3の集積
【0166】
【表8】

【0167】
先に記載するものと類似のアッセイを用いて、TIMP−3がMMP−13を阻害する能力への干渉に関して試験する際、抗体10A7は比較的少ない干渉しか示さず、一方、残りの抗体は、より高い干渉を示した。抗体8F1、8C5および10A7はまた、実質的に先に記載するような共焦点顕微鏡によって観察した際、TIMP3内在化を阻害した。
【0168】
実施例7:モノクローナル抗体の調製
受動的にコーティングされたTIMP−3または抗TIMP−3 MAB9731(R&D Systems)を介して係留されたTIMP−3のいずれかを伴うELISAを用いて、先に記載するハイブリドーマのプールから、ヒトTIMP−3に対するさらなるモノクローナル抗体を同定した。実質的に先に記載するようなアッセイを用いて、ELISAにおいて陽性である抗体もまた、TIMP−3集積に関して試験した。使用済みのハイブリドーマ上清液をTIMP−3集積アッセイにおいて評価した際(血清不含培地に緩衝液交換して、TIMP−3集積アッセイに対するバックグラウンド効果を減少させた後)、26のハイブリドーマが、TIMP−3集積を促進する抗体を分泌すると同定された。これらのハイブリドーマのうち4つはサブクローニング中に失われたが、残りの22をより大きいスケールで培養し、そしてモノクローナル抗体を精製し、そしてTIMP−3集積およびMMP−13のTIMP−3による阻害に対するありうる影響に関して(ならびにMMP−13自体に対するいかなる直接的な影響に関しても)評価した。
【0169】
22の抗体のうち、いずれも、TIMP−3がMMP−13を阻害する能力に不都合な影響を与えず、また、MMP−13自体に対する影響を持たなかった。TIMP−3集積アッセイにおいて、陰性対照抗体で観察されたものよりも少なくとも約1.5倍高いレベルの、上清液中のTIMP−3集積の再現可能で滴定可能な増加に関して、抗体を評価した。さらなる分析および細胞株発展のために4つの抗体を選択し;これらの抗体に対する代表的なTIMP−3集積アッセイおよびMMP−13阻害アッセイの結果を以下に示す。MMP−13阻害アッセイは、100μLアッセイ体積中の1.5nM MMP−13(CalBiochem)、0.25nMの精製TIMP−3(いかなる抗体も存在しない場合、MMP−13活性の54%阻害を生じた)、および20μM Mca−KPLGL−Dpa−AR−NH2蛍光性ペプチド基質(ES010基質、R&D Systems)を利用した。MMP−13阻害アッセイに関しては、少なくとも特定の度合いで、MMP−13のTIMP−3による阻害を損なうことが知られる対照Abとして、抗体10A7が含まれた。
【0170】
表9:TIMP−3によるMMP13の阻害に対する抗TIMP−3抗体の影響
【0171】
【表9】

【0172】
これらの結果は、抗体16A1.1、18H1.1、17A4.1および18C1.1が、抗体が最大約80倍モル過剰となる濃度まで、TIMP−3がMMP−13を阻害する能力を有意に減少させないことを示す。
【0173】
表10:TIMP−3の集積に対する抗TIMP−3抗体の影響
【0174】
【表10】

【0175】
これらの結果は、抗体16A1.1、18H1.1、17A4.1および18C1.1が、上清液中のTIMP−3集積を導くことを示す。続く分析によって、抗体17A4および18C1が、同じアミノ酸配列を有することが示された。残りの18クローンを、将来ありうるさらなる評価のために保存した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TIMP−3に結合し、そしてLRP−1によるTIMP−3の内在化を阻害する、TIMP−3結合タンパク質。
【請求項2】
抗体またはLRP−1ペプチドである、請求項1のTIMP−3結合タンパク質。
【請求項3】
TIMP−3によるMMP−13の阻害を30%未満減少させる、請求項1または請求項2のTIMP−3結合タンパク質。
【請求項4】
TIMP−3と、請求項1または請求項2記載のTIMP−3結合タンパク質を接触させることによって、細胞外マトリックス中のTIMP−3を増加させる方法。
【請求項5】
in vivo、ex vivoまたはin vitroで、TIMP−3をTIMP−3結合タンパク質と接触させる、請求項4の方法。
【請求項6】
TIMP−3結合タンパク質を哺乳動物に投与することによって、in vivoでTIMP−3をTIMP−3結合タンパク質と接触させる、請求項5の方法。
【請求項7】
マトリックス・メタロプロテイナーゼが有害な役割を果たす状態に罹患している哺乳動物を治療する方法であって、請求項1または請求項2記載のTIMP−3結合タンパク質を哺乳動物に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項8】
状態が、炎症、癌、および細胞外マトリックスの過剰な分解によって特徴付けられる状態からなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
状態が変形性関節症および鬱血性心不全からなる群より選択される、請求項8の方法。

【公表番号】特表2013−500987(P2013−500987A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523046(P2012−523046)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043737
【国際公開番号】WO2011/014671
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】