説明

3次元ソナーによる施工管理方法とその施工管理装置

【課題】 本発明は、3次元ソナーによる施工管理装置に関し、従来の施工管理装置ではリアルタイムな出来形確認ができないため、施工精度は作業員の技量によるところが大きく、効率が悪かったことが課題であって、それを解決することである。
【解決手段】 3次元ソナー2と、慣性航法装置3と、全地球測位システム装置4と、音速度計装置5と、これらの各装置をそれぞれ有線若しくは無線で接続され各データを入力して記憶装置にデータ収録させ及びモニタに3次元表示させる3次元解析用パーソナルコンピューター6とを少なくとも有して構成されている3次元ソナーによる施工管理装置1とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、港湾工事,水底の浚渫作業や水中盛土作業などを施工する際に、リアルタイムで水底掘削状況の様子若しくは盛土状況の様子を把握しながら施工する3次元ソナーによる施工管理方法とその施工管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾工事などにおける捨石工事では、出来形確認は捨石投入作業を中断してガット船を移動させた後、深浅測量を行ったり、1日の作業の終わりや翌日の作業の最初に深浅測量を行い、測量データを処理して水底形状を確認したのち、浚渫作業へと反映していた。もしくは、捨石投入場所付近を適時レッドで計測することで、水底深度を確認しながら捨石投入していた。効率よく捨石投入を行うための捨石投入支援装置は既知(特許文献1参照)である。ガット船のグラブを操作するオペレーターは、装置に表示される画面を確認しながらグラブの位置入れ、および開閉を行っている。また、投入毎にシミュレーションされた堆積形状を画面上で確認しながら投入を行う。
【0003】
また、浚渫作業支援システムとして、港湾工事などにおける浚渫工事では、出来形確認は浚渫作業を中断して浚渫船を移動させた後、深浅測量を行ったり、1日の作業の終わりや翌日の作業の最初に深浅測量を行い、測量データを処理して水底形状を確認したのち、浚渫作業へと反映していた。もしくは、浚渫付近を適時レッドで計測することで、水底深度を確認しながら浚渫していた。効率よく浚渫を行うための浚渫管理装置等は既知(特許文献2参照)である。浚渫船のグラブを操作するオペレーターは、装置に表示される画面を確認しながらグラブの位置入れ、浚渫の設計深度までのグラブの下げ降ろし、および開閉を行っている。
【0004】
そして、これらの浚渫施工若しくは水中捨石施工や水中盛土施工において、浚渫や盛土をした後の出来形確認に関しては、一旦作業を中断して深浅測量を行ったり、1日の作業の終わりや翌日の作業の最初に深浅測量を行い、測量データを処理して水底状況を確認した後、浚渫・盛土の作業へと反映させたり、若しくは、浚渫・盛土付近を適時レッドで計測することで、水底深度を確認しながら作業へと反映させたりしている。このほか、捨石マウンド均し面の計測の方法として、潜水士を不要とするためにマウンド面に沿って移動する水中移動装置と、これに信号・動力ケーブルで連結された支援船と、位置標定のための装置と、均し面を計測する計測装置と、演算装置などで捨石マウンド均し面の絶対位置を演算できるようにしたシステムが知られている(特許文献3参照)。また、埋立地の施工管理として、沈下量をマルチビームソナーで土砂の投入前後を面的に測定するようにした施工管理方法が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2009−24400号公報
【特許文献2】特許公開2004−150015号公報
【特許文献3】特開平07−62660号公報
【特許文献4】特開2001−164546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の海中への捨石・ブロック盛土工法においては、上記装置等を使用して捨石投入する場合、グラブの動揺による位置ずれや潮流の影響などにより、想定どおりの出来形には捨石投入できない。捨石投入後の深浅測量の結果がでるまで出来形がわからなかったため、出来形不足があった場合は、再度その箇所に投入しなおさなければならず、効率が悪かった。従来、レッドにより捨石投入しながらの計測は可能であったが、点での出来形確認しかできないため、海底形状の面的な把握ができず、不完全な方法であった。更に、ブロック据付の場合に潜水士の誘導とクレーンオペレーターによる操作のタイムラグがあるため、目標の位置へ据付けるために時間が掛かるなど作業効率が悪く、据付精度はオペレータの技量によるところが大きかった。
【0007】
また、従来の浚渫工事等の出来形を確認する方法では、グラブの動揺による位置ずれやグラブの旋回などにより、想定どおりの出来形には浚渫できない。浚渫後の深浅測量の結果がでるまで出来形がわからなかったため、掘り残しがあった場合は、再度その箇所を浚渫しなおさなければならず、効率が悪かった。また、再度浚渫しなおす事態を避けるために、余掘り量を多くして浚渫した場合は、浚渫土量が増えるため、その処分に余計な費用がかかるなどの問題があり、近年では出来うる限り正確な(設計に準じた)出来形と浚渫土量で浚渫を行うことが望まれているが、施工精度はオペレータの技量によるところが大きい。従来、レッドにより浚渫しながらの計測は可能であったが、点での出来形確認しかできないため、海底形状の面的な把握ができず、不完全な方法であった。また、土砂の埋立地施工管理方法では、土砂投入前後の面の位置を測定しているので、投入状況によって正確にブロック等の投入位置を確認できるという作業管理工法ではない。本発明に係る3次元ソナーによる施工管理方法とその施工管理装置は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る3次元ソナーによる施工管理方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、3次元ソナーと、ジャイロスコープ又は慣性航法装置と、全地球測位システム装置と、音速度計装置と、これらの各装置をそれぞれ有線若しくは無線で接続され各データを入力して記憶装置にデータ収録させ及びモニタに3次元表示させる3次元解析用パーソナルコンピューターとで構成されている3次元ソナーによる施工管理装置を計測点に設置し、
前記3次元ソナーを前記計測点から作業域の水中に没入させて吊持して、目的の水底とその周辺を前記3次元解析用パーソナルコンピューターによってモニタに表示させながら、浚渫作業,水中盛土作業,捨石作業,ブロックの据付け作業を行うことである。
【0009】
また、予め設計形状をデータ入力して記憶装置に登録しておいて3次元解析用パーソナルコンピューターによってモニタに設計と実測の形状を重ね合わせてリアルタイムに3次元表示させ、作業中において、前記モニタの3次元映像を視覚的に確認しながら作業できるようにしたことを含むものである。
更に、所望位置の断面図または土量変化若しくは土量差をデータ処理するとともにモニタに表示させる3次元解析用パーソナルコンピューターを設けて、予め設計形状をデータ入力して記憶装置に登録しておいて、前記3次元解析用パーソナルコンピューターによってモニタに設計と実測の断面形状を重ね合わせてリアルタイムに3次元表示させ、作業中において前記モニタの映像を視覚的に確認しながら作業管理ができるようにしたことである。
【0010】
前記3次元ソナーによる施工管理装置の計測部を、作業域に2カ所〜8カ所のいずれかに配置させ、この複数箇所の計測点に配置した計測部により前記作業域の水底とその周辺を任意の方向から見た形状をリアルタイムで処理・表示部におけるモニタに表示できるようにすることである。
更に、浚渫用,捨石用,盛土用,ブロック据付け用のいずれかの施工管理装置と3次元ソナーによる施工管理装置とを組み合わせて、あらかじめ登録した設計形状と施工された浚渫,捨石,盛土,ブロック据付けのいずれかの出来形をリアルタイムに計測しながら、前記3次元ソナーによる施工管理装置から計測データを前記浚渫用,捨石用,盛土用,ブロック据付け用のいずれかの施工管理装置に伝達し、前記設計形状に不足する部分の位置と大きさを認識させて浚渫作業,捨石作業,盛土作業,ブロック据付け作業のいずれかを施工することを含むものである。
【0011】
本発明に係る3次元ソナーによる施工管理装置の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、3次元ソナーと、慣性航法装置と、全地球測位システム装置と、音速度計装置と、これらの各装置をそれぞれ有線若しくは無線で接続され各データを入力して記憶装置にデータ収録させ及びモニタに3次元表示させる3次元解析用パーソナルコンピューターとを少なくとも有して構成されていることである。
更に、前記3次元解析用パーソナルコンピューターに有線若しくは無線で接続され所望位置の断面図若しくは土量変化,土量差をデータ処理するとともにモニタに表示させる解析3次元解析用パーソナルコンピューターが設けられていることを含むものである。
また、施工管理装置を構成する計測部を複数箇所の計測点に配置し、前記複数箇所の計測部からの計測データを伝達されて3次元処理及び3次元表示する処理・表示部を1カ所に配置されていることを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の3次元ソナーによる施工管理方法とその施工管理装置によれば、海水中の3次元形状をリアルタイムに把握することができて、その3次元形状が座標を持つ立体映像として可視化される。よって、ブロック等の据付け、浚渫工事,盛土施工において、設計形状に沿ってケレーン操作などが可能となり、迅速に作業を推進できるとともに、潜水士の付き添いが不要となって作業の安全性も向上するものである。また、土量変化や土量差をリアルタイムで把握することができるので、作業効率を高めることとなり、無駄を省いてコスト低減となる、など数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る3次元ソナーによる施工管理方法の実施例を示す斜視図(A)と、3次元ソナー2を取付架台に取り付けて行う計測状態を示す斜視図(B)である。
【図2−A】同本発明に係るブロック等の据付けの場合の、3次元ソナー2による施工管理装置1の構成を示す説明図である。
【図2−B】同本発明に係る浚渫作業の場合の、3次元ソナー2による施工管理装置1の構成を示す説明図である。
【図2−C】同本発明に係る捨石作業の場合の、3次元ソナー2による施工管理装置1の構成を示す説明図である。
【図3】従来のマルチビームソナー計測の様子を示す概略図である。
【図4】3次元ソナー2による断面形状を求める手順を示す説明図である。
【図5−A】同3次元ソナー2による断面形状を求める手順を示す説明図である。
【図5−B】同3次元ソナー2による断面形状を迅速に簡易的に求める手順を示す説明図である。
【図6】本発明の3次元ソナーによるブロック据付けの施工管理方法の一例を示す作業フロー図(A)と、比較する従来例の作業フロー図(B)とである。
【図7−A】本発明に係る実施例3の浚渫工事を示す説明図である。
【図7−B】本発明に係る実施例4における設計と実測を重ね合わせること示す説明図である。
【図7−C】本発明の3次元ソナーによる浚渫作業の施工管理方法の一例を示す作業フロー図(A)と、比較する従来例の作業フロー図(B)とである。
【図7−D】本発明に係る実施例6に係る説明図(A),(B)と、時系列の土量変化を示す説明図(C)である。
【図7−E】本発明に係る実施例7における切断三角柱を示す説明図である。
【図7−F】本発明に係る実施例5,実施例7における余掘り厚の説明図である。
【図8−A】本発明に係る実施例8の捨石工事又は盛土工事を示す説明図である。
【図8−B】本発明に係る実施例9における設計と実測を重ね合わせること示す説明図である。
【図8−C】本発明の3次元ソナーによる捨石工事又は盛土工事における施工管理方法の一例を示す作業フロー図(A)と、比較する従来例の作業フロー図(B)とである。
【図8−D】本発明に係る実施例10における水底の設計形状と実測を重ね合わせること示す説明図である。
【図8−E】本発明に係る実施例11における、あるエリアにおける時系列に従った石材量変化又は盛土量変化をリアルタイムに把握する説明図(A)と、時系列に従った石材変化量を示す説明図(B)である。
【図8−F】本発明に係る実施例11における切断三角柱を示す説明図である。
【図9】本発明に係る実施例13の説明図であって、概略的に示す平面(A)と断面図(B)とである。
【図10】本発明に係る実施例13における施工管理装置1の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る3次元ソナーによる施工管理方法とその施工管理装置は、図1に示すように、3次元ソナーを主体とした施工管理装置を形成して、それにより、据付け工事、浚渫工事や盛土工事をリアルタイムで3次元映像を確認しながら、施工できるようにするものである。
【実施例1】
【0015】
本発明に係る施工管理装置1は、図2−Aに示すように、3次元ソナー(3Dソナーともいう)2と、ジャイロスコープ又は慣性航法装置(INS:Inertial Navigation System 以下同じ)3と、全地球測位システム装置(Global Positioning System:GPS以下同じ)4と、音速度計装置5と、これらの各装置(以下、計測部1a)をそれぞれ有線若しくは無線で接続され各データを入力して記憶装置6aにデータ収録させ及びモニタ6bに3次元表示させる3次元解析用パーソナルコンピューター(以下、パソコン)6(以下、処理・表示部1b)とで構成されている。
【0016】
前記3次元ソナー2とは、超音波により、ある範囲を即時的に計測し、位置データを持った立体映像として可視化できる装置である。図1(A)に示すように、水中の3次元形状を1送波で計測する。また、図1(B)に示すように、3次元ソナー2をパン・チルト構造を有する取付架台で支持させることもできる。稼働範囲はパンが±180゜、チルトが±90゜として、これらを稼働させ計測範囲を拡大させながら計測することができる。そして、一例として、50゜×50゜の範囲を計測してそれぞれ座標を持った立体映像として可視化することができる。この3次元ソナー2によれば、例えば、図3に示すように、従来のマルチビームソナー計測では、船を航行させながら2次元スキャニングするので、計測後に連続した断面形状を処理することで3次元形状の確認をしていたので、リアルタイムで3次元画像を可視化することができないという不都合を、解消することができるようになるものである。
【0017】
前記ジャイロスコープ又は慣性航法装置(INS)3は、計測点としての作業船9の現在位置(停止している場合は不要)と、方位,ロール,ピッチ,ヒーブ等を求めるものである。これは、艤装した作業船9の姿勢が波や潮位で変化した場合、それぞれの相対位置座標と角度が変化するため、作業船9の姿勢(ロール、ピッチ、ヒーブ、方位)を計測し、3次元ソナー2による位置データを補正するものである。前記計測点は、例えば、作業船や測量船のほかに岸壁や防波堤,ケーソン,浮体構造物等における計測点を含むものである。
【0018】
また、前記GPS4は、作業船9の位置を正確に求めるものである。前記音速度計5は、水中の音速を計測して、超音波による距離測定の補正をするために計測するものである。具体的には、水中音速度は1500m/s程度であるが、水温、圧力、塩分濃度などにより変化する。よって、音速度の補正をしなければ、正確な計測がなされないため、一般的に音速度計測、および音速度補正を実施する。 例えば、海水中の音速(m/s)の式、V=1449.14+△VP+△VS+△VT+△VSTP (P:圧力kg/cm2の補正項、S:塩分0/00の補正項、T:温度℃の補正項、STP:圧力,塩分,温度の補正項)である。
【0019】
前記パソコン6は、そのCPU(中央演算処理装置)に、3次元表示用のプログラムに、Open GL(Graphics Library)、Open CL(Computing Language)、DirectXなどの公知の3次元グラフィックスAPI(Application Program Interface)が組み込まれるものである。
【0020】
図2−Aに示すように、前記パソコン6で所望位置の断面図若しくは土量変化をデータ処理する。前記パソコン6で、断面図をTIN(Triangulated Irregular Network、以下同じ)法によって作成するには、図4に示すように、予め指定した2点の平面座標P1(X1,Y1)、P2(X2,Y2)から、予め指定した範囲10で、計測した点群データAを記憶装置6aから抽出する。そして、前記点群データAの任意の1点T1を中心とし、予め直径を指定した円11の範囲に含まれる点群Bを抽出する。
【0021】
1)前記点群Bの中からT1に平面距離が近い2点T2,T3を検索し、抽出する。
2)このとき、T1,T2,T3が一直線上にあれば、前記1)のT2,T3の抽出に
戻って、T3の次にT1に平面距離が近いT4を抽出する。
3)こうして抽出されたT1,T2,T3が一直線上にない時は、この3点を結んでで
きる三角形の外接円12を作り、その円内に他の点が含まれない場合には、T1,
T2,T3で構成される三角形を面として確定する。
この円内に他の点が含まれている場合には、前記1)に戻って点群Bの中から新た
なT2,T3を見つけて三角形を確定する。
4)前記T1,T2で2分割される平面のうち、T3を含まないエリア内で直線T1,
T2にもっとも距離の近い点Txを検索する。
5)上記3)からの処理を繰り返す。図5−Aに示すように、Aのエリアを複数の三角
形で構成される面に分割する。
(各三角形の1辺の長さは、点群Bの円11の直径を越えることはない)
6)上記59で作成した各三角面と前記P1,P2を含む面との交線を求める。
以上のようにして、断面図を作成するものである。
【0022】
なお、図5−Bに示すように、簡易的に断面図を求めることもできる。即ち、断面図作成のために予め指定した2点の平面座標P1(X1,Y1)、P2(X2,Y2)から、予め指定した範囲で、計測した点群データAを記憶装置6aから抽出する。前記Aに含まれる点からP1,P2面へ垂線をおろし、交点を求める。前記求めた交点を結び、断面図を作成するものである。
【実施例2】
【0023】
以上のように構成される、図2−Aに示す、3次元ソナーによる施工管理装置1を用いて、各港湾作業の説明をする。作業フローを図6(A)に示すように、根固ブロックや被覆ブロック等を水中に据付ける場合は、3次元ソナーによる施工管理装置1を前記作業船9に積載する。そして、作業船9を所定の作業海域で停止させ、前記3次元ソナー1をクレーン近傍またはブロック据付位置近傍の水中に設置する。
【0024】
そして、GPS4との組み合わせにより、前記3次元ソナー2の計測したデータに位置データを付加する。また、艤装した浮体である作業船9の姿勢が波により変化するので、ジャイロスコープ又はINS3で方位,ロール,ピッチ,ヒーブ等の補正行う。更に、海水の温度を測定して、水中音速度の補正を音速度計5により行う。
【0025】
目的の水底とその周辺を、前記パソコン6によってモニタ6bに表示させながら、クレーンによるブロックの据付け作業を行う。こうして、クレーンのオペレーターが前記モニタ6bの映像と、位置データを確認しながら、効率よくブロック等の据付け作業ができる。
【0026】
そして、予め据付目標位置をデータ入力して記憶装置6aに登録しておいてパソコン6によってモニタ6bに設計と実測の形状を重ね合わせてリアルタイムに3次元表示させ、作業中において、前記オペレーターが前記モニタ6bの3次元映像を視覚的に確認しながら施工できる。モニタ6bに表示されたブロックは、座標を持った3次元映像として表示されるので、据付誘導も正確に行うことができる。また、比較のために、従来例による潜水士が水中に潜ってブロックの据付位置を誘導指示する据付作業手順のフローを図6(B)に示す。本発明により、大幅に作業工程が省略されることがわかるとともに、潜水士が水中に存在しないので作業の安全性も確保されるものである。
【実施例3】
【0027】
また、浚渫工事における出来形確認を行う場合には、図2−Bに示す施工管理装置1を使用する。そして、図7−Aに示すように、本装置をグラブ浚渫船7または、浚渫エリア付近に設置することにより、浚渫状況を3次元映像として表示する。これによりグラブ浚渫船7のクレーンオペレーターは映像を確認しながら効率よく浚渫することが可能となる。なお、リアルタイム3Dソナーで取得したデータを使用してコンピューター上に3次元表示するには、例えばOpen GL、Open CL、またはDirectXなどの3DグラフィックスAPIを表示用プログラムに組み込む方法がある。
【実施例4】
【0028】
また、図7−Bに示すように、あらかじめ設計形状を3次元座標で登録しておくことにより、設計と実測を重ね合わせてリアルタイムに水底地形の3次元表示や2次元表示を行う。これにより掘り残しの状況を視覚的に、かつ座標値で確認しながら作業を行うことができる。この場合、上記既知の発明(特許文献2参照)と組み合わせて使用することにより、グラブ浚渫船7のクレーンオペレーターは、掘り残し位置とグラブ位置の両方をモニタ画面で確認しながらクレーン操作およびグラブの開閉操作を行えるため、掘り残しがなく余掘りの少ない、効率がよく精度の高い浚渫を行うことができる。
【実施例5】
【0029】
更に、予め水底の設計形状を3次元で登録しておくことにより、リアルタイム3Dソナー2の計測値から複数断面の実測値を抽出し、リアルタイムな断面表示をする。計測断面に重ねて、設計値、底面余掘厚、および法面余掘厚(図7−F参照)などを表示できるため、リアルタイムに断面管理が行え、精度の高い浚渫ができる。図7−C(A),(B)に本発明の手順と従来例の作業手順との作業フロー図を示す。
【実施例6】
【0030】
また、図7−D(A),(B)に示すように、3Dソナー2により、工事エリアのあらかじめ設定したエリアを、工事作業中連続して計測する。3Dソナー2からは、毎秒データが出力される。3Dソナー2により計測した、ある時刻における点群データを使用して、ある平面からの体積を求めることにより、あるエリアにおける時系列に従った土量変化をリアルタイムに把握することが可能となる。または図7−D(C)に示すような、時系列に従った土量変化量をリアルタイムに把握することが可能となる。
【実施例7】
【0031】
3Dソナー2などの3次元形状計測装置により計測した点群データから体積を求めるには、TINを使用して、点群データから三角網を生成する。三角網の各三角形において、ある平面からの切断三角柱が形成される。土量は、各切断三角柱の体積の総和により求められる(図7−E参照)。または、リアルタイムで3Dソナー2の計測値から複数断面の実測値を抽出する前記手法により求めた複数断面から、平均断面法により土量を求めることができる。
【実施例8】
【0032】
水中捨石施工若しくは水中盛土施工においては、図2−Cに示す3次元ソナーによる施工管理装置1をガット船8もしくは測量船(作業船)9で捨石投入エリア付近に設置する。図8−Aに示すように、捨石投入状況を3次元映像として表示する。これによりクレーンオペレーターは映像を確認しながら効率よく捨石投入することが可能となる。なお、リアルタイムに3Dソナー2で取得したデータを使用してコンピューター上に3次元表示するには、例えばOpen GL、Open CL、またはDirectXなどの3DグラフィックスAPIを表示用プログラムに組み込む方法がある。
【実施例9】
【0033】
また、予め設計形状を3次元座標で登録しておくことにより、図8−Bに示すように、設計と実測を重ね合わせてリアルタイムに水底地形の3次元表示や2次元表示を行う。これにより投入不足の状況を視覚的に、かつ座標値で確認しながら作業を行うことができる。この場合、図8−Aに示すように、捨石投入管理システムと組み合わせて使用することにより、ガット船8のクレーンオペレーターは、投入不足位置とグラブ位置の両方をモニタ画面で確認しながらクレーン操作およびグラブの開閉操作を行えるため、投入不足がなく、効率がよく精度の高い捨石投入を行うことができる。この作業フローと従来例に係る作業フローとを、図8−C(A),(B)に示す。
【実施例10】
【0034】
図8−Dに示すように、あらかじめ水底の設計形状を3次元で登録しておくことにより、リアルタイムに3Dソナー2の計測値から複数断面の実測値を抽出し、リアルタイムな断面表示ができる。計測断面に重ねて、設計の天端高、法面、天端幅、および延長などを表示できるため、リアルタイムに断面管理が行え、精度の高い捨石投入ができる。
【実施例11】
【0035】
3Dソナーにより、工事エリアの予め設定したエリアを工事作業中連続して計測する。3Dソナー2からは、毎秒データが出力される。3Dソナー2により計測した、ある時刻における点群データを使用して、ある平面からの体積を求めることにより、図8−E(A)に示すような、あるエリアにおける時系列に従った石材量変化をリアルタイムに把握することが可能となる。または、図8−E(B)に示すような、時系列に従った石材変化量をリアルタイムに把握することが可能となる。
【実施例12】
【0036】
また、3Dソナー2などの3次元形状計測装置により計測した点群データから体積を求めるには、TINを使用して、点群データから三角網を生成する。三角網の各三角形において、ある平面からの切断三角柱が形成される。石材量は、各切断三角柱の体積の総和により求められる(図8−F参照)。または、上記水底の設計形状を3次元で登録しリアルタイムに3Dソナー2の計測値から複数断面の実測値を抽出する手法により求めた複数断面から、平均断面法により石材量を求めることができる。
【実施例13】
【0037】
施工管理装置1を構成する計測部1aを複数箇所の計測点に配置し、前記複数箇所の計測部からの計測データを伝達されて3次元処理及び3次元表示する処理・表示部1bを1カ所に配置されている実施例である。例えば、3次元ソナーによる施工管理装置1を積載した作業船(a,b,c・・)を、図9(A)に示すように、作業域を中心にして適宜半径の周方向に均等配置で2カ所〜8カ所のいずれかに配置させ、この複数箇所に配置した前記作業船により作業域の水底とその周辺を任意の方向から見た形状をリアルタイムでモニタに表示できるようにする。ブロック等の作業対象物の全周囲をリアルタイムに瞬時に計測するには、最低で2カ所に前記施工管理装置1を設置すればよいが、通常は、4カ所に設置する。そして図9(B)と図10とに示すように、作業対象物eを4箇所の計測部1aと、1カ所の処理・表示部1bとで施工管理装置1を構成して、前記作業対象物eを同時に超音波計測し、未計測部分をなくしてオペレーターの希望する方向からリアルタイムでパソコン6を介してモニタ6bで、前記作業対象物eの3次元状況を把握する事ができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る施工管理装置1、それを使用した施工管理方法は、港湾工事,水中工事に限らず、湖沼工事や河川工事にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 施工管理装置、 1a 計測部、
1b 処理・表示部
2 3次元ソナー(3Dソナー)、
3 ジャイロスコープ又は慣性航法装置(INS)、
4 全地球測位システム装置(GPS)、
5 音速度計装置、
6 3次元解析用パーソナルコンピューター(パソコン)、
6a 記憶装置、 6b モニタ、
7 グラブ浚渫船、
8 ガット船、
9 作業船(測量船)、
10 予め指定した範囲、
11 予め直径を指定した円、
12 外接円。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元ソナーと、ジャイロスコープ又は慣性航法装置と、全地球測位システム装置と、音速度計装置と、これらの各装置をそれぞれ有線若しくは無線で接続され各データを入力して記憶装置にデータ収録させ及びモニタに3次元表示させる3次元解析用パーソナルコンピューターとで構成されている3次元ソナーによる施工管理装置を計測点に設置し、
前記3次元ソナーを前記計測点から作業域の水中に没入させて吊持して、目的の水底とその周辺を前記3次元解析用パーソナルコンピューターによってモニタに表示させながら、浚渫作業,水中盛土作業,捨石作業,ブロックの据付け作業を行うこと、
を特徴とする3次元ソナーによる施工管理方法。
【請求項2】
予め設計形状をデータ入力して記憶装置に登録しておいて3次元解析用パーソナルコンピューターによってモニタに設計と実測の形状を重ね合わせてリアルタイムに3次元表示させ、作業中において、前記モニタの3次元映像を視覚的に確認しながら作業できるようにしたこと、
を特徴とする請求項1に記載の3次元ソナーによる施工管理方法。
【請求項3】
所望位置の断面図または土量変化若しくは土量差をデータ処理するとともにモニタに表示させる3次元解析用パーソナルコンピューターを設けて、予め設計形状をデータ入力して記憶装置に登録しておいて、前記3次元解析用パーソナルコンピューターによってモニタに設計と実測の断面形状を重ね合わせてリアルタイムに3次元表示させ、作業中において前記モニタの映像を視覚的に確認しながら作業管理ができるようにしたこと、
を特徴とする請求項1に記載の3次元ソナーによる施工管理方法。
【請求項4】
3次元ソナーによる施工管理装置の計測部を、作業域に2カ所〜8カ所のいずれかに配置させ、この複数箇所の計測点に配置した計測部により前記作業域の水底とその周辺を任意の方向から見た形状をリアルタイムで処理・表示部におけるモニタに表示できるようにすること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の3次元ソナーによる施工管理方法。
【請求項5】
浚渫用,捨石用,盛土用,ブロック据付け用のいずれかの施工管理装置と3次元ソナーによる施工管理装置とを組み合わせて、あらかじめ登録した設計形状と施工された浚渫,捨石,盛土,ブロック据付けのいずれかの出来形をリアルタイムに計測しながら、前記3次元ソナーによる施工管理装置から計測データを前記浚渫用,捨石用,盛土用,ブロック据付け用のいずれかの施工管理装置に伝達し、前記設計形状に不足する部分の位置と大きさを認識させて浚渫作業,捨石作業,盛土作業,ブロック据付け作業のいずれかを施工すること、
を特徴とする請求項1に記載の記載の3次元ソナーによる施工管理方法。
【請求項6】
3次元ソナーと、ジャイロスコープ又は慣性航法装置と、全地球測位システム装置と、音速度計装置と、これらの各装置をそれぞれ有線若しくは無線で接続され各データを入力して記憶装置にデータ収録させ及びモニタに3次元表示させる3次元解析用パーソナルコンピューターとを少なくとも有して構成されていること、
を特徴とする3次元ソナーによる施工管理装置。
【請求項7】
3次元解析用パーソナルコンピューターにより、所望位置の断面図若しくは土量変化,土量差をデータ処理するとともにモニタに表示させること、
を特徴とする請求項6に記載の3次元ソナーによる施工管理装置。
【請求項8】
施工管理装置を構成する計測部を複数箇所の計測点に配置し、前記複数箇所の計測部からの計測データを伝達されて3次元処理及び3次元表示する処理・表示部を1カ所に配置されていること、
を特徴とする請求項6,7のいずれかに記載の3次元ソナーによる施工管理装置。

【図1】
image rotate

【図2−A】
image rotate

【図2−B】
image rotate

【図2−C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−A】
image rotate

【図5−B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−A】
image rotate

【図7−B】
image rotate

【図7−C】
image rotate

【図7−D】
image rotate

【図7−E】
image rotate

【図7−F】
image rotate

【図8−A】
image rotate

【図8−B】
image rotate

【図8−C】
image rotate

【図8−D】
image rotate

【図8−E】
image rotate

【図8−F】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate