説明

3次元像表示用スクリーンシステム及びこれを用いた3次元像表示装置

【課題】視差光線再生法を適用するための3次元像表示用スクリーンシステムであって、透明性及び回折効率に優れ、スクリーン全体として均一な明るさを有し、さらには作製容易な3次元像表示用スクリーンシステム及びこれを用いた3次元像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る3次元像表示用スクリーンシステム1は、投影機9から2次元像を構成する複数の光線が投影された場合に、当該投影された各光線の透過光を収束又は発散させることにより3次元像を視認させることができる。3次元像表示用スクリーンシステムは、体積位相型ホログラムスクリーン12と、レンチキュラーレンズ11とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムスクリーンによって3次元像を表示するための3次元像表示用スクリーンシステム及びこれを用いた3次元像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホログラム素子をスクリーンとして利用し、投影機を用いて結像された実像を投影機とは反対側の観察者へ回折するホログラムスクリーンを用いたホログラム表示装置が提案されている(特許文献1〜2)。
このようなホログラムスクリーンを用いたホログラム表示装置では背景を透かして見ながら、再生される映像を観察することが出来る。
このようなホログラムスクリーンを利用することで、例えば銀行や病院等の窓口において顧客や患者を確認しながら接客を行うことが可能となる。この場合、映像は顧客側に表示することもできるし(顧客向けの映像を表示する)、接客する側に表示することもできる(接客する店員等に向けた映像を表示する)。更に、上記ホログラムスクリーンを利用することで,デパートや地下街等の各種ショールームのウィンドウガラスに対し広告映像等を映し出すことができる。この場合、ショールーム内の展示品の観察を阻害することなく、映像を提示することができる。また、このようなホログラムスクリーンを自動車等の各種移動体のヘッドアップディスプレイとして利用することもできる。
【0003】
近年、液晶技術の発展により、特殊なメガネを用いずに三次元表示の可能な液晶ディスプレイが次々と発表されている。その殆どが、イメージスプリッター方式の眼鏡なし三次元液晶表示素子、所謂、パララックスバリア方式やレンチキュラーレンズ方式の水平視差のみを有する三次元画像表示装置である。パララックスバリア方式やレンチキュラーレンズ方式の三次元表示装置では、右眼位置から右眼画像が、左眼位置から左眼画像が見えるように、空間的に画像光路を分離供給して、立体感を生じさせるものである。従って、空間に周期的に右眼位置と左眼位置に画像光路が分離供給されており、その位置がずれると立体像が観察されなくなる。このように原理的に水平方向の視差を含んだ画像を供給する為、右眼位置と左眼位置が水平からずれると立体像が観察されなくなってしまうという課題がある。従って、長時間、三次元動画像の立体を保ったまま立体視を行おうとすると、空間の定位置に、右眼位置と左眼位置を固定する必要がある。
【0004】
水平方向の右眼位置と左眼位置のズレに対しては、観察者の眼の位置や顔の位置をセンサーによって特定して、その位置のズレに合わせて、画像光路を制御修正する方法も考案されているが、装置が大掛かりとなり、眼の位置や顔の位置をセンシングするためにマーカーを観察者に付けなければならないという煩わしさが生じる。
【0005】
近年、これらの課題を解決する方法として、M.G.Lipmannによって1908年に提案されたインテグラルフォトグラフィーを発展させ、フィルムの変わりに、液晶などの二次元表示パネルとピンホールやハエの目レンズアレイを使った三次元の表示方式が提案されている。(例えば、特許文献3)
【特許文献1】特開平9−114354号公報
【特許文献2】特開2000−155374号公報
【特許文献3】特開2001−275134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インテグラルフォトグラフィーで滑らかな三次元を表示するには、1つのピンホール又はレンズの中に異なる視差画像を配置する必要がある。例えば水平垂直方向でそれぞれ5視差の画像を表現するには、5×5で25画像が必要となる。従って、二次元表示パネルの解像度は三次元表示をする場合、25分の1の解像度に低下してしまうという課題がある。
【0007】
このような解像度の低下を防ぐ為に視差画像の数を少なくする方法はあるが、視差画像の数が少なくなればなるほど、滑らか視差の移動が無くなって、立体感が低下してしまう。
【0008】
また、従来の拡散板とレンチキュラーレンズ板や蝿の目レンズ板を組み合わせた方法では立体視は可能であるが透明性が非常に低く空間上に浮かんでいるような立体感を表現できないという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、投影機を用いて立体視するための3次元像表示用スクリーンシステムであって、透明性及び回折効率に優れ、スクリーンシステム全体として均一な明るさを有し、さらには作製容易な3次元像表示用スクリーンシステム及びこれを用いた3次元像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するべく、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、特定のフォトポリマー感光材料を用いたホログラムスクリーンと樹脂製のレンチキュラーレンズを組み合わせることで、前記課題を解決できることに想到し、本発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち、本発明の3次元像表示用スクリーンシステムは、投影機から2次元像を構成する複数の光線が投影された場合に、当該投影された各光線の透過光を収束又は発散させることにより3次元像を視認させることができる3次元像表示用スクリーンシステムであって、フォトポリマー感光材料の全面に参照光と物体光の2光束を干渉させて露光することで照射された光線をそれぞれ特定の方向に回折させる体積位相型ホログラムスクリーンと樹脂製のレンチキュラーレンズとを組み合わせていることを特徴とする。
【0012】
斯かる発明によれば、ホログラムを記録する感光材料としてフォトポリマー感光材料を用いるため、粒子状成分が含まれず、透明性及び回折効率に優れたスクリーンシステムを得ることが可能である。また、湿式現像処理を必要とせずにホログラムを記録することが可能である上、フォトポリマーが含有する重合物の重合収縮に起因した膜(ホログラム)の収縮も一定であるため、従来のように銀塩感光材料を用いてホログラムを記録する場合に比べ、ホログラムの膜厚分布が均一となる結果、スクリーンシステム全体として均一な明るさを有することになる。さらには、湿式現像処理を必要とせずにホログラムを記録することが可能であるため、フォトポリマー感光材料にホログラムを記録する際(2光束干渉露光する際)には、フォトポリマー感光材料を被覆する保護基材上に遮光マスクを接触させればフォトポリマー感光材料表面が損傷することはなく、且つ、露光後も前記保護基材を剥がす必要がないためホログラムレンズの作製工程が煩雑化せず作製容易である。
【0013】
本発明のスクリーンシステムを用いれば非常に透明なスクリーンシステムが実現可能であり、透明な状態に3次元像を浮かび上がらせた表示が可能となる。
【0014】
本発明の3次元像表示用スクリーンシステムは、表面に塗布された感光材料の所定領域毎に参照光と物体光の2光束を干渉させて露光することで、照射された光線をそれぞれ特定の方向に回折させる体積位相型ホログラムスクリーン上にレンチキュラーレンズが設けられた3次元像表示用スクリーンシステムであって、投影装置より投影された視差画像の映像光を、ホログラムスクリーンにより散乱(拡散を削除)、回折させたうえ、レンチキュラーレンズで、当該投影された各光線の透過光を結像させることにより3次元像を視認させることとしたものである。
【0015】
このスクリーンシステムによれば、たとえば図1に示すように、投影装置(点光源)からの映像光を拡散スクリーン12が散乱、回折させるので、レンチキュラーレンズ11への入射光を平行光線に近いものに変換することができる。その結果、レンチキュラーレンズ11にほぼ均一に光線が入射し、焦点精度が向上し、より立体感のある3次元像を結像させることができる。たとえば、図1において、レンチキュラーレンズ11を透過した光線が実線のように収束して結像したものと、鎖線のように収束して結像したものとが、適切なずれを伴って重なって見えたとき、人間の目は立体と認識するからである。
【0016】
本発明で通常使用されるホログラムスクリーンは、体積位相型ホログラムスクリーンである。
体積位相型ホログラムスクリーンであれば、透過光の回折角度を設計によって自由に変えられるので、投影装置(点光源)からの光軸からはずれた位置で3次元像を観察することが可能になる。観察者がまぶしさを感じなくてすむという利点のほか、スクリーンシステムの設置場所を自由に選べるという利点もある。また、透過光を一定角度に回折させることができるので、各光線を均一に、計算された角度でレンチキュラーレンズに入射させることが可能になり、焦点の精度がさらに向上する。
【0017】
上記のスクリーンがフォトポリマーを主成分とし、露光後の該スクリーンの0°入射光に対する透過率が65%以上であり、設定回折角での入射光に対する透過率が35%以上であることにより、透明で空間上に浮かび上がらせるような立体感を得ることが出来る。
フォトポリマーを主成分とするホログラムスクリーンは、従来の銀塩感光材料を用いたスクリーンに比べて透明性及び回折効率に優れている。このような透過率を有するスクリーンを備えた3次元像表示用スクリーンシステムは、より明るく、立体感のある像を結像させることができる。
【0018】
本発明の3次元像表示用スクリーンシステムは、上記のレンチキュラーレンズがフォトポリマーを主成分とし、該フォトポリマーを型に注入して光硬化させることにより作製したレンチキュラーレンズであることがよい。
このような製法で作製されたレンチキュラーレンズは、透明性と寸法精度が高いので、明るさと立体感がさらに良好な像を結ぶことができる。
【0019】
また、本発明は、前記3次元像表示用スクリーンシステムと、前記3次元像表示用スクリーンシステムに対して2次元像を構成する光線を投影する投影機とを備え、前記投影機は、前記2次元像を構成する各光線の前記3次元像表示用スクリーンに対する入射光量を独立別個に制御することが可能であることを特徴とする3次元像表示装置としても提供される。
【0020】
この3次元像表示装置によれば、投影機からの光線の光軸からはずれた位置で、3次元像を観察することができるため、観察者がまぶしさを感じることがない。上記の3次元像表示用スクリーンシステムによって結像された3次元像は透明性と回折効率が高いため、観察者に、透明な状態に像が浮かび上がっているように視認させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、透明性及び回折効率に優れ、スクリーンシステム全体として均一な明るさを有し、さらには作製容易な3次元像表示用スクリーンシステム及びこれを用いた3次元像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明に係る3次元像表示用スクリーンシステムの一実施形態について説明する。
【0023】
ここで、インテグラルフォトグラフィー方式を詳細に説明する。図1にインテグラルフォトグラフィー方式の原理を示す。インテグラルフォトグラフィーは、レンチキュラーレンズ11を用いて、レンチキュラーレンズ11の焦点位置にフィルム12を置きそのフィルム12の表面に柱状の凸レンズ毎の画像を記録する。そして、再生時には、フィルム12に記録させた柱状の凸レンズ毎の画像を、撮影時と同じ柱状の凸レンズアレイ11を用いることによって立体画像を再生するというものである。再生要素画像を表示するための表示素子に柱状の凸レンズアレイ11の凸レンズ毎に対応させて表示すると、再生要素画像は凸レンズを介して、元の画像表面の画素位置に対応する結像点に結像する。よって、実際に結像点から光線が発生して、観察者の瞳に入射するので、立体感の有る三次元再生画像が再生される。三次元再生画像は実際に空間に結像点があるため、角度を変えてみても、眼の位置を動かしてみても、立体感の有る三次元再生画像を安定して見る事が出来る。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る3次元像表示用スクリーンの概略構成を示す正面図である。図2に示すように、本実施形態に係る3次元像表示用スクリーンシステム(以下、適宜「スクリーンシステム」という)1は、投影機から2次元像を構成する複数の光線が投影された場合に、当該投影された各光線の透過光を収束又は発散させることにより3次元像を視認させることができるように構成されており、表面に塗布されたフォトポリマー感光材料の全面に参照光と物体光の2光束を干渉させて露光することで記録され、照射された光線をそれぞれ特定の方向に回折させる体積位相型ホログラムスクリーン(以下、適宜「ホログラムスクリーン」という)10が設けられている。さらに、その上に樹脂製のレンチキュラーレンズ11が設けられている。以下、斯かる構成を有するスクリーンシステム1の作製方法について具体的に説明する。
【0025】
<フォトポリマー感光材料>
本実施形態に係るフォトポリマー感光材料としては、屈折率変調型フォトポリマーであって、可干渉性の2光束を干渉させて露光することによって干渉縞を記録する記録工程により、露光された部位の屈折率と未露光部位の屈折率との差が少なくとも0.001以上の屈折率変化を生じるものを用いることが好ましい。なお、屈折率の差を増幅させるために加熱処理を施すことによって薄膜でも充分な回折効率を得ることができる。
【0026】
さらに、フォトポリマーの成分としては、干渉性に優れた光を干渉させることによって得られる干渉縞の明暗の強度分布を屈折率の変化として記録する場合に大きな屈折率変化を持たせられるフォトポリマー組成物として、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、カチオン重合性モノマー(B)および/またはバインダーポリマー(C)を含有するものが好適に用いられる。
【0027】
より好適なフォトポリマー組成物(その1)としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、可視光の波長領域を有する干渉性の第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射により、ラジカル重合性化合物(A)の重合を開始させる光ラジカル重合開始剤(D)と、光ラジカル重合開始剤を増感させる光増感色素(E)と、カチオン重合性化合物(B)および、第一の光とは異なる波長領域を有する第二の光の照射によりカチオン重合性化合物(B)の重合を開始させる光カチオン重合開始剤(F)とからなり、ラジカル重合性化合物(A)の屈折率が、カチオン重合性化合物(B)の屈折率よりも大きいように調整したフォトポリマー組成物である。
【0028】
より好適なフォトポリマー組成物(その2)としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、可視光の波長領域を有する干渉性の第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射により、ラジカル重合性化合物(A)の重合を開始させる光ラジカル重合開始剤(D)と、光ラジカル重合開始剤を増感させる光増感色素(E)、およびバインダーポリマー(C)からなり、ラジカル重合性化合物(A)の屈折率が、バインダーポリマー(C)の屈折率よりも大きいように調整したフォトポリマー組成物である。
【0029】
より好適なフォトポリマー組成物(その3)としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、可視光の波長領域を有する干渉性の第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射により、ラジカル重合性化合物(A)の重合を開始させる光ラジカル重合開始剤(D)と、光ラジカル重合開始剤を増感させる光増感色素(E)と、カチオン重合性化合物(B)と、バインダーポリマー(C)および、第一の光とは異なる波長領域を有する第二の光の照射によりカチオン重合性化合物(B)の重合を開始させる光カチオン重合開始剤(F)とからなり、ラジカル重合性化合物(A)の屈折率が、カチオン重合性化合物(B)およびバインダーポリマー(C)の屈折率の加重平均値よりも大きいように調整したフォトポリマー組成物である。
【0030】
光カチオン重合開始剤(F)は、第二の光の照射によりカチオン重合性モノマー(B)の重合を開始させるものであるが、第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射に対する感光性が低くてカチオン重合性モノマー(B)の重合を実質上開始させないものが好ましい。
【0031】
ラジカル重合性モノマー(A)
本発明で用いられるラジカル重合性モノマー(A)は、本発明で用いられるカチオン重合性モノマー(B)および/または(C)バインダーポリマー等とともに本発明による組成物を調製した場合に、相溶性を有しさえすれば広範囲の化合物を使用することができるが、常圧で100℃以上の沸点を持つ非ガス状、即ち、液状または固体状であるラジカル重合性化合物(A)が好ましい。
特に、エチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリルモノマー、ビニルモノマー、(メタ)アリルモノマーが好ましい。また、これらは単独で用いても、2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリルモノマーの例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシ(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フエノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、9H−カルバゾール−9−エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1, 6−へキサンジオールジ(メタンアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタンアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル等が挙げられる。
さらに、9,9-ジアリールフルオレン骨格を有し、かつ、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ以上含有する常温常圧で固体であるラジカル重合性化合物(A)として好適な化合物の具体例としては、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物などを挙げることができる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0033】
ビニルモノマーの例として、ビニルアセテート、4−ビニルアニリン、9−ビニルアントラセン、9−ビニルカルバゾール、4−ビニルアニソール、ビニルベンズアルデヒド、ビニルべンゾエート、ビニルべンジルクロライド、4−ビニルビフェニル、ビニルブロマイド、N−ビニルカプロラクタム、ビニルクロロホルメート、ビニルクロトネート、ビニルシクロへキサン、4−ビニル−1−シクロへキセンジエポキサイド、ビニルシクロペンタン、ビニルデカノエート、4−ビニル−1, 3−ジオキソラン−2−オン、ビニルカルボネート、ビニルトリチオカルボネート、ビニル−2−エチルへキサノエート、ビニルフエロセン、ビニリデンクロライド、ビニルホルメート、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルナフタレン、ビニルネオデカノエート、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−(ビニルオキシ)ブチルべンゾエート、2−(ビニルオキシ)エタノール、4−ビニルフェニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリジノン、ビニルスルホン、ビニルトリメチルシラン、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0034】
(メタ)アリルモノマーの例として、(メタ)アリルフェニルスルホン、(メタ)アリルエトキシシラン、(メタ)アリルトリメトキシシラン、(メタ)アリル2, 4, 6−トリブロモフェニルエーテル、2, 2,−ジ(メタ)アリルビスフエノールA 、ジ(メタ)アリルジメチルシラン、ジ(メタ)アリルジフェニルシラン、ジ(メタ)アリルフェニルフオスフィン、ジ(メタ)アリルフタレート、ジ(メタ)アリルジカルボネイト、ジ(メタ)アリルサクシネイト等が挙げられる。
また、上記化合物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。
【0035】
ラジカル重合性化合物(A)として好ましいものは、フェノキシエチルアクリレート、2, 4, 6−トリブロモフェノキシ(メタンアクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレンである。
【0036】
カチオン重合性モノマー(B)
本発明で用いられるカチオン重合性モノマー(B)は、他のいずれの成分とも相溶性がよく、ラジカル重合性モノマー(A)よりも屈折率が極力低く、常温常圧で液体であることが好ましい。このようなカチオン重合性モノマーを用いることによって、ホログラム記録前では全組成物が十分に相溶しているが、ホログラム記録が開始されるとともにラジカル重合性モノマー(A)の拡散移動が起こりやすくなる。さらに、屈折率が低いものを選択することによって、ラジカル重合性モノマー(A)の拡散移動によるカチオン重合性モノマー(B)との分離において、両者の間でわずかな分離しか起こらなくても、大きな屈折率差(屈折率変調)を得ることができる。カチオン重合性モノマー(B)は第一の光(好ましくは可視光線)と異なる波長領域を有す第二の光(好ましくは紫外線)を照射しカチオン重合開始剤(F)の反応により重合させられる。
【0037】
カチオン重合性モノマー(B)の具体例としては、オキシラン構造およびオキセタン構造のいずれかを1分子中に少なくとも1つ以上、あるいは両者を有する化合物を挙げることができる。下記に好ましいカチオン重合性モノマー(B)を例示する。
【0038】
グリシジルエーテル類;フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオネンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2.2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル。
【0039】
オキセタン系化合物;3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{〔3−(トリエトキシシリル)プロポキシ〕メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキシサン、フェノールノボラックオキセタン。
【0040】
重合収縮がほとんどないスピロオルソエステル、スピロオルソカーボネート、ビシクロオルソカーボネート類や3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートも使用できる。
【0041】
上記例示物の2量体または3量体程度のオリゴマーであってもよい。また、これらは単独で用いても2以上の組合わせで用いてもよい。特にオキシラン化合物とオキセタン化合物を混合して使用すると、カチオン重合速度が上昇し、かつ、高分子量のポリマーが形成される。
【0042】
バインダーポリマー(C)
本発明で用いられるバインダーポリマー(C)は、ラジカル重合性化合物(A)およびカチオン重合性化合物(B)と相溶性が良く、有機溶媒中に完全に溶解しうるものであればよい。代表的なものは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体、または、該モノマーと、これと共重合可能な共重合性モノマーとの共重合体、ジフェノール化合物とジカルボン酸化合物の縮合重合体、分子内に炭酸エステル基を有する重合体、分子内に−SO2−基を有する重合体、セルロース誘導体、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0043】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリビニルカルバゾール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリメタクリロニトリル、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ−1,2−ジクロロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シンジオタクチック型ポリメチルメタクリレート、ポリ−α−ビニルナフタレート、ポリカーボネート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−o−メチルスチレン、ポリ−p−メチルスチレン、ポリ−p−フェニルスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリ−2,5−ジクロロスチレン、ポリアリーレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニリデン、水素化スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、透明ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0044】
厚膜化や膜の柔軟性を持たせるためにさらにバインダーポリマーを含有してもよい。
バインダーポリマー(C)の上記例示物は単独で用いても2以上の組み合わせで用いてもよい。
【0045】
バインダーポリマー(C)は、また、100℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
【0046】
バインダーポリマー(C)はホログラムの用途、応用等により種々選択することができる。良好な成膜性および回折効率等の光学特性を得るためには、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、セルロースアセテートブチラート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルホルマール等が好ましく用いられる。
【0047】
より良好な耐熱性、成膜性および回折効率等の光学特性を得るためには、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸環状脂肪族エステルとメチル(メタ)アクリレートとの共重合体等が好ましく用いられる。
【0048】
上記光重合開始剤(D)としては、He−Ne(波長633nm)、YAG(波長532nm)、Ar(波長515、488nm)、He−Cd(波長442nm)等のレーザ光源から出射されるレーザ光を吸収してラジカルを発生するものを好適に用いることができる。このような光重合開始剤としては、例えば、カルボニル化合物、アミン化合物、アリールアミノ酢酸化合物、有機錫化合物、アルキルアリールホウ素塩、オニウム塩類、鉄アレーン錯体、トリハロゲノメチル置換トリアジン化合物、有機過酸化物、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物及びこれらの光重合開始剤と光増感色素との組み合わせ等を好適に用いることができる。上記カルボニル化合物としては、例えば、ベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン等を例示できる。
【0049】
上記光増感色素(E)としては、ミヒラケトン、アクリジンイエロー、メロシアニン、メチレンブルー、カンファーキノン、エオシン、脱カルボキシル化ローズベンガル等を好適に用いることができる。光増感色素としては、可視領域の光に吸収を示すものであればよく、上記以外にも、例えば、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、フタロシアニン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、アクリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、ケトクマリン誘導体、キノロン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、チアジン系色素等も使用可能であり、更には「色素ハンドブック」(大河原信他編、講談社、 1986 年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編、シーエムシー、 1983 年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編、シーエムシー、 1986年)に記載されている光増感色素も用いることができる。これらの光増感色素は単独で用いても2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0050】
有機溶媒は、フォトポリマー感光材料の粘度調整、相溶性調節の他、成膜性等を向上させるために有効であり、例えば、アセトン、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール等を用いることができる。ただし、水は、粘度調整、相溶性調節、成膜性等を阻害するので使用できない。水はエマルジョン形態でも媒質として使用できない。有機溶媒(溶剤)の使用量は、ラジカル重合性化合物(A)と、カチオン性重合化合物(B)および/またはバインダーポリマー(C)と、光重合開始剤(Dおよび/またはF)の合計100重量部に対して1〜1500重量部程度の範囲である。また、ラジカル重合性化合物(A)の重合速度や分子量を制御するために、熱重合禁止剤や連鎖移動剤を少量添加しても良い。
【0051】
熱重合禁止剤の例としては、生成した重合活性種を消去する働きのある、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、tert−ブチルカテコール、ナフチルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0052】
連鎖移動剤の例としては、α−メチルスチレンダイマー、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、tert−ブチルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、プロピレン、塩化ビニル等を挙げることができる。
【0053】
<フォトポリマー感光材料の調整>
以上に説明した本実施形態に係るフォトポリマー感光材料を調製するには、ラジカル重合性化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)および/または有機溶媒に可溶なバインダーポリマー(C)と、光重合開始剤(Dおよび/またはF)等をガラスビーカー等の耐有機溶剤性容器に入れて全体を撹拌すればよい。この場合、固体成分の溶解を促進するために、組成物の変性が生じない範囲で、これを例えば40〜90℃程度に加熱してもよい。
【0054】
<ホログラム記録媒体の作製方法>
本実施形態に係るフォトポリマー感光材料を用いたホログラム記録媒体(ホログラム記録前)は、フォトポリマー感光材料を基板の片面に塗布し、生じた塗膜(記録層)と基板とからなる2層構造の記録媒体を作製することによって得られる。或いは、好ましい態様として、図3に示すように、基板1A上の記録層1Bの上にフィルム状、シート状或いは板状の保護材1Cを被覆して3層構造の記録媒体を作製しても良い。
【0055】
フォトポリマー感光材料の調製工程で有機溶媒を用いる場合、ラジカル重合性化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)および/または有機溶媒に可溶なバインダーポリマー(C)と、光重合開始剤(Dおよび/またはF)を初めとする上記任意添加成分(光増感色素、熱重合禁止剤及び連鎖移動剤)を有機溶媒(溶剤)に溶解させ、これにより得られた溶液を基板上に塗布し、その後、溶剤を揮散させて記録層を形成すれば良い。また、記録層に保護材を被覆する場合(図3参照)には、保護材を被覆する前に有機溶媒を風乾や減圧蒸発等によって除去しておくことが好ましい。
【0056】
フォトポリマー感光材料を塗布する基板としては、光学的に透明な素材、例えば、ガラスや石英の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン、脂環式ポリポレフィンなどの透明樹脂を用いることができる。基板の厚みは、好ましくは0.02〜10mmとされる。基板は、必ずしも平面である必要はなく、屈曲や湾曲或いは表面に凹凸構造のあるものでも良い。保護材も基板と同じ材質の光学的に透明な材料から形成することができる。保護材の厚みは、好ましくは0.02〜10mmとされる。
【0057】
フォトポリマー感光材料の塗布方法としては、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、バーコート塗布、スピンコート塗布等を用いることができる。そして、溶媒除去後の記録層の厚みが、1〜500μm、好ましくは5〜50μmとなるように塗布する。
【0058】
<ホログラムの記録方法>
上記のようにして作製されたホログラム記録媒体にホログラムスクリーンを記録するために、本実施形態では2光束干渉露光法が用いられる。以下、図4を参照してより具体的に説明する。
【0059】
<ホログラムスクリーンの記録方法>
図4は、ホログラム記録媒体にホログラムスクリーンを記録するための光学系の一例を示す概略構成図である。図4に示すように、レーザ光源10から出射された波長が200〜800nmの範囲にある可干渉性の光(レーザ光)をビームスプリッタ20等を用いて2つの光線に分割する。そのうち一方の光線L1を参照光といい、他方の光線L2を物体光という。そして、ホログラム記録媒体100上で参照光L1と再度合わさるように、物体光L2を反射ミラー30などを用いることによって偏向させる。ホログラム記録媒体100は、参照光L1及び偏向後の物体光L2が合成されて干渉縞が形成され得る位置に配置する。この場合、参照光と物体光のなす角度(設定回折角)は0°〜180°の範囲で自由に選ぶことができる。参照光L1及び物体光L2は、それぞれ対物レンズ40等によって10〜40倍程度に径を拡大した後、アパーチャー50等により波面を綺麗に整形しておき照射される。ホログラム記録媒体100の前に拡散板90が設置されて拡散光を入射する。ここで、参照光L1については、さらにレンズ(凸レンズ)70を用いて収束光を投影光に変換する。また、予め物体光L2の情報を記録した体積位相型マスターホログラムに光を照射して得られるマスターホログラムからの透過光(物体光)を用いることも可能である。
【0060】
上記の光学系配置において、レーザ光源10から数分程度レーザ光を照射すると、ホログラムとなる参照光L1と物体光L2との干渉縞がホログラム記録媒体100に記録される。なお、レーザ光の光量は、光強度と照射時間との積で表せば、好ましくは0.1〜10,000mJ/cm、より好ましくは1〜1,000mJ/cmである。
【0061】
ホログラム記録媒体100と物体光L2との間に、すり硝子等の拡散板を設置する。拡散板はできるだけホログラム記録媒体100に近接させることが好ましいが参照光がホログラム記録媒体100上で干渉縞を形成できるように照射するような間隔を取る必要がある。
【0062】
<ホログラム記録用の光源>
本実施形態に係るホログラム記録用の光源としては、フォトポリマー感光材料に含まれる光重合開始剤又は光重合開始剤と光増感色素の組み合わせからなる光重合開始剤系に光源から発する光を照射した際に、電子移動を伴って重合性化合物の重合を誘発させるものであればよい。このような光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を例示することができる。これらの光源は、特に、マスターホログラムを利用して、作製したホログラムスクリーンの情報を他のホログラム記録媒体にコピーする際に好適に用いることができる。
【0063】
また、本実施形態に係るホログラム記録用の光源として、前述のようにレーザ光源を用いることができる。レーザ光源から出射されるレーザ光は単一波長であり、可干渉性(コヒーレンス性)を有しているため、ホログラム記録(干渉縞記録)用として好適に用いることができる。より好ましい光源としては、コヒーレンス性により一層優れた光源、例えば、上記レーザ光源にエタロン等の光学素子を装着し、前記単一波長の周波数を単一周波数にしたものを例示することができる。
【0064】
代表的なレーザ光源としては、発振波長200〜800nmのレーザ光源、具体的にはKr(波長647nm)、He−Ne(波長633nm)、Ar(波長514.5nm、488nm)、YAG(波長532nm)、He−Cd(波長442nm)等のレーザ光源を例示することができる。これらのレーザ光源は、単独で用いても或いは2個以上組み合わせて用いても良い。また、レーザ光源は連続光を発振するタイプでも、一定の又は任意の間隔でパルス発振するタイプでも良い。
【0065】
以上に説明した作製方法によってホログラムスクリーンは作製され、ホログラムに記録された干渉縞に応じて、照射された光線を特定の方向に回折させるように機能する。
【0066】
以上に説明した本実施形態に係るホログラムスクリーンおよびレンチキュラーレンズを用いて、図2に示すスクリーンシステム1を構成する。ホログラムスクリーン12とレンチキュラーレンズ11の間に、適当な厚さの透明板1aをはさみ込み、焦点距離の調整を行うとよい。さらに、図5のように、スクリーンシステム1の両面に透明な保護基板1dを貼り付けてもよい。
【0067】
上記のスクリーンシステム1を用いて3次元像を表示させるには、図6に示すように、スクリーンシステム1に対して、投影機9を用いて、点光源を再生すればよい。具体的には、光源と上記光制御機能を奏する素子としてのデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)とによって投影機を構成し、光源から出射した光線の反射光量をRGB独立別個に制御する構成や、光源及びマスクとしての液晶ディスプレイ(LCD)を用いて投影機を構成し、ホログラムスクリーンを透過して特定の方向に回折させるようにした光をレンチキュラーレンズによって合焦するようにすればよい。レンチキュラーレンズの横方向の視差により立体像が観察される。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を示すことにより、本発明の特徴とするところをより一層明らかにする。
【0069】
<ホログラム記録媒体1の作製>
9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン(単体の屈折率:1.63)1.08g(全組成物に対する重量百分率:28.1重量%)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(単体の屈折率:1.46)1.05g(27.4重量%)、ポリメチルメチルメタクリレート(単体の屈折率:1.49)1.25g(32.6重量%)、3,3',4,4'−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン0.25g(6.5重量%)、シアニン系色素(2,5−ビス[(4−ジエチルアミノ)−2−メチルベンジリデン]シクロペンタノン)0.0082g(0.2重量%)、トリアリールスルホニウム系化合物(旭電化工業社製、「SP−170」、塩がヘキサフルオロアンチモネート)0.2g(5.2重量%)、および溶媒としてアセトン5gを常温で混合し、フォトポリマー感光材料1を調製した。
【0070】
上記調整後のフォトポリマー感光材料1を103mm×128mmのガラス基板(MATSUNAMI MICRO SLIDE GLASS)の片面に、乾燥後の厚みが20〜25μmとなるようにスピンコートにより塗布した後、加熱処理を施すことによって塗布層から溶媒を除去して、基板と記録層とからなる2層構造の記録媒体1を作製した。
【0071】
さらに、上記記録層上に、保護材として厚みが50μmのPETフィルムを被覆することにより、3層構造のホログラム記録媒体を作製した。
【0072】
<ホログラムスクリーン1の作製>
YAG(波長532nm)レーザ光源から出射されたレーザ光をビームスプリッタで分割して、一方の光を凸レンズ、アパーチャーを用いて投影光(参照光)とし、他方の光をミラーを用いて偏向した後、凸レンズ、アパーチャーを用いて平行光(物体光)とした。凸レンズとホログラム記録媒体の間にすりガラスを配置し、ホログラム記録媒体表面で物体光と参照光が干渉縞を形成するようにホログラム記録媒体を設置した。なお、参照光と物体光の2光束の成す角度は45度に設定した(図4参照)。
【0073】
<ホログラム記録媒体2の作製>
ラジカル重合開始剤(A)として、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン〔BTTB〕(日本油脂社製、BTTB25:トルエン溶液純度25%の溶媒を留去し、ジエチルエーテルで洗浄することで精製した物)を0.30g、ラジカル重合性化合物(B)として、フェノキシエチルアクリレート(共栄化学社製、ライトアクリレートPO−A)を4.6g、熱可塑性樹脂(C)として、セルロースアセテートブチレート(Aldrich社製、Mn=3万)を5.0g、光増感色素(D)として2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン(林原生物化学研究所社製、DS−B)を0.030g、貯蔵安定剤として、4−メトキシフェノール(社製)0.001gをおよび溶媒としてアセトン20gを常温で混合し、ホログラムポリマー感光材料2を調整した。
【0074】
上記調整後のフォトポリマー感光材料2を60mm×60mmのガラス基板(厚さ約1.3mm)の片面に乾燥後の厚みがおよそ10μmになるようにスピンコートにより塗布し、加熱処理を施すことにより塗布層から溶媒を除去し、基板と記録層からなる2層構造の記録媒体を作成した。
【0075】
さらに、上記記録層上に厚み50μmのPETフィルムを被せて3層構造のホログラム記録用感光板を作成した。
【0076】
<ホログラムスクリーン2の作製>
Arイオン(波長488nm)レーザ光源から出射されたレーザ光をビームスプリッタで分割して、一方の光を凸レンズ、アパーチャーを用いて投影光(参照光)とし、他方の光をミラーを用いて偏向した後、凸レンズ、アパーチャーを用いて平行光(物体光)とした。凸レンズとホログラム記録媒体の間にすりガラスを配置し、ホログラム記録媒体表面で物体光と参照光が干渉縞を形成するようにホログラム記録媒体を設置した。なお、参照光と物体光の2光束の成す角度は40度に設定した(図4参照)。
【0077】
<ホログラムスクリーンの評価>
上記のようにして作製されたホログラムスクリーンについて、光パワーメータ(PHOTODYNE社製、OPTICAL
POWER/ENERGY METER,MODEL 66XLA)を用いて0度入射光強度に対する透過光強度(0度透過率)と設定角度入射光強度に対する透過光強度(設定角度透過率)をそれぞれ測定し、以下の式(1)に基づいて回折効率を算出し評価した。
回折効率(%)=(回折光強度/入射光強度)×100 ・・・(1)
【0078】
作製されたホログラムスクリーン1の0度透過率は81%と非常に透明で、45度透過率は42%、回折効率58%と非常に大きな回折効率を示した。また作製されたホログラムスクリーン2の0度透過率は72%と非常に透明で、40度透過率は37%、回折効率63%と非常に大きな回折効率を示した。
【0079】
<3次元像表示用スクリーンシステム1の評価>
前述で作製したホログラムスクリーンを用い、透明アクリル板を焦点距離のスペーサーとして、アクリル樹脂製のレンチキュラーレンズとを重ね合わせてスクリーンシステム1とした。
作製したスクリーンシステム1のレンチキュラーレンズ側をディスプレイ面(視認側の面)とすると共に、背面側に配置した投影機(液晶ディスプレイ)から2次元像を構成する光をスクリーンシステム1に照射し、当該スクリーンシステム1を透過した光が観察者に向けて回折されるように配置した。ディスプレイ面を視認したところ、通常は透明であったところに明瞭な3次元像を観察することが可能であった。
【0080】
<3次元像表示用スクリーンシステム2の評価>
市販のエンボス型拡散板(日本ゼオン製)を用い、透明アクリル板を焦点距離のスペーサーとして、アクリル樹脂製のレンチキュラーレンズとを重ね合わせてスクリーンシステム2とした。
作製したスクリーンシステム2のレンチキュラーレンズ側をディスプレイ面(視認側の面)とすると共に、背面側に設置した投影機(プロジェクター)から2次元像を構成する光をスクリーンシステム2に照射し、当該スクリーンシステム2に透過した光が観察者に向けて回折されるように配置した。
ディスプレイ面を視認したところ、通常は透明であったところに明瞭な3次元像を観察することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、インテグラルフォトグラフィー法による3次元像表示方法の概念を説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る3次元像表示用スクリーンシステムの概略構成を示す正面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る3次元像表示用スクリーンシステムを作製するためのホログラム記録媒体の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、図3に示すホログラム記録媒体にホログラムスクリーンを記録するための光学系の一例を示す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る3次元像表示用スクリーンシステムに保護基板を設けた状態を示す概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る3次元像表示装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1・・・3次元像表示用スクリーンシステム
8・・・3次元像表示装置
9・・・投影機
11・・レンチキュラーレンズ
12・・体積位相型ホログラムスクリーン(ホログラムスクリーン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラムスクリーンとレンチキュラーレンズを組み合わせた3次元像表示用スクリーンシステムであって、該ホログラムスクリーンがフォトポリマーを主成分とし、露光後の該ホログラムスクリーンの0°入射光に対する透過率が65%以上であり、かつ設定回折角での入射光に対する透過率が35%以上であって、投影装置より投影された映像光が該ホログラムスクリーンにより散乱、拡散されて、樹脂製のレンチキュラーレンズで当該投影された各光線の透過光を収束させることにより3次元像を視認させることができることを特徴とする3次元像表示用スクリーンシステム。
【請求項2】
ホログラムスクリーンの主成分であるフォトポリマーが、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、可視光の波長領域を有する干渉性の第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射により、ラジカル重合性化合物(A)の重合を開始させる光ラジカル重合開始剤(D)と、光ラジカル重合開始剤を増感させる光増感色素(E)と、カチオン重合性化合物(B)および、第一の光とは異なる波長領域を有する第二の光の照射によりカチオン重合性化合物(B)の重合を開始させる光カチオン重合開始剤(F)とからなり、ラジカル重合性化合物(A)の屈折率が、カチオン重合性化合物(B)の屈折率よりも大きいように調整したフォトポリマー組成物であることを特徴とする請求項1記載の3次元像表示用スクリーンシステム。
【請求項3】
ホログラムスクリーンの主成分であるフォトポリマーが、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、可視光の波長領域を有する干渉性の第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射により、ラジカル重合性化合物(A)の重合を開始させる光ラジカル重合開始剤(D)と、光ラジカル重合開始剤を増感させる光増感色素(E)、およびバインダーポリマー(C)からなり、ラジカル重合性化合物(A)の屈折率が、バインダーポリマー(C)の屈折率よりも大きいように調整したフォトポリマー組成物であることを特徴とする請求項1記載の3次元像表示用スクリーンシステム。
【請求項4】
ホログラムスクリーンの主成分であるフォトポリマーが、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を少なくとも1つ含有するラジカル重合性モノマー(A)と、可視光の波長領域を有する干渉性の第一の光の干渉によって得られる干渉縞の照射により、ラジカル重合性化合物(A)の重合を開始させる光ラジカル重合開始剤(D)と、光ラジカル重合開始剤を増感させる光増感色素(E)と、カチオン重合性化合物(B)と、バインダーポリマー(C)および、第一の光とは異なる波長領域を有する第二の光の照射によりカチオン重合性化合物(B)の重合を開始させる光カチオン重合開始剤(F)とからなり、ラジカル重合性化合物(A)の屈折率が、カチオン重合性化合物(B)およびバインダーポリマー(C)の屈折率の加重平均値よりも大きいように調整したフォトポリマー組成物であることを特徴とする請求項1記載の3次元像表示用スクリーンシステム。
【請求項5】
ホログラムスクリーンが、フォトポリマーを主成分とするホログラムスクリーンの全面に参照光と物体光の2光束を干渉させて露光した後、加熱増幅処理を施すことで照射された光線をそれぞれ特定の方向に回折させる体積位相型ホログラムスクリーンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の3次元像表示用スクリーンシステム。
【請求項6】
レンチキュラーレンズが、フォトポリマーを主成分とし、該フォトポリマーを型に注入して光硬化させることにより作製したレンチキュラーレンズであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の3次元像表示用スクリーンシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の3次元像表示用スクリーンシステムに対して2次元像を構成する光線を投影する投影機を備え、前記投影機は、前記2次元像を構成する各光線の前記3次元像表示用スクリーンシステムに対する入射光量を独立別個に制御することが可能であることを特徴とする3次元像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−129136(P2008−129136A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311331(P2006−311331)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】