説明

3次元医用画像の描画

3次元医用画像で関心ボリューム構造を描画する方法及び装置。この装置は、3次元画像を格納するためのデータ記憶デバイス、及び3次元画像の関心ボリューム構造を描画するためのディジタル処理デバイスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用撮像分野に関し、特に3次元医用画像の関心ボリューム構造の描画に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍や病変など病理解剖学的構造は、外科手術など侵襲性の処置で治療されるが、それは患者にとって有害であり、危険に満ちている。病理解剖学的構造(たとえば、腫瘍、病変、血管奇形、神経障害など)を治療するための非侵襲性方法は外部ビーム放射線療法である。外部ビーム放射線療法の一タイプでは、外部放射線源が使用され、腫瘍がビームの回転の中心(アイソセンタ)であるように患者が位置付けられた状態で、一続きのX線ビームが複数の角度から腫瘍部位に向けられる。放射線源の角度が変わると、各ビームは、腫瘍部位を通過するが、腫瘍に至るまでの健康な組織の様々な領域も通過する。その結果、腫瘍の蓄積放射線量は高く、健康な組織の平均放射線量は低くなる。
【0003】
用語「放射線療法」は、放射線を壊死のためというよりは治療のために標的領域に照射する処置を指す。放射線療法期間に使用される放射線量は、通常、放射線手術期間に使用される量と比較して概ね1桁小さい。放射線療法は、通常、治療あたりの低線量(たとえば100〜200センチグレイ(cGy))、短期間治療(たとえば治療あたり10から30分)、及び多分割照射法(たとえば30から45日間の治療)を特徴とする。便宜上、特に断りのない限り、用語「放射線治療」は放射線手術及び/又は放射線療法を含むものとして本明細書で使用される。
【0004】
伝統的に、医用撮像は患者の2次元図を示すために使用される。コンピュータ断層撮影(CT)など現代の解剖学的構造撮像療法では、CTスライスの収集から生成される患者のボリューム(たとえば、頭骨又は身体の病理解剖学的構造を有する部分)の正確な3次元モデルを提供することができる。各CTスライスは患者の横断面に対応する一組の画像が関心ボリュームの3次元モデルを表すように、こうしたCTスライスが、通常、1.25又は3ミリメートルごとに得られる。
【0005】
従来の治療計画ソフトウェア・パッケージは、磁気共鳴映像法(MRI)、陽電子射出断層撮影(PET)スキャン、血管造影図、コンピュータX線断層撮影(CT)スキャンなど診断撮像源から3D画像を取り入れるように設計されている。治療計画中に解剖学的構造(たとえばCT)及び/又は高機能の撮像からの関心ボリューム(VOI)が、投与される放射線量に関する標的又は回避すべき構造の描画に使用される。図1は、関心ボリューム(VOI)構造を形成するのに使用することができる従来の輪郭セットを示す図である。この輪郭セットは、端部スライスや中間スライスを含む複数の画像スライスを含む。関心ボリューム構造が、複数の画像スライス内で一組の平面の閉多角形として定められる。多角形の頂点の座標は、画像の原点からの所与のユニット内のx、y、zオフセットとして決められる。通常、従来の治療計画システムでは、処理電力の制約により、セット内のすべての2次元スライスは使用されない。むしろ従来の治療計画システムでは、隣接していないスライス(たとえば10番目のスライスごと)の間の線形補間が使用され、関心ボリューム構造の形成に割り当てられる時間と電力が最小限に抑えられる。しかし線形補間では、中間スライスでしか見ることのできない陥凹や突出など病理解剖学的構造の形成が補間された輪郭に取って代えられるために、見落とされ、明らかにされない。
【0006】
関心ボリューム構造は、標的領域と危険領域を含む。標的領域は、治療又は手術のために放射線が向けられる関心ボリューム構造である。危険領域は、放射線治療が回避されるべき関心ボリューム構造である。たとえば、脊髄部のCTスライスは、治療すべき病理解剖学的構造(たとえば腫瘍、病変、動静脈奇形など)の標的領域と、回避すべき隣接する正常な解剖学的構造(たとえば内臓器官)の危険領域とを含む。治療計画ソフトウェアでは、2次元CT画像スライス上に標的領域と危険領域を描画する。従来は、ユーザが、医用撮像ディスプレイ上に示された2次元画像上の点を手で描画して、対応する輪郭を生成していた。理想的には、すべてのスライスについて関心ボリュームの輪郭がその3次元ボリュームの対応する標的領域又は危険領域とマッチすべきである。こうしたマッチングは、3次元の特性や、異常な及び正常な解剖学的構造の不規則性のために難しい。たとえば、2次元描画は、血管構造など複雑な関心ボリューム構造には限定的にしか適用可能でない。
【0007】
本発明を限定的ではなく一例として、添付の図面の図で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の記載では、本発明のいくつかの実施形態をよく理解するための、特定のシステム、構成要素、方法などの例など、いくつかの具体的な詳細を述べる。しかし、当業者には明らかなように、本発明の少なくとも一部の実施形態はこうした具体的な詳細を使用せずに実施することができる。他の例では、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知の構成要素又は方法は詳細に記載しておらず、又は簡単な構成図の形式で示してある。したがって、記載した具体的な詳細は単なる例示である。特別の実施はこうした例示の詳細から逸脱することができるが、なお本発明の精神及び範囲内であることが企図されている。
【0009】
方法及び装置の実施形態を、3次元医用画像で関心ボリューム構造を描画するために記載する。一実施形態では、この方法は、関心ボリューム構造を含む3次元画像の受信、及び3次元画像内での関心ボリューム構造の描画を含む。機械可読記憶媒体は、方法のオペレーションを容易にするための命令を含む。装置の一実施形態は、3次元画像を格納するためのデータ記憶デバイス、及び3次元画像の関心ボリューム構造を描画するためのディジタル処理デバイスを含む。装置の他の実施形態は、3次元画像を表示する手段、関心ボリューム構造と他の解剖学的構造を区別する手段、及び3次元画像で関心ボリューム構造を描画する手段を含む。
【0010】
図2は、3次元画像100の一実施形態を示す図である。3次元画像100は、3次元CT画像、3次元MRI画像、又は他の方法から得られる3次元画像である。3次元画像100を、陰極線管(CRT)モニタ、液晶ディスプレイ(LCD)モニタ、又は医用撮像モニタを含む他のタイプのモニタ上で表示することができる。
【0011】
図で示した3次元画像100は、腫瘍110、及びいくつかの危険構造115、120、125、130を含む。腫瘍110は、任意のタイプの標的領域を表している。腫瘍110は、便宜上、特に断りのない限り、標的領域110と交換可能に呼ばれる。標的領域110は、(単に関心ボリュームとも呼ばれる)関心ボリューム(VOI)構造と考えることもできる。同様に、危険領域115、120、125、130は、個々に関心ボリューム構造として指示される。便宜上、危険構造115への言及は、特に断りのない限り、危険構造115、120、125、130の任意のもの又はすべてへの言及を表す。
【0012】
放射治療計画システムは、順方向計画(forward planning)及び逆方向計画(inverse planning)を使用して、標的領域110と危険領域115への放射線量を決定することができる。順方向計画では、医学物理学者又は他のユーザが腫瘍110に与えるべき放射線量を決定し、次いで危険構造115や他の健康な組織に吸収される放射線量を計算する。対照的に、逆方向計画では、医学物理学者又は他のユーザは、腫瘍110への最小線量と最大線量を独立に特定し、かつ危険領域115や他の健康な組織への最大線量を独立に特定することができる。次いで、治療計画ソフトウェアは、放射線ビームの数を選択するとともに、各放射線ビームの方向、距離、エネルギを選択する。
【0013】
標的領域110と危険構造115の描画により、標的領域110と危険構造115を独立して識別することによって、逆方向計画が容易になる。逆方向計画中、標的領域110と危険構造115に対応する関心ボリューム(VOI)構造が使用されて、投与される放射線量に関する標的又は除去すべき構造が区別される。すなわち、放射線源は、放射線治療が意図された標的領域110にできる限り一致する関心ボリューム構造に放射線量を集中し、近隣の危険構造115や他の健康な組織への照射を回避するように位置付けられる。標的領域110の関心ボリューム構造が決まり、危険構造115と軟組織構造の関心ボリューム構造が指定された後、責務にある放射線腫瘍遺伝子学者又は医学物理学者が標的関心ボリューム構造への最小と最大の放射線量、さらに正常と危険の関心ボリューム構造への最大放射線量を指定する。次いで、ソフトウェアは、放射線治療システムの位置付け能力に応じて、治療計画の最小線量と最大線量の制約を満たす逆治療計画を生成する。
【0014】
有効な放射線治療計画の2つの主な要件は一致性(conformality)と均一性である。均一性は、線量体積ヒストグラム(dose volume histogram;DVH)を特徴とする標的領域110への放射線量の一様性である。標的領域への理想の線量体積ヒストグラムは、100%の処方線量が標的領域110を照射する場合の矩形関数である。危険構造への理想の線量体積ヒストグラムは、危険構造115が照射を受けない場合、ゼロ関数である。一致性は、隣接する危険構造115への損傷を回避するため、放射線量が標的領域110の形状と大きさにマッチする(すなわち一致する)程度である。より具体的には、一致性は標的関心ボリューム構造内の処方(Rx)線量の測定値である。一致性を、処方線量を受ける標的領域110の量に対する少なくとも処方線量を受ける全体ボリュームの比を示す一致性指数を使用して測定することができる。完全な一致性は、1に等しい一致性指標をもたらし、それは標的領域110だけが処方線量を受けたことを示す。
【0015】
臨床医が関心ボリューム構造を描画する助けをするため、治療計画ソフトウェアでは、3次元画像100にフィルタを付けて、様々な構造の強度のボクセルごとに様々なグレイ・スケール値又は色及び不透明度が割り当てられる。たとえば、腫瘍110は、血管の危険構造115とは異なる不透明度を有する。不透明度を撮像放射線から得られる構造の周波数応答に関連付けることができる。一実施形態では、3次元画像100を、様々な構造を示す様々な色を使用して標示する。使用可能なフィルタの一例はウィンドウ・レベル(W/L)フィルタである。別法として、曲線ベースのフィルタなど他のフィルタを使用することもできる。臨床医は、表示されるあるフィルタを選択し、隠すための他のフィルタを選択することができるため、フィルタリングは3次元画像100を見る際の対応性を提供する。たとえば、患者の皮膚に対応する3次元構造は、ターン・オフされて表示されないフィルタに割り当てられる。3次元画像内のフィルタをターン・オフ又はオンすることによって、ユーザが特定の標的領域110と危険構造115を分離し、それを順方向及び/又は逆方向計画描画に使用することができる。図で示した実施形態では、腫瘍110が危険構造115よりも暗い影で示されており、腫瘍110が危険構造115とは異なるフィルタ上に存在するように示されている。さらに、使用されるフィルタのタイプや、フィルタによって使用される構造特性によって、各危険構造が個別のフィルタ層に存在するようにすることができる。
【0016】
図3は、3次元画像100上のサブボリュームの周囲150の一実施形態を示す図である。治療計画ソフトウェアは、フィルタの他に、ユーザが3次元画像100上にサブボリュームの周囲150を決めて、サブボリュームの周囲150内の構造だけを表示することができるようにする。ユーザに表示される3次元画像100からサブボリュームの周囲150の外側の他の構造を除外して、ユーザが一定の標的領域110と危険構造115をより容易に識別できるようにすることができる。一実施形態では、サブボリュームの周囲150は3次元画像100に重ね合わせた2次元形状でもよい。3次元画像100を回転させ、複数の2次元サブボリュームの周囲150を描くことによって、ユーザは表示された3次元画像100を3次元サブボリュームに有効に限定することができる。別法として、サブボリュームの周囲150はワイヤ・メッシュ球、矩形、又は他の形状などの3次元形状でもよい。
【0017】
図4は、3次元画像100上のサブボリューム155の一実施形態を示す図である。サブボリューム155は、サブボリュームの周囲150によって区画された3次元ボリュームに相当する。3次元画像100の全体ボリュームの代わりにサブボリューム155だけを表示する利点は、標的領域110と危険構造115を周囲の構造と組織から分離できることである。標的サブボリューム155の他の利点は、描画アルゴリズムによる3次元画像100の全体ボリュームと比較して小さいサブボリューム155内の構造の描画に、より少ない時間と処理電力しか消費されないことである。このようにして、フィルタリングやサブボリューム機能により、ユーザは、グラフィック・ディスプレイ上の3次元画像100のボリューム・レンダリング内で標的領域110と危険構造115を互いに、かつ他の構造から良く分離することができる。この3次元の分離によって、ユーザが、具体的には複数の2次元スライス上の別個の輪郭の描画と比較して特定の関心ボリュームの輪郭を識別する能力と速度を大幅に向上させることができる。
【0018】
図5は、3次元画像100上のサブボリューム155に相当するバイナリ・サブボリューム160の一実施形態を示す図である。バイナリ・サブボリューム160は、少なくとも1つのバイナリ値をサブボリューム155内の各ボリューム要素、すなわちボクセルに割り当てるサブボリューム155の一表示である。一実施形態では、ボクセルは寸法約0.5×0.5×1.25ミリメートルを有するボリュームを表している。各ボクセルは32ビット(すなわち4バイト)を有するワードに関連付けられる。別法として、他の数のビットを各ボクセルに関連付けることもできる。1つ又は複数のワードのビットを使用して、ボクセルがバイナリ・サブボリューム160に属するかどうかを示すことができる。ワードの他のビットを使用して、以下に記載するように、対応するボクセルが関心ボリューム構造など特定の構造に属するかどうかを示すことができる。構造ごとに、所与のビット値は、その特定のボクセルがそのビットに対応する関心ボリューム構造の一部であるかどうかを示す「1」又は「0」である。たとえば、32ビットのワードでは、各ボクセルは32の関心ボリューム構造だけに属することが指定される。
【0019】
図6は、第1及び第2の関心ボリューム構造205、210のバイナリ・マスクを有するバイナリ・サブボリューム200の他の実施形態を示す図である。一例として、第1の関心ボリューム構造205は標的領域110を表す。第2の関心ボリューム構造210は危険構造115を表す。各影付き立方体は第1又は第2の関心ボリューム構造205、210のどちらかに属するボクセルを示し、影が付けられていない立方体は第1又は第2の関心ボリューム構造205、210に属していないボクセルを表す。
【0020】
図で示した第1のワード215は、第1の関心ボリューム構造205内のボクセルに対応するワードを表す。第1のワード215のi番目のビットは、対応するボクセルが第1の関心ボリューム構造205に属するかどうかを示す。したがって第1の関心ボリューム構造205に関連するボクセルはすべて、i番目のビットでビット値「1」を有する。第1の関心ボリューム構造205に関連しないボクセルはすべて、i番目のビットでビット値「0」を有する。同様に、図で示した第2のワード220は第2の関心ボリューム構造210内のボクセルに対応するワードを表す。第2のワード220のj番目のビットは対応するボクセルが第2の関心ボリューム構造210に属するかどうかを示す。したがって、第2の関心ボリューム構造210に関連するボクセルはすべて、j番目のビットでビット値「1」を有し、第2の関心ボリューム構造210に関連しないボクセルはすべて、j番目のビットでビット値「0」を有する。場合によっては、単一のボクセルが複数の関心ボリューム構造に属してもよく、その場合、そのボクセルの対応するワード内のいくつかのビットはビット値「1」を有する。他の方法では、バイナリ・サブボリューム200内のボクセルが、バイナリ・サブボリューム200内の関心ボリューム構造205又は210のどちらにも関連しない場合、そのボクセルに対応するワードのビットはすべてビット値「0」を有する。一部の実施形態では、バイナリ・サブボリューム200又は個々のバイナリ関心ボリューム構造205又は210をビット・マスク又はバイナリ・マスクと呼ぶことができる。
【0021】
図7は、バイナリ・サブボリューム160から導出された輪郭セット250の一実施形態を示す図である。輪郭セット250はいくつかの輪郭スライス255、260、265を含む。便宜上、輪郭スライス255への言及は、特に断りのない限り、輪郭スライス255、260、265のすべてを表す。各輪郭スライス255は図5で示したバイナリ・サブボリューム160の層に対応する。各輪郭スライス255はバイナリ・サブボリューム160内の関心ボリューム構造205、210の少なくとも1つの輪郭を示す。輪郭スライス255あたりに1つの輪郭が示されているが、他の実施形態は、輪郭スライス255あたりに複数の輪郭を含むことができる。別法として、各輪郭セット250は単一の関心ボリューム構造205及び210に対応することができる。
【0022】
一実施形態では、個々の輪郭は関心ボリューム構造205又は210の周囲の様々な点270の識別によって形成される。次いで、識別された点が少なくとも1つの直線又は曲線の近似値270を使用して連結される。他の実施形態では、治療計画ソフトウェアで、関心ボリューム構造205又は210の周囲のすべてのボクセルを識別する。換言すれば、関心ボリューム構造の境界を決める実際のボクセルを使用して輪郭スライス255を導出することができる。
【0023】
図8は、複数の輪郭セット305の統一モデリング言語(UML)表現300の一実施形態を示す図である。統一モデリング言語は、ソフトウェア・インテンシブ・システムのアーチファクトを可視化、指定、構成、文書化するためのグラフィカル言語である。統一モデリング言語は、プログラミング言語ステートメント、データベース・スキーマ、ソフトウェア構成要素を書き込むための標準方法を提供する。統一モデリング言語は当技術分野で周知であるため、統一モデリング言語のより詳細な論述は本明細書に記載しない。
【0024】
図で示したUML表現300はデータ構造の4つの層を含む。すなわち、複数輪郭セット・データ構造305、1つ又は複数の輪郭セット・データ構造310、1つ又は複数の輪郭スライス・データ構造315、1つ又は複数の輪郭データ構造320である。以下に記載するように、層ごとに代表的なスライス及び/又は輪郭が対応する構成で示されている。輪郭セット層310は、具体的には、図7に関して上述したように、所与の関心ボリューム構造205に対応する。
【0025】
複数輪郭データ構造305は、サブボリューム150内のすべての関心ボリューム構造205のコンパイルである。対応する複数輪郭セット306は、すべての関心ボリューム構造205のすべてのスライスを表すものである。いくつかの輪郭セット・データ構造310を使用して、複数輪郭セット・データ構造305を形成する。各輪郭セット311〜313は、単一の関心ボリューム構造205に対していくつかのスライスを含む。関心ボリューム構造205は、標的領域110、危険構造115、他の組織、線量イソコンチュア(isocontour)、又は臨床医などのユーザによって識別される他の描画でもよい。図で示した例では、3つの輪郭セット311〜313が複数輪郭セット306を構成する。3つの輪郭セット311〜313を図で示してあるが、他の複数輪郭セット306は2つ以下又は4つ以上の輪郭セット311〜313を含むことができる。1つ又は複数の輪郭スライス・データ構造315は、輪郭セット・データ構造310を構成する。個々の輪郭スライス316〜318が対応する輪郭セット311〜313に対して示されている。輪郭スライス・データ構造315ごとに、対応する輪郭データ構造320を識別する。たとえば、各輪郭スライス316〜318は対応する輪郭321〜323を有する。
【0026】
複数輪郭データ構造305を記述するために、一連のブール演算子を使用して、輪郭セット・データ構造310を組み合わせる。たとえば、所与の関心ボリューム構造205の特性によって、ブールOR演算子(∪)又はAND演算子(∩)を使用して複数輪郭セットを形成することができる。たとえば、第1のVOI構造が標的領域110を表し、第2のVOI構造が標的領域110内の穴又は腔を表す場合、得られる複数輪郭セット306を以下の等式で表すことができる。
【数1】

ブール・アルゴリズムの他の変形を考案して、放射線治療に関して考えられる危険構造115と他の解剖学的特徴を明らかにすることができる。たとえば、上記の例は単一の腔を含むものであるが、他のアルゴリズムは複数の腔を有する標的領域110を記述することができる。
【0027】
さらに、組み合わせた輪郭セット311〜313すべてが、互いに同じ平面に存在する必要はない。たとえば、アキシャル方向に区画された固体領域をサジタル方向に区画された腔と組み合わせることができる。いくつかの解剖学的位置は、1つの平面では他の平面よりも良好に見える。したがって、様々な平面で撮られた画像を使用することが望ましい。さらに、上記で論じたブール演算子を使用して、枝、突出、陥凹、又は他の非線形特性を有する関心ボリュームを形成することもできる。
【0028】
図9は、描画方法350の一実施形態を示す図である。図で示した描画方法350を、以下に記載するように、放射線治療システムの治療計画システムで実現することができる。描画方法350が開始され、355で治療計画システムが図1の3次元画像100など3次元画像を受信する。3次元画像は関心ボリューム構造110、115など関心ボリューム構造を含む。3次元画像は危険構造、組織、他の解剖学的特徴を含む。
【0029】
次いで3次元画像の異なるタイプの構造を区別するために、360で治療計画システムが3次元画像をフィルタリングする。一実施形態では、ユーザは、治療計画システムのグラフィカル・ディスプレイ上で選択することによって、治療計画システムが3次元画像をフィルタリングするように指示する。次いで365でユーザは3次元画像のサブボリュームを決める。別法として、ユーザは、360で3次元画像をフィルタリングする前に、365でサブボリュームを決めて、360では、治療計画システムが、決められたサブボリューム内の構造だけをフィルタリングするようにすることができる。一実施形態では、ユーザは、2次元又は3次元のサブボリュームの周囲を使用して、グラフィカル・ディスプレイ上でサブボリュームを決めることができる。
【0030】
次いで、治療計画システムは3次元画像内に関心ボリューム構造を描画する。一実施形態では、ユーザは、標的領域110の強度に対応する値などシード値を与える。次いで、治療計画システムは、識別された関心ボリューム構造に対応するフィルタリングされたサブボリューム内のすべてのボクセルを見つける。こうすると、サブボリューム内に表示された関心ボリューム構造に関連する各ボクセルが指定の関心ボリューム構造に属するものとして(たとえばボクセルに対応するビット・ワードで)識別することができる。さらに、治療計画システムでは他の関心ボリューム構造に関連する他のボクセルを識別することができる。370で、治療計画システムが関心ボリューム構造を描画した後、治療計画システムは描画された関心ボリューム構造の2次元及び3次元の輪郭を自動的に識別する。次いで図で示した描画方法350が終了する。
【0031】
図10は、本発明の特徴を実施することができる放射治療の実行に使用可能な治療システム500の一実施形態を示す図である。図で示した治療システム500は、診断撮像システム510、治療計画システム530、治療実施システム550を含む。他の実施形態では、治療システム500はそれよりも少ない、又は多い構成要素のシステムを含むことができる。
【0032】
診断撮像システム510は、患者の関心ボリューム(VOI)の医療診断画像を生成し、その画像を後の医療診断、治療計画、及び/又は治療実施に使用することができる任意のシステムを表すものである。たとえば、診断撮像システム510は、コンピュータ断層撮影(CT)システム、磁気共鳴映像(MRI)システム、陽電子射出断層撮影法(PET)システム、超音波システム、又は他の同様の撮像システムでもよい。論述を簡単にするために、本明細書ではCTX線撮像システムなど特定の撮像システムへの特定の言及は、特に断りのない限り、全般的に診断撮像システム510を表すものであり、他の撮像法を除外するものではない。
【0033】
図で示した診断撮像システム510は、撮像源512、撮像検出器514、ディジタル処理システム516を含む。撮像源512、撮像検出器514、ディジタル処理システム516は、バスなど通信チャネル518を介して互いに結合される。一実施形態では、撮像源512は撮像ビーム(たとえばX線、超音波、無線周波など)を生成し、撮像検出器514は画像ビームを検出し、受信する。別法として、撮像検出器514は撮像源(たとえばMRI又はPETスキャン)からの撮像ビームによって刺激される第2の撮像ビーム又は放出物を検出し、受信することもできる。一実施形態では、診断撮像システム510は2つ以上の診断撮像源512と2つ以上の対応する撮像検出器514を含む。たとえば、2つのX線源512を、撮像される患者の周囲に配置し、互いに離して角度(たとえば90度、45度など)を付けて固定し、患者を通過して対応する撮像検出器514に照準させ、撮像源514に対して径方向に対向させることができる。単一の大きい撮像検出器514、又は複数の撮像検出器514を各X線撮像源514によって照射することもできる。別法として、他の数及び構成の撮像源512及び撮像検出器514を使用することもできる。
【0034】
撮像源512と撮像検出器514はディジタル処理システム516に結合されて、診断撮像システム510内の撮像オペレーションが制御され、画像データが処理される。一実施形態では、ディジタル処理システム516は撮像源512及び撮像検出器514と通信することができる。ディジタル処理システム516の実施形態は、1つ又は複数の汎用プロセッサ(たとえばマイクロプロセッサ)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)など専用プロセッサ、又はコントローラあるいはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)など他のタイプのデバイスを含む。ディジタル処理システム516は、メモリ、記憶デバイス、ネットワーク・アダプタなど他の構成要素(図示せず)を含むこともできる。一実施形態では、ディジタル処理システム516は、Digital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)形式など標準形式でディジタル診断画像を生成する。他の実施形態では、ディジタル処理システム516は、他の標準又は非標準ディジタル画像形式で生成することができる。
【0035】
さらに、ディジタル処理システム516はDICOMファイルなど診断画像ファイルをデータ・リンク560上で治療計画システム530に伝送する。一実施形態では、データ・リンク560は、直接リンク、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)リンク、インターネットなど広域ネットワーク(WAN)リンク、又は他のタイプのデータ・リンクである。さらに、診断撮像システム510と治療計画システム530の間で転送される遠隔診断又は治療計画構成など情報は、データ・リンク560上でプル又はプッシュされるもある。たとえば、ユーザは本発明の実施形態を使用して、システムのユーザと患者の間が物理的に離れていても、遠隔に診断し治療を計画することができる。
【0036】
図で示した治療計画システム530は、処理デバイス532、システム・メモリ・デバイス534、電子データ記憶デバイス536、ディスプレイ・デバイス538、入力デバイス540を含む。処理デバイス532、システム・メモリ534、記憶デバイス536、ディスプレイ538、入力デバイス540は、バスなど1つ又は複数の通信チャネル542で互いに結合されている。
【0037】
処理デバイス532は画像データを受信し、処理する。処理デバイス532は、治療計画システム530内の命令やオペレーションも処理する。いくつかの実施形態では、処理デバイス532は、1つ又は複数の汎用プロセッサ(たとえばマイクロプロセッサ)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)など専用プロセッサ、又はコントローラあるいはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)など他のタイプのデバイスを含むことができる。
【0038】
具体的には、処理デバイス532は、本明細書で論じた治療オペレーションを行うための命令を実行するように構成されている。たとえば、処理デバイス532は、患者の体内の標的の動作の非線形経路を識別し、動作の非線形経路の非線形モデルを作成する。他の実施形態では、処理デバイス532は、複数の位置点と複数の方向インジケータに基づいて非線形モデルを作成する。他の実施形態では、処理デバイス532は、複数の相関モデルを生成し、複数のモデルのうちの1つを選択して標的の位置を導出する。さらに、処理デバイス532によって、本明細書に記載したオペレーションに関連する他の診断、計画、治療オペレーションが容易になる。
【0039】
一実施形態では、システム・メモリ534は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)又は他の動的記憶デバイスを含む。上記のように、システム・メモリ534は通信チャネル542によって処理デバイス532に結合される。一実施形態では、システム・メモリ534は処理デバイス532によって実行すべき情報と命令を格納する。システム・メモリ534を、処理デバイス532による命令の実行中に、一時的変数又は他の中間情報を格納するために使用することもできる。他の実施形態では、システム・メモリ534は、読み取り専用メモリ(ROM)、又は処理デバイス532への静的情報と命令を格納するための他の静的記憶デバイスを含むこともできる。
【0040】
一実施形態では、記憶デバイス536は、情報と命令を格納するための1つ又は複数の大容量記憶デバイス(たとえば磁気ディスク・ドライブ、テープ・ドライブ、光ディスク・ドライブなど)を代表するものである。記憶デバイス536及び/又はシステム・メモリ534を機械可読媒体と呼ぶこともできる。特定の実施形態では、記憶デバイス536は、本明細書で論じたモデリング・オペレーションを実行するための命令を格納する。たとえば、記憶デバイス536は、命令を格納して、データ点を獲得かつ格納し、画像を獲得かつ格納し、非線形経路を識別し、線形及び/又は非線形相関モデルを作成し、複数のモデルから相関モデルを選択し、その他諸々のことができる。他の実施形態では、記憶デバイス536は1つ又は複数のデータベースを含むこともできる。
【0041】
一実施形態では、ディスプレイ538は、陰極線管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、又は他のタイプのディスプレイ・デバイスである。ディスプレイ538は、情報(たとえばVOIの2次元又は3次元表現)をユーザに表示する。入力デバイス540は、キーボード、マウス、トラックボール、又は同様のデバイスなど1つ又は複数のユーザ・インターフェース・デバイスを含む。1つ又は複数の入力デバイス540を使用して、方向情報を通信し、処理デバイス532へのコマンドを選択し、ディスプレイ538上のカーソルの動きを制御し、その他諸々のことができる。
【0042】
治療計画システム530の一実施形態を本明細書に記載したが、記載の治療計画システム530は、例示の治療計画システム530を単に代表するものである。治療計画システム530の他の実施形態は、多くの異なる構成やアーキテクチャを有することができ、それよりも少ない、又は多い構成要素を含むことができる。たとえば、他の実施形態は、周辺バス又は専用キャッシュ・バスなど複数のバスを含む。さらに、治療計画システム530は、DICOMインポートを支持するためのMedical Image Review and Import Tool(MIRIT)を含み、画像を融合し、標的を様々なシステムに描画し、次いで治療計画システム530に計画及び線量の計算のためにインポートできるようにすることもできる。他の実施形態では、治療計画システム530は、ユーザが治療を計画し、MRI、CT、PETなど様々な撮像法のうちの任意のもので線量の分布を見ることができるようにする拡張画像融合能力を含むこともできる。さらに、治療計画システム530は、従来の治療計画システムの1つ又は複数の特徴を含むこともできる。
【0043】
一実施形態では、治療計画システム530は、治療実施システム550と記憶デバイス536上のデータベースを共用して、治療実施システム550が治療実施の前又はその最中にデータベースにアクセスできるようにすることができる。治療計画システム530を治療実施システム550にデータ・リンク570を介してリンクさせることができる。データ・リンク570は、データ・リンク560に関して上述したように、直接リンク、LANリンク、又はWANリンクである。LAN、WAN、又は他の分散接続が実装されると、治療システム500の任意の構成要素を分散位置に存在させて、個々のシステム510、530、550を互いに物理的に離すことができる。別法として、診断撮像システム510、治療計画システム530、又は治療実施システム550の機能的特徴の一部又はすべてを、治療システム500内で互いに統合することができる。
【0044】
図で示した治療実施システム550は、放射線源552、撮像システム554、ディジタル処理システム556、診察台558を含む。放射線源552、撮像システム554、ディジタル処理システム556、診察台558を、1つ又は複数の通信チャネル560を介して互いに結合することができる。治療実施システム550の一例を図で示してあり、図11を参照してより詳細に記載する。
【0045】
一実施形態では、放射線源552は、治療計画と一致する標的ボリュームへの処方放射線量を投与するための治療又は手術のための放射線源552である。たとえば、標的ボリュームは内臓器官、腫瘍、又は領域である。便宜上、本明細書での標的ボリューム又は標的への言及は、器官、腫瘍、領域又は他の治療計画の対象である描画されたボリュームの全体又は一部を指す。
【0046】
一実施形態では、治療実施システム550の撮像システム554は、放射線源に対して患者を位置付けるために、上記の診断画像との位置決め又は相関のための標的ボリュームを含む患者のボリュームの治療中(intra-treatment)の画像を取り込む。診断撮像システム510と同様に、治療実施システム550の撮像システム554は、1つ又は複数の源及び1つ又は複数の検出器を含む。
【0047】
治療実施システム550は、放射線源552を制御し、撮像システム554を制御し、任意の患者の支持デバイスである診察台558を制御するためのディジタル処理システム556を含む。ディジタル処理システム556は、1つ又は複数の汎用プロセッサ(たとえばマイクロプロセッサ)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)など専用プロセッサ、又はコントローラあるいはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)など他のデバイスを含む。さらに、ディジタル処理システム556は、メモリ、記憶デバイス、ネットワーク・アダプタなど他の構成要素(図示せず)を含む。
【0048】
図11は、治療実施システム550の一実施形態を示す概略構成図である。図で示した治療実施システム550は、線形加速器(LINAC)552の形態の放射線源552と上記の診察台558とを含む。治療実施システム550は、複数の撮像用X線源575と検出器580も含む。2つのX線源575を名目的に位置合わせして、少なくとも2つの異なる角度(たとえば90度、45度など離れた)位置から患者を通る撮像X線ビームを発射し、診察台558上の患者を通して対応する検出器580に向ける。他の実施形態では、単一の大きい撮像器を各X線撮像源575によって照射されるように使用することもできる。別法として、他の数量や構成の撮像源575及び検出器580を使用することもできる。一実施形態では、治療実施システム550は、Accuray Incorporated of Sunnyvale、Californiaによって開発されたCYBERKNIFE(登録商標)システムなど、(たとえば放射線外科手術を行うための)画像案内式、ロボットベースの放射線治療システムでもよい。
【0049】
図で示した実施形態では、LINAC552はロボット・アーム590上に取り付けられる。ロボット・アーム590は、LINAC552を適切に位置付けて、患者の周囲の操作ボリューム内において、病理解剖学的構造など標的に多角度から送出されるビームを照射するための複数(たとえば5以上)の自由度を有する。治療実施システム550で実施される治療には、単一のアイソセンタ(収束点)、複数のアイソセンタを有するビーム経路、又は特定のアイソセンタを持たない(すなわちビームが異常な標的ボリュームと交差するだけで十分であり、標的内の単一点又はアイソセンタに収束させる必要がない)ビーム経路が含まれる。さらに、治療を、治療計画中に決定されたように、単一期間(単一分割)又は少数の期間(低分割)に送出することができる。一実施形態では、治療実施システム550は、患者を剛性の外部フレームに固定して、標的ボリュームの術中位置を術前の治療計画段階中の標的ボリュームの位置と合わせることなく、治療計画に従って放射線ビームを送出する。
【0050】
上記のように、ディジタル処理システム556は、アルゴリズムを実装して、撮像システム554から得られた画像を診断撮像システム510から得られた術前治療計画画像と合わせ、治療実施システム550内の診察台558上の患者を位置合わせすることができる。さらに、こうした画像を使用して、放射線源552を標的ボリューム又は標的に対して正確に位置付けることができる。
【0051】
一実施形態では、診察台558を、複数の自由度を有する第2のロボット・アーム(図示せず)に結合させることもできる。たとえば、第2のアームは5の回転自由度と実質的に垂直かつ線形の1の自由度とを有することができる。別法として、第2のアームは6の回転自由度と実質的に垂直かつ線形の1の自由度とを有することができる。他の実施形態では、第2のアームは少なくとも4の回転自由度を有することができる。さらに、第2のアームを柱か壁に垂直に、又は脚、床、若しくは天井に水平に取り付けることができる。別法として、診察台558は、Accuray Incorporated of Sunnyvale、Californiaによって開発されたAXUM(登録商標)診察台など他の機構の構成要素でもよい。他の実施形態では、診察台558は、従来の治療台を含む他のタイプの治療台でもよい。
【0052】
上記に一例の治療実施システム550を記載したが、治療実施システム550は他のタイプの治療実施システムでもよい。たとえば、治療実施システム550は、ガントリベース(アイソセンタ)の強度変調放射線治療(IMRT)システムでもよく、その場合、放射線源552(たとえばLINAC)が患者のアキシャル方向スライスに対応する平面内で回転するようにガントリに取り付けられる。放射線を円形回転平面上のいくつかの位置から送出することができる。他の実施形態では、治療実施システム550はスウェーデンのElektaから市販されているGAMMAKNIFE(登録商標)など定位フレーム・システムでもよい。
【0053】
図12は、放射線治療プロセスを示す3次元斜視図である。具体的には、図12は、標的領域110に向けられたいくつかの放射線ビームを示している。一実施形態では、標的領域110は、内臓器官、患者の体内の領域、腫瘍あるいは病変など病理解剖学的構造、又は他のタイプの患者の対象若しくは領域を代表している。標的領域110を本明細書で標的、標的ボリュームなどと呼ぶこともできるが、特に断りがない限り、こうした言及はどれも全般的に標的領域110を指すことを理解されたい。
【0054】
図で示した放射線治療プロセスは、第1の放射線ビーム602、第2の放射線ビーム604、第3の放射線ビーム606、第4の放射線ビーム608を含む。4つの放射線ビーム602〜608が図で示されているが、他の実施形態はそれよりも少ない、又は多い放射線ビームを含むことができる。便宜上、1つの放射線ビーム602への言及は、特に断りのない限り、放射線ビーム602〜608すべてを表すものである。さらに、放射線ビーム602〜608を与えるための治療の順序はそれぞれビームの順序指定とは無関係である。
【0055】
一実施形態では、4つの放射線ビーム602は、一致計画に基づくビーム送出を表しており、放射線ビーム602は標的領域110内の様々な点を通過し、又はそこで終端する。一致計画では、いくつかの放射線ビーム602が3次元空間の共通点で交差又は収束してもしなくてもよい。換言すれば、放射線ビーム602は、単一点又はアイソセンタで必ずしも収束する必要がない点で非アイソセントリックである。しかし、放射線ビーム602は、標的10で1つ又は複数の他の放射線ビーム602と全体又は部分的に交差してもよい。
【0056】
他の実施形態では、各放射線ビーム602の強度を、操作者又は治療計画ソフトウェアによって設定することができるビーム・ウェイトによって決定することができる。個々のビーム・ウェイトは、標的領域110に送出すべき合計処方放射線量、及び放射線ビーム602の一部又はすべてによって送出される累積放射線量に少なくとも部分的に依存する。たとえば、合計処方線量3500cGyが標的領域110用に設定された場合、治療計画ソフトウェアは、放射線ビーム602ごとにビーム・ウェイトを自動的に事前決定して、処方線量を達成するための一致性と均一性のバランスをとる。一致性は、危険な隣接構造への損傷を回避するため、放射線量が標的110の形状と大きさにマッチする(すなわち一致する)程度である。均一性は、標的領域110のボリュームへの放射線量の一様性である。均一性は線量体積ヒストグラム(DVH)を特徴とし、理想的には、100%の処方線量が標的領域110のボリュームに与えられ、その他にはゼロである矩形関数である。
【0057】
本明細書に記載した方法及び装置は医用診断画像と治療だけに使用が限定されないことを留意されたい。代替実施形態では、本明細書の方法及び装置を、工業用撮像及び材料の非破壊試験(たとえば自動車産業でのモータ・ブロック、航空産業での機体、建設産業での溶接、石油産業でのドリル・コア)及び地震測量など、医療技術分野以外の用途で使用することができる。こうした用途では、たとえば、「治療」は全般的に、ビーム(たとえば放射線、音響など)の照射など、治療計画ソフトウェアによって制御されるオペレーションの実行を指す。
【0058】
本発明の実施形態は、本明細書に記載される様々なオペレーションを含む。こうしたオペレーションを、ハードウェア構成要素、ソフトウェア、ファームウェア、又はその組み合わせによって実行することができる。本明細書で使用するように、用語「結合される」は、直接、又は1つあるいは複数の介在構成要素によって間接的に結合されることを指す。本明細書に記載した様々なバス上で伝送される信号をすべて他の信号と時間マルチプレックスし、1つ又は複数の共通バスで提供することができる。さらに、回路構成要素又はブロック間の相互接続をバス又は単一信号回線として示すことができる。別法として、各バスは1つ又は複数の単一信号回線でもよく、各単一信号線はバスでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態を機械可読媒体に格納される命令を含むことができるコンピュータ・プログラム製品として実装することができる。こうした命令を使用して、汎用又は専用プロセッサを記載のオペレーションを実行するようにプログラミングすることができる。機械可読媒体は、機械(たとえばコンピュータ)によって読取り可能な形態(たとえばソフトウェア、処理アプリケーション)で情報を格納又は伝送する任意の機構を含む。機械可読媒体は、限定的ではないが、磁気記憶媒体(たとえばフロッピー(登録商標)・ディスケット)、光記憶媒体(たとえばCD−ROM)、磁気光記憶媒体、読取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、消去可能プログラマブル・メモリ(たとえばEPROM及びEEPROM)、フラッシュ・メモリ、伝播信号の電気、光、音響、あるいは他の形態(たとえば搬送波、赤外線信号、ディジタル信号など)、又は電子命令の格納に適した他のタイプの媒体を含むことができる。
【0060】
さらに、いくつかの実施形態を、機械可読媒体が2つ以上のコンピュータ・システムに格納され、かつ/又は実行される分散計算環境で実施することができる。また、コンピュータ・システム間で伝送される情報を、コンピュータ・システムを接続する通信媒体でプル又はプッシュすることができる。
【0061】
本明細書に記載した1つ又は複数のディジタル処理デバイスは、マイクロプロセッサ又は中央演算処理装置、コントローラなど1つ又は複数の汎用処理デバイスを含むことができる。別法として、ディジタル処理デバイスは、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、専用集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)など1つ又は複数の専用処理デバイスを含むことができる。代替実施形態では、たとえば、ディジタル処理デバイスは、コア・ユニットや複数のマイクロエンジンを含む複数のプロセッサを有するネットワーク・プロセッサでもよい。さらに、ディジタル処理デバイスは、1つ又は複数の汎用処理デバイスと1つ又は複数の専用処理デバイスの任意の組み合わせを含むことができる。
【0062】
方法のオペレーションを本明細書に特定の順序で示し記載したが、各方法のオペレーションの順序を変更して、いくつかのオペレーションを逆の順序で実行し、いくつかのオペレーションが少なくとも部分的に他のオペレーションと同時に実行されるようにしてもよい。他の実施形態では、命令又は異なるオペレーションのサブオペレーションを断続かつ/又は交互に実行することができる。
【0063】
上記の明細書で、本発明を本発明の特定の例示の実施形態を参照して記載した。しかし明らかなように、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の広範な精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を本発明に加えることができる。したがって、本明細書及び図面は限定的ではなく例示であると考慮されたい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】2次元描画を容易にするための輪郭セットを示す図である。
【図2】3次元画像の一実施形態を示す図である。
【図3】3次元画像のサブボリュームの周囲の一実施形態を示す図である。
【図4】3次元画像のサブボリュームの一実施形態を示す図である。
【図5】3次元画像のサブボリュームに対応するバイナリ・サブボリュームの一実施形態を示す図である。
【図6】第1及び第2の関心ボリューム構造のバイナリ・マスクを有するバイナリ・サブボリュームの他の実施形態を示す図である。
【図7】バイナリ・サブボリュームから導出した輪郭セットの一実施形態を示す図である。
【図8】複数輪郭セットの統一モデリング言語(UML)表現の一実施形態を示す図である。
【図9】描画法の一実施形態を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態を実施することができる放射治療の実施に使用することができる治療システムの一実施形態を示す図である。
【図11】治療実施システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図12】放射治療プロセスを示す3次元斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心ボリューム構造を含む3次元画像を受信することと、
前記3次元画像内に前記関心ボリューム構造を描画することとを含む方法。
【請求項2】
前記関心ボリューム構造が前記3次元画像上のボリューム・レンダリングによって表される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3次元画像から1組のボクセルを識別して、前記関心ボリューム構造のバイナリ記述を行うことをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1組のボクセルに基づいて前記関心ボリューム構造の輪郭を識別することをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記関心ボリューム構造の前記輪郭の表示を、前記関心ボリューム構造の前記輪郭及び複数の他の2次元輪郭を含む輪郭セットに保存することさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記輪郭セットを、関心ボリューム構造の前記輪郭セットと少なくとも1つの他の関心ボリューム構造に対応する少なくとも1つの他の輪郭セットを含む複数輪郭セットに保存することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記関心ボリューム構造が標的構造又は危険構造を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記3次元画像にフィルタを使用して、前記関心ボリューム構造と他の構造を区別することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
輝度値又は色値を含む識別子を、前記関心ボリューム構造に関連付けることをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
不透明度値を含む識別子を、前記関心ボリューム構造に関連付けることをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記3次元画像のサブボリュームであって、前記関心ボリューム構造を含むサブボリュームを決めることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サブボリュームを決めることが、前記サブボリュームの表面を識別することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サブボリュームを決めることが、前記サブボリュームから除外すべき前記3次元画像の一部を識別することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
関心ボリューム構造を含む3次元画像を格納するためのデータ記憶デバイスと、
前記データ記憶デバイスに結合され、前記3次元画像の前記関心ボリューム構造を描画するためのディジタル処理デバイスとを含む装置。
【請求項15】
前記ディジタル処理デバイスが、前記関心ボリューム構造に対応する1組のボクセルを生成するようにさらに構成される請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ディジタル処理デバイスが、前記1組のボクセルに基づいて前記関心ボリューム構造の輪郭を識別するようにさらに構成される請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記データ記憶デバイスが、前記関心ボリューム構造に対応する前記1組のボクセルを格納するようにさらに構成される請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記3次元画像の前記関心ボリューム構造と他の構造を区別するためのフィルタ・ツールをさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記関心ボリューム構造のボリューム・レンダリングを表示するためのグラフィカル・ディスプレイをさらに含む請求項14に記載の装置。
【請求項20】
ユーザが前記3次元画像のサブボリュームを決定できるようにするサブボリューム・ツールであって、前記サブボリュームが前記関心ボリューム構造を含むサブボリューム・ツールをさらに含む請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記グラフィカル・ディスプレイが、前記サブボリュームを表示するように、そして前記サブボリュームから除外された前記3次元画像の他の部分を表示しないようにさらに構成される請求項20に記載の装置。
【請求項22】
請求項14に記載の前記装置を含むシステムであって、
前記ディジタル処理デバイスに結合され、前記3次元画像を獲得するための診断画像システムと、
前記ディジタル処理デバイスに結合され、放射線治療を前記関心ボリューム構造に送出するための治療実施システムとをさらに含むシステム。
【請求項23】
関心ボリューム構造を含む3次元画像を表示する手段と、
前記関心ボリューム構造と他の解剖学的構造を区別する手段と、
前記3次元画像上に前記関心ボリューム構造を描画する手段とを含む装置。
【請求項24】
前記関心ボリューム構造を描画するためのボクセル・セットを識別する手段をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記ボクセル・セットから輪郭セットを生成する手段をさらに含む請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記輪郭セットから複数輪郭セットを生成する手段をさらに含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記ボクセル・セットが複数のバイナリ・ボクセルを含み、前記複数のバイナリ・ボクセルのそれぞれが前記関心ボリューム構造のボリューム空間を概ね表す請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記3次元画像にフィルタを使用して、前記関心ボリューム構造を識別する手段をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項29】
前記3次元画像のグラフィカル・ディスプレイを前記3次元画像の決定されたサブボリュームに制限する手段をさらに含む請求項23に記載の装置。
【請求項30】
サブボリューム表面を表示して前記サブボリュームを決める手段をさらに含む請求項29に記載の装置。
【請求項31】
命令を有する機械可読記憶媒体であって、前記命令が、ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、
関心ボリューム構造を含む3次元画像を表示することと、
前記3次元画像内に前記関心ボリューム構造を描画することとを実行させる機械可読記憶媒体。
【請求項32】
前記ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、前記関心ボリューム構造のバイナリ記述を行うために、前記3次元画像から1組のボクセルを識別することを実行させるさらなる命令を有する請求項31に記載の機械可読記憶媒体。
【請求項33】
前記ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、前記1組のボクセルに基づいて前記関心ボリューム構造の輪郭を識別することを実行させるさらなる命令を有する請求項31に記載の機械可読記憶媒体。
【請求項34】
前記ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、前記1組のボクセルに基づいて前記関心ボリューム構造の輪郭セットを識別することを実行させるさらなる命令を有する請求項33に記載の機械可読記憶媒体。
【請求項35】
前記ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、前記1組のボクセルに基づいて前記関心ボリューム構造の複数輪郭セットを識別することを実行させるさらなる命令を有する請求項34に記載の機械可読記憶媒体。
【請求項36】
前記ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、前記関心ボリューム構造と他の構造を区別するために、前記3次元画像にフィルタを使用することを実行させるさらなる命令を有する請求項31に記載の機械可読記憶媒体。
【請求項37】
さらなる命令を有し、前記さらなる命令が、前記ディジタル処理デバイスによって実行される場合に、前記ディジタル処理デバイスに、前記関心ボリューム構造を含む、前記3次元画像のサブボリュームを決めることを実行させる請求項31に記載の機械可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−532091(P2009−532091A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502961(P2009−502961)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/007608
【国際公開番号】WO2007/126842
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(505005625)アキュレイ・インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】