説明

3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド

【課題】小型化の3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッドを提供する。
【解決手段】投射光学系および撮像光学系は、プリズム型偏光ビームスプリッタ14と、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17と、プリズム型偏光ビームスプリッタ14とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間に配置される結像光学系15とを有し、MEMS13と撮像手段16は、互いにプリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面を挟み互いに交差する方向に配置され、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、MEMS13から出射され結像光学系15を透過した光を透過し、ミラー18により被測定物表面に投射され被測定物表面で反射された光は、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面で結像光学系15に向けて反射させる構成とし、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面と、ミラー18の反射面とは互いに非平行とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッドに関し、特に、基準格子パターンを被測定物に投影した際に出現する格子パターン像の変形度合いを解析し、該被測定物の三次元形状を再現するパターン投影方式による、光を用いる3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影光を用いた三角測量による距離計測法がある。この計測法によれば、被測定物表面上の多数の点の距離計測データを数値計算することにより、該被測定物の立体形状をデジタルデータとして再現することができる。
【0003】
図11は、投影光を用いた三角測量による距離計測の原理を説明するための図である。
【0004】
まず距離計算の基本式は、次式(1)で与えられる。
Z=(secα・tanβ/(tanα+tanβ))・L ・・・(1)
【0005】
上記の式(1)において、Zは、被測定物表面上の点とカメラ100内の撮像レンズの距離を示し、Lは、プロジェクタ200内の投影レンズとカメラ100内の撮像レンズ間距離(基線長)を示し、αとβは、それぞれ投影レンズおよび撮像レンズの光軸が基線となす角度を示す。
【0006】
式(1)によれば、角度α、βのセットが測定されれば、該点までの距離Zが求まるので、このプロセスを当該物体の表面を構成する多数の点群で行えば、当該物体表面の立体形状データが得られることになる。
【0007】
なお本明細書で言う「光学測定ヘッド」とは、上記、投影レンズと撮像レンズを一体化した機構装置を意味する。以下では、本技術で用いられている光学測定ヘッドの形状データ取得機能のみを説明し、三次元形状再現のアルゴリズムについては説明を省略する。
【0008】
本光学測定ヘッドでは、まず格子パターン投影光学系でレチクル上の基準格子パターンを被測定物に投影する。すると該格子パターンは、被測定物表面の凹凸形状に応じて変形された、いわゆる変形格子像を形成する。これを撮像光学系で撮影し、カメラのデジタル画像データとして出力する。この際、3Dデータを取得するためには、投影光学系の光軸と撮像光学系の光軸は或る程度の角度(通常10°〜45°)をなすことが必要である(特許文献1参照)。コンピュータ300は、本取得画像データを、コントローラ400を介して取得し、数値計算することにより、被測定物表面の3次元形状を再現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−271034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図11に示した様に、従来、格子パターンを被測定物に投影する3次元形状データ取得装置では、基準格子パターンを被測定物に投影する投影光学系と、被測定物上の変形格子像を撮影する撮像光学系の二つの独立した光学系が必要であった。そのため、計測システムが高価になり、しかも光学測定ヘッドの体積がかさ張るという課題があった。これは、歯科医療における口腔内の歯並び等の三次元の形状計測には特に問題であった。
【0011】
本発明の目的は、投影系と撮像系という2つの独立した光学系を単一にして小型化するようにした3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、パターンを形成するチャートパターン形成手段と、パターン形成手段に照明光を入射する光源と、光源からパターン形成手段に入射しパターン形成手段から出射される光を被測定物表面に投射しチャート像として結像させる投射光学系と、被測定物表面に結像されたチャート像を撮像手段に結像させる撮像光学系と、を有し、投射光学系および撮像光学系は、第1の偏光ビームスプリッタと、第2の偏光ビームスプリッタと、第1の偏光ビームスプリッタと第2の偏光ビームスプリッタとの間に配置される結像光学系とを有し、パターン形成手段と撮像手段とは互いに第1の偏光ビームスプリッタの偏光分離面を挟み互いに交差する方向に配置され、第2の偏光ビームスプリッタは、パターン形成手段から出射され第1偏光ビームスプリッタにより偏光され結像光学系を透過した光については透過し、投射光学系により被測定物表面に投射され被測定物表面で反射された光については結像光学系に向けて反射させ、投射光学系は、第2の偏光ビームスプリッタを透過した光を被測定物表面に向けて反射させる反射面を有し、第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面と、反射面とは互いに非平行である、ことを特徴とする3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッドである。
【0013】
以上のように、投影系と撮像系という2つの独立した光学系を単一にして光学測定ヘッドを小型化・軽量化することが可能となる。
【0014】
第2の偏光ビームスプリッタはプリズムにより構成され、第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面は、プリズムのプリズム面に形成され、反射面は、第2の偏光ビームスプリッタを構成するプリズムのプリズム面に接合されるプリズムのプリズム面に形成されている。
【0015】
結像光学系の最も第2の偏光ビームスプリッタ側の端から第2の偏光ビームスプリッタの最も結像光学系の端までの距離は、2cm以上15cm以下である。
【0016】
パターン形成手段は、結像光学系の光軸に対して傾斜させられた配置となっている。
【0017】
投射光学系の主光線と撮像光学系の主光線とが、投射光学系の結像面において交差するように第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面と反射面との間の面間隔が設定されている。
【0018】
第1の偏光ビームスプリッタの偏光分離面または第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面の少なくとも一方の偏光分離面は、ワイヤーグリッド偏光子により形成されている。
【0019】
第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面と被測定物表面との間には1/4波長板が配置されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型化の3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての光学測定ヘッドの構成例を示す図である。
【図2】図1の光学測定ヘッドにおける投射光学系の光路を示す図である。
【図3】図1の光学測定ヘッドにおける撮像光学系の光路を示す図である。
【図4】図1のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ、ミラー、1/4波長板、およびサファイアウィンドウの位置関係を示す図である。
【図5】図1のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ、ミラー、1/4波長板、およびサファイアウィンドウの位置関係を示す他の図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態としての光学測定ヘッドの構成例を示す図である。
【図7】図6の光学素子の構成例を示す図である。
【図8】図6の光学素子の構成例を示す他の図である。
【図9】図6の光学測定ヘッドにおける投射光学系の光路を示す図である。
【図10】図6の光学測定ヘッドにおける撮像光学系の光路を示す図である。
【図11】投影光を用いた三角測量による距離計測の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[本発明の第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態としての三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド1の構成例を示す図である。なお図1は、被測定物の上部表面を測定する光学測定ヘッド1を横から見た場合の内部の構成例を模式的に示している。この例の場合、たとえば、光学測定ヘッド1は、棒状の筐体(図示せず)を有しており、サファイアウィンドウ20から、所定のパターン像の光を被測定物の表面に投射し、被測定物の表面に結像されたそのパターン像(被測定物表面の凹凸形状に応じて変形されたパターン像)を撮像手段16に結像させることができ、三次元形状データ取得装置は、撮像手段16で撮像されたパターン像を所定のアルゴリズムで演算することにより、被測定物表面の3次元形状を測定することができる。たとえば、歯科医が、サファイアウィンドウ20を患者の歯の少し上方に位置するように光学測定ヘッド1を移動させるようにして、患者の歯表面の3次元形状を測定する。
【0023】
光学測定ヘッド1の構成について説明する。光源としての発光ダイオード(LED)11は、電流を流すと発光する半導体素子である。本実施の形態においては、投影光源として発光ダイオード11を用いているが、レーザーを用いても良い。
【0024】
コンデンサレンズ12は、発光ダイオード11で発光された光を、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)13に集めるためのレンズである。
【0025】
MEMS13は、供給される電圧に応じて所定のチャートパターンを形成する。MEMS13に、コンデンサレンズ12により集められた光が照明されると、MEMS13に形成されたチャートパターンの光がプリズム型偏光ビームスプリッタ14に向けて出射する。またMEMS13は、結像光学系15の光軸に対して傾斜するように取り付けられている。その理由については後述する。本実施の形態においては、パターン形成のためにMEMS13を用いているが、パターン形成するものであれば、他のものでもよく、たとえば、チャートパターンが刻まれたレチクルを用いることもできる。
【0026】
プリズム型偏光ビームスプリッタ14は、偏光分離面14aにより、入射した光の偏光成分を分離する。この例の場合、P偏光成分を後段の結像光学系15へ伝達し、S偏光成分は反射する。プリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面14aは、たとえば、誘電体多層膜により形成されたものとすることができる。
【0027】
結像光学系15は、2つの凸レンズ、2つの凹レンズ、および1つの凸レンズが図1に示すように配置されており、投影系レンズおよび撮像系レンズの両方の機能を兼ね備える。
【0028】
撮像手段16は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)であり、プリズム型偏光ビームスプリッタ14で反射された光を結像する。MEMS13と撮像手段16とは互いにプリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面を挟み互いに交差する方向に配置されている。
【0029】
ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、偏光分離面17aを有し、入射した光の偏光成分を分離する。この例の場合、P偏光成分を透過し、S偏光成分を反射する特性を有する。ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、投影系として機能する結像光学系15を通過したP偏光を透過する。ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、1/4波長板19を透過してきたS偏光を、撮像系として機能する結像光学系15に向けて反射させる。
【0030】
ミラー18は、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17が透過した結像光学系15から入射されたP偏光を、1/4波長板19およびサファイアウィンドウ20が配置されている方向(すなわち、外部に出射される方向)に反射する反射面18aを有している。
【0031】
1/4波長板19は、直線偏光を円偏光に、また円偏光を直線偏光に変換する特性を有する。1/4波長板19は、測定時において、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aと被測定物表面の間に位置するように配置されている。ミラー18の反射面18aで反射された光は、1/4波長板19を透過して円偏光となる。被測定物表面からの反射光は、概ね円偏光からなるが、1/4波長板19を透過してS偏光となる。
【0032】
サファイアウィンドウ20は、外部に露出するように光学測定ヘッド1内に保持される。ミラー18の反射面18aで反射され、1/4波長板19を透過した円偏光が、サファイアウィンドウ20を通して、外部に出射される。被測定物表面からの反射光が、サファイアウィンドウ20を通して、内部に取り込まれる。サファイアウィンドウ20は、ガラスよりも非常に硬く、熱に強く、薬品にも溶けないといった特徴を持つ無色透明の結晶体である。サファイアウィンドウ20が露出しているため、たとえば患者の歯に当たる可能性があることから、その破損を防止するために、ふつうのガラスよりも固い、サファイアが用いられている。
【0033】
図2は、図1の光学測定ヘッド1における投射光学系の光路を示す図である。
【0034】
発光ダイオード11から発せられた光は、コンデンサレンズ12により集められてMEMS13を照明し、プリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面14aにより分離される。プリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面14aにより分離されたMEMS13上に刻まれたチャートのP偏光は、投射系として機能する結像光学系15で倍率が加わった後、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17を透過し、ミラー18の反射面18aにより、被測定物表面に向けて反射される。
【0035】
ミラー18の反射面18aで反射された光は、1/4波長板19を透過して円偏光となり、サファイアウィンドウ20を透過し、被測定物表面に投射される。
【0036】
このようにして発光ダイオード11からMEMS13に入射しMEMS13から出射される光が被測定物表面に投射されチャート像として結像される。
【0037】
図3は、図1の光学測定ヘッド1における撮像光学系の光路を示す図である。
【0038】
被測定物表面からの反射光は、サファイアウィンドウ20を通過し、1/4波長板19を透過してS偏光となる。このS偏光は、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aで反射されて撮像系として機能する結像光学系15に向かう。そして、そのS偏光は、結像光学系15を通過し、プリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面14aにより直角に反射され、撮像手段16に入射する。このようにして被測定物表面に結像されたチャート像が撮像手段16に結像される。結像されたチャート像のカメラ画像データは、図示せぬ解析用コンピュータに送られ、被測定物の三次元形状データが演算作成される。
【0039】
図4および図5を参照して、図1のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、1/4波長板19、およびサファイアウィンドウ20の位置関係について説明する。図4および図5は、図1の場合と同様に、被測定物の上部表面を測定する光学測定ヘッド1を横から見た場合のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、1/4波長板19、およびサファイアウィンドウ20の位置関係を示す図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、サファイアウィンドウ20から被測定物に向かう方向を下方、被測定物からサファイアウィンドウ20に向かう方向を上方とする。また、発光ダイオード11から結像光学系15に向かう方向を前方とし、その逆方向を後方として説明を行う。
【0040】
図4に示すように、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、偏光分離面17aが投射光学系の光軸に対して45度の角度で交差するように配置されている。また、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aと、ミラー18の反射面18aとは互いに非平行となっている。図4の例では、サファイアウィンドウ20からの垂線(図中の破線)、すなわち、投射光学系の光軸に直交する線とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aの角度αと、サファイアウィンドウ20からの垂線とミラー18の反射面18aの角度βは、β>αの関係があり、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aとミラー18の反射面18aは非平行となっている。このようにワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aと、ミラー18の反射面18aとが互いに非平行となっているのは、投射光の角度と被測定物表面からの反射光の角度とのずれを生じさせ、そのずれにより、三次元形状データ取得装置において被測定物表面の奥行き方向の情報を演算することができるようにするためである。
【0041】
光学測定ヘッド1は、投射光学系の結像面が撮像光学系の光軸に直交するように構成されている。つまり、該結像面と偏光分離面17aとは45度の角度を成すように配置されている。言い換えれば、角度αは135度に設定されている。
【0042】
撮像光学系は、撮像手段16の撮像面(撮像の結像面)に対して共役な位置となる物点位置を、投射光学系の結像面の位置(像点位置)に一致させている。したがって、投射光学系により投射され結像されたチャート像を、撮像光学系により撮像手段16の撮像面に結像させることができる。
【0043】
そして、図5に示すように、投射光学系の主光線と撮像光学系の主光線とが、投射光学系の結像面において交差するようにワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面とミラー18の反射面との間の面間隔が設定されている。図5の例の場合、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面17aとミラー18の反射面18aとの間の面間隔が、距離Lとなるように、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17とミラー18が配置されている。このように投射光学系の主光線と撮像光学系の主光線とが、投射光学系の結像面において交差するようにしたのは、投射された像(チャート像)の中心位置と撮像範囲の中心とがずれるのを防止するためである。
【0044】
[発明の第1の実施の形態における効果]
1.以上のように、光学測定ヘッド1は、投射光学系および撮像光学系は、プリズム型偏光ビームスプリッタ14と、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17と、プリズム型偏光ビームスプリッタ14とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間に配置される結像光学系15とを有し、MEMS13と撮像手段16は、互いにプリズム型偏光ビームスプリッタ14の偏光分離面を挟み互いに交差する方向に配置され、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、MEMS13から出射されプリズム型偏光ビームスプリッタ14により偏光され結像光学系15を透過した光については透過し、投射光学系により被測定物表面に投射され被測定物表面で反射された光については結像光学系15に向けて反射させ、投射光学系は、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17を透過した光を被測定物表面に向けて反射させるミラー18の反射面をさらに有し、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面と、ミラー18の反射面とは互いに非平行となっている構成を有している。
【0045】
すなわち投射光学系および撮像光学系を同軸上に構成して投射と撮像を同軸で行うようにし、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面とミラー18の反射面とは互いに非平行にするようにしたので、3次元測定可能な光学測定ヘッドをよりコンパクトな構造とすることができる。なお結像光学系15とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間の距離(たとえば、結像光学系15の最もワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17側の端からワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の最も結像光学系15の端までの距離)を、2cm以上15cm以下の範囲にすることにより、たとえば、歯表面の3次元形状を測定する光学測定ヘッドとしては使い勝手のよいものとすることができる。
【0046】
2.光学測定ヘッド1の筐体(図示省略)内には、結像光学系15、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、サファイアウィンドウ20等の光学部材が収納保持される。そのため、これらの部材が配置される部分における筐体の細径化は、該部材の存在により制限される。しかしながら、結像光学系15とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間に光学部材を配置しない構成とすることで、この間については、筐体の細径化を行い易くなる。
【0047】
たとえば、光学測定ヘッド1を人間の口腔内の歯の形状計測に用いる場合、結像光学系15とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間の距離を5cm以上とすることで、チャート像が出射されるサファイアウィンドウ20の部分を口腔内に入れた状態で、結像光学系15から後方の部分を口腔の外側に配置できる。そして、結像光学系15とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間の部分は、口唇の部分に配置される。したがって、結像光学系15とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間の部分の細径化を図ることで、サファイアウィンドウ20の部分を口腔内に入れて計測を行う際に、光学測定ヘッド1の操作性が良好なものとなる。一方、結像光学系15とワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17との間の距離が15cmを超えると、光学測定ヘッド1を人間の口腔内の歯の形状計測に用いる場合には、手元と口腔内の歯との距離が長すぎ、操作性が悪くなる。
【0048】
3.また図5に示すように、投射光学系の主光線と撮像光学系の主光線とが、投射光学系の結像面において交差するようにワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面とミラー18の反射面との間の面間隔を設定するようにしたので、投射された像の中心位置と撮像範囲の中心とがずれるのを防止することができる。
【0049】
4.またワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17の偏光分離面と被測定物表面との間には1/4波長板を配置し、直線偏光ではなく円偏光にして照明するようにしたので、被測定物表面の散乱特性の偏光依存性を緩和することができる。
【0050】
5.また以上のように、MEMS13を結像光学系15の光軸に対して傾斜するように取り付けられるようにしたので、投射光学系の結像面におけるチャート像の台形歪を補正することができる。
[本発明の第2の実施の形態]
【0051】
図6は、光学測定ヘッド1の他の構成例を示す図である。
【0052】
この例では、図1のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、1/4波長板19、およびサファイアウィンドウ20に代えて、それらの機能を有する光学素子41が設けられている。
【0053】
図7および図8を参照して、光学素子41の構成について説明する。図7および図8は、図1および図6の場合と同様に、被測定物の上部表面を測定する光学測定ヘッド1を横から見た場合の光学素子41の断面を示す図である。光学素子41は、側面が直角二等辺三角形の形状のプリズムにより構成される偏光ビームスプリッタ51、側面が楔形の形状を有するプリズム52、およびサファイアウィンドウ53から構成される。
【0054】
偏光ビームスプリッタの底辺とプリズム52は、接合され、その接合面には、偏光分離面61が形成されている。偏光分離面61は、入射した光の偏光成分を分離するものであり、この例の場合、P偏光成分を透過し、S偏光成分は反射する特性を有する。偏光分離面61は、誘電体多層膜により形成されている。
【0055】
偏光ビームスプリッタ51の底辺以外の一辺とサファイアウィンドウ53の間には、1/4波長板62が介挿され、固着されている。
【0056】
プリズム52の、偏光ビームスプリッタ51とプリズム52の接合面と対向する位置の内面には、内面反射ミラーコート63が蒸着されている。内面反射ミラーコート63は、入射光を反射する特性を有する。
【0057】
偏光ビームスプリッタ51の偏光分離面61と内面反射ミラーコート63とは互いに非平行となっている。図7の例では、サファイアウィンドウ53からの垂線、すなわち、投射光学系の光軸に直交する線と偏光分離面61の角度αと、サファイアウィンドウ53からの垂線と内面反射ミラーコート63の角度βは、β>αの関係であり、偏光分離面61と内面反射ミラーコート63は非平行となっている。このように偏光分離面61と内面反射ミラーコート63とが互いに非平行となっているのは、投射光の角度と被測定物表面からの反射光の角度とのずれを生じさせ、そのずれにより、被測定物表面の奥行き方向の情報を演算することができるようにするためである。
【0058】
また図8に示すように、投射光学系の主光線と撮像光学系の主光線とが、投射光学系の結像面において交差するように偏光分離面61と内面反射ミラーコート63との間の面間隔が所定の距離となっている。図8の例の場合、偏光分離面61と内面反射ミラーコート63との間の面間隔が、光軸上において距離Lとなるように、偏光分離面61と内面反射ミラーコート63が光学素子41に組み込まれている。このように投射光学系の主光線と撮像光学系の主光線とが、該結像面において交差するようにしたのは、投射された像の中心位置と撮像範囲の中心とがずれるのを防止するためである。
【0059】
図9は、図6の光学測定ヘッド1における投射光学系の光路を示す図である。
【0060】
発光ダイオード11から発せられた光は、コンデンサレンズ12により集められてMEMS13を照明し、プリズム型偏光ビームスプリッタ14により分離される。プリズム型偏光ビームスプリッタ14により分離されたMEMS13上に刻まれたチャートのP偏光は、投射系として機能する結像光学系15で倍率が加わった後、偏光ビームスプリッタ51、偏光分離面61、プリズム52を透過し、内面反射ミラーコート63により、被測定物表面に向けて反射される。
【0061】
内面反射ミラーコート63で反射された光は、1/4波長板62を透過して円偏光となり、サファイアウィンドウ53を透過し、被測定物表面に投射される。
【0062】
このようにして発光ダイオード11からMEMS13に入射しMEMS13から出射される光が被測定物表面に投射されチャート像として結像される。
【0063】
図10は、図6の光学測定ヘッド1における撮像光学系の光路を示す図である。
【0064】
被測定物表面からの反射光は、サファイアウィンドウ53を通過し、1/4波長板62を透過してS偏光となる。このS偏光は、偏光分離面61で反射されて撮像系として機能する結像光学系15に向かう。そして、S偏光は、結像光学系15を通過し、プリズム型偏光ビームスプリッタ14により直角に反射され、撮像手段16に入射する。このようにして被測定物表面に結像されたチャート像が撮像手段16に結像される。結像されたチャート像のカメラ画像データは、図示せぬ解析用コンピュータに送られ、被測定物の三次元形状データが演算作成される。
【0065】
[発明の第2の実施の形態における効果]
1.以上のように、図1の光学測定ヘッドの図1のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、1/4波長板19、およびサファイアウィンドウ20の機能を、光学素子41で実現するようにしたので、光学測定ヘッド1の製造を容易にすることができる。
たとえば、図1の例の場合のように、それぞれ別個の部品である、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、1/4波長板19、およびサファイアウィンドウ20を、図1、図5、および図6に示すように、光学測定ヘッド1の筐体内の所定の位置に組み込むのは容易ではないが、これらの機能を一体化した光学素子41を用いることにより、光学測定ヘッド1の製造を容易にすることができる。
【0066】
2.光学素子41は、偏光ビームスプリッタ51を構成する直角二等辺三角形の形状のプリズムに対して、偏光分離面61、内面反射ミラーコート63を有するプリズム52、1/4波長板およびサファイアウィンドウ53が一体的に取り付けられることで構成されている。
したがって、光学素子41が筐体に対して所定の配置で組み込まれることで、偏光分離面61および内面反射ミラーコート63も投射光学系の光軸に対して所定の角度で配置される。
【0067】
3.ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17とミラー18とを個別に筐体内に組み込む作業に比べて、偏光ビームスプリッタ51とプリズム52とが一体となっている光学素子41を筐体内に組み込む方が格段に容易な作業であり、また、偏光分離面61および内面反射ミラーコート63の配置の精度も高いものとすることができる。
【0068】
4.薄板状のワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、板厚1mm以下のガラスに偏光分離面が形成されるため破損し易い。しかも、光学測定ヘッド1の先端部(ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17、ミラー18、1/4波長板19、およびサファイアウィンドウ20が配置されている部分)は、口腔内に容易に入り込ませることができる大きさであり、上下、前後、および横方向の寸法が、たとえば、13mm程度である。したがって、このような小さな先端部に、破損し易いワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17を光軸に対して所定の角度で保持させる作業は容易でない。一方、光学素子41は、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17に比べて丈夫で取り扱が容易なプリズムに偏光分離面61が形成されたものであり、この光学素子41を筐体に保持させる作業の方が、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17を筐体に直接保持させる作業に比べて格段に容易となる。
【0069】
5.また、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ17は、光学測定ヘッド1の先端部に収容する必要があることから、上述したように板厚を1mm以下とすることが好ましい。しかしながら、板厚を1mm以下とすると、偏光分離面17aの面精度を確保することが難しい。一方、偏光分離面61のように、プリズムに偏光分離面を形成することで、面精度のレベルを高いものとし易い。
【0070】
[他の実施の形態]
1.この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせたりすることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0071】
2.上述の光学測定ヘッド1により測定を行う際には、投射光学系の結像面の位置に、被測定物表面が位置するようにして測定を行うことが好ましい。しかしながら、被測定物表面には凹凸があり、また、光学測定ヘッド1は手指で握持して操作する。そのため、該結像面と被測定物表面とを厳密に一致させることは困難である。そこで、想定される被測定物表面の形状(凹凸量)および手指による操作のブレ量を考慮して、該結像面の位置と被測定物表面との位置が多少ずれても、所望の測定精度が得られるように投射光学系および撮影光学系の被写界深度を設定する。たとえば、本実施の形態に示す光学測定ヘッド1においては、サファイアウィンドウ20から5.8mmの位置に該結像面が位置し、Fナンバーを5.6以上とし、被写界深度が2.5mm以上となるように投射光学系および撮影光学系が構成されている。
【0072】
3.上述の実施の形態においては、プリズム型偏光ビームスプリッタ14において、P偏光を結像光学系に向けて透過させ、S偏光を反射させる構成を示したが、S偏光を透過し、P偏光を反射する構成としてもよい。
【0073】
4.上述の実施の形態においては、偏光ビームスプリッタ51は、直角二等辺三角形の形状のプリズムにより構成されているが、これに限らず、等辺を有しない直角プリズム、あるいは、直角を有しない三角プリズム、さらには角柱プリズムを用いることができる。
【0074】
5.上述の実施の形態においては、第1の偏光ビームスプリッタはプリズム型偏光ビームスプリッタ14として構成されているが、ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタを用いてもよい。また、ある一定の角度以上の入射角を有する投射光学系の場合、第1の偏光ビームスプリッタまたは第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面の少なくとも一方にワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタを用いることで、偏光分離面を全て誘電体多層膜により形成する場合に比べて光のロスが少ない偏光分離を行うことができる。つまり、撮像される画像の光量を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 光学測定ヘッド
11 発光ダイオード
12 コンデンサレンズ
13 MEMS
14 プリズム型偏光ビームスプリッタ
14a 偏光分離面
15 結像光学系
16 撮像手段
17 ワイヤーグリッド偏光ビームスプリッタ
17a 偏光分離面
18 ミラー
18a 反射面
19 1/4波長板
20 サファイアウィンドウ
41 光学素子
51 偏光ビームスプリッタ
52 プリズム
53 サファイアウィンドウ
61 偏光分離面
62 1/4波長板
63 内面反射ミラーコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを形成するチャートパターン形成手段と、
前記パターン形成手段に照明光を入射する光源と、
前記光源から前記パターン形成手段に入射し前記パターン形成手段から出射される光を被測定物表面に投射しチャート像として結像させる投射光学系と、
前記被測定物表面に結像された前記チャート像を撮像手段に結像させる撮像光学系と、
を有し、
前記投射光学系および前記撮像光学系は、
第1の偏光ビームスプリッタと、第2の偏光ビームスプリッタと、前記第1の偏光ビームスプリッタと前記第2の偏光ビームスプリッタとの間に配置される結像光学系とを有し、
前記パターン形成手段と前記撮像手段とは互いに前記第1の偏光ビームスプリッタの偏光分離面を挟み互いに交差する方向に配置され、
前記第2の偏光ビームスプリッタは、前記パターン形成手段から出射され前記第1偏光ビームスプリッタにより偏光され前記結像光学系を透過した光については透過し、前記投射光学系により前記被測定物表面に投射され前記被測定物表面で反射された光については前記結像光学系に向けて反射させ、
前記投射光学系は、前記第2の偏光ビームスプリッタを透過した前記光を前記被測定物表面に向けて反射させる反射面を有し、
前記第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面と、前記反射面とは互いに非平行である、
ことを特徴とする3次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。
【請求項2】
前記第2の偏光ビームスプリッタはプリズムにより構成され、前記第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面は、前記プリズムのプリズム面に形成され、
前記反射面は、第2の偏光ビームスプリッタを構成するプリズムの前記プリズム面に接合されるプリズムのプリズム面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。
【請求項3】
前記結像光学系の最も前記第2の偏光ビームスプリッタ側の端から前記第2の偏光ビームスプリッタの最も前記結像光学系の端までの距離は、2cm以上15cm以下である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。
【請求項4】
前記パターン形成手段は、前記結像光学系の光軸に対して傾斜させられた配置となっている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。
【請求項5】
前記投射光学系の主光線と前記撮像光学系の主光線とが、前記投射光学系の結像面において交差するように前記第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面と前記反射面との間の面間隔が設定されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。
【請求項6】
前記第1の偏光ビームスプリッタの偏光分離面または前記第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面の少なくとも一方の偏光分離面は、ワイヤーグリッド偏光子により形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。
【請求項7】
前記第2の偏光ビームスプリッタの偏光分離面と前記被測定物表面との間には1/4波長板が配置されている、
ことを特徴とする請求項1または6のいずれか1項に記載の三次元形状データ取得装置の光学測定ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−113581(P2013−113581A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256728(P2011−256728)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(509304667)株式会社SUWAオプトロニクス (17)
【出願人】(511285440)株式会社セイコーウェーブ (1)
【Fターム(参考)】