説明

3次元映像表示装置

【課題】 光学的開口部を傾けて配置し、画素形状を改変することで、モアレを解消して画質を向上させることにある。
【解決手段】 3次元画像表示装置では、表示部が第1及び第2の方向に沿って画素がマトリクス状に配列され、画素が異なる色を表示する複数のサブ画素で構成されている。この表示部に対向して光線制御素子が設置され、光線制御素子が第2の方向に対してある角度θを成すように傾けられて延出され、かつ、この延出方向に直交する方向に沿って配列されている多数の光学的開口部から構成されている。サブ画素は、開口部及び遮光部で第1及び第2のパターンの一方を有するように構成され、同色のサブ画素が第2方向に沿って第1及び第2パターンの交互配列或いは第2及び第1パターンの交互配列で配列されてサブ画素が互いに線対称或いは点対称の関係が与えられないように表示部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、3次元映像を表示する3次元映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動画表示が可能な3次元映像表示装置、所謂、3次元ディスプレイには、種々の方式が知られている。近年、特にフラットパネルタイプで、且つ、専用のメガネ等を必要としない方式が強く要望されている。この専用のメガネを必要としないタイプの3次元映像表示装置の一つには、直視型或いは投影型の液晶表示装置又はプラズマ表示装置等のように画素位置が固定されている表示パネル(表示装置)の直前に光線制御素子が設置され、表示パネルからの光線が制御されて観察者に向けられる方式がある。ここで、光線制御素子は、光線制御素子上の同一位置を観察しても、観察する角度により異なる映像が見えるような機能を与えている。
【0003】
このような光線制御素子を用いた3次元画像表示方式は、視差(異なる方向から見ることによる見え方の差)の数や設計指針によって、2眼式、多眼式、超多眼式(多眼式の超多眼条件)、インテグラル・イメージング(以下、IIとも云う)式等に分類される。2眼式は、両眼視差に基づいて立体視させているが、それ以外の方式は、程度の差はあれ運動視差を実現することができることから、2眼式の立体映像と区別して3次元映像と呼ばれる。これらの3次元映像を表示するための基本的な原理は、100年程度前に発明され3次元写真に応用されるインテグラル・フォトグラフィ(IP)の原理と実質的に同一である。
【0004】
これら各方式の中で、II方式は、視差を提示する方向を増やすことにより、視点位置の自由度を高め、比較的広い範囲で立体視できるという特徴を実現している。視差の提示方向は、光学的開口部に対応する画素の数に応じて増やすことができる。しかし、光学的開口部は、3次元映像の解像度に直接関与していることから、同一の解像度の表示装置を用いる場合には、解像度が低下しやすい。このため、1次元II方式では、視差を提示する方向を水平に限定することで、非特許文献1に記載されているように、解像度の高い表示装置を実現することができる。一方、2眼方式或いは多眼方式では、立体視できる視点位置を限定し、それ以外の位置で立体視することを放棄することにより、視差を提示する方向を減らしている。このため、2眼方式或いは多眼方式は、1次元II式に比べて、比較的容易に解像度を高くすることができる。また、視点位置から取得した画像のみで3次元画像を生成できることから、映像を作成するための負荷を下げることができる。ただし、視点位置が限られることにより、長時間の3次元映像の視聴が難しい問題もある。
【0005】
このような光学的開口部を用いた直視型裸眼3次元表示装置においては、光学的開口部の1方向の周期構造と、平面表示装置にマトリクス状に設けられた画素を隔てる遮光部、又は、画素のカラー配列の水平方向(第1の方向)の周期構造が光学的に干渉することに基づいて、モアレ或いは色モアレが発生するという問題がある。その対策として、画素の遮光部のレイアウトを工夫するという手法が特許文献1、2及び3に開示されている。しかしながら、例えば、特許文献4に開示されるように、光線制御素子を電気的にON/OFFすることで、光線制御素子がない状態においても、高精細な二次元表示を実現するような系では、光線制御素子が無い状態においても、元の表示品位が維持されていることが望ましい。このような場合は、光線制御素子の周期性と画素の周期性に角度をなす、即ち、光学的開口部を斜めに傾ける方法が特許文献5に知られている。しかしながら、傾きの制御だけでは、モアレを完全に解消できない場合があることが明らかとなっている。特許文献6に開示されるように、拡散成分を追加してモアレを解消する方法の採用も可能であるが、視差情報の分離を悪化することから、画質の低下が避けられない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3525995号公報
【特許文献2】特許第4197716号公報
【特許文献3】特開2008−249887号公報
【特許文献4】特許第3940725号公報
【特許文献5】米国特許第6、064、424号公報
【特許文献6】特開2005−86414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、1方向に限定された周期性を持つ光線制御素子と二次元的に画素が配列された平面表示装置を組み合わせた従来の3次元映像表示装置においては、周期的に設けられた光学的開口部と平面表示装置の画素の周期性が互いに干渉して輝度ムラ(モアレ)が発生する問題がある。光学的開口部の角度を調整することにより、光学的開口部の周期性と画素の周期性との関係を制御しモアレを抑制する方法が知られているが、それだけでは、モアレが十分に解消しないケースがあり、具体的には、画素の開口形状が単一でない場合に問題が発生することが明らかとなっている。
【0008】
この実施の形態は、光学的開口部を傾けて配置するとともに画素形状を改変することで、モアレを解消し、3次元映像の画質を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る3次元画像表示装置は、
第1の方向及びこの第1方向に直交する第2の方向に沿って画素周期ppで画素がマトリクス状に配列され、当該画素が異なる色を表示する複数のサブ画素で構成されている表示部と、及び
前記表示部に対向して設置される光線制御素子であって、前記第2の方向に対してある角度θを成すように傾けられて直線状に延出され、かつ、この延出方向に直交する方向に沿って配列されている多数の光学的開口部から構成されている光線制御素子と、
を具備している。
【0010】
この実施形態に係る3次元画像表示装置では、
前記サブ画素が夫々当該サブ画素の色を表示する開口部及びこの開口部を定める遮光部で第1及び第2のパターンの一方を有するように構成され、前記同色のサブ画素が前記第2方向に沿って前記第1及び第2パターンの交互配列或いは前記第2及び第1パターンの交互配列で配列され、前記サブ画素が互いに線対称或いは点対称の関係を与えないようにマトリクス状に配列されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る3次元映像表示装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】画素配列を説明する為の比較例1に係る説明図であって、図1に示される3次元映像表示装置における観察される画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図3】図1に示される3次元映像表示装置における光学的開口部を通過する画素からの光線軌跡を概略的に示す3次元画像表示装置の部分的水平断面図であって、観察位置に応じて、観察される画素が変化することが説明的に示されている水平断面図である。
【図4】図1に示される3次元映像表示装置において、観察位置に応じて、光学的開口部越しに観察される輝度が変化することを説明する比較例1に係る輝度特性を示すグラフである。
【図5】画素配列を説明する為の比較例2に係る説明図であって、図1に示される3次元映像表示装置における観察される画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図6】図1に示される3次元映像表示装置において、観察位置に応じて、光学的開口部越しに観察される輝度が変化することを説明する比較例2に係る輝度特性を示すグラフである。
【図7】図1に示される3次元映像表示装置における画素を構成する線対称で形成されるサブ画素のパターンを説明する模式図である。
【図8】図1に示される3次元映像表示装置における画素を構成する点対称で形成されるサブ画素のパターンを説明する模式図である。
【図9】図1に示される3次元映像表示装置において、比較例3に係るサブ画素配列を説明する為の説明図であって、2種類のサブ画素が市松状に設けられている画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図10】図9に示される比較例3に係る画素配列を有する表示装置が用いられる3次元映像表示装置において観察されるモアレパターンを示す平面図である。
【図11】(a)は、図9に示される比較例3に係る1列の画素配列を抜き出し、光線制御素子の光学開口がある座標軸Yに、例えば、垂直方向Yに、一致するように傾けて示した平面図であり、また、(b)は、(a)の光学開口をY方向に探索して足し合わせた結果を、光学開口の法線方向であるX方向に並べることにより求めた、X方向に依存した輝度変化を示すグラフである。
【図12】図11(b)に示した比較例3に係る輝度分布をフーリエ変換して求められた周波数分布を示すグラフである。
【図13】図1に示される3次元映像表示装置において、比較例4に係るサブ画素配列を説明する為の説明図であって、第1パターンのサブ画素のみで構成されている画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図14】図10に示される比較例4に係る画素配列を有する表示装置が用いられる3次元映像表示装置において観察されるモアレパターンを示す平面図である。
【図15】(a)は、図10に示される比較例4に係る1列の画素配列を抜き出し、光線制御素子の1つの光学開口が垂直方向Yに一致するように傾けて示した平面図であり、また、(b)は、(a)の光学開口をY方向に探索して足し合わせた結果を、光学開口の法線方向であるX方向に並べることにより求めた、X方向に依存した輝度変化を示すグラフである。
【図16】図15(b)に示した比較例4に係る輝度分布をフーリエ変換して求められた周波数分布を示すグラフである。
【図17】図1に示される3次元映像表示装置において、実施例1に係るサブ画素配列を説明する為の説明図であって、2種類のサブ画素が市松状に設けられ、遮光部の一部のレイアウトが変更されている画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図18】図17に示される実施例1に係る画素配列を有する表示装置が用いられる3次元映像表示装置において観察されるモアレパターンを示す平面図である。
【図19】(a)は、図17に示される実施例1に係る1列の画素配列を抜き出し、光線制御素子の1つの光学開口が垂直方向Yに一致するように傾けて示した平面図であり、また、(b)は、(a)の光学開口をY方向に探索して足し合わせた結果を、光学開口の法線方向であるX方向に並べることにより求めた、X方向に依存した輝度変化を示すグラフである。
【図20】図19(b)に示した実施例1に係る輝度分布をフーリエ変換して求められた周波数分布を示すグラフである。
【図21】図1に示される3次元映像表示装置において、実施例2に係るサブ画素配列を説明する為の説明図であって、2種類のサブ画素が市松状に設けられ、部分的に遮光部が付加されて対称性を失うようにレイアウトが変更されている画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図22】図21に示される実施例2に係る画素配列を有する表示装置が用いられる3次元映像表示装置において観察されるモアレパターンを示す平面図である。
【図23】(a)は、図21に示される実施例2に係る1列の画素配列を抜き出し、光線制御素子の1つの光学開口が垂直方向Yに一致するように傾けて示した平面図であり、また、(b)は、(a)の光学開口をY方向に探索して足し合わせた結果を、光学開口の法線方向であるX方向に並べることにより求めた、X方向に依存した輝度変化を示すグラフである。
【図24】図23(b)に示した実施例2に係る輝度分布をフーリエ変換して求められた周波数分布を示すグラフである。
【図25】図1に示される3次元映像表示装置において、実施例3に係るサブ画素配列を説明する為の説明図であって、2種類のサブ画素が市松状に設けられ、部分的に遮光部が付加されて対称性を失うようにレイアウトが変更されている画素配列の一部を概略的に示す平面図である。
【図26】図25に示される実施例3に係る画素配列を有する表示装置が用いられる3次元映像表示装置において観察されるモアレパターンを示す平面図である。
【図27】(a)は、図25に示される実施例3に係る1列の画素配列を抜き出し、光線制御素子の1つの光学開口が垂直方向Yに一致するように傾けて示した平面図であり、また、(b)は、(a)の光学開口をY方向に探索して足し合わせた結果を、光学開口の法線方向であるX方向に並べることにより求めた、X方向に依存した輝度変化を示すグラフである。
【図28】図27(b)に示した実施例3に係る輝度分布をフーリエ変換して求められた周波数分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施の形態に係る3次元映像表示装置を詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る3次元映像表示装置を概略的に示す斜視図である。平面表示装置1の前面には、光線制御素子2が配置されている。この光線制御素子2においては、光学的開口部3(ここでは、シリンドリカルレンズ)が第1方向、例えば、水平方向に沿って配置され、この第1方向に直交する第2方向、例えば、垂直方向に対してある角度θを成して延出されている。より詳細には、光学的開口部3(例えば、シリンドリカルレンズ)の水平ピッチ(第1方向ピッチ)がL1[pp]に、垂直ピッチ(第2方向ピッチ)がL2[pp]に定められ、光学的開口部3の延出方向(シリンドリカルレンズの稜線方向)は、第2方向に対して角度θ=arctan(L1/L2)を成すように延出され、第1方向、例えば、水平方向に沿ってピッチL1[pp]で周期的に配置される。
【0014】
光線制御素子2が左右視差(水平視差)のみを与える場合には、光線制御素子2には、スリット(視差バリア)或いはシリンドリカルレンズのような光学的開口部が一次元方向に周期的に配置されている。このような光線制御素子は、バリアまたはレンチキュラーシートと称せられる。
【0015】
尚、本実施形態では、シリンドリカルレンズが用いられる光線制御素子について具体的に説明するが、光線制御素子2が液晶レンズ等で構成される光学素子で構成されても良い。このような光学素子では、その内に多数の液晶レンズを生じさせることができ、3次元映像を表示する際にのみ、必要に応じて液晶レンズを生じさせることができ、2次元映像を表示する際には、この液晶レンズを消失させることができる。従って、選択的に2次元映像及び3次元映像を表示できる表示装置を実現することができる。液晶レンズ等で構成される光学素子にあっては、印加する電圧に応じて、光学素子内の液晶の屈折率が変化して、光線制御素子2内に、例えば、シリンドリカルレンズと同様な液晶レンズが生じて液晶光線を制御することができる。
【0016】
図2は、画素配列の説明図であって、図1に示す平面表示装置1における第2方向に沿った画素4の配列の一部を拡大して概略的に示している。平面表示装置1は、画素4が水平並びに垂直方向(第1及び第2方向)に沿ってマトリックス状に画素ピッチppで配置されて表示面が構成され、各画素4は、水平方向(第1方向)に沿って配列されたサブ画素5から構成され、このサブ画素5は、光線を透過する画素開口部6及び光線を遮蔽する画素遮光部7とから構成されている。一般的には、各画素4は、画素領域内が水平方向に3セグメントに分割されてR(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)のフィルタ機能を有するサブ画素で略正方形(pp×ppの正方形)となるように形成される。従って、各サブ画素1は、辺の長さが1:3の長方形に形成される。平面表示装置1の背面に配置されたバックライト(図示せず)から射出された光線は、この画素開口部6を経由することで、RGBのいずれかの色の光線として表示部の前方に照射される。この光線は、光線制御素子2の光学的開口部3を通過することで、射出方向が制御された光線となって前方に投射されて3次元画像が表示される。
【0017】
このような3次元映像表示装置において、通常、光学的開口部3に対してサブ画素5が周期性を有するように配置されていることから、3次元映像を観察する観察者においては、周期性の干渉に基づくモアレを観察することとなる。この実施形態では、発明者の知見に基づき、サブ画素の画素開口部6の形状が2種類以上の場合に、互いに線対称或いは点対称の関係を与えないように設計することで、モアレを抑制することができるとしている。以下の説明では、この実施形態がモアレ抑制に最適であることをより良く理解可能とする為に、図2〜図8に示す比較例1から3を参照してモアレの発生について説明する。
【0018】
(比較例1)
図2には、モアレが生ずる単純な光学系の一例(比較例1)として、光学的開口部3の稜線8(光学開口3の軸線或いは中心線)が第2の方向(垂直方向)に一致されている光学配置が示されている。ここで、ある方向(ある角度)から光学的開口部3が観察される場合に、画素4上で観察される稜線8(光学開口3の軸線或いは中心線)を示す破線が図2に示されている。このような光学配置において、図3に水平断面図で示されるように、画素4から出た光線は、光学的開口部3を経由することで、射出方向が制御されて表示装置の前方に照射される。この制御は、別の観点からは、観察位置の変化(観察角度の変化)に応じて、光学的開口部3を経由して観察される画素4上の位置がシフトされ、その変化した位置から、見えるべき視差情報が表示される画素のみが観察されることを意味している。ここで、画素4には、これまで述べたように遮光部7が設けられていることから、観察角度に依存して図4に示されるように、周期性を持って輝度が変化される。この輝度は、第1方向(水平方向)の位置における画素開口部6の開口高さ(第2方向としての垂直方向の開口部の長さ)の合計に依存して定められ、第1方向(水平方向)のある位置において、第2方向(垂直方向)上に遮光部7が連続すれば、開口高さの合計値がゼロとなり、輝度がゼロとなる。また、第1方向(水平方向)の他の位置において、第2方向(垂直方向)上に画素開口部6が配列されれば、開口高さの合計値が大きくなり、輝度が高くなる。図4から明らかなよう、光学的開口部3の延出方向が第2の方向に一致している光学配置では、観察角度によって第1方向(水平方向)のある位置上の直線的な領域を観察することとなり、遮光部7のみ(開口高さの合計値がゼロ)が観察される場合には、輝度がゼロとなり、また、開口部6が観察される場合(開口高さの合計値が増加する場合)には、輝度が増加することとなり、結果的に、観察角度の変化に伴い周期的に輝度変化が生ずることとなる。従って、図4に示すように図2に示す比較例1に係る光学配置では、この周期的な輝度変化に基づき、観察者には、モアレが認識される。
【0019】
(比較例2)
図5には、表示部の画素4が配列される垂直方向に対して、光学的開口部3の稜線8が成す角θがθ=arctan(1/3)に設定される光学配置(比較例2)が示されている。角度θが与えられることで、光線制御素子5を経由して見える画素開口部6の割合の変動は、図6に示すように抑制される。しかし、この状態にあっても、まだ輝度変化は大きく、実用レベル(製品レベル)の範囲に至らない問題がある。具体的には、全ての行において、輝度変化の位相が一致し、図6の輝度変化が面内または観察位置に応じた輝度変化、すなわち、モアレとして視認されてしまうことが指摘されている。
【0020】
モアレの防止の為には、光学的開口部3を介して観察される行毎の輝度変化の位相がずらされ、また、光学的開口部3毎の位相がずらされ、即ち、光学的開口部3の傾き及びピッチが制御されることにより、どの角度から見ても3次元表示装置の面内の輝度が一定という条件を求めることが必要とされる。ここでは、その条件については、詳述しないこととする。
【0021】
上述したように、光学的開口部3の角度を調整しても、モアレが解消しない事例があることが判明している。より具体的には、画素4の開口形状が一種類しかないTN(ツイストネマチック)モードの液晶ディスプレイを表示装置1として用いた場合には、求めたモアレが解消する角度θで光線制御素子2を設計しても、VA(バーティカルアライメント)モード或いはIPSモードでは、モアレが発生することが明らかになっている。
【0022】
以上の結果からわかるように、光線制御素子2の光学的開口部3の傾きとピッチの調整は、輝度ムラ(モアレ)の抑制に効果があるが、それだけでは、完全にモアレを解消することはできない。発明者は、この原因を図7〜図16を参照して以下のように考察している。
【0023】
平面表示装置、特に、液晶表示装置における、VA(バーティカルアライメント)モード等では、視野角特性の非対称性を解消する目的で、2つ以上の異なる形状のサブ画素5が設計される場合がある。一般的には、あるサブ画素5Aの開口形状が設計され、また、このサブ画素5Aに対して線対称(図7)となるように、サブ画素5Aとは異なる開口形状のサブ画素5B、5Cが設計される手法、或いは、線対称に代えて、サブ画素5Aに対して点対称(図8)に設計されてサブ画素5Aとは異なる開口形状のサブ画素5Bが設計される手法が採用されている。より詳細には、図7に示すように、あるサブ画素5Aに対して行方向及び列方向で隣接する同色のサブ画素5B、5Cは、このサブ画素5Aに対して線対称の開口形状を有するように設計される。また、図8に示す例では、あるサブ画素5Aに対して行方向及び列方向で隣接する同色のサブ画素5Dは、画素5Aに対して点対称の開口形状を有するように設計される。
【0024】
この明細書では、ある画素5Aの開口形状は、基準とされるパターンに相当することから第1パターン(基準パターン)と称し、また、この基準とされるパターンに対して線対称或いは点対称な画素5B、5Cの開口形状は、基準パターンとは異なるパターンとなることから、第2パターン(対称パターン)と称する。
【0025】
このように、第1及び第2のパターンの組み合わせに係る画素設計を行い、第2パターンの開口を有するサブ画素5B、5Cと第1パターンの開口を有するサブ画素5Aを交互に組み合わせて、例えば、市松状に配置されることによって視野角特性の非対称性を改善することができることが表示装置の分野で知られている。しかし、このような画素設計では、サブ画素ピッチより長い周期性が発生することから、光線制御素子2との組み合わせでは、この新たに発生した周期性が原因で新たな干渉(モアレ)、即ち、輝度変化が発生することとなる。
【0026】
(比較例3)
図9は、上述した画素設計を基にサブ画素が配列されているある液晶表示装置(比較例3)におけるサブ画素配列と光線制御素子2の光学開口3との関係を示している。
【0027】
図9に示される比較例3に係るサブ画素配列では、図2に示す配列と同様に垂直方向(第2方向)に沿う同一列に同一色(例えば、R)のサブ画素9が配列され、また、このサブ画素9の配列に隣接する同一列に他の同一色(例えば、G)のサブ画素10が配列され、更に、このサブ画素10の配列に隣接する同一列に更に他の同一色(例えば、B)のサブ画素11が配列されている。同一行のRGBサブ画素9、10及び11が1つの画素12に定められている。図9に示すように、各サブ画素9、10、及び11には、電極に対応(由来)する遮光部13A及び13B、各サブ画素9、10、及び11の領域を2つのセグメントの領域に区画するように中央近傍を横切るとともに、電極に対応(由来)する遮光部13A及び13Bに電気的に接続されている電極配線に対応(由来)する遮光部14及び電極配線に対応する遮光部14に接続されたパターンセグメントとしてのキャパシタに対応(由来)する遮光部15によるパターンが設けられている。サブ画素9とこのサブ画素9に行方向で隣接する同色のサブ画素10とは、線対称なパターンに形成され、また、サブ画素10とこのサブ画素10に行方向で隣接する同色のサブ画素11も線対称なパターンに形成され、更に、このサブ画素11とこのサブ画素11に行方向で隣接する同色の、サブ画素9とは、線対称なパターンに形成される。ここで、図9に示される配置のみに着目して行列で各サブ画素を指定すると、第1行第1列のサブ画素9のパターンと第1行第3列のサブ画素11のパターンとは、同一のパターンであり、これを第1パターンとすると、第1行第2列のサブ画素10は、第2パターンに相当する。また、第2行第1列のサブ画素9のパターンと第2行第3列のサブ画素11のパターンとは、同一のパターンであり、第2パターンに相当し、第2行第2列のサブ画素10は、第1パターンに相当する。そして、サブ画素9の行配列では、第1パターン及び第2パターンが交互に配列されて列に沿って第1パターン及び第2パターンが市松模様を与えるように配置されている。サブ画素10及び11の行配列においても、第2パターン及び第1パターン或いは第1パターン及び第2パターンが交互に配列されて市松模様を生じさせている。
【0028】
ここで、光学的開口部3の傾きθは、水平ピッチ(第1方向ピッチのレンズピッチ)L1[pp]及び垂直平ピッチ(第2方向ピッチのレンズピッチ)L2[pp]とすると、
θ=arctan(L1/L2)
ここで、水平ピッチ(第1方向ピッチ)L1=1.552[pp]に、また、垂直ピッチ(第2方向ピッチ)L2=9.000[pp]に定められると、
θ=atan(1/5.8)
となる。本来、この傾きθは、モアレが解消するはずの条件の一つであるが、結果的に図10に示すようなモアレが面内に発生される。ここで、ppは、3サブピクセルで構成される1画素のピッチであり、水平方向ピッチL1及びL2は、この画素のピッチppの比で表される。
【0029】
上述したように、ある列のサブ画素配列(例えば、Rのサブ画素配列)には、第1パターン及び第2パターンのサブ画素9が列に沿って、交互配列で、例えば、市松模様に配置されている。同様に、他の列のサブ画素配列(例えば、G及びBのサブ画素配列)には、第2パターン及び第1パターンのサブ画素10並びに第1パターン及び第2パターンのサブ画素11も列に沿って市松模様に配置されている。ここで、1つのサブ画素配列、例えば、Gのサブ画素配列に着目して、ある1つの光学的開口部3との関係を考察すると、以下のようにモアレが生じることがシュミュレートされる。ここでは、Gのサブ画素配列に着目して説明するが、同様にR及びBのサブ画素についても同様であり、同様の考察が可能である。
【0030】
図11(a)は、1つの光学的開口部3の長軸を基準にして図3に示したと同様に観察角度を変化させた際の輝度変化をシュミュレートする為に、仮想的にGのサブ画素配列10が抜き出されて、θだけ傾けて描画されている。ここで、光学的開口部3の、光学的開口部3に沿った軸をY軸とし、この長軸(Y軸)に直交するX軸として、このX軸に沿ったサブ画素開口部6の合計高さ(開口部長さLyの合計)と遮光部7の合計高さ(遮光部長さSyの合計)との割合がY軸上にプロットされて、図11(b)に示すような周期的に変化する波形が得られる。この図11(b)において、破線で示す範囲は、サブ画素の第2の方向の形成間隔でもある画素ピッチppを、X軸に換算(投影)した距離(pp×sinθ)に相当している。ここで、X軸は、光学的開口部3の稜線8(Y軸)の法線方向に相当する。そして、サブ画素開口部6の合計高さは、法線方向(X軸上)のある位置における1以上のサブ画素開口部6の高さ(Y軸上の距離)の合計を表している。同様に、遮光部7の合計高さも法線方向(X軸上)位置における1以上の遮光部7の高さ(Y軸上の距離)の合計を表している。図11(b)は、図3に示したと同様に、サブ画素一列の光学的開口部3に対して観察角度を変化させた際の輝度変化に対応し、図4及び図6に観察角度の変化に基づく強度分布に相当する。実際のモアレの見え方は、この輝度変化を光線制御子の光学的開口部3越しに、どのようにサンプリングしたかで決まる。
【0031】
このような周期性を有するサブ画素配列と光学的開口部3との光学配置において、サブ画素の形成間隔であるppを、X軸に換算した距離(pp×sinθ)より長い成分が発生しているかどうかは、図11(b)に示す遮光部7に対する開口部6の割合(輝度変化に相当する。)をフーリエ変換に基づいて変換すると、図12に示すような周波数スペクトル(周波数成分の有無とその振幅)が得られる。この周波数成分の分布を表す図12から明らかなように、サブ画素ピッチ由来の周波数成分(pp×sinθ)及びこの周波数成分(pp×sinθ)より周波数の低い、周波数成分(pp×sinθ×1/2)の周波数成分の振幅が発生してモワレが生ずることが判明している。
【0032】
(比較例4)
図13には、比較例4として第2パターンを用いずに図9に示した第1パターンのサブ画素のみで画素12が構成され、図9に示したサブ画素配列とは、異なり第2パターンを有するサブ画素を含まず、市松模様を生じさせないサブ画素配列が示されている。
【0033】
ここで、図9に示した光学系と同様に傾きθを第2方向(垂直方向)に対して成すように光学的開口部3が配置されるが、この配置では、図14にしめすように、図10に示すようなモアレが抑制されていることがわかる。すなわち、モアレを抑制するように光線制御子の光学的開口部が設計されている。この図13に示す配置において、図15(a)に示すように、1つのサブ画素配列、例えば、Gのサブ画素配列に着目して、図11(b)に示したと同様にある光学的開口部3の長軸を基準にして観察角度を変化させた際の輝度変化を計算すると、図11(b)と同様に図15(b)に示すような周期的に変化する波形が得られる。ここでは、Gのサブ画素についてのみ述べたが、R又はBのサブ画素配列に着目しても、それぞれ同様に周期的に変化する波形を得ることができる。図15(a)において、破線で示す範囲が1画素のX軸上距離(pp×sinθ)に相当している。ここで、X軸は、光学的開口部3の稜線8(Y軸)の法線方向に相当する。そして、図15(b)においては、サブ画素開口部6の合計高さ(開口部長さLyの合計)と遮光部7の合計高さ(遮光部長さSyの合計)との割合がY軸上にX方向の変化としてプロットされている。この図15(b)から明らかなように、距離(pp×sinθ)の周期で、遮光部7に対する開口部6の割合が変動しており、この図15(b)に示す輝度変化の特性は、サブ画素の形状が単一であることを示している。図15(b)をフーリエ変換によって図16に示すような周波数スペクトル(周波数成分の有無とその振幅)に変換することができる。
【0034】
図12と図16とを比較すると、図12で発生していた、サブ画素由来の周波数の1/2の周波数成分(pp×sinθ×1/2)が図16では全くない。そして、図10で発生していたモアレが図14では解消していることが判明している。即ち、第1パターンと第2パターンとの2種類のサブ画素9、10、及び11が交互配列、例えば、市松状に設けたために、輝度変化にサブ画素9、10、及び11に起因する波長成分(pp×sinθ)より周波数の低い、波長成分(pp×sinθ×1/2)の周波数成分が発生し、これが原因で新たなモアレが発生することが明らかである。
【0035】
(実施例1)
サブ画素9、10、及び11及びこのサブ画素9、10、及び11で構成される画素12の開口形状は、最良の表示特性を実現するために設計されている3次元映像表示装置において、モアレが発生するからといって、その平面表示部で表示されるサブ画素及び画素の形態を自由に変更することはできない。しかしながら、上述の考察を踏まえると、(pp×sinθ)より長い輝度変化の周波数特性がモワレの1つの原因であれば、画素の開口形状をほぼ維持した状態で、輝度変化の(pp×sinθ)より長い周波数成分を抑制することは可能である。換言すれば、画素形状が単一でなくても、輝度変化の長波長成分を抑え、モアレを抑制することができることを意味している。
【0036】
この考察下において、発明者は、その位置が移動されても表示特性に影響を与えない遮光部の一部(パターンセグメント)についてレイアウト(配置)を変更することができることに着目し、レイアウト(配置)の変更によってモアレを抑制することができるとしている。より具体的には、遮光部には、電極に対応(由来)する遮光部13A,13B、電極14及びキャパシタに対応(由来)する遮光部15等があるが、遮光部の一部としてのキャパシタに対応(由来)する遮光部15について着目し、図17に示すようにパターンセグメントを構成するキャパシタに対応(由来)する遮光部15のレイアウトが変更されている。図17の配置では、図9に示される基本配置が採用されているが、第1パターンのサブ画素9、10及び11のキャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15がサブ画素中の領域の左下に配置され、同様に第2パターンのサブ画素9、10及び11のキャパシタに対応する遮光部15もサブ画素中の領域の左下に配置され、第1パターンのサブ画素9、10及び11のキャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15が第2パターンのサブ画素9、10及び11のキャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15とほぼ同一の位置にシフトされている。このシフトによって、互いに隣接するサブ画素の開口部6内では、略同一位置(開口部内における相対位置が同一である。)にキャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15が配置されている。ここで、キャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15を除き、サブ画素9とこのサブ画素9に行方向で隣接するサブ画素10とは、線対称なパターンに形成されている。また、同様に、キャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15を除き、サブ画素10とこのサブ画素10に行方向で隣接するサブ画素11も線対称なパターンに形成され、更に、キャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15を除き、このサブ画素11とこのサブ画素11に行方向で隣接し、異なる画素に属するサブ画素9とは、線対称なパターンに形成されている。また、同一列では、第1パターンのサブ画素及び第2パターンのサブ画素が交互に配置されている。
【0037】
尚、図17に示される表示装置は、キャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15の位置を除き、図9に示されるサブ画素パターンと同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。図17に示される配置は、図9に示される配置に関する説明を参照されたい。
【0038】
また、実際の設計では、遮光部の一部のシフト、上述した実施の形態では、キャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15のシフトに伴い、垂直方向の配線も水平方向にシフトされて、サブ画素内の左右の面積比が維持される等の他の変更が必要とされる。しかし、サブ画素内の左右の面積比が維持されることが必要とされるに説明を留め、その変更に係る設計事項の詳細に関しては、説明を省略する。
【0039】
図9を参照して説明されるように、線対称性を有する第1パターン及び第2パターンの2種類の画素が採用されることによって、2倍の波長の成分が発生しているメカニズムを踏まえると、2倍の波長成分を抑制するためには、対称にする必要がない素子、例えば、上述した実施の形態では、キャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15については、出来る限り同じ位置に設けることがモワレ抑制に効果的とされる。このような配置の変更によって、1/2倍の周波数成分の振幅が大きく抑制され、図18に示すようにモアレも大幅に抑制される。
【0040】
図19(a)には、図11(a)及び図15(a)と同様に、図17に示す画素配列における1つのサブ画素配列、例えば、Gのサブ画素配列がある1つの光学的開口部3とともに示されている。この図19(a)の配列を基に、図19(b)に示すようにX軸に沿ったサブ画素開口部6の合計高さ(開口部長さLyの合計)と遮光部7の合計高さ(遮光部長さSyの合計)との割合がY軸上にプロットされて、図11(b)及び図15(b)と同様に、周期的に変化する波形が得られる。同様にR及びBのサブ画素配列についても周期的に変化する波形を得ることができる。そして、図19(b)に示される遮光部7に対する開口部6の割合(輝度変化に相当する。)がフーリエ変換されて図20に示す周波数スペクトル(周波数成分の有無とその振幅)が得られる。この図20から明らかなように、サブ画素ピッチ由来の周波数成分(pp×sinθ)及びこの周波数成分(pp×sinθ)より周波数の低い、周波数成分(pp×sinθ×1/2)の周波数成分の振幅が抑制されてモワレがより抑制されることが理解される。このように1/2倍の周波数成分の干渉によるモアレが図18に示すように大幅に抑制される。
【0041】
(実施例2)
図21には、更に他の実施例2に係る表示装置が示されている。図21に示される表示装置においては、図17に示されるサブ画素9、10、及び11と同様に遮光部の一部としてのキャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15がサブ画素9、10、及び11内の領域の同一位置に配置されるとともに、よりモアレを抑制するために、開口部6の調整の為に付加的な遮光部16A、16Bがサブ画素9、10、及び11内の領域に設けられている。換言すれば、図21に示される画素配列では、2種類のサブ画素が市松状に設けられ、部分的に遮光部が付加されて対称性を失うようにレイアウトが変更されている。この遮光部16A、16Bがサブ画素9、10、及び11内の領域に付加されることによって、開口部6の形状及び面積が調整されて2倍の波長成分が更に抑制されて図22に示すようにモアレがより低減される。
【0042】
図23(a)には、図11(a)、図15(a)及び図19(a)と同様に、図22に示す画素配列における1つのサブ画素配列、例えば、Gのサブ画素配列がある1つの光学的開口部3とともに示されている。この図23(a)の配列を基に、図23(b)に示すようにX軸に沿ったサブ画素開口部6の合計高さ(開口部長さLyの合計)と遮光部7の合計高さ(遮光部長さSyの合計)との割合がY軸上にプロットされて、図11(b)、図15(b)及び図19(b)と同様に、周期的に変化する波形が得られる。同様にR及びBのサブ画素配列についても周期的に変化する波形を得ることができる。そして、図23(b)に示される遮光部7対する開口部6の割合(輝度変化に相当する。)がフーリエ変換されて図24に示す周波数スペクトル(周波数成分の有無とその振幅)が得られる。この図24から明らかなように、サブ画素ピッチ由来の周波数成分(pp×sinθ)及びこの周波数成分(pp×sinθ)より周波数の低い、周波数成分(pp×sinθ×1/2)の周波数成分の振幅が抑制されてモワレがより抑制されることが理解される。このように輝度変化が著しい1/2倍の周波数成分が大きく抑制され、図18に示すようにモアレもより大幅に抑制される。
【0043】
2倍の波長成分に拘らずとも、輝度変化の振幅が抑制されることは、面内輝度均一性の向上に寄与することができる。なぜなら、光学的開口部3の傾きの制御は、光学的開口部3によりサンプリングした輝度の差を面積的に均一化することによるモアレの解消であり、輝度差そのものが小さいことは、例えば光線制御素子の貼り付け誤差のマージンを広げることができ、面内の輝度の分布によるざらざらとした印象を低減することができるメリットがある。
【0044】
(実施例3)
図25は、更に他の実施形態に係る表示装置が示されている。図25に示される表示装置においては、図17に示されるサブ画素9、10、及び11と同様に遮光部の一部としてのキャパシタに対応する遮光部(パターンセグメント)15がサブ画素9、10、及び11内の領域の同一位置に配置されるとともに、よりモアレを抑制するために、開口部6の調整の為に付加的な遮光部16A、16Bがサブ画素9、10、及び11内の領域に設けられ、更に、他の遮光部17A、17Bが電極に対応する遮光部13Aに付加されている。電極に対応する遮光部13Aに遮光部17A、17Bが付加された結果、図21に示される電極に由来する遮光部13Aが正方形に対して図25に示される電極に対応する遮光部13Aは、長方形に形成されている。このように遮光部16A、16B及び17A、17Bが適切な位置に追加されることにより、周波数成分(pp×sinθ)も含めて、長波長側の周波数成分を抑制することができ、図26に示すように、面内の輝度分布をさらに抑制し、モワレの生成を抑制することができる。
【0045】
図27(a)には、図11(a)、図15(a)、図19(a)及び図23(a)と同様に、図25に示す画素配列における1つのサブ画素配列、例えば、Gのサブ画素配列がある1つの光学的開口部3とともに示されている。この図27(a)の配列を基に、図27(b)に示すようにX軸に沿ったサブ画素開口部6の合計高さ(開口部長さLyの合計)と遮光部7の合計高さ(遮光部長さSyの合計)との割合がY軸上にプロットされて、図11(b)、図15(b)、図19(a)及び図23(a)と同様に、周期的に変化する波形が得られる。同様にR及びBのサブ画素配列についても周期的に変化する波形を得ることができる。そして、図27(b)に示される遮光部7に対する開口部6の割合(輝度変化に相当する。)がフーリエ変換されて図28に示す周波数スペクトル(周波数成分の有無とその振幅)が得られる。この図28から明らかなように、サブ画素ピッチ由来の周波数成分(pp×sinθ)及びこの周波数成分(pp×sinθ)より周波数の低い、周波数成分(pp×sinθ×1/2)の周波数成分が低減されてモワレがより抑制されることが理解される。このように1/2倍の周波数成分の振幅が抑制され、1/2の周波数成分が原因の面内の輝度分布の変動もさらに抑制されて図26に示すようにモアレもより大幅に抑制される。
【0046】
以上の実施の形態では、第1及び第2のパターンの組み合わせについて述べたが、この実施の形態の適用においては、これに限らず、第1のパターンが基準パターンとされ、第2のパターンが基準パターンに対する線対称パターンとされ、更に、第3のパターンが基準パターンに対する点対称パターンとされて第1、第2及び第3のパターンが組み合わせて配列されても、以上に述べた手法を、R、G、B各色についてそれぞれに適用することによって、モアレを解消することができる。
【0047】
さらに述べれば、複数パターンの画素が周期的にもうけられた場合には、かならずその周期性に由来する、サブ画素の周期より長い周期が発生するが、当該実施の形態で述べた手法を用いて輝度変動からサブ画素の周期より長い周期を抑制することにより、モアレが改善される。
【0048】
以上のように、この実施例によれば、周期性が1方向に限定された光線制御素子と平面表示装置を組み合わせた3次元映像表示装置において、光学的開口部3の傾きの制御に加えて、画素形状を改変することで、モアレを解消し、3次元映像の画質を向上させることができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1...表示装置、2...光線制御素子、3...光学的開口部、4...画素、5、5A,5B、5C...サブ画素、6...サブ画素開口部、7...サブ画素遮光部、8...光学的開口部の稜線、9、10、11...サブ画素、12...画素、13A,13B...電極に対応する遮光部、14...電極に対応する遮光部、15...キャパシタに対応する遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向及びこの第1方向に直交する第2の方向に沿って画素周期ppで画素がマトリクス状に配列され、当該画素が異なる色を表示する複数のサブ画素で構成されている表示部であって、前記サブ画素が夫々当該サブ画素の色を表示する開口部及びこの開口部を定める遮光部で第1及び第2のパターンの一方を有するように構成され、前記同色のサブ画素が前記第2方向に沿って前記第1及び第2パターンの交互配列或いは前記第2及び第1パターンの交互配列で配列され、前記サブ画素が互いに線対称或いは点対称を与えないようにマトリクス状に配列されている表示部と、
前記表示部に対向して設置される光線制御素子であって、前記第2の方向に対してある角度θを成すように傾けられて直線状に延出され、かつ、この延出方向に直交する方向に沿って配列されている多数の光学的開口部から構成されている光線制御素子と、
を具備することを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項2】
前記ある角度θが前記第1方向に沿った第1周期L1及び前記第2の方向に沿った第2周期L2の比で与えられるatan(L1/L2)に定められていることを特徴とする請求項1に記載の3次元映像表示装置。
【請求項3】
前記サブ画素は、前記光学的開口部の延出方向に沿った開口長さLyを有し、前記延出方向に直交する方向に沿う位置における前記サブ画素が有する前記開口長さLyの合計は、前記延出方向に直交する方向に沿って変化され、この変化に基づく周波数成分は、前記サブ画素の形成ピッチに由来する(pp・sinθ)より長波長の成分が抑制されていることを特徴とする請求項1に記載の3次元映像表示装置。
【請求項4】
前記サブ画素の遮光部は、キャパシタに対応する遮光部を構成するパターンセグメントを含み、このパターンセグメントの配置が前記第1及び第2のパターンで異なり、このパターンセグメントの配置が前記互いに線対称或いは点対称を与えないマトリクス状配列を与えていることを特徴とする請求項1に記載の3次元画像表示装置。
【請求項5】
互いに隣接する前記サブ画素においては、前記開口部内の同一位置に前記キャパシタに対応する遮光部を構成する前記パターンセグメントが位置されていることを特徴とする請求項4に記載の3次元映像表示装置。
【請求項6】
前記パターンセグメントの配置が前記互いに線対称或いは点対称を与えないマトリクス状配列を与え、しかも、前記サブ画素が有する前記開口長さLyの変化に基づく前記周波数成分における振幅の変動が抑制されていることを特徴とする請求項3に記載の3次元画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−47764(P2013−47764A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186598(P2011−186598)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】