説明

3次元的冠状動脈の顕微鏡検査中に血管の動きを追跡するためのシステム、方法およびコンピュータアクセス可能な媒体

装置、方法およびコンピュータアクセス可能な媒体が設けられうる例示的な実施形態は、構造の少なくとも1つの特徴の決定を容易にすることができる。例えば、第1の軸に沿う少なくとも1つの第1の透過された放射と、第2の軸に沿う少なくとも1つの第2の透過された放射とを提供するように構築された少なくとも1つの第1の構成部を用いることができる。第1および第2の透過された放射は、構造に衝突し、第1および第2の戻り放射それぞれを生成することができる。第1および第2の軸は、互いに対して0より大きい所定の角度で設けられることができる。さらに、少なくとも1つの第2の構成部は、第1および第2の戻り放射に関連付けられたデータを受信するように構成され、かつ第1および第2の軸に沿う構造と少なくとも1つの構成部との間の少なくとも1つの相対速度を決定するように構成されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本発明は2008年5月7日出願の米国特許出願番号第61/051,231号に基づいて、その優先権を主張し、参照によりその全開示を本願明細書に援用する。
【0002】
本開示は、器具と試料との間の相対的空間位置または動きを監視するためのシステム、方法およびコンピュータアクセス可能な媒体の例示的な実施形態に関し、特に、例えば三次元的冠状動脈の顕微鏡検査手順中に、血管の動きを追跡するためのシステム、方法およびコンピュータアクセス可能な媒体の例示的な実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の用途において、2つの物体の間の相対位置または動きを監視することが望ましい。例えば、特定の用途において、高精度の光線または感知ベクトルを、特定の方向に沿って、または試料において特定の位置に正確に向けることが有益である。従って、光線または感知ベクトルと試料との間の相対位置または動きに関する知識を提供することは重要であり得る。例えば、いくつかのレーザ手順において、所定の走査パターンに従って、または特定の位置において、試料を横切ってレーザ光線を走査することが望ましい場合がありうる。試料が制御できない動きをする可能性がある場合、所定の走査パターンまたは特定の位置を達成する精度が損なわれる場合がある。特定の感知または画像化用途においては、試料に対する感知ポイントまたは軸を制御することが重要になりうる。2次元または3次元の画像を生成するため、試料に対する感知ポイントまたは軸を所定のパターンに従って走査することができる。試料の構造の正確な画像化復元のため、所定の走査パターンを正確に追従することが重要になりうる。試料の動きが制御できない場合、試料上または試料内の実際の走査パターンが所定の走査パターンと異なり、画像忠実度が損なわれる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの物体の間の空間的位置または動きを監視するために通常取ることができる一般的な戦略分類は、周知または制御された基準ポイントに対する各物体の位置または動きを監視することである。この種の戦略は、1つの物体と基準ポイントとが互いに対して持続的に位置する場合に関連性がありうる。例えば、医療用のカテーテルベースの画像化用途において、動物または人体に挿入可能なカテーテルの先端部に信号トランスを設置することができる。このトランスは、軸方向に延長不可能でトルクを伝達する素子を用いて、カテーテルの近位端でアクチュエータに接続されることができ、アクチュエータが素子を回転したり、押したり、または引いたりする場合にアクチュエータの動きがトランスにおいて正確に再現されるようにすることができる。画像化中の組織または器官が動いていない時であり、さらに、画像化システムが動いていない時に、1つの物体と基準ポイントとを互いに対して固定可能という制約が満たされる。従って、器官または組織に対するトランスの相対位置および/または動きを監視および制御することができる。しかしながら、場合によっては、器官または組織は、例えば、呼吸や心臓機能、蠕動または患者の動きのために動く場合があり、この一般的戦略分類が当てはまらない場合がある。さらに、体内の動きでカテーテルの長さに沿うものは、対象の組織に対してカテーテルのトランスの先端部に制御されない動きを生じさせる場合がある。
【0005】
医療措置によっては、特定の解剖学的位置または器官に対する器具の位置および/または動きを監視することが望ましい場合がある。この目的を達成するための例示的な戦略は、画像化モダリティによって検出可能で、特定の解剖学的位置または器官の検出も容易にするように器具を準備することでありうる。しかしながら、場合によっては、解剖学的位置または器官が検出に十分なコントラストを示さない場合がある。例えば、蛍光透視法やX線コンピュータ断層撮影法によると、身体の軟組織が低い相対コントラストを示す場合がある。従って、例えば、冠状動脈は、これらの技術では外部造影剤を利用しないと位置決定できない場合がある。さらに、従来の画像化技術には、特定の解剖学的位置または器官に対する器具の相対位置または動きを正確に決定するために十分な解像度を有していないものがある。
【0006】
上述した問題と欠陥は、2つの物体の間の相対位置または動きをより正確に監視する必要性を単に表したものにすぎない。実際、本願明細書に上述した欠陥の少なくとも一部に対処および/克服することは有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した欠陥の少なくとも一部を克服するために、2つの物体の間の相対位置および/または動きを正確に監視するための本開示による例示的な実施形態を提供することができる。ある例示的な実施形態において、1つの物体は、音響的または電磁的放射を放出するように構成することができるが、これを第2の物体によって拡散させてもよい。第1の物体はさらに、拡散された音響的または電磁的放射の少なくとも一部を収集し、この信号を処理して2つの物体の間の相対距離および/または相対速度を決定するように構成することができる。本開示の別の例示的な実施形態において、第1の物体は、互いに対して所定の角度を有する異なる伝搬軸に沿って向けられ、第2の物体からさらに拡散する2つ以上の異なる音響的または電磁的放射を提供するように容易化することができる。この実施形態では、第1の物体はさらに、2つ以上の空間的次元において2つの物体の相対動きを決定するために、2つ以上の拡散された音響的または電磁的放射を収集し、対応する信号を処理するように構成することができる。
【0008】
本開示のさらに別の例示的な実施形態によれば、特定の解剖学的位置または生物学的器官によって反射される場合がある少なくとも1本の光線を出すように構成された医療用カテーテルを提供することができる。この例示的なカテーテルはさらに、カテーテルと生物学的箇所との間の相対距離および/または相対速度を決定するために、反射された光を検出し、この信号を処理するように構成することができる。信号を処理する方法の例示的な実施形態は、第2の物体の動きにより反射光に与えられたドップラー周波数シフトに基づくことができる。時間的相対速度を追跡することにより、2つの物体の間の距離を監視する場合がある。医療用カテーテルはさらに、異なる波長成分を有し、カテーテルと特定の解剖学的箇所または生物学的器官との間の相対速度ベクトルを決定できるよう、互いに対して異なる空間的角度で向けられる、複数の光線を出すよう構成することができる。
【0009】
そのため、本開示のある例示的な実施形態によれば、構造の少なくとも1つの特徴の決定を容易にすることができる装置、方法およびコンピュータアクセス可能な媒体を提供することができる。例えば、第1の軸に沿って透過された少なくとも1つの第1の放射と、第2の軸に沿って透過された少なくとも1つの第2の放射を提供するように構築することができる少なくとも1つの第1の構成部を用いることが可能である。第1および第2の透過放射は構造に衝突し、それぞれ第1および第2の戻り放射を生成することができる。第1および第2の軸は、互いに対して0より大きい所定の角度で設けることができる。さらに、第1および第2の戻り放射に関連付けられたデータを受信し、第1および第2の軸に沿う構造と第1の構成部との間の少なくとも1つの相対速度を決定するように構成できる、少なくとも1つの第1の構成部を提供することができる。
【0010】
本開示の別の例示的な実施形態においては、第1および第2の透過放射は、電磁放射および/または超音波放射であることができる。さらに、第1および第2の透過放射は、異なる波長を有することができる。さらに、そのデータは、第1および第2の透過放射と、第1および第2の戻り放射との間のドップラーシフトに対応することができる。データはまた、例えば、第1および第2の軸に沿う装置と構造との間の距離の変化の時間率に対応することができる。
【0011】
本開示のさらに別の例示的の実施形態によれば、第1の構成部は、長手軸に沿って延び、第1の軸に沿う第1の速度および第2の軸に沿う第2の速度とは、長手軸に少なくともほぼ沿う装置と構造との間のさらなる相対速度を決定するために用いることができる。さらに、装置の位置および/または回転は、さらなる相対速度に基づいて決定することができる。さらに、少なくとも1つの第3の構成部は、構造の少なくとも一部の少なくとも1枚の画像を、相対速度の関数として生成することができる。例えば、第3の構成部は、光学周波数ドメイン干渉法手順、光学コヒーレンス干渉法手順および/または超音波手順を用いて画像を生成することができる。第3の構成部の少なくとも一部分は、カテーテル内に設けられる。
【0012】
本開示のさらに別の例示的な実施形態において、第1の構成部は、第1および/または第2の透過された放射の少なくとも一方を少なくとも部分的に反射し、第1および第2の透過放射それぞれの波長に基づいて第1および/または第2の透過された放射の他方を通過させるように構築された断面を有する部位を含むことができる。例えば、反射した放射および通過した放射は、所定の角度で設けることができる。さらに、第1の構成部は、第1の透過された放射および/または第2の透過された放射をコリメートするおよび/または合焦するよう構築することができる。さらに、第1および第2の軸は、構造の表面に垂直な軸に対して正および負の角度でそれぞれ構造に衝突することができる。第2の構成部はさらに、第1および第2の戻り放射に基づいて2つの次元での構造と第1の構成部との間の相対動きを区別するように構成することができる。
【0013】
本開示の例示的な実施形態のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、以下の本開示の例示的な実施形態の詳細な説明を特許請求の範囲と共に参照することによって明らかになるであろう。
【0014】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、本発明の実施形態が示される添付の図面と共に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、3次元画像化のための従来の走査技術に用いられるカテーテルの側断面である。
【図2】図2は、カテーテル内の導管と内腔との間の相対距離および動きを追跡するための本発明の例示的な実施形態に係るカテーテルの側断面図である。
【図3】図3は、図2に示す例示的カテーテルから戻される信号を処理するための本開示によるシステム/装置の例示的な実施形態の図である。
【図4】図4は、カテーテル導管と対象(例えば、内腔)との間の相対的動きを追跡するための図3に示す例示的なシステム/装置によって得られるデータのプロットを示す1組のグラフである。
【図5】図5は、カテーテル導管と対象との間の相対的な動きおよび/または速度を監視するために用いられうる、図2に示す例示的なカテーテルの特定の構成要素の例示的な実施形態の側断面図である。
【図6】図6は、構造の少なくとも1つの特徴を決定するための本開示に係る方法の例示的な実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面全般において、特に断りのない限りにおいて、同一の参照番号および記号は、図示の実施の形態の同様の特徴、要素、成分または部分を示す。本発明を、以下、図面を参照して例示的な実施の形態と共により詳細に説明する。記載された例示的な実施形態は、係属された請求の範囲により画定される本開示の範囲および趣旨から逸脱しない限りにおいて、変更および修正を行うことが可能である。
【0017】
図1は、2つの物体の間の相対空間位置または動きの監視が有益となる可能性の高い従来のカテーテルの使用の一例の側断面図である。図1を参照すると、例えば画像化または治療のためのこのようなカテーテルまたは内視鏡を通じて内部器官100の内腔100に光を送ると、外部シース110と、シース内を回転および/または並進可能な内部導管120とを備えるカテーテルを利用することが可能である。導管120を特定の軸130に沿って光を送るよう構成すると、内腔100の所定の部分への露光は、導管を回転し、長手方向に走査しながら同時に導管による照射を制御することによって達成できる。例えば、この戦略は、内腔100の画像化に利用できる。このような場合、その結果生じる螺旋状の走査パターン140を内腔100の全表面を露光させることが重要になりうる。
【0018】
一般に、シースは、内腔100に対して固定して保持することがあり、導管の位置および向きはシースに対して遠隔監視することができる。このように、内腔100に対する光の走査パターンは制御可能である。しかしながら、内腔に対するシースの相対位置または動きを制御しない場合、走査パターンの精度を確保できなくなる。これは、例えば、呼吸、蠕動、心臓機能その他動きの源による場合がある。体内生物学的器官の内腔に光を送るこのような代表的な例は、本開示の例示的な実施形態の背景を理解するのに役立つが、2つの物体の間の相対的空間的位置または動きの監視が有益となる唯一の用途ではない。
【0019】
図2は、カテーテル内の導管と内腔との間の相対距離および/または動きを追跡するための本発明の例示的な実施形態に係るカテーテルの側断面図である。図2に示すような例示的な実施形態によれば、体内生物学的器官の画像化に適した例示的なカテーテル250を提供することができる。このような例示的なカテーテル250は、外部の少なくとも部分的に透明なシース211内に設けることができる内部導管210を含んで構築または構成することができる。この導管は、2本の軸220、230の間の相対向きが相対角度240によって定量化されるような方法で、2本の異なる軸220および230に沿って電磁放射(光等)または超音波放射を行うように構成または設計されうる。
【0020】
反射または拡散された放射が軸220、230のそれぞれに沿って戻されると、このような戻り放射は、導管210によって収集され、取り付けあるいは連結されたレシーバおよび/または処理構成部(例えば、プロセッサを含むことができる)へカテーテル内の近位に伝播することができる。反射および/または拡散放射の測定を通じて、それぞれの軸220、230に沿った導管210と内腔との間の相対速度および/または相対距離の大きさを決定することができる。さらに、2本の軸220、230の間の相対角度が周知および/または決定できるため、各軸に沿った速度測定値を比較することでさらに相対速度の方向を提供することができる。
【0021】
本開示のある例示的な実施形態において、導管210と内腔との間のある特定の軸220、230に沿った相対距離および/または速度の測定は、例えば蠕動、心臓機能、呼吸、またはその他動きの源から生じる動きを補正するために用いられてもよい。このような例示的な測定を用いて、例えば、シース211に対する導管210の走査パターンを変更して、導管と内腔100との間に均等な所定の走査パターンが生じるようにすることができる。医療用画像化の分野で周知の一部の例示的な方法および/または技術は、例えば外部モータを含む、近位カテーテル端部に位置し、導管とシースに取り付けたカテーテル内導管の走査パターン、シースに対して導管を回転および/または並進させるためのシース内に位置する内部モータ、およびシースに対して導管を回転および/または並進させるための小型の電気機械的、ガルバノメトリックおよび/または磁気機械的アクチュエータを制御するために用いることができる。あるいはまたはさらに、このような例示的なアクチュエータは、光学軸の向きを直接制御するために用いられてもよい。
【0022】
本開示のある例示的な実施形態によれば、導管210と内腔との間の距離を決定するために低コヒーレンス干渉法を適用することが可能である。このような例示的な測定は、コヒーレンスドメイン測距、周波数ドメイン測距および時間ドメイン測距を含むことができる。本開示のこのような例示的な実施形態において、導管210と内腔との間の相対速度を決定するために距離測定のさらなる処理を適用することができる。例えば、距離測定を時間的に監視することによって相対速度に比例することのある導関数を提供することができる。
【0023】
本開示のさらなる例示的な実施形態によれば、指定された軸220、230に沿った相対速度の大きさを提供することのできる測定を利用可能である。このような例示的な測定は、統合して相対距離を提供することができるが、これに限定されず、反射または拡散光に与えるスペックルパターンまたはドップラー周波数シフト等の時間的非相関の割合等を含むことができる。導管と内腔との間の相対的動きがある場合、例えば軸220、230に沿って反射された放射(例えば、光)は、相対速度、入射角度θおよび/または追跡波長λに依存することができる量によって、周波数シフトおよび/またはドップラーシフトすることができる。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、vおよびvは、それぞれ導管に対する内腔の相対的半径方向および長手方向の速度である。軸220,230を介して提供される例示的な放射が異なる角度で内腔に衝突し、および/または照明するため、このような例示的な光線および/または放射は、同一速度で異なるドップラーシフトを経験することができる。
【0026】
【数2】

【0027】
例えば、もし第1および第2の例示的な光線および/または放射が、内腔の表面に垂直な軸に対してそれぞれ正および負の角度で内腔の表面に衝突し、および/または照明する場合、第1および第2の例示的光線および/または放射は、長手方向および半径方向で内腔とカテーテルとの間の相対的動きを区別するために用いることができる。このような例示的な幾何形状を採用したある例示的な実施形態において、導管210に対する+z方向(例えば、内腔の軸に沿った)内腔の動きによって、第1の例示的光線および/または放射を周波数でシフトアップさせると同時に、第2の例示的な光線および/または放射を周波数でシフトダウンさせることができる。例えば、−z方向の内腔の動きは、第1の例示的光線および/または放射の周波数をシフトダウンさせると同時に、第2の例示的光線および/または放射の周波数をシフトアップさせてもよい。
【0028】
同時に、例えば、+r方向の内腔の動き(例えば、カテーテルに向かって内腔の)が光線および/または放射両方の周波数をシフトアップさせる一方、−r方向の動きは光線および/または放射両方の周波数をシフトダウンさせることができる。そのため、光線および/または放射は、第1の次元に沿った動きについて対向する向きのドップラーシフトと第2の次元に沿った動きについて同じ方向にドップラーシフトするため、2つの次元での相対的動きを解像することができる。当業者は、適切な角度で第3の光線および/または放射を追加することで、第3の次元の相対動きの解像(および/または第1および第2の次元の測定の精度の向上)を容易にすることができることを理解するであろう。
【0029】
当業者はさらに、内腔の表面に垂直な軸に沿って透過された光線は、相対的な長手方向の動きに対してドップラーシフトしにくいことを理解するであろう。2つの方向の動きは、このような幾何形状を採用したある例示的な実施形態に従って引き続き解像することができる。これは、例えば他方の光線および/または放射は、引き続き長手方向の動きについてドップラーシフトできるからである。そのため、半径方向の動きは、両光線および/または放射にドップラーシフトさせることができる一方、長手方向の動きは、一方の光線および/または放射にしかドップラーシフトさせることができない。この違いによって、2つの動きの方向を区別することが容易になる。
【0030】
数式(2)は、2本の軸220,230に沿った例示的な周波数シフト測定が、導管に対する内腔の2つの相対速度成分を解像するための基本セット(例えば、正規直交セットではなく)を形成することができることを示す。数式(2)のマトリクスを反転させることで、入射角度と測定されたドップラーシフトに関する相対速度を与えることができる。
【0031】
【数3】

【0032】
ある例示的な用途において、軸220、230のうち一方を内腔に対してほぼ垂直とし、この軸に沿った相対速度または距離測定が半径方向の相対的動きを表すように、光学軸220、230を構成または設けることが可能である。さらに、これらの間の相対角度240は、例えば約45度より大きいが、例えば約90度未満となるように光学軸220、230を構成または設けることが可能である。ドップラー周波数シフトの例示的な測定は、光学軸に沿って戻る光を、軸220、230に沿って導管から発せられる放射(例えば、光)とコヒーレントになることのできるローカルオシレータまたはヘテロダイン基準からの光と合成することにより容易にすることができる。
【0033】
図3は、図2に示す例示的カテーテルから戻される信号を処理するための本開示によるシステム/装置の例示的な実施形態を示す。例えば、ビームディレクタ340、例えば波長分割マルチプレクサを、戻り放射(例えば、光)を透過できる導管320の近位端に設けて、カプラー380を用いてローカルオシレータからの放射(例えば、光)と組み合わせることができる。各軸に沿って戻された放射(例えば、光)を、別途のレシーバ390によってさらに分離および/または検出することができる。第1および第2の軸220の一方に沿って戻された放射(例えば、光)と関連する検出された信号は、以下の例示的な近似に従うことができる。
【0034】
【数4】

【0035】
ここで、ILOはローカルオシレータの強度、fLOはローカルオシレータの周波数、Iは軸1に対応する戻された光の強度である。従って、ローカルオシレータの周波数の例示的知識および/または決定を用いて戻された光の周波数を決定し、数式(3)を用いて、対応する相対速度を決定することができる。
【0036】
例えば、ヘテロダイン基準光線は、例えば次の2つの目的を果たすことができる。i)信号の増幅、および/またはii)動きの方向を区別することを可能にする。例えば、fLO=0の場合、ほぼ等しいが反対方向の速度は、同じ周波数で振動する信号を生成する場合がある。fLO>f,fの場合、ほぼ等しいが反対方向の速度は、検出された信号をローカルオシレータの周波数から反対方向にシフトさせる場合があり、このあいまいさを取り除く。
【0037】
検出された信号の信号対雑音比(SNR)は、周波数測定の精度を限定することがあり、これが速度推定の精度を限定する。さらに、実際の入射角度と想定される入射角度との相違は、速度推定の誤差を生じる場合がある。しかしながら、追跡光線および/または放射は、狭い範囲の角度にわたってファセットを介して屈折可能であるため、屈折された光線および/または放射のドップラーシフトの周波数は、公称ドップラー周波数fを中心とした狭い範囲に及ぶ場合がある。入射角度が変化すると、角拡散も変化する場合があり、例えば、fでのピークが広くなったり狭くなったりする可能性がある。同様に、反射された光線および/または放射の角拡散は、fでのピークの形状に影響を与える場合がある。
【0038】
あるいは、またはさらに、本開示のさらなる例示的な実施形態によれば、プローブ先端から片持ちされるかシースに吊り下げられた別の光学素子を用いて、屈折された光線および/または放射を画像化中のスポットに向けて反射させ、平行にするか焦点を合わせることができる。光線および/または放射を平行にすることで、ドップラーシフトされたピークを鋭角にすることができ、焦点を合わせた光線および/または放射の角拡散が屈折された光線および/または放射のみの角拡散より小さい場合、焦点が合う可能性がある。
【0039】
半剛性内腔において、両追跡光線および/または放射を同一スポットに投影することでも、光線間角度(例えば、θ−θ)が大きいままである限り、速度推定の精度を向上させることができる。半剛性血管において、例えば血管の異なる部分は、異なる速度で動くことがあり、例えば、異なるスポットを照明する光線および/または放射のドップラーシフトを測定することによる速度推定の質を下げる可能性がある。光線間角度を大きく維持しながら追跡光線/放射スポットを互いに近づけることにより、このような問題を減少または解消しながら、角度不整合に対する耐性を保つことができる。
【0040】
本開示のさらなる例示的な実施形態において、追加的な光学軸(>2)は、用いられ、各軸に対応する反射または拡散光は、上述の例示的な方法および手順を用いて相対距離および/または速度の算出を続けることができる。この追加情報は、雑音に対する測定感度を下げたり、相対距離、速度または速度の方向を決定できる精度を向上させることができる。
【0041】
本開示によるさらなる例示的な実施形態は、各光学軸の一意の特定を容易にする技術、装置、およびコンピュータアクセス可能な媒体を対象とすることができる。このような例示的技術、装置およびコンピュータアクセス可能な媒体は、例えば波長分割多重化、時間分割多重化および周波数分割多重化を含むことができる。例えば、図3に戻り、この図は、内腔に対するカテーテル導管320の相対距離および/または速度を決定するための波長分割多重化器具310を示す。例えば、アクチュエータ330は、カテーテルの近位端に位置されることができ、遠位導管端部の回転および/または長手位置を制御する。
【0042】
波長分割マルチプレクサ340は、器具310から、コンソール35とアクチュエータ330とカテーテル導管320とを備えることができる画像化システムまで放射(例えば、光)を送るために用いることができる。例示的な器具310は、複数の独立した光源350および360を含むことができ、これらを組み合わせて、波長分割マルチプレクサ370を用いて単一の光学経路とすることができる。放射(例えば、光)源は、放出に組み入れられたその波長または周波数またはその振幅変調パターンによって一意に特定することができる。単一の光学経路は、その後、2つの経路に分割し、一方の経路は、画像システムと通信することが可能であり、他方の経路は、基準経路を表す。
【0043】
モジュレータ395の利用は、音響光学、電気光学または磁気光学等であるが、これに限定されず、所望の相対速度および/または相対距離パラメータの検出感度を向上させることができる。例えば、内腔から戻される放射/光を含む各経路からの放射(例えば、光)は、カプラー380を用いて再度組み合わせ、レシーバ390に向けることができる。レシーバ90は、光学信号をそれぞれの独立した光源に対応する経路に分離するように構成し、例えば、内腔に対するカテーテル導管の相対距離および/または動きに対応するドップラー周波数シフトまたは遅延を測定するように構成することができる。モジュレータまたは周波数シフター395を基準経路に組み込むことは、例えば、システムの雑音を解消するために有益である。
【0044】
図4は、カテーテル導管と対象(例えば、内腔)との間の相対的動きを追跡するための図3に示す例示的なシステム/装置によって得られるデータのプロットを示す1組のグラフである。例えば、トレース410は、図3の例示的な実施形態によって得られたデータを表し、時間的に変化するドップラー周波数を表示することができ、これは導管と試料との間の実際の相対速度に比例してもよい。トレース420は、実際の相対的動きに対応する理論的ドップラーシフトを示す。
【0045】
本開示の例示的な実施形態と、超音波画像化や治療および光学的画像化や治療等の技術との組み合わせが容易に達成されることは、本開示の検討後、当業者によって理解されよう。例えば、例示的な実施形態において、相対距離および/または速度の決定に用いることのできる軸220、230は、画像化または治療用軸に対して空間的に相互に位置合わせした向きで設けることができる。さらに、軸220、230の一方は、画像化または治療に用いる軸の一方とすることができる。この例では、軸220は画像化または治療用軸と相対距離および/または速度を決定するための軸の両方を表すことができる。超音波および光学的画像化技術について、この例示的な組み合わせを達成することができる。
【0046】
本開示のさらなる例示的な実施形態は、それに沿って相対距離または速度を決定しうる軸220、230の相対向きを制御するようにさらに構成することができる。例えば、図5に図示するように、光学的画像化と共に相対距離および/または動きを登録するように構成されたある例示的な実施形態に示すように、光学トランス510は、2本以上の光学軸が所定の方向を向くように構成されることができる。例示的なトランス510は、反射、屈折および/または回折面を含むことができる。例えば、このような1つの例示的な2色反射面520は、特定の波長の放射(例えば、光)を反射し、異なる波長を有する放射(例えば、光)を透過するように構成することができる。
【0047】
2色フィルタは、当業者に周知のように、屈折係数の断絶部分における誘電体コーティングまたはファセットを用いて構築することができる。1つの例示的な構成は、所定値より低い波長を有する放射(例えば、光)を反射し、より長い波長を有する放射(例えば、光)を透過する別の例示的な2色面520を含むことができる。この例示的な構成は、2本の異なる軸530、540を生成するために利用することができる。さらに、光学トランス510は、ファセット550を介して透過される放射(例えば、光)が、前向きに傾斜する軸540に沿うように、2色面に対して遠位とすることができる屈折ファセット550を含んで構成することができる。あるいは、またはさらに、ファセット550に続けて、軸540をあらゆる方向に向けられるように向けた、例えば鏡のような反射面を設けることができる。光学トランス510は、さらに1以上の軸に沿って所定の焦点面へ光を集めるように構成することができる。この例示的な実施形態において、軸530は、1以上の光学ビームを含むことができる。例えば、軸530は、本開示の例示的な実施形態により相対距離および/または速度を決定するために用いる光と、生物学的内腔の画像化または治療に用いる光とを含むことができる。
【0048】
本開示のさらなる例示的な実施形態において、本開示の例示的な技術、装置および方法は、光以外のエネルギー伝搬形式を用いて実施することができる。このような例示的な実施形態は、例えば超音波エネルギーを利用して、トランスと内腔との間の相対距離または相対速度を決定することができる。図6は、本発明に係る処理構成部によって実行されることができ、かつ例えばコンピュータアクセス可能な媒体(ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、その他メモリーや保存装置のメモリースティック等の記憶装置またはその1つ以上の組み合わせ等)に記憶するまたは設けたソフトウェアを用いて記憶することができる構造の少なくとも1つの特徴を決定する方法の例示的な実施形態のフロー図である。
【0049】
特に、図6に示すように、特定の構成部を用いて少なくとも1つの第1の透過された放射は、第1の軸に沿って提供され、少なくとも1つの第2の透過された放射は、第2の軸に沿って提供されることができる(手順510)。例えば、第1および第2の透過された放射は、構造に衝突し、それぞれ第1および第2の戻り放射を生成することができ、第1および第2の軸は、互いに対して0より大きい所定の角度で設けることができる。さらに、手順520に記載するように、第1および第2の戻り放射に関連づけられたデータを受信することができる。さらに、第1および第2の軸に沿った構造と特定の構成部との間の少なくとも1つの相対速度を決定することができる(手順530)。
【0050】
前記は単に本発明の原理の図解にすぎない。記載された実施形態の各種修正および変更は、本願明細書の教示の点から当業者にとって明白となろう。実際、本発明の例示的な実施形態に係る構成部、システムおよび方法を、OCTシステム、OFDIシステム、SD−OCTシステム、またはその他画像化システム、および例えば、2004年9月8日に出願された国際特許出願PCT/US2004/029148号、2005年11月2日に出願された米国特許出願第11/266,779号、2004年7月9日に出願された米国特許出願第10/501,276号に記載されたものと共に用いておよび/または実施することができ、その開示は参照によりその全体を本願明細書に援用する。そのため、当業者は、本願明細書に明示的に示したり記載してはいないが、本発明の原理を実施する多数のシステム、構成部および方法を考案することができ、そのため、それらは本発明の趣旨および範囲内であることが理解されよう。さらに、先行技術知識が参照により上記本願明細書に明示的に援用しない範囲において、その全体を本願明細書に明示的に援用する。本願明細書で上記参照したすべての出版物は参照によりその全体を本願明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の少なくとも1つの特徴を決定する装置であって、
第1の軸に沿う少なくとも1つの第1の透過された放射と、第2の軸に沿う少なくとも1つの第2の透過された放射とを提供するように構築された少なくとも1つの第1の構成部であって、前記第1および第2の透過された放射は、前記構造に衝突し、第1および第2の戻り放射それぞれを生成し、前記第1および第2の軸は、互いに対して0より大きい所定の角度で設けられる、少なくとも1つの第1の構成部と、
前記第1および第2の戻り放射に関連付けられたデータを受信するように構成され、かつ前記第1および第2の軸に沿う前記構造と前記少なくとも1つの構成部との間の少なくとも1つの相対速度を決定するように構成される、少なくとも1つの第2の構成部と、を備える装置。
【請求項2】
前記第1および第2の透過された放射は、電磁放射である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1および第2の透過された放射は、超音波放射である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1および第2の透過された放射は、異なる波長を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記データは、前記第1および第2の透過された放射と前記第1および第2の戻り放射との間のドップラーシフトに対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記データは、前記第1および第2の軸に沿う前記装置と前記構造との間の距離の変化の時間率に対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の構成部は、長手軸に沿って延び、前記第1の軸に沿う第1の速度および前記第2の軸に沿う第2の速度は、前記長手軸に少なくともほぼ沿う前記装置と前記構造との間のさらなる相対速度を決定するために用いられる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置の少なくとも1つの位置または回転は、前記さらなる相対速度に基づいて決定される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの相対速度の関数として、前記構造の少なくとも1つの部位の少なくとも1つの画像を生成するように構成される少なくとも1つの第3の構成部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第3の構成部は、光学周波数ドメイン干渉法手順を用いて前記少なくとも1つの画像を生成する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第3の構成部は、光学コヒーレンス干渉法手順を用いて前記少なくとも1つの画像を生成する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第3の構成部は、超音波手順を用いて前記少なくとも1つの画像を生成する、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第3の構成部の少なくとも一部分は、カテーテル内に設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の構成部は、前記第1および第2の透過された放射の少なくとも一方を少なくとも部分的に反射し、前記第1および第2の透過された放射それぞれの波長に基づいて前記第1および第2の透過された放射の他方を通過させるように構築された断面を有する部位を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項15】
前記反射した放射および前記通過した放射は、所定の角度で設けられる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第1の構成部は、前記第1の透過された放射または前記第2の透過された放射の少なくともいずれか一方を、コリメートまたは合焦の少なくともいずれか一方を行うように構築される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記第1および第2の軸は、前記構造の表面に垂直な軸に対して正および負の角度でそれぞれ前記構造に衝突する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2の構成部は、前記第1および第2の戻り放射に基づいて、2つの次元での前記構造と前記少なくとも1つの第1の構成部との間の相対動きを区別するように構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
構造の少なくとも1つの特徴を決定する方法であって、
特定の構成部を用いて第1の軸に沿う少なくとも1つの第1の透過された放射と、第2の軸に沿う少なくとも1つの第2の透過された放射とを提供するステップであって、前記第1および第2の透過された放射は、前記構造に衝突し、第1および第2の戻り放射それぞれを生成し、前記第1および第2の軸は、互いに対して0より大きい所定の角度で設けられる、ステップと、
前記第1および第2の戻り放射に関連付けられたデータを受信するステップと、
前記第1および第2の軸に沿う前記構造と前記特定の構成部との間の少なくとも1つの相対速度を決定するステップと、を備える方法。
【請求項20】
構造の少なくとも1つの特徴を決定するソフトウェアが設けられるコンピュータアクセス可能な媒体であって、コンピュータ処理構成部が前記ソフトウェアを実行すると、前記コンピュータ処理構成部は、
前記構造から提供される第1および第2の戻り放射に関連付けられたデータを受信するステップであって、前記第1および第2の戻り放射は、前記構造に衝突する第3および第4の透過された放射それぞれに関連付けられ、特定の構成部を用いて、前記第3の透過された放射は、第1の軸に沿って提供され、前記第4の透過された放射は、第2の軸に沿って提供され、前記第3および第4の透過された放射は、前記構造に衝突し、前記第1および第2の戻り放射それぞれを生成し、前記第1および第2の軸は、互いに対して0より大きい所定の角度で設けられる、ステップと、
前記第1および第2の軸に沿う前記構造と前記特定の構成部との間の少なくとも1つの相対速度を決定するステップと、を備える手順を行うように構成される、コンピュータアクセス可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−523862(P2011−523862A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508674(P2011−508674)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043178
【国際公開番号】WO2009/137701
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【出願人】(510283605)
【Fターム(参考)】