説明

3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体、その製造方法及びその3次元粒子結晶体相の用途

【課題】微細球状粒子を含有する塗工グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着下に3次元粒子結晶体相を形成させる有機ポリマー球状粒子の水性粒子分散体及びそれを塗工部材に用いて、構造色視感性を含む各種の機能を発揮させる3次元粒子結晶体連続相を提供することである。
【解決手段】水性粒子分散体中に、質量基準で表して25%以上で、45%を超えない分散濃度で含有する有機ポリマー球状粒子を形成するTgが50℃以上の疎水性ポリマー100質量部当たり、この微細球状粒子の有機ポリマー球状粒子の表相近傍部に、Tgが40℃以下の親水性ポリマーが、5〜18質量部の範囲で含侵偏在し、下地基材に塗工させた水性グリーンシート相を乾燥脱水・熱融着下に微細球状粒子相互間をXYZの3軸方向に融着させて、可視光照射下に構造色を視感させる有機ポリマー球状粒子の3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体に関し、より詳細には、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相が、乾燥脱水・熱融着下に、クラック・剥離などを殆んど発生させずに、単分散微細球状粒子の3次元粒子結晶体連続相を形成させる有機ポリマー球状粒子の水性粒子分散体に関する。
【0002】
また、本発明は、このような特徴を発揮させる水性粒子分散体をインキ及び塗料に用いて、印刷相又は筆記相又は転写相等として下地基材上に形成される3次元粒子結晶体相が、可視光照射下に構造色を発色させ、その構造色相は艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させる3次元粒子結晶体相型の水性塗工材に関する。
【0003】
また、本発明は、このように下地基材上に形成させた有機ポリマー球状粒子の3次元粒子結晶体相が、例えば、その微細球状粒子自体が有する導電体性、半導体性、絶縁体性、強誘電体性、有機EL発光体性及び有機非線形光電子体性等の機能特性を反映させる機能性3次元粒子結晶薄膜材にも関する。
【背景技術】
【0004】
従来から、単分散球状微細粒子を分散質として分散する固−液分散型サスペンジョンを用いて平坦な下地部材上に流し込み、又は塗布させて、乾燥下に分散質の懸濁粒子を3次元方向に規則配列(又は整合)させて、分散質球状微細粒子を、縦・横方向に規則的に配列させた粒子状積層体が種々提案されている。このように球状微細粒子を規則的に配列させることで、その粒子状積層体は、その構成粒子素材が有する諸特性等に係わって発揮される各種の表面特性が期待される。特にその構成粒子サイズがサブミクロン、ナノサイズのような極微細領域になれば、それだけ超微細粒子の粒子表面に係わって発揮される表面特性もより明確になり、また、新しい表面機能を発揮させる機能素材としても期待される。
【0005】
そこで、[特許文献1]には、干渉による着色光が明瞭に視感させるために、黒色或いは暗色である合成樹脂等の撥液性の下地層表面上に、光透過性の単分散の固体微粒子を凝集配列させた規則的周期構造物なる付着物が、光干渉発色として明瞭な単色光を呈することが記載されている。この付着物を構成する無着色の固体微粒子は単分散粒子であって、このような固体微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ・アルミナ、チタニア・セレン等の無機酸化物微粒子や、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂等の有機ポリマー微粒子を挙げることができ、その数平均粒子径が100nm〜1μmの範囲にあると記載されている。
【0006】
また、[特許文献2]には、乳化重合法等で調製される200〜700nmの球状単分散ポリマー粒子が分散する固−液サスペンジョンを、透析処理で電解質を実質的に除去させて分散質粒子に電気二重層を形成させてなるサスペンジョンを静置下に、乾燥(60℃温度下)させてなる有機高分子の球状単分散粒子からなる多層積層秩序配列構造体を形成させ、次いで、配列する相接触する粒子間を化学的に固定化させる多層積層秩序配列構造体の製造方法が記載されている。
【0007】
また、[特許文献3]には、表面にヒドロキシル基、シラノール基、カルボキシル基等の官能基を有する物質を付着させたAlN、InSb、ZnS等の微粒子が分散するゼータ電位(絶対値)が10mV以上、伝導度が300[μS/cm]以下で、その分散濃度が5wt%程度の希薄分散溶液をガラス板上に滴下・乾燥させてコロイド結晶化させたコロイド結晶体(微粒子が格子状に配列した3次元周期構造体)が記載されている。また、その希薄分散溶液中にメタクリル酸メチル、酢酸ビニル等の重合性ビニル系モノマー等を含有させ、コロイド結晶化させた後、重合させてコロイド結晶体を固定させてなる固定化コロイド結晶体が記載されている。
【0008】
また、[特許文献4]には、粒子の大きさが150〜450nmの範囲にある単分散球体粒子が、分散濃度20〜55重量%水性懸濁液中に、大きさが約10〜50nmの金属酸化物又はポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)等の有機ポリマー等のコロイド種を、この単分散球体粒子に対して、5〜25重量%の範囲で含有させた懸濁液が記載されている。この懸濁液を平面基板上に塗布させたウエット状の結晶層を乾燥させて、基板上に薄片状に得られる単分散球体粒子の薄層薄片状結晶からなる乳白色効果を有する粒子(規則的に配列した三次元構造体としての着色顔料)が記載されている。
【0009】
また、[特許文献5]には、コア粒径が50nm〜10μmのコア−シェル型微粒子が分散する水性微細粒子分散体を乾燥脱水させて形成させる三次元周期構造を有するコロイド結晶及びその製造方法が記載されている。また、そのシェル層は、コア粒径が50nm〜10μmのポリマーコア粒子の水性分散体系に溶媒和するアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等のアクリルアミド系モノマーのポリマー架橋体を、例えば、乳化重合法で形成させている。また、コア−シェル層型微粒子の水性分散体を乾燥・濃縮させると溶媒和されたシェル層によって、微粒子間の過度な凝集が防止されて細密充填構造を取りやすく、比較的容易に3次元周期構造が形成される。また、シェル層が溶媒和されていることにより、その微粒子水性分散体を比較的高濃度に調製でき、コロイド結晶形成に好適に用いられるとも記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−239661号公報
【特許文献2】特開平04−0213334号公報
【特許文献3】特開2004−226891号公報
【特許文献4】特表2004−514558号公報
【特許文献5】特開2004−109178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上から、上記する[特許文献1]〜[特許文献5]に記載されているようにコロイド結晶体(又は単分散微粒子の3次元規則配列構造体)を形成させる単分散球状微細粒子を5〜55%の希薄分散濃度から高分散濃度範囲に分散させた水性懸濁液が種々提案されている。従来から、このような懸濁液を平坦な基板上に塗布形成させたウエット状の粒子懸濁集合体相(以後、本発明においては水性グリーンシート相と記す。)を乾燥脱水下に凝集させて、単分散微細粒子が3次元粒子整合体に形成されることがよく知られている。
【0012】
しかしながら、従来から解決し難い技術的な課題として、乾燥脱水下に、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相中に、含有する単分散球状粒子を、乾燥凝集させてなる3次元粒子整合体相(又は薄膜状粒子結晶体相)には、従来から周知の事実としてクラックや、剥離等を発生させて、その塗工相の2次元方向に一様な連続相を形成させ難い傾向にある。
【0013】
すなわち、既に上記する[特許文献3]からも理解される如く、この3次元粒子整合体相を固定化させるために、予め固定化バインダー樹脂成分が含有されている。しかるに、基材上に得られる3次元粒子整合体相には、亀裂が無数に発生し又薄片状に剥離を発生させて、単分散球体粒子の集合体が、2次元方向に一様な3次元の規則配列構造体の連続相として形成固定され難いのが実状である。
【0014】
加えて、このようにそれ相応の厚みを有する水性グリーンシート相は、通常、乾燥脱水が進捗されるに伴い、蒸発する分散媒水の毛細管力でサスペンド粒子を凝集集合させて3次元粒子整合体を形成させる。その結果、微細粒子間に介在する分散媒相(又は予めバインダー樹脂分を含有する分散媒相においても同様である。)は、乾燥収縮して一様な表面を維持させ難く、その収縮相当分が亀裂(又はクラック)として残留するのが一般的である。
【0015】
更には、従来からこのようなグリーンシート相中にバインダー樹脂分を介在させると、乾燥脱水の進捗と共に形成される3次元粒子整合体相の規則配列性、すなわち、3次元粒子結晶性を著しく阻害させる。その結果、3次元粒子結晶体相に基づいて、可視光照射下に発色する構造色相の発色性を著しく低下させる傾向にあった。
【0016】
また、下地基材上に設ける塗工グリーンシート相面が、2次元方向への塗工占有面を一層拡張させるに伴い、一層、亀裂を多発させて連続相の形成を著しく困難にさせるのが一般的であった。従って、従来から、3次元粒子整合体相に、亀裂(又はクラック)、剥離を発生させずに2次元方向に3次元粒子整合体の連続相を、3次元粒子結晶体相として安定に形成・固定させるには、未だ十分満足させるに至っていないのが実状である。
【0017】
そこで、本発明の目的は、非屈曲性又は屈曲性又は可撓性の各種の下地基材上に、単分散の微細球状粒子を高濃度に分散含有させ、しかも、流延性に優れる水性粒子分散体を流し込み、又は塗工させてなす水性グリーンシート相を、乾燥脱水下に、全く亀裂(又はクラック)、剥離などの発生が無く、しかも、下地基材上に形成される3次元粒子結晶体相が2次元方向に一様な連続相として自発固定されることを特徴とする3次元粒子結晶体相の連続相形成用の流延性・塗工性に優れる水性粒子分散体を提供することである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、このような特徴を発揮させる3次元粒子結晶体相を形成・固定させる流延性に優れる水性粒子分散体を、水性インキ又は水性塗料に用いて、印刷又は筆記又は転写させてなる単分散球状粒子からなる3次元粒子結晶体相の印刷・筆記・転写の塗工相が、
(1)全く亀裂(又はクラック)、剥離発生の無い連続相として自発固定され、
(2)しかも、有彩色染顔料を含有させることなく、その単分散球状粒子の特定する粒子径に反映されて、可視光照射下に有彩光色を発色させ、
(3)併せて、可視光照射下に艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させ、
る塗工相であることを特徴とする3次元粒子結晶体相型の水性塗工材を提供することである。
【0019】
また、本発明の更なる目的は、このように下地基材上に形成させた有機ポリマー微細球状粒子の3次元粒子結晶体相が、例えば、その微細球状粒子自体が、導電体性、半導体性、絶縁体性、強誘電体性、有機EL発光体性、有機非線形光電子性等の特性機能を有する場合、これら何れかの機能特性を発揮させる機能性3次元粒子結晶薄膜材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、平均粒子径が190nmの、黒色無彩色のMMA系単分散球状粒子を用いて、従来に比べて高濃度(体積基準で表して40%)に分散する水性サスペンジョンを調製した。次いで、この水性分散体系の電気伝導度を450[μS/cm]の流延性水性粒子分散体に調製した後、PETフィルム上に、この分散体液を塗工させてグリーンシート相を形成させ、約100℃の温度雰囲気下に靜置曝露させたとこら、
(1)その塗工グリーンシート相は、可視光照射下に鮮やかな青色の有彩色を発色させる
構造色体相であって、
(2)その構造色体相には、ほとんど亀裂や剥離発生がなく、
(3)更には、その塗布相を指先で擦っても全く粉落ち感がなく、すなわち、著しく懸垂性に優れ、
(4)しかも、2次元方向に一様な連続相として安定に固定されていることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0021】
本発明によれば、下地基材上に塗布・形成させた水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させ、グリーンシート相中に含有する有機ポリマーの単分散微細球状粒子同士を、少なくともXYZの3軸方向に互いに融着(又は固着)させて、3次元方向に規則的に配列・固着されてなる3次元粒子結晶体相を形成させる。
【0022】
しかも、下地基材上の2次元方向に、ほとんど亀裂、剥離を発生させることがなく、更には、その塗工相は全く粉落ち感のない「懸垂性」に優れる3次元粒子結晶体の連続相として固定されることを特徴とする3次元粒子結晶体相形成用の流延・塗工性に優れる水性粒子分散体を提供する。
【0023】
すなわち、本発明による3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体は、下記(1)及び(2)に記載する如く、
(1)この水性微細粒子分散体中には、質量基準で表して25%以上で、45%を超えない分散濃度で、単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)が、上記固着微細球状粒子の前駆体粒子として、高濃度で分散している。
(2)この前駆体粒子は、それを形成する樹脂成分であるTg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)の100質量部当たり、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)が、この「前駆体粒子の表相近傍部」に、5〜18質量部の範囲で「含侵偏在」している。
ことを特徴とする3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体である。
【0024】
また、本発明によれば、このような特徴を有する3次元粒子結晶体相形成用の流延性・塗工性に優れる水性粒子分散体は、下記(1a)〜(3a)に記載する如くの構成要件が活かされて、例えば、構造色水性インキ、構造色水性塗料として、非屈曲性又は屈曲性又は可撓性の各種下地基材上に塗工させて(本発明においては、印刷相又筆記相又は転写相等を含めて3次元粒子結晶体相の連続相からなる塗工を意味する。)、全く有彩色染顔料を含有させることなく、可視光照射下に有彩構造色を発色させ、且つ可視光照射下に「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」を視感させることを特徴とする3次元粒子結晶体相型の水性塗工材を提供する。
【0025】
すなわち、本発明による3次元粒子結晶体相型の水性塗工材は、下記(1a)〜(3a)に記載する如く、
(1a)水性単分散球状粒子が高濃度で分散する流延性粒子懸濁液を用いて、印刷又は筆記又は転写させてなるウエット状のグリーンシート相である塗工相は、Tg+50℃以上〜親水性ポリマー(P)の融点未満の温度雰囲気下に乾燥脱水・熱融着されて有機ポリマー球状粒子(A)の3次元粒子結晶体の連続相が形成される。
(2a)その連続相は、クラック、剥離発生がほとんどなく、更には懸垂性に優れる一様な連続相として安定に自発固定される。
(3a)また、その塗工グリーンシート相中に懸濁集合する黒色系無彩色の単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)の粒度特性として、体積基準で表す平均粒子径を130〜310nm範囲に特定させることで、垂直視線方向に有彩構造色を発色させ、且つ可視光照射下に「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」を視感させる3次元粒子結晶体の連続相として自発固定される。
【0026】
更に、本発明によれば、このような特徴を発揮させる3次元粒子結晶体相の連続相形成固定用の流延性に優れる水性粒子分散体は、下記(1b)〜(3b)に記載する如くの構成要件が活かされて、可視光照射下に構造色を発色させないが、同じく3次元粒子結晶体相に反映されてなる「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」を視感させることを特徴とする3次元粒子結晶体相型の水性塗工材を提供する。
【0027】
すなわち、本発明による3次元粒子結晶体相型の水性塗工材は、下記(1b)〜(3b)に記載する如く、
(1b)水性サスペンジョン型の単分散球状粒子が高濃度で分散する流延性粒子懸濁液を用いて、印刷又は筆記又は転写させてなるウエット状の塗工グリーンシート相は、Tg+50℃以上〜親水性ポリマー(P)の融点以下の温度雰囲気下に乾燥脱水・熱融着させて有機ポリマー球状粒子(A)の3次元粒子結晶体相の連続相が形成される。
(2b)その連続相は、2次元方向にクラック、剥離発生をほとんど起こすことなく、懸垂性に優れる一様な連続相として安定に自発固定される。
(3b)その塗工相中に懸濁集合する単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)が、可視光照射下に白色乱反射色を視感させる透明無着色球状粒子で、その平均粒子径が310nmを超えて、800nmを超えない範囲に特定させることで、有彩色の構造色を発色させないが、3次元粒子結晶体相に基づく「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」が視感される。
【0028】
また、本発明によれば、このような特徴を発揮させて3次元粒子結晶体相の連続相を形成させる流延性に優れる水性粒子分散体を用いて、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させて得られる薄膜状の固着微細球状粒子の3次元粒子結晶体相は、その固着微細球状粒子の有機ポリマー球状粒子(A)自体が、下記に挙げるような機能性粒子である場合には、それらの機能特性が反映されてなることを特徴とする能機能性3次元粒子結晶薄膜材を提供する。
その固着微細球状粒子が有する機能特性が、例えば、導電体性、半導体性、絶縁体性、強誘電体性、有機EL発光体性、有機非線形光電子性の群から選ばれる何れか1種の機能特性を有する機能性有機ポリマー粒子(A)である。
【0029】
また、本発明によれば、このような水性粒子分散体を下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させ、グリーンシート相中に含有する有機ポリマー球状粒子(A)を、少なくともXYZの3軸方向に相互に固着させた微細球状粒子からなる3次元粒子結晶体相を形成させることを特徴とする有機ポリマー球状粒子(A)からなる3次元粒子結晶体相の製造方法を提供する。
【0030】
すなわち、本発明による3次元粒子結晶体相の製造方法は、下記(1C−工程)〜(5C−工程)に記載する如く、
(1C−工程);所定量の水相に、重合ポリマー化後のTg=50℃以上である疎水性モノマー(m)と、その100質量部当たり、同様に重合ポリマー化後のTg=40℃以下である親水性モノマー(m)の5〜18質量部と、重合開始剤及び乳化剤とを加えて乳化懸濁させる。
(2C−工程);次いで、予め調製した有機ポリマーをシード粒子とする水性シード粒子分散体の所定量を注加させた後、温度65〜80℃に昇温させながらシード乳化重合させる。
(3C−工程);得られる有機ポリマー球状粒子(A)は、上記する少なくともXYZの3軸方向に互いに融着(又は固着)される微細球状粒子の前駆体粒子である。その形成樹脂成分のTg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)の100質量部当たり、その前駆体粒子の表相近傍部には、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)を、5〜18質量部の範囲で含侵偏在させる。
(4C−工程);次いで、例えば、クロスフロー洗浄装置を用いて洗浄・濃縮させて、重量基準で表す分散濃度25〜45%で、且つその水性粒子分散体系の電気伝導度を3500[μS/cm]以下である有機ポリマー微細球状粒子の水性粒子分散体(AS)を調製させる。
(5C−工程);次いで、この水性粒子分散体(AS)を用いて、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、Tg+50℃以上〜親水性ポリマー(P)の融点未満の温度下に乾燥脱水・熱融着させて、有機ポリマー球状粒子(A)の固着微細球状粒子からなる3次元粒子結晶体相を形成させる。
【発明の効果】
【0031】
以上から、本発明が提供する有機ポリマー球状粒子(A)の3次元粒子結晶体相を形成させる水性粒子分散体の特徴は、
(1c)固着微細球状粒子の前駆体粒子である単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)が、質量基準で表して25〜45%の高分散濃度で含有している。
(2c)その前駆体粒子を形成する樹脂成分は、Tg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)で、その樹脂成分の100質量部当たり、この「前駆体粒子の表相近傍部」には、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)が、5〜18質量部の範囲で「含侵偏在」している有機ポリマー球状粒子(A)の水性粒子分散体である。
(3c)このような特徴からなる水性粒子分散体を、下地基材上に塗布させてなる水性グリーンシート相は、Tg+50℃以上〜親水性ポリマーの融点未満の所定温度下に、乾燥脱水・熱融着させることで、3次元的に規則配列する前駆体粒子の表相近傍部に、含侵偏在するTg=40℃以下の親水性ポリマー(P)を介して、少なくともXYZの3軸方向に相互に固着されて、3次元粒子結晶体相を効果的に形成させる。
【0032】
また、本発明による3次元粒子結晶体相は、2次元方向にクラック、剥離発生がほとんどなく、3次元粒子結晶体相の連続相は、それを形成する単分散球状粒子の粒子特性に係わって、可視光線波長領域380〜780nmの自然光又は白色光が照射されて、以下の如の可視光反射特性を発揮させる。
(1d)有機ポリマー球状粒子(A)の粒子特性が、黒色系無彩色球状粒子で、体積基準で表す平均粒子径が130〜310nmの範囲にあって、この3次元粒子粒子結晶体相の面心立方格子(111)結晶面に対してブラッグの反射式を満足させる垂直反射の「一次光色」を発色させる。
(2d)更に、この「一次光色」は、特定粒子径130〜310nmに係わって、ブラッグの反射式における角度依存を満足させてスペクトル分光発色として、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)等の鮮明な単色系有彩色のスペクトル分光発色の構造色を発色させ、しかも、この連続相は、この可視光照射下に「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」を視感させる。
(3d)また、この有機ポリマー球状粒子(A)の粒子特性が、可視光照射下に白色乱反射色を視感させる透明無着色球状粒子で、その特定粒子径が310〜800nmに係わって、有彩光色の構造色を視感させないが、この連続相は、この可視光照射下に「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」を視感させる。
【0033】
また、上記する如くの特徴ある水性粒子分散体は、流延性粒子懸濁液として、水性インキ部材又は水性塗料部材として、各種の非屈曲性又は屈曲性又は可撓性の下地基材上に塗工グリーンシート相の構造色相からなる印刷又は筆記又は転写像を視感させることができる。
【0034】
また、更には、本発明による有機ポリマー球状粒子(A)の3次元粒子結晶体相は、この有機ポリマー球状粒子(A)の微細球状粒子の薄膜状3次元粒子結晶体相として、この有機ポリマー球状粒子(A)が有する導電体性、半導体性、絶縁体性、強誘電体性、有機EL発光体性、非線形光電子性の群から選ばれる何れかの機能特性を有する有機ポリマー球状粒子からなる機能性3次元粒子結晶薄膜材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明による3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体の実施形態について更に説明する。
【0036】
<本発明に用いる有機ポリマー球状粒子(A)の水性粒子分散体>
(1e)本発明に用いられる体積基準で表す平均粒子径が、少なくとも130nm以上で、数μmを超えない単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)は、本発明者の従来からの知見として、好ましくは、乾燥凝集下に3次元的に規則配列させる観点から、固−液分散体としての電気伝導度が3500[μS/cm]以下の水性粒子分散体として用いられる。
(2e)また、その分散濃度は、好ましくは、体積基準で表して25%以上で、45%を超えない高濃度分散体として適宜好適に用いられる。
(3e)また、粘稠性高濃度懸濁液としての流動性又は流延性として、水性粒子分散体としての分散安定性や取り扱いハンドリング性を低下させない観点から、好ましくは、その分散濃度は、30%以上で、40%以下の高濃度範囲で適宜好適に用いることができる。
(4e)この上限値45%を超える分散濃度では水性サスペンジョン中の分散質粒子は、ランダムに部分凝集する粒子群を生じさせ易くなって、本発明が求める3次元粒子結晶体相を形成させる粒子の規則的な整合を著しく阻害させる傾向にあって好ましくない。
(5e)また、その下限値は、その水性グリーンシート中に、例えば、乾燥下に粒子整合体を形成させる速度や、また、その水性粒子分散体の取り扱いハンドリング性から、その下限値は25%以上であることが適宜好適である。
【0037】
<本発明による水性粒子分散体の電気伝導度>
また、このような高濃度分散体である水性粒子分散体系の電気伝導度を3500[μS/cm]以下であることに係わって、このような水性サスペンジョン粒子(又は水性懸濁粒子)を調製する製造方法にもよるが、分散媒溶液中に含有する有機及び/又は無機の酸・塩基官能基等に係わるサスペンジョン中の電解質濃度(体積濃度で表して)を電気伝導度で表して本発明においては、水性懸濁粒子の3次元粒子結晶体相を形成させる観点から、3500[μS/cm]以下であって、好ましくは2500[μS/cm]以下で、更に好ましくは1500[μS/cm]以下で、200[μS/cm]以上の範囲に適宜好適に調整することができる。
【0038】
<水性粒子分散体の「3次元粒子結晶性」とその「水性懸濁粒子状態図」>
更には、本発明においては、このような流延性の水性粒子分散体に係わって、水性媒体中に懸濁分散する単分散球状粒子の状態を、「ランダム分散粒子」状態領域と、「3次元規則配列粒子」状態領域と、「ランダム凝集粒子」状態領域の何れかの状態を形成させるとして、このような状態領域にある「水性懸濁粒子」の「3次元粒子整合性」を明確に関連付けすることができる。本発明において、添付[図1]に図示するように、本発明による水性サスペンジョン型流延性粒子分散体の「サスペンジョン特性」との関係下に「水性懸濁粒子」状態を以下のようにして評価することができる。
【0039】
すなわち、この水性単分散球状粒子の「水性懸濁粒子」の「3次元粒子整合性」を、「サスペンジョン特性」値としての「その懸濁濃度」と「その電気伝導度(又はイオン濃度又は帯電濃度)」との関係下に、添付[図1]に図示する如く、下記(a)〜(d)なるそれぞれの粒子集合領域及び粒子分散領域を示す懸濁粒子状態図として適宜に関連付けすることができる。
(a)結晶域;水性サスペンジョン相中の懸濁粒子が、構造色を視感させる3次元粒子整合体として規則配列懸濁相を形成している。
(b)共存域;水性サスペンジョン相が、(a)なる粒子規則配列懸濁相と、懸濁粒子がランダムに分散する粒子ランダム分散相とが共存している。
(c)分散域;全懸濁粒子がランダム分散状態にある。
(d)凝集域;全懸濁粒子がランダムに凝集群を形成している。
【0040】
その結果、本発明においては、この「結晶域」にある水性サスペンジョン型粒子分散体は、上記段落[0035]〜[0038]に記載するサスペンジョン特性とする「その懸濁濃度」及び「その電気伝導度」の関係下に、水性懸濁粒子体として構造色を視感させる有用な水性サスペンジョン発色部材として、各種の産業分野に適宜好適に用いることができるものである。
【0041】
しかるに、本発明のように、水性サスペンジョン型の流延性粒子分散体として用いて、下地基材上に塗布形成させたグリーンシート相中の懸濁集合粒子を、乾燥雰囲気下に曝露させて、3次元粒子整合体なる粒子規則配列を2次元方向に連続相として形成させる場合には、その詳細な理由は不明ではあるが、水性サスペンジョンとして既に3次元粒子整合状態にある上記する「結晶域」にある水性サスペンジョン型粒子分散体よりも、好ましくは、上記する「共存域」にあるより水性サスペンジョン型の流延性粒子分散体であることが、優れた「3次元粒子整合性=3次元粒子結晶性」を発揮させる水性サスペンジョン型の流延性・塗工性を有する水性粒子分散体として適宜好適に用いられる。
【0042】
すなわち、「共存域」状態にある水性サスペンジョン型粒子分散体の場合には、下地基材上に塗布させた塗布相に形成される3次元粒子整合体(又は3次元粒子結晶体)は、その塗布相の2次元方向面に沿って、例えば、略単一の結晶面を呈する多結晶体相を形成させる。一方、「結晶域」状態にある水性サスペンジョン型粒子分散体を塗布させた場合には、複数の結晶面を呈する多結晶体相となる傾向にある。
【0043】
<形成結晶面及びその反映特性>
そこで、前者のような「共存域」状態にある水性サスペンジョン型流延性粒子分散体を塗布させた場合には、下地基材上に形成固定される3次元粒子結晶体相から視感される構造色相は、照射可視光の干渉反射面が略同一の結晶面からとなって反射光色が強まり、しかも、2次元方向に色ムラのない鮮やかな構造色を発色させる。
【0044】
一方、後者のような「結晶域」状態にある水性サスペンジョン型粒子分散体を塗布させた場合には、下地基材上に形成固定される3次元粒子結晶体連続相から視感される構造色相は、その干渉反射光は異なる複数の結晶面からとなって、視感させる構造色相には色ムラを生じさせる。また、2次元方向面に沿って、形成される結晶面が、複数の結晶面を有していることから、その3次元粒子整合体連続相は、その単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)が有する機能を2次元方向に均等に発揮させ難くなる。
【0045】
<本発明に用いる単分散球状粒子(A)の粒子径>
本発明においては、可視光照射下に3次元粒子整合体相が発色させる有彩色構造色と、且つ可視光照射下に艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させる3次元粒子整合体を形成する有機ポリマーの単分散球状粒子(A)の粒子径との係わりが、既に上述する如く、その体積基準で表す平均粒子径130〜1000nmの範囲において、以下に記載するような粒子構成要件を満たす有機ポリマー質の単分散球状粒子(A)[既に説明済みの有機ポリマー球状粒子(A)である。]を適宜好適に用いることができる。
(1f)特に、本発明においては、この単分散球状粒子(A)が、色みの無い灰黒色、黒色から選ばれる何れか1種の黒色系無彩色球状粒子で、体積基準で表す平均粒子径が130〜310nmの範囲にある。
(2f)また、本発明においては、可視光照射下に白色乱反射色を視感させる透明無着色の白色系無彩色粒子で、その体積基準で表す平均粒子径が130〜1000nmの範囲で、好ましくは、310nm以上で、800nm以下にある。
【0046】
<本発明に用いる単分散球状粒子(A)の反射色について>
また、本発明における上記する白色系又は黒色系の無彩色について更に説明すると、
(1g)白色系無彩色とは、マンセル色票に表す彩度=0(零)であって、明度が限りなく≧10である。
(2g)また、黒色系無彩色とは、彩度=0であって、明度が限りなく≦0である。
(3g)また、本発明においては、上記する彩度=0で、0<明度<10にある灰色、好ましくは、灰黒色等の色相は、何れも黒色系無彩色として扱うことができる。
(4g)更に、本発明においける透明無着色粒子に係わる白色系無彩色とは、平均粒子径が100nm〜1μmサイズにある透明無着色球状粒子においては、通常、その粒子の分散系に対して、可視光照射下に視感される乱反射色は、例えば、透明ガラスの微粉砕物体から視感される反射色は、白色として視感されることからよく理解することができる。
【0047】
<本発明による有機ポリマー球状粒子(A)及びその製造方法>
以上から、本発明による下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相中に含有する有機ポリマー球状粒子(A)を、乾燥脱水・熱融着させて、微細球状粒子の3次元粒子結晶体相を形成させることを特徴とするものである。その有機ポリマー球状粒子(A)は、乾燥脱水・熱融着下に3次元粒子結晶化される微細球状粒子の前駆体粒子である単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)は、既に説明する如く、重量基準で表して25〜45%範囲にある高濃度水性粒子分散体として適宜好適に調製することができる。
【0048】
<本発明による有機ポリマー球状粒子(A)>
その水性乳化懸濁系で形成され有機ポリマー球状粒子(A)は、既に詳細に説明済みである重合ポリマー化後のTg=50℃以上で、好ましくはTg=60℃以上で、更に好ましくはTg=80℃以上である疎水性モノマー(m)からなる疎水性ポリマー(P)として形成されている。このような本発明による有機ポリマー球状粒子(A)は、熱融着3次元粒子結晶体相中に固定する微細球状粒子の前駆体粒子であって、その前駆体粒子100質量部当たり、同様に重合ポリマー化後のTg=40℃以下で、好ましくはTg=20℃以下で、更に好ましくはTg=10℃以下である親水性モノマー(m)からなる親水性ポリマー(P)が、5〜18質量部の範囲で、この前駆体粒子の有機ポリマー球状粒子(A)の表相近傍部に含侵偏在していることを特徴とするものである。しかも、本発明においては、所定の温度下に熱融着3次元粒子結晶体相を形成させるに、その熱特性であるガラス転移温度(Tg)は、常にTg>Tgの関係にあることが重要な特徴である。
【0049】
<本発明による有機ポリマー球状粒子(A)が分散する3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体の調製>
<下地基材上に形成される有機ポリマー球状粒子(A)の3次元粒子結晶体相の製造>
(1C−工程1);所定量の水相に、重合ポリマー化後のTg=50℃以上である疎水性モノマー(m)と、その100質量部当たり、同様に重合ポリマー化後のTg=40℃以下である親水性モノマー(m)の5〜18質量部と、重合開始剤及び乳化剤とを加えて乳化懸濁させる。
(1C−工程2);また、本発明においては、本発明に用いる黒色系無彩色の有機ポリマー球状粒子(A)を調製するには、例えば、重合性単量体、乳化剤及び水との混合水相系に着色剤である黒色系の油溶性染料又はカーボンブラックを含む黒色系の染顔料を適宜分散混合又は懸濁混合させる。
すなわち、上記する重合性モノマー(m)及び(m)から適宜選んだ単量体100質量部当たり、水200〜350質量部の範囲にある水を含む系に、例えば、C.Iソルベントブラック27のような黒色系染料の5〜10質量部を、攪拌下に加温し、次いで、乳化剤の0.05〜0.7質量部を加えて乳化懸濁させる。
(2C−工程);次いで、予め調製した有機ポリマーをシード粒子とする水性シード粒子分散体の所定量を注加させた後、温度65〜80℃に昇温させてシード乳化重合させる。すなわち、有機ポリマーの球状単分散微細粒子は 通常、一般的に用いられているソープフリー乳化重合、懸濁重合等の乳化重合系で適宜調製させる。
(3C−工程);得られる有機ポリマー球状粒子(A)は、上記する少なくともXYZの3軸方向に互いに融着(又は固着)される微細球状粒子の前駆体粒子であり、その形成樹脂成分のTg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)の100質量部当たり、この前駆体粒子の表相近傍部には、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)が、5〜18質量部範囲で含侵偏在するように形成されている。
(4C−工程);次いで、例えば、クロスフロー洗浄装置を用いて洗浄・濃縮させて、重量基準で表す分散濃度25の〜45%で、且つその水性粒子分散体系の電気伝導度を3500[μS/cm]以下である有機ポリマー微細球状粒子の水性粒子分散体(AS)を調製させる。
(5C−工程);次いで、この水性粒子分散体を用いて、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、Tg+50℃以上〜親水性ポリマー(P)の融点未満の温度下に乾燥脱水・熱融着させて、上記固着微細球状粒子からなる3次元粒子結晶体相が形成される。また、本発明においては、このような乾燥脱水を、大気圧以下の減圧下においても適宜好適に実施することもできる。
【0050】
以上から、下地基材上に塗工させてなす水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させ、含有する有機ポリマー球状粒子を、少なくともXYZの3軸方向に相互に固着されてなる有機ポリマー球状粒子(A)の3次元粒子結晶体相を形成させる水性粒子分散体の特徴は、
(1)固着微細球状粒子の前駆体粒子である単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)が、重量基準で表して25〜45%の高分散濃度で含有されている。
(2)その前駆体粒子を形成する樹脂成分は、Tg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)で、その樹脂成分の100質量部当たり、この「前駆体粒子の表相近傍部」には、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)が、5〜18質量部の範囲で「含侵偏在」されている。
(3)この前駆体粒子が高濃度で分散する水性粒子分散体系の電気伝導度が、3500[μS/cm]以下に調整されている。
【0051】
このような特徴を有する水性粒子分散体を、各種の下地基材上に塗工させた水性グリー
ンシート相を、Tg+50℃以上〜親水性ポリマー(P)の融点未満の温度下に、乾燥脱水・熱融着させて、3次元的に規則自己配列する前駆体粒子の表相近傍部に、含侵偏在させたTg=40℃以下の親水性ポリマー(P)を介して、少なくともXYZの3軸方向に相互に固着されて、3次元粒子結晶体相を効果的に形成させることが特徴である。
【0052】
また、本発明においては、既に説明する如くTg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)である疎水性モノマー(m)に組合せ使用する親水性ポリマー(P)となる親水性モノマー(m)は、そのポリマーのTg=40℃以下であれば適宜好適に用いられるが、本発明においては、その融着(又は固着)がより瞬時に進捗させる観点から、好ましくは、そのTg=20℃以下で、更に好ましくはTg=10℃以下の親水性ポリマー(P)となる親水性モノマー(m)を用いることがより好適である。
【0053】
例えば、ソープフリー乳化重合では、通常、用いる重合開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が重合時に水性媒体に可溶であればよい。通常、重合単量体100質量部に対して、重合開始剤を0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲で添加すればよい。また、乳化重合法の場合では、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル等の乳化剤を重合単量体100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜2質量部で水性媒体に混合させて乳化状態にし、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩の重合開始剤を、重合単量体100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部で添加すればよい。
【0054】
また、懸濁重合を含め、上記する乳化剤も特に特定する必要がなく、通常に使用されているアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤又は必要に応じてノニオン系界面活性剤等から選んで、その単独又は組み合わせて使用することができる。例えば、アニオン系界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ウンデシルベンゼンスルホネート、トリデシルベンゼンスルホネート、ノニルベンゼンスルホネート、これらのナトリウム、カリウム塩等が挙げられ、また、カチオン系界面活性剤としてはセチルトリメチルアンモニウムプロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、また、ノニオン系界面活性剤としては、リピリジニウム等が挙げられる。
【0055】
<本発明に用いる疎水性モノマー(m)>
また、本発明において、疎水性モノマー(m)としては、例えば、メタクリル系モノマー;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸イソプロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸ペンチル,メタクリル酸ヘキシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;ジエチルアミノエチルメタクリレート等のジアルキルアミノアルキルメタクリレート;メタクリルアミド;N-メチロールメタクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド等のメタクリルアミド類並びにグリシジルメタクリレート;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,プロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジメタクリル酸エステル類等を挙げることができる
【0056】
また、フッ素置換アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル,(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロメチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル,(メタ)アクリル酸パ−フルオロメチル,(メタ)アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル等のフッ素置換(メタ)アクリル酸系モノマー等を挙げることができる。
【0057】
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン,メチルスチレン,ジメチルスチレン,トリメチルスチレン,エチルスチレン,ジエチルスチレン,トリエチルスチレン,プロピルスチレン,ブチルスチレン,ヘキシルスチレン,ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン,クロルスチレン,ブロモスチレン,ジブロモスチレン,クロルメチルスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン,アセチルスチレン,メトキシスチレン、α−メチルスチレン,ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0058】
また、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,n−酪酸ビニル,イソ酪酸ビニル,ピバリン酸ビニル,カプロン酸ビニル,パーサティック酸ビニル,ラウリル酸ビニル,ステアリン酸ビニル,安息香酸ビニル,p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニリデン、クロロヘキサンカルボン酸ビニル、アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチル等が挙げられる。また、アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式アルコールのアクリル酸エステルや、メタクリル酸シクロエキシル等の脂環式アルコールのメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0059】
<本発明に用いる親水性モノマー(m)>
本発明において、親水性モノマー(m)としては、特に好ましくは、例えば、MA(アクリル酸メチル)、MEA(アクリル酸メトキシエチル)、4HBA(アクリル酸4ヒドロキシブチル)、3HPA(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、2HEA(アクリル酸2ヒドロキシエチル)の群から選ばれる親水性モノマーを挙げることができる。
【0060】
<本発明に用いる機能性有機ポリマー及び機能性有機化合物>
また、本発明においては、上記する有機ポリマーに限定されることなく、水相系で単分散球状微細粒子を形成可能な有機化合物として、例えば、以下の(A)〜(A)に記載するような機能を有する有機ポリマー及びその有機モノマー化合物を用いて、その有機ポリマーの機能性有機ポリマー球状粒子(A)として適宜好適に用いられる。又は、例えば、PMMAなどの有機ポリマー球状粒子(A)のホスト粒子を調製させるに際して、予めこれらの機能性有機ポリマー及びそのモノマー化合物を機能性ゲストとして含有させて、PMMAホスト粒子を機能性有機ポリマー球状粒子(A)として適宜好適に用いられる。
【0061】
(A)有機ELポリマー及びそのモノマー化合物;ポリビニルカルバゾール(PVK)系、ポリフェニレン系、ポリフェニレンビニレン(PPV)系、Cyano−PPV系、MEH−PPV系、ポリ[2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキリチオフェン)等を挙げることができる。
(A)強誘電性ポリマー及びそのモノマー化合物;フッ化ビニリデン(VDF)と3フッ化エチレンの共重合体のP(VDF−TrFE)、P(VDF−TeFE)、3フッ化エチレン及び/又は4フッ化エチレンの共重合体のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン(VDF)と4フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン(VDF)とフッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン(VDF)と4フッ化エチレンと6フッ化プロピレン共重合体、ポリシアン化ビニリデン、シアン化ビニリデンと酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。半導体性ポリマー;ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアルキルピロール、ポリアルキチオフェン、オリゴピロール、オリゴチオフェン等を挙げることができる。
(A)導電性ポリマー及びそのモノマー化合物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン系[3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ(3−ヘキシル)チオフェン、ポリ(3−オクチル)チオフェン、ポリ(3−ドデシル)チオフェン等やおれらの誘導体の重合体]、ポリチオフェンビニレン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリメトキシフェニレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリアントラセン、ポリナフタレン等を挙げることができる。特にLi、Na、K等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属のドナー型ドーパンターでドーピングする。
(A)半導性ポリマーおよびそのモノマー化合物;π共役系化合物として、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、これらの置換体又はこれらの2種以上を用いてなる繰り返し単位のn数が4〜10のオリゴマー、又はn数20以上のポリマー、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、縮合環テトラカルボン酸ジイミド等を挙げることができる。
(A)有機非線形化合物;p−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、メロシアニン色素、アントラキノン系化合物、p−ニトロアニリド、ベンゾイミダゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、ヒドラゾン誘導体、オキサジアゾール誘導体、含N複素環化合物、含N五員環化合物、スチルベン誘導体、ジアミノベンゼン誘導体、N,N’−ビス−(4−ニトロフェニル)−メタンジアミン等を挙げることができる。
【0062】
また、本発明においては、必ずしも架橋構造を形成させる必要はないが、必要に応じて、形成されるポリマーの機械的強度を高める観点から、架橋構造を適宜導入させることができる。このような架橋構造を形成させるに、2官能性以上の多官能性モノマーを適宜好適に使用することができる。その多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート,N−メチロールアクリルアマイド等を挙げることができる。
【0063】
また、本発明に用いる単分散性の有機ポリマー球状粒子(A)として、上述する如く、例えば、黒色系の無彩色に着色さる染顔料を含め、単分散性を阻害させるとか又は熱融着性を阻害させる等がない限りにおいて、必要に応じて予め他の添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料、帯電付与剤、帯電防止剤、垂れ止め防止剤、消泡剤等を有機ポリマー球状粒子(A)中に適宜添加させることができる。
【0064】
また、本発明においては、各種の下地基材上に塗工させる水性グリーンシート相なる塗工相は、その塗工相を形成させる目的によって、従来から公知である例えば、流し込み法、刷毛塗り法、ブレードコーター、エアナイフコーター等の各種のコーター法、噴霧法(又はエアロジル法)、スピンコート法、スクリーン印刷及びインクジェット法等を適宜選んで好適に用いることができる。
【0065】
<本発明による水性粒子分散体及び3次元粒子結晶体相の用途>
以上から、本発明による水性サスペンジョン型流延性粒子分散体を用いて得られる各種の下地基材上に設けられる3次元粒子整合体の固定化連続相は、単分散球状粒子の粒子整合体面である(001)粒子整合体面が、垂直方向であるc軸方向の[001]方向に規則的に数層〜数十層を積層する3次元粒子整合体相の2次元方向に連続相として提供される。
【0066】
従って、本発明による水性サスペンジョン型流延性粒子分散体を用いて形成させた3次元粒子整合体の2次元方向への固定化連続相部材は、その連続相を形成する黒色系無彩色の単分散球状粒子の粒度特性として、既に詳細に説明する如く、体積基準で表す平均粒子径を130〜310nmの範囲に特定することで、粒子配列構造体としての均質さによって効率よく光干渉効果として強められて、著しく明確な反射特性を発揮させて構造色を発色させる構造色型の水性塗工材を提供することができる。
【0067】
<3次元粒子整合体型の水性塗工材>
すなわち、構造色を発色させる水性サスペンジョン型流延性粒子分散体は、既に説明済みであるように、水性インキ又は水性塗料の主成分として、印刷又は筆記又は転写させてなる塗布相が、3次元粒子整合体の連続相であって、その連続相が可視光照射下に有彩色の構造色を発色させる。また、その連続相は艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させるものである。よって、本発明においては、このような水性インキ(又は水性発色材)及び水性塗料として、被印刷体又は被転写体であるガラス板、モルタル板、セラミックス板、磁器板、プラスチックス板、シリコン・ウエハー、鋼板、銅板、アルミニュウム板、アルミニュウム合金板、ステンレス板、木質板、毛皮シート、布地シート、厚紙シート、プラスチックフィルム群から選ばれる何れかの下地基材上に、塗布することで所望する構造色図柄及び/又は構造色文字を印刷又は転写させて、印刷相又は印字相又は転写相なる塗布相を提供することができる。また、本発明においては、これらの下地基材は、その下地材の使用目的によって、透明体であっても、白色系又は黒色系無彩色体であっても、又は有彩着色体であっても適時用いることができる。
【0068】
<構造色相型の水性塗工材;水性インキ、水性塗料>
また、本発明においては、有機ポリマー球状粒子(A)が、体積基準で表す平均粒子径が130〜310nmの範囲にあって、しかも、灰黒色、黒色から選ばれる何れか1種の黒色系無彩色の有機ポリマー又は無機ポリマーの単分散球状粒子(A)であると、既に詳細に説明する如く、その印刷相又は筆記相又は転写相は、可視光照射下に3次元粒子整合体の構造色連続相として有彩光色を発色させ、その発色相は、同時に艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させる構造色相型の水性塗工材を提供することができる。
【0069】
<金属光沢感を賦与させる3次元粒子結晶体相型の水性塗工材>
本発明においては、有機ポリマー球状粒子(A)が、可視光照射下に白色乱反射色を視感させる透明無着色の白色系無彩色粒子で、しかも、平均粒子径が体積基準で表して130〜800nmの範囲にある3次元粒子整合体連続相形成固定用の水性サスペンジョン型流延性粒子分散体を、水性塗布材として印刷又は又は筆記又は相転させてなる印刷相又筆記相又は転写相なる塗布相は、可視光照射下に「艶やかさ感」及び/又は「金属光沢感」を視感(又は賦与)させる3次元粒子整合体相型の水性塗工材を提供することができる。
【0070】
<機能性3次元粒子結晶体相型の機能性水生塗工材>
本発明においては、有機ポリマー球状粒子(A)が、有機ELポリマー、強誘電体性ポリマー、半導体性ポリマー、導電体性ポリマー及び有機非線形光学化合物を含有するPMMA等の透明性ポリマーの機能性粒子である水性粒子分散体を用いることで、各種の下地基材上にキャリヤー移動性に優れえる有機EL、特にフレキシブル性に優れる強誘電性(圧電性、焦電性)、半導体性及び導電性及び特にレーザー光に係わっての非線形光電子特性を発揮させる機能性3次元粒子結晶薄膜材を提供することができる。
【0071】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
<Tg;親水性モノマー(m)=4HBA>
MMA100gをフラスコに入れ、乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの0.1g、水567gを加え72℃に昇温させた。窒素雰囲気下で重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5gを加え乳化重合を行って体積基準で表す平均粒子径123nmの単分散球状粒子が、体積基準で表す分散濃度15%のサスペンジョン(S−1)を調製した。
次いで、MMA30g、エチレングリコールジメタクリレート30g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10g、メタクリル酸5g、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水259gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を166g加えた。
これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了した。
これを、クロスフロー洗浄装置で濃縮と洗浄を行い、分散濃度29.9%、電気伝導度280[μS/cm]である本発明による水性粒子分散体(C−1)を調製した。得られたこの分散粒子である本発明による有機ポリマー球状粒子(A)の粒子径は198nmで、単分散性の非常に高い粒子であった。
【0073】
(実施例2)
<Tg;親水性モノマー(m)=MA>
MMA32.5g、エチレングリコールジメタクリレート30g、メチルアクリレート(MA)20g、メタクリル酸5g、BPO1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水329gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を83g加えた。これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了した。
これを、クロスフロー洗浄装置で濃縮と洗浄を行い、分散濃度29.8%、電気伝導度225[μS/cm]である本発明による水性粒子分散体(C−2)を調製した。得られた本発明による有機ポリマー球状粒子(A)の粒子径は244nmで、単分散性の非常に高い粒子であった。
【0074】
(実施例3)
<Tg;親水性モノマー(m)=MEA>
MMA37.2g、エチレングリコールジメタクリレート30g、メトキシエチルアクリレート(MEA)10g、メタクリル酸5g、BPO1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水300gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を118g加えた。これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了した。
これを、クロスフロー洗浄装置で濃縮と洗浄を行い、分散濃度30.4%、電気伝導度257[μS/cm]である本発明による水性粒子分散体(C−3)を調製した。この得られた有機ポリマー球状粒子(A)の粒子径は220nmで、単分散性の非常に高い粒子であった。
【0075】
(比較例1)
<Tg;親水性ポリマー(P)無し>
MMA40g、エチレングリコールジメタクリレート30g、メタクリル酸5g、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水259gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を166g加えた。これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了した。
これを、クロスフロー洗浄装置で濃縮と洗浄を行い、分散濃度29.6%、電気伝導度275[μS/cm]で、Tgに相当する親水性モノマー(m)を用いないで調製した水性粒子分散体(H−1)を調製した。このサスペンジョンの粒子径は202nmであり、単分散性の非常に高い粒子であった。
【0076】
(比較例2)
<Tg;親水性ポリマー(P)が疎水性ポリマー>
MMA30g、エチレングリコールジメタクリレート30g、ラウリルメタクリレート10g、メタクリル酸5g、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水259gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を166g加えた。これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了した。
これを、クロスフロー洗浄装置で濃縮と洗浄を行い、分散濃度31.0%、電気伝導度323[μS/cm]で、Tgに相当するポリマー(P)が疎水性ポリマーである水性粒子分散体(H−2)を調製した。この分散粒子の粒子径は199nmで、単分散性の非常に高い粒子であった。
【0077】
(比較例3)
<Tg;相当親水性モノマー(m2)が4HBA3部>
MMA37g、エチレングリコールジメタクリレート30g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3g、メタクリル酸5g、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水259gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を166g加えた。これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了した。
これを、クロスフロー洗浄装置で濃縮と洗浄を行い、29.5%、電気伝導度276[μS/cm]である水性サスペンジョン(H−3)を調製した。このサスペンジョンの粒子径は192nmであり、単分散性の非常に高い粒子であった。
【0078】
(比較例4)
<Tg;相当親水性モノマー(m2)が4HBA20部>
MMA20g、エチレングリコールジメタクリレート30g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)20g、メタクリル酸5g、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.5g、ニューコール707SF(日本乳化剤社製)3.3g、亜硝酸ナトリウム0.05g、水259gをフラスコに入れ、ホモミキサーにて9000rpm×10分乳化させたのち、S−1を166g加えた。これを攪拌しながら50℃まで昇温し、20分後にさらに75℃まで昇温し1時間重合させた。さらに85℃に昇温させて重合反応を終了したが、有機ポリマー球状粒子は得られなかった。
【0079】
上記実施例1〜3、比較例1〜3にて調製した有機ポリマー球状粒子が分散する水性粒子分散体を、綜研化学(株)製の粘着剤SKダイン2094を予め3μmdryで塗布した下地基材の50μm厚の黒色PETフィルム上に、塗工させて層厚10μmdryの水性グリーンシート相を形成させた。
次いで、このPET基材上の塗工水性グリーンシート相を、25℃雰囲気下で乾燥させた。この時、垂直視線下に視感される構造色としての発色性、すなわち、乾燥脱水下に形成される塗工相の3次元粒子結晶性を観察し、また、その塗工相表面を指で擦った時の懸垂性(=粉落ち性)をそれぞれ評価した。
次いで、120℃×10分の加熱条件下に熱融着処理を行った。同様にして垂直視線下に視感される構造色としての発色性、すなわち、熱融着下に形成される塗工相の3次元粒子結晶性を観察し、また、その塗工相表面を同様にして懸垂性(=粉落ち性)のそれぞれを下記する評価法で評価して、その結果を下記[表1]に示した。
<塗工相の懸垂性(=表面の粉落ち性)>
・指で擦っても粒子の脱落がない…○
・指で擦るとやや粒子が脱落する…△
・指で擦ると粒子が脱落する…×
<塗工相の構造色発色性[=3次元粒子結晶性]>
・25℃乾燥時と同じ色…○
・25℃乾燥時の色と比べてやや劣る…△
・25℃乾燥時の色を維持していない…×
【0080】
その結果、[表1]から明らかなように、本発明による有機ポリマー球状粒子(A)を分散させた本発明による水性粒子分散体は、その単分散微細球状粒子が乾燥脱水・熱溶融下に、その粒子の表層近傍に偏在させたTgの親水性ポリマー(P2)の低温度熱融着特性が活かされて形成される3次元粒子整合体相は、可視光照射下に構造色を視感させることから、その3次元粒子整合体相は、その有機ポリマー球状粒子(A)が、3次元方向に規則的に自己固着されて形成された3次元粒子結晶体相で、しかも、自己固着形成された3次元粒子結晶体相面は、極めて懸垂性に優れていることが良く理解される。
【0081】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0082】
以上から、本発明によって、単分散微細球状粒子が分散する3次元粒子整合体連続相形成用の水性サスペンジョン型の水性粒子分散体を主成分に、構造色に係わる有彩色の発色性を含む各種の機能特性を発揮させる機能性3次元粒子結晶体相を形成させる水性粒子分散体を提供することができた。
【0083】
すなわち、本発明による有機ポリマー球状粒子の水性粒子分散体を用いて、ガラス板、モルタル板、セラミックス板、磁器板、プラスチックス板、鋼板、銅板、アルミニュウム板、アルミニュウム合金板、ステンレス板、木質板、毛皮シート、布地シート、厚紙シート、プラスチックフィルム等の各種下地基材に印刷、転写及び塗布させて、光学特性としての構造色有彩光発色や、金属光沢感等を発揮する各種の内装、装飾、意匠、ディスプレイ材として、各種の産業分野に有用な塗工型の発色性3次元粒子結晶薄膜材を提供することができた。
【0084】
また、本発明によれば、機能性3次元粒子結晶薄膜材として、導電性結晶薄膜材;太陽電池用部材(セパレーター、電極、電解質膜)、固体電解型コンデンサー、光電変換素子、有機非線形光電子材料;光ディスク、光変調、光スイッチ、光メモリ、誘導発光、半導体性結晶薄膜材;TFT薄膜素子、オゾンガス検知素子、アンモニアガスセンサー、強誘電体性結晶薄膜材;各種の産業分野に有用な塗工型の機能性3次元粒子結晶薄膜材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明による水性サスペンジョン型粒子分散体の水性懸濁粒子の分散濃度と電気伝導度との関係下に形成する結晶領域、分散領域、共存領域及び凝集領域の状態を表す水性サスペンジョン粒子の状態図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基材上の塗工水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させ、含有する有機ポリマー球状粒子を、少なくともXYZの3軸方向に相互に固着させてなす微細球状粒子の3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体であって、
水性粒子分散体中に質量基準で表して25%以上で、45%を超えない分散濃度で含有する有機ポリマー球状粒子(A)が、前記固着微細球状粒子の前駆体粒子で、
この前駆体粒子を形成する樹脂成分であるTg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)の100質量部当たり、その前駆体粒子の表相近傍部に、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)が、5〜18質量部の範囲で含侵偏在していることを特徴とする3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体。
【請求項2】
前記水性粒子分散体系の電気伝導度が3500[μS/cm]以下であることを特徴とする請求項1に記載する3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体。
【請求項3】
前記前駆体粒子が、体積基準で表す平均粒子径が130nm以上で、310nmを超えない有機ポリマーの黒色系無彩色粒子で、且つ前記3次元粒子結晶体相が、可視光照射下に単色系有彩色を発色させる構造色相で、且つその構造色相は可視光照射下に艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させることを特徴とする請求項1又は2に記載する3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体。
【請求項4】
前記前駆体粒子が、体積基準で表す平均粒子径が310nm以上で、800nmを超えない有機ポリマーの可視光照射下に白色乱反射色を視感させる透明無着色粒子で、且つ前記3次元粒子結晶体相が、可視光照射下に艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させることを特徴とする請求項1又は2に記載する3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体。
【請求項5】
請求項3に記載する3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体を用いて、被印刷相又は被筆記相又は被転写相である下地基材上に、印刷又は筆記又は転写させてなる印刷相又は筆記相又は転写相の塗工相が、可視光照射下に有彩色の構造色を発色させ、且つ可視光照射下に艶やかさ感及び/又は金属光沢感を視感させることを特徴とする3次元粒子結晶体相型の水性塗工材。
【請求項6】
請求項1、2及び4の何れかに記載する3次元粒子結晶体相形成用の水性粒子分散体を用いて、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させ、得られる薄膜状の固着微細球状粒子の3次元粒子結晶体相が、機能性3次元粒子結晶薄膜材であって、
前記固着微細球状粒子の有機ポリマー球状粒子(A)が、導電体性、半導体性、絶縁体性、強誘電体性、有機EL発光体性、非線形光電子体性の群から選ばれる何れか1種の機能特性を有していることを特徴とする機能性3次元粒子結晶薄膜材。
【請求項7】
下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、乾燥脱水・熱融着させ、含有する微細球状粒子の有機ポリマー球状粒子(A)を、少なくともXYZの3軸方向に相互に固着させてなす微細球状粒子の3次元粒子結晶体相の製造方法において、
所定量の水相に、重合ポリマー化後のTg=50℃以上である疎水性モノマー(m)と、その100質量部当たり、同様に重合ポリマー化後のTg=40℃以下である親水性モノマー(m)の5〜18質量部と、重合開始剤及び乳化剤とを加えて乳化懸濁させ、
次いで、予め調製した有機ポリマーのシード粒子水性分散体の所定量を注加させてシード乳化重合させ、
得られる有機ポリマー球状粒子(A)は、前記固着微細球状粒子の前駆体粒子で、その形成樹脂成分のTg=50℃以上の疎水性ポリマー(P)の100質量部当たり、この前駆体粒子の表相近傍部に、Tg=40℃以下の親水性ポリマー(P)を、5〜18質量部の範囲で含侵偏在させ、
次いで、洗浄・濃縮させて質量基準で表す分散濃度25〜45%で、且つその水性粒子分散体系の電気伝導度を3500[μS/cm]以下に調整させ、
次いで、この水性粒子分散体を用いて、下地基材上に塗工させた水性グリーンシート相を、Tg+50℃以上〜前記親水性ポリマー(P)の融点未満の温度下に乾燥脱水・熱融着させ、
て前記固着微細球状粒子の3次元粒子結晶体相を形成させることを特徴とする有機ポリマー球状粒子の3次元粒子結晶体相の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−94861(P2008−94861A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274446(P2006−274446)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】