説明

3次元署名認証システム

【課題】空中署名動作に基づく個人認証の精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証システムであって、ステレオカメラから得られる手指の軌跡と、3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データとに基づいて、個人認証を行う。画像から手指を検出する際に加速度データに基づいて探索領域を絞り込んだり、手指を検出できない場合に加速度データに基づいて位置を推測することが好適である。また、加速度データの向きを、署名が行われる平面に対する相対的な向きに変換して認証に利用することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中での署名動作に基づく個人認証技術に関する。
【背景技術】
【0002】
個人の認証技術として指紋、虹彩、静脈、網膜等の身体的特徴を利用した静的な生体認証技術が知られている。静的な生体認証技術においては、その身体的特徴を何らかの手法で盗難・複製されてしまった場合には、対処できないという問題点がある。
【0003】
また、署名、歩行、キーストローク等の行動的特徴を利用した動的な生体認証技術も知られている。この技術では、個人の動作に関する特徴を認証鍵とするため、盗難や複製が容易ではない。そして、盗難・複製されてしまった場合であっても、一連の動作を変更することにより容易に認証鍵の変更が可能である。
【0004】
行動的特徴を利用した動的な生体認証技術として、署名動作を認証鍵として用いる署名認証技術がある。署名認証として最も多く研究されているのが、電子タブレットなどの平面上で行う署名に対する認証である。これを改良したものとして、空中で行う署名動作(以下、空中署名とも呼ぶ)に基づいて認証を行う空中署名認証技術が知られている(特許文献1)。特許文献1では、空中での署名動作を取得するために、ステレオカメラによって撮影された動画像から発光ペンまたは指先に付けたマーカを検出して、署名の3次元空間での筆跡(3次元座標の軌跡)を算出している。また、空中での署名動作を取得するために、C−MOSカメラと近赤外線LEDを組み合わせたモーションプロセッサを用いることも試みられている。
【0005】
また、平面上での署名認証に対する改良として、3次元加速度センサを併用したものが知られている。特許文献2には、平面上での筆跡データに加えて、加速度データも使用することが記載されている。また、加速度センサのみを用いて、空中での署名動作に基づいて認証することも記載されている。
【特許文献1】特開2002−196874号公報
【特許文献2】特許第3412592号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。すなわち、特許文献1のように発光ペンやマーカを動画像から検出する方法では、照明条件(逆光など)、遮蔽物、影などの要因によって検出ができない場合が生じる。このような場合、筆跡の連続的な軌跡を取得できず認証精度が低下してしまう。また、C−MOSカメラと近赤外線LEDを組み合わせる方法でも同様に、環境光の影響によって筆跡を正しく検出できない場合がある。
【0007】
一方、特許文献2のように、加速度センサのみを用いて空中署名動作に基づく認証を行うと、利用者が同一の署名動作を行っても加速度センサと認証装置の向きが異なると、異なったデータとして認識されてしまう。したがって、加速度センサと認証装置の向きを一意に定めなければ、精度の良い認証を行うことはできない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、空中署名動作に基づく個人認証を精度良く行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によって空中署名動作に基づく個人認証の精度を向上させる。
【0010】
本発明に係る3次元署名認証システムは、ステレオカメラ、筆跡取得手段、3次元加速度センサ、手指動作取得手段、登録データ記憶手段および認証手段を備える。
【0011】
筆跡取得手段は、ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得する。筆跡取得手段は、ステレオカメラから得られる画像において、手指の位置をテンプレートマッチングなどの方法によって検出することで、その位置を検出する構成を採用することができる。また、ユーザが持った発光ペンや、指に施したマーカなどを検出することで、その位置を検出する構成を採用しても良い。
【0012】
3次元加速度センサは、ユーザの手指動作の加速度データを取得する。3次元加速度センサは、例えば、ユーザの手指または腕に装着される指輪または腕輪の形状とすることが好適であるが、ペンなどのようにユーザが手に持って使用するような形状であっても良い。3次元加速度センサで計測された手指動作の加速度データは、無線通信によって手指動作取得手段に渡される。
【0013】
手指動作取得手段は、3次元加速度センサから得られる加速度データに基づいて、手指動作データを取得する。手指動作データとは、ユーザの手指動作を表すデータであり、加速度データそのもの、または、加速度データを1回積分して得られる速度データのいずれかである。すなわち、手指動作データは、加速度データ自体もしくは、加速度データから算出されるデータと表現することもできる。なお、加速度データおよび速度データは、大きさと向きとを含むデータである。
【0014】
登録データ記憶手段には、ユーザがあらかじめ空中署名した際の、3次元筆跡データと手指動作データとが記憶されている。
【0015】
認証手段は、筆跡取得手段によって取得された3次元筆跡データと手指動作取得手段によって取得された手指動作データを、登録データ記憶手段に記憶されているデータと照合することで、個人認証を行う。
【0016】
このように、本発明に係る3次元署名認証システムによれば、空中での署名動作の3次元筆跡と手指動作データ(3次元加速度)とを併用することで、認識率の高い個人認証を行うことができる。
【0017】
本発明における筆跡取得手段は、手指動作取得手段によって得られる手指動作データに基づいて、ステレオカメラから得られる画像中におけるユーザの手指の3次元位置候補を絞り込んで、絞り込んだ位置候補の中から手指の位置を検出することが好適である。
【0018】
直近に得られた手指の3次元位置と手指動作データから、現時点での手指の位置を絞り込むことが可能である。したがって、筆跡取得手段は、この絞り込んだ位置候補の中から手指の位置を検出することで、高速に手指の位置を検出することが可能になるとともに、誤検出する可能性を低めることができる。そして、誤検出が少なくなれば、認証精度も向上する。
【0019】
また、本発明における筆跡取得手段は、ステレオカメラから得られる画像からユーザの手指を検出できなかった場合は、手指動作取得手段によって得られる手指動作データと、
直近に得られた手指の3次元位置とに基づいて、手指の3次元位置を推測することが好適である。
【0020】
ステレオカメラから得られた画像からユーザの手指を検出する場合、照明条件や遮蔽物などによって、またユーザの手指がステレオカメラの撮影範囲から出てしまうことによって、ユーザの手指の位置を検出できない場合がある。このような場合に、筆跡取得手段は、直前の手指の位置と手指動作データに基づいて、現在の手指の3次元位置を推測(補間)して筆跡を得ることができる。このように、手指動作データに基づいて、筆跡データを得ることができるので、ステレオカメラから手指の位置を正しく検出できない場合であっても、正しく認証を行うことができる。
【0021】
また、本発明における認証手段は、手指動作取得手段によって得られた手指動作データを変換して認証に用いることが好適である。具体的には、まず、3次元筆跡データから、空中署名がどの向きに対して行われたかを算出する。そして、認証手段は、手指動作データ(加速度データおよび/または速度データ)の向きを、この空中署名が行われた向きに対する相対的な向きに変換した上で、照合に用いることが好適である。
【0022】
どのような向きで空中署名が行われたかによって、3次元加速度センサから得られる加速度データは異なった値(向き)を持つことになるが、上記のように空中署名が行われた向きに対する相対的な向きを用いることによって、空中に描く署名動作の方向や角度に対して頑健性を持つことになる。
【0023】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する3次元署名認証システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む3次元署名認証方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0024】
例えば、本発明の一態様としての3次元署名認証方法は、空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証方法であって、あらかじめ取得された、3次元筆跡データと手指動作データとを記憶する登録データ記憶手段を備えた情報処理装置が、ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得するステップと、3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データに基づいて、ユーザの手指動作データを取得するステップと、取得された3次元筆跡データおよび手指動作データを、前記登録データ記憶手段に記憶された3次元筆跡データおよび手指動作データと照合して個人認証を行うステップと、を実行する。
【0025】
また、例えば、本発明の一態様としての3次元署名認証プログラムは、空中での署名動作に基づいて認証を行うための3次元署名認証プログラムであって、あらかじめ取得された、3次元筆跡データと手指動作データとを記憶する登録データ記憶手段を備えた情報処理装置に対して、ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得するステップと、3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データに基づいて、ユーザの手指動作データを取得するステップと、取得された3次元筆跡データおよび手指動作データを、前記登録データ記憶手段に記憶された3次元筆跡データおよび手指動作データと照合して個人認証を行うステップと、を実行させるプログラムである。
【0026】
また、認証に用いるデータは手指動作データのみであっても良い。この場合であっても、手指動作データを、署名動作が行われた向きに対して相対的な向きに変換した上で認証に用いることが好ましい。したがって、本発明の一態様として3次元署名システムは、空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証システムであって、ステレオカメラ
と、前記ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得する筆跡取得手段と、ユーザの手指動作の加速度データを取得する3次元加速度センサと、前記3次元加速度センサから得られる加速度データに基づいて、手指動作データを取得する手指動作取得手段と、あらかじめ取得された、手指動作データを記憶する登録データ記憶手段と、前記筆跡取得手段によって取得された3次元筆跡データから署名動作が行われた向きを算出し、前記手指動作取得手段によって得られた手指動作データを前記向きに相対的な向きに変換した上で、前記登録データ記憶手段に記憶された手指動作データと照合して個人認証を行う認証手段と、を備える3次元署名認証システムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、空中署名動作に基づく個人認証を精度良く行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明に好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0029】
本実施形態は、ステレオカメラと3次元加速度センサとを併用した署名認証システムである。このような認証システムは、例えば、門戸や扉に設置し、利用者があらかじめ登録された人物と同一であると認証された場合に、ドアのロックを解除するセキュリティシステムとして利用可能である。
【0030】
図1は、本実施形態に係る署名認証システム1の機能構成を示す図である。本システムは、概略、ステレオカメラ2と3次元加速度センサ3と認証装置4とから構成される。
【0031】
ステレオカメラ2は、2つの撮像手段2a,2bを有し、それぞれが利用者の空中署名動作を動画撮影する。各撮像手段2a,2bによって撮影された動画像は、それぞれ、認証装置4へ入力され、空中署名動作における利用者の手指の3次元位置を検出するために利用される。
【0032】
3次元加速度センサ3は、3軸のセンサであり、動き(加速度)や傾きを検出可能である。3次元加速度センサ3は、どのような方式によるものであっても良く、ピエゾ抵抗方式、静電容量検出方式など、既存のどのような技術を採用したものであっても構わない。また、セラミックジャイロ等を併用して、加速度センサとジャイロとの間で相互補正を行うことで、高精度化することも好ましい。
【0033】
3次元加速度センサ3は、指輪または腕輪の形状をしており、利用者が指や腕に装着することができる。3次元加速度センサ3には、無線通信モジュールが内蔵されており、検出された加速度データは無線通信によって認証装置4へ送られる。
【0034】
認証装置4は、CPU(中央演算処理装置)、記憶装置(主記憶装置、補助記憶装置)などから構成されるコンピュータ(情報処理装置)である。認証装置4は、CPUがプログラムを実行することによって、3次元筆跡算出モジュール41、3次元動作算出モジュール42、3次元情報統合モジュール43、認証データベース44および比較照合モジュール45を含む装置として機能する。なお、ここでは認証装置4が1台のコンピュータによって構成される例を説明するが、認証装置4はネットワークを介して接続された複数のコンピュータによって構成されても良い。また、認証装置4の各機能部のうち、一部または全部は専用のチップによってその機能が実現されても良い。
【0035】
3次元筆跡算出モジュール41は、ステレオカメラ2から得られる2つの画像のそれぞれから、指先の位置を検出して、指先の3次元座標を算出する。画像からの指先位置の検
出は、具体的には以下のように行うことができる。
【0036】
まず、画像から肌色の領域を抽出したりテンプレートマッチングを適用したりすることで、手の領域を切り出す。切り出された手領域画像は、例えば、図2に示すような画像となる。そして、切り出した手領域画像を指先探索領域として、図3に示すように、テンプレートマッチングにより指先の位置を検出する。
【0037】
なお、2フレーム以降については、前フレームの指先の位置や3次元加速度センサ3によって得られる加速度情報(あるいはこれに基づいて算出される速度情報)も利用して指先を検出する。例えば、指先探索領域を前フレームの指先位置近傍の所定の範囲(例えば、一辺20ピクセルの領域)とすることができる。また、前フレームの指先位置と加速度情報とに基づいて、推定される指先位置の近傍の所定の範囲を指先探索領域とすることもできる。このような手法により、誤トラッキングを減らすことができる。
【0038】
次に、撮像手段2a,2bによって撮影された各画像における指先の位置から、その3次元位置を算出する。3次元位置を求める原理を図4に示した。図4において、平面21aおよび21bは、それぞれ、撮像手段2aおよび2bの撮影方向に垂直な平面である。撮像手段2aおよび2bの位置から画像上で得られた指先の位置を結ぶ直線を延長し、これら2つの直線が交わる点の座標が、指先の3次元座標である。
【0039】
ステレオカメラ2から得られる動画像のそれぞれから指先の3次元位置を取得することで、指先の軌跡すなわち空中署名における筆跡データを得ることができる。
【0040】
3次元動作算出モジュール42は、利用者に装着された3次元加速度センサ3から無線通信によって加速度データを取得する。3次元動作算出モジュール42は、加速度データから手指の動作を表す手指動作データを算出する。本実施形態においては、手指動作データには、加速度データそのものと、加速度データを1回積分して得られる速度データとを用いる。もっとも、手指動作データに、加速度データを2回積分して得られる位置データや、加速度データに基づいて算出されるその他のデータを含めても良い。また、手指動作データとして、加速度データまたは速度データのいずれか一方のみを利用しても良い。
【0041】
3次元情報統合モジュール43は、ステレオカメラ2から得られる筆跡データと、3次元加速度センサ3から得られる手指動作データとを統合する。より具体的には、3次元情報統合モジュール43は、筆跡データと手指動作データとを統合して、各時点における指先の位置、移動方向、移動速度および加速度を対応付けて取得できる。
【0042】
照明条件の悪化や指先がステレオカメラ2の撮影範囲外に出てしまったなどの理由により、ステレオカメラ2から得られる画像から指先を検出できない場合がある。このような場合に、3次元情報統合モジュール43は、前フレームにおける指先の3次元位置と、手指動作データに基づいて、現フレームにおける指先の3次元位置を推定することができる。このようにすれば、画像から指先を検出できない場合であっても、その位置を推定して取得することができる。
【0043】
また、3次元情報統合モジュール43は、手指動作データを、署名動作が行われる向き対する相対的な向きに変換する。利用者が空中署名を行う場合、3次元カメラの撮影方向に対して垂直な平面上で署名動作が行われるとは限らない。図5に示すように、ステレオカメラに対して横を向いたり、下を向いたりして署名動作が行われる場合がある。このような場合、手指動作データ(加速度および速度の向きデータ)は、カメラの撮影方向に対して垂直な平面で署名された場合と比較して異なってしまう。したがって、署名動作を行った平面を基準にした向きに補正することで、手指動作データを正規化する。
【0044】
向きデータの補正は、例えば、ステレオカメラ2から得られる筆跡データから署名動作が行われた平面(署名平面)を算出し、鉛直線を署名平面に投影した方向をY方向、署名平面上でY方向に垂直な向きをX方向、署名平面に垂直な向きをZ方向とすることで行える。なお、署名動作は一つの平面内だけで行われるわけではないが、各時点における指先の3次元位置との距離の合計が最小となる平面として、署名平面を算出することができる。
【0045】
また、向きデータの補正は、空中署名の最初の動作(一筆目の動作)の向きに対する相対的な向きに変換することで行っても良い。この方法によっても、手指動作データの向きの正規化を行うことが可能である。なお、空中署名の最初の動作は、静止後の最初の動作として検出可能である。
【0046】
このようにして、3次元情報統合モジュール43は、3次元筆跡データと3次元手指動作データとを統合することができる。図6は、文字「あ」を署名したときの筆跡と手指動作の向きとを模式的に説明した図である。図6(a)は筆跡を表す図であり、図6(b)は手指の移動方向を表す図である。なお、実際には署名は空中で行われ、筆跡や移動方向も3次元で表されるが図では2次元的に表現している。また、手指の移動速度(の大きさ)や加速度も認証に用いられるが、この図では移動速度や加速度は表していない。図6に示すように、筆跡はいくつかのストロークに分割することができる。直線部分では移動方向はほぼ一定であるのに対し、曲線部分では移動方向は連続的に変化する。
【0047】
認証データベース44には、認証を受けるべき人の3次元筆跡データおよび手指動作データが、あらかじめ取得され格納されている。
【0048】
比較照合モジュール45は、3次元情報統合モジュール43で統合された、利用者の3次元筆跡データと3次元手指動作データを、認証データベース44に格納されたデータと照合して一致するか否かの判定を行う。この照合は、例えば、DPマッチングなどのアルゴリズムを用いて行うことができる。比較照合の結果、両者が同一人物による空中署名動作であると認められるほど近似している場合は「本人である」との認証結果を出力する。逆に近似していない場合は「本人ではない」との認証結果を出力する。
【0049】
(実施形態の作用・効果)
本実施形態の署名認証システムによれば、ステレオカメラと3次元加速度センサとを用い、加速度データに基づいて指先の位置候補を絞り込んだり、指先が検出できない場合に加速度データに基づいて指先位置を推定したりすることで、高精度に連続的な署名軌跡を得ることができる。
【0050】
また、3次元加速度センサのみを用いた場合は、加速度センサの向きを認証装置に対して一意に定める必要があるが、カメラ画像と組み合わせることにより、署名方向に対する加速度センサの向きを一意に与えることができる。すなわち、ステレオカメラと3次元加速度センサを組み合わせることで、署名動作の方向・角度による認識率の低下を防ぐことができ、認証装置に対する空中署名動作の方向・角度に対して頑健性を持たせることができる。
【0051】
このように、本実施形態の署名認証システムによれば、設置場所におけるカメラの角度による影響を受けにくく、同じ署名データを用いて複数箇所での個人認証を実施することができる。
【0052】
(変形例)
なお、上述の説明では、ステレオカメラから得られる画像から指先の位置を検出したが、手の位置(重心位置など)を検出しても良い。また、利用者に発光ペンなどの装置を持たせるようにし、発光ペンの輝点位置を検出するようにしても良い。この場合、発光ペンに3次元加速度センサを内蔵することが好適である。
【0053】
また、上述の説明では、認証装置4とステレオカメラ2とを異なる装置としているが、認証装置4にステレオカメラ2が内蔵されていても構わない。また、3次元加速度センサ3と認証装置4との間は無線通信によって通信を行っているが、この通信が有線で行われても構わない。
【0054】
また、上述の説明では、3次元筆跡データと手指動作データを用いて個人認証を行っているが、手指動作データのみを用いて個人認証を行う構成としても良い。もっとも、この場合であっても手指動作データを、空中署名が行われた平面に対する向きに補正するために、ステレオカメラを用いて3次元筆跡データを取得することが好ましい。認証データベース44には、手指動作データのみが格納されていればよい。
【0055】
(アプリケーション例)
上記で説明した署名認証システムは、例えば、門戸や扉などの前に設置し、空中署名による認証が成功した場合にドアロックを解除するセキュリティシステムとして応用することができる。また、室内カメラを用いて、室内における個人認証に利用することもできる。また、車両のドア部に設置して、空中署名によってドアロックを解除するために用いることもできる。この場合、3次元加速度センサを車両のキー(エンジンキー)に設置することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態に係る署名認証システムの構成を示す図である。
【図2】指先画像の例を示す図である。
【図3】テンプレートマッチングによる指先検出処理を説明する図である。
【図4】ステレオカメラ画像から3次元位置を算出する処理を説明する図である。
【図5】空中署名動作のステレオカメラに対する向きを説明する図である。
【図6】空中署名の筆跡と偏角を表す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 署名認証システム
2 ステレオカメラ
3 3次元加速度センサ
4 認証装置
41 3次元座標算出モジュール
42 速度分布県債モジュール
43 3次元情報統合モジュール
44 認証データベース
45 比較照合モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証システムであって、
ステレオカメラと、
前記ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得する筆跡取得手段と、
ユーザの手指動作の加速度データを取得する3次元加速度センサと、
前記3次元加速度センサから得られる加速度データに基づいて、手指動作データを取得する手指動作取得手段と、
あらかじめ取得された、3次元筆跡データと手指動作データとを記憶する登録データ記憶手段と、
前記筆跡取得手段によって取得された3次元筆跡データおよび前記手指動作取得手段によって取得された手指動作データを、前記登録データ記憶手段に記憶された3次元筆跡データおよび手指動作データと照合して個人認証を行う認証手段と、
を備える3次元署名認証システム。
【請求項2】
前記筆跡取得手段は、前記手指動作取得手段によって得られる手指動作データに基づいて、前記ユーザの手指の3次元位置候補を絞り込んで、その位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の3次元署名認証システム。
【請求項3】
前記筆跡取得手段は、前記ステレオカメラから得られる画像から前記ユーザの手指を検出できなかった場合は、前記手指動作取得手段によって得られる手指動作データと、直近に得られた手指の3次元位置とに基づいて、手指の3次元位置を推測する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の3次元署名認証システム。
【請求項4】
前記認証手段は、
前記筆跡取得手段によって取得された3次元筆跡データから、前記ステレオカメラに対する署名動作が行われる向きを算出し、
前記手指動作取得手段によって得られた手指動作データを、前記署名動作が行われる向きに対する相対的な向きに変換した上で、照合に用いる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の3次元署名認証システム。
【請求項5】
空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証システムであって、
ステレオカメラと、
前記ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得する筆跡取得手段と、
ユーザの手指動作の加速度データを取得する3次元加速度センサと、
前記3次元加速度センサから得られる加速度データに基づいて、手指動作データを取得する手指動作取得手段と、
あらかじめ取得された、手指動作データを記憶する登録データ記憶手段と、
前記筆跡取得手段によって取得された3次元筆跡データから署名動作が行われた向きを算出し、前記手指動作取得手段によって得られた手指動作データを前記向きに相対的な向きに変換した上で、前記登録データ記憶手段に記憶された手指動作データと照合して個人認証を行う認証手段と、
を備える3次元署名認証システム。
【請求項6】
空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証方法であって、
あらかじめ取得された、3次元筆跡データと手指動作データとを記憶する登録データ記憶手段を備えた情報処理装置が、
ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出
して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得するステップと、
3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データに基づいて、ユーザの手指動作データを取得するステップと、
取得された3次元筆跡データおよび手指動作データを、前記登録データ記憶手段に記憶された3次元筆跡データおよび手指動作データと照合して個人認証を行うステップと、
を実行する3次元署名認証方法。
【請求項7】
空中での署名動作に基づいて認証を行う3次元署名認証方法であって、
あらかじめ取得された手指動作データを記憶する登録データ記憶手段を備えた情報処理装置が、
ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得するステップと、
3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データに基づいて、ユーザの手指動作データを取得するステップと、
取得した3次元筆跡データから署名動作が行われた向きを算出するステップと、
取得した手指動作データを前記署名動作が行われた向きに対する相対的な向きに変換した上で、前記登録データ記憶手段に記憶された手指動作データと照合して個人認証を行うステップと、
を実行する3次元署名認証方法。
【請求項8】
空中での署名動作に基づいて認証を行うための3次元署名認証プログラムであって、
あらかじめ取得された、3次元筆跡データと手指動作データとを記憶する登録データ記憶手段を備えた情報処理装置に対して、
ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得するステップと、
3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データに基づいて、ユーザの手指動作データを取得するステップと、
取得された3次元筆跡データおよび手指動作データを、前記登録データ記憶手段に記憶された3次元筆跡データおよび手指動作データと照合して個人認証を行うステップと、
を実行させる3次元署名認証プログラム。
【請求項9】
空中での署名動作に基づいて認証を行うための3次元署名認証プログラムであって、
あらかじめ取得された手指動作データを記憶する登録データ記憶手段を備えた情報処理装置に対して、
ステレオカメラから連続的に得られる画像から、ユーザの手指の3次元位置を逐次検出して、手指の軌跡である3次元筆跡データを取得するステップと、
3次元加速度センサから得られる手指動作の加速度データに基づいて、ユーザの手指動作データを取得するステップと、
取得した3次元筆跡データから署名動作が行われた向きを算出するステップと、
取得した手指動作データを前記署名動作が行われた向きに対する相対的な向きに変換した上で、前記登録データ記憶手段に記憶された手指動作データと照合して個人認証を行うステップと、
を実行させる3次元署名認証プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−9280(P2009−9280A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168902(P2007−168902)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】