説明

3次元造形装置

【課題】 装置のサイズが大きくなるのを抑制しつつ、脱臭効率を向上させることができる3次元造形装置を提供する。
【解決手段】 造形ステージ112が略水平に配置される造形室Rzと、造形室Rz内の造形空間に対して外気を取り込む吸気口11aと、造形空間からの空気を排出するための排気口52aと、造形室Rzの下方に配置される脱臭室Rdと、排気口52aと脱臭室Rd内の上部に設けられる連通口141とを接続する排気ダクトDにより構成される。脱臭室Rdは、略水平に配置された誘導板142により、上部導風路143及び下部導風路144に分割され、誘導板142の前端を回り込んで上部導風路143から下部導風路144へ流れるUターン型の導風経路を形成し、下部導風路144には、排気ファン145が配置されるとともに、排気ファン145よりも前方に脱臭フィルタ146が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元造形装置に係り、さらに詳しくは、造形ステージ上に造形材からなる造形材層を積層形成する3次元造形装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層造形法を用いて、立体造形物を簡易的に作製することが行われている。積層造形法は、造形対象物を多数の薄い層に分割した際の各層と同じ2次元形状の薄板を形成し、この薄板を積層して立体造形物を作製する造形方法であり、ラピッドプロトタイピングに用いられている。この様な積層造形法には、光造形法、粉末結合法、シート堆積法、樹脂押し出し法、インクジェット方式などがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
インクジェット方式の造形法は、インクジェットプリンタの技術を利用した造形法であり、インクの代わりに紫外線(UV)硬化樹脂などの光硬化性の造形材を用い、造形材をノズルから吐出させ、造形ステージ上に堆積させた造形材にUV光を照射して固化させる。この造形法では、造形材を吐出するための多数の吐出口が略直線状に配列された造形材ノズルを造形ステージと平行に2次元走査することによって、造形材からなるスライス層が形成され、スライス層を順に積層形成することによって立体造形物が形成される。
【0004】
インクジェット方式の3次元造形装置において用いられるUV硬化樹脂は、固化時に特有の刺激臭を発する。一方、造形ステージ上に堆積した造形材は、UV光が照射されることから高温状態になり、そのまま放置すれば熱だれを生じるので、冷却する必要がある。通常、インクジェット方式の造形装置には、造形ステージ上へ外気を流入させるための吸気口と、造形ステージ上に流入したエアを排出するための排気ダクトが設けられ、外気に曝すことによって造形材の冷却が行われている。このため、造形ステージ上のエアが排気ダクトを介して外部へ排出され、刺激臭が造形装置外へ拡散してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−90530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
造形ステージ上の造形材を冷却するために流入させたエアが造形装置外へ排出されてしまうという課題は、インクジェット方式の造形装置に限らず、3次元造形装置全般に共通の課題である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、造形ステージ上に流入させたエアを脱臭して外部へ排出することができる3次元造形装置を提供することを目的とする。
【0008】
特に、装置のサイズが大きくなるのを抑制しつつ、脱臭効率を向上させることができる3次元造形装置を提供することを目的とする。また、脱臭フィルタの濾材全体を均一に用いて脱臭することができる3次元造形装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、脱臭フィルタの濾材を交換する際の作業性を向上させることができる3次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明による3次元造形装置は、造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成する3次元造形装置であって、造形材からなる造形材層が積層形成される上記造形ステージが略水平に配置される造形空間を形成する造形室と、上記造形室の、装置前面部に形成され、造形室内の造形ステージを含む造形空間に対して外気を取り込む吸気口と、上記造形室の、装置背面部に形成され、上記造形空間からの空気を排出するための排気口と、上記造形室の下方に配置される脱臭室と、上記造形室の排気口と、上記脱臭室内の上部に設けられる連通口とを接続するとともに、装置背面部に設けられる排気ダクトとを備えて構成される。上記脱臭室は、略水平に配置された誘導板により、上部導風路及び下部導風路に分割され、上記誘導板の装置前面部に向かって延びる前端を回り込んで上記上部導風路から上記下部導風路へ流れるUターン型の導風経路を形成し、上記下部導風路には、排気ファンが配置されるとともに、上記排気ファンよりも前方に脱臭フィルタが配置され、上記脱臭フィルタは、下部導風路内において、装置の背面側に位置する脱臭フィルタ端部が高さ方向において、誘導板の近傍となるように配置されるとともに、その一端部と対向する位置にあって装置の前面側に位置する脱臭フィルタの他端部が高さ方向において、上記一端部よりも低い位置となるように傾けて配置され、上記誘導板は、上記脱臭フィルタの配置に対して、装置の前面側に位置する誘導板端部が装置の前後方向において、脱臭フィルタの中間部に位置するように配置される。
【0011】
この様な構成によれば、吸気口から造形室に流入したエアは、造形ステージ上を通って排気口から排気ダクトへ排出され、排気ダクトを通って脱臭室へ流入する。連通口から脱臭室に流入したエアは、脱臭フィルタによって濾過され、排気ファンを介して外部へ排出される。このため、造形室に流入させたエアを脱臭してから外部へ排出することができ、刺激臭が3次元造形装置外へ拡散するのを抑制することができる。また、脱臭室に流入したエアは、誘導板の前端を回り込むUターン型の導風経路を通って排気ファンへ到達する。エアが誘導板の前端を回り込む際は、前端から離れるほど経路長が長くなって流速が低下することから、下側ほど流速が遅い層流としてエアを脱臭フィルタへ流入させることができる。このため、脱臭フィルタの前面を上方に傾けて配置することにより、エアを脱臭フィルタ全体に均一に流入させることができ、脱臭フィルタによるエアの脱臭効率を向上させることができる。さらに、脱臭フィルタを傾斜させているので、3次元造形装置のサイズが大きくなるのを抑制することができる。従って、装置のサイズが大きくなるのを抑制しつつ、脱臭効率を向上させることができる。
【0012】
第2の本発明による3次元造形装置は、上記構成に加え、上記下部導風路の風路断面が上記上部導風路よりも広くなるように構成される。この様な構成によれば、上部導風路を通って前方へ誘導されたエアが誘導板の前端を回り込む際に十分に減速させることができる。
【0013】
第3の本発明による3次元造形装置は、上記構成に加え、上記脱臭フィルタが、平板状の濾材からなり、その中央が概ね上記誘導板の上記前端の下方に位置しているように構成される。
【0014】
この様な構成によれば、エアが誘導板の前端を回り込む際の等流速面に合わせて脱臭フィルタの濾材を傾斜させることにより、エアを脱臭フィルタの濾材全体に均一な速度で概ね垂直に流入させることができる。このため、エアが脱臭フィルタを通過する際に、脱臭フィルタの濾材全体を均一に用いて脱臭することができ、十分な脱臭効果を得ることができる。
【0015】
第4の本発明による3次元造形装置は、上記構成に加え、上記脱臭室が、上記誘導板の前端よりも前方に、外部から上記脱臭フィルタへアクセスするための開閉扉が設けられているように構成される。この様な構成によれば、開閉扉を開扉することにより、脱臭フィルタへアクセスすることができるので、脱臭フィルタの濾材を交換する際の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による3次元造形装置では、造形室に流入させたエアを脱臭してから外部へ排出することができる。また、脱臭室に流入したエアを誘導板の前端を回り込ませて脱臭フィルタへ流入させることにより、エアを脱臭フィルタ全体に均一に流入させることができ、脱臭フィルタによるエアの脱臭効率を向上させることができる。さらに、脱臭フィルタを傾斜させているので、3次元造形装置のサイズが大きくなるのを抑制することができる。従って、装置のサイズが大きくなるのを抑制しつつ、脱臭効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明による3次元造形装置では、開閉扉を開扉することにより、脱臭フィルタへアクセスすることができるので、脱臭フィルタの濾材を交換する際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による3次元造形装置10を含む造形システム100の一構成例を示したシステム図である。
【図2】図1の3次元造形装置10の一構成例を示した斜視図であり、作業空間110及びカートリッジ収容空間130内の様子が示されている。
【図3】図2のヘッドユニット111の概略構成の一例を示した図であり、ヘッドユニット111をx,y,z方向から見た様子が示されている。
【図4】図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、造形ステージ112上に立体造形物が形成される様子が示されている。
【図5】図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、x方向の主走査往路及び主走査復路の様子が示されている。
【図6】図1の3次元造形装置10をyz面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図7】図6の造形室Rzをzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図8】図6の脱臭室Rdをyz面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明による3次元造形装置が前提とするインクジェット方式の造形装置の概略構成について、図1〜図5を用いて説明する。
【0020】
<造形システム100>
図1は、本発明の実施の形態による3次元造形装置10を含む造形システム100の一構成例を示したシステム図である。この造形システム100は、3次元造形装置10と、LAN(Local Area Network)1を介して3次元造形装置10に接続された複数の造形依頼者端末20により構成される。
【0021】
3次元造形装置10は、インクジェット方式の積層型造形機であり、所定のUV硬化樹脂を造形材として用い、後述する造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成することによって所望の立体造形物を形成する。造形依頼者端末20は、3次元造形用のアプリケーションプログラムがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)であり、所望の立体造形物を作製するための造形データを生成する造形データ作成装置として機能する。
【0022】
造形データは、造形対象物の3次元形状を示す形状情報と、形状情報以外の造形条件とからなる。造形データは、例えば、CADデータに基づいて作成され、必要に応じて、3次元造形装置10で用いられる積層データとして、各層単位でのデータに加工される。但し、層単位でのデータ加工は、3次元造形装置10側で行われても良い。形状情報以外の造形条件とは、造形対象物に関わらず指定することが可能な造形情報のことであり、造形材の種類、造形材層の厚さ、走査速度などの造形パラメータと、造形ステージ上における造形対象物の配置態様を示す配置情報とからなる。
【0023】
造形依頼者端末20において作成された造形データは、3次元造形装置10へ送信される。3次元造形装置10では、LAN1を介して造形依頼者端末20から受信した複数の造形データが造形ジョブとして管理される。すなわち、造形ジョブは、造形データと、造形データに関連付けて保持される属性情報とからなる。この属性情報には、造形データの識別情報、造形データの送受信日時、造形依頼者の識別情報などが含まれる。造形依頼者端末20は、この様な造形処理の依頼者が使用する端末装置である。
【0024】
この3次元造形装置10には、造形室扉11、操作表示部12、タンク室扉13及び脱臭室扉14が設けられている。造形室扉11は、外部から後述する作業空間110へアクセスするのを規制し、また、造形材などが外部空間へ飛散するのを防止するための開閉可能な遮断扉であり、手前側を持ち上げることにより、作業空間110へアクセスすることができる。この造形室扉11には、造形ステージ上へ外気を流入させるための吸気口11aが設けられている。操作表示部12は、例えば、タッチパネルからなり、ユーザによる操作を受け付け、また、動作状態や各種のエラーメッセージを画面表示する。
【0025】
タンク室扉13は、造形材カートリッジや廃液タンクを収容するカートリッジ収容空間130へアクセスするための開閉扉であり、上部を手前側へ移動させることにより、後述するカートリッジ収容空間130へアクセスすることができる。脱臭室扉14は、後述する脱臭空間140へアクセスするための開閉扉であり、上部を手前側へ移動させることにより、脱臭空間140へアクセスすることができる。
【0026】
<3次元造形装置10>
図2は、図1の3次元造形装置10の一構成例を示した斜視図であり、作業空間110及びカートリッジ収容空間130内の様子が示されている。図中には、造形室扉11及びタンク室扉13を開扉した状態の3次元造形装置10が示されている。
【0027】
作業空間110は、造形材を吐出するヘッドユニット111を2次元走査させ、また、ヘッドユニット111から吐出した造形材を造形ステージ112上に堆積させるための造形空間であり、作業台としての天板116上に形成されている。この天板116には、ヘッドユニット111を主走査方向であるx方向に駆動させる際にヘッドユニット111をガイドする一対のx走査用係合溝113aと、ヘッドユニット111を副走査方向であるy方向に駆動させる際にヘッドユニット111をガイドするy走査用ガイド機構113bと、パージトレイ114及び受光孔115が配置されている。なお、ヘッドユニット111は、一方のx走査用係合溝113aに沿って作業台近傍に設けられる図示しない駆動手段によってx走査方向に往復動されるようになっている。
【0028】
造形ステージ112は、水平で平坦な造形面を有し、造形面上に造形材を堆積させ、立体造形物を形成するための可動ステージであり、鉛直方向に移動させることができる。この造形ステージ112は、天板116の中央に配置されている。ヘッドユニット111は、図示しない駆動装置によって、造形ステージ112と平行に2次元走査される可動ユニットである。
【0029】
この3次元造形装置10では、鉛直方向をz方向とし、互いに直交する水平方向をxy方向とすれば、ユーザから見て左右方向となるx方向を主走査方向とし、ユーザから見て前後方向となるy方向を副走査方向として、2次元走査が行われる。造形材は、主走査方向の走査時に吐出される。また、ヘッドユニット111は、上記2次元走査により、矩形エリア内の任意の位置に移動させることができ、当該矩形エリアが可動エリアとなる。
【0030】
また、言い換えれば、ここでのy方向とは、後述するモデル材用ノズルユニット32及びサポート材用ノズルユニット31の各々が有する複数のオリフィス(後述する吐出口2)が配列した並び方向であり、x方向は水平面内においてこのy方向と直交する方向である。
【0031】
x走査用係合溝113aは、ヘッドユニット111を主走査方向へ走査する駆動装置と係合させるための溝であり、天板116の前端部及び後端部に形成されている。パージトレイ114は、ヘッドユニット111から排出された造形材を使用済み造形材として一時的に収容する容器であり、その様な使用済み造形材からなる造形材液が排液として保持される。パージトレイ114は、ヘッドユニット111の可動エリア内であって、造形ステージ112よりも左側に配置されている。
【0032】
3次元造形装置10では、造形処理中において、定期的にパージ処理が行われる。パージ処理は、ヘッドユニット111を造形エリアとしての造形ステージ112上からパージトレイ114上に移動させ、ヘッドユニット111に搭載されている造形材ノズル312,322から造形材を強制的に吐出させることにより、造形材を吐出するための吐出口2や、吐出口2に造形材を供給するための造形材供給経路内に残留する残留物を除去するとともに、造形材ノズル312,322の表面に、図示しないゴム部材を当接させ、摺動させることにより、造形材ノズル表面を清掃する処理である。ここで、ノズルから吐出された造形材は、後述する廃液タンク13Hに回収されるようになっている。
【0033】
受光孔115は、造形材を硬化させるためのUV光の照度を検出する照度センサ用の受光窓であり、天板116に形成された貫通孔からなる。この受光孔115は、上述したパージ用の廃液トレイ(パージトレイ114)の近傍を避け、造形ステージ112を挟んでパージトレイ114とは反対側に配置されている。また、具体的な動作としては、操作表示部12に設けられるランプユニット35の照度検査スイッチを押下し、ヘッドユニット111を駆動させることにより、自動的に受光孔115の真上に位置させ、ランプユニット35を点灯させ、UV光の照度を、受光孔115の内部に設けられる照度センサにより検出させる。
【0034】
カートリッジ収容空間130には、2つのモデル材カートリッジ13Mと、2つのサポート材カートリッジ13Sと、廃液タンク13Hが収容されている。ヘッドユニット111から吐出される造形材には、造形対象物自体を構成するモデル材Mと、造形対象物のオーバーハング部分や孤立部分を支持し、最終的には除去されるサポート材Sとがある。
【0035】
本実施例では、サポート材Sは、モデル材Mに比べ、サポート材Sを除去するための水に対する溶解性の高い材料が含まれている。なお、ここでのオーバーハング部分とは、造形物がz方向(つまり高さ方向)において下方に位置する造形部分よりx−y平面で張り出した部分を意味し、言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。
【0036】
モデル材カートリッジ13Mは、使用前のモデル材Mを収容する着脱式の造形材タンクである。サポート材カートリッジ13Sは、使用前のサポート材Sを収容する着脱式の造形材タンクである。つまり、モデル材カートリッジ13Mやサポート材カートリッジ13Sには、ヘッドユニット111の造形材ノズル312,322から吐出させる前の造形材が収容される。
【0037】
廃液タンク13Hは、パージトレイ114や後述するヘッドユニット111内のローラードレイントレイ(図示せず)から回収された廃液を蓄積するための貯留容器であり、取り外して交換することができる。なお、廃液タンク13Hには、内部に液面検出用のセンサや、廃液タンク13H自体の重量を検出する重量センサなどを設けることにより、廃液タンク13H内の廃液の程度を検出し、オペレータに通知する機能を搭載している。
【0038】
カートリッジ収容空間130には、2個のモデル材カートリッジ13Mと、2個のサポート材カートリッジ13Sとが収容可能であり、両カートリッジを交互に使用することにより、造形処理を中断させることなく空になったカートリッジを交換することができる。
【0039】
<ヘッドユニット111>
図3は、図2のヘッドユニット111の概略構成の一例を示した図であり、図中の(a)には、ヘッドユニット111をy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)から見た様子が示され、(b)には、x方向(ヘッドユニット111の主走査方向)から見た様子が示され、(c)には、z方向から見た様子が示されている。
【0040】
このヘッドユニット111は、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32、y走査用ホルダユニット33、ローラーユニット34及びランプユニット35により構成され、これらのユニット31〜35を一体的に保持している。ユニット31〜35は、この順に、x方向に配列されている。
【0041】
なお、x軸方向に沿うサポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32、ローラーユニット34及びランプユニット35の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッドユニット111の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルユニットのレイアウトに対して、ローラーユニット34ならびにランプユニット35は、ローラーの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32の後方にローラーユニット34、ランプユニット35の順で配置し、ローラーの作用を復路で行いたい場合は、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32の復路の進行方向において後方にローラーユニット34、ランプユニット35の順で配置すればよい。
【0042】
また、上記実施例においては、ヘッドユニット111から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラーユニット34による余剰樹脂の掻き取りを行った後、ランプユニット35によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0043】
しかし、これ以外にも、ヘッドユニット111から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、ランプユニット35によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラーユニット34による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度ランプユニット35によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法もある。
【0044】
この場合、ランプユニット35は、ヘッドユニット111において、x方向、つまりヘッドユニット111の主走査方向で、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32を挟む前後方向に一対のランプユニット35を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラーユニット34による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラーユニット34による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
【0045】
モデル材用ノズルユニット32は、モデル材カートリッジ13Mから供給されるモデル材Mを吐出するためのノズルユニットであり、モデル材Mを一時的に収容するリザーブタンク321と、造形ステージ112に対しモデル材Mを吐出する複数の吐出口2がy方向に配列された造形材ノズル322からなる。
【0046】
サポート材用ノズルユニット31は、サポート材カートリッジ13Sから供給されるサポート材Sを吐出するためのノズルユニットであり、サポート材Sを一時的に収容するリザーブタンク311と、サポート材Sを吐出する複数の吐出口2がy方向に配列された造形材ノズル312からなる。
【0047】
モデル材Mやサポート材Sは、造形材ノズル322ならびに312の各々に設けられる吐出口2ごとにノズルユニット内に設けられる圧電素子の振動を利用することにより、吐出口2から液滴となって射出される。吐出口2は一定ピッチでy方向において直線上に配置されている。
【0048】
ヘッドユニット111は、造形材ノズル312,322から造形材を吐出させながらx方向に走査することにより、造形材ノズル312,322の各々に設けられる全ての吐出口2の配列長さに対応する所定幅の造形材層を1回の主走査によって造形ステージ112上に形成することができる。
【0049】
y走査用ホルダユニット33は、ヘッドユニット111を副走査方向へ走査するために、x走査用係合溝113間を結ぶ橋梁体に支持されている。このy走査用ホルダユニット33が上記橋梁体に支持されるとともに、橋梁体上に設けられる図示しない駆動部により、橋梁体に設けられる図示しないy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)に延びる軸に沿ってヘッドユニット111を駆動する構造となっている。なお、ヘッドユニット111のy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)の駆動方式としては、ヘッドユニット111自体に駆動部を内蔵させ、上述した軸上を移動させるようにしてもよい。
【0050】
ローラーユニット34は、膜厚調整用ローラー341と、このローラー341を回転させる駆動部(図示せず)と、膜厚調整用ローラー341によって造形ステージ112上に形成される造形材層の最表面から掻き取られた造形材を使用済み造形材として一時的に収容するローラードレイントレイからなる。
【0051】
膜厚調整用ローラー341は、造形ステージ112上に吐出し堆積させた造形材膜の厚さを調整する。より詳細に説明すれば、膜厚調整用ローラー341は、造形材ノズル312,322から吐出された造形材にて形成された最表面層の一部を、ランプユニット35にて硬化させる前に所定の厚みを掻き取ることにより、最表面層の厚みの最適化を図っている。また、膜厚調整用ローラー341は、造形材膜の表面を平坦化するためのローラーでもあり、y方向の回転軸を中心として回転する。より詳細に説明すれば、膜厚調整用ローラー341が作用する際のヘッドユニット111の進行方向に対して、膜厚調整用ローラー341は、順方向に回転する。膜厚調整用ローラー341にて掻き取られ、上記ローラードレイントレイ内に収容された造形材は、使用済み造形材からなる廃液として廃液タンク13Hへ送られる。
【0052】
ランプユニット35は、造形ステージ112上に吐出し堆積させた造形材膜にUV光を照射するためのUVランプ351からなり、吐出口2の配列長さよりも幅が広い照射エリアを造形ステージ112上に形成することができる。
【0053】
図3に示すランプユニット35のレイアウトを採用した場合は、図の左から右にヘッドユニット111を移動させる、いわゆる主走査の往路においては、ランプユニット35は、造形材ノズル312,322よりも先行した位置に配置されるため、往路に吐出した造形物の表面にUV光を照射することがない。従って、点灯制御を容易化するため、常時点灯していてもよい。実際のUV光の照射は、復路において、膜厚調整用ローラー341が造形物の最表面の厚みを適正化した後の最表面に対して行われることとなる。
【0054】
なお、ここでのランプユニット35は、UV光を照射する光源であれば、UV光照射用ランプに限る必要はなく、UV光を照射するLED光源も含むものである。つまり、UV光などの樹脂硬化に必要な特定波長の光を照射する樹脂硬化用の光照射手段である。更に、光硬化型の樹脂に代えて、造形用樹脂として所定の温度によって硬化するような熱可塑性樹脂を採用するのであれば、本発明のランプユニット35に代えて、樹脂硬化手段として、冷却または加熱手段を採用したり、場合によっては、不要な場合もある。
【0055】
<造形処理>
図4は、図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、造形ステージ112上に立体造形物が形成される様子が示されている。図中には、立体造形物を造形中の3次元造形装置10におけるヘッドユニット111及び造形ステージ112をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面の様子が示されている。
【0056】
モデル材M及びサポート材Sは、造形ステージ112に対し、主走査方向(x方向)の走査中にヘッドユニット111から下方へ液滴3となって吐出される。主走査往路時に造形ステージ112上に吐出し堆積させたこれらの造形材からなる造形材層は、主走査復路において、膜厚調整用ローラー341により膜厚が調整され、UVランプ351によるUV光の照射によって硬化する。なお、上記の説明では、モデル材M及びサポート材Sの吐出を、主走査の往路方向にて行うと共に、ヘッドユニット111の主走査の復路において行っても良い。また、モデル材M及びサポート材Sの吐出を、ヘッドユニット111の主走査の復路単独で行ってもよい。
【0057】
本実施の形態におけるモデル材M及びサポート材Sは、共にUV硬化性の樹脂であり、同一のUVランプ351によりUV光が照射されることにより硬化する。なお、3次元造形装置10に使用可能な樹脂としては、光硬化性の樹脂の他に、熱を与えて硬化させる熱硬化性の樹脂や、自然冷却により硬化する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0058】
ヘッドユニット111のy方向の長さ(ヘッド幅)に対応する一定幅の帯状領域は、フィールドと呼ばれ、あるフィールドについて、造形材層の形成が完了すれば、ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)へ移動させ、隣接するフィールドに対する造形材層の形成が開始される。どの程度ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)へ移動させるかは、造形ステージ112上にて形成する造形物をどのような位置に配置させるかによって決定され、その決定は、造形依頼者端末20における依頼者の入力に基づいて行われる。
【0059】
ヘッドユニット111は、x走査用係合溝113a間をy方向に跨ぐ門型の橋梁体に支持され、一対のx走査用係合溝113に沿って主走査方向に走査される。なお、本実施の形態では、門型の橋梁体にヘッドユニット111を支持させ、一対のx走査用係合溝113に沿ってヘッドユニット111を主走査方向に移動させる構成としたが、x走査用係合溝113を1本とし、ヘッドユニット111を片持ちで支持した状態で主走査方向に移動させる構成としても良い。
【0060】
ヘッドユニット111に配設されたモデル材用ノズルユニット32及びサポート材用ノズルユニット31により造形可能なy方向の幅は造形ステージ112上の造形エリアに対して短いため、ヘッドユニット111を主走査方向へ往復移動させて1フィールド分の造形が完了すると、ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)に移動させて隣接するフィールドの造形が行われる。ユーザが設定した立体造形物が1フィールド内に収まる場合には、ヘッドユニット111の副走査方向への移動は行われない。なお、ヘッドユニット111による造形可能なy方向の幅が造形ステージ112上の造形エリアのy方向の幅よりも同一又は大きい場合には、ヘッドユニット111は副走査方向へ移動させながら造形する必要はなく、副走査方向への移動機構は不要となる。
【0061】
造形ステージ112上には、上述したヘッドユニット111の主走査及び副走査によって造形材層がフィールドごとに形成され、立体造形物を構成する1つの樹脂層が形成される。この樹脂層は、スライス層と呼ばれ、あるz方向の位置でスライス層の形成が完了すれば、造形ステージ112をスライス層の厚さに相当する距離だけ下方向(z方向)へ移動させ、次のスライス層の形成が開始される。
【0062】
この3次元造形装置10では、着脱可能な可搬プレート41の上面が造形ステージ112であり、可搬プレート41と、可搬プレート41が載置されるプレート取付台42とから、z方向に移動可能なz移動ユニット40が構成される。z移動ユニット40は、z駆動装置43によりz方向の位置が調整される。z駆動装置43は、ヘッドユニット111と造形ステージ112との間の高さ方向の相対位置を変化させる垂直駆動手段である。可搬プレート41は、矩形状の金属板からなり、造形依頼者端末20から指示した全ての造形が完了した時点で、立体造形物を載せたままの状態で、プレート取付台42から取り外すことができる。プレート取付台42には、可搬プレート41を固定するための固定機構(図示せず)が設けられる。
【0063】
立体造形物は、モデル材Mによって構成され、サポート材Sは、立体造形物のオーバーハング部分や孤立部分を支持し、最終的には所定の方法によって除去される。例えば、モデル材Mとして、水に対し不溶性又は難溶性の樹脂を用い、サポート材Sとして、易溶性の樹脂を用いれば、可搬プレート41上に形成された造形物を取り出して水に浸すことにより、サポート材Sからなる造形材層だけを容易に除去することができる。また、言うまでもなく、造形物としてのモデル材Mからサポート材Sの除去は、従来通り、手を用いてモデル材Mからサポート材Sを外すようにしても良い。
【0064】
この例では、可搬プレート41上に形成された下地層SS上にモデル材M及びサポート材Sからなるスライス層を積層形成することによって所望の立体造形物が形成される。下地層SSは、可搬プレート41の傾きや表面の凹凸を吸収し、また、造形物を剥離し易くするサポート材Sからなる。さらに、この下地層SSは、可搬プレート41の傾きや表面の凹凸を吸収できるのであれば、造形依頼者端末20における造形条件において、中実の構造以外に格子状などの中空構造を採用することにより、材料の使用量の低減を図ることもできる。
【0065】
<主走査>
図5は、図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、図中の(a)には、x方向の主走査往路の様子が示され、(b)には、主走査復路の様子が示されている。主走査往路では、z方向に関して造形ステージ112の位置がヘッドユニット111から離間した位置に固定され、モデル材Mやサポート材Sが造形材ノズル312,322から吐出される。造形ステージ112上には、これらの造形材からなる造形材層4が形成される。
【0066】
なお、図5(a)に開示するヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離と、図5(b)に開示するヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離とは明らかに異なるように示しているが、これは動作の内容をわかりやすく説明するためであり、実際は、図5(a)の状態でのヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離は2mm以下であり、図5(b)におけるその距離は、図5(a)の状態から造形ステージ112をz方向で且つヘッドユニット111に近づくように1mm以下の距離を移動させるようになっている。
【0067】
造形材層4の厚みはユーザが造形精度や造形速度の観点から決定することができる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、造形材層4の厚みは設定可能な最小の厚み又はその近傍の厚みに設定し、造形速度を優先することを選択すれば、最低限の造形精度を維持した厚みに設定すればよい。このような選択は、造形依頼者端末20において形状情報以外の造形条件として選択、設定することができるようになっている。
【0068】
主走査復路の走査は、膜厚調整用ローラー341が造形材層4と接触する位置まで造形ステージ112を上方へ移動させた状態で行われる。この主走査復路では、主走査往路での造形材の吐出に加え、モデル材Mやサポート材Sが造形材ノズル312,322から吐出させることも可能であり、主走査往路や復路で吐出し堆積させた造形材層4の上層部が膜厚調整用ローラー341によって掻き取られる。
【0069】
造形材ノズル312,322に配設された各吐出口2からの造形材の吐出量には個体差があり、また、予め設定された厚みの造形材層4が正確に得られるように、造形材ノズル312,322からの造形材の吐出量を制御するのは困難であるため、少なくとも各造形層を形成する単位で、造形材ノズル312,322からは設定された厚み以上の造形材を吐出し、余分な造形材を膜厚調整用ローラー341により掻き取って回収することで、予め設定された厚みの造形材層4を維持し、均一な厚みの造形材層4を積層することができる。但し、膜厚調整用ローラー341を、その時点での造形層の最表面に当接させるタイミングは、造形データとしての各スライス層データ単位での最表面で行う必要はなく、造形の種々の狙い、例えば、造形精度と造形速度の両立の観点から、必要なタイミングにて行うことができる。
【0070】
膜厚調整用ローラー341は、主走査の往路及び復路に関わらず、一定の回転数で同じ向きに回転する。UVランプ351は、造形材の種類や造形材層4の厚さ、x方向の走査速度に応じた所定の光度で点灯し、主として、膜厚調整用ローラー341による膜厚調整後の造形材層4をUV光の照射によって硬化させる。
【0071】
次に、造形ステージ112上に流入させた外気を脱臭空間140へ誘導し、脱臭フィルタ146によって脱臭してから外部へ排出する構成について、図6〜図8を用いて説明する。
【0072】
図6は、図1の3次元造形装置10をyz面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。この3次元造形装置10は、装置の上から順に概略、ヘッドユニット111と造形ステージ112を備えた造形室Rz、造形室Rzの下方に位置し、造形ステージ112を駆動するz移動ユニット40ならびにそのz方向への駆動部、モデル材カートリッジ13Mやサポート材カートリッジ13Sならびに廃液タンク13Hを収容するタンク室Rt、そして脱臭室Rdから構成されている。更に、最上層の造形室Rzの背面部から最下層の脱臭室Rdの背面部には、上方から下方に延びる排気ダクトDが設けられている。これにより、造形室Rzの背面部に対向する位置に設けられる前面部の吸気口11aから取り入れられた外気は造形室Rz内に導入させた後、造形室Rzの背面部に設けられる排気口52a、それに続く排気ダクトDを介して、最下層に位置する脱臭室Rdに導かれる。脱臭室Rdに導かれた空気は、脱臭室Rd内に設けられる脱臭フィルタ146を通って、排気口53aから外部に排出される。なお、このようなエアの流れは、後述する脱臭室Rdの最下流に位置する排気ファン145によって形成される。
【0073】
なお、上述した造形室Rz、タンク室Rtならびに脱臭室Rdは、最上層に造形室Rzを設け、その下方の同層部にタンク室Rtならびに脱臭室Rdを形成しても良い。その場合は、言うまでもなく、装置背面部に形成される排気ダクトDは、造形室Rzから直接脱臭室Rdに連通することになり、タンク室Rtの背面部を通過しないくてもよい。
【0074】
造形室Rzは、造形ステージ112上の作業空間110を外部空間から遮断するための隔壁からなる気室であり、造形室扉11、造形ステージ112、吸気口11a及び排気口52aが配置されている。造形ステージ112は、略水平に配置されている。造形室扉11は、作業空間110を覆うように装置の前面部に設けられ、造形ステージ112よりも前方に配置される前隔壁51とともに、造形ステージ112の上方に配置される上部隔壁を構成している。吸気口11aは、前隔壁51に形成されている。なお、吸気口11aは、前隔壁51以外に装置の前面部に位置する造形室扉11または造形室扉11と前隔壁51との間に形成しても良い。
【0075】
排気口52aは、造形室Rzの背面部に設けられ、吸気口11aを介して造形ステージ112上に流入したエアを排出するための通気口であり、造形ステージ112よりも後方に配置された後隔壁52に設けられている。つまり、造形ステージ112よりも前方に吸気口11aが配置され、造形ステージ112よりも後方に排気口52aが配置されている。排気口52aは、吸気口11aよりも鉛直方向の高い位置に配置され、ヘッドユニット111内のUVランプ351などで発生する熱を排熱し易くなっている。
【0076】
タンク室Rtは、天板116の下側に形成されるカートリッジ収容空間130を外部空間から遮断するための隔壁からなる気室であり、造形室Rzの下方に配置され、タンク室扉13が配置されている。タンク室扉13は、カートリッジ収容空間130の前方に配置される前隔壁である。
【0077】
脱臭室Rdは、エアの脱臭処理が行われる脱臭空間140を外部空間から遮断するための隔壁からなる気室であり、タンク室Rtの下方に配置され、連通口141及び排気口53aが共に後方、つまり、装置の背面部近傍に配置されている。
【0078】
排気ダクトDは、造形室Rzの排気口52aを脱臭室Rdの連通口141に接続するための導風管であり、造形室Rz及びタンク室Rtの後隔壁よりも後方に配置されている。より詳細には、この排気ダクトDは、装置の背面部の上下方向に延びるように形成され、その上端が排気口52aに接続され、下端が連通口141に接続されている。
【0079】
連通口141は、排気ダクトD内のエアを脱臭空間140内へ流入させるための通気口であり、脱臭室Rdの装置の背面近傍の上部隔壁に設けられている。排気口53aは、脱臭空間140内のエアを外部空間へ排出するための通気口であり、脱臭室Rdの後隔壁53に設けられている。
【0080】
この脱臭室Rdには、脱臭室扉14、誘導板142、排気ファン145及び脱臭フィルタ146が配置されている。誘導板142は、排気ダクトDを介して、装置背面部近傍であって、かつ、脱臭室Rd内の上部に設けられた連通口141から脱臭空間140に流入したエアを装置背面部側から装置前面部方向に誘導することによって、整流するための矩形状の整流板であり、脱臭空間140内に略水平に配置されている。この誘導板142は、上面を連通口141に対向させ、後端を後隔壁53に接触させた状態で固定されている。別の意味では、脱臭室Rdをこの誘導板142によって上下に分割することにより、脱臭室Rd内の上方で且つ装置背面部近傍に設けられた連通口141から脱臭室Rd内の下方で且つ装置背面部近傍に設けられた排気口53aまでの通路をU字状に形成することにより通路長を長くする狙いがある。
【0081】
脱臭室扉14は、装置の前面部に設けられ、誘導板142の前端よりも前方に配置される前隔壁であり、開扉することにより、外部から脱臭フィルタ146へアクセスして脱臭フィルタ146を交換することができる。
【0082】
脱臭空間140は、誘導板142により、風路断面が異なる上部導風路143及び下部導風路144に分割され、誘導板142の前端を回り込んで上部導風路143から下部導風路144へ流れるUターン型の導風経路が形成されている。
【0083】
下部導風路144は、風路断面が上部導風路143よりも広い。すなわち、下部導風路144をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面の鉛直方向の長さA2は、上部導風路143の長さA1よりも長い。このため、上部導風路143内を通って前方へ誘導されたエアは、誘導板142の前端を回り込む際に、十分に減速される。誘導板142の前後方向の長さを調節することにより、脱臭空間140におけるエアの流速を調整することができる。
【0084】
排気ファン145は、誘導板142の前端を回り込んだエアを後方へ誘導し、外部空間へ排出するための送風機であり、下部導風路144内に配置されている。排気ファン145は、例えば、複数のブレードからなるローターを回転軸を中心として回転させることにより、エアを強制的に排出する。この排気ファン145は、回転軸を水平後方に向けた状態で、後隔壁53の排気口53aに対向させて配置されている。
【0085】
脱臭フィルタ146は、外部空間へ排出される前のエアを脱臭するための濾過装置であり、下部導風路144内において排気ファン145よりも前方に配置されている。脱臭フィルタ146は、例えば、平板状の濾材からなり、濾材には、例えば、活性炭を表面に塗布した紙によって、ハニカム状の多数の吸着孔からなる濾過面を形成した部材が用いられる。
【0086】
この脱臭フィルタ146では、濾過面に略垂直にエアを流入させることにより、脱臭フィルタ146を通過する際の圧力損失を少なくしつつ、吸着効率を向上させることができる。この様な脱臭フィルタ146を用いれば、エア中に含まれるVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を吸着除去することができる。ここでは、造形材が固化する際の化学反応により、造形材から気化した成分が脱臭フィルタ146によって、除去される。
【0087】
この脱臭フィルタ146は、上述したように、フィルタ面に対して導かれるエアを極力略垂直に導くことで吸着効率の向上を図ることと、フィルタの設置高さを極力抑えることによる装置のコンパクト化を図ることを両立するため、下部導風路144内において、装置の背面側に位置するフィルタ146の一端部146aを高さ方向において、誘導板142の近傍に配置するとともに、その一端部146aと対向する位置にあるとともに、装置の前面側に位置するフィルタ146の他端部146bを高さ方向において一端部146aよりも低い位置に配置している。
【0088】
つまり、脱臭フィルタ146は、3次元造形装置10の前面方向から背面方向に向けて、フィルタが高くなるように傾斜された状態で、下部導風路144内に配置されている。更に、このような脱臭フィルタ146の配置に対して、誘導板142の装置前面側に位置する端部は、装置前後方向において、脱臭フィルタ146の中間部に位置するように配置される。このことにより、連通口141から上部導風路143内に導かれ、誘導板142の装置前面側に位置する端部から下部導風路144へ回り込むエアは、十分に減速されるとともに、脱臭フィルタ146の面に対して、略垂直方向に導かれることとなる。
【0089】
<造形室Rz>
図7は、図6の造形室Rzをzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。排気口52aは、造形室Rzの後隔壁52に形成され、横長の矩形状の開口からなる。排気口52aに流入したエアは、排気ダクトD内を通って脱臭空間140へ誘導される。
【0090】
この排気ダクトDは、排気口52aから造形ステージ112の位置にかけて、風路断面が下側ほど狭くなっている。このため、排気口52aから流入したエアの流速は、下側ほど速く、排気口52aから流入した際の流速に比べて、連通口141から脱臭空間140へ導入される際の流速が大きくなる。
【0091】
<脱臭室Rd>
図8は、図6の脱臭室Rdをyz面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。排気ダクトDを介して連通口141から脱臭空間140へ流入したエアは、誘導板142の前端を回り込んで、脱臭フィルタ146へ流入される。
【0092】
排気ダクトD内で加速させたエアを上部導風路143の前方へ誘導し、誘導板142の前端を回り込ませることにより、エアの流れを均一化して脱臭フィルタ146へ流入させることができる。
【0093】
脱臭フィルタ146は、その下端が誘導板142の前端よりも前側に配置され、上端が誘導板142の前端よりも後側に配置され、濾材の中央が概ね誘導板142前端の下方に位置する状態で固定されている。
【0094】
誘導板142によって前方へ誘導されたエアの流速は、十分に減速されていることから、誘導板142の前端を回り込んだエアは、脱臭フィルタ146の濾材全体に均一に流入される。すなわち、脱臭フィルタ146の濾材に対し、エアは、濾材全体に均一な速度で概ね垂直に流入される。このため、エアが脱臭フィルタ146を通過する際に、脱臭フィルタ146の濾材全体を均一に用いて脱臭することができ、十分な脱臭効果を得ることができる。
【0095】
また、上部導風路143及び下部導風路144間の風路断面の比率と、脱臭フィルタ146の傾斜角度とを調節することにより、脱臭フィルタ146による脱臭効率と、排熱効率とをバランスさせることができる。
【0096】
本実施の形態によれば、吸気口11aから造形室Rzに流入したエアは、造形ステージ112上を通って排気口52aから排気ダクトD内へ排出され、排気ダクトDを通って脱臭室Rdへ流入する。連通口141から脱臭室Rdに流入したエアは、脱臭フィルタ146によって濾過され、排気口53aから排出される。このため、造形室Rzに流入させたエアを脱臭してから外部へ排出することができ、刺激臭が3次元造形装置10外へ拡散するのを抑制することができる。例えば、3次元造形装置10が建屋内に設置されるのであれば、刺激臭が建屋内に拡散するのを防止することができる。
【0097】
また、脱臭室Rdに流入したエアは、誘導板142の前端を回り込むUターン型の導風経路を通って排気ファン145へ到達する。エアが誘導板142の前端を回り込む際は、前端から離れるほど経路長が長くなって流速が低下することから、下側ほど流速が遅い層流としてエアを脱臭フィルタ146へ流入させることができる。このため、脱臭フィルタ146の前面を上方に傾けて配置することにより、エアを脱臭フィルタ146全体に均一に流入させることができ、脱臭フィルタ146によるエアの脱臭効率を向上させることができる。さらに、脱臭フィルタ146を傾斜させているので、脱臭効率を上げるために脱臭フィルタ146の面積を大きくした場合に、3次元造形装置10のサイズが大きくなるのを抑制することができる。
【0098】
また、脱臭室扉14を開扉することにより、脱臭フィルタ146へアクセスすることができるので、脱臭フィルタ146の濾材を交換する際の作業性を向上させることができる。
【0099】
なお、本実施の形態では、可搬プレート41とプレート取付台42とからz移動ユニット40が構成される場合の例について説明したが、本発明は、可搬プレート41及びプレート取付台42からなるユニットが可動式のものに限定するものではなく、固定式のものであっても良い。すなわち、ヘッドユニット111を鉛直方向へ移動させることにより、可搬プレート41上に造形材層を積層形成するようなものも本発明には含まれる。
【0100】
また、本実施の形態では、3次元造形装置10がインクジェット方式の積層型造形機である場合の例について説明したが、本発明は造形対象物の造形方法をこれに限定するものではなく、造形ステージ112上に造形材層を順に積層形成するものであれば他の方式のものであっても良い。例えば、UV硬化樹脂にレーザー光を照射して固化させる光造形法を採用した造形装置にも本発明は適用することができる。光造形法は、UV硬化樹脂からなる液体を入れた容器の上方から樹脂液面にレーザー光を照射し、レーザー光を2次元走査することによって樹脂液面を選択的に露光し固化させる。或いは、本発明は、粉末結合法、シート積層法、樹脂押し出し法を採用した造形装置にも適用することができる。粉末結合法は、熱可塑性の粉末からなる粉末層にレーザー光を照射することによって粉末層を選択的に溶融固化させ、或いは、砂などの粉末にバインダー液を塗布することによって粉末層を選択的に固化させる造形法である。シート積層法は、LOM(Laminated Object Manufacturing)方式とも呼ばれ、紙などのシート材同士を接着し、ナイフなどを用いて上側のシート材を切断することにより所定形状に切れ目を入れる造形法である。樹脂押し出し法は、FDM(Fused Deposition Molding)方式とも呼ばれ、熱可塑性樹脂を溶融させた状態でノズルから押し出しながらノズルを走査して樹脂層を形成する造形法である。
【符号の説明】
【0101】
100 造形システム
10 3次元造形装置
11 造形室扉
11a 吸気口
110 作業空間
111 ヘッドユニット
112 造形ステージ
113a x走査用係合溝
113b y走査用ガイド機構
114 パージトレイ
116 天板
12 操作表示部
121 操作部
122 表示部
13 タンク室扉
130 カートリッジ収容空間
13M モデル材カートリッジ
13S サポート材カートリッジ
13H 廃液タンク
14 脱臭室扉
140 脱臭空間
141 吸気口
142 誘導板
143 上部導風路
144 下部導風路
145 排気ファン
146 脱臭フィルタ
20 造形依頼者端末
31 サポート材用ノズルユニット
311 サポート材用のリザーブタンク
312 サポート材用の造形材ノズル
32 モデル材用ノズルユニット
321 モデル材用のリザーブタンク
322 モデル材用の造形材ノズル
33 y走査用ホルダユニット
34 ローラーユニット
341 膜厚調整用ローラー
35 ランプユニット
351 UVランプ
40 z移動ユニット
41 可搬プレート
42 プレート取付台
43 z駆動装置
51 前隔壁
52,53 後隔壁
52a,53a 排気口
1 LAN
2 吐出口
3 液滴
4 造形材層
M モデル材
S サポート材
SS 下地層
Rz 造形室
Rt タンク室
Rd 脱臭室
D 排気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成する3次元造形装置において、
造形材からなる造形材層が積層形成される上記造形ステージが略水平に配置される造形空間を形成する造形室と、
上記造形室の、装置前面部に形成され、造形室内の造形ステージを含む造形空間に対して外気を取り込む吸気口と、
上記造形室の、装置背面部に形成され、上記造形空間からの空気を排出するための排気口と、
上記造形室の下方に配置される脱臭室と、
上記造形室の排気口と、上記脱臭室内の上部に設けられる連通口とを接続するとともに、装置背面部に設けられる排気ダクトとを備え、
上記脱臭室は、略水平に配置された誘導板により、上部導風路及び下部導風路に分割され、上記誘導板の装置前面部に向かって延びる前端を回り込んで上記上部導風路から上記下部導風路へ流れるUターン型の導風経路を形成し、
上記下部導風路には、排気ファンが配置されるとともに、上記排気ファンよりも前方に脱臭フィルタが配置され、
上記脱臭フィルタは、下部導風路内において、装置の背面側に位置する脱臭フィルタ端部が高さ方向において、誘導板の近傍となるように配置されるとともに、その一端部と対向する位置にあって装置の前面側に位置する脱臭フィルタの他端部が高さ方向において、上記一端部よりも低い位置となるように傾けて配置され、
上記誘導板は、上記脱臭フィルタの配置に対して、装置の前面側に位置する誘導板端部が装置の前後方向において、脱臭フィルタの中間部に位置するように配置されることを特徴とする3次元造形装置。
【請求項2】
上記下部導風路は、風路断面が上記上部導風路よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項3】
上記脱臭フィルタは、平板状の濾材からなり、その中央が概ね上記誘導板の上記前端の下方に位置していることを特徴とする請求項2に記載の3次元造形装置。
【請求項4】
上記脱臭室は、上記誘導板の上記前端よりも前方に、外部から上記脱臭フィルタへアクセスするための開閉扉が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の3次元造形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate