説明

3,3,4−トリ置換ピペリジニル−N−アルキルカルボン酸塩および中間体

【課題】ある種の3,4,4−トリ置換ピペリジニル−N−アルキルカルボン酸塩中間体を提供する
【解決手段】一般式(2):


(但し式中でRはC1−6アルキルであり、Zは塩酸塩、臭化水素酸塩、コハク酸塩および(+)−ジベンゾイル酒石酸塩から成る基から選ばれたものである)
で表わされる結晶性の化合物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある種の3,4,4−トリ置換ピペリジニル−N−アルキルカルボン酸塩類、新規な中間体およびそれらの同族体の製法に関するものである。最後に本発明は末梢オピオイドアンタゴニストとして有用な、安定な結晶性の化合物と処方を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
末梢オピオイドペプタイドとそのレセプターは腸の運動性の調節において主要な生理的役割をもっていることが、実質的な証拠で示されている。従って特発性便秘や過敏性腸症候群のような胃腸の不全はオピオイドレセプターの関与するコントロールの機能不全が関与しており、これらのレセプターのアンタゴニストとして作用する薬剤は上記の機能不全にかかっている患者にとって有益であろう。本発明の方法と中間体を用いて製造したN−置換ピペリジン類は、末梢選択的オピオイドアンタゴニストとして有用である。特に好ましい3,4,4−トリ置換ピペリジニル−N−アルキルカルボン酸塩は(2S,3R,4R)([[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]アミノ]酢酸(1)である。
【化1】

【0003】
(1)の製造のための中間体として有用な(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸のエチルエステル(2)を製造するための一般的方法は当業者に公知である。Zimmerman はアメリカ特許5250542号(参照によりここに含まれる)にこの方法を記載している。
【特許文献1】米国特許第5250542号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこの方法は、実用的な工業的応用を妨げるところの立体異性体を生成する。所望の式1の化合物の製造は、異性体の分離のために煩雑なクロマト分離操作を必要とし収率は僅か13%に過ぎない。更に各々の中間体は、望ましくない異性体の存在のため、ゴム様物質として単離される。このゴム様の物質は、クロマトグラフィーなしでは如何なる中間体の精製をも拒否し、工業的目的のためには甚だ好ましくないものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エピマー化なしに(1)とそのC1-6アルキルエステルの工業的製造を行い得る結晶性中間体を得る合成法を提供する。また本発明の方法は、許容できる収率で結晶性の(1)とそのC1-6アルキルエステルを生産する。最後に、本発明の合成方法は、所望の目的物の増大と精製を提供する結晶性の中間体を包含する。
【0006】
本発明は、二水和物の形の所望の安定な結晶の(1)を提供する。
この新規な中間体と結晶化方法は、医薬的に活性な3−4,4−トリ置換ピペリジニル−N−アルキルカルボン酸塩類(18及び18a、後記)の商業的開発のために特に重要である。
【0007】
本発明は式2の新規な結晶性塩の許容し得る収率を提供する。但しRはC1-6アルキルでありZ-は塩化物、臭化物、コハク酸塩および(+)−ジベンゾイル酒石酸塩から成る群から選ばれる。
【化2】

【0008】
本発明は、式(3)の化合物を約50ー75%の低級アルコールと約50−25%の水(重量で)から成る溶媒から結晶化することから成る、(3)の化合物の結晶性一水和物の製造法を提供する。
【化3】

【0009】
更に本発明は式(4)の結晶性化合物を提供する。但しR1はC1-6アルキルである。
【化4】

【0010】
該化合物は塩酸塩およびL−リンゴ酸より成る群から選ばれた塩である。塩酸塩は、アセトンモノ溶媒和物として存在する特異的な結晶形である。L−リンゴ酸もまた特異的であって、その化学量論は結晶化溶媒に依存している。すなわちそれは各々1モルのL−リンゴ酸と化合物4から成るか、またはL−リンゴ酸の3モルと化合物4の2モルから成るかであろう。本発明で用いるセスキリンゴ酸塩という用語は、L−リンゴ酸と化合物4の比率が3:2である場合を意味する。最後に本発明は、式5の結晶性ジ水和物を提供する。
【化5】

【0011】
ここで使用したC1-6という用語は、1−6コの炭素原子をもつ分枝状または直鎖状のアルキル基を表す。典型的なC1-6アルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどである。これ以外の類似の用語も、特定の炭素原子数の直鎖または分枝のアルキル基を表す。例えばC1-3アルキルとはメチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピルを表す。
低級アルコールという用語はメタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールを表す。
不活性雰囲気および不活性条件という用語は、混合物が窒素やアルゴンのような不活性ガスの層で覆われた反応条件を表す。
実質的に純粋、という用語は所望の絶対立体異性体および/または多形が少なくとも約90モル%であることを意味する。更に好ましくは少なくとも約95モル%、そして最も好ましくは少なくとも約98モル%の所望の絶対立体異性体および/または多形を意味する。
【0012】
最も好ましくは、本発明の方法の生産物および化合物は、式3の3R,4R−異性体または式6の3S,4S−異性体として存在する化合物である。
【化6】

【化7】

【0013】
更に当業者は、ベンジル置換基はキラル中心に結合することを認識するであろう。本発明は(αS,3R,4R)及び(αR,3S,4S)ジアステレオマーの両方を包含する。本発明の特に好ましい化合物は、置換基のピペリジン環上の立体配置が3R,4Rであり、ベンジル基をもつ炭素がSである場合の式2,3,4及び5の化合物である。当業者は反対のエナンチオマーを製造するために適当な試薬を選択することが出来る。
【0014】
RおよびSという記号は、キラル中心の特定の立体配置を表すのに有機化学で普通に使用されている意味で用いる。次を参照せよ。Organic Chemistry, R. T.Morrison and R. N. Boyd, 4th ed., Allyn & Bacon, Inc., Boston (1983), pp 138-139 および The Vocabulary of Organic Chemistry, Orchin, et al., John Wiley and Sons, Inc., p. 126.
加水分解、という用語は酸性、塩基性および酵素的方法を含むすべての適当な公知のエステル加水分解方法を包含する。好ましいものを後記する。
3の結晶化、という用語は加水分解反応生産物を中和することであり、公知の技術によって下記式7の化合物
【化8】

(ただしM+はナトリウム、リチウムまたはカリウムである)を指定の試薬および/または溶媒で中和しそして結晶化することを意味する。この混合は通常のかくはん方法、たとえばかき混ぜ、振り混ぜ、などによって行われる。更に当業者は、結晶化方法は種付け、冷却、反応容器のガラスの引っかき、およびその他の通常の技術を包含することを認識する。
【0015】
本発明の出発物質は、当業者に公知の種々の方法で製造することが出来る。本発明の方法で出発物質として用いる3−置換−4−メチル−4−(3−ヒドロキシ−またはアルカノイルオキシフェニル)ピペリジン誘導体は、Zimmerman のアメリカ特許4115400(1978)及び Zimmerman et al. のアメリカ特許4891379(1990)に記載の一般的製法で製造できる。これらのアメリカ特許4115400及び4891379は、参照によってここに包含される。本発明の化合物、(3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルピペリジンの合成のための出発物質は、参照によりここに包含されるところの Zimmerman のアメリカ特許5250542の製法で製造できる。当業者は特に Zimmerman の ’542特許の実施例1に注目すべきである。
【0016】
公知技術に記載のようにして製造した出発物質14は、後記のチャート1の方法において使用される。
【化9】

【0017】
但しR1の意味は既に述べた通りであり、R2はクロライド、ブロマイド、(+)−ジベンゾイルタートレート、またはサクシネートである。
【0018】
チャート1に示すように、化合物14はアルキルアクリレート(アクリル酸のR1エステル)と反応して15となる。R1の意味は既に述べた。適当な溶媒はメタノール、テトラヒドルフラン、エタノールその他である。最も好ましい溶媒はメタノールとテトラヒドロフランである。
【0019】
化合物15を脱プロトン化し、ベンジルブロマイドと反応させる。脱プロトン化は適当な塩基を用いて行われる。適当な塩基の例はリチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムヘキサメチルジシラザイドである。塩基反応に好ましい溶媒はテトラヒドロフラン及び1,2−ジメトキシエタンである。当業者は、これ以外の溶媒もまた適当で有りうると認識するであろう。リチウムジイソプロピルアミド(LDA)が塩基のときは、ベンジルブロマイドが2当量存在することが好ましい。アルキル化の生産物は(αS,3R,4R)−異性体と(αR,3R,4R)−異性体の1:1の混合物である。
【0020】
式16の結晶性化合物は新規かつ特徴的である。式16の4コの特定の塩のみが安定な結晶性の塩であり所望のジアステレオマーを豊富に提供する。次の酸の各々を、4つの異なる溶媒系を用いて調べた。すなわちHCl、HBr、(+)−ジベンジル酒石酸、コハク酸、(−)−ジ−p−トルオイル酒石酸、(+)−ジ−p−トルオイル酒石酸、(−)−ジベンゾイル酒石酸、(1R,3S)−(+)−ショウノウ酸、馬尿酸、安息香酸、L−リンゴ酸、D−リンゴ酸、マロン酸、D−アスパラギン酸、(−)−酒石酸、(+)−酒石酸、(−)−マンデル酸、(+)−マンデル酸、L−アスコルビン酸、マレイン酸、硫酸、酢酸、燐酸、クエン酸、乳酸、p−トルエンスルフォン酸、D−アラブアスコルビン酸およびL−アスパラギン酸。すなわち110コの結晶化研究の結果、たった4コの安定な結晶性の塩が豊富な収率を提供したのみであった。この4コの安定な結晶性塩類の収率を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
チャート2(後記)に示すように、化合物16を加水分解すると化合物17を生成する。当業者は、化合物17は、化合物18aで示すような他の有用な化合物の製造に有用であると認識するであろう。化合物18aは一般的にオピオイドアンタゴニストとして有用である旨アメリカ特許5250542に開示されている。本発明の新規な中間体を用いることによって、煩雑なクロマトグラフ的分離なしに、純粋な絶対的立体化学的の異性体(18及び18a)の製造が初めて可能となった。
【0023】
【化10】

【0024】
但しR1とR2は既に定義してあり、AはOR4またはNR56であり;
4は水素、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキルまたはフェニルで置換したC1-3アルキルであり;
5は水素またはC1-3アルキルであり;
6は水素、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、シクロアルキル、フェニルシクロアルキルで置換したC1-3アルキル、C5-8シクロアルケニル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキル、フェニルで置換したC1-3アルキルまたは(CH2qB;または
5とR6はNと共に飽和芳香族の4−6員の複素環式基であり;
Bは下記するものであり
【化11】

7は水素またはC1-3アルキルであり;
8は水素、C1-10アルキル、C3-10アルキル、C3-10アルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキル、フェニルまたはフェニルで置換したC1-3アルキルであり;
7とR8はNと共に飽和の非芳香族の4−6員の複素環式基であり;
WはOR9、NR1011またはOEであり;
9は水素、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキルまたはフェニルで置換したC1-3アルキルであり;
10は水素またはC1-3アルキルであり;
11は水素、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、フェニル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキル、フェニルで置換したC1-3アルキル、または(CH2mCOYであり;または
10とR11はNと共に飽和の非芳香族の4から6員の複素環式基であり;
Eは下記するものであり
【化12】

12はC1-3アルキルで置換したメチレンであり;
13はC1-10アルキルであり;
DはOR14またはNR1516であり;ここに
14は水素、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキル、またはC5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキルまたはフェニルで置換したC1-3アルキルであり;
15は水素、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、フェニル、フェニルで置換したC1-3アルキル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキルまたはC5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキルであり;
16は水素またはC1-3アルキルであり;または
15とR16はNと共に飽和の非芳香族の4−6員の複素環状基であり;
YはOR17またはOR1819であり;
17は水素、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキル、またはフェニルで置換したC1-3アルキルであり;
18は水素またはC1-3アルキルであり;
19は水素、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、フェニル、シクロアルキル、C5-8シクロアルケニル、シクロアルキルで置換したC1-3アルキル、C5-8シクロアルケニルで置換したC1-3アルキルまたはフェニルで置換したC1-3アルキルであり;または
18とR19はNと共に飽和の非芳香族の4−6員の複素環状基であり;
qは1−4であり;そして
mは1−4である。
【0025】
置換基Aはアメリカ特許5250542に記載されている。
【0026】
加水分解反応は公知の酸による加水分解方法を用いて行うことができる。その一例は還流しているジオキサン中での水性の酸による処理である。さらに好ましくは加水分解反応はエピマー化を避けるために鹸化条件によって行うことができる。鹸化試薬の例は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムその他である。
【0027】
加水分解反応の生成物(カルボン酸塩)は水性の酸を使用してアミノ酸の等電点に調節し、双性イオン17とする。17のモノ水和物の結晶化は50−75%の低級アルコールと50−25%の水を用いて行わねばならない。
【0028】
表2は、結晶化の、1:1低級アルコール/水溶媒への臨界的依存性を示すものである。ガム球、という用語は粘着性の半固形の生産物が凝固して無定形の塊となったことを表す。
【表2】

【0029】
ここにACNはアセトニトリル;i−Prはイソプロピルアルコール;*は(16)の10mL溶媒/gの反応濃度によるもの;**は結晶化後の蒸留によるメタノールの除去による収率増大がおこったことを示す。
【0030】
チャート2に示すように、生成物17は直ちにアミド化/エステル化の工程に使用できる。アミド化が所望ならばアミノ酸を選択して式18または18aの所望の化合物を製造する。アミノ酸は、ジメチルホルムアミドやテトラヒドロフランのような溶媒内でグリシンエステルと反応させる。ジシクロヘキシルカルボジイミドはカップリング試薬として用いられる。N−ヒドロキシベンゾトリアゾールを補助的の求核試薬として添加する。カップリング反応は不活性の条件下で行ってよい。さらに好ましくは、ペプタイドカップリグ反応は、溶媒としてテトラヒドロフラン用いる。当業者は、ほかのペプタイドもまた効果的と認識するであろう。
【0031】
または化合物19F.B.(遊離塩基)の結晶性の塩を、上述のチャート2に示すようにして製造することができる。酢酸エチル、アセトン及びエタノールの3種類の溶媒を使用し、17種類の酸を用いて結晶化の研究を行った。51件の実験の中で、僅かにL−リンゴ酸および塩酸のみが、25℃で安定な結晶性の塩を与えた。
【0032】
結晶性の塩酸塩は、19F.B.をアセトン中で無水のHClと接触させることにより得られる。毛管ガスクロマトグラフィー分析は、この塩がアセトンのモノ溶媒和物として生成することを示す。この特異的なモノ溶媒和物結晶形は、化合物19F.B.を実質的に純粋な形で単離させ得る。他の溶媒内での19F.B.の無水HClとの接触は、実質的な精製なしに無定形の固体を生ずる。
【0033】
本発明者は、結晶の溶媒に応じて、L−リンゴ酸に対して2倍の19F.B.を持つ安定な結晶形の固体としてL−リンゴ酸塩が得られることを見出した。結晶化を、たとえばメチルエチルケトン、アセトン、アセトン/t−ブチルメチルエーテルまたはアセトン/ヘプタンのような溶媒中で行うと、L−リンゴ酸に対して1:1の19F.B.という予期した化学量論的のもものが得られる。しかしながら、結晶化をアセトン/酢酸エチル、アセトン/トルエンまたはエタノール/トルエンのような溶媒内で行うと、得られる結晶性塩はL−リンゴ酸と19F.B.の化学量論比率が3:2という特異的なもの(セスキリンゴ酸塩)である。このような結果は、特定溶媒中でリンゴ酸と19F.B.を1:1の比率で用いても、セスキリンゴ酸が得られる場合は特に予期出来ぬことであった。実際、L−リンゴ酸と19F.B.の等モル量をセスキリンゴ酸形成溶媒または溶媒系の中で反応させると、母液内の19F.B.の物質収支と共に、約67%の収量でセスキリンゴ酸塩が唯一の塩として生成する。確かに当業者はこの比率が1:1であると予期したであろう。更に、セスキリンゴ酸非形成性の溶媒または溶媒系中でのセスキリンゴ酸塩の結晶化は、母液内に残る過剰のL−リンゴ酸と共に、おおむね定量的収量での結晶性モノリンゴ酸塩のみを与える。
セスキリンゴ酸塩の結晶化は、高度に一定の結晶形と大きさの結晶で、高い収量で医薬的に許容される純度の生成物を与える。塩酸塩とセスキリンゴ酸塩はそのイソブチルエステルが容易に生体内で分解されるために、プロドラッグとして用いることが出来る。
【0034】
25℃で安定な結晶性の塩を作らない酸は例えば、HBr、H2SO4、馬尿酸、d−酒石酸、l−酒石酸、マロン酸、コハク酸、酢酸、アラブアスコルビン酸、アスコルビン酸、クエン酸、安息香酸、乳酸、(S)−(+)−マンデル酸および(R)−(−)−マンデル酸である。すなわち、L−リンゴ酸と塩酸塩の驚くべきかつ特異的な性質が示されている。
【0035】
アミド化とエステル化反応の生成物またはその塩は、標準的方法によって加水分解することが出来る。好ましくは塩基性の加水分解方法が用いられる。好ましい鹸化用の試薬は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどである。最も好ましくは、鹸化工程は水酸化ナトリウムと溶媒を用いて行う。特に好ましい溶媒はメタノール:水(1:1)及びエタノール:水(2:1)である。この反応は例えば塩酸のような酸を用いて消すことができる。中和(pH=6)の後、結晶性の固体のジ水和物18は直ちに濾過して単離される。単離した生成物18は、それ以上の精製をせずとも、医薬的に許容される純度を持っている。
この新規なジ水和物18は安定な結晶性の固体であり、再現可能な溶解速度を示す一定の結晶形と粒子サイズであり、そして医薬的に望ましい品質であるため特に望ましい。
【0036】
上述の式5及び6の化合物は、末梢オピオイドレセプターをブロックし、そして末梢オピエート誘導による副作用を防ぐので有用である。これらの副作用は例えばモルヒネのようなオピエートを哺乳動物に投与することによって生ずる。オピエートで誘導された副作用は便秘、吐き気および嘔吐などである。すなわち本発明の化合物はオピエートで誘導された副作用の一つまたはそれ以上の治療のために有用である。これらの化合物はまた過敏性腸症候群、非潰瘍性消化不良、および本態性便秘の治療に有用である。これらの化合物は血液−脳の障壁を実質的に通過せず、従ってオピオイドの中枢(脳および脊髄)のオピオイドレセプターに対する効果を軽減しない。従ってこれらの特性は、これらの化合物はまた他の中枢仲介の効果から実質的に自由であろう事を示している。
【0037】
生体内でのオピオイドレセプター拮抗性を調べる為に、マウス苦悶による鎮痛剤試験を行った。試験用の化合物が、モルヒネで誘導された無痛覚をブロックする能力を試験した。
一晩絶食させたあとの体重約20gの5匹のCF−1の雄のマウス(Charles River, Portage, MI) の苦悶反応を同時に観察した。苦悶反応は腹部筋肉系の収縮およびそれに続く後足の伸長として定義され、体重100g当たり1mLの量の0.6%酢酸の腹腔内投与によって誘発される。観察期間は、酢酸の注射の5分あとから開始して10分間である。対照(非薬物)の群における苦悶の平均数から苦悶阻害百分率を計算した。ED50値は、平均苦悶を50%阻害するアゴニストの量として定義する。AD50は硫酸モルヒネの1.25mg/kgの用量で生ずる苦悶を50%阻害するアンタゴニストの用量として定義する。各マウスは一回のみの使用とした。すべての薬物は酢酸の注射20分前に、皮下に投与(1mL/100g体重)した。
末梢オピオイド活性を測定した。マウスを最低10日間、1g/Lの硫酸モルヒネ含有の0.01Mのサッカリン水で飼育し、少なくとも3日間は、毎日マウス一匹毎に平均3.0gを越える水を与えた。オピオイドアンタゴニストの注射の45分前にモルヒネ水を取り除いた。オピオイドアンタゴニストの投与後、マウスを、底に紙タオルを敷いたプラスチックの円筒に入れた。
マウスの飛躍と下痢の状況を注射後30分のあいだ目視で観察した。飛躍については、30分内に少なくとも1回ジャンプした場合は陽性とした。下痢については、円筒の下に敷いた紙タオルを十分汚す程度に糞が湿っていた場合を陽性とした。試験の30分後、マウスをもとのケージに入れ、モルヒネ水飼育に戻し、48時間の間は再び試験には供さなかった。更に低い用量のアンタゴニスト化合物を、下痢の閾値が測定できるまで試験した。下痢は沈着オピエート禁断症状の末梢仲介兆候である。
本発明の化合物の中枢活性と比較しての末梢活性への効果の程度は、マウス下痢試験でのED50値と、マウス苦悶試験でのAD50値との比較によって測定した。この比率が高いほど、ある化合物による末梢オピオイドレセプターの相対的拮抗性が大きい。
本発明の化合物のAD50値は8mg/kgを超えており、一方ED50値は1よりも小さい。
【0038】
更に、上述の式5及び6の化合物は、化合物のmuレセプターとの結合親和性を測定するオピオイドレセプター結合試験において優れた活性を示すことが見いだされた。この試験は次のようにして行った。
雄の Sprague Dawley ラットを断頭して屠殺し、脳を除去する。除去した小脳つきの脳の組織は、テフロンとガラスの組織ホモジナイザーでホモジナイズした。上澄み液I、ペレットIV分画を1.33g/mLで窒素冷凍機で冷凍し、使用前5週間より長くない期間、保存する。
増大する濃度(0.1から1000ナノモル(nM))のテスト化合物、クレブスヒープス緩衝液(pH7.4)及びトリチウム化したナロキソン(0.5nM)(3Hリガンド)を室温でポリスチレン管内へ入れた。反応は、37℃で20分間前培養した再懸濁組織の添加によって開始された。反応混合物は37℃の水浴上で20分間培養した。反応は、クレブスヒープス緩衝液(pH7.4)内に予め浸しておいたホワットマンGF/Bガラスフィルターを通しての迅速濾過(Brandel cell harvester)によって終了した。次いでフィルターを氷冷したクレブスヒープス緩衝液(pH7.4)5mLで2回洗った。洗浄したフィルターをシンチレーションバイアルに入れ、10mLのBrandelを加え、標品をサールD−300ベーターカウンターで計数した。反応混合物の培養時間は37℃で20分であった。標準方法によってKiとKD値を計算した。
【0039】
本発明の化合物は、高度に望ましい活性をもっている。10nM濃度でのテスト化合物による百分率変位値は75%を超えており、100nMでは80%を超える。これはAD50及びED50値(上述)の観点からは、特に望ましい。この結果は、本発明の化合物は過敏性腸症候群やmuレセプターの結合に関連する状態の治療に用いるために望ましい活性を意味する。
【0040】
本発明の化合物は何等の処方をせずにそのまま投与することは可能であるが、好ましくは医薬的に許容される賦形剤および少なくとも一種の本発明化合物から成る医薬処方の形で用いられる。本発明の化合物の効果的な用量範囲は広範に亘る。すなわち、そのような組成物は本発明で請求する化合物の約0.1から約90.0重量%を含有する。そのようにして本発明はまた、本発明の化合物と医薬的に許容される賦形剤から成る医薬処方を提供する。
本発明の化合物の処方の作成に際しては、ふつうは活性成分を担体や希釈剤となり得る賦形剤と混合するか、担体で希釈するか、または、たとえばカプセル、袋、紙その他の容器の形態の担体内に入れる。担体が希釈剤として作用するときは、活性成分のまてのベヒクル、賦形剤や媒体として作用する固形、半固形または液状の材料である得る。すなわち、この処方は錠剤、丸薬(ピル)、散剤、薬用ドロップ(lozenges)、サシェイ剤(sachets)、カシェ剤(cachets)、エリキシル、乳濁液、溶液、シロップ、懸濁液、エアロゾル(固体状または液体状媒体中の)、坐薬、並びに硬質および軟質ゼラチンカプセルの形態の処方とすることができる。
【0041】
本発明の化合物は、所望とあれば経皮的に投与してもよい。貼り薬などの経皮的の浸透を高めるものや到達系は当業者に良く知られている。
【0042】
適当な担体、賦形剤や希釈剤は例えば次ぎのようなものである。すなわち乳糖、デキストロース、庶糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、燐酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、トラガカント、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル−及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水ならびに鉱物油。処方はまた湿潤剤、乳濁および懸濁剤、保存剤、甘味剤、または味付け剤を含んでいてもよい。本発明の処方は、公知の方法を用いて、患者に投与した後の活性成分の迅速な、持続したまたは遅延した放出をもたらすように処方することが出来る。
【0043】
本発明の化合物は、公知の経皮的到達系を用いて経皮的に到達させることが出来る。最も好ましくは、本発明の化合物は、次のような、但しこれに限定されるものではないが、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノラウレート及びアザシクロアルカン−2−オン類のような浸透増強剤と混合して張付け剤や類似の到達系とすることが出来る。ゲル化剤、乳濁剤および緩衝剤のようなこれ以外の賦形剤を、所望に応じて経皮処方に添加することができる。
【0044】
経口投与のためには、本発明の化合物は理想的には担体や希釈剤と混合し、錠剤に成形したり、ゼラチンカプセルに封入することができる。本発明の化合物は微粒子や微小球とすることができる。微粒子は、活性化合物またはプロドラッグの持続放出を高めるためにポリグリコライド、ポリラクタイドまたはそれ以外のポリマーを用いて作ることができる。
【0045】
組成物は好ましくは各用量が約1−500mg、もっと通常には約5−300mgの活性成分を含有する単位用量剤形態の形で処方することができる。他の好ましい範囲は、単位用量形態ごとに約0.5−60mgの活性成分である。単位用量形態、という用語はヒトやその他の動物のための単位用量として適した単位を物理的に分離したもので、各々の単位は、適当な薬剤担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された活性成分の予め決めた量を含有するものである。
【0046】
本発明の化合物が他の公知の医薬と共に処方できることは、当業者は認識するであろう。それらの共処方は相乗的な治療効果をもたらす。例えば、制酸剤は本発明の化合物と共に処方することにより胃腸に対する所望の効果を生じる。
【0047】
本発明の内容を更に詳しく説明するために、次に処方の例を掲げる。これらの例は単に説明的のものであって、本発明の範囲を限定するものではない。これらの処方においては、本発明の化合物の何れをも活性成分として用いることができる。
【0048】
処方1
次の成分を用いて硬質ゼラチンカプセル剤を製造する。
カプセル当たりの量 濃度(重量%)
(2S,3R,4R)[[2−[[4− 250mg 55.0
(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−
ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]
−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]酢酸メチルエステル塩酸塩
乾燥デンプン 200mg 43.0
ステアリン酸マグネシウム 10mg 2.0
(合計) 460mg 100.0
以上の成分を混合し、460mgを硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0049】
処方2
カプセル当たり20mgの薬物を含有するカプセルを次のようにして作る。
カプセル当たりの量 濃度(重量%)
(2S,3R,4R)[[2−[[4− 20mg 10
(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−
ジメチル−1−ピペリジニル]−メチル]
−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]酢酸エチルエステル塩酸塩1水和物
デンプン 89mg 44.5
微結晶性セルロース 89mg 44.5
ステアリン酸マグネシウム 2mg 1.0
(合計) 200mg 100.0
活性成分とセルロース、デンプン及びステアリン酸マグネシウムをブレンドし、N.45メッシュのUSふるいを通し、そして硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0050】
処方3
カプセル当たり100mgの薬物を含有するものを次のよにして作る。
カプセル当たりの量 濃度(重量%)
(2S,3R,4R)[[2−[[4− 100mg 30.0
(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−
ジメチル−1−ピペリジニル]−メチル]
−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]酢酸 2水和物
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 50mg 0.02
デンプン粉 250mg 69.98
(合計) 350mg 100.0
以上の成分を完全にまぜ、空のゼラチンカプセルに入れる。
【0051】
処方4
活性成分10mgを含有する錠剤を次のようにして作る。
1錠当たりの量 濃度(重量%)
(2S,3R,4R)[[2−[[4− 10mg 10.0
(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−
ジメチル−1−ピペリジニル]−メチル]
−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]酢酸エチルエステルセスキリンゴ酸塩
デンプン 45mg 45.0
微結晶性セルロース 35mg 35.0
ポリビニルピロリドン(10%水溶液として) 4mg 4.0
カルボキシメチルデンプンナトリウム 4.5mg 4.5
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg 0.5
タルク 1mg 0.5
(合計) 100mg 100.0
活性成分、デンプン及びセルロースを45メッシュのUSふるいを通し完全に混ぜる。ポリビニルピロリドンの溶液を、得られた粉末(14メッシュのUSふるいを通す)と混合する。このようにして得た顆粒を50−60℃で乾燥し18メッシュのUSふるいを通す。カルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びタルク(予め60メッシュのUSふるいを通しておく)を顆粒に加え、混合し、錠剤製造機にかけて100mg重量の錠剤とする。
【0052】
処方5
1錠あたりの量 濃度(重量%)
(2S,3R,4R)[[2−[[4− 250mg 38.0
(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−
ジメチル−1−ピペリジニル]−メチル]
−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]酢酸 ジ水和物
微結晶性セルロース 400mg 60.0
溶融二酸化ケイ素 10mg 1.5
ステアリン酸 5mg 0.5
(合計) 665mg 100.0
成分をブレンドし圧縮して665mgの錠剤とする。
【0053】
処方6
次の成分を用いて硬質ゼラチンカプセルを作る。
カプセル当たりの量 濃度(重量%)
(2S,3R,4R)[[2−[[4− 66mg 18
(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−
ジメチル−1−ピペリジニル]−メチル]
−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]酢酸 ジ水和物
ポリエチレングリコール 300mg 82
(合計) 366mg 100
すべての固形成分をふるいにかける。ポリエチレングリコールを溶かし、溶融状態に保つ。薬物を、溶融ベヒクル内に入れる。溶融した均一な懸濁液を、適当な油ペースト充填機を使って適当な重量または容量になるまで硬質ゼラチンカプセルに充填する。
上記と全く同様にして、6mgの活性物質を含有するカプセル剤を作る。但しジ水和物の量は1カプセル当たり6.6mgに減らすべきである。上記と同様にして0.6mgの活性物質を含有するカプセル剤を作る。但し1カプセル当たりジ水和物の量は0.66mgに、ポリエチレングリコールの量は200mgに減らすべきである。
【0054】
本発明の中間体と方法は、有益な末梢オピオイドアンタゴニスト活性を持つ化合物を製造するために有用である。本発明の範囲の内、ある種の化合物と条件が好ましい。表の形式で示されている次の条件、発明の実施態様および化合物特性は独立して、いろんな好ましい化合物や方法条件を得るために組み合わされる。本発明の実施態様の次のリストは、本発明を如何なる意味においても限定することを意図していない。
A)結晶性化合物2はメチルエステルである。
B)結晶性化合物2は(αS,3R,4R)−3−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステル塩酸塩である。
C)結晶性化合物2はエチルエステルである。
D)結晶性化合物2はHBr塩である。
E)低級アルコールはメタノールである。
F)低級アルコール:水の比率は50−60%低級アルコールと50−40%水である。
G) R1はC1-4アルキルである。
H)式4の結晶性化合物はセスキリンゴ酸塩である。
I)式4の結晶性化合物は塩酸塩アセトンモノ溶媒和物である。
J)式5の実質的に純粋なジ水和物は97%またはそれ以上の2S,3R,4Rジ水和物である。
K)式5のジ水和物および一つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤から成る医薬処方。
L)式4の化合物のセスキリンゴ酸塩から成る医薬処方。
M)式5の化合物を過敏性腸症候群の治療に用いる方法。
N)式4の一つまたはそれ以上の化合物を過敏性腸症候群の治療に用いる方法。
O)式5の化合物の効果量を投与することから成るmuレセプターの結合方法。
P)式4の化合物の一つまたはそれ以上の効果量を投与することから成るmuレセプターの結合方法。
本発明の好ましい実施態様は以上のA−Pで代表される。
【0055】
以下の例は説明の目的で示したものであり、本発明の請求範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
反応物質の濃度は本発明にとっては臨界的なものでない。当業者は、所望の反応速度と生産物収量を得るためにこの濃度を変更することが可能である。
ここに述べた方法を実施するための時間の長さは臨界的なものではない。化学においては常にそうであるように、反応速度というものは例えば温度や製造すべき特定の化合物といった種々の因子に依存するものである。反応後は、その反応の完結の程度を知るために、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)及び核磁気共鳴分光法(NMR)のような方法が用いられる。作業者は、反応時間を延長するという手段を用いて最大収量を得ることが出来る。或いは作業者は、経済的な反応完了度に達した点で反応を打ち切って最大スループット(一定時間内に処理される原料の量)を得るようにしてもよい。
【0056】
以下の例で使用する用語の意味を説明する。HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;THFはテトラヒドロフラン;DMEはジメチルホルムアミド;TEAはトリエチルアミン;そしてDCCはジシクロヘキシルカルボジイミドを表す。
【0057】
製造例1
(3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステル
丸底フラスコにTHF(1000mL)と(+)−3−(3,4−ジメチル−4−ピペリジニル)フェノール(70.46g,0.343mol)を入れる。この懸濁液を40−45℃に加熱し、メチルアクリレート(46.4mL,0.515mol,1.5equiv)を3分かけて加える。温度の変化は認められない。
反応物は45℃でかき混ぜ、進行はHPLCで監視する。反応混合物は濁ったままである。4時間後、反応混合物を室温に冷却しケイソウ土でろ過する。溶媒と過剰のメチルアクリレートは、40℃でロータリーエバポレーターによる溶液の濃縮によって除去し、正味重量を120gとする。粗生成物をTHF(180g)に再溶解し、実施例2の方法で使用する33.3wt%溶液とする。
HPLCによる定量的収量。[α]/s(20,D)75.3°(c 1.01、MeOH)、[α]36520 245.6°(c 1.01,MeOH)、IR(CHCl3):3600、3600〜3100、1732、1440cm-1
1H−NMR (CDCl3):δ 0.72、(d,3H,J=70Hz),1.30,(s,3H)、1.59(br d,1H),1.90−2.03(m,1H)、2.25−250(m,2H)、2.50−2.90(m,7H)、3.66(s,3H),6.63(dd,1H,J=7.8,2.0Hz)、6.73(br s,1H)、6.81(d,1H,J=7.8Hz)、7.15(t,1H,J=8.0Hz)、13C−NMR(CDCl3):δ 16.1,27.4,30.8,32.0,38.4,38.9,49.9,51.7,53.9,55.7,55.8,112.5,112.6,11.30,1132,117.6,117.7,129.2,151.6、156.1、173.4。UV(EtOH)、λmax274nm,ε2028;202nm、ε17350。MS(FAB):m/z 292(100%、M+1)、292(185、M+),218(65%)。
【0058】
製造例2
イソブチルグリシン、p−トルエンスルホン酸塩
丸底フラスコにトルエン(600mL)、グリシン(22.53g,0.33mol)、p−トルエンスルホン酸モノ水和物(62.76g,0.33mol,11equiv)及びイソブチルアルコール(60mL,0.65ml,217equiv)を入れる。不均一の反応混合物をかき混ぜ、加熱マントルで加熱還流させ、生成する水を共沸混合物として除去する。2時間後に反応混合物は均一となる。さらに1.5時間後に反応混合物を50℃に冷却し、ロータリー蒸発で濃縮して、正味135gとする。
残留物(均一な油)を、それがまだ暖かいうちに酢酸エチル(450mL)に溶かし、その溶液を、機械的のかくはん機と還流冷却機を装備した三頸の丸底フラスコに移す。ヘキサン(450mL)を室温でかくはん下にその溶液に加える次いでスラリーを加熱還流して固形物を再溶解させ、その溶液をかくはんしながらゆっくりと冷却する。溶液に38℃で種を植え付け、結晶化を開始させる。室温に冷却した後、その混合物を5℃に冷却しさらに一時間かき混ぜる。生成物をフリットガラスのロートを通してろ過することにより単離し、半時間空気乾燥し、ついで減圧オーブン(40℃、5mmHg)中で一晩乾燥する。総量で89.1g(97.9%)の白色結晶性の固形物がえられた。
mp=77.2−79.6℃.pKa(67%aq.DMF)=7.68.IR(CHCl3):3300−2600,3018,2970,1752,1213,1125,1033,1011cm-11H−NMR(300MHz,CDCl3)δ0.82(d,6H,J=6.9)、1.79(sept.,1H,J=6.8)、2.33(s,3H),3.66(br s,2H),3.78(d,2H,J=6.6),7.10(d,2H,J=8.1),7.72(d,2H,J=8.2),8.03(br s,3H).13C−NMR(75.4MHz,CDCl3)δ18.9,213,27.4,40.3,72.0,126.1,128.9、140.3,141.4,167.5.
1321NO5S:
理論値 C,51.47;H,6.98;N,4.62;S,10.57
分析値 C,51.74;H,6.77;N,4.76;S,10.73
実施例
【0059】
実施例1
(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸2−メチルプロピルエステル
丸底フラスコに(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパン酸(20.11g,0.0522mol,1equiv)、製造例2の化合物(17.60g,0.058mol,1.11equiv)、ヒドロキシベンゾトリアゾールモノ水和物(7.83g,0.058mol,1.11equiv)及びTHF(144m)を入れる。トリエチルアミン(8.08mL,0.058mol,1.11equiv)をこの混合物に加え、次いでTHF(60mL)に溶かしたジシクロヘキシルカルボジイミド(11.97g,0.058mol,1.11equiv)を加える。混合物を2日間、窒素下に25℃でかきまぜる。反応の完結はHPLCで追跡する。スラリーを0℃で2時間冷却し、ついで濾過する。濾液を40℃で減圧下(10Torr)ほとんど乾燥するまで蒸発する。油を250mLの酢酸エチルにとる。有機層を250mLの0.5M,pH9.8CO3-2/HCO3緩衝液で洗う。pHを9.5−9.8に調節する。有機層を250mLの飽和食塩水で洗う。有機層をNa2SO4上で乾燥し、かき混ぜながら−20℃に冷却し、そして一晩中(16時間)−20℃でかき混ぜずに保つ。沈澱したDCUを濾過して除く。酢酸エチルを減圧(10Torr)で蒸発させ、無定形の固体を25.0g(95%)得る。
【0060】
IR(CHCl3)2897,1740,1659cm-11H NMR(300MHz,CDCl3)δ8.94(dd,1H,J=2.0Hz),8.40(bs,1H),7.20−6.93(m,4H),6.60−6.50(m,3H),4.04,3.95(m,2H),3.80−3.65(m,2H),3.16(dd,1H,J=13.8Hz,J=4.4Hz),2.69(bd,1H,J=10.2Hz),2.63−2.41(m,4H),2.40−2.15(m,4H),1.84−1.71(m,2H),1.42(bd,1H,J=124Hz),1.10(s,3H),0.77(d,6H,J=6.9Hz),0.57(d,3H,J−6.9Hz),1H NMR(300MH,DMSO−d9):9.17(bs,1H),8.40(bt,1H,J=2.0Hz),7.26−7.14(m,4H),7.04(t,1H,J=7.8Hz),6.63(m,2H),6.52(d,1H,J=8.1Hz),3.81−3.79(m,4H),2.90−2.43(m,6H),2.37(d,1H,J=12.4Hz),2.33−2.03(m,3H),1.95−1.65(m,2H),1.43(d,1H,J=12.4Hz),1.17(s,3H),0.85(d,6H,J=6.7Hz),0.65(d,3H,J=6.8Hz);13C NMR(75.4MHz,DMSO−d6)δ 174.03,169.78,157.05,151.71,140.08,128.80,128.71,125.77,115.93,112.36,112.06,69.96,59.73,54.95,49.87,44.24,40.59,38.03,37.83,35.61,29.93,27.19,27.08,18.72,15.79;MS(FD)m/z481(M+);[α]58925 +57.23°,[α]36525+170°(MeOH,c=1.01);UV(MeOH)274.4nm(ε=2093),202.8nm.
294024としての元素分析値:
理論値:C,72.47;H,8.39;N,5.83
分析値:C,72.49;H,8.59;N,5.63
【0061】
実施例2
(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステル塩酸塩
丸底フラスコを窒素で換気しTHF(100mL)と2.0MのLDA溶液(17.6mL,35.18mmol,2.05equiv)を入れる。この溶液を−30℃に冷却し、製造例1の化合物の溶液(15.24g,17.16mmol,1.0equiv、THF中32.8wt%)を、温度を−26からー28℃に保ちながら20分かけて加える。
−25℃に15分かき混ぜたあと、温度を−17から−20℃に保ちつつベンジルブロマイド(5.81g,34.32mmol,2.0equiv)をゆっくり加える。反応混合物を3時間−15から−20℃でかき混ぜる。(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステルと(αR,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステルの比率=97/3。
反応混合物を1NのHCl(22mL,22mmol)で冷却する。pHを12NのHCl(2.3mL)で10.6から9.5に調節し、そして低温浴を取り除く。ヘプタン(50mL)を加え、層を分離する。メタノール(25mL)を有機層に加え、溶液を冷却する。混合物が酸性になるまで溶液の温度を5℃に保ちつつ無水HCl(1.3g)を加える。添加中に塩酸塩が沈澱する。混合物を濃縮して正味重量32.58gとする。次いで沈澱が生成してから数分してから、油状の濃縮物にメタノール(36mL)を加える。混合物を室温で一晩中かき混ぜる。
0℃に1.25時間冷却してから、沈澱を濾過し、フラスコを10mLの濾液ですすぎ、そしてこのケーキを冷メタノール(10mL)で洗う。固形物を乾燥して2.93g(40.9%)の白色粉末を得る。
HPLCによる分析は、この生成物は86:14の立体異性体の混合物であることを示した。
粗塩酸塩(2.75g)をメタノール(13.75mL)に加え、このスラリーを2時間、加熱還流する。混合物を約20℃に冷却する。沈澱を濾過し、フラスコを濾液ですすぎ、このケーキを冷メタノール(1.5mL)で洗う。生成物を乾燥して2.32gの白色固体(84.4%)を得る。
総収量:34.5%(アルキル化と熱再スラリー)
純度:(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステル塩酸塩 96.2%;(αR,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸メチルエステル塩酸塩 0.7%;及び(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパノン酸モノ水和物 0.7%(HPLCの面積%)。
mp 230−232℃(分解)、IR(KBr):3174,1732,1620,1586,1276,785,749,706cm-11H−NMR(DMSO−d6):d[0.78(d,0.85x3H,J=7.2Hz)及び1.02(d,0.15x3H,J=7.2Hz),ジアステレオマーの塩類],[1.28(s,0.15x3H),1.34(s,0.85x3H)、ジアステレオマーの塩類]、1.76(br d,1H),2.10−2.48(m,2H),2.75−3.65(m,12H),6.60−6.90(m,3H),7.11(t,1H,J=7.8Hz),7.15−7.35(m,5H),9.43(br s,1H),9.43(br s,1H),9.75(br s,1H).MS(FD):m/z 381(100%,M−HCl).
2432ClNO3としての分析値:
理論値: C 68.97;H 7.72;N 3.35;Cl 8.48
分析値: C 69.27;H 7.84;N 3.42;Cl 8.38
【0062】
実施例3
(+)−(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−フェニルメチル−1−ピペリジンプロパノン酸モノ水和物
脱イオン水(230mL)を50%w/w水酸化ナトリウム溶液(20.02g,250mml,4.2equiv)と共に丸底フラスコに入れる。実施例2の生成物(25.0g,60mmol,1equiv)の一部分をフラスコに加える。混合物を室温でかき混ぜ、濾過する。濾紙を1Nの水酸化ナトリウム溶液33mLで濯ぐ。溶液を、減圧蒸留に適した丸底フラスコに移す。メタノール(240mL)をこの溶液に加える。溶液のpHを、濃塩酸(32.14g)で6.0に調節する。45−50℃の温度で減圧(100−200mmHg)下メタノールを除去する。メタノールの除去は、濃縮物の重量が約313gになるまで行う。スラリーを4時間かき混ぜる。溶液のpHを6.0に再調節しスラリーを0−5℃に1.5時間保つ。所望の生成物を濾過し、脱イオン水50mLで3回洗う。ついで生成物を乾燥する。所望のモノ水和物を白色顆粒状固体として分離する。収量21.3g(92%)。
mp 178−180℃(分解)。
1H−NMR(300MHz,DMSO)δ0.64(d,3H,J=6.9Hz),1.19(s,3H),1.51(d,1H,J=13.1Hz),1.97−2.00(m,1H),2.11(td,1H,J=3.6Hz,12.7Hz),2.34−2.95(m,9H),6.54(d,1H,J=8.1Hz),6.66(m,2H),7.06(t,1H,J−7.9Hz),7.14−7.28(m,5H),9.22(br s,1H).13C−NMR(75.5MHz,DMSO)δ15.5,26.9,29.5,35.2,37.5,37.7,42.7,49.7,53.7,58.8,112.2,112.3,115.9,126.0,128.2,128.7,128.9,139.4,151.2,157.1,175.1.UV(MeOH)λmax203,ε17,860;275,ε2356.ME(FD)m/z368.IR(KBr)3360,3272,2967,1622,1585,1363,844cm-1
[α]36520304°(c1.01,MeOH).KF=4.07%(モノ水和物としての理論値は4.70%).
2331NO4としての分析値:
理論値:C 71.66;H 8.10;N 3.63
分析値:C 72.99;H 8.10;N 3.71.
【0063】
実施例4
(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸2−メチルプロピルエステル.セスキリンゴ酸(1:1.5)
実施例1の化合物(2.5g,5.2mmol,1.0equiv)を50mLの酢酸エチルに溶かす。L−リンゴ酸(1.03g,7.8mmol,1.5eq)をこの混合物に加える。L−リンゴ酸をかき混ぜて溶解してから、溶液を70℃に加熱し,4.0mLのアセトンを加える。溶液は結晶化する。生成物を濾過して単離する。濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄する。酢酸エチルのレベルg1%より下になるまで塩を乾燥する。標記の化合物が白色結晶として単離される。標品を、x−線粉末回折で分析する。
mp 94−95℃。
IR(KBr)3346.92,2972.68,1741.94,160112cm-11H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ9.70(bs,1H),8.47(t,1H,J=1.9Hz),7.27−7.13(m,4H),7.06(t,1H,J=7.9Hz),6.67(d,1H,J=8.0Hz),6.63(s,1H),6.53(dd,1H,8Hz,J=1.7Hz),4.18(t,1.5Hz,J=5.8Hz),3.82−3.78(m,3H),3.33−1.80(m,16H),1.48(bd,1H,J=13.0Hz),1.18(s,3H),0.85(d,6H,J=6.7Hz),0。64(d,3H,J=6.9Hz);13C−NMR(75.4MHz,DMSO−d6)δ175.63,175.42,171.44,1578.66,138.63,138.60,130.50,130.23,12966,114.07,114.05,114.01,113.94;MS(FD)m/z481(M+)UV(MeOH)272.8nm(e=1797),102.4nm(ε=20576).
7098423としての分析値:
理論値: C 61.65;H 7.38;N 4.10;O 26.98
分析値: C 61.40;H 7.23;N 4.1 ;O 26.66
【0064】
実施例5
(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸ジ水和物
実施例1の化合物(12.5g,0.026mol,1.0eq)の315mLの3Aエタノール溶液を、丸底フラスコに入れる。この混合物に水を加える。水酸化ナトリウムの水溶液((1.0M)0.077mol,3.0eq)を25−30℃で10−15分かけて滴下する。溶液をかき混ぜ、ついで濾過する。溶液のpHを、濃塩酸の添加により12.50から6.00まで調節する。溶液に結晶種を入れると(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸が10−15分の間に沈澱し始める。結晶化しているものを25℃で2時間かき混ぜ、そして(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸を、軽く吸引しながら濾過すると湿ったケーキが得られる。結晶を60mLの水でスラリーとし、吸引濾過して硬いケーキとする。ジ水和物となるまで結晶を、軽い吸引のもとに濾過ロート内で製品の上へ25℃で相対湿度33%の空気を送り大気中で一晩(16時間)乾燥する。標記の化合物が(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパン酸モノ水和物から85%(10.2g)の収量で、208℃にシャープな融点をもつ白色結晶として得られる。標品をx−線粉末回折を用いて分析する。
IR(KBr)3419,3204,3028,1684,1591cm-1;
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ9.18(bs,1H),8.34(t,1H,J=5.5Hz),7.26−7.12(m,6H),7.05(t,1H,7.9Hz),6.67(d,1H,J=8.0Hz),6.63(s,1H),6.52(dd,1H,J=80Hz,J=1.8Hz),3.65(d,2H,J=5.6Hz),2.89−2.10(m,14H),1.91(bd,1H,J=6.7Hz),1.18(s,3H),0.64(d,3H,J=6.9Hz);13C−NMR(75.4MHz,DMSO−d6)δ 173.54,171.30,157.05,151.28,139.83,128.83,128.73,128.05,125.82,115.97,112.14,56.62,5459,49.92,43.75,41.12,39.95,39.67,39.39,39.12,38.84,37.80,37.73,35.42,29.68,27.04,25.54;MS(FD)m/z425(M+−2H2O):UV(MeOH)275.0(ε=2246),202.6(ε=227094);[α]36525=−1.18(MeOH,c=1.0). C253626としての分析値:
理論値: C 65.20;H 7.88;N 6.08;O 20.84
分析値: C 64.96;H 7.74;N 6.10;O 20.82
【0065】
実施例6
(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸ジ水和物
エタノール(2400mL,3A)と実施例4の化合物(5%EtOAcとで146g,実質には138.7g;0.203mol,1.0eq.,0.085molal)を丸底フラスコに入れる。水酸化ナトリウムの1.0M水溶液(1200mL,1.2mol,5.9eq)を25−30℃で20分かけて滴下する。溶液のpHを濃塩酸の添加により12.96から6.00に調節する。溶液に結晶の種を入れると(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸が10−15分の間に沈澱しはじめる。これを25℃で2時間かき混ぜる。スラリーを0℃に冷却しかき混ぜる。(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸生成物を軽い吸引下に濾過して湿ったケーキを得る。結晶を25℃の水500mLとかき混ぜながらスラリーとし、軽く吸引し、500mLの水で再スラリー化し、吸引下に濾過して硬質のケーキとする。結晶を、軽い吸引下に濾過ロート内で製品の上へ空気を送りながら25℃で35%の相対湿度の大気下、一晩中乾燥してジ水和物とする。標記の化合物が208℃にシャープな融点をもつ白色結晶として93%(88g)を超える収量でえられる。
253626としての分析値:
理論値: C 65.20;H 7.88;N 6.08;O 20.84
分析値: C 65.38;H 7.87;N6 .25;O 20.90
【0066】
実施例7
(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸2−メチルエステル塩酸塩アセトン溶媒和物
実施例1の化合物の標品6.0gを60.0mLの乾燥アセトンに溶解する。乾燥アセトン30.0mLに溶解したHClガスの0.45g部分(0.98eq)を25℃で添加する。アセトン中のHClガスを、pHが3になるまで滴下する。pHが3になったら、実施例1の化合物の第2のアリコート1.0mL(最初の溶液と同じ濃度)を添加する。沈澱が生じる。反応を25℃で1時間行い、ついで0℃に冷却する。反応液を0℃で2時間かくはんする。所望の(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸2−メチルエステル塩酸塩を、窒素を用いて加圧濾過する。(2S,3R,4R)[[2−[[4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジニル]メチル]−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−アミノ]酢酸2−メチルエステル塩酸塩を、濾液の上に窒素を通しながら乾燥してアセトン溶媒和物とする。このアセトン溶媒和物は9.3−9.97%(重量)のアセトンを示すところの毛管ガスクロマトグラフィーによって特定化される(理論値は10%)。生成物は、溶媒和のアセトン分子の除去によって特定化される。
この塩酸塩アセトン溶媒和物を更に減圧オーブンを用いて50℃で2−3日乾燥する。塩酸塩モノ水和物の生成は、この結晶を2日間40%の相対湿度において25℃で大きな表面に広げることによって得られる。
逆相HPLCにより約99.3%の純度のものが,85%を超える収量で得られる。
mp70−75℃;IR(KBr)3217.7,3063.4,2965.0,1749.7,1671.5;
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ9.45(bs,1H),9.37(s,1H),8.94(t,0.85H,J=1.5Hz),8.92(t,0.15H,J=1.5Hz),7.28−7.20(m,H),7.09(t,1H,J=7.8Hz),6.67−6.56(m,3H),3.83−3.76(m,4H),3.47−3.10(m,5H),2.83(dq,2H,J=18.0Hz,J=5.5Hz,J=2.0Hz),2.7−2.0(m,5H),1.82(sept,1H,J=6.7Hz),1.70(d,1H,J=12.0Hz),1.29(s,0.85H),1.24(s,0.15H),0.99(d,0.45H,J=7.4Hz),0.85(d,6H,J=6.6Hz),0.71(d,2.55H,J=7.3Hz);13C−NMR(75.4Hz,DMSO−d6)δ172.7,169.8,157.4,149.4,129.3,128.3,121.6,118.6,115.7,112.9,112.3,53.9,57.1,70.2,48.1,46.4,40.8,37.3,36.9,27.3,26.5,18.8,15.1;UV(MeOH)274(ε=28413);MS(FD)481(M+−HCl−H2O);
294124−H2Oとしての分析値:
理論値:C 65.09;H 8.10;N 5.23;O 14.59;Cl 6.63
分析値:C 65.06;H 7.92;N 5.27;O 15.19;Cl 6.92
【0067】
実施例8
(αS,3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−α−(フェニルメチル)−1−ピペリジンプロパン酸エチルエステル塩酸塩
(+)−3−(3,4−ジメチル−4−ピペリジリニル)フェノール(50.0g,243.5mmol,1.0eq)の標品を丸底フラスコに入れる。THF(1L)とエチルアクリレート(33.0mL,304.4mmol,1.25eq)を添加し、不均一な反応混合物を室温で数日かき混ぜる。反応混合物をケイソウ土を通して濾過し、透明溶液を放散させて75.0gの粘いコハク色の油を得る。アミノエステルの一部分(1.16g,3.80mmol,1.0eq)を10mLのTHFに再溶解し、リチウムジイソプロピルアミド(3.90mL,7.80mmol,2.05eq)のTHF(20mL)溶液(−75℃)に加える。この添加は約5分を要する。次いでスラリーを−70℃で15分かき混ぜ、ベンジルブロマイド(0.47mL,3.99mmol,1.05eq)を加える。反応物を−25〜−30℃に温度を上げ、3時間かき混ぜる。10mLの飽和塩化アンモニウム、10mLの水および20mLの酢酸エチルを加えて反応を停止させる。水性の層を分離する。有機層を、飽和食塩溶液で洗浄する。有機層を次いでMgSO4上で乾燥する。混合物を濾過し、得た溶液をロータリーエバポレーターで処理して1.80gの黄色の油を得る。次いで製品と原料の混合物を酢酸エチルとヘキサンの混合物でフラッシュクロマトグラフィーにふして1.07g(71%)のエチルエステルを得る。
上記のエチルエステル(14.8g,37.4mmol)を150mLのエタノールに溶解する。無水の塩化水素をこの溶液に分散させ、エタノールをロータリーエバポレーターで除去する。次いで固形物を50mLの酢酸エチルで粉砕し濾過する。固形物を30℃で一晩乾燥して塩酸塩12.5gを得る(76%、融点は179−181℃)。ジアステレオマーの比率はαS,3R,4R(所望のもの)が49%、αR,3R,4R(不要のもの)が51%である。
塩酸塩(1.02g)を5mLのエタノールでスラリーとし、3時間還流させる。この混合物を室温に戻し、そしてかきまぜる。混合物を0℃で1時間かき混ぜ、ついで濾過する。この塩を40℃で一晩乾燥する。得られた白色固体は0.48g(47%)であった。ジアステレオマーの比率は、αS,3R,4Rが76%であり、αR,3R,4Rは24%であった。
塩酸塩(0.42g)を6mLのエタノールでスラリーとし、2時間加熱還流させ、次いで室温に戻し、そしてかき混ぜる。スラリーを0℃に1時間保ち、濾過する。固形物を乾燥して0.31g(74%)の塩を得る。ジスアステレオマーの比率は、αS,3R,4Rが92%、αR,3R,4Rが8%であった。
この塩の一部分(0.24g)を三たび2.5mLのエタノールでスラリーとする。この混合物を3時間加熱還流し、室温に戻し、そしてかき混ぜる。スラリーを0℃に1時間冷却し、次いで濾過する。固形物が得られる。ジアステレオマー的に純粋な(98%のαS,3R,4R)エチルエステル塩酸塩が0.23g(96%)得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式2で表される結晶性化合物(但し式中でRはC1−6アルキルであり、Zは塩酸塩、臭化水素酸塩、コハク酸塩および(+)−ジベンゾイル酒石酸塩から成る基から選ばれたものである)。
【化1】


【公開番号】特開2006−70042(P2006−70042A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303195(P2005−303195)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【分割の表示】特願平6−298356の分割
【原出願日】平成6年12月1日(1994.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(590005922)イーライ・リリー・アンド・カンパニー (15)
【氏名又は名称原語表記】ELI LILLY AND COMPANY
【Fターム(参考)】