説明

3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体の合成

【化1】


本発明は、有力なカンナビノイド−CB受容体アンタゴニストとして既知の3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体への新規な化学的経路、ならびにこれらの化合物の新規な中間体に関する。合成経路は、腐食性の試薬を使用せずに、報告された収率より有意に高い収率を生じた。方法は式(I)の化合物の製造に関し、記号は記載中に示されている意味を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化学、特に有力なカンナビノイド−CB受容体アンタゴニストとして既知の3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体の製造方法に関する。本発明は、これらの化合物の新規な中間体にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
化合物A及びBは、特許文献1及び特許文献2で開示されたカンナビノイド−CB受容体アンタゴニストを代表する3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体である。
【0003】
【化1】

【0004】
ラセミ体A及びBのキラルクロマトグラフィー分離は、それぞれ光学的に純粋な化合物C(特許文献3で開示されたSLV319,(イビピナバント(ibipinabant)))及び化合物Bの対応する(4S)−エナンチオマーを与えた。上記で引用した特許中で開示された合成経路は、合理的な収率を有するが、それらは臨床的開発における薬剤に必要な規模での合成に理想的に適してはおらず、市販される薬剤に必要な規模ではいわずもがなである。化合物Aのその重要中間体3−(4−クロロフェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールからの収率は60%であると報告され(非特許文献1)、化合物Bのそれは45%であると報告された(特許文献2)。化合物Aへの既知の合計経路において、腐食性の塩素化反応物PClがクロロベンゼン中で還流温度において用いられる。高められた温度において、PClは、PCl及び高度に毒性の塩素ガス(Cl)にゆっくり分解することが知られている。そのような化合物の大規模使用は、打ち勝ち難い安全性の危険を生む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/70700号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/026648号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/076949号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lange,J.H.M.,et al.著,J.Med.Chem.,47,2004年,627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、既知の経路より高い収率を有し、且つ腐食性の試薬の使用を避けた3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体への新規な合成経路を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示
一般式(I)の3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体への新規な合成経路が、腐食性試薬を使用せずに、報告された収率より実質的に高い収率を生ずることが見出された。例えば化合物Aの場合の収率は、重要中間体である3−(4−クロロフェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールから77%であり、化合物Bの場合の収率は73%であった。これらは報告された収率より(それぞれA及びBに関して60%及び45%)有意に高い。本発明は、式(I):
【0009】
【化2】

【0010】
[式中:
−R及びRは独立して(C1−3)−アルキル又は(C1−3)−アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノから選ばれ、−m及びnは独立して0、1又は2であり、
−Rは分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−8)−アルキル又は(C3−8)−シクロアルキルであり、
−Rはフェニル、チエニル又はピリジルから選ばれ、それらの基は非置換であるかあるいは(C1−3)−アルキル又は(C1−3)−アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノから選ばれる同一もしくは異なることができる1もしくは2個の置換基で置換されているか、あるいは
は単環式もしくは二環式(C5−10)−アルキル又は(C5−10)−アルケニル基あるいはN、O、SもしくはSOから選ばれる1もしくは2個の環ヘテロ原子又は環ヘテロ原子−含有部分を含有する単環式もしくは二環式ヘテロ−(C5−10)−アルキル又はヘテロ−(C5−10)−アルケニル基を示し、そのR基は非置換であるかあるいはヒドロキシ又は(C1−3)−アルキルから選ばれる置換基で置換されているか、あるいはRは4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル、4−フルオロピペリジン−1−イル又は4−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル基を示す]
の化合物の製造方法に関する。
【0011】
本発明は、R及びRが独立して(C1−3)−アルキル、トリフルオロメチル又はハロゲンから選ばれ;m及びnが独立して0又は1であり;Rが分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−3)−アルキルであり;Rが非置換であるか又は(C1−3)−アルキル、トリフルオロメチルもしくはハロゲンから選ばれる1個の置換基で置換されたフェニルを示すか、あるいはRがN、O及びSから選ばれる1もしくは2個の環ヘテロ原子を含有する単環式ヘテロ−(C5−10)−アルキル基を示すか、あるいるRが4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル、4−フルオロピペリジン−1−イル又は4−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル基を示す式(I)の化合物の製造方法にも関する。
【0012】
別の態様は、R及びRがハロゲンであり;m及びnが独立して0又は1であり;Rがメチルであり;Rが、非置換であるか又は1個のハロゲン原子で置換されたフェニルを示すか、あるいはRがピペリジン−1−イル又は4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル基を示す式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0013】
さらに別の態様は、Rが4−Clであり;mが1であり、nが0であり;Rがメチルであり、Rが4−クロロフェニル、ピペリジン−1−イル及び4,4−ジフルオロピペリジン−1−イルから選らばれる式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0014】
特別な態様は、式:
【0015】
【化3】

【0016】
を有する化合物の製造方法に関する。
【0017】
さらに別の態様は、1種もしくはそれより多い式(III)又は(IIIa):
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、Rは分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−8)−アルキルであり、他の記号は上記で示した意味を有する]
の化合物ならびに前記のいずれかの互変異性体、立体異性体、N−オキシド及び塩を提供する。そのような化合物は式(I)の化合物の合成において有用である。
【0020】
さらに別の態様は、1種もしくはそれより多い式(IV)
【0021】
【化5】

【0022】
[式中、Rは直鎖状(C1−8)アルキル基を示し、記号は上記で示した意味を有する]
の化合物ならびに前記のいずれかの互変異性体、立体異性体、N−オキシド及び塩を提供する。そのような化合物は式(I)の化合物の合成において有用である。
【0023】
本明細書に記載される化合物及び中間体の単離及び精製を、必要に応じて、適した分離又は精製法、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、調製的低もしくは高圧液体クロマトグラフィーあるいはこれらの方法の組み合わせにより行うことができる。適した分離及び単離法の特定的な例を、製造及び実施例から理解することができる。しかしながら、もちろん他の同等の分離又は単離法を用いることもできる。
【0024】
本発明の化合物は、1個もしくはそれより多いキラル中心を含有し得、かくしてラセミ体及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在することができる。本発明のすべての化合物は、それらの4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール部分のC原子においてキラル中心を含有する。
【0025】
種々の置換基の性質に依存して、分子は追加の不斉中心を有し得る。そのような不斉中心のそれぞれは独立して2つの光学異性体を生じる。混合物における、ならびに純粋な又
は部分的に精製された化合物としての可能な光学異性体、エナンチオマー及びジアステレオマーのすべてが本発明に属する。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体を包含する。式(III)、(IIIa)及び(IV)は好ましい立体化学のない種類の化合物の構造を示す。これらの光学的異性体の独立した合成あるいはそれらのクロマトグラフィー分離は、本明細書に開示される方法の適切な修正により、当該技術分野において既知の通りに行なわれ得る。それらの絶対立体化学を、必要なら、既知の絶対立体配置の不斉中心を含有する試薬を用いて誘導体化される結晶性生成物又は結晶性中間体のX−線結晶学により決定することができる。当該技術分野において周知の方法により、例えば化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物にカップリングさせてジアステレオマー混合物を形成し、続いて分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的な方法によって個々のジアステレオマーを分離することにより、化合物のラセミ混合物を個々のエナンチオマーに分離することができる。カップリングは多くの場合に、エナンチオマー的に純粋な酸又は塩基、例えば(−)−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸又は(+)−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸を用いる塩の形成から成る。次いでジアステレオマー誘導体を、付加したキラル残基の切断により純粋なエナンチオマーに転換することができる。化合物のラセミ混合物を、当該技術分野において周知のキラル固定相を用いるクロマトグラフィー法により、直接分離することもできる。あるいはまた、当該技術分野において周知の方法によって、光学的に純粋な出発材料又は既知の立体配置の試薬を用いる立体選択的合成により、化合物のエナンチオマーを得ることができる。
【0026】
式(III)、(IIIa)及び(IV)の化合物又はその塩のシス及びトランス異性体も本発明に属し、これはそれらの互変異性体にも当てはまる。
【0027】
この新規な経路における合成戦略は既知の経路と本質的に異なり、それは、既知の経路においては、一般式(I)の化合物中のR−NH部分が反応順の最後の段階に離脱基−例えばクロロ原子又はメチルスルファニル基−の求核置換により導入されたからである。新規な経路において、RNH基はプロセス中のもっとずっと早い段階に、求核性ピラゾリン構成単位(II)との反応を介して求電子試薬(R−イソチオシアナート)として導入される。新規な経路において、一般式(I)の化合物中のRSON部分は反応順の最後の段階に導入されるが、すべての先行技術の経路において、この特定の部分はプロセス中のもっと早い段階に導入された。
【0028】
定義
本明細書で開示される化合物の記載において用いられる一般的用語は、それらの通常の意味を有する。本明細書で用いられるアルキルという用語は、1価の飽和分枝鎖状もしくは直鎖状炭化水素鎖を示す。他にことわらなければ、そのような鎖は1〜18個の炭素原子を含有することができる。そのようなアルキル基の代表なものは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどである。同じ炭素含有数が親用語「アルカン」及び「アルコキシ」のような誘導用語に当てはまる。種々の炭化水素含有部分の炭素含有数は、炭素原子の最小数及び最大数を示す接頭辞(prefix)により示され、すなわち接頭辞(Cx−y)−は、x及びyを含む整数“x”から整数“y”までの、存在する炭素原子の数を定義する。例えば「(C1−3)−アルキル」はメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルを含み、「(C1−4)−アルキル」は「メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチル又はtert−ブチル」を含む。「アルケニル」という用語は、1個もしくはそれより多い炭素−炭素二重結合を有する直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基、例えばビニル、アリル、ブテニルなどを示し、例えば(C2−4)アルケニルを示す。
【0029】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードを指す;「ヘテロアルキル、ヘテロ芳香族」などにおけるような「ヘテロ」は、1個もしくはそれより多いN、O又はS原子を含有することを含む。「ヘテロアルキル」は、いずれかの位置にヘテロ原子を有するアルキル基を含み、かくしてN−結合、O−結合又はS−結合アルキル基を含む。
【0030】
「置換された」という用語は、特定の基又は部分が1個もしくはそれより多い置換基を有することを意味する。いずれかの基が複数の置換基を保有することができ、且つ多様な可能な置換基が与えられ得る場合、置換基は独立して選ばれ、且つ同じである必要はない。「非置換の」という用語は、特定の基が置換基を有していないことを意味する。置換基に関して、「独立して」という用語は、1個より多いそのような置換基が可能な場合に、それらが互いに同じかもしくは異なることができることを意味する。
【0031】
「C3−8−シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルを含む;「C5−10ビシクロアルキル基」は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.3.0]オクタニル又はビシクロ[3.1.1]ヘプタニル基を含む炭素−二環式環系を指す。
【0032】
単独で又は別の基の一部として本明細書で用いられる「アミノ」という用語は、末端であるか又は2個の他の基の間のリンカーである窒素原子を指し、ここで基は第1級、第2級又は第3級(それぞれ2個の水素原子が窒素原子に結合している、1個の水素原子が窒素原子に結合している、及び水素原子が窒素原子に結合していない)アミンであることができる。別の基の一部として本明細書で用いられる「スルフィニル」及び「スルホニル」という用語は、それぞれ−SO−又は−SO−基を指す。
【0033】
より簡潔な記述を与えるために、「化合物(compound or compounds)」という用語は、明確に言及されていない場合も、互変異性体、立体異性体、N−オキシド、同位体標識された類似物又は薬理学的に許容され得る塩を含む。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「離脱基」(L)という用語は、置換もしくは置き換え反応の間に離脱する帯電した、もしくは帯電していない原子もしくは基を意味する。その用語は求核試薬、例えばアミン、チオール又はアルコール求核試薬により容易に置き換えられ得る基を指す。そのような離脱基は当該技術分野において周知である。例にはN−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ハライド(Br、Cl、I)、トリフレート、メシレート、トシレートなどが含まれるが、これらに限られない。(離脱基の概念についてのさらなる情報に関し:Michael B.Smith and
Jerry March著,Advanced organic chemistry,reactions,mechanisms and structure,fifth edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001,p.275を参照されたい)。
【0035】
より簡潔な記述を与えるために、本明細書に示される量の表現のいくつかは、「約」という用語で限定されない。「約」という用語が明白に用いられても用いられなくても、本明細書に示されるすべての量は、実際に示される値を指すものとし、且つそのような示される値に関する実験もしくは測定条件の故の近似を含む、当該技術分野における通常の熟練に基づいて合理的に推論されるそのような示される値への近似も指すものとすることが理解される。
【0036】
本明細書の記述及び請求項全体を通じて、「含む(comprise)」という用語及
び「含んでなる(comprising)」及び「含む(comprises)」のようなその用語の変形は、他の添加物、成分、整数又は段階を排除することを意図していない。
【実施例1】
【0037】
分析法
H NMRスペクトルは、Varian UN400測定器(400MHz)又はBruker Avance DRX600測定器(600MHz)上で、溶媒としてDMSO−d又はCDClを用い、内部標準としてトリメチルシランを用いて記録された。化学シフトをトリメチルシランから下方地場へのppm(ppm downfield)(δスケール)において示す。カップリング定数(J)をHzにおいて表わす。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル 60(0.040−0.063mm,Merck)を用いて行われた。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル 60(0.063−0.200mm,Merck)又はアルミナ(act III)を用いて行われた。Sepacoreクロマトグラフィー分離は、Supelco測定器、VersaFLASHTM カラム、VersaPakTM シリカカートリッジ、Buechi UVモニター C−630、Buechi ポンプモジュール C−605、Buechiフラクションコレクター C−660及びBuechiポンプマネジャー C−615を用いて行われた。融点は、Buechi B−545融点装置上で記録されたか、あるいはDSC(示差走査熱量測定)法により決定された。
【実施例2】
【0038】
合成の一般的な側面
式(II)の3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミジン誘導体は、国際公開第01/70700号パンフレット、国際公開第03/026648号パンフレット、Lange,J.H.M.et al.著,J.Med.Chem.2004,47,627に記載されているような既知の方法を介して得ることができる。新規な合成経路を下記のスキーム中に示す:
【0039】
【化6】

【0040】
式(II)の3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾールをGrosscurt,et al.(J.Agric.Food Chem.1979,27,406)により記載された通りに製造することができ、それを無水エタノールのような(C1−8)−アルコール中でアルキルイソチオシアナート又はシクロアルキルイソチオシアナートと反応させ、式(III)の3,4−ジアリール−N−アルキル−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボチオアミド又は3,4−ジアリール−N−シクロアルキル−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボチオアミドを与えることができる。メタノールのような(C1−8)−アルコール中で、後者を一般式R−Lのアルキル化試薬と反応させて式(IV)の化合物を与えることができ、ここでRは直鎖状(C1−8)アルキル基を示し、Lは好ましくはBr、Cl又はIから選ばれる「離脱基」を示す。アセトニトリルのような不活性有機溶媒中で、式(IV)の化合物を式RSONHのスルホンアミド誘導体と反応させ、式(I)の化合物を生ずることができる。熟練者は、この特定の反応において基−SRが離脱基として働くことに気が付くであろう。上記のスキーム中で、R、R、R、R、m及びnは上記で示した意味を有する。化合物(IIIa)は化合物(III)の互変異性体であり、従って本発明の一部である。式(III)、(IIIa)及び(IV)の化合物は新規である。
【0041】
当該技術分野において周知の標準的な方法を用いて、例えば本発明の化合物を適した酸、例えば塩酸のような無機酸と、あるいはフマル酸のような有機酸と混合することにより、塩を得ることができる。
【0042】
特定の合成法の選択は、当該技術分野における熟練者に既知の因子、例えば用いられる試薬の官能基との適合性、保護基、触媒、活性化試薬及びカップリング試薬を用いる可能
性ならびに製造されている最終的な化合物中に存在する最終的な構造的特徴に依存する。
【0043】
これらの方法に従って、下記に記載される化合物を製造した。それらは本発明をさらにもっと詳細に例示することを意図しており、従っていかようにも本発明の範囲を制限するとみなされない。本発明の他の態様は、明細書の考察及び本明細書に開示される本発明の実施から当該技術分野における熟練者に明らかになるであろう。かくして明細書及び実施例は例のみとして考えられることが意図されている。
【実施例3】
【0044】
中間体の合成及びスペクトルデータ
3−(4−クロロフェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(m=1、R=4−Cl及びn=0である式(II))を、Grosscurt,A.C.et al.,(J.Agric.Food Chem.1979,27,406)により記載された方法に従って製造した。
【0045】
3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオアミド
【0046】
【化7】

【0047】
3−(4−クロロフェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(30g,117ミリモル)、無水エタノール(180ml)及びメチルイソチオシアナート(11.1g,152ミリモル)の混合物を、窒素雰囲気下に還流温度において、3時間磁気撹拌した。固体を濾過し、エタノールで洗浄し(3x70ml)、真空下で乾燥して白色の固体を与えた(35g,収率90%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ 3.25(d,J=5Hz,3H),4.33−4.45(m,1H),4.63−4.73(m,2H),7.12−7.18(m,2H),7.22−7.36(m,5H),7.44(br s,1H),7.56(d,J=8.7Hz,2H)。融点:181−183℃。13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 31.5,50.6,58.6,127.2(2C),127.8,128.5(2C),128.85,128.88(2C),129.4(2C),136.2,139.6,155.9,177.0。
【0048】
メチル 3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオイミデート
【0049】
【化8】

【0050】
メタノール(150ml)中の3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオアミド(5g,15.2ミリモル)の磁気撹拌された溶液に、ヨードメタン(20ml,322ミリモル)を加えた。混合物を窒素雰囲気下に40℃(油浴温度)で終夜反応させた。45℃より低い油浴温度を用いて真空中で、溶液を濃縮した。残留物をジクロロメタン(300ml)中に再−溶解した。混合物を飽和NaHCO水溶液(70ml)及びブライン(70ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、メチル 3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオイミデート(5.2g,収率99%)を黄色の固体として与えた。H−NMR(400MHz,CDCl):δ 2.64(s,3H),3.25(s,3H),3.88(dd,J=11及び4.5Hz,1H),4.37(t,J=11Hz,1H),4.56(dd,J=11及び4.5Hz,1H),7.15−7.33(m,7H),7.56(d,J=8.7Hz,2H)。13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 16.7,38.5,49.8,58.1,127.2(2C),127.4,127.7(2C),128.6(2C),129.1(2C),130.1,134.7,140.0,152.5,154.1。ヨウ化メチルの使用量を除いて(21.2モル当量の代わりに10モル当量)同じ条件下でのこの実験の実行は、メチル 3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオイミデートへの完全な転換を与えたことに注目しなければならない。
【実施例4】
【0051】
特定の化合物の合成
3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−N’−(4−クロロフェニルスルホニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミジン(化合物A,上記に示される構造)
アセトニトリル(90ml)中のメチル 3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオイミデート(4.00g,11.62ミリモル)及び4−クロロベンゼンスルホンアミド(2.34g,12.20ミリモル)の磁気撹拌された溶液を還流温度で16時間加熱した。得られる混合物を真空中で蒸発させた。得られる粗残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,溶離剤勾配:石油エーテル/酢酸エチル=90/10=>80/20=>70/30=>60/40(v/v/))によりさらに精製して、化合物A(4.93グラム,収率87%)を固体として与えた。H−NMR(400MHz,CDCl):δ 3.23(d,J=5Hz,3H),4.10(dd,J=11及び4.5Hz,1H),4.53(t,J=11Hz,1H),4.64(dd,J=11及び4.5Hz,1H),7.05−7.18(m,3H),7.23−7.34(m,5H),7.38(br d,J〜8.5Hz,2H),7.52(br d,J〜8.5Hz,2H),7.85
(br d,J〜8.5Hz,2H)。
【0052】
3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−N’−(ピペリジン−1−イルスルホニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミジン(化合物B,上記に示される構造)
アセトニトリル(110ml)中のメチル 3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオイミデート(5.0g,14.5ミリモル)及びピペリジン−1−スルホンアミド(2.5g,15.23ミリモル)の溶液を、90℃で終夜撹拌した。黄色の溶液を真空中で蒸発させた。ヘプタン/酢酸エチルの3/1から1/1への勾配を用いて溶離するアルミナ(Act.III)上のカラムクロマトグラフィーによる精製は、化合物B(5.5g,収率82%,HPLC純度99%)を白色の固体として与えた。化合物Bは、カラム(ヘプタン/EtOAc 2/1)から試験管中できれいな針状結晶(nice needles)として結晶した。H−NMR(600MHz;DMSO−d):δ 1.41−1.46(m,2H),1.53−1.60(m,4H),2.94−3.00(m,4H),3.04(br s,3H),4.07(br d,J〜11Hz,1H),4.51(t,J〜11Hz,1H),5.00(dd,J〜11及び4Hz,1H),7.21−7.26(m,3H),7.30−7.34(m,2H),7.38(d,J〜8Hz,2H),7.74(d,J〜8Hz,2H)。
【0053】
N−[(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)スルホニル]−N’−メチル−3−(4−クロロフェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボキシアミジン(化合物D)
【0054】
【化9】

【0055】
アセトニトリル(110ml)中のメチル 3−(4−クロロフェニル)−N−メチル−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオイミデート(4.0g,11.62ミリモル)及び4,4−ジフルオロピペリジン−1−スルホンアミド(2.44g,12.2ミリモル)の溶液を、窒素雰囲気下に90℃で終夜撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。9/1から8/2から7/3から6/4(v/v)の範囲の石油エーテル(40−65)/酢酸エチルの勾配を用いて溶離するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによる精製は、化合物D(4.28g,収率71%)を与え、それはいくらかの4,4−ジフルオロピペリジン−1−スルホンアミドで汚染されていた。残
留物のジクロロメタン中における溶解及び5%NaHCO水溶液を用いて繰り返される洗浄、続くNaSO上における乾燥、濾過及び真空中における濃縮は、純粋な化合物1(3.02グラム,収率50%)を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
−R及びRは独立して(C1−3)−アルキル又は(C1−3)−アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノから選ばれ、−m及びnは独立して0、1又は2であり、
−Rは分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−8)−アルキル又は(C3−8)−シクロアルキルであり、
−Rはフェニル、チエニル又はピリジルから選ばれ、それらの基は非置換であるかあるいは(C1−3)−アルキル又は(C1−3)−アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノから選ばれる同一もしくは異なることができる1もしくは2個の置換基で置換されているか、あるいはRは単環式もしくは二環式(C5−10)−アルキル又は(C5−10)−アルケニル基あるいはN、O、SもしくはSOから選ばれる1もしくは2個の環ヘテロ原子又は環ヘテロ原子−含有部分を含有する単環式もしくは二環式ヘテロ−(C5−10)−アルキル又はヘテロ−(C5−10)−アルケニル基を示し、そのR基は非置換であるかあるいはヒドロキシ又は(C1−3)−アルキルから選ばれる置換基で置換されているか、あるいはRは4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル、4−フルオロピペリジン−1−イル又は4−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル基を示す]
の化合物を製造する方法であって:
(i)式(II):
【化2】

[式中、R、R、m及びnは上記で示した意味を有する]
の3,4−ジアリール−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾールを、(C1−8)−アルコール、好ましくは無水エタノール中で、Rが上記で示した意味を有する式R−N=C=Sのアルキル−イソチオシアナート又はシクロアルキルイソチオシアナートと反応させて、式(III):
【化3】

の3,4−ジアリール−N−アルキル−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボチオアミド又は3,4−ジアリール−N−シクロアルキル−4,5−ジヒドロ−(1H)−ピラゾール−1−カルボチオアミドを与え、
(ii)得られる式(III)の化合物を−(C1−8)−アルコール、好ましくはメタノール中で−Rが直鎖状(C1−8)−アルキル基を示し、Lが好ましくはBr、ClもしくはIから選ばれる「離脱基」を示す一般式R−Lのアルキル化試薬と反応させて、式(IV):
【化4】

の化合物を与え、
(iii)得られる式(IV)の化合物を−不活性有機溶媒、好ましくはアセトニトリル中で−Rが上記で示した意味を有する式RSONHのスルホンアミド誘導体と反応させて、式(I)の化合物を与え、
(iv)式(I)の化合物を反応混合物から単離する
段階を含んでなる方法。
【請求項2】
及びRが独立して(C1−3)−アルキル、トリフルオロメチル又はハロゲンから選ばれ;m及びnが独立して0又は1であり;Rが分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−3)−アルキルであり;Rが、非置換であるか又は(C1−3)−アルキル、トリフルオロメチルもしくはハロゲンから選ばれる1個の置換基で置換されたフェニルを示すか、あるいはRがN、O及びSから選ばれる1もしくは2個の環ヘテロ原子を含有する単環式ヘテロ−(C5−10)−アルキル基を示すか、あるいるRが4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル、4−フルオロピペリジン−1−イル又は4−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル基を示す式(I)の化合物の製造のための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
及びRがハロゲンであり、m及びnが独立して0又は1であり、Rがメチルであり、Rが非置換であるか又は1個のハロゲン原子で置換されたフェニルを示すか、あるいはRがピペリジン−1−イル又は4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル基を示す式(I)の化合物の製造のための請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が4−Clであり、mが1であり、nが0であり、Rがメチルであり、Rが4−クロロフェニル、ピペリジン−1−イル及び4,4−ジフルオロピペリジン−1−イルから選らばれる式(I)の化合物の製造のための請求項1に記載の方法。
【請求項5】

【化5】

の化合物の製造のための請求項1に記載の方法。
【請求項6】

【化6】

の化合物の製造のための請求項1に記載の方法。
【請求項7】

【化7】

の化合物の製造のための請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物の合成において有用である、式(III)又は(IIIa):
【化8】

[式中:
−R及びRは独立して(C1−3)−アルキル又は(C1−3)−アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノから選ばれ、−m及びnは独立して0、1又は2であり、
−Rは分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−8)−アルキルである]
の化合物ならびに前記のいずれかの互変異性体、立体異性体、N−オキシド及び塩。
【請求項9】
式(I)の化合物の合成において有用な式(IV):
【化9】

[式中:
−R及びRは独立して(C1−3)−アルキル又は(C1−3)−アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノから選ばれ、−m及びnは独立して0、1又は2であり、
−Rは分枝鎖状もしくは直鎖状(C1−8)−アルキル又は(C3−8)−シクロアルキルであり、
−Rは直鎖状(C1−8)−アルキル基である]
の化合物ならびに前記のいずれかの互変異性体、立体異性体、N−オキシド及び塩。
【請求項10】
光学的に活性なエナンチオマーである、請求項8に記載の式(III)又は(IIIa)の化合物あるいは前記のいずれかの互変異性体、立体異性体、N−オキシド又は塩。
【請求項11】
光学的に活性なエナンチオマーである、請求項10に記載の式(IV)の化合物あるいは前記のいずれかの互変異性体、立体異性体、N−オキシド又は塩。

【公表番号】特表2011−529868(P2011−529868A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520514(P2011−520514)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059844
【国際公開番号】WO2010/012797
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(501439149)アボツト・ヘルスケア・プロダクツ・ベー・ブイ (71)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Healthcare Products B.V.
【Fターム(参考)】