説明

3,4−二置換シクロペンタノンと関連化合物の立体選択的合成

【課題】光学活性3,4-二置換シクロペンタノンを製造するための方法と物質を提供する。
【解決手段】式13:


で示される1種類以上の化合物を加水分解すること、又は5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸アルキルエステル誘導体の骨格の化合物からエステル部分を除去することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、キラルケトンを製造するための物質と方法に関し、より詳しくは、光学活性3,4−二置換シクロペンタノンの立体選択的合成に関する。当該置換シクロペンタノンは、疼痛と多様な精神医学障害及び睡眠障害の治療に有用である、種々の光学活性環状アミノ酸の製造に用いることができる。
【0002】
考察
Bryans et al.への米国特許No.US 6,635,673 B1(’673 特許)は、(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸を含めた、いくつかの光学活性環状アミノ酸とそれらの薬学的に受容される塩を記載している。これらの化合物は、カルシウム・チャンネルのアルファ−2−デルタ(α2δ)サブユニットに結合する。これらの化合物は、とりわけ、不眠症、癲癇、気絶発作、運動低下症、うつ病、不安、パニック、疼痛、過敏性腸症候群及び関節炎を含めた、多くの疾患の治療に有用である。
【0003】
’673特許は、幾つかの光学活性環状アミノ酸の製造方法を記載している。これらの方法の多くは、化学中間体として、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロメンタノンを含めた、光学活性3,4−二置換シクロペンタノンを用いる。シクロペンタノンの製造方法は幾つか存在するが、これらの方法の多くは、効率と費用の問題のために、又はこれらの方法が非商業的な出発物質を用いるために、パイロット規模若しくは完全規模での生産に関して問題がありうる。例えば、Blakemore et al.への米国特許No.6,872,856を参照のこと。したがって、3,4−二置換シクロペンタノンの改良された製造方法が望まれている。
【0004】
発明の概要
本発明は、商業的に入手可能な出発物質からの光学活性3,4−二置換シクロペンタノン(下記式1)を製造するための、比較的効率がよく、費用効果的な方法を提供する。例えば、(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステルから5工程で、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンを製造することができる。3,4−二置換シクロペンタノンを用いて、疼痛、並びに種々の精神医学障害と睡眠障害の治療に有用であると考えられる(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸のような光学活性環状アミノ酸(下記式14)を製造することができる。
【0005】
本発明の1態様は、式I:
【化1】

[式中、RとRは、それぞれ、独立的にC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり、ここで、アリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル及びニトロから選択される1〜3個の置換基によって置換されうる]
で示される化合物又はその反対エナンチオマーの製造方法であって、
1種類以上の、式13:
【化2】

[式13中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、RとRは、RとRが異なるものであるという条件で、それぞれ、独立的に水素、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、オキシスルホニルアニオン、ヒドロキシであるか又は不存在である]
で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又はこれらの塩を加水分解することを含む方法を提供する。
【0006】
本発明の他の態様は、上記式1で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの製造方法を提供するが、この態様は、式18:
【化3】

[式18中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、Rは、式1中のRとRを定義する置換基から独立的に選択される]
で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーからエステル部分を除去する工程を含む。
【0007】
本発明の他の態様は、式14:
【化4】

[式14中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりである]
で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩の製造方法を提供する。この方法は、(a)1種類以上の上記式13で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又はこれらの塩を加水分解して、式1の化合物若しくはその反対エナンチオマーを得る工程;及び(b)式1の化合物若しくはその反対エナンチオマーを、式14の化合物若しくはその反対エナンチオマーに、又は該式14の化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩に変換する工程を含む。
【0008】
本発明の他の態様は、上記式14化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式14化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩の製造方法を提供する。該方法は、(a)上記式18の化合物若しくはその反対エナンチオマーからエステル部分を除去して、上記式1化合物若しくはその反対エナンチオマーを得る工程;及び(b)該式1化合物若しくはその反対エナンチオマーを、式14の化合物若しくはその反対エナンチオマーに、又は該式14化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩に変換する工程を含む。
【0009】
本発明の他の態様は、例えば、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタン、(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテン及び(3S,4S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジメチル−シクロペンタンスルホン酸ナトリウム塩のような上記式13の化合物を、上記化合物の反対エナンチオマーを含めて、提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、式19:
【化5】

[式中、RとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、R10は、水素原子と、R及びRを定義する基とから、独立的に選択される]
で示される化合物を、その反対エナンチオマー及び塩を含めて、提供する。
【0011】
式19の化合物には、(2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル、(1S,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル、及び(1R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステルが含まれ、上記化合物の反対エナンチオマーも含まれる。式19の他の化合物には、(2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1S,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、上記化合物の反対エナンチオマー及び上記化合物の塩が含まれる。
【0012】
本発明の他の態様は、(S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジエチル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジプロピル−ヘキサン二酸、(R,R)−3,4−ジイソプロピル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジベンジル−ヘキサン二酸、上記化合物の反対エナンチオマー、及び上記化合物の塩から選択される化合物を提供する。
【0013】
本発明は、可能であれば、上記化合物の全ての塩(薬学的に受容されるか否かに拘らず)、複合体、溶媒和物、水和物、及び多形を包含する。
詳しい説明
定義と略号
【0014】
他に指定しない限り、本開示は、以下に提供する定義を用いる。該定義及び式の幾つかは、原子間の結合、又は指定された若しくは指定されない原子若しくは原子群への結合点を表示するためにダッシュ(“−”)を含みうる。他の定義及び式は、二重結合又は三重結合を表示するために、それぞれ、等号(“=”)又は同一性記号(identity symbol)(“≡”)を含むことができる。他の式は、1つ以上の波形結合:
【化6】

を含むことができる。波形結合は、立体中心(stereogenic center)に付着する場合に、個別の又は混合物としての、両方の立体異性体を意味する。同様に、波形結合は、二重結合に付着する場合に、Z−異性体、E−異性体、又はZ−異性体とE−異性体との混合物を意味する。幾つかの式は、一重結合又は二重結合を表示するために破線付き結合:
【化7】

を含むことができる。
【0015】
「置換された」基は、1つ以上の水素原子が1つ以上の非水素原子又は基によって置き換えられている基である(但し、原子価の必要条件が満たされることと、その置換から化学的に安定な化合物が得られることを条件とする)。
【0016】
「約又はほぼ」又は「およそ」とは、測定可能な数値的変数に関係して用いる場合に、当該変数の表示値と、当該表示値の実験的誤差範囲内(例えば、平均値の95%信頼区間内)又は当該表示値の±10%内のいずれが大きい方である変数の全ての値とを意味する。
【0017】
「アルキル」は、一般に特定数の炭素原子を有する、直鎖及び分枝鎖の飽和炭化水素基を意味する(即ち、C−Cアルキルは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する)。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンタ−1−イル、ペンタ−2−イル、ペンタ−3−イル、3−メチルブタ−1−イル、3−メチルブタ−2−イル、2−メチルブタ−2−イル、2,2,2−トリメチルエタ−1−イル、及びn−ヘキシルを包含する。
【0018】
「アルケニル」は、1つ以上の不飽和炭素−炭素結合を有し、一般に特定数の炭素原子を有する、直鎖及び分枝鎖の炭化水素基を意味する。アルケニル基の例は、エテニル、1−プロペン−1−イル、1−プロペン−2−イル、2−プロペン−1−イル、1−ブテン−1−イル、1−ブテン−2−イル、3−ブテン−1−イル、3−ブテン−2−イル、2−ブテン−1−イル、2−ブテン−2−イル、2−メチル−1−プロペン−1−イル、2−メチル−2−プロペン−1−イル、1,3−ブタジエン−1−イル、及び1,3−ブタジエン−2−イルを包含する。
【0019】
「アルキニル」は、1つ以上の三重炭素−炭素結合を有し、一般に特定数の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を意味する。アルキニル基の例は、エチニル、1−プロピン−1−イル、2−プロピン−1−イル、1−ブチン−1−イル、3−ブチン−1−イル、3−ブチン−2−イル、及び2−ブチン−1−イルを包含する。
【0020】
「アルカノイル」は、アルキルが上記で定義したとおりであるアルキル−C(O)−を意味し、一般に、カルボニルの炭素を含めた特定数の炭素原子を含む。アルカノイル基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル及びヘキサノイルを包含する。
【0021】
「アルコキシ」及び「アルコキシカルボニル」は、それぞれ、アルキル−O−及びアルキル−O−C(O)−を意味し、ここで、アルキルは上記で定義したとおりである。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、及びs−ペントキシを包含する。アルコキシカルボニル基の例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、s−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−ペントキシカルボニル、及びs−ペントキシカルボニルを包含する。
【0022】
「ハロ」、「ハロゲン」及び「ハロゲノ」は、互変的に用いることができ、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0023】
「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン原子によって置換されたアルキル基を意味し、ここで、アルキルは上記で定義したとおりである。ハロアルキル基の例は、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、及びペンタクロロエチルを包含する。
【0024】
「シクロアルキル」は、一般に、環を構成する特定数の炭素原子を有する、飽和単環状及び二環状炭化水素環を意味する(即ち、C−Cシクロアルキルは、環員として3、4、5、6又は7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する)。シクロアルキルは、任意の環原子において、親基又は基質(substrate)に付着することができる。但し、このような付着が原子価必要条件に違反しない限りである。同様に、シクロアルキル基は、1つ以上の非水素置換基を含むことができる。但し、このような置換が原子価必要条件に違反しない限りである。有用な置換基は、上記で定義したような、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルカノイル及びハロと、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ及びアミノを包含する。
【0025】
単環状シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを包含する。二環状シクロアルキル基の例は、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[4.1.1]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[4.2.0]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[4.2.1]ノニル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[4.2.2]デシル、ビシクロ[4.3.1]デシル、ビシクロ[4.4.0]デシル、ビシクロ[3.3.3]ウンデシル、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル、及びビシクロ[4.3.3]ドデシルを包含する。
【0026】
「シクロアルケニル」は、1つ以上の不飽和炭素−炭素結合を有し、一般に、環を構成する特定数の炭素原子を有する、単環状及び二環状炭化水素環を意味する(即ち、C−Cシクロアルケニルは、環員として3、4、5、6又は7個の炭素原子を有するシクロアルケニル基を意味する)。シクロアルケニルは、任意の環原子において、親基又は基質に付着することができる。但し、このような付着が原子価必要条件に違反しない限りである。同様に、シクロアルケニル基は、1つ以上の非水素置換基を含むことができる。但し、このような置換が原子価必要条件に違反しない限りである。有用な置換基は、上記で定義したような、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルカノイル及びハロと、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ及びアミノを包含する。
【0027】
「シクロアルカノイル」及び「シクロアルケノイル」は、それぞれ、シクロアルキル−C(O)−及びシクロアルケニル−C(O)−を意味し、ここで、シクロアルキル及びシクロアルケニルは上記で定義したとおりである。シクロアルカノイル及びシクロアルケノイルへの言及は、一般に、カルボニル炭素を除いた特定数の炭素原子を含む。シクロアルカノイル基の例は、シクロプロパノイル、シクロブタノイル、シクロペンタノイル、シクロヘキサノイル、シクロヘプタノイル、1−シクロブテノイル、2−シクロブテノイル、1−シクロペンテノイル、2−シクロペンテノイル、3−シクロペンテノイル、1−シクロヘキセノイル、2−シクロヘキセノイル、及び3−シクロヘキセノイルを包含する。
【0028】
「シクロアルコキシ」及び「シクロアルコキシカルボニル」は、それぞれ、シクロアルキル−O−とシクロアルケニル−O−、及びシクロアルキル−O−C(O)−とシクロアルケニル−O−C(O)−を意味し、ここで、シクロアルキルとシクロアルケニルは、上記で定義したとおりである。シクロアルコキシ及びシクロアルコキシカルボニルへの言及は、一般に、カルボニル炭素を除いた特定数の炭素原子を含む。シクロアルコキシ基の例は、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシ、1−シクロブテノキシ、2−シクロブテノキシ、1−シクロペンテノキシ、2−シクロペンテノキシ、3−シクロペンテノキシ、1−シクロヘキセノキシ、2−シクロヘキセノキシ、及び3−シクロヘキセノキシを包含する。シクロアルコキシカルボニル基の例は、シクロプロポキシカルボニル、シクロブトキシカルボニル、シクロペントキシカルボニル、シクロヘキソキシカルボニル、1−シクロブテノキシカルボニル、2−シクロブテノキシカルボニル、1−シクロペンテノキシカルボニル、2−シクロペンテノキシカルボニル、3−シクロペンテノキシカルボニル、1−シクロヘキセノキシカルボニル、2−シクロヘキセノキシカルボニル、及び3−シクロヘキセノキシカルボニルを包含する。
【0029】
「アリール」及び「アリーレン」は、一価及び二価芳香族基をそれぞれ意味し、それには、窒素、酸素及び硫黄から独立的に選択された0〜4個のヘテロ原子を含有する5員〜6員単環状芳香族基が含まれる。単環状アリール基の例は、フェニル、ピロリル、フラニル、チオフェネイル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びピリミジニルを包含する。アリール基及びアリーレン基はさらに、縮合した上記5員環及び6員環を含めた、二環状基及び三環状基を包含する。多環状アリール基の例は、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、ピレニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチオフェネイル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾフラニル、プリニル及びインドリジニルを包含する。該アリール基及びアリーレン基は、任意の環原子において、他の基に付着することができる。但し、このような付着が原子価必要条件に違反しない限りである。該アリール基及びアリーレン基は、1つ以上の非水素置換基を、該置換が原子価必要条件に違反しない限り含むことができる。有用な置換基は、上記で定義したような、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルカノイル、シクロアルカノイル、シクロアルケノイル、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル及びハロと、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、アミノ及びアルキルアミノを包含する。
【0030】
「ヘテロアリール」及び「ヘテロアリーレン」は、少なくとも1つのヘテロ原子を含有する、上記で定義したような、一価及び二価のアリール及びアリーレン基をそれぞれ意味する。
【0031】
「複素環」及び「ヘテロサイクリル」は、それぞれ、5〜7環員又は7〜11環員を有する、飽和、部分的不飽和又は不飽和単環状又は二環状環を意味する。該単環状又は二環状基は、炭素原子と、独立的に窒素、酸素又は硫黄である1〜4個又は1〜6個のヘテロ原子とから構成された環員をそれぞれ有し、それには、上記で定義した単環状複素環のいずれかがベンゼン環に縮合している、任意の二環状基が含まれ得る。窒素及び硫黄のヘテロ原子は、場合により、酸化されることが可能である。複素環は、任意のヘテロ原子又は炭素原子において他の基に付着することができる。但し、このような付着が原子価必要条件に違反しないことを条件とする。該炭素又は窒素の環員のいずれかは、非水素置換基を、該置換が原子価必要条件に違反しない限り含むことができる。有用な置換基は、上記で定義したような、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルカノイル、シクロアルカノイル、シクロアルケノイル、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル及びハロと、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、アミノ及びアルキルアミノを包含する。
【0032】
複素環の例は、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル(phenoxathiinyl)、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアンスレニル(thianthrenyl)、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、及びキサンテニルを包含する。
【0033】
「アリールアルキル」及び「ヘテロアリールアルキル」は、アリール、ヘテロアリール及びアルキルが上記で定義したとおりである、アリール−アルキル及びヘテロアリール−アルキルをそれぞれ意味する。例は、ベンジル、フルオレニルメチル、及びイミダゾル−2−イル−メチルを包含する。
【0034】
「脱離基」は、置換反応、脱離反応及び付加−脱離反応を含めた、開裂プロセス(fragmentation process)中に分子から離れる、任意の基を意味する。脱離基は、それまでは該脱離基と分子との間の結合として役立っていた電子対と共に該基が離脱する離核性であってもよく、又は該基が電子対を伴わずに離脱する離電子性(electrofugal)であってもよい。離核性脱離基が離脱することができるか否かは、その塩基強度に依存し、最も強い塩基は最も弱い脱離基である。一般的な離核性脱離基は、窒素(例えば、ジアゾニウム塩から);並びにアルキルスルホネート(例えば、メシレート)、フルオロアルキルスルホネート(例えば、トリフレート、フキサフレート、ノナフレート、及びトレシレート)とアリールスルホネート(例えば、トシレート、ブロシレート、クロシレート、及びノシレート)を含めたスルホネートを包含する。他の脱離基は、カルボネート、ハライドイオン、カルボキシレートアニオン、フェノレートイオン及びアルコキシドを包含する。例えばNH及びOHのような、一部の強い塩基は、酸による処理によって、より良好な脱離基になることができる。一般的な離電子性脱離基は、プロトン、CO及び金属を包含する。
【0035】
「エナンチオマー過剰率」若しくは「ee」は、所定のサンプルに関する、キラル化合物のラセミサンプルに比べた、1種類のエナンチオマーの過剰さの尺度であり、百分率として表される。エナンチオマー過剰率は、100x(er−1)/(er+1)[式中、「er」は高富化(more abundant)エナンチオマーの低富化(less abundant)エナンチオマーに対する比率である]として定義される。
【0036】
「ジアステレオマー過剰率」又は「de」は、所定のサンプルに関する、等量のジアステレオマーを有するサンプルに比べた、1種類のジアステレオマーの過剰さの尺度であり、百分率として表現される。ジアステレオマー過剰率は、100x(dr−1)/(dr+1)[式中、「dr」は高富化ジアステレオマーの低富化ジアステレオマーに対する比率である]として定義される。
【0037】
「立体選択的」、「エナンチオ選択的」、「ジアステレオ選択的」及びこれらの変形は、それぞれ、1種類の立体異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを他の種類よりも多く産生する特定のプロセス(例えば、水素化)を意味する。
【0038】
「高レベルの立体選択性」、「高レベルのエナンチオ選択性」、「高レベルのジアステレオ選択性」及びこれらの変形は、生成物の少なくとも約90%を占める、過剰な、1種類の立体異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを有する生成物を産生する特定のプロセスを意味する。1対のエナンチオマー又はジアステレオマーに関して、高レベルのエナンチオ選択性又はジアステレオ選択性は、少なくとも約80%のee又はdeに相当する。
【0039】
「立体異性体的富化」、「エナンチオマー的富化」、「ジアステレオマー的富化」及びこれらの変形は、それぞれ、1種類の立体異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを他の種類よりも多く有する化合物のサンプルを意味する。富化の度合いは、総生成物の%により測定してもよいし、又は1対のエナンチオマー若しくはジアステレオマーに関してee若しくはdeによって測定してもよい。
【0040】
「実質的に純粋な立体異性体」、「実質的に純粋なエナンチオマー」、「実質的に純粋なジアステレオマー」及びこれらの変形は、それぞれ、サンプルの少なくとも約95%を占める立体異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを含有するサンプルを意味する。1対のエナンチオマー及びジアステレオマーに関して、実質的に純粋なエナンチオマー又はジアステレオマーは、約90%以上のee又はdeを有するサンプルに相当する。
【0041】
「純粋な立体異性体」、「純粋なエナンチオマー」、「純粋なジアステレオマー」及びこれらの変形は、それぞれ、サンプルの少なくとも約99.5%を占める立体異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを含有するサンプルを意味する。1対のエナンチオマー及びジアステレオマーに関して、純粋なエナンチオマー又は純粋なジアステレオマーは、約99%以上のee又はdeを有するサンプルに相当する。
【0042】
「反対エナンチオマー」は、基準分子の重ね合わせ不能な鏡像である分子を意味し、これは、該基準分子の立体中心の全てを反転することによって得ることができる。例えば、基準分子がS絶対立体化学配置を有する場合には、反対エナンチオマーはR絶対立体化学配置を有する。同様に、基準分子がS,S絶対立体化学配置を有する場合には、反対エナンチオマーはR,R絶対立体化学配置を有する、等々である。
【0043】
特定化合物の「立体異性体」は、該化合物の反対エナンチオマーと、該化合物の任意のジアステレオマー又は幾何異性体(Z/E)を意味する。例えば、特定化合物がS,R,Z立体化学配置を有するならば、その立体異性体は、R,S,Z配置を有するその反対エナンチオマーと、S,S,Z配置及びR,R,Z配置を有するそのジアステレオマーと、S,R,E配置、R,S,E配置、S,S,E配置及びR,R,E配置を有するその幾何異性体とを包含する。
【0044】
「溶媒和物」は、開示された若しくは特許請求された化合物と、化学量論量又は非化学量論量の1つ以上の溶媒分子(例えば、EtOH、アセトン、水)とを含む分子複合体(molecular complex)を意味する。
【0045】
「水和物」は、開示された若しくは特許請求された化合物と、化学量論量又は非化学量論量の水とを含む溶媒和物を意味する。
【0046】
「薬学的に受容される複合体、塩、溶媒和物又は水和物」は、信頼できる医学的判断の範囲内にあり、不当な毒性、刺激及びアレルギー反応なしに、患者の組織と接触した使用に適し、妥当な損益比率に釣り合い、そしてそれらの意図された用途に効果的な、特許請求された及び開示された化合物の複合体、酸若しくは塩基付加塩、溶媒和物又は水和物を意味する。
【0047】
「治療する」は、そのような用語が適用される障害若しくは状態の進行を逆転する、緩和する、阻害することか、又はその障害若しくは状態を予防することか、又はそのような障害若しくは状態の1つ以上の症状を予防することを意味する。
【0048】
「治療」は、直前で定義したような「治療する」行為を意味する。
【0049】
表1は、本明細書を通して用いられる略号を列挙する。
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0050】
以下のスキーム及び実施例の一部は、有機化学の分野で通常に熟練した人に知られている、酸化及び還元を含めた、一般的な反応の詳細を省略する可能性がある。このような反応の詳細は、Richard Larock, Comprehensive Organic Transformations (1999)及びMichael B. Smith 等によって編集された多重巻シリーズCompendium of Organic Synthetic Methods (1974 以下参照)を含めた、多くの論文に見い出すことができる。出発物質と試薬は、商業的供給源から得ることができるか、又は文献方法を用いて製造することができる。例えば、以下に挙げる出発物質の1つ、(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステルは、対応するジエステルのエステラーゼ媒介加水分解を介して、又は適当な不飽和モノエステルの不斉水素化によって得ることができる。S.G.Cohen & A.J.Milovanovic, J. Am. Chem. Soc. 90:3495 (1968);及びM. Ostermeier 等,Eur.J. Org. Chem. 17:3453 (2003)を参照のこと。
【0051】
以下の反応スキーム及び実施例の一部では、ある種の化合物は、保護されない反応性部位における好ましくない化学反応を防止する保護基を用いて製造することができる。化合物の溶解性を強化するため、或いは、化合物の物理的性質を修飾するためにも、保護基を用いることができる。保護基方策の検討、保護基の取り付けと除去のための物質と方法の記載、及びアミン、カルボン酸、アルコール、ケトン及びアルデヒドを含めた一般的官能基のために有用な保護基のまとめに関しては、T. W. Greene とP. G. Wuts, Protecting Groups in Organic Chemistry (1999) 及び P. Kocienski, Protective Groups (2000)を参照のこと。
【0052】
一般に、本明細書を通して記載する化学的変換は、ある一定の反応は過剰の1種類以上の反応物の使用から利益を得ることができるとしても、実質的に化学量論量の反応物を用いて行なうことができる。さらに、反応の多くは、ほぼRTにおいて行なうことができるが、特定の反応は、反応速度論、収量及びその他の考慮すべき事柄に依存して、室温よりも高い(例えば、還流まで)又は低い(例えば、0℃以下)温度の使用を必要とすることがありうる。化学的変換の多くは、1種類以上の相容性溶媒を用いることもでき、溶媒は反応速度及び収量に影響を与えることができ、また反応の性質に依存して、極性プロトン性溶媒(例えば、水、MeOH、EtOH、PrOH、i−PrOH、蟻酸、HOAc、ホルムアミド);極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトン、THF、MEK、EtOAc、ACN、DMF、DMSO);非極性溶媒(例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、MeCl、MeCl、CCl);又はこれらの何らかの組み合わせであることができる。濃度範囲、温度範囲及びpH範囲を含めた、本開示における範囲への言及は、表示した終点を包含する。
【0053】
本開示は、光学活性3,4−二置換シクロペンタノン(式1)とそれらの反対エナンチオマーを製造するための物質及び方法に関する。上述したように、式1中のRとRは、C−Cアルキル、例えば、Me、Et、Pr、i−Pr、n−Bu、s−Bu、t−Bu、並びにアリール−C−Cアルキル、例えば、Bnを包含しうる。したがって、代表的な3,4−二置換シクロペンタノンは、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノン、(S,S)−3,4−ジエチル−シクロペンタノン、(S,S)−3,4−ジプロピル−シクロペンタノン、(R,R)−3,4−ジイソプロピル−シクロペンタノン及び(S,S)−3,4−ジベンジル−シクロペンタノンを包含し、これらの反対エナンチオマー、(R,R)−3,4−ジメチル−シクロペンタノン、(R,R)−3,4−ジエチル−シクロペンタノン、(R,R)−3,4−ジプロピル−シクロペンタノン、(S,S)−3,4−ジイソプロピル−シクロペンタノン及び(R,R)−3,4−ジベンジル−シクロペンタノンをも包含する。
【0054】
スキーム1は、キラルシクロペンタノン(式1)とそれらの反対エナンチオマーの製造方法を示す。この方法は、光学活性な2−置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸(式2)をアルキル化剤(式3)と反応させて、2,3−二置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸(式4)を得ることを含む。該二置換モノエステルを還元して、ジオール(式5)を得て、次に、これを例えばスルホニル化剤(式8)との反応によって活性化する。得られた活性化ジオール(式9)をFAMSOによるビスアルキル化によって環化する。得られたチオケタールS−オキシド(式10)を加水分解して、目的のシクロペンタノン(式1)を得る。式2〜5、9及び10中の置換基RとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり;式2と4中のRは、R−O若しくはアミノであり;
式8と9中のRは、C−Cアルキルスルホニル(例えば、メシル)、フルオロC−Cアルキルスルホニル(例えば、トリフリル)又はアリールスルホニル(例えば、トシル、ブロシル、クロシル及びノシル)であり;式3中のXと式8中のXは、脱離基(例えば、ハロゲノ、RO−)である。
【0055】
式2〜5、9及び10中の代表的なRとRは、C−Cアルキル及びアリール−C−Cアルキルを包含し;式2中の代表的なRは、アミノ、C−Cアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ及びt−ブトキシ)及びアリール−C−Cアルコキシ(例えば、ベンゾキシ)を包含する。したがって、有用な出発物質(式2)は、(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステル、(R)−2−メチル−コハク酸4−エチルエステル、(R)−2−メチル−コハク酸4−プロピルエステル、(R)−2−メチル−コハク酸4−イソプロピルエステル、(R)−2−メチル−コハク酸4−tert−ブチルエステル、(R)−2−メチル−スクシンアミド酸、(R)−2−エチル−コハク酸4−メチルエステル、(R)−2−エチル−コハク酸4−エチルエステル、(R)−2−エチル−コハク酸4−プロピルエステル、(R)−2−エチル−コハク酸4−イソプロピルエステル、(R)−2−エチル−コハク酸4−tert−ブチルエステル及び(R)−2−エチル−スクシンアミド酸を、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0056】
したがって、代表的な2,3−二置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸(式4)は、同様に、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸4−メチルエステル、(R,R)−2,3−ジエチル−コハク酸4−メチルエステル、(R,R)−2,3−ジプロピル−コハク酸4−メチルエステル、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−コハク酸4−メチルエステル、(R,R)−2,3−ジベンジル−コハク酸4−メチルエステル、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸4−エチルエステル、(R,R)−2,3−ジエチル−コハク酸4−エチルエステル、(R,R)−2,3−ジプロピル−コハク酸4−エチルエステル、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−コハク酸4−エチルエステル、(R,R)−2,3−ジベンジル−コハク酸4−エチルエステル、(R,R)−2,3−ジメチル−スクシンアミド酸、(R,R)−2,3−ジエチル−スクシンアミド酸、(R,R)−2,3−ジプロピル−スクシンアミド酸、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−スクシンアミド酸、及び(R,R)−2,3−ジベンジル−スクシンアミド酸を、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0057】
一置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸(式2)のアルキル化は、相容性溶媒中で適当な塩基を用いて行われる。適当な塩基は、エステル又はアミド部分(式2)に隣接する(α)メチレン基を脱プロトン化することができる溶媒を包含する。これらの溶媒は、非求核性若しくはヒンダード(hindered)塩基を包含し、リチウムアミド塩基、例えばLDA、LHMDS、KHMDS、LICA、LTMP、LiNEt、リチウムジシクロヘキシルアミド;及び対応するマグネシウムアミド塩基、例えば(i−Pr)NMgClとEtNMgClを包含する。リチウムとマグネシウムのアミド塩基は、それぞれ、LiNRとRNMgXによって代表されることができ、ここで、RとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、Xはハロゲノである。相容性溶媒は、その共役酸が9以下、典型的には4以下、しばしば1以下のpKaを有する溶媒を包含する。このような溶媒は、例えば、THF、EtO、DMSO、ACN、DMF及びアセトンを包含するが、アンモニアは包含しない。
【0058】
これらのクラスの塩基及び溶媒の使用は、過剰な、所望のアンチ−ジアステレオマー(式4に示すような)を生じる。典型的に、アンチ−ジアステレオマーのシン−ジアステレオマーに対する比率は、約85/15、90/10又は92/8以上である。したがって、以下の実施例に示すように、THF中でのLHMDSを用いた、(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステルのアルキル化によって、アンチ−ジアステレオマー、約80%以上のdeを有する(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルが得られる。これに対して、NHとEtO中でのLiNHを用いた、(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステルのアルキル化によっては、過剰な、好ましくないシン−ジアステレオマーが得られる。W.G.Kofron & L.G.Wideman, J. Org. Chem. 37:555 (1972)を参照のこと。
【化8】

【0059】
上述したように、アルキル化剤(式3)は脱離基(X)を含み、それには、ハロ置換基、Cl、Br及びIと、トルエン−p−スルホネート、メチルスルホネート、p−ブロモ−ベンゼン−スルホネート及びトリフレートのようなスルホネート置換基が含まれ得る。したがって、代表的なアルキル化剤(式3)は、C−Cアルキルハライド、例えば、MeCl、MeBr、MeI、EtCl、EtBr、EtI、n−PrBr、n−PrCl、n−PrI、i−PrCl、i−PrBr及びi−PrIと、C−Cアルキルスルホネートエステル、例えば、MeOTs、MeOMs、MeOBs、MeOTf、EtOTs、EtOMs、EtOBs、EtOTf、n−PrOTs、n−PrOMs、n−PrOBs、n−PrOTf、i−PrTs、i−PrMs、i−PrBs及びi−PrTfを包含する。アルキル化剤は、商業的供給源から入手するか、又は既知方法を用いて製造することができる。
【0060】
アルキル化反応は、化学量論量の反応物(即ち、2-置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸のアルキル化剤に対するモル比率、1:1)を用いることができるが、変換率を改良する、副生成物を最少にする、等々のためには、該アルキル化工程は、反応物の1種類の過剰量(例えば、1:1.1〜1.1:1、1:1.5〜1.5:1、2:1〜1:2、3:1〜1:3のモル比率)を用いることができる。同様に、アルキル化反応は、化学量論量の塩基(即ち、塩基の、基質に対するモル比率、2:1)を用いることができるが、過剰量の塩基(例えば、2.1:1、2.5:1、3:1のモル比率)を用いることもできる。
【0061】
アルキル化は、約−30℃〜還流温度の温度で行うことができる。該反応は典型的に室温で行われるが、室温よりも高い又は低い温度から利益を受けることもありうる。例えば、実施例に記載するように、塩基に出発物質(式2)を添加し、次にアルキル化剤(式3)を添加する間に、反応混合物を約−30℃〜約−25℃の温度に冷却することができる。生じた混合物を次に室温において、完結するまで反応させることができる。
【0062】
接触スキームは、収量に影響を与えることができる。実施例に記載するように、出発物質(式2)及びアルキル化剤(式3)の表面下添加は、反応物の表面上添加に比べて、アンチ−ジアステレオマー(式3)のdeを高めることができる。
【0063】
スキームIに示すように、二置換コハク酸モノエステル(式4)を、THF、MTBE及びEtOのような1種類以上のエーテル性(無水)溶媒中でのLAHとの反応によって還元して、ジオール(式5)にする。他の有用な還元剤と溶媒は、ジグリム中でのNaBHとAlCl;THF中でのB;THF中での9−BBN;THF中でのLiAlH(OMe);THF中でのAlH;THF中でのDIBAL−H;及びトルエン若しくはTHF中でのRed−Alを包含する。該反応は、通常は、モル過剰な還元剤(例えば、4当量を超えるLAH)を用いて、ほぼ室温から還流温度までの範囲の温度において行われる。
【0064】
アルキル化におけるように、還元仕上げ処理(reduction workup)の接触スキームは、収量に影響しうる。LAHを用いた還元後の慣用的な(Fieser)仕上げ処理−反応混合物へのHO、15%NaOH水溶液及びHOの逐次的添加−は、大規模(kg規模)で行う場合に、処理上の困難をもたらす可能性がある。例えば、最初の水クエンチは、多量の水素ガスの急激な放出を生じ、さらに、かなりの割合の生成物(式5)を固体副生成物中に閉じ込める。閉じ込められた生成物の一部は、該固体を洗浄し、濾過することによって回収することができるが、洗浄液の大部分はフィルターケーキを通ってではなくフィルターケーキの周囲を流れるので、この方法は非効率的であり、時間がかかる。その上、該フィルターケーキがひと度液体を枯渇するならば、該フィルターケーキはしばしば不可逆的に割れる。これらの亀裂路は、洗浄液をフィルターケーキの内部から流し出し、このことが回収プロセスの効果をさらに減ずることになる。
【0065】
実施例に示すように、慣用的な接触スキームを、該反応混合物が大過剰量の塩基水溶液に供給されるように修飾すると、水素発生速度が弱まり、該ジオール(式5)の収量及び回収率が向上するようである。反応混合物を塩基水溶液に加えると、アルミニウムアルコキシド中間体は塩基触媒加水分解を受けて、所望のジオール(式5)の他に水酸化アルミニウムを生じて、これは溶液から沈殿する。該ジオールは溶解状態のままであるので、該ジオールは、液体相をデカントすることによって該沈殿から分離することができる。さらに、水相への反応混合物の添加速度を注意深く調節すると、水素ガス発生速度を厳密に制御することができる。
【0066】
スキームIに示すように、該方法は、場合により、該エステル若しくはアミド部分の酸若しくは塩基加水分解によって、二酸(式6)若しくはその塩への二置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸(式4)の変換を生じさせる。例えば、該エステル又はアミドをHCl又はHSO及び過剰なHOによって処理すると、二酸が生じる。同様に、コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸を、任意の極性溶媒(例えば、THF、MeOH、EtOH、アセトン又はACN)中で、LiOH、KOH、NaOH、CsOH、NaCO、KCO又はCsCOのような無機塩基の水溶液によって処理すると、該二酸の塩基付加塩が得られ、これを酸によって処理すると、遊離の二酸を得ることができる。一般に、過剰な酸又は塩基が用いられ、エステル及びアミドの加水分解が室温又は還流温度までの温度において行われる。
【0067】
二置換コハク酸モノエステル若しくはスクシンアミド酸(式4)の加水分解後に、得られた二酸(式6)若しくはその塩を、無水酢酸で処理すると、環状無水物(式7)が得られる。この反応は、THFのような非プロトン性極性溶媒中で、約50℃〜約75℃の範囲の反応温度が使用可能であるとしても、ほぼ室温から還流温度までの範囲の温度において、通常、行われる。該ジエステルの完全な変換を保障するために、過剰な無水酢酸(例えば、1.5当量以上)を用いることができる。
【0068】
代表的な反応基質(式6)は、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸、(R,R)−2,3−ジエチル−コハク酸、(R,R)−2,3−ジプロピル−コハク酸、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−コハク酸、及び(R,R)−2,3−ジベンジル−コハク酸を、これらの塩を含めて、包含する。代表的な環状無水物(式7)は、(R,R)−3,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン、(R,R)−3,4−ジエチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン、(R,R)−3,4−ジプロピル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン、(R,R)−3,4−ジイソプロピル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン、及び(R,R)−3,4−ジベンジル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオンを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0069】
環状無水物(式7)の製造は、モノエステル若しくはアミド(式4)の直接還元を凌駕する利益をもたらしうる。例えば、モノエステルとは対照的に、環状無水物は容易に再結晶され、還元の前に単離することができる。環状無水物の再結晶は、モノアルキル化副生成物と好ましくないジアステレオマーの形成を抑制することによって、活性化ジオール(式9)の後続の単離の効率を向上するようである。さらに、高純度の結晶質環状無水物は、還元剤(例えば、LAH)が不純物又はカルボン酸部分によって消耗されないので、還元工程のスループットの向上をもたらす筈である。比較的高純度のジオール(式5)はまた、再結晶による単離をも可能にする。
【0070】
スキームIに示すように、該ジオール(式5)は、式8で示される化合物との反応によって活性化される。有用なジオールは、(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオール、(R,R)−2,3−ジエチル−ブタン−1,4−ジオール、(R,R)−2,3−ジプロピル−ブタン−1,4−ジオール、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−ブタン−1,4−ジオール、及び(R,R)−2,3−ジベンジル−ブタン−1,4−ジオールを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。有用な式8の化合物は、TsCl、MsCl、BsCl、NsCl及びTfClと、これらに対応する無水物(例えば、p−トルエンスルホン酸無水物)のようなスルホニル化剤を包含する。
【0071】
式5の化合物を、ピリジン又はEtOと、酢酸エチル、MeCl、ACN又はTHFのような非プロトン性溶媒との存在下で、TsCl又はMsClと反応させて、例えば、(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン、(R,R)−2,3−ジエチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン、(R,R)−2,3−ジプロピル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン、(R,R)−2,3−ジベンジル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン、(R,R)−1,4−ビス−(メタンスルホニルオキシ)−2,3−ジメチル−ブタン、(R,R)−2,3−ジエチル−1,4−ビス−(メタンスルホニルオキシ)−ブタン、(R,R)−1,4−ビス−(メタンスルホニルオキシ)−2,3−ジプロピル−ブタン、(R,R)−2,3−ジイソプロピル−1,4−ビス−(メタンスルホニルオキシ)−ブタン、又は(R,R)−2,3−ジベンジル−1,4−ビス−(メタンスルホニルオキシ)−ブタンを、これらの反対エナンチオマーを含めて、得ることができる。典型的に、この反応は、過剰の(例えば、2.5当量以上)のスルホニル化剤(式8)と過剰の塩基(例えば、3.5当量以上)とを用いて、約室温以下の温度(例えば、約0℃)で行われる。
【0072】
スキームIに示すように、得られた活性化中間体(式9)を、FAMSOと、該メチレン部分を脱プロトン化するのに充分に強い塩基とを用いるビスアルキル化によって環化し(FAMSOのpKaは、DMSO中で29である);得られたチオケタールS−オキシド(式10)の、酸水溶液による加水分解によって、所望のシクロペンタノン(式1)が得られる。この反応は、典型的に、過剰の塩基(即ち、2モル当量を超える塩基)中で行われる。活性化中間体(式9)とチオケタールS−オキシド(式10)は、塩基誘導分解を受け易く、この塩基誘導分解は所望のシクロペンタノンの収量を減ずる可能性があるので、塩基との接触を最小にすることが、しばしば望ましい。例えば、該チオケタールS−オキシドは、塩基誘導分解を受けて、スキームIに示すビニルスルフィド(式11)になる可能性がある。このような接触は、塩基が該基質(式9)の添加前に消耗されるように、該塩基(例えば、2.0〜2.5当量)を実質的に当量のFAMSOと予め混合することによって、最小にすることができる。しかし、これは、1モル当量のFAMSOを浪費する。
【0073】
この問題(difficulty)に対処するための1つの方法は、該基質(式9)とわずかに過剰のFAMSO(例えば、1.1〜1.4当量)との混合物に、該塩基(例えば、2.0〜2.5当量)を、長時間にわたって充分な高温で加えて、該塩基を加えながら実質的に消耗させることである。有用な塩基は、LHMDS(THF中)のようなリチウムアミドを包含し、これは、例えば、1h、2h、3h、4h、5h又はそれ以上の時間にわたって加えられて、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃又はそれ以上の温度において反応する。実施例に記載するように、約12℃からRTまでの温度におけるLHMDSの長期の添加(3時間以上に渡る)を用いた、(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンとFAMSOとの反応によって、94〜96%の範囲の(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの収率が得られる。これに比べて、同じ反応を−3℃〜−1℃の温度において該塩基のバッチ式添加によって行うと、47〜74%の範囲の収率になった。
【0074】
ビニルスルフィド(式11)に関連した収率損失に対処するための他の方法は、該チオケタールS−オキシド(式10)を、最初に単離することなしに、シクロペンタノン(式1)に変換することである。ビニルスルフィドは揮発性であるので、これは、該チオケタールS−オキシドの仕上げ処理及び単離中に、明らかに失われ、それによって、シクロペンタノンの収率を低下させる。FAMSOビスアルキル化の粗生成物を用いることによって、環化中に形成されたいずれのビニルスルフィドも、その後の該チオケタールS−オキシドの酸加水分解中に該シクロペンタノンに変換される。
【0075】
該チオケタールS−オキシド(式10)及び該ビニルスルフィド(式11)の加水分解は、ほぼRT以上において、酸水溶液の存在下で行われる。この反応は、THFのような、水溶性溶媒を用いることができ、1,1−ビス−メチルスルファニル−3,4−置換シクロペンタン不純物の形成を最小にするようである。代表的なチオケタールS−オキシドは、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタン、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジエチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタン、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジプロピル−1−メチルスルファニル−シクロペンタン、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジイソプロピル−1−メチルスルファニル−シクロペンタン、及び(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジベンジル−1−メチルスルファニル−シクロペンタンを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。代表的なビニルスルフィドは、(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテン、(3R,4S)−3,4−ジエチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテン、(3R,4S)−3,4−ジプロピル−1−メチルスルファニル−シクロペンテン、(3R,4S)−3,4−ジイソプロピル−1−メチルスルファニル−シクロペンテン、及び(3R,4S)−3,4−ジベンジル−1−メチルスルファニル−シクロペンテンを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0076】
スキームIに示すように、該方法は、場合により、該シクロペンタノン(式1)からビスルフィト付加体(式12)への変換を含む。多くの場合に、所望のシクロペンタノン(式1)は液体であり、これは、同じような沸点を有する不純物の存在のために、蒸留によって精製することが困難である。約0℃〜約RTの温度における、シクロペンタノン(式1)とNaHSO供給源との反応は、結晶質固体としてのビスルフィト(式12)付加化合物を生じる。該ビスルフィト付加体を酸又は塩基の水溶液によって加水分解すると、高純度で該シクロペンタノンが再生される(例えば、HPLCエリアに基づいて約0.1%未満の不純物を有する(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノン)。代表的なビスルフィト付加体は、(S,S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジメチル−シクロペンタンスルホネート、(S,S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジエチル−シクロペンタンスルホネート、(S,S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジプロピル−シクロペンタンスルホネート、(S,S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジイソプロピル−シクロペンタンスルホネート及び(S,S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジベンジル−シクロペンタンスルホネートのナトリウム塩を、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0077】
スキームIIは、キラルシクロペンタノン類(式1)と、それらの反対エナンチオマーの追加の製造方法を示す。この方法は、キラル4,5−二置換シクロヘキセン(式15)を酸化して、光学活性アジピン酸誘導体(式16)を得ることを含む。当該二酸(式16)若しくはその塩を、酸の存在下で、アルコール(ROH)と反応させて、光学活性ジエステル(式17)を得て、次に、これを塩基で処理して、シクロペンタノンカルボン酸エステル(式18)を得る。該エステル部分を除去すると、所望のキラルシクロペンタノン(式1)が得られ、これは、スキームIに示すように、場合により、ビスルフィト付加体(式12)に変換することができ、該ビスルフィト付加体を続いて加水分解すると、所望のシクロペンタノンが高純度で得られる。
【化9】

【0078】
スキームIIに示すように、該キラルシクロヘキセン(式15)は、約50℃〜約95℃又は約75℃〜約90℃の範囲の温度における触媒の存在下でのH水溶液による処理によって、酸化することができる。H水溶液の過酸化水素濃度は、重量基準で、約30%〜約60%の範囲であることができ、過酸化水素の、キラルシクロへキセンに対するモル比率は約4:1以上でありうる。有用な触媒は、Me(n−オクチル)HSOのような、相転移触媒と一緒のタングステン酸ナトリウム(NaWO)を包含し、これらは約1:1のモル比率で存在しうる。他の有用な触媒は、例えば、TAPO−5に基づくもののようなモレキュラーシーブを包含する。該キラルシクロヘキセンの、各触媒に対するモル比率は、一般に、約10:1から約1000:1までの範囲(例えば、約100:1)である。酸化触媒についての考察に関しては、K.Sato et al., Science 281: 1646 (1998)とこれに挙げられた参考文献を参照のこと;さらに、S.Lee, Angew. Chem. Int. Ed. 42:1520 (2003) とこれに挙げられた参考文献も参照のこと。
【0079】
代表的な式15化合物は、(S,S)−4,5−ジメチル−シクロヘキセン、(S,S)−4,5−ジエチル−シクロヘキセン、(S,S)−4,5−ジプロピル−シクロヘキセン、(R,R)−4,5−ジイソプロピル−シクロヘキセン、(R,R)−4,5−ジベンジル−シクロヘキセン、及びこれらの反対エナンチオマーを包含する。したがって、代表的な式16化合物は、(S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジエチル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジプロピル−ヘキサン二酸、(R,R)−3,4−ジイソプロピル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジベンジル−ヘキサン二酸及びこれらの反対エナンチオマーを包含する。
【0080】
キラルシクロヘキセン(式15)の酸化後に、得られた二酸(式16)は、ほぼRTから還流までの範囲の温度において酸触媒エステル化を受ける。この反応は、一般に、過剰なアルコール(ROH)を用いる。この理由は、該アルコールが溶媒としても用いられうるからである。この反応は、該基質(式16)の量に基づいて、触媒量(例えば、約0.05〜約0.5当量)の該酸をも用いる。有用な酸触媒は、HSO、HCl、HBr、HI、HNOのような無機酸と、TFA及びTCAのような有機酸を含めた、約1以下のpKaを有する強酸を包含する。
【0081】
該アルコール、該ジエステル(式17)及び該シクロペンタノンカルボン酸エステル(式18)の置換基Rは、式1のRとRを定義する置換基から独立的に選択される。代表的なアルコールは、MeOH、EtOH、PrOH及びBnOHを包含する。したがって、代表的な式17化合物は、(S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸ジメチルエステル、(S,S)−3,4−ジエチル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジプロピル−ヘキサン二酸、(R,R)−3,4−ジイソプロピル−ヘキサン二酸、(S,S)−3,4−ジベンジル−ヘキサン二酸及びこれらの反対エナンチオマーのC−Cアルキル又はアリール−C−Cアルキルジエステル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジプロピル及びジベンジルエステル)を包含する。
【0082】
上述したように、該ジエステル(式17)は、強塩基による処理によって環化されて、シクロペンタノンカルボン酸エステル(式18)になる。この反応は、典型的に、THFのような極性非プロトン性溶媒中で、モル過剰の塩基(例えば、約1.1〜約1.5当量)を用いて、約RTから還流までの範囲であることができる温度において行われる。適当な塩基は、エステル部分(式17)の1つに隣接して(α)位置するメチレン基を脱プロトン化するほど充分に強い塩基を包含し、それには、t−BuOK及びt−BuONaが含まれる。代表的な式18化合物は、(1S/R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1S/R,2R,3S)−2,3−ジエチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1S/R,2R,3S)−2,3−ジプロピル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1S/R,2R,3R)−2,3−ジイソプロピル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸、(1R/S,2R,3S)−2,3−ジベンジル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸及びこれらの反対エナンチオマーのC−Cアルキル又はアリール−C−Cアルキルエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル及びベンジルエステル)を包含し、ここで、R/Sは、指定された化合物がエピマーの混合物であり、それらエピマーの各々が指示された炭素に関して逆の立体配置を有することを意味する。
【0083】
上述したように、シクロペンタノンカルボン酸エステル(式18)のエステル部分を除去して、所望のキラルシクロペンタノン(式1)が得られる。スキームIIに示すように、該エステル部分は、塩基又は酸の水溶液による処理によって初めに加水分解されて対応する酸(上記式19)が得られ、次に酸性条件下で加熱(例えば、45℃〜還流温度)によって脱炭酸されて、式1化合物が得られる。コハク酸モノエステル(式4)から二酸(式6)への変換に関連した上述の条件を用いて、加水分解を行うことができる。或いは、該エステル部分をKrapcho脱アルコキシカルボニル化によって除去することができる。Krapcho脱アルコキシカルボニル化は、二極性非プロトン性溶媒中、約90℃〜約200℃又は約120℃〜約160℃の温度において水又は塩又は両方の存在下でシクロペンタノンカルボン酸エステル(式18)を加熱することを含む。有用な二極性非プロトン性溶媒は、DMSO及びDMFを包含する;有用な塩は、LiCl、NaCl、LiI、NaCN及びKCNを包含する。Krapcho脱アルコキシカルボニル化のレビューに関しては、A.P.Krapcho, Synthesis 805-822, 893-914 (1982)を参照のこと。
【0084】
スキームIIIは、キラルシクロペンタノン(式1)を式14化合物に変換する方法を示す。この方法は、シクロペンタノン(式1)をホスホノ酢酸エステル(式20)と反応させて、エノエートエステル(式21)を得ることを含む。ニトロメタンの添加はニトロエステル(式22)を生じ、該ニトロエステルは、還元すると、環化して、ラクタム(式23)を生じる。該ラクタムを加水分解すると、所望の環状アミノ酸(式14)が得られる。式14と21〜23における置換基RとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり;式20中の置換基Rと、式20〜22中の置換基Rは、それぞれ、独立的に、式1中の置換基RとRと同じ基から、及びC−Cハロアルキルから選択される。
【化10】

【0085】
スキームIIIに示したHorner-Emmons反応は、ホスホノ酢酸エステル(式20)を塩基と、約−10℃〜約25℃又は約10℃〜約22℃の温度において反応させることによって行なうことができる。得られたエノレートアニオンを次に、該キラルシクロヘキサノン(式14)と、約−20℃〜約20℃又は約0℃〜約15℃の温度において接触させ、この反応混合物を約10℃〜約30℃又は約10℃〜約20℃の温度において撹拌する。有用な塩基は、アルコキシド(例えば、t−BuOK、t−BuOLi、t−BuONa)、NaH及びLDAを包含する。
【0086】
式20〜22における代表的なRとRは、C−CアルキルとC−Cハロアルキルを包含する。したがって、有用なホスホノ酢酸エステル(式20)は、ジ−C−Cアルキルホスホノ酢酸C−Cアルキルエステル、例えばトリメチルホスホノアセテート及びトリエチルホスホノアセテートと、ジ−C−Cハロアルキルホスホノ酢酸C−Cアルキルエステル、例えばビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルエステルを包含する。同様に、代表的なエノエートエステル(式21)は、(S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸メチルエステル、(S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステル、(S,S)−(3,4−ジエチル−シクロペンチリデン)−酢酸メチルエステル、(S,S)−(3,4−ジエチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステル、(S,S)−(3,4−ジプロピル−シクロペンチリデン)−酢酸メチルエステル、及び(S,S)−(3,4−ジベンジル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステルを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0087】
スキームIIIに示すように、該エノエートエステル(式21)は、共役付加によって、該ニトロエステル(式22)に変換する。Michael付加は、典型的に、約RTから還流までの範囲でありうる温度において行なわれる。この反応は、一般に、基質(式21)の量に基づいて、過剰なニトロメタンと、触媒量の塩基(例えば、約0.05〜0.5当量)を用いる。有用な触媒は、ニトロメタンのメチル基を脱プロトン化させるほど強い塩基を包含し、このような塩基は、例えば、CsCO、KCO及びNaCOのような無機塩基と、例えば、DBU及びテトラメチルグアニジンのような有機塩基を包含しうる。
【0088】
代表的なニトロエステル(式22)は、(3S,4S)−(3,4−ジメチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)酢酸メチルエステル、(3S,4S)−(3,4−ジメチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)酢酸エチルエステル、(3S,4S)−(3,4−ジエチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)酢酸メチルエステル、(3S,4S)−(3,4−ジエチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)酢酸エチルエステル、(3S,4S)−(3,4−ジプロピル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)酢酸エチルエステル、及び(3S,4S)−(3,4−ジベンジル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)酢酸エチルエステルを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0089】
スキームIIIによると、該ニトロエステル(式22)は、還元剤による処理によって還元されて、その場で環化して、ラクタム(式23)になる。この反応は、典型的に、MeOH若しくはi−PrOHのようなアルコール溶媒中、大気圧〜250psig(約1,724kPa)の範囲の圧力及び約RTから還流までの範囲の温度において水素ガスの存在下、金属触媒を用いて行われる。有用な金属触媒は、スポンジニッケルを包含する。該反応は、触媒と、実質的に全ての基質(式22)とを最初に反応器に装入し、水素ガスは後で加えて、変換を行なう、慣用的な「バッチ式」で行うことができる。或いは、該反応は、副生成物を還元して収率を高める「半バッチ式」で行うことができる。半バッチ式では、触媒と水素が反応の開始時に反応器中に存在して、ニトロエステル(式22)は、後から、還元速度に匹敵する速度で反応器に加えられる。水素ガスも、バッチ式と同様に、ニトロ基の還元中に反応器に加えられる。以下の実施例53と54を参照のこと。
【0090】
スキームIIIに示したラクタム(式23)を、約RT〜約還流温度又は約80℃〜約95℃の範囲の温度における酸による処理によって加水分解して、所望のアミノ酸(式14)又はその塩を得ることができる。酸濃度は約1%〜約50%の範囲であることができ、モル比率は約1:1から約10:1まで変化することができる。有用な酸は、例えば、HCl、HSO、HBr、HI及びHNOのような無機酸と、例えば、TFA及びTCAのような有機酸を包含する。
【0091】
代表的なラクタム(式23)は、(7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−オン、(7S,8S)−7,8−ジエチル−2−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−オン、(7S,8S)−7,8−ジプロピル−2−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−オン、及び(7S,8S)−7,8−ジベンジル−2−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−オンを、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。同様に、代表的なアミノ酸(式14)は、(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸、(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジエチル−シクロペンチル)−酢酸、(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジプロピル−シクロペンチル)−酢酸、及び(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジベンジル−シクロペンチル)−酢酸を、これらの反対エナンチオマーを含めて、包含する。
【0092】
式2,4〜6、13、14、16及び19で示される化合物を含めて、本開示に記載する化合物の一部は、薬学的に受容される塩を形成することができる。これらの塩は、酸付加塩(二酸を包含する)及び塩基塩を包含する。薬学的に受容される酸付加塩は、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸及びリン酸のような無機酸に由来する非毒性塩並びに、例えば脂肪族モノ−及びジ−カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸のような有機酸に由来する非毒性塩を包含する。したがって、このような塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバチン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩及びメタンスルホン酸塩を包含する。
【0093】
薬学的に受容される塩基塩は、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属カチオンのような金属カチオン並びにアミンを含めた塩基に由来する非毒性塩を包含する。適当な金属カチオンの例は、ナトリウムカチオン(Na)、カリウムカチオン(K)、マグネシウムカチオン(Mg2+)、及びカルシウムカチオン(Ca2+)を包含する。適当なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインを包含する。有用な酸付加塩と塩基塩の考察に関しては、S. M. Berge et al., “Pharmaceutical Salts,” 66 J.of Pharm. Sci., 1-19 (1977); see also Stahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection,and Use (2002)を参照のこと。
【0094】
化合物の遊離塩基(又は遊離酸)を、非毒性塩を製造するために充分な量の所望の酸(又は塩基)と接触させることによって、酸付加塩(又は塩基塩)を得ることができる。次に、該塩を溶液から沈殿させる場合には濾過によって、又は蒸発させて該塩を回収することによって、該塩を単離することができる。酸付加塩を塩基と(又は塩基塩を酸と)接触させることによって、遊離塩基(又は遊離酸)を再生することもできる。化合物の遊離塩基、遊離酸又は両性イオンの幾つかの物理的性質(例えば、溶解性、結晶構造、吸湿性)は、その酸又は塩基付加塩とは異なる可能性がある。しかし、一般に、化合物の遊離酸、遊離塩基又は両性イオンへの言及は、その酸及び塩基付加塩をも包含すると考えられる。
【0095】
開示し、特許請求する化合物は、非溶媒和形と溶媒和形の両方で、及び塩以外の種類の複合体として存在しうる。有用な複合体はクラスレート又は、化合物とホストとが化学量論量若しくは非化学量論量で存在する化合物−ホスト包接複合体を包含する。有用な複合体はさらに、2種類以上の有機成分、無機成分、又は有機成分と無機成分とを化学量論量で又は非化学量論量で含有することもできる。生じる複合体は、イオン化されることも、部分的イオン化されることも、イオン化されないことも可能である。このような複合体のレビューに関しては、J.K.Haleblian, J. Pharm. Sci. 64(8):1269-88 (1975)を参照のこと。薬学的に受容される溶媒和物はさらに、水和物および溶媒和物を包含し、その結晶化溶媒は同位体置換されていてもよく、例えばDO、d−アセトン、d−DMSOである。一般に、この開示のために、化合物の非溶媒和形への言及はまた、該化合物の対応する溶媒和形若しくは水和形をも包含する。
【0096】
本明細書に開示した化合物類の一部は、不斉炭素、硫黄又はリン原子(立体中心)を含有することができ、従って、光学活性な立体異性体(即ち、1対のエナンチオマーの一方のエナンチオマー)として存在することができる。該化合物類の一部はまた、シス/トランス(又はZ/E)立体異性体(ジアステレオマー)が可能であるように、アルケニル基又は環状基を含有することができる。さらに他の化合物類は、各々が光学活性でありうる(即ち、1対のエナンチオマーの一方を含みうる)ジアステレオマーが可能であるように、2つ以上の立体中心を含有することができる。最後に、該化合物類の一部は、互変異性が生じうるように、ケト又はオキシム基を含有することができる。このような場合に、本開示の範囲は、全ての互変異生体及び全ての立体異性体を、エナンチオマー、ジアステレオマー及びZ/E異性体を含めて、これらが純粋であろうと、実質的に純粋であろうと、又は混合物であろうと、包含する。
【0097】
本明細書に開示した化合物のいずれの所望エナンチオマーも、古典的な分割、キラルクロマトグラフィー又は再結晶によって、さらに富化させることができる。例えば、エナンチオマーの混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物(例えば、酸又は塩基)と反応させて、各々が単一エナンチオマーから構成される1対のジアステレオマーを得て、これを、例えば分別再結晶又はクロマトグラフィーによって分離する。その後に、所望のエナンチオマーを適当なジアステレオマーから再生する。さらに、所望のエナンチオマーが充分な量で入手可能である場合には、該エナンチオマーを適当な溶媒中での再結晶によってさらに富化させることができる(例えば、典型的には、約85%eeを大幅に下回らない程度、場合により、約90%eeを大幅に下回らない程度)。
【0098】
開示した化合物はさらに、少なくとも1つの原子が、天然に通常見出される原子量とは同じ原子番号を有するが、原子量が異なる原子によって置換されている、薬学的に受容される同位体変形体の全てを包含する。開示された化合物に含めるために適した同位体の例は、水素の同位体、例えばHとH;炭素の同位体、例えば13Cと14C;窒素の同位体、例えば15N;酸素の同位体、例えば17Oと18O;リンの同位体、例えば31P及び32P;硫黄の同位体、例えば35S;フッ素の同位体、例えば18F;及び塩素の同位体、例えば36Clを包含する。同位体変形(例えば、ジューテリウム、H)の使用は、大きな代謝安定性、例えば、in vivo半減期の延長又は必要投与量の減少に起因する、一定の治療利益を生じることができる。さらに、開示した化合物のある一定の同位体変形は、薬物又は基質の組織分布研究に有用でありうる放射性同位体(例えば、トリチウム、H又は14C)を組み入れることができる。
実施例
【0099】
下記実施例は、例示及び非限定的として意図したものであって、本発明の特定の実施態様を表す。
実施例1 (R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルの製造
【0100】
THF(25ml)中の(R)−2−メチル−コハク酸モノメチルエステル(24.5105g,0.1677mol)の溶液を濾過して、白色固体(26.3mg;水に溶解性、CHClに不溶性)を取り出して、LHMDS/THF(1.0M;360ml,0.360mol,2.15当量)の−30℃溶液に、温度が−25℃未満に維持されるような速度で加えた(1.5時間)。混合物を−10℃に温度上昇させ、1時間撹拌し、再び−30℃に冷却し、THF(25ml)中ヨウ化メチル(25.12g,0.1770mol,1.06当量)の溶液によって、温度が−25℃を超えないような速度で処理した(1.5時間)。この混合物を−25℃において2時間撹拌し、次に、RTに温度上昇させて、15.5時間撹拌して、0℃に冷却し、HO(75ml)中NHOH(25g,0.467mol,2.79当量)の溶液によって、温度が約0℃を超えないような速度で注意深くクエンチした(14℃までの短時間の工程を除く;最初の2mlは30分間にわたって加え、残りは1時間にわたって加えた)。この混合物をHO(100ml)で希釈して、固体を溶解して、層を分離した。残留ヨウ化メチルをクエンチするために、有機層をEtN(2.4ml)で処理して、廃棄した。水層を6N HClでpH1.92まで酸性化して、MTBE(4x150ml)で抽出した。水層(約pH3)を廃棄した。有機抽出物を一緒にし、真空濃縮して、13C−NMRとH−NMRによって上記標題化合物と同定された暗琥珀色油状物を得た。anti/syn/モノメチルの比率は、GCによって88.5:7.8:3.7であると決定された。重量:28.01g;13C-NMR (100 MHz, CDCl3):δ 180.97 (s); 175.67 (s); 51.80 (q); 41.36 (d); 41.23 (d); 13.50 (q); 13.40 (q); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.53 (1H, br s); 3.69 (3H, s); 2.84 (2H, 重複 mult); 1.20 (3H, d, J = 4.3 Hz); 1.18 (3H, d, J = 4.4 Hz)。
実施例2 (R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオールの製造
【0101】
実施例1からの暗琥珀色油状物(27.82g)をTHF(137ml、濾過して、不溶物57.1mgを除去した)によって希釈して、THF(434ml)中のLAH(16.48g,0.4343mol,2.61当量)の0℃懸濁液に40分間にわたって加えた。混合物を、5℃において1時間、次に30℃において17.5時間撹拌してから、0℃に冷却した。この混合物を、70分間にわたるHO(16.5g,0.916mol,5.50当量)の添加、続いて、10分間にわたる15%NaOH水溶液(16.5ml)の添加、続いて、10分間にわたるHO(50ml)の添加によって、注意深くクエンチした。3溶液全ての添加は、内部温度が5℃〜15℃の範囲内に留まるような速度で行なった。乳白色スラリーを濾過し(粗フリット、緩徐濾過)、THF(165ml)でリンスした。濾液を濃縮して、油状物を得た。共沸蒸留によって水分を除去するために、該油状物をトルエン(135ml)で希釈し、蒸留して、13C−NMRとH−NMRによって上記標題化合物と同定された淡黄褐色油状物を得た。dl:meso:モノメチルの比率は、GCによって92.65:5.91:1.43であると決定された。重量:17.16g(0.1452mol,(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステルから通しで、87.2%);13C-NMR (100 MHz, CDCl3):δ65.56 (t); 37.18 (d); 13.13 (q); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 0.85 (6H, d, J = 6.6 Hz); 1.72 (2H, mult); 3.45 (2H, dd, J = 10.9, 6.5 Hz); 3.55 (2H, dd, J = 10.9, 4.4 Hz); 4.10 (2H, d, J = 7.4 Hz)。
実施例3 (R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンの製造
【0102】
ACN(169ml)中の(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオール(15.75g,0.1333mol)とp−トルエンスルホニルクロリド(63.53g,0.3332mol,2.50当量)との溶液を、0℃に冷却して、ニートのEtN(56ml,40.66g,0.4018mol,3.01当量)によって、温度が5℃を超えないような速度で処理した(35分間)。混合物を0℃で2時間、次いで室温で19時間撹拌した。この混合物をEtOAc(107ml)とHO(103ml)で希釈した。相を分離して、水性画分をEtOAc(2x92ml)で抽出した。有機層を一緒にして、HO(115ml)で洗浄し、続いて、10%NaHCO水溶液(103ml)によって、及び25%NaCl水溶液(80ml)によって洗浄し、濃縮して、乳白/黄色固体を得た。この固体を、60℃においてMTBE(345ml)とEtOH(27g)中に溶解し、0℃に7時間かけて冷却し、0℃において16時間撹拌して、濾過した。濾過ケーキを0℃のMTBE(2x25ml)で洗浄して、N流によって乾燥させて、13C−NMRとH−NMRによって上記標題化合物と同定された白色固体を得た。dl:meso:モノメチルの比率は、HPLCによって96.72:1.79:1.49であると決定された。重量:38.20g(0.8956mol,67.2%);13C-NMR (100 MHz, CDCl3):δ144.91 (s); 132.71 (s); 129.90 (d); 127.82 (d); 72.59 (t); 32.97 (d); 21.62 (q); 11.20 (q); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3:δ0.75 (6H, d, J = 6.7 Hz); 1.97 (2H, mult); 2.47 (6H, s); 3.84 (4H, d, J = 5.5 Hz); 7.36 (4H, d, J = 8.1 Hz); 7.77 (4H, d, J = 8.2 Hz)。
実施例4 (S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの製造
【0103】
1Lの三口フラスコに、(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン(98.6重量%純度物質50.0g,49.3g,0.1156mol)と、THF(90ml,BHTによって安定化したもの)と、FAMSO(14.0ml,17.1g,0.1375mol,1.19当量)とを装入して、THF(12ml)でリンスした。この混合物を18℃に冷却した。生じた薄いスラリーを、THF中のLHMDS溶液(Chemetall Foote Corp.;1.28M溶液205ml,0.2624mol,2.27当量)によって3.5時間にわたって滴加処理した。HPLC分析は、チオケタールモノオキシドの、ジトシレートに対する比率が69.2:30.8(標準化重量%)であることを明らかにした。撹拌をさらに18時間続けた、この時点で該比率は97.7:2.3であった。この反応混合物を水(10ml)でクエンチした。得られた緑がかった溶液をメスシリンダに移した。量は358mlであった。チオケタールモノオキシドの収率は、HPLCによって79.1chem%であると決定された。該緑がかった溶液を飽和ブライン(110ml)と水(56ml)によって希釈した。下部水層を分離した。上部有機層を飽和ブライン(50ml)と水(10ml)と共に振とうした。下部水層を分離した。2つの水層を一緒にして、水(100ml)で希釈し、MeCl(125ml)で抽出した。水溶液の量は368mlであった。有機相を一緒にし、約100mlの最終量になるまで濃縮し(200Torr(約26.7kPa);最終ポット温度50℃)、その後、水(25ml)で希釈した。この反応混合物(40℃)を約15分間にわたって、37%HCl(35ml,42g,15.54g若しくは3.69当量のHClを含有する)で処理した。添加の過程にわたって、温度は56℃に上昇した。この反応混合物を水(100ml)で希釈し、真空水蒸気蒸留して(ポット温度74℃〜104℃/200Torr)、二相留出物を得た。共沸混合物(azeotrope)が完全に凝縮されることを保障するために、凝縮装置上に−10℃EtOHを置いた。下部水相(85ml)をMTBE(20ml)で抽出し、抽出物を上部有機相(95ml)と一緒にした。一緒にした有機層(111ml)をGCによって分析して、一緒にした有機層が、上記標題ケトン(0.876M,0.09724mol,84.1chem%)、MeCl(1.44area%)、MeSiOH(12.70area%)、THF(28.96area%)、(MeSi)O(34.23area%)、MeSSMe(4.58area%)、チオケタール(0.12area%以下)、及び水(1.185重量%KF)を含有することが判明した。
実施例5 ビスルフィト付加体を介した(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの精製
【0104】
粗(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノン(90.20重量%純度物質24.0g,21.65g,0.1930mol;不純物は、0.46area%のデス−メチルと、同定されない後溶出不純物(later-eluting impurities)、0.15、0.31、1.56、0.36、0.30及び0.71area%を包含する)を、HO(50ml)中のメタ亜硫酸水素ナトリウム、Na(29.45g,0.3098mol亜硫酸水素塩として、1.61当量)の溶液に加えた。該二相混合物をRTにおいて撹拌した。5分間後に、固体が沈殿し始めた。30分間後に、該スラリーは撹拌不能になったので、さらにHO(35ml)を加えた。2時間撹拌した後に、該スラリーを濾過して、H−NMRと13C−NMRによって、ケトンビスルフィト付加体、(S,S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジメチル−シクロペンタンスルホネートとして同定された白色固体を得た。重量:21.95g(0.1015mol,52.6chem%収率);13C-NMR (100 MHz, 1:1 CD3OD:D2O):δ93.71 (s); 45.53 (t); 40.77 (d); 17.39 (q) (ケトンのシグナルは、溶解時の解離に帰因して、亜硫酸水素塩のシグナル高さの25%にも存在する); 1H-NMR (400 MHz, 1:1 CD3OD:D2O):δ0.98 (3H, br s); 1.09 (3H, d, J = 5.6 Hz); 1.39 (1H, dd, J = 14.4, 10.0 Hz); 1.4-1.9 (3H, mults); 2.44 (1H, dd, J = 〜18, 4.8 Hz); 2.62 (1H, dd, J = 14.4, 8.4 Hz); 4.74 (1H, br s)。
【0105】
ビスルフィト付加体(21.95g,0.1015mol)をHO(90ml)中に溶解し、ペンタン(100ml)で覆って、6N HCl(70ml,0.42mol,4.14当量)で処理した。この二相混合物をRTにおいて2時間撹拌した。有機相を分離し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、Rotovap上で濃縮して、油状物を得て、これを蒸留して(bp.116℃/500Torr)、13C−NMR、H−NMR、MS及びGCによって、純粋形の上記標題化合物として同定された無色油状物(0.1area%未満のデス−メチル又はその他の不純物を含有する)を得た。重量:11.61g(0.1035mol,102.0chem%収率);13C-NMR (100 MHz, CDCl3):δ18.10 (2C, s); 39.16 (2C, d); 47.48 (2C, t); 218.70 (q); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ1.09 (6H, br d); 1.73-1.84 (4H, mults); 2.40 (2H, d, 12.4 Hz); MS (CI, NH3): m/e 141 (100%, P +HCO2H -OH)。
実施例6 (R,R)−3,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオンの製造
【0106】
−22℃のTHF(125kg)中の(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステル(133.5kg,912mol)の溶液を、−34℃のTHF(1190L)中のLHMDS(322.6kg,1928mol,2.11当量)に、反応混合物を−34℃〜−26℃に維持しながら、1.5時間にわたって加えた。該基質をTHF(10kg)でリンスした。この溶液を−26℃〜−30℃において1時間撹拌してから、−12℃に1.5時間かけて温度上昇させた。この混合物を−12℃〜−10℃において5分間撹拌してから、−34℃に7.8時間かけて冷却した。−21℃のTHF(153L)中のMeI(140kg,986mol,1.08当量)の溶液を、該ジアニオン溶液に、−34℃〜−27℃を維持しながら、5時間にわたって加えて、THF(45L)でリンスした。この混合物を−27℃〜−29℃において4時間撹拌し、20℃に1.5時間かけて温度上昇させ、20℃〜21℃において12時間撹拌して、5℃に冷却した。水(400L)中のNHCl(136kg,2543mol,2.79当量)の溶液を、混合物の温度を5℃〜25℃に維持しながら、7.3時間にわたって加えた。水(540L)を加えて、上部相を廃棄した。下部水相に、水(240L)を加え、続いて、HCl(300kg,35重量%,2880mol,3.16当量)によって、反応混合物の温度を4℃〜11℃に維持しながら、pH1にpH調節した。水リンス(10L)後に、生成物をMTBE(4x304kg)によって抽出し、濃縮して、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルを油状物(167kg,内部標準GCによって78.6重量%,89.7%収率,6.4area%シス、0.4%デス−メチル、3.3%トリメチル)として得た。
【0107】
粗(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルのサンプル(350.81g、78.6重量%,1.72mol)に、水(500ml)を混合して、二相混合物を得た。この混合物に、NaOH(50重量%,351.45g,4.39mol,2.55当量)を、混合物の温度を45℃以下に維持しながら、加えた。該混合物を45℃において10分間撹拌してから、HCl(438g,37.5重量%,4.50mol,2.62当量)によって、該混合物の温度を30℃以下に維持しながら、pHを10.4から0.5に調節した。該溶液をEtOAc(3x1L)で抽出し、MgSO上で乾燥させ、濃縮して、濃厚なスラリー(412g正味重量)を得た。無水酢酸(250ml,2.645mol,1.54当量)を加えて、混合物を109℃に温度上昇させた。NMRは、環状無水物への完全な変換を示した;その後の実験は、環化反応が75℃において迅速であったことを示した。該溶液を、50℃に冷却し、接種して、スラリーを得た。tert−アミルアルコール(1L)を加えて、該スラリーを−8℃に冷却した。沈殿を真空濾過によって回収して、分枝オクタンによって洗浄し、窒素流中で乾燥させて、(R,R)−3,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオンを白色固体(196.91g,89.4%,(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステルから80.2%)mp.103.5〜105.4℃として得た;[a]25D = 103.07°(ジオキサン, c = 1.00); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 1.23 (d, J = 7 Hz, 6 H), 2.98 (8重線, J = 4 Hz, 2 H);13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 12.73, 42.12, 174.57; MS (EICI) m/z (相対強度) 127 [(M-H)-,100]; 分析. C6H8O3としての計算値: C, 56.25; H, 6.29; N, 0.00; 実測値: C, 56.24; H, 6.25; N, <0.05;(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルへのメタノリシスは、GCによって、1.3%シス異性体と、<0.1%のその他の関連不純物を示した。
実施例7 (R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオールの製造
【0108】
45℃のMTBE(440ml)とTHF(58ml)中の(R,R)−3,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン(40.04g,312.52mmol)の溶液に、THF中のLAHの溶液(175ml,2.4M,420mmol)を滴下ロートから0.5時間にわたって滴加し、反応混合物を45℃〜54℃(還流)の温度に維持し、続いて、THFリンス(10ml)した。LAH添加の最初の150mlに関しては、混合物は撹拌可能なスラリーであり、これは添加の終了時に溶液になった。添加の最初の150mlに関しては、やや遅延した、強い発熱が存在し、最後の25mlに関しては、非常に弱い吸熱が存在した。得られた溶液を、NaOH(50%,1.38g,17.25mmol,0.55当量)とTHF(275ml)との−7℃の二相混合物中に、反応混合物を13℃以下の温度に維持しながら、40分間にわたって、カニューレで加えた。残留溶液をTHF(40ml)でリンスし、得られたスラリーを55℃に1時間にわたって温度上昇させ、55℃において2時間撹拌した。沈殿を、55℃における真空濾過(濾過時間4分間)によって取り出し、MTBE(330ml)とMeOH(28ml)との55℃混合物によって2回洗浄した(各洗浄に対して15分間濾過)。一緒にした濾液をMgSO上で乾燥させ、清澄化させ(clarified)、真空中で濃縮して、軽油状物(47.43g)を得た。分枝オクタン(100g)を加え、二相混合物を20℃において接種して、5分間の撹拌後にスラリーを得た。分枝オクタン(200g)を加えて、混合物を3℃に冷却させた。沈殿を真空濾過によって回収して、分枝オクタンによって洗浄し、窒素流中で乾燥させて、上記標題化合物を白色固体(34.24g,92.7%)、mp.42.5〜44.5℃として得た;[a]25D = 103.07° (ジエチルエーテル、c = 1.00); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.84 (d, J = 7 Hz, 6 H), 1.71 (m, 2 H), 3.44 (dd, J = 6.5 Hz, J = 11 Hz, 2 H), 3.54 (dd, J = 6.5 Hz, J = 11 Hz, 2 H);13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 13.21, 37.25, 65.53; MS (EICI) m/z (相対強度) 117 [(M-H)-, 100]; 分析:C6H14O2としての計算値:C, 60.98; H, 11.94; N, 0.00; 実測値:C, 60.91; H, 12.27; N, <0.05。
実施例8 (R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンの製造
【0109】
−10℃のACN(75ml)中のp−トルエンスルホニルクロリド(20.255g,106.24mmol,2.52当量)のスラリーに、(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオール(4.982g,42.16mmol)を加えた。EtN(17.7ml,127.0mmol,3.01当量)を1分間にわたって、反応混合物を0℃以下の温度に維持しながら、加えた。該スラリーを0℃〜5℃において3.5時間撹拌して、20℃に温度上昇させた。水(40ml)とEtOAc(60ml)とを逐次的に加えて、29℃において相を分離した。水層をEtOAc(2x50ml)で洗浄し、一緒にした有機層を水(40ml)、10%NaHCO水溶液(40ml)及び飽和NaCl水溶液(40ml)で洗浄した。有機画分をMgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮して、油状物22.56gを得た。トルエン(100ml)を加えて、溶液を得た。分枝オクタン(50ml)を添加した後に、生成物を10分間にわたって結晶化させた。分枝オクタン(150ml)を加えて、沈殿を真空濾過によって回収した。固体を分枝オクタンによって洗浄し、窒素流中で乾燥させて、上記標題化合物を白色固体(15.563g,86.5%)として得た;mp 83.1-83.6℃; [a]25D = -5.55 (酢酸エチル、c = 1.00); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.75 (d, J = 6 Hz, 6 H), 1.97 (m, 2 H), 2.47 (s, 6 H), 3.85 (d, J = 6 Hz, 4 H), 7.37 (d, J = 8 Hz, 4 H), 7.78 (d, J = 8 Hz, 4 H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 11.20, 21.64, 32.96, 72.51, 127.84, 129.90, 132.70, 144.90; MS (TSP) m/z (相対強度) 427 [(M+H)+, 20], 444 [(M+H2O)+, 100]; 分析:Calc’d for C20H26O6S2としての計算値: C, 56.32; H, 6.14; N, 0.00;実測値: C, 56.25; H, 6.00; N, 0.05; HPLC: (R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−1,4−スルホニルオキシ)−ブタン,99.6area%; (R,S)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン,0.08area%;(R)−2−メチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン,0.08area%。
実施例9 (R,R)−3,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオンの製造
【0110】
−30℃のTHF中のLHMDS溶液(24.4重量%,518.5g,756.1mmol)に、THF(52ml)中の(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステル(52.127g,356.69mmol)を0.5時間にわたって、反応混合物の温度を−29℃に維持しながら、加えた。該基質をTHF(6ml)でリンスした。該混合物を−29℃において25分間撹拌して、次に、THF(105ml)中のMeI(53.32g,375.65mmol,1.05当量)の溶液を0.5時間にわたって、反応混合物を−30℃に維持しながら、加えた。MeIをTHF(15ml)でリンスした。該混合物を−30℃において2時間撹拌して、0℃に温度上昇させ、1時間撹拌した。GCは、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステル78.8area%と、(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステル15.0area%と、メソ体である(R,S)−2,3−ジメチル−コハク酸6.2area%との混合物を示した。
【0111】
NaOH(50.0%,57.0g,713mmol,2.00当量)と水(200ml)との混合物を10分間にわたって、反応混合物の温度を0℃に維持しながら、加えた。この混合物を20℃において16時間撹拌して、亜硫酸水素ナトリウム(66.6%SO,1.68g,17.5mmol、0.049当量)を加えた。反応混合物の温度を25℃以下に維持しながら、pHをHCl(37.5重量%,208.6g,2.145mol,3.01当量)で10.67から0.11に調節した。相を分離し、有機層にトルエン(200ml)を加え、続いて、飽和NaCl水溶液(50ml)を加えた。相を分離し、水層をEtOAc(750ml)で抽出した。一緒にした有機画分をMgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮して、物質90.91gを得た。トルエン(150ml)を加え、該スラリーを75℃に温度上昇させて、溶液を得た。無水酢酸(44.67g,437.6mmol,1.23当量)を5分間にわたって加えて、混合物を75℃において0.5時間撹拌した、この時点でNMRは、完全な変換を示した。該溶液を30℃に冷却して、分枝オクタン(200ml)とt−アミルアルコール(200ml)とを加えた。シーディング(seeding)後に、生成物を結晶化させて、分枝オクタン(200ml)を加えた。該スラリーを−8℃に冷却し、沈殿を真空濃縮によって回収し、分枝オクタンによって洗浄し、窒素流中で乾燥させて、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸をベージュ色固体(29.38g,64.3%)として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d 1.23 (d, J = 7 Hz, 6 H), 2.98 (8重線, J = 4 Hz, 2 H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) d 12.73, 42.12, 174.58; 13C NMR は、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸93.7%、メソ異性体2.9% (10.75, 38.14 ppm) 及びデス−メチル3.5% (14.74, 35.33, 35.74 ppm)を示した。
実施例10 (R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルの製造
【0112】
MeOH(400ml)中の(R,R)−3,4−ジメチル−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン(40.06g,312.6mmol)の溶液を65℃において6時間還流させた。得られた溶液を真空中で濃縮して、上記標題化合物を淡ベージュ色油状物(49.80g,99.4%)として得た;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.19 (t, J = 7 Hz, 6 H), 2.82 (q, J = 7 Hz, 1 H), 2.88 (q, J = 7 Hz, 1 H), 3.70 (s, 3 H), 10.61 (bs, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 13.41, 13.52, 41.20, 41.38, 51.92, 175.59, 181.43; MS (EICI) m/z (相対強度) 159 [(M-H)-, 100]; 分析:C7H12O4としての計算値: C, 52.49; H, 7.55; N, 0.00; 実測値: C, 52.20; H, 7.76; N, <0.05。
実施例11 (R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸の製造
【0113】
粗(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステル(3.2177g,20.09mmol、GC:85.9area%、シス異性体6.1%、デス−メチル不純物1.8%、トリメチル不純物3.3%)と水(11ml)との二相混合物に、50重量%NaOH水溶液(4.08g,50.94mmol,2.54当量)を、反応混合物の温度を25℃以下に維持しながら、加えた。得られた溶液を20℃において39分間撹拌してから、HCl(37.5重量%,5.36g,55.1mmol)を加えた。得られた溶液をMeCl(5ml,次に、2x10ml)とEtOAc(3x35ml)によって抽出した。有機層をMgSO上で乾燥させ、蒸発乾固させた。該粗固体をi−PrOH(10ml)中に溶解し、分枝オクタン(30ml)を加えた。この溶液を真空中で、総量20mlになるまで濃縮し、冷却して、スラリーを得た。分枝オクタン(10ml)を加えて、混合物を0℃に冷却した。沈殿を真空濾過によって回収し、分枝オクタンで洗浄し、窒素流中で乾燥させて、上記標題化合物を白色固体(1.4592g,49.7%)として得た;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.02 (d, J = 7 Hz, 6 H), 2.58 (m, 2 H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) d 13.40, 40.96, 176.38; 13C-NMR は、メソ異性体(14.77 ppm, 41.87 ppm)1.6%を示す。
実施例12 表面下添加による(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルの製造
【0114】
THF中のLHMDS(1300kg,24.9重量%,1.93kg−mol,2.1当量)の溶液をタンクに装入して、−30℃に冷却する。(R)−2−メチル−コハク酸4−メチルエステル(133kg,0.91kg−mol,1当量)に等量のTHFを混合して、浸漬管(dip tube)を、その出口が反応器アジテーターの先端から約0.3mになるように反応器に装着して用いて、リチウム試薬に表面下供給する。該基質の添加中に、反応混合物の温度は、−25℃以下に維持する。得られた混合物を撹拌し、−10℃に温度上昇させてから、−30℃に冷却する。MeI(136kg,0.96kg−mol,1.05当量)に、2倍量のTHFを混合して、該反応混合物に、該反応混合物の温度を−25℃以下に維持しながら、表面下供給する。温度を8時間かけてRTに調節する。NHCl(136kg)を水(400L)中に溶解して、反応器に徐々に供給して、反応をクエンチする。さらなる水(550L)を撹拌しながら加えて、アジテーターを停止して、相を分離させる。有機相を廃棄する。水相を37%HCl(300kg)と水(250L)との混合物によって酸性化して、MTBE(4x400L)で抽出する。MTBE相を一緒にし、蒸留して、上記標題化合物を油状物として得る。
【0115】
表2は、表面下反応物添加を用いた、所望のアンチ−ジアステレオマー、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルと、好ましくないシン−ジアステレオマーである(R,S)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルとの収率を示す。比較のために、表2はさらに、反応物を表面上添加によって加えること以外は、前パラグラフに記載した方法と同様な方法を用いた、該2種類のジアステレオマーの収率も示す。
表2.反応物の表面下添加(実施例12〜20)及び表面上添加(実施例21〜23)を用いた、アンチ−ジアステレオマー及びシン−ジアステレオマーの収率
【表2】

実施例24〜30 (R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオールの製造
【0116】
(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステル(150kg,0.91kg−mol)をTHF(260L)とMTBE(1500L)とによって希釈して、60℃に加熱する。この溶液に、10%LAH溶液(THF中530kg,1.33kg−mol)を供給すると、軽質アルミニウムアルコキシド中間体を含有するスラリーが生じる。反応によって発生する熱は、溶媒の沸騰と凝縮によって除去される。第2タンクにTHF(約970L)と、水(220L)と、50%NaOH水溶液(5kg)とを装入して、約50℃に加熱する。THF、水及びNaOHを含有するタンクに、アルミニウムアルコキシドスラリーを制御した形式で供給する。次に、アジテーターを停止させて、水酸化アルミニウムを10〜15分間沈降させて、生成物をデカンティング(decanting)によって取り出す。固体をMTBE(3x600L)によって洗浄して、追加の生成物を抽出する。有機液体を回収し、蒸留して、上記標題化合物を得る。
【0117】
表3は、前のパラグラフに記載した仕上げ処理(即ち、過剰な塩基に添加、実施例24〜28)を用いた、(R,R)−2,3−ジメチル−コハク酸モノメチルエステルのLAH還元による(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオールの収率を示す。比較のために、表3はさらに、Fieser仕上げ処理――LAH還元後に、HO、15%NaOH水溶液及びHOの逐次的添加――を用いた、(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオールの収率を示す。
表3.LAH還元と、過剰な塩基への添加(実施例24〜28)又はFieser仕上げ処理(実施例29と30)とによる、(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオールの収率
【表3】

実施例31 (R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンの製造
【0118】
反応器に、p−トルエンスルホニルクロリド(400kg,2.14kg−mol,2.5当量)を乾式装入する(dry-charged)。続いて、アセトニトリル(1000L)を加えて、得られたスラリーを0℃に冷却する。該反応器に、(R,R)−2,3−ジメチル−ブタン−1,4−ジオール(100kg,0.85kg−mol,1当量)を加える。続いて、EtN(260kg,2.5kg−mol,3当量)を該反応器に、反応器の温度を5℃以下に維持するような速度で供給する。EtOAc(660L)と水(640L)とを、撹拌しながら加えて、反応をクエンチする。撹拌を停止して、有機相と水相とを分離させる。水相をEtOAc(560L)で洗浄し、得られた有機相を該反応クエンチからの有機相と一緒にする。一緒にした有機相を10%NaHCO水溶液(720kg)と25%NaCl水溶液(670kg)とによって逐次的に洗浄する。EtOAcを大気圧において留去して、約400Lの液体量を得て、これに、MTBE(1100L)とEtOH(107kg)を加える。該混合物を還流するまで加熱して、その後、約20℃に冷却して、粗生成物を結晶化させ、これを濾過によって回収する。該粗生成物をMTBE(2200L)中に分散させて、該混合物を還流するまで加熱して、固体を溶解する。溶解後に、水(200L)を、撹拌しながら加えて、相を分離させる。水相を廃棄する。該有機相に、EtOH(150kg)を加えて、混合物を20℃に冷却して、上記標題化合物を結晶化させ、これを濾過によって回収する。
実施例32 LHMDSによる(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンの分解
【0119】
THF(15ml)中の(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン(269mg,0.631mmol)の溶液を、THF中のLHMDS溶液(1.35M溶液1.0ml,1.35mmol,2.14当量)で処理し、17℃において6.5時間撹拌し、この時点で、定量HPLC分析で、元のジトシレートの55.5%が残留していた。
実施例33 LHMDSによる、チオケタールS−オキシドである(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタンの、ビニルスルフィドである(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテンへの分解
【0120】
THF(1.5ml)中の(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタン(318mg,1.541mmol)の溶液を、THF中のLHMDS溶液(1.35M溶液2.0ml,2.70mmol,1.75当量)で処理して、17℃において6.5時間撹拌し、この時点で、HPLC分析は、元のチオケタールS−オキシドの32.3%が(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテンに変換していることを実証した。同様な方法で行なった別の実験は、標準的な仕上げ処理及びシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:線状ペンタン)後に、純粋形での該ビニルスルフィドを生じた。(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテンのスペクトル:13C-NMR (100 MHz, CDCl3):δ136.75 (s); 125.90 (s); 47.92 (d); 43.92 (t); 42.16 (d); 19.76 (q); 19.29 (q); 14.89 (q); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) :δ1.03 (3H, s); 1.08 (3H, s); 1.87 (1H, 7重線, J = 7.2 Hz); 2.06 (1H, mult); 2.27 (3H, s); 2.3 (1H, 一部不明瞭なmult); 2.57 (1H, dd, J = 15.3,dd 8.2 Hz); 5.13 (1H, s); UV:λmax = 226 nm.
実施例34 ビニルスルフィドである(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテンの、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンへの加水分解
【0121】
THF(19ml)中に(3R,4S)−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンテン(3.985mmol)を含有する溶液をHCl水溶液で酸性化した。RTにおいて2.5時間撹拌した後に、定量的HPLC分析は、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンへの加水分解が完了したことを実証した。定量的GC分析は、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの収率が73.2%であることを示した。
実施例35 (S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの製造;15〜17℃における塩基添加
【0122】
15〜17℃のTHF(9ml)中のジトシレート、(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン(91.6重量%純度物質5.02g,4.598g,10.780mmol)とFAMSO(1.4ml,1.708g,13.750mmol,1.28当量)との溶液に、THF中のLHMDS溶液(Chemetall Foote Corp.;1.35M溶液21.5ml,29.02mol,2.69当量)を5時間にわたって加えた。この混合物を20℃に温度上昇させて、16時間撹拌した、この時点で、HPLC分析は、該ジトシレートから該チオケタールS−オキシド、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタンへの変換が完了したことを実証した。反応混合物を水(7.2ml)でクエンチして、下部水相を分離して、MeCl(5ml,次に10ml)で抽出した。有機層を一緒にし、濃縮して、二相混合物を得て、これをTHF(3ml)で希釈し、6N HCl(6ml,36mmol,3.34当量)で処理して、RTにおいて23時間撹拌した。上記標題化合物の収率は、定量的GC分析によって86.3%であった。
実施例36 (S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの製造;−2℃における塩基添加
【0123】
−2℃のTHF(9ml)中の(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン(91.6重量%純度物質5.05g,4.626g,10.845mmol)とFAMSO(1.4ml,1.708g,13.750mmol,1.27当量)との溶液に、THF中のLHMDS溶液(Chemetall Foote Corp.;1.35M溶液21.5ml,29.02mmol,2.68当量)を3.5時間にわたって加えた。この混合物を20℃に温度上昇させた。1時間後に、HPLC分析は、(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチル−1−メチルスルファニル−シクロペンタンの、該ジトシレートに対する比率が、52.4:47.6(標準化重量%)であることを明らかにした。撹拌をさらに17時間続けた、この時点で、該比率は98.2:1.8であった。この反応混合物を水(11ml)でクエンチした。下部水層を分離し、上部有機層を飽和ブライン(10ml)と共に振とうした。下部水層を分離した。該2つの水層を一緒にして、水(10ml)で希釈し、MeCl(10ml)で抽出した。有機層を一緒にし、低量になるまで濃縮して、6N HCl(6ml,36mmol,3.32当量)で処理して、RTにおいて66時間撹拌した。上記標題化合物の収率は、定量的GC分析によって71.3%であった。
実施例37 (S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの製造
【0124】
反応器に、(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン(368.8kg,0.8646kg−mol)と、THF(600L)と、FAMSO(127.8kg,1.0288kg−mol,1.19当量)とを装入した。この混合物を−3℃に冷却し、THF中のLHMDS溶液(Chemetall Foote Corp.;20重量%溶液1432kg,286.4kg,1.712kg−mol,1.98当量)によって処理した。この混合物を0℃において1時間、次に、20℃において10時間撹拌した。この混合物を水(480L)でクエンチして、EtOAc(3x370kg)で抽出し、水(340L)で洗浄した。有機相を真空下で200L量に蒸留して、THF(100L)とMTBE(150L)によって希釈し、6N HCl(160L,0.960kg−mol,1.11当量)で処理して、10℃において19時間撹拌して、水(100L)で希釈した。下部水層を分離し、MTBE(160L)で抽出した。有機相を150L量になるまで真空濃縮し、水(240L)で処理して、150Lの最終量にまで水蒸気蒸留した。受器中の下部水層を分離した。上部相は、GCによって、上記標題化合物(52.3重量%純度)として同定された。重量:109.2kg(57.11kg,0.5092kg−mol,58.9%)。
実施例38〜45 (S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの製造
【0125】
表4は、(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンとFAMSOとの混合物にLHMDSを加える温度の関数としての、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの収率(mol%)を列挙する。実施例38〜40は、実施例37の一般的方法を用いて行ない;実施例41〜45は、実施例4の一般的方法を用いて行なった。
表4.LHMDS添加温度の関数としての(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの収率
【表4】

実施例46 (S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸の製造
【0126】
反応器に、(S,S)−4,5−ジメチルシクロヘキセン(52.204kg,473.7mol)と、(n−オクチル)MeNHHSO(2.231kg,4.790mol,0.0101当量)と、NaWO・2HO(1.586kg,4.808mol,0.0102当量)と、HO(21.5L)とを装入した。この混合物を窒素によって脱気して、88.5℃に加熱し、30%H水溶液(240.35kg,H72.105kg又は2.120kmol含有,4.48当量)によって約16時間にわたって処理した。次に、この混合物を99℃において1時間撹拌してから、RTに冷却した。この混合物をEtOAc(206L,次に2x33L)によって抽出した。HO(262L)中の硫酸第一鉄7水和物(23.6kg)と、NaCl(15.5kg)と、37%HCl(5.97kg)との溶液を調製した。一緒にした有機抽出物を硫酸第一鉄溶液(3x100L)によって、続いて、NaCl水溶液(2x80L)によって洗浄した。有機抽出物を無水NaSO(33.5kg)上で乾燥させ、濃縮して、標題化合物を油状物として得て、これをMeOH(139L)中に溶解して、赤色溶液を形成した。重量:69.757kg(400.4mol,84,5%)
実施例47 (S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸ジメチルエステルの製造
【0127】
MeOH(43L)中の(S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸(24.18kg,138.8mol)の溶液をMeOH(111L)で希釈し、HSO(2.22kg,22.63mol,0.16当量)で処理し、41℃において5時間加熱した。この混合物を濃縮し、水(156L)で希釈し、トルエン(3x87L)で抽出して、濃縮して、標題化合物を得て、これをTHF(20L)中に溶解した。重量:26.11kg(129.1mol,93.0%)
実施例48 (1S/R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステルの製造
【0128】
THF中(S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸ジメチルエステルの溶液(48.5kg,該エステル38.5kg又は190.4mol含有)をTHF(344L)で希釈して、t−BuOK(28.58kg,254.7mol,1.34当量)とTHF(762L)との還流する(67℃)混合物に、3.5時間にわたって加えた。この添加中に、該THFの一部(198L)は留去した。該混合物を2時間還流させてから、10〜15℃に冷却した。1N HCl(280L,280mol,1.47当量)の添加によって、pHを12.5から2に調節した。この混合物をEtOAc(250L,次に170L)で抽出した。一緒にした有機抽出物を飽和ブライン(220L)で洗浄し、濃縮して、標題化合物を油状残渣として得た。重量:33.24kg(195.3mol,102.6%計算収率)。
実施例49 (S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノンの製造
【0129】
DMSO(175L)中の(1S/R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル(63.48kg,375.1mol)とHO(11.5L)との溶液を、120〜140℃に加熱して、この温度に5時間維持した。この混合物を5〜15℃に冷却して、HO(800L)中のNaCl(55.87kg)の溶液に加えた。この混合物をMTBE(4x196L)で抽出した。抽出物を濃縮し、真空下で蒸留して(bp.43〜57℃/5〜12mmHg)、標題化合物を、NMRと、真正サンプルとのGC保持時間比較とによって同定された無色透明な液体として得た。重量:27.41kg(244.4mol,65.1%)
実施例50 (S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステルの製造
【0130】
THF(15ml)中のリチウムt−ブトキシド(9.02g,0.1127mol,1.61当量)の溶液を、10℃に冷却して、ニートのトリエチルホスホノアセテート(26.84g,0.1197mol,1.71当量)によって、温度が22℃を超えないような速度で処理した(20分間)。THF(86ml)中の(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノン(68.8g,0.0701mol,1.00当量)を、該ホスホネート溶液に注射器によって、温度が15℃未満に留まるような速度で加えた(20分間)。この反応混合物を21℃において16時間撹拌した。この反応混合物を5℃に冷却して、水(200ml)によってクエンチした。水層をヘプタン(3x50ml)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、約50mlにまで濃縮し、ヘプタン(120ml)で希釈し、水(3x50ml)で洗浄し、濃縮して、油状物を得た。該油状物は水分を含有したので、該混合物をヘプタン(100ml)で希釈し、蒸留して、(S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステルを、GCによって同定された、透明な淡黄色油状物として得た(12.88g,0.0668mol,95.4%)。
実施例51 (R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタンから直接の、(S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステルの製造
【0131】
1Lの三口フラスコに、ジトシレートの(R,R)−2,3−ジメチル−1,4−ビス−(トルエン−4−スルホニルオキシ)−ブタン(49.3g,0.1156mol)と、THF(90ml)と、ホルムアルデヒドジメチルメルカプタールS−オキシド(14.0ml,17.1g,0.1375mol,1.19当量)とを装入して、THF(12ml)でリンスした。この混合物を18℃に冷却した。生じた薄いスラリーを、THF中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(1.28M溶液205ml,0.2624mol,2.27当量)によって3.5時間にわたって滴加処理した。撹拌をさらに18時間続けた。この反応混合物を水(10ml)でクエンチした。緑がかった溶液をブライン(110ml)と水(56ml)で希釈した。下部水層を分離した。上部有機層を飽和ブライン(50ml)と水(10ml)と共に振とうした。2つの水層を一緒にして、水(100ml)で希釈し、塩化メチレン(125ml)で抽出した。有機相を一緒にし、約100mlの最終量になるまで濃縮してから、水(25ml)で希釈した。この反応混合物(40℃)を約15分間にわたって、37%塩酸(35ml,42g,0.426mol HCl)で処理した。この反応混合物を水(100ml)で希釈し、真空蒸留して、二相留出物を得た。下部水層(85ml)をMTBE(20ml)で抽出し、得られた水相を上部有機相(95ml)と一緒にした。一緒にした有機層をESTD GCによって分析して、一緒にした有機層が、(S,S)−3,4−ジメチル−シクロペンタノン(0.876M,0.09724mol,84.1chem%)、CHCl(1.44area%)、MeSiOH(12.70area%)、THF(28.96area%)、(MeSi)O(34.23area%)、MeSSMe(4.58area%)、及び水(1.185重量%KFによる)を含有することが判明した。
【0132】
該シクロペンタノン溶液を無水炭酸カリウム(か焼微細粉末、4g)上で2時間撹拌した、この時点で、混合物は、KF分析によって乾燥していると判明した(0.14当量水分)。上澄み液をデカントし(68ml)、炭酸カリウムを濾過した。該ケーキをTHF(2x3ml)で洗浄して、洗浄液を上澄み液と一緒にした。THF(15ml)中の固体リチウムt−ブトキシド(9.0243g,0.1127mol,1.61当量)の溶液を10℃に冷却して、ニートなトリエチルホスホノアセテート(26.8431g,0.1197mol,1.71当量)によって、温度が22℃を超えないような速度で処理した(20分間)。該ケトン溶液を、該ホスホネート溶液に注射器によって、温度が15℃未満に留まるような速度で加えた(20分間)。この反応混合物を21℃において16時間撹拌した。この反応混合物を5℃に冷却して、水(200ml)によってクエンチした。水層をヘプタン(3x50ml)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、約50ml量にまで濃縮した。ヘプタン(120ml)で希釈し、水(3x50ml)で洗浄し、真空下で濃縮して、微量の水分を含有する油状物を得た。この混合物をヘプタン(100ml)で希釈し、常圧蒸留した。最初の留出物画分(約15ml)は、微量の水分を含有した。該溶液を真空下で濃縮して、GCによって(S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステルと同定された、透明な淡黄色油状物(12.1802g,0.066829mol,95.4chem%)を得た。
実施例52 (3S,4S)−(3,4−ジメチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)−酢酸エチルエステルの製造
【0133】
250mlの丸底フラスコを窒素で排気して、該フラスコに、炭酸セシウム(6.3g,0.019mol,0.2当量)と、ジメチルスルホキシド(87ml)と、ニトロメタン(7.4ml,8.4g,0.137mol,1.4当量)と、(S,S)−(3,4−ジメチル−シクロペンチリデン)−酢酸エチルエステル(17.6g,0.097mmol,1.0当量)とを装入した。この混合物を窒素で排気して、該スラリーを窒素下、80℃において10時間撹拌した。該反応器の内容物を10℃未満に冷却して、該反応器に、水(183ml)中の酢酸(2.43g,0.041,0.4当量)を、温度を25℃未満に維持しながら、徐々に装入した。MTBE(88ml)を加えて、生じた水層と有機層とを分離した。水層をMTBE(1x175ml)で抽出した。有機層を一緒にして、水(2x260ml)で洗浄し、真空中で濃縮して、(3S,4S)−(3,4−ジメチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)−酢酸エチルエステルを淡褐色油状物(24.1g,94%,GC純度に関して修正)として得た。
実施例53 バッチ式水素化による(7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザースピロ[4.4]ノナン−3−オンの製造
【0134】
モリブデン助成スポンジニッケル(Johnson Matthey, Type A-7000、19.53gスラリー、8.79g計算乾燥触媒量)と、(3S,4S)−(3,4−ジメチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)−酢酸エチルエステル(42.58g,41ml,約175.0mmol)と、MeOH(261ml)との水性スラリーを、4ブレード・セルフ−アスピレイティング・ガス分散式放射状インペラー(four-bladed self-aspirating gas-dispersing radial impeller)を装備した450mlガラスParr撹拌反応器に装入した。該反応器を密封し、水素によって細心にパージして、水素によって約50psig(約345kPa)に加圧した。該混合物を1150rpmで撹拌して、水素によって反応器内の約50psigの圧力を維持しながら、約80℃に加熱した。水素取り入れが実質的に停止した後に、反応器温度を90℃に上昇させ、反応器の内容物をさらに5時間撹拌した。冷却し、一晩その状態を保持した後に、生成物混合物を細心に真空濾過して、MeOHで洗浄した(単離時に、65%平均収率)。
実施例54 半バッチ式水素化による(7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザースピロ[4.4]ノナン−3−オンの製造
【0135】
モリブデン助成スポンジニッケル(Johnson Matthey, Type A-7000、6.0mlを占有する9.82gスラリー、4.47g計算乾燥触媒量)とMeOH(100ml)との水性スラリーを、4ブレード・セルフ−アスピレイティング・ガス分散式放射状インペラーを装備した450mlガラスParr撹拌反応器に装入した。該反応器を密封し、水素によって細心にパージして、水素によって約50psigに加圧した。該混合物をアジテーターによって約1100rpmで撹拌しながら、約50℃の温度に加熱した。該触媒懸濁液を含有する反応器中に、次に、MeOH(21ml)中の(3S,4S)−(3,4−ジメチル−1−ニトロメチル−シクロペンチル)−酢酸エチルエステル(21.74g,21ml,約89.35mmol)の溶液を、50psigの全系圧力を維持するために必要に応じて水素を供給しながら、Milton Royピストンポンプを用いて、1.8時間にわたって計り入れた。続いて、ポンピング系をMeOH(2x10ml)で該反応器中にリンスし、反応器温度を90℃に上昇させ、この状態を5時間保持した。冷却し、一晩その状態を保持した後に、生成物混合物を細心に真空濾過して、MeOHで洗浄して、一緒にした濾液と洗浄液とを単離のために進めた(単離時に、85%平均収率)。
実施例55 (7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザースピロ[4.4]ノナン−3−オンの単離
【0136】
メカニカルスターラーを装備し、87mlレベルにマークした、1Lの四口丸底フラスコに、(7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザースピロ[4.4]ノナン−3−オン(理論量=17.2g,103mmol)のメタノール溶液を装入した。この混合物を真空蒸留によって、87mlにまで濃縮した。残渣を酢酸エチル(170ml)によって2回希釈し、再度蒸留して、87mlにした。得られた有機溶液を最初は1N HCl(87ml)によって、次は1N NaOH(87ml)によって抽出した。これらの水相を酢酸エチル(45ml)によって逐次的に洗浄した。一緒にした有機相を1Lの四口丸底フラスコに、分枝オクタン(170ml)と共に装入した。該混合物を真空蒸留によって、87mlにまで濃縮した。留出物を分枝オクタン(170ml)で希釈して、再度、真空蒸留によって、87mlにまで濃縮した。この希釈/蒸留方法をさらに2回繰り返した。得られた87ml溶液を1時間かけて周囲温度に冷却したところ、この時間中に、結晶が形成された。生じたスラリーを約0℃に冷却し、30分間撹拌してから、真空濾過した。回収された結晶を冷分枝オクタン(3x25ml)で洗浄して、真空下、65℃において1時間乾燥させて、(7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザースピロ[4.4]ノナン−3−オン(11.6g,67%)を得た。
実施例56 (3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸の製造
【0137】
オーバーヘッド撹拌機と、還流冷却器と、PTFE塗被(PTFE coated)熱電対とを装備した、500mlの四口丸底フラスコ(RBF)に、(7S,8S)−7,8−ジメチル−2−アザ−スピロ[4.4]ノナン−3−オン(20.0g,0.12mol,1.0当量)と、HCl(37重量%,35.0g,0.35mol,3.0当量)と、水(20.0g)とを、窒素ブランケット下で装入した。この混合物を90℃に加熱し、反応が完了する(典型的に24時間内に、HPLCによる97%を超える変換)まで、撹拌した。得られた溶液を50〜60℃の温度に冷却して、トルエン(2x30ml)で抽出した。トルエン洗浄液は廃棄した。水相を、50%NaOH(約19g,0.23mol,2.0当量)によって、pH2.0に調節した。該フラスコに、活性炭(4.0g)と、濾過剤(filtering agent)(4.0g)と、水(10g)とを加えて、この内容物を50℃において30分間撹拌した。該スラリーを60℃に加熱し、該スラリーを、55℃を超える温度に維持しながら、粗フリット及び0.5μmPTFE膜に通して濾過した。該フィルターケーキを、50℃を超える温度に加熱されてある水(25ml)でリンスした。一緒にした水層を40℃未満の温度に冷却して、約70mlの最終量にまで真空蒸留した。生成物を含有する濃縮溶液を50%NaOH(およそ8.2g,0.1mol,0.9当量)によって、6.5〜7.5のpHに調節して、沈殿を形成した。この混合物を氷浴で5℃未満の温度に冷却した。生じたスラリーを5℃未満の温度において60分間撹拌してから、濾過して、粗(固体)生成物を単離した。該ケーキをまだ湿っているうちに水(20g)でリンスして、その後、該フィルター上で24〜48時間乾燥させた。
【0138】
オーバーヘッド撹拌機と、還流冷却器と、熱電対とを装備した、500mlの四口丸底フラスコ(RBF)に、窒素ブランケット下で、粗(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸(20g)と、イソプロパノール/水(40重量%i−Pr水溶液125ml)とを装入した。該スラリーを還流するまで(およそ85℃)加熱した。この溶液を15分間撹拌して、これを0.5μmPTFE膜と、か焼ガラスフリット(60℃に加熱したもの)に通して、窒素圧を用いて濾過することによって、清澄化させた。該フラスコに、イソプロパノール/水(40重量%i−Pr水溶液20ml)を装入し、還流するまで加熱した。該リンス液(rinse)を、窒素圧によって該膜とフリットに通して移して、生成物溶液の濾液と一緒にした。一緒にした濾液を、オーバーヘッド撹拌機と、蒸留冷却器と、熱電対とを装備し、予めマークした(102mlのところに)500mlの四口丸底フラスコに、窒素ブランケット下で移した。該溶液を40℃未満に冷却した。該スラリーを40〜50℃において、102mlの総量にまで真空蒸留した。イソプロパノール含量を24〜27重量%i−PrOHに調節した。該スラリーを還流するまで(約87℃)再加熱して、全ての固体が溶解するまで、この状態に保持した。該溶液を20℃/hの速度で、5℃まで徐々に冷却して、この状態に60分間保持して、生成物を沈殿させた。最終(固体)生成物を真空濾過によって単離して、イソプロパノール(50ml、5℃未満に冷却したもの)によって洗浄した。該フィルターケーキを真空下、40℃において24時間乾燥させて、(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸(21.0g,95%)を得た。
【0139】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる限り、不定冠詞(“a”,“an”)及び定冠詞(“the”)のような単数冠詞は、前後関係が他の方法で明確に指定しない限り、単数物体も、複数物体も意味しうることを注目すべきである。したがって、例えば、化合物(“a compound”)を含有する組成物は、単一化合物を含むことも、2種類以上の化合物を含むこともありうる。
【0140】
これまでの記載が、例示であり、非制限的であるように意図されていることを理解すべきである。これまでの記載を読むならば、多くの実施態様が当業者に明らかになるであろう。それ故、本発明の範囲は、特許請求の範囲を基準にして、このような請求項が権利を与える均等物の完全な範囲と共に決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、RとRは、それぞれ、独立的にC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり、ここで、アリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル、及びニトロから選択される1〜3個の置換基によって置換されうる]
で示される化合物又はその反対エナンチオマーの製造方法であって、
1種類以上の、式13:
【化2】

[式13中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、RとRは、RとRが異なるものであるという条件で、それぞれ、独立的に水素、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、オキシスルホニルアニオン、ヒドロキシであるか又は不存在である]
で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該1種類以上の式13の化合物若しくはその反対エナンチオマーの塩を加水分解することを含む方法。
【請求項2】
前記1種類以上の式13で示される化合物が、式10:
【化3】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は式11:
【化4】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は式12:
【化5】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、或いは式10で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーと、式11で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーとの混合物から選択され、ここで、式10、11及び12中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式9:
【化6】

で示される化合物又はその反対エナンチオマーを、塩基の存在下で、ホルムアルデヒド ジメチルメルカプタール S−オキシド(FAMSO)と反応させて、式10:
【化7】

で示される化合物又はその反対エナンチオマーを得ることをさらに含み、ここで、式9と式10中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、Rは、C−Cアルキルスルホニル、フルオロ−C−Cアルキルスルホニル又はアリールスルホニルである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
式5:
【化8】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを、式8:
【化9】

で示される化合物と反応させて、式9で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ることをさらに含み、ここで、式5中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、式8中のRは、式9に関して上記で定義したとおりであり、Xは脱離基である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
式4:
【化10】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は式7:
【化11】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを還元して、式5で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ることをさらに含み、ここで、式4と式7中のRとRは、式1に関して上記で定義したとおりであり、式4中のRは、RO−若しくはアミノである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
式2:
【化12】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを、式3:
【化13】

で示される化合物と反応させて、式4で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ることをさらに含み、ここで、式2中のRと式3中のRとは、式1に関して上記で定義したとおりであり、式2中のRは、式4に関して上記で定義したとおりである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
式1:
【化14】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの製造方法であって、式18:
【化15】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーからエステル部分を除去することを含む方法(上記式中、R、R及びRは、それぞれ、独立的に、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり、ここで、アリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル及びニトロから選択される1〜3個の置換基で置換されうる)。
【請求項8】
式17:
【化16】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを塩基によって処理して、式18で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ることをさらに含み、ここで、該塩基は、式17で示される化合物のエステル部分の1つに隣接して位置するメチレン基を脱プロトン化することができ、式17中のR、R及びRは、式1と式18に関して定義したとおりである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
(a)式16:
【化17】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを、酸触媒の存在下で、アルコール、ROHと反応させて、式17で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ること;及び
(b)場合により、式15:
【化18】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを酸化して、式16で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ること
をさらに含み、ここで、式15と式16中のRとRは、式1に関して定義したとおりであり、該アルコール中のRは、式18に関して定義したとおりである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
式14:
【化19】

[式中、RとRは、それぞれ、独立的に、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり、ここで、アリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル及びニトロから選択される1〜3個の置換基で置換されうる]
で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩の製造方法であって、
(a)式1:
【化20】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを、請求項1〜9のいずれか1項に従って製造すること;及び
(b)式1で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを、式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーに、又は該式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩に変換すること
を含み、ここで、式1中のRとRは、式14に関して上記で定義したとおりである方法。
【請求項11】
式1で示される化合物の、式14で示される化合物への変換が、
(a)式1で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを、式20:
【化21】

で示される化合物と反応させて、式21:
【化22】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ること;
(b)式21で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーをニトロメタンと反応させて、式22:
【化23】

で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを得ること;
(c)式22で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーのニトロ部分を還元して、式23:
【化24】

で示される化合物若しくは反対エナンチオマーを得ること(該ニトロ部分は、場合により半バッチ式水素化によって還元される);
(d)式23で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーを加水分解して、式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの塩を得ること;及び
(e)場合により、式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの塩を、式14で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの薬学的に受容される塩に変換すること
を含む、請求項10に記載の方法(上記式において、式21〜23中のRとRは、式14に関して定義したとおりであり;式20中のRと、式20〜22中のRは、それぞれ、独立的に、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり、ここで、アリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル及びニトロから選択される1〜3個の置換基で置換されうる)。
【請求項12】
、R及びRが、それぞれ、独立的に、C−Cアルキルから、又はC−Cアルキルから、又はメチルから選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式13:
【化25】

[式中、RとRは、独立的に、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり、ここで、アリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル及びニトロから選択される1〜3個の置換基で置換されうる;並びに、RとRは、RとRが異なるものであることを条件として、独立的に、水素、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、オキシスルホニルアニオン、ヒドロキシであるか、又は不存在である]
で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式13で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの塩。
【請求項14】
式19:
【化26】

[式中、RとRは、それぞれ、独立的に、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルであり;R10は、水素原子、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルケニル、C−Cシクロアルキル−C−Cアルキル、C−Cシクロアルケニル−C−Cアルキル、又はアリール−C−Cアルキルから選択され;ここで、上記アリール−C−Cアルキル基中の各々のアリールは、場合により、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲノ、フルオロ−C−Cアルキル及びニトロから選択される1〜3個の置換基で置換されうる]で示される化合物若しくはその反対エナンチオマー、又は該式19で示される化合物若しくはその反対エナンチオマーの塩。
【請求項15】
(3S,4S)−1−メタンスルフィニル−3,4−ジメチルー1−メチルスルファニル−シクロペンタン;
(3R,4S)−3,4−ジメチルー1−メチルスルファニル−シクロペンテン;
(3S,4S)−1−ヒドロキシ−3,4−ジメチル−シクロペンタンスルホン酸ナトリウム塩;
(2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル;
(1S,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル;
(1R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル;
(2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸;
(1S,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸;
(1R,2R,3S)−2,3−ジメチル−5−オキソ−シクロペンタンカルボン酸;
(S,S)−3,4−ジメチル−ヘキサン二酸;
(S,S)−3,4−ジエチル−ヘキサン二酸;
(S,S)−3,4−ジプロピル−ヘキサン二酸;
(R,R)−3,4−ジイソプロピル−ヘキサン二酸;及び
(S,S)−3,4−ジベンジル−ヘキサン二酸と;
それら上記化合物の反対エナンチオマー;並びに
それら上記化合物及びその反対エナンチオマーの塩
から選択される化合物。

【公開番号】特開2007−23040(P2007−23040A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−195461(P2006−195461)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】