説明

3,5−ジオキソ−6−ヘプテン酸誘導体類の製造方法及びその中間体

【課題】(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類の合成のための原料である3,5−ジオキソ6−ヘプテン酸エステル類の工業的に有効な製造方法を提供する。
【解決手段】2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−カルボアルデヒドと3,5−ジオキソヘキサン酸エステル類とを縮合反応させることよりなる(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エステル類の製造方法、該製造方法において、縮合反応の中間体として7位に更に水酸基、ハロゲン原子等の置換基を有する7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エステル類を経由することよりなる製造方法、並びに新規中間体化合物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類の合成に必要な、前記一般式(C)で表されるβ−ジケトカルボン酸エステル誘導体の新しい製造方法に関するものである。一般式(C)で表される化合物から誘導される、(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸は、特開平1−279866号公報に記載されているのように、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA還元酵素を阻害し、血中コレステロール低下剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸を工業的に製造する方法としては、エナールとケトエステルとを縮合反応させて得られるβ−ヒドロキシケトエステルのカルボニル基を還元する(特開平1−279866号公報及びJournal of Chromatography A,832(1999)p55-65)方法が知られている。しかしながら、これらの方法では、反応生成物が光学異性体混合物になるため、最終工程において、クロマトグラフィーなどにより所望の光学活性体化合物のみに分離・精製する必要がある。最終工程での異性体分離はロスも多く工業的には安価な効率的製法とは言えない。一方、一般式(C)で表されるβ−ジケトカルボン酸エステルを立体選択的に還元すれば異性体の量が少なく望ましいが、このジケトカルボン酸エステルについては、特開平6−329679号においては原料として使用されているだけで具体的製造法については記載されていない。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】従って、上記有用な原料である一般式(C)で表される化合物であるβ−ジケトカルボン酸エステル類を効率よく製造する方法の出現が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、式(A)で表される化合物と一般式(B)で表される化合物とを縮合反応させることにより、一般式(C)で表される化合物を製造することができること及び上記縮合反応の製造中間体である一般式(D)で表される化合物の脱水反応等によっても、簡便で、効率的に一般式(C)で表される化合物に導けることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち本発明の要旨は、下記式(A)
【化8】


で表される2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−カルボアルデヒドと下記一般式(B)
【化9】


(式中、R1は、水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。)で表される化合物とを縮合反応させることを特徴とする下記一般式(C)
【化10】


(式中、R1は、前述と同義である。)で表される化合物またはその塩の製造方法に存する。
【0006】本発明の他の要旨は、下記一般式(D)
【化11】


(式中、R1は、前述と同義である。R2は、水酸基、ハロゲン原子、シリルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオカルボニルオキシ基、アルコキシチオカルボニルオキシ基、またはアルキルチオチオカルボニルオキシ基を示す。)で表される化合物またはその塩からR2を脱離反応させることを特徴とする前記一般式(C)で表される化合物またはその塩を製造する方法に存する。本発明の更なる要旨は、新規化合物である、前記一般式(D)で表される化合物に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の前記一般式(C)で表される化合物またはその塩の製造方法は、式(A)で表される2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−カルボアルデヒド[以下、化合物(A)と称する]と一般式(B)で表される化合物[以下、化合物(B)と称する]とを縮合反応させるものである。前記一般式(B)において、置換基R1は水素原子;メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;または、フェニル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基を示し、これらのうち好ましくは炭素数が1から4までのアルキル基又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0008】化合物(A)と化合物(B)との縮合反応は、いわゆるアルドール反応と言われているものと同様の操作で行うことができ、通常、窒素ガスまたは不活性ガス雰囲気下で、化合物(B)を含む溶液中に塩基を加えた後に、この溶液中に化合物(A)を含む溶液を滴下して行う方法が好ましく行われる。上記縮合反応で使用される塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;n−ブチルリチウム、ターシャリーブチルリチウム等のアルキルリチウム試薬;t−ブチルマグネシウムクロリド等のグリニヤール試薬;ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;NaNH2等が挙げられ、このほか、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物などの固体塩基も挙げられる。このうち好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、NaNH2であり、さらに好ましくは、アルカリ金属水素化物であり、特に好ましくは水素化ナトリウムである。
【0009】塩基の使用量としては、通常、化合物(B)に対して1.5当量以上、好ましくは2当量以上用いられるが、あまり過剰に用いると副反応がおこり収率が低下することもあるので通常、10当量以下の範囲で用いられる。このうち好ましい範囲としては2〜3当量、特に好ましくは2〜2.7当量である。
【0010】反応は、通常、溶媒を用いて行われ、溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メチル−t−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性溶媒が使用でき、これらのうち、好ましい溶媒は20℃における誘電率が2.5以上であり、更に好ましくは5以上である。上記好ましい溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノンが挙げられ、特に好ましくはテトラヒドロフランである。溶媒の使用量は、通常、反応基質に対して0.5倍容量〜100倍容量程度用いられ、このうち、工業的な観点から20倍容量以下で行うのが好ましい。
【0011】反応操作としては、塩基と化合物(B)を混合した後、化合物(A)を添加してもよいし、塩基と化合物(B)を混合したものを化合物(A)中に添加してもよいし、塩基中に化合物(A)と(B)を混合したものを添加してもよいし、化合物(A)と(B)を混合したものに塩基を添加することも可能である。いずれの操作でも反応は進行するが、好ましくは塩基と化合物(B)を混合した後、これに化合物(A)を添加する方法である。反応は、−50℃〜100℃、好ましくは−20℃〜40℃の温度で、通常、30分以上、好ましくは1時間以上反応させ、必要に応じて昇温してもよい。反応終了後、反応系に水、酢酸、塩化アンモニウム等を加えて反応を停止した後、水洗、分液抽出等の通常の単離・精製操作により、化合物(C)を得ることができる。
【0012】本発明の化合物(C)の酸付加塩は、上記反応の停止後、水洗し、分液抽出した有機相を必要に応じて濃縮及び/又は冷却したものに酸を加えて攪拌することで得ることができる。上記酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸が挙げられ、このうち好ましくは、塩酸又は有機酸であり、特に好ましくは、塩酸である。反応操作としては、通常、化合物(C)の溶液に化合物(C)に対して等モル量前後の量の酸を酢酸エチル等の溶媒で希釈したものを滴下しながら加える方法が好ましい。滴下温度としては、化合物(C)の酸付加塩の溶媒に対する溶解度にも依存するが、通常60℃以下で行われ、滴下後に必要に応じて冷却や濃縮を行う等、通常の晶析操作に準じて、化合物(C)の酸付加塩を単離することができる。尚、一般式(C)においてR1が水素原子の場合には、上記酸の代わりに、アンモニアやアミン類を用いることで、アンモニウム塩やアミン付加塩として得ることもできる。
【0013】本発明の製造方法では、上記化合物(A)と化合物(B)との縮合反応において、使用する塩基及び溶媒を選択することにより、下記一般式(D)
【化12】


(式中、R1は、前述と同義である。R2は、水酸基、ハロゲン原子、シリルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオカルボニルオキシ基、アルコキシチオカルボニルオキシ基、またはアルキルチオチオカルボニルオキシ基を示す。)で表される化合物[以下、化合物(D)と称する]またはその塩を経由させてから、化合物(C)を製造することもできる。
【0014】上記化合物(D)の置換基R1は前述のものと同様であり、R2は、水酸基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;トリメチルシリルオキシ基、ターシャリーブチルジメチルシリルオキシ基などのシリルオキシ基;メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、ビニルオキシカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニルオキシ基;メチルチオカルボニルオキシ基などのアルキルチオカルボニルオキシ基;メトキシチオカルボニルオキシ基などのアルコキシチオカルボニルオキシ基;または、メチルチオチオカルボニルオキシ基などのアルキルチオチオカルボニルオキシ基を示し、このうち好ましくは水酸基、スルホニルオキシ基またはアシルオキシ基であり、さらに好ましくは、アシルオキシ基であり、特に好ましくはアセトキシ基である。上記化合物(D)として好ましい置換基の組み合わせとしては、上記置換基の説明で挙げられている好ましいR1及びR2を組み合わせたものが挙げられる。
【0015】上記化合物(D)のうち、置換基R2が水酸基の化合物である下記一般式(E)
【化13】


(式中、R1は前記と同義である。)で表される化合物[以下、化合物(E)と称する]は、化合物(A)と化合物(B)の縮合反応において使用する塩基として、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物とアルキルリチウム試薬の併用、あるいはジイゾプロピルアミノマグネシウムブロミドを、特に好ましくはNaHとn−BuLiとの組み合わせで用いることにより得ることができる。
【0016】塩基として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物とアルキルリチウム試薬を併用する場合には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物の使用量は、化合物(A)に対して等モル量前後、アルキルリチウムの使用量は、化合物(A)に対して、1.5〜2.5当量前後用いられる。溶媒としては、前述の縮合反応の説明で挙げたのと同様のものを用いることができ、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン又はジクロロメタンが挙げられる。また、反応操作についても、前述の縮合反応の説明で記載したのと同様に行うことができる。
【0017】尚、上記化合物(E)は、ケト−エノールの互変異性があり、反応系内等の溶媒中では、下記の両方の化合物の形で存在するが、平衡の関係上、時間が経過するとエノール体のものが主として存在する。
【化14】


【0018】こうして得られる化合物(E)の脱水反応により化合物(C)またはその塩を直接得ることもできるが、上記化合物(E)の水酸基を脱離基となりうる別の官能基に変換した下記一般式(F)
【化15】


(式中、Xは、ハロゲン原子、シリルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオカルボニルオキシ基、アルコキシチオカルボニルオキシ基、またはアルキルチオチオカルボニルオキシ基を示す。)で表される化合物[以下、化合物(F)と称する]を経由させて化合物(C)を得ることもできる。その際、上記化合物(F)は単離しても良いが、単離することなく連続して反応を行うこともできる。尚、上記化合物(E)及び(F)は、有機酸を用い、前述の方法と同様にして、酸付加塩として単離しても良い。
【0019】化合物(E)から脱水反応にて化合物(C)を直接得る場合は、酸存在下、脱水反応を行う。使用する酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、硫酸、塩酸、酢酸、ホウ酸等のブレンステッド酸、塩化(II)銅、塩化(I)銅、ヨウ化銅、塩化ビスマス、銅トリフラート、スカンジウムトリフラート等のルイス酸、シリカゲル、ゼオライト等の固体酸があげられる。酸の使用量は、化合物(E)に対して0.01倍モル当量以上、好ましくは0.05倍モル当量乃至100モル当量使用する。
【0020】本脱水反応においては、さらに脱水剤を共存させてもよいが、本脱水反応では3位のカルボニル基との分子内閉環反応が副反応として起こるため、その副生成物を開環させるためには系内にある程度水分が必要である。従って、脱水剤はある程度反応が進行した後に加えるのが好ましい。使用する脱水剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、無水酢酸、硫酸マグネシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブス等の脱水反応に通常用いられる脱水剤が挙げられ、好ましくは無水酢酸、モレキュラーシーブスが挙げられる。また、本反応では反応で生成した水を常圧または減圧条件にて留去して反応を行ってもよく、さらに脱水剤と組み合わせて行っても良い。
【0021】反応溶媒は、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の鎖状又は環状の脂肪族炭化水素系溶媒;メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸等のプロトン性極性溶媒が使用でき、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン又は塩化メチレンであり、特に好ましくはテトラヒドロフラン又はトルエンである。なお、上記のように副反応である分子内閉環反応の問題があるので含水溶媒を使用しても差し支えない。溶媒の使用量は、通常、反応基質に対して0.5倍容量〜100倍容量程度用いられ、このうち、工業的な観点から20倍容量以下で行うのが好ましい。
【0022】脱水反応は、通常、化合物(E)を上記溶媒に溶解させ、反応温度−20〜180℃、好ましくは、副反応物の生成量を抑える目的から0〜120℃で行う事が出来る。また、通常の共沸脱水の操作を併用して行うことができ、好ましくは、転化率が一定になったところで水を添加して再び共沸脱水操作を行う。反応終了後は、前述と同様の分液抽出等の単離・精製操作等により、化合物(C)またはその塩として得ることができる。
【0023】化合物(E)の水酸基を脱離基となりうる別の官能基Xに変換した後に、官能基Xの脱離を行ない化合物(C)を得る場合、官能基Xへの置換反応は、官能基Xの種類にあわせて、通常用いられている導入方法により、置換することができる。例えば、具体的には、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子の場合は、臭化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル等のハロゲン化剤を、シリルオキシ基の場合は、対応する塩化シリルを、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基の場合は、対応するスルホニルクロリドまたは無水スルホン酸を、それぞれ塩基の存在下で作用させる方法が挙げられる。アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基の場合は対応する酸クロリド、酸無水物またはビニルエステルを、必要に応じて酸または塩基存在下、で作用させる方法が挙げられる。また、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオカルボニルオキシ基、アルコキシチオカルボニルオキシ基およびアルキルチオチオカルボニルオキシ基の場合は、対応する塩化物を、必要に応じて塩基存在下で作用させる方法が挙げられる。
【0024】こうして得られる化合物(F)の官能基Xの脱離反応は、塩基存在下または加熱条件下、あるいはこれらを組み合わせた条件下で行う。使われる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は重炭酸塩;水素化ナトリウム等アルカリ金属水素化物などの無機塩基、または、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等の金属アルコラート;トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアミン類;ピリジン、ピコリン、ルチジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類などの有機塩基が挙げられ、好ましくは、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属アルコラート、3級アミン類またはピリジン類であり、特に好ましくは炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、トリエチルアミン、ピリジンまたはN,N−ジメチルアミノピリジンである。
【0025】脱離反応は、通常、室温以上の反応温度で行われ、50〜180℃で行うのが好ましく、特に好ましくは80〜120℃である。化合物(E)から化合物(F)を経由させて化合物(C)を得る場合の反応形式としては、上述の官能基Xへの置換反応の反応液に、必要に応じて塩基を共存させ、そのまま加熱することで、置換反応と脱離反応をワンポットで行うことができるため、工業的には好ましい。本脱離反応で得られる生成物である化合物(C)及びその塩は、上記反応終了後、水洗、分液抽出等、上述したのと同様の通常の単離・精製操作により得ることが出来る。
【0026】本発明において、上記縮合反応により得られる化合物(D)は新規化合物であり、上述した(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類の合成原料として有用な化合物である。更に、本発明の製造方法で得られた化合物(C)またはその塩は、該化合物中のカルボニル基に対し、微生物やキラルなホウ素系還元剤等を用いた公知の立体選択的還元反応によるカルボニル基の還元を行い、必要に応じてアルカリ存在下の条件で脱エステル化反応を行うことで対応するジヒドロキシカルボン酸類とすることが出来る。この様にして得られたジヒドロキシカルボン酸を水酸化ナトリウムや塩化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び/又はそれらの塩類などで処理することにより、(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸の塩を製造することができる。この化合物は前記の如く血中コレステロール低下剤として有用な化合物である。
【0027】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
【化16】


【0028】油状、60%水素化ナトリウム2.40g、テトラヒドロフラン200mlの混合溶液中に、内温を2℃以下に保ちながら3,5−ジオキソヘキサン酸エチルエステル10.3g、テトラヒドロフラン40mlの混合液を20分間で滴下した。−10℃にて50分間反応させた後、内温を−20〜−15℃に保ちながらn−ブチルリチウム1.6M ヘキサン溶液75mlを40分間で滴下し、内温2℃以下で40分間反応させた。これに内温を−15℃以下に保ちながら、2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−カルボアルデヒド11.7gとテトラヒドロフラン80mlの混合液を40分間で滴下し、10℃以下で1時間反応させた。内温を5℃以下に保ちながら、反応系に酢酸14.4ml、トルエン40mlを加えた後、水100ml、飽和食塩水100mlにて順次洗浄した。溶媒を留去した後、得られた残査にヘキサン100ml、酢酸エチル5mlを加えて結晶化し、これを濾取、乾燥し、7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル16.6g(収率89%)を得た。該化合物のNMRは以下の通りである。
1H−NMR(CDCl3):1.11 (2H, m), 1.13 (1H, m), 1.27 (3H, t, J=10), 1.76 (1H, m), 2.40 (1H, m), 2.48 (2H, ABq, J=66,14), 2.69 (2H, ABq, J=52,16), 2.78 (1H, m), 3.30 (1H, m), 4.18 (2H, m), 5.25(1H, d, J=3), 5.58(1H, dd, J=12,4), 7.16 - 7.26 (5H, m), 7.33 (1H, dd, J=7,7), 7,61 (1H,dd, J=7,7), 7.93 (1H, d, J=7)
【0029】(実施例2)
【化17】


【0030】実施例1で得た、7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル20.0gをトルエン120mlに溶解し、シリカゲル10g、無水硫酸マグネシウム8gを加え、95℃にて16時間反応させた。反応系のシリカゲルおよび無機塩を除去した後、溶媒を留去し、得られた残査をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステルを8.4g(収率44%)を得た。該化合物のNMRは以下の通りである。
1H−NMR(CDCl3):1.09 (2H, m), 1.28 (3H, t, J=7), 1.40 (2H, m),2.38 (1H, m), 3.40 (2H, s), 4.20 (2H, q, J=7), 5.51 (1H, s), 6.02 (1H,d, J=16), 7.16 - 7.26 (4H, m), 7.30 - 7.40 (2H, m), 7.70 (1H, d, J=16),7.63 (1H, m), 7.97 (1H, m)
【0031】(実施例3)実施例1で得た7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル5.0g、トルエン10ml、無水p-トルエンスルホン酸0.37gの混合液を110℃にて3時間反応させた。反応系を重曹水にて洗浄した後、得られる有機層を濃縮し、得られた残査をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステル3.0g(収率63%)を得た。
【0032】(実施例4)実施例1で得た7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル0.50g、トルエン20ml、無水p-トルエンスルホン酸0.037gの混合液を減圧条件下、内温105℃にて、反応で生成する水をトルエンとの共沸により留去しながら1時間反応させた。常圧に戻した後、反応系に水0.097gを加えて90℃にて10分間反応させた後、再び減圧条件下、内温105℃にて、水を留去しながら1時間反応させた。反応系を高速液体クロマトグラフィーにて分析し(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステル0.37g(収率78%)相当が生成していることを確認した。
【0033】(実施例5)実施例1で得た7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル0.2g、酢酸ビニル2mlの混合液に硫酸0.01gを加え、加熱還流にて5時間反応させた。反応系を酢酸エチルで希釈した後、重曹水で水洗し、得られる有機層を濃縮し、得られた残査をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステル0.14g(収率73%)を得た。
【0034】(実施例6)実施例1で得た7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル2.0g、酢酸10ml、無水酢酸0.66g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン0.01gの混合液を90℃にて4時間反応させた。反応系を酢酸エチルで希釈し、水、重曹水にて洗浄した後、得られる有機層を濃縮し、得られた残査をヘキサンにて結晶化し、(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステル1.55g(収率80%)を得た。
【0035】(実施例7)実施例1で得た7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−7−ヒドロキシ−3,5−ジオキソヘプタン酸エチルエステル0.250gを、4モル/L塩酸/酢酸エチル溶液5mlに溶解し、20℃にて12時間攪拌を続行した。反応系を高速液体クロマトグラフィーで分析し、(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステル0.198g(収率82%)相当が生成している事を確認した。
【0036】(実施例8)油状、60%水素化ナトリウム1.37g、テトラヒドロフラン10mlの混合溶液中に、内温を20℃に保ちながら3,5−ジオキソヘキサン酸エチルエステル2.36g、テトラヒドロフラン10mlの混合液を5分間かけて滴下した。その温度で1時間攪拌の後、2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−カルボアルデヒド2.01gとテトラヒドロフラン20mlの混合液を20分間かけて滴下した。4時間攪拌の後、酢酸3.09gと水20mlの中に反応液を添加して反応を停止した。酢酸エチル40mlで抽出し、有機相を飽和食塩水20mlにて洗浄し、無水硫酸ナトリウム2gで乾燥した。得られた有機相を分析すると、目的物である(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステル2.52g(収率82%)が得られた。溶媒を留去した後、得られた残査に室温にて4モル/L塩酸・酢酸エチル溶液1.7mlを添加した。結晶が生成した後、温度を5℃まで冷却して、これを濾取、乾燥し、(6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジオキソヘプテン酸エチルエステルの塩酸塩2.49g(収率75%)が得られた。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、血中コレステロール低下剤として有用な(3R,5S)−(E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エン酸エステル類の合成のための原料である3,5−ジオキソ−6−ヘプテン酸エステル類を工業的に容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式(A)
【化1】


で表される2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−カルボアルデヒドと下記一般式(B)
【化2】


(式中、R1は、水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を示す。)で表される化合物とを縮合反応させることを特徴とする下記一般式(C)
【化3】


(式中、R1は、前述と同義である。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】 上記式(A)で表される化合物及び一般式(B)で表される化合物との縮合反応により一般式(C)で表される化合物またはその塩を製造するに当たり、製造中間体として下記一般式(D)
【化4】


(式中、R1は、前述と同義であり、R2は、水酸基、ハロゲン原子、シリルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオカルボニルオキシ基、アルコキシチオカルボニルオキシ基、またはアルキルチオチオカルボニルオキシ基を示す。)で表される化合物またはその塩を経由することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】 下記一般式(D)
【化5】


(式中、R1及びR2は、前述と同義である。)で表される化合物またはその塩からR2を脱離反応させることを特徴とする下記一般式(C)
【化6】


(式中、R1は、前述と同義である。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項4】 下記一般式(D)
【化7】


(式中、R1及びR2は、前述と同義である。)で表される化合物。

【公開番号】特開2003−137870(P2003−137870A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−331480(P2001−331480)
【出願日】平成13年10月29日(2001.10.29)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】