3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい製法
4-ヒドロキシベンゾニトリルから、周囲条件下で水性酸性媒体中いずれの触媒もなしで2:1モル比の臭化物と臭素酸塩を含む環境に優しい臭素化試薬を用いて、何の仕上げ手順もなく、高度に純粋な3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)を高収率で調製した。融点が189〜191℃であり、いずれの精製もなしでガスクロマトグラフ分析による純度が99%より高い生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを91〜99%の収率で得た。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい改良された製法に関する。本発明は、特に次亜臭素酸(BrOH)のインサイツ発生を介する3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの合成方法に関する。
これらのブロモベンゾニトリル誘導体は、種々の作物の成長に適用すると、非常に有効であることが分かっているので、多大な経済価値を有する。これらの除草剤は、比較的低い適用率で、作物を害することなく望ましくない植生を完全に防除するので、作物が自由に成長できるようにする。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを除草剤として使用することは、十分に確立している(R.L. Wain Nature, 1963, 200, 28; K.Carpenter and B.J. Heywood Nature, 1963, 200, 28-29)。3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの一定のエステル、特にオクタン酸エステルは、特に作物成長領域内における広葉草の防除で除草剤として広範に使用されている。このように該エステルは非常に有効であることが分かっているが、今まではこれまで必要だった高価かつ厄介な精製によって悪化する生産性の不利益を招くことによってのみ生産されていた。
論文(Chem. Ber.,1896, 29, 2355-2360)のAuwers及びReis(1896)は、4-ヒドロキシベンズアルデヒドで出発する複雑な4工程手順、すなわち臭素化、アルドキシムの形成、脱水と同時のアセタートの形成及びアセタートの加水分解による除去を含む非経済的な手順によって3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを調製した。この方法の欠点は、最終生成物を得るのに多工程が含まれていることであり、プロセスを非経済的にする。
E. Mullerら(1959)[Chem. Ber. 1959, 92, 2278]は、メタノール性酢酸中で元素臭素を用いる4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化の手順を開示した。この方法で製造される生成物は、結果として生じた臭素化混合物をメタノール性亜硫酸水素ナトリウム水溶液と接触させることによって回収された。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することである。
R.W. Luckenbaughらに譲渡された米国特許第3,349,111号は、水性懸濁液、特に水性苛性懸濁液中の元素臭素を用いて臭素化を行なった後、塩素パージ(spurge)を行なうことによる3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル又はそのナトリウム塩の製造を開示している。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することである。そのうえ、この方法は発熱反応であり、反応混合物の所望温度を維持するためには外部から冷却する必要がある。
【0003】
D. A Dentelらに譲渡された米国特許第4,349,488号は、還流条件下で約134℃の温度で溶媒としてクロロベンゼンを用いた液体臭素によ3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの製法を開示している。液体臭素を1〜1.5時間の間反応器内に充填した。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することである。温度は130℃より高く、かつ溶媒として用いたクロロベンゼンは発癌性である。
R.E Shedsに譲渡された米国特許第4,436,665号は、液体臭素又は臭素と塩素を逐次的又は同時に用いるか或いは前もって形成した塩化臭素又は3%の臭化水素酸を用いる3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの製法を開示している。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することであり、かつ特殊な設備が必要である。
仏国特許第1,375,311号は、60%の収率で3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを得る、酢酸中におけるヒドロキシベンゾニトリルの臭素化を開示している。この特許は、次亜臭素酸ナトリウム水溶液による臭素化によって生成物が78%の収率で得られることをも示唆している。この方法の欠点は、収率が60〜78%の範囲内であり、酢酸中で危険な液体臭素を使用することである。
Ramachandraiahらの米国特許第6,740,253号は、臭素回収プロセスからのアルカリ性中間体及び周囲温度でアルカリ性/塩素を利用する危険でない臭素化試薬の製法を開示している。この臭素化試薬では、臭化物と臭素酸塩の比が2:1〜2.2:1.0の範囲内だった。この引用特許の限界は、臭素化試薬を調製するのみであり、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製については明らかにしていない。
Ramachandraiahらの米国特許第10/449723号は、周囲温度で塩素をアルカリ性臭素溶液にパージすることによる酸化剤のインサイツ発生で臭素化試薬を調製する改良された方法を開示している。ここでも発明の範囲は臭素化試薬の調製態様に限定され、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製については明らかにしていない。
Bedekarらの米国特許第6,956,142号は、ベンゼンの還流温度でベンゼンと臭素化試薬を使用する、ブロモベンゼンの環境に優しい製法を開示している。ここでも発明の範囲はブロモベンゼンの調製に限定され、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製については言及されなかった。
Varshneyらのインド特許第180996号は、p-クレゾールから3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)を合成するための改良された方法であって、(i)p-クレゾールを臭素化して3,5-ジブロモ-p-クレゾールを生じさせる工程;(ii)3,5-ジブロモ-p-クレゾールを酸化して3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドにする工程;(iii)3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドをオキシム化して3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジルオキシムにする工程及び(iv)3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジルオキシムを脱水して3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル又はブロモキシニルにする工程を含む方法を開示している。この発明の欠点は多工程を含むことであり、プロセスを費用重視にし、かつ種々の工程がプロセスを複雑にする。
Vidyasagarらは、Indian Journal of Chemistry, Section B: (1993), 32B, 872で公表された論文においてp-クレゾールからの3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの2工程合成を開示している。第1工程でp-クレゾールを液体臭素で臭素化し、それを第2工程でニトロエタン/AcOH中の溶融NaOAcで処理してブロモキシニルを得た。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な液体臭素を臭素源として使用することである。さらに、多工程が含まれ、収率は87%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術は、無機塩と鉱酸を利用してどのようにして3,5 ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを調製できるかを明らかにせず、教示もしていない。本発明では、周囲条件下で有機溶媒及び触媒なしで、危険な液体臭素の非存在下でどのようにして生成物を得られるかを初めて報告する。
本発明に含まれるインベンティブ・ステップは、(i)活性臭素を有する可溶性臭素化試薬は危険な液体臭素の必要性をなくし、(ii)いずれの触媒をも必要とせずに、反応が完了に向けて前進し、(iii)本方法は分散媒体として水のみを使用し、いずれの溶媒及び触媒の必要性をも軽減し、v)最大の臭素原子効率、及び(iv)反応は周囲温度で完了する。
【0005】
(発明の目的)
本発明の主目的は、上で詳述した欠点を取り除く、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)の環境に優しい改良された製法を提供することである。
本発明の別の目的は、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製で液体臭素の使用を不要にすることである。
本発明のさらに別の目的は、水相反応において芳香族基質上で臭素の高い原子置換を有することである。
本発明のさらに別の目的は、臭素化プロセスのための広範な臭化物及び臭素酸イオンを有する、水溶性で、かつ危険でない臭素化試薬を使用することである。
本発明の別の目的は、反応を周囲条件下で行なうことである。本発明のさらに別の目的は、高い収率及び純度の3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを得ることである。
本発明のさらに別の目的は、いずれの触媒の使用をもなくすことである。
本発明のさらに別の目的は、仕上げ手順を最小限にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
従って、本発明は、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい合成方法であって、以下の工程:
(i) 連続撹拌下で、8.4〜1260ミリモルの範囲の4-ヒドロキシベンゾニトリルを、アルカリ/アルカリ土類金属の臭化物及びアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る臭素化試薬(該臭素化試薬中の活性臭化物含量は16.8〜2524ミリモルである)と反応させる工程;
(ii) 室温で1〜4時間の範囲の時間撹拌下で、工程(i)から得られた反応混合物に0.015〜3.0モルの無機酸を添加する工程;
(iii) 撹拌をさらに1〜3時間の範囲の時間続ける工程;
(iv) 液体から固体をろ過し、脱イオン水で洗浄し、20.7〜22.0kPa(155〜165mmHg)の圧力の真空下で沈殿物を乾燥させる工程
を含む方法を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態では、臭素化試薬は、2:1〜2.1:1のモル比のアルカリ/アルカリ土類金属の臭化物とアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る。
本発明の別の実施形態では、臭素化試薬中の活性臭化物が10%〜20%(w/v)、すなわち16.8〜2524ミリモルである。
本発明の別の実施形態では、4-ヒドロキシ ベンゾニトリルと無機酸とを含む水溶液への固体臭素化試薬の添加によって臭素化反応を行なう。
本発明のさらに別の実施形態では、使用する無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸又は過塩素酸から成る群より選択される。
本発明のさらに別の実施形態では、反応温度を25〜35℃の範囲内に維持する。
本発明のさらに別の実施形態では、4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化用の溶媒として水を使用してよい。
本発明のさらに別の実施形態では、生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの収率が91〜99%の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明により、下記式1に示す反応全体を経て3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)が得られる。
【0009】
【化1】
【0010】
水冷却管及び添加漏斗、内容物を撹拌するための機械装置を備えた10リットルの三つ口丸底フラスコ内で反応を行なった。既知量の4-ヒドロキシベンゾニトリルと必要量の臭素化試薬を反応器に取り、内容物を撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶解させた。利用した臭素化試薬は、2:1のモル比で臭化物/臭素酸塩を含む、臭素回収プラントの中間体だった。これは酸性化によって反応種を発生させて100%の臭素原子効率で臭素化を引き起こす。上記混合物に室温で計算量の36%塩酸を1〜4時間かけてゆっくり加えた。同一条件下でさらに1〜3時間撹拌を続けた。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、固形物を脱イオン水で1回洗浄し、80〜90℃で乾燥させて秤量した。
乾燥生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)の重量は、92〜98%の収率であり、GCによる純度は99%より高く、融点は191℃だった(文献で報告されている値は189〜191℃である)。
関連手順では、必要量の臭化物及び臭素酸塩を含む臭素化試薬を、必要量の98%硫酸をゆっくり添加しながら取り込むことによって、4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化を行なった。
別の関連手順では、必要量の36%塩酸を、水に溶かした4-ヒドロキシベンゾニトリルと共に取り込んで、必要量の臭化物及び臭素酸塩を含む水溶液を徐々に添加して臭素化反応を行なった。
容器の温度は25〜35℃の範囲内で観測された。
塩酸を使用すると流出物反応において無害な塩化ナトリウムを発生させて反応時間を最小限にするので、塩酸の使用が賢明である。
元素分析、1H-NMR、IR及び融点によって反応生成物を特徴づけた。
ガスクロマトグラフィーで生成物の純度を調べた。
【0011】
本発明によれば、周囲温度及び圧力で溶媒として水を用いて、4-ヒドロキシベンゾニトリルと、臭化物と臭素酸塩の比が2:1の固体臭素化試薬とから前記化合物を調製できる。反応混合物への無機酸の添加は、次亜臭素酸(HOBr)のインサイツ発生を補助し、同時に基質上の置換によって原子核臭素化を受ける。
本発明では、溶液中で、臭素化試薬(モル比2:1のBr-/BrO3-)が鉱酸と反応し、活性種次亜臭素酸(BrOH)を発生させ(下記式2)、
2Br-+BrO3-+3H+→3BrOH (2)
これが、純粋に水性の媒体中でいずれの触媒もなしで有機基質4-シアノフェノールと反応して、上記式1に従う定量的収率で3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)を与える。
以下の実施例は、本発明の例示として与えるものなので、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきでない。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
10gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(0.084mol)を1リットルの二つ口丸底フラスコに取り、それに92mlの臭素化試薬水溶液[臭化物と臭素酸塩を2:1モル比で含み、活性(反応性)臭化物含量が14.57%(w/v)](0.167mol)と310mlの水を添加した。反応混合物を激しく撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶かした。次に28℃で撹拌しながら2時間かけて18mlの36%HCl(0.18mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は23.10gm(99%の収率)、実測融点191℃だった。
【0013】
(実施例2)
40mlの水に溶かした1.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(8.40mmol)を100mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに、1.16g(11.26mmoles)の臭化ナトリウムと0.85g(5.628mmoles)の臭素酸ナトリウムを含む固体臭素化試薬を加えて30分間撹拌した。上記混合物に28℃で撹拌しながら2.0時間かけて1.70mlの36%塩酸(0.017mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2〜2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は2.210gm(95%の収率)、実測融点191℃だった。
【0014】
(実施例3)
40mlの水に溶かした1.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(8.40mmol)を100mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに、1.16g(11.26mmoles)の臭化ナトリウムと0.85g(5.628mmoles)の臭素酸ナトリウムを含む固体臭素化試薬を加えて30分間撹拌した。上記混合物に32℃で撹拌しながら2.0時間かけて1.70mlの36%塩酸(0.017mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2〜2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は2.210gm(95%の収率)、実測融点191℃だった。
(実施例4)
40mlの水に溶かした1.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(8.40mmol)を100mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに6.7mlの臭素化試薬水溶液[2:1モル比の臭化物と臭素酸塩、活性(反応性)臭化物含量20%(w/v)、1.153g(11.19mmoles)の臭化ナトリウム及び0.85g(5.60mmoles)の臭素酸ナトリウムを含む]を加えて30分間撹拌した。上記混合物に32℃で撹拌しながら2.0時間かけて1.70mlの36%塩酸(0.017mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2〜2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は2.265gm(97%の収率)、実測融点191℃だった。
(実施例5)
2.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(16.80mol)を250mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに19mlの臭素化試薬水溶液[2:1モル比の臭化物と臭素酸塩、活性(反応性)臭化物含量14.57%(w/v)を含む](33.61mmol)と60mlの水を添加した。反応混合物を激しく撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶かした。次に28℃で撹拌しながら2.5時間かけて0.91mlの98%H2SO4(0.0168mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2.0時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は4.5gm(97%の収率)、実測融点191℃だった。
【0015】
(実施例6)
水冷却管及び添加漏斗を備えた10リットルの三つ口丸底フラスコに150gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(1.26mol)を取り、それに1386mlの臭素化試薬水溶液[臭化物と臭素酸塩を2:1モル比で含み、活性(反応性)臭化物含量14.57%(w/v)](2.524mol)と4.614リットルの水を加えた(総水性媒体量を6リットルに維持した)。反応混合物を約1時間激しく撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶かした。次に室温で撹拌しながら3.5時間かけて268mlの36%HCl(2.61mol)をゆっくり添加した。28℃でさらに2.5時間撹拌を続けた。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物3,5-ジブロモ,4-ヒドロキシベンゾニトリルの重量は343gm(98%の収率)、GCによる純度は99%より高く、実測融点191℃だった。
【0016】
本発明の主な利点:
1. 本方法は、これまで既知の方法に比べて簡単で環境に優しく、かつ低エネルギー性である。
2. 本方法は、反応種のインサイツ発生のため単純かつ固体の臭素化試薬を必要とし、これを引き続き4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化で利用する。
3. 臭素化試薬は固体であり、危険でなく、かつ如何なる特殊な設備も取扱い技能をも要しない。
4. 反応は室温及び大気圧にて溶液中で起こる。
5. 反応はいずれの触媒をも必要としない。
6. 臭素回収プロセスの中間生成物の1つから低コストで容易に臭素化試薬を得ることができる。
7. 臭素化反応は高い収率及び原子効率を有する。
8. 生成物は99%より高い純度を有する。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい改良された製法に関する。本発明は、特に次亜臭素酸(BrOH)のインサイツ発生を介する3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの合成方法に関する。
これらのブロモベンゾニトリル誘導体は、種々の作物の成長に適用すると、非常に有効であることが分かっているので、多大な経済価値を有する。これらの除草剤は、比較的低い適用率で、作物を害することなく望ましくない植生を完全に防除するので、作物が自由に成長できるようにする。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを除草剤として使用することは、十分に確立している(R.L. Wain Nature, 1963, 200, 28; K.Carpenter and B.J. Heywood Nature, 1963, 200, 28-29)。3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの一定のエステル、特にオクタン酸エステルは、特に作物成長領域内における広葉草の防除で除草剤として広範に使用されている。このように該エステルは非常に有効であることが分かっているが、今まではこれまで必要だった高価かつ厄介な精製によって悪化する生産性の不利益を招くことによってのみ生産されていた。
論文(Chem. Ber.,1896, 29, 2355-2360)のAuwers及びReis(1896)は、4-ヒドロキシベンズアルデヒドで出発する複雑な4工程手順、すなわち臭素化、アルドキシムの形成、脱水と同時のアセタートの形成及びアセタートの加水分解による除去を含む非経済的な手順によって3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを調製した。この方法の欠点は、最終生成物を得るのに多工程が含まれていることであり、プロセスを非経済的にする。
E. Mullerら(1959)[Chem. Ber. 1959, 92, 2278]は、メタノール性酢酸中で元素臭素を用いる4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化の手順を開示した。この方法で製造される生成物は、結果として生じた臭素化混合物をメタノール性亜硫酸水素ナトリウム水溶液と接触させることによって回収された。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することである。
R.W. Luckenbaughらに譲渡された米国特許第3,349,111号は、水性懸濁液、特に水性苛性懸濁液中の元素臭素を用いて臭素化を行なった後、塩素パージ(spurge)を行なうことによる3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル又はそのナトリウム塩の製造を開示している。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することである。そのうえ、この方法は発熱反応であり、反応混合物の所望温度を維持するためには外部から冷却する必要がある。
【0003】
D. A Dentelらに譲渡された米国特許第4,349,488号は、還流条件下で約134℃の温度で溶媒としてクロロベンゼンを用いた液体臭素によ3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの製法を開示している。液体臭素を1〜1.5時間の間反応器内に充填した。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することである。温度は130℃より高く、かつ溶媒として用いたクロロベンゼンは発癌性である。
R.E Shedsに譲渡された米国特許第4,436,665号は、液体臭素又は臭素と塩素を逐次的又は同時に用いるか或いは前もって形成した塩化臭素又は3%の臭化水素酸を用いる3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの製法を開示している。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な元素臭素を使用することであり、かつ特殊な設備が必要である。
仏国特許第1,375,311号は、60%の収率で3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを得る、酢酸中におけるヒドロキシベンゾニトリルの臭素化を開示している。この特許は、次亜臭素酸ナトリウム水溶液による臭素化によって生成物が78%の収率で得られることをも示唆している。この方法の欠点は、収率が60〜78%の範囲内であり、酢酸中で危険な液体臭素を使用することである。
Ramachandraiahらの米国特許第6,740,253号は、臭素回収プロセスからのアルカリ性中間体及び周囲温度でアルカリ性/塩素を利用する危険でない臭素化試薬の製法を開示している。この臭素化試薬では、臭化物と臭素酸塩の比が2:1〜2.2:1.0の範囲内だった。この引用特許の限界は、臭素化試薬を調製するのみであり、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製については明らかにしていない。
Ramachandraiahらの米国特許第10/449723号は、周囲温度で塩素をアルカリ性臭素溶液にパージすることによる酸化剤のインサイツ発生で臭素化試薬を調製する改良された方法を開示している。ここでも発明の範囲は臭素化試薬の調製態様に限定され、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製については明らかにしていない。
Bedekarらの米国特許第6,956,142号は、ベンゼンの還流温度でベンゼンと臭素化試薬を使用する、ブロモベンゼンの環境に優しい製法を開示している。ここでも発明の範囲はブロモベンゼンの調製に限定され、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製については言及されなかった。
Varshneyらのインド特許第180996号は、p-クレゾールから3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)を合成するための改良された方法であって、(i)p-クレゾールを臭素化して3,5-ジブロモ-p-クレゾールを生じさせる工程;(ii)3,5-ジブロモ-p-クレゾールを酸化して3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドにする工程;(iii)3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドをオキシム化して3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジルオキシムにする工程及び(iv)3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジルオキシムを脱水して3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル又はブロモキシニルにする工程を含む方法を開示している。この発明の欠点は多工程を含むことであり、プロセスを費用重視にし、かつ種々の工程がプロセスを複雑にする。
Vidyasagarらは、Indian Journal of Chemistry, Section B: (1993), 32B, 872で公表された論文においてp-クレゾールからの3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの2工程合成を開示している。第1工程でp-クレゾールを液体臭素で臭素化し、それを第2工程でニトロエタン/AcOH中の溶融NaOAcで処理してブロモキシニルを得た。この方法の欠点は、危険かつ取扱いが困難な液体臭素を臭素源として使用することである。さらに、多工程が含まれ、収率は87%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術は、無機塩と鉱酸を利用してどのようにして3,5 ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを調製できるかを明らかにせず、教示もしていない。本発明では、周囲条件下で有機溶媒及び触媒なしで、危険な液体臭素の非存在下でどのようにして生成物を得られるかを初めて報告する。
本発明に含まれるインベンティブ・ステップは、(i)活性臭素を有する可溶性臭素化試薬は危険な液体臭素の必要性をなくし、(ii)いずれの触媒をも必要とせずに、反応が完了に向けて前進し、(iii)本方法は分散媒体として水のみを使用し、いずれの溶媒及び触媒の必要性をも軽減し、v)最大の臭素原子効率、及び(iv)反応は周囲温度で完了する。
【0005】
(発明の目的)
本発明の主目的は、上で詳述した欠点を取り除く、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)の環境に優しい改良された製法を提供することである。
本発明の別の目的は、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの調製で液体臭素の使用を不要にすることである。
本発明のさらに別の目的は、水相反応において芳香族基質上で臭素の高い原子置換を有することである。
本発明のさらに別の目的は、臭素化プロセスのための広範な臭化物及び臭素酸イオンを有する、水溶性で、かつ危険でない臭素化試薬を使用することである。
本発明の別の目的は、反応を周囲条件下で行なうことである。本発明のさらに別の目的は、高い収率及び純度の3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルを得ることである。
本発明のさらに別の目的は、いずれの触媒の使用をもなくすことである。
本発明のさらに別の目的は、仕上げ手順を最小限にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
従って、本発明は、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい合成方法であって、以下の工程:
(i) 連続撹拌下で、8.4〜1260ミリモルの範囲の4-ヒドロキシベンゾニトリルを、アルカリ/アルカリ土類金属の臭化物及びアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る臭素化試薬(該臭素化試薬中の活性臭化物含量は16.8〜2524ミリモルである)と反応させる工程;
(ii) 室温で1〜4時間の範囲の時間撹拌下で、工程(i)から得られた反応混合物に0.015〜3.0モルの無機酸を添加する工程;
(iii) 撹拌をさらに1〜3時間の範囲の時間続ける工程;
(iv) 液体から固体をろ過し、脱イオン水で洗浄し、20.7〜22.0kPa(155〜165mmHg)の圧力の真空下で沈殿物を乾燥させる工程
を含む方法を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態では、臭素化試薬は、2:1〜2.1:1のモル比のアルカリ/アルカリ土類金属の臭化物とアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る。
本発明の別の実施形態では、臭素化試薬中の活性臭化物が10%〜20%(w/v)、すなわち16.8〜2524ミリモルである。
本発明の別の実施形態では、4-ヒドロキシ ベンゾニトリルと無機酸とを含む水溶液への固体臭素化試薬の添加によって臭素化反応を行なう。
本発明のさらに別の実施形態では、使用する無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸又は過塩素酸から成る群より選択される。
本発明のさらに別の実施形態では、反応温度を25〜35℃の範囲内に維持する。
本発明のさらに別の実施形態では、4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化用の溶媒として水を使用してよい。
本発明のさらに別の実施形態では、生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの収率が91〜99%の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明により、下記式1に示す反応全体を経て3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)が得られる。
【0009】
【化1】
【0010】
水冷却管及び添加漏斗、内容物を撹拌するための機械装置を備えた10リットルの三つ口丸底フラスコ内で反応を行なった。既知量の4-ヒドロキシベンゾニトリルと必要量の臭素化試薬を反応器に取り、内容物を撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶解させた。利用した臭素化試薬は、2:1のモル比で臭化物/臭素酸塩を含む、臭素回収プラントの中間体だった。これは酸性化によって反応種を発生させて100%の臭素原子効率で臭素化を引き起こす。上記混合物に室温で計算量の36%塩酸を1〜4時間かけてゆっくり加えた。同一条件下でさらに1〜3時間撹拌を続けた。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、固形物を脱イオン水で1回洗浄し、80〜90℃で乾燥させて秤量した。
乾燥生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)の重量は、92〜98%の収率であり、GCによる純度は99%より高く、融点は191℃だった(文献で報告されている値は189〜191℃である)。
関連手順では、必要量の臭化物及び臭素酸塩を含む臭素化試薬を、必要量の98%硫酸をゆっくり添加しながら取り込むことによって、4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化を行なった。
別の関連手順では、必要量の36%塩酸を、水に溶かした4-ヒドロキシベンゾニトリルと共に取り込んで、必要量の臭化物及び臭素酸塩を含む水溶液を徐々に添加して臭素化反応を行なった。
容器の温度は25〜35℃の範囲内で観測された。
塩酸を使用すると流出物反応において無害な塩化ナトリウムを発生させて反応時間を最小限にするので、塩酸の使用が賢明である。
元素分析、1H-NMR、IR及び融点によって反応生成物を特徴づけた。
ガスクロマトグラフィーで生成物の純度を調べた。
【0011】
本発明によれば、周囲温度及び圧力で溶媒として水を用いて、4-ヒドロキシベンゾニトリルと、臭化物と臭素酸塩の比が2:1の固体臭素化試薬とから前記化合物を調製できる。反応混合物への無機酸の添加は、次亜臭素酸(HOBr)のインサイツ発生を補助し、同時に基質上の置換によって原子核臭素化を受ける。
本発明では、溶液中で、臭素化試薬(モル比2:1のBr-/BrO3-)が鉱酸と反応し、活性種次亜臭素酸(BrOH)を発生させ(下記式2)、
2Br-+BrO3-+3H+→3BrOH (2)
これが、純粋に水性の媒体中でいずれの触媒もなしで有機基質4-シアノフェノールと反応して、上記式1に従う定量的収率で3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリル(ブロモキシニル)を与える。
以下の実施例は、本発明の例示として与えるものなので、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきでない。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
10gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(0.084mol)を1リットルの二つ口丸底フラスコに取り、それに92mlの臭素化試薬水溶液[臭化物と臭素酸塩を2:1モル比で含み、活性(反応性)臭化物含量が14.57%(w/v)](0.167mol)と310mlの水を添加した。反応混合物を激しく撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶かした。次に28℃で撹拌しながら2時間かけて18mlの36%HCl(0.18mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は23.10gm(99%の収率)、実測融点191℃だった。
【0013】
(実施例2)
40mlの水に溶かした1.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(8.40mmol)を100mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに、1.16g(11.26mmoles)の臭化ナトリウムと0.85g(5.628mmoles)の臭素酸ナトリウムを含む固体臭素化試薬を加えて30分間撹拌した。上記混合物に28℃で撹拌しながら2.0時間かけて1.70mlの36%塩酸(0.017mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2〜2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は2.210gm(95%の収率)、実測融点191℃だった。
【0014】
(実施例3)
40mlの水に溶かした1.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(8.40mmol)を100mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに、1.16g(11.26mmoles)の臭化ナトリウムと0.85g(5.628mmoles)の臭素酸ナトリウムを含む固体臭素化試薬を加えて30分間撹拌した。上記混合物に32℃で撹拌しながら2.0時間かけて1.70mlの36%塩酸(0.017mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2〜2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は2.210gm(95%の収率)、実測融点191℃だった。
(実施例4)
40mlの水に溶かした1.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(8.40mmol)を100mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに6.7mlの臭素化試薬水溶液[2:1モル比の臭化物と臭素酸塩、活性(反応性)臭化物含量20%(w/v)、1.153g(11.19mmoles)の臭化ナトリウム及び0.85g(5.60mmoles)の臭素酸ナトリウムを含む]を加えて30分間撹拌した。上記混合物に32℃で撹拌しながら2.0時間かけて1.70mlの36%塩酸(0.017mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2〜2.5時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は2.265gm(97%の収率)、実測融点191℃だった。
(実施例5)
2.0gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(16.80mol)を250mlの二つ口丸底フラスコに取り、それに19mlの臭素化試薬水溶液[2:1モル比の臭化物と臭素酸塩、活性(反応性)臭化物含量14.57%(w/v)を含む](33.61mmol)と60mlの水を添加した。反応混合物を激しく撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶かした。次に28℃で撹拌しながら2.5時間かけて0.91mlの98%H2SO4(0.0168mol)をゆっくり添加した。反応混合物をさらに2.0時間撹拌した。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物の重量は4.5gm(97%の収率)、実測融点191℃だった。
【0015】
(実施例6)
水冷却管及び添加漏斗を備えた10リットルの三つ口丸底フラスコに150gmの4-ヒドロキシベンゾニトリル(1.26mol)を取り、それに1386mlの臭素化試薬水溶液[臭化物と臭素酸塩を2:1モル比で含み、活性(反応性)臭化物含量14.57%(w/v)](2.524mol)と4.614リットルの水を加えた(総水性媒体量を6リットルに維持した)。反応混合物を約1時間激しく撹拌して4-ヒドロキシベンゾニトリルを完全に溶かした。次に室温で撹拌しながら3.5時間かけて268mlの36%HCl(2.61mol)をゆっくり添加した。28℃でさらに2.5時間撹拌を続けた。反応混合物をブフナー漏斗でろ過し、脱イオン水で洗浄し、固形物を21.3kPa(160mmHg)の圧力で乾燥させてからオーブン内で80℃にて乾燥させた。乾燥生成物3,5-ジブロモ,4-ヒドロキシベンゾニトリルの重量は343gm(98%の収率)、GCによる純度は99%より高く、実測融点191℃だった。
【0016】
本発明の主な利点:
1. 本方法は、これまで既知の方法に比べて簡単で環境に優しく、かつ低エネルギー性である。
2. 本方法は、反応種のインサイツ発生のため単純かつ固体の臭素化試薬を必要とし、これを引き続き4-ヒドロキシベンゾニトリルの臭素化で利用する。
3. 臭素化試薬は固体であり、危険でなく、かつ如何なる特殊な設備も取扱い技能をも要しない。
4. 反応は室温及び大気圧にて溶液中で起こる。
5. 反応はいずれの触媒をも必要としない。
6. 臭素回収プロセスの中間生成物の1つから低コストで容易に臭素化試薬を得ることができる。
7. 臭素化反応は高い収率及び原子効率を有する。
8. 生成物は99%より高い純度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい合成方法であって、以下の工程:
(i) 連続撹拌下で、8.4〜1260ミリモルの範囲の4-ヒドロキシベンゾニトリルを、アルカリ/アルカリ土類金属の臭化物及びアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る臭素化試薬と反応させ、前記臭素化試薬中の活性臭化物含量は16.8〜2524ミリモルである工程;
(ii) 室温で1〜4時間の範囲の時間撹拌下で、工程(i)から得られた反応混合物に0.015〜3.0モルの無機酸を添加する工程;
(iii) さらに1〜3時間の範囲の時間撹拌を続ける工程;
(iv) 液体から固体をろ過し、脱イオン水で洗浄し、20.7〜22.0kPa(155〜165mmHg)の圧力の真空下で沈殿物を乾燥させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記臭素化試薬が、2:1〜2.1:1のモル比のアルカリ/アルカリ土類金属の臭化物とアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4-ヒドロキシベンゾニトリルと無機酸とを含む水溶液への固体臭素化試薬の添加によって臭素化反応を行なう、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸又は過塩素酸から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応温度を25〜35℃の範囲内で維持する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの収率が91〜99%の範囲内である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの環境に優しい合成方法であって、以下の工程:
(i) 連続撹拌下で、8.4〜1260ミリモルの範囲の4-ヒドロキシベンゾニトリルを、アルカリ/アルカリ土類金属の臭化物及びアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る臭素化試薬と反応させ、前記臭素化試薬中の活性臭化物含量は16.8〜2524ミリモルである工程;
(ii) 室温で1〜4時間の範囲の時間撹拌下で、工程(i)から得られた反応混合物に0.015〜3.0モルの無機酸を添加する工程;
(iii) さらに1〜3時間の範囲の時間撹拌を続ける工程;
(iv) 液体から固体をろ過し、脱イオン水で洗浄し、20.7〜22.0kPa(155〜165mmHg)の圧力の真空下で沈殿物を乾燥させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記臭素化試薬が、2:1〜2.1:1のモル比のアルカリ/アルカリ土類金属の臭化物とアルカリ/アルカリ土類金属の臭素酸塩から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4-ヒドロキシベンゾニトリルと無機酸とを含む水溶液への固体臭素化試薬の添加によって臭素化反応を行なう、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸又は過塩素酸から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応温度を25〜35℃の範囲内で維持する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
生成物3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾニトリルの収率が91〜99%の範囲内である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【公表番号】特表2012−518682(P2012−518682A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551571(P2011−551571)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000111
【国際公開番号】WO2010/097812
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(508176500)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000111
【国際公開番号】WO2010/097812
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(508176500)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (27)
【Fターム(参考)】
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