説明

3Dポインター装置

【課題】3D表示装置に表示した立体映像中の指定した3D位置にポインター映像を立体表示する3Dポインター装置を提供する。特に、多数の視聴者が観察する3D映像に対して、講演者がポインターを3D表示して画像中の対象物を正確に指し示すことができる3Dポインター装置を提供する。
【解決手段】3D表示面1内に表示すべきポインター像10の表示位置を指定するポインターデバイス6と、ポインター像の奥行き位置を調整する奥行き指示装置と、3D表示面1に表示されたポインター像10の3D位置を検出するポイント位置検出装置8と、ポインター像10の3D映像信号を生成して映像供給装置に供給する3Dポインター映像信号生成装置と、ポインター像の3D映像信号と元の映像の3D映像信号を混合して映写用3D映像信号を合成し3D映写装置4に供給する映像供給装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D映像上映中に3D表示された映像における表面などの3D表示位置にポインター映像を生成する3Dポインター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年3D映像技術が急速に進展してきて、いろいろな局面で3D映像を利用することができるようになってきた。たとえば学術講演会や手術検討会などでも、実物に対する再現性が高い3D映像を使用する場面が増えてきた。手術検討会などでは、3D映像を上映しながらレーザポインターなどを用いて画像中の位置を指し示して説明することがある。
【0003】
従来は、このような場合、ポインターは左眼と右眼の両方に同じ映像として表示されるため、ポインター像は3D映像として表された実物の奥行きとは関係なく表示装置面(3D映像の輻輳面)上に位置することになり、3D表示に適合する正確な位置を示すことができなかった。また、3D映像を観察している視聴者には、表示装置面に表示されたポインター像が3D映像の実物の内部に位置したりして、違和感を抱かせるものでもあった。
さらに、講演者や説明者は、ポインターを3D映像の実物像の表面に当てることが難しいため、ポインターで3D表示の対象位置を示すより、対象が存在する広い領域を示す道具として、ポインターを激しく動かしながら領域を指定しようとする場合が多く、3D映像の視聴者にいらつきや不快感を抱かせることがあった。
【0004】
なお、本発明の対象となる、3D映像における3D座標位置を指示できる3Dポインターに係る的確な先行技術文献は検出できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明の解決しようとする課題は、表示装置に表示した立体映像中の指定した3D位置にポインター映像を立体表示する3Dポインター装置を提供することである。特に、多数の視聴者が観察するように表示面に3D表示した3D映像に対して、講演者がポインターを3D表示して画像中に3D表示された対象物を正確に指し示すことができるようにした3Dポインター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る3Dポインター装置は、左右視差を利用した3D表示面を有する3D表示装置と、左眼用映像信号と右眼用映像信号を使って3D表示面に3D映像を映写する3D映写装置と、3D表示面内に表示すべきポインター像の表示位置を指定するポインターデバイスと、3D表示面における左眼用のポインター像と右眼用のポインター像との距離を調整してポインター像が表示される奥行き位置を指定する奥行き指示装置と、3D表示面におけるポインター像の3D位置を検出するポイント位置検出装置と、表示するポインター像の3D映像信号を生成して映像供給装置に供給する3Dポインター映像信号生成装置と、3Dポインター映像信号を入力して元の映像に係る3D映像信号と混合して映写用3D映像信号を合成し3D映写装置に供給する映像供給装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る3Dポインター装置では、3D表示装置の表示面中にポインターデバイスで指定した位置にポインター像を3D表示し、画面におけるポインター像の奥行き位置は奥行き指示装置により調整することができる。したがって、講演者や説明者は、ポインターデバイスを使って3D表示面におけるポイント位置を指定し、3D表示面に表示された3Dポインター像を観察しながら、奥行き指示装置を使ってその奥行き位置を指定することができる。なお、初期にポインターデバイスで指定する位置は、3D映像表示の輻輳面(表示装置面)における位置であってよい。
【0008】
また、ポインター像は3Dポインター映像信号生成装置で形成されるので、目標点を指示するポインターでも、面積を有する目標領域を指示する領域型ポインターでも、任意に選択して表示することができる。したがって、講演者等は、ポインターを激しく動かして領域を示す必要が無く、視聴者の不快感を避けることができる。
また、ポイント位置検出装置が撮影する画面内の3D表示面の部分をアドレス空間として画定することにより、ポイント位置をアドレス空間に係る座標系で表すだけで、3D表示面における位置座標を容易に求めることができるようになる。
【0009】
なお、ポインターデバイスが、3D表示装置の3D表示面に光点を照射するレーザポインターや、3D表示面に先端を置いてポインターの位置を指定する指差し棒であって、ポイント位置検出装置として、3D表示面を撮像して光点位置や指定位置を測定するCCDカメラを使い、光点などを検知した撮像素子の位置に基づいて、3D表示面におけるポインターの位置を検知する機構を備えたものであっても良い。この場合は、講演者等はポインターデバイスを操作して、3D表示面上で直接的にポイント位置を指示することができる。
【0010】
また、タッチパネル付きモニター画面に3D映像の元画像を表示し、このモニター画面に対してタッチパネル用ペンあるいは指などでポインターの位置を指定するようにしたものであっても良い。この場合は、講演者等は、視聴者らが見る表示面ではなく、手元のモニター画面を介してポイント位置を指定することができる。
また、本発明に係る3Dポインター装置では、元の映像に係る3D映像信号と3Dポインター映像信号を混合して映写するための映写用3D映像信号を合成して供給するので、3D表示する表示面を遠隔地に配置した場合でも、講演者等が実地に指定するポインター表示を再現することができる。
【0011】
さらに、本発明の課題をより簡便に解決する道具として、3D映像を表示する3D表示装置の3D表示面において左右眼立体視用にそれぞれ表示される2個の光線を使って3D表示面に光点を3D投映する3Dポインター装置であって、一方の光線の光路をたとえばプリズムで変更させて、その光点と他方の光線の光点との距離を調整することにより、画面上のポインター像に当たる3D光点の奥行き位置を調整できるようにした3Dポインター装置を使用することができる。
【0012】
2本の光線は、左右両眼の視線角度差に基づいてポインターの立体視ができるように、左右の眼に適合する1対の映像信号のそれぞれに対応してポインターの映像信号を担い、ポインター像を立体表示させるためのものである。
なお、2本の光線でポインターの立体視をする方法を使うことにより、2本の光線を交互に照射する時分割方式ばかりでなく、偏光フィルタ方式においても、偏光面の傾きを規制して実体像とポインター像を3D表示するようにすることができる。偏光フィルタ方式を使用する場合は、3D表示面が偏光面の傾きを保存したまま反射するものであることが求められる。
さらに、ポインター像の立体視化には2本の光線が左右両眼の並ぶ方向、普通は水平方向に、ずれる必要があるので、2本の光線のレーザ発生器が自動的に水平に並ぶように維持する機構を備えることが好ましい。
【0013】
この3Dポインター装置は、ポインターデバイスと奥行き指示装置を操作することにより、3D表示面に表示された実体像上の適当な奥行き位置に光点により形成されるポインター像を生成させることができる。なお、奥行き指示装置はポインターデバイスに搭載することもできる。
このような3Dポインター装置を使用すれば、講演者等は、3Dポインター装置から投射する2本の光線により指定することにより、ポインター像を3D映像中の選択する位置に所望の奥行きで表示させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る3Dポインター装置は、講演会や説明会において、大型の3D映像を使って説明を行うときに、講演者等が当該3Dポインター装置を操作して3D画面中に3D表示されるポインターの位置および奥行きを調整することにより、3D映像中の対象物を正確に指し示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係る3Dポインター装置の構成図である。
【図2】第1実施例におけるマウスポインターの1例を示す構成図である。
【図3】第1実施例に組み込まれる3D映像サーバにおける1つの機能を説明する流れ図である。
【図4】第1実施例におけるアドレス空間の表示座標系を設定する操作の概念を説明する概念図である。
【図5】第1実施例におけるアドレス空間にポイント位置を指定する操作を説明する図面である。
【図6】第1実施例におけるポイント位置の読み取り方法を説明する図面である。
【図7】第1実施例における3Dポインター装置による表示状況を説明する概念図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る3Dポインター装置を説明する図面である。
【図9】本発明の第3実施例に係る3Dポインター装置で3D表示面に映写された映像上で3D位置にポイントする機構を示す概念図である。
【図10】第3実施例の3Dポインター装置においてポイント位置の奥行き位置を調整する方法例を説明する概念図である。
【図11】第3実施例の3Dポインター装置に組み込む調整機構の例を説明する概念図である。
【図12】第3実施例の3Dポインター装置においてポインターデバイスを3D表示面に正対する位置に据えた場合のポインター像表示原理を説明する概念図である。
【図13】第3実施例の3Dポインター装置に組み込む水平維持機構の1例について説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例に基づき、本発明に係る3Dポインター装置について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、図面においては、同じ機能を有する構成部材については同じ参照番号を付して説明を簡約にし、説明の無駄な重複を避けた。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の第1実施例に係る3Dポインター装置の構成概念図である。
本実施例の3Dポインター装置は、シルバースクリーンや液晶表示面などの3D表示面1を有する時分割方式や偏光フィルタ方式の3D表示装置と、3D表示面1に3D表示装置に適合する左右眼用3D映像3を映写するプロジェクターやディスプレーなどの3D映写装置4と、3D映写装置4に供給する映写用3D映像信号を生成する3D映像サーバ5と、3D表示面1内にポインター像10の表示位置を指定するポインターデバイス6と、3D表示面1におけるポインター像10の3D位置を検出するCCDカメラなどのポイント位置検出装置8と、を備える。
【0018】
本実施例の3Dポインター装置における3D映像サーバ5は、ポインター像10の3D映像信号を生成する3Dポインター映像信号生成装置または機能と、ポインターの3D映像信号と元の映像の3D映像信号と混合して映写用3D映像信号を合成し3D映写装置4に供給する映像供給装置または機能を含む。
【0019】
本実施例の3Dポインター装置は、3D表示面1に映写された3D映像3に対して、ポインターデバイス6によりポイント位置を指定すると、ポイント位置検出装置8がこれを検出して、位置信号を3D映像サーバ5に伝送する。ポイント位置検出装置8の前面には、レーザ光の波長以外を遮断するフィルタ12を設けてもよい。
ポインターデバイス6には、ポインター像の奥行き位置を調整する奥行き指示装置あるいは機能を搭載しておくことができる。
3D映像サーバ5は、元の3D映像の3D映像信号にポインターデバイス6により3D位置が指定されたポインター像10の3D映像信号を加えて、ポインター像10を含む3D映像の3D映像信号を生成して、3D映写装置4に伝送する。
【0020】
3D表示面1中でポインター像10により表示される位置情報は、輻輳面のある表示面位置における位置情報である。そこで、3D表示面1に表示されたポインター像10の奥行き情報を、ポインターデバイス6、あるいはこれに代わる指示装置を介して指定する。
たとえば、交差法による3D表示方式を採用している場合は、物体やポインターの右眼用映像と左眼用映像が輻輳面上の同じ位置に投影されると、物体やポインターが輻輳面上にあるように観察される。
【0021】
物体やポインターが輻輳面から離れるほど、それらの右眼用映像と左眼用映像は輻輳面上に投影される位置について観察者の眼の並び方向における隔たりが大きくなる。
右眼用映像が左眼用映像より左側に離れているときに両眼観察すると、輻輳角が輻輳面上の点を観察するときより大きくなり、物体やポインターが輻輳面の手前にあるように感得される。また、右眼用映像が左眼用映像より右側に投影される場合は、輻輳角が小さくなり、物体やポインターが輻輳面より遠方にあるように感得される。
【0022】
そこで、たとえば、3D眼鏡を使う交差法の3D表示方式を使う場合、3D表示面1に3D表示されている物体の表面にポインターを位置させようとするときは、一方の眼に対応する映像のみを観察して目標にポインターの位置を合わせ、さらに目標を3D表示するための右眼用映像と左眼用映像の位置偏差と同じ偏差をポインターの右眼用映像と左眼用映像に与えるようにすればよい。
【0023】
実際には、ポインター像を3D映像サーバ5で合成するときに、たとえば、ポインターの2D画像を右眼用映像の目標位置に形成し、さらにポインターの2D画像を左眼用映像の目標位置に形成する。右眼用映像中のポインター像の位置と左眼用映像中のポインター像の位置が、輻輳面上に投射したときに、右眼用映像中の目標の画像と左眼用映像中の目標の画像との間の位置偏差と同じ量の隔たりを有するようにすればよい。
すると、3D眼鏡を介して右眼用画像と左眼用画像を見ることによりポインター像を観察することにより、ポインターが目標物の表面の位置に3D表示されることになる。
【0024】
図2は、本実施例の3Dポインター装置で使うポインターデバイスの1例を示す構成図である。このポインターデバイス6は、3D映像を映写している3D表示面1の前方にいる講演者あるいは説明者が、レーザ光を3D表示面1に向けて投射して映像中に目標位置を示すために使用される。
図2のポインターデバイス6は、先端に2個のレーザ発光器が設けられており、背中にはタッチパッドと指令ボタンが設けられて、使用者が片方の掌に抱え込んで空いた指でボタンやパッドを操作するようにしたものである。形状はマウスに似たものとなっている。
【0025】
2個のレーザ発光器の内、ポイント用レーザ発光器21からは、3D表示面1中にポインター10の位置を指定するためのポイント位置指定に用いるポイント用レーザ光23が放射される。ポイント用ボタン22は、ポイント用レーザ光23の放射のオンオフと照射位置の確定指令のために使用される。ボタンを押す順序や押し続ける時間などにより指令内容を区別することができる。
【0026】
また、もう一つの校正用レーザ発光器24からは、3D表示面1に表示されるプロジェクターやディスプレーなどの3D映写装置4における表示面の4隅位置を指定してアドレス空間2を画定する表示枠を指定するために用いられる、校正用レーザ光27が放射される。校正用ボタン25は、校正用レーザ光27の照射に係るオンオフを指令するためと、アドレス空間2を画定する4隅11の位置を照射していることを確定しレーザ光照射位置情報の取り込みを指令するために使用される。
【0027】
ポイント用レーザ光23は、上記指定されたアドレス空間2内に無ければ有効でない。校正用レーザ光27のスポット位置により指定されるアドレス空間2が画定していて、アドレス空間2におけるポイント用レーザ光23の照射位置によりポイント位置が決められる。
したがって、ポイント位置検出装置8の前面には、ポイント用レーザ光23と校正用レーザ光27以外を遮断するフィルタ12を設けて映像中のノイズを削減して、情報処理の簡易化を図ることが好ましい。
【0028】
1対のボタン28,29は、3D表示面1に指定されたポインター10の奥行き位置を調整するためのボタンで、前方に配置されたポインター奥側位置指定ボタン28を押すとポインター10の奥行き位置が遠方に変化し、後方に配置されたポインター手前側位置指定ボタン29を押すとポインター10の奥行き位置が手前側に変化する。
【0029】
また、3D表示面1に表示されるポインター10の形状は、ポインター表示モード指定用のボタン32と領域図形選択用のボタン33により選択することができる。ボタン32により、ポインター10が点位置を指定するものと領域を指定するもののいずれかを選択決定し、ボタン33により、ポインター10の表示形状を選択決定することができる。
ポインター10の形状は、たとえばポインター10が点位置を指定するものであれば、矢印、クロス、星印、ドットなど、またポインター10が適宜な大きさを有する領域を指定するものであれば、雲形、円形、4角形など、予め準備された形状からボタン33のクリックにより選択して指定することができる。
【0030】
また、ポインター10は、タッチパッド30に指先で触れて左右方向31に動かすことにより、ポインター形状や領域の大きさを調整することができる。
なお、先に説明したポインター奥側位置指定ボタン28とポインター手前側位置指定ボタン29は、タッチパッド30の一部に同じ機能を持たせることにより代用することができる。
【0031】
ボタン34は、ポインター10を初期位置あるいは適宜決められた所定の位置に移動させるボタンである。ボタン34を押すと、ポインター10の位置が予め指定された3D表示面上の位置、3D表面位置より奥のたとえば無限遠点などの指定位置、あるいは3D表面位置より手前の指定位置などに移動して、ポインター10の位置を簡単に再設定できるようになっている。
【0032】
また、ボタン34により自動モードにすることもできる。自動モードを選択すると、指定した目標物が移動した場合にポインター10が目標物に追従して移動するようになる。
たとえば、左眼用と右眼用のそれぞれの映像について、画像解析によりポイント位置近傍の特徴点を抽出し、特徴点の運動を監視しておいて、特徴点の移動に従ってポインター像を移動させることにより、ポインターを自動追従させることができる。
【0033】
自動モードでは、また、目標物の奥行き位置を自動的に検知して、これにポインター10の奥行き位置を合わせることができる。
目標物の奥行き位置は、左右一方の眼用の映像における画素単位または小領域の画素について、他方の眼用の映像における左右方向近傍の画素と比較して、画像マッチングで目標物上の同じ位置を示す部分を見いだし、相互の間の視差量を算出して、判定する。なお、この手法では正確に判定できない場合は、さらに大きな範囲を含む判定ブロックを設定し、算出した奥行き量の平均値を用いて判定するようにしても良い。
【0034】
自動追従がうまくいかないときには、直ちに手動モードに切り替えて、人による追従をすればよい。
手動モードでは、ポインターデバイス6を使い、ポイント用レーザ発光器21から放射されるポイント用レーザ光23により目標物にポインター10の像を合わせ、ポインター奥側位置指定ボタン28とポインター手前側位置指定ボタン29により、ポインター10の奥行き位置を決めることにより、新しいポイント位置を決めることができる。
【0035】
図3は、本実施例の3Dポインター装置に組み込まれる3D映像サーバにおける1つの機能を説明する流れ図である。
3D映像サーバ5は、ポイント位置検出装置8から画像信号を入力し、ポインターデバイス6から制御信号を入力して、ポインターの3D映像信号を生成し、3D映写装置4に伝送して、3D表示面1にポインターを3D表示させる。
講演者や説明者など、本実施例の3Dポインター装置の利用者は、3D表示面1に表示されたポインター10を、3D眼鏡9を介して観察しながら、ポインターデバイス6を操作して、ポインター10をより的確な位置に導くことができる。
【0036】
すなわち、3D映像サーバ5は、図3に示すように、CCDカメラなどのポイント位置検出装置8から、その撮像面におけるレーザ光照射位置の座標を入力する(S11)。
次に、入力したレーザ光照射位置の座標を、アドレス空間2の座標系に関する座標に換算することにより、3D映写装置4が映像を投影する3D表示面1を基準とする座標系で表された3D表示面1内のレーザ光照射位置の座標を得る(S12)。
【0037】
図4は、アドレス空間2の表示座標系を設定する操作の概念を説明する概念図である。
アドレス空間2は、3D表示面1に映し出された3D映像の枠内に限定される。そこで、3D映像面の4隅の点11を校正用レーザ光27で順次照射することにより指定し、この光点11で区画された3D表示面1をポイント位置検出装置8の撮像面に投影して撮像し、撮像面に対応するカメラ映像出力面16に設定された座標系における光点11の座標を得ることにより画定される。
【0038】
ポインターデバイス6のポイント用レーザ21によりポイント用レーザ光23を操作できる範囲は、アドレス空間2内に限定される。アドレス空間2は3D表示面1に対応するので、レーザ光照射位置の座標をアドレス空間2に関する座標系の座標に換算すると、3D表示面1内の光点位置を、3D表示面1に関する座標系で座標表示することになる。
なお、アドレス空間2は、カメラ映像出力面16に撮影された3D表示面1の範囲に対応するものであり、3D表示面1とポイント位置検出装置8の配置が決まった時点で画定すれば、配置状態が変化しない限り同じ情報を使用することができる。
【0039】
図5は本実施例におけるアドレス空間座標の上に点の位置を指定する操作を説明する図面、図6はポイント位置の読み取り方法を説明する図面である。
CCDカメラなどのポイント位置検出装置8で撮影して、3D表示面1を含む映像を撮像面に形成し、校正用レーザ光27を映像中の3D表示面1の4隅の点11に照射すると、ポイント位置検出装置8の撮像面の出力映像16中にアドレス空間2が画定される。使用者がポインターデバイス6を使って3D表示面1の適宜な位置にポイント用レーザ光23を照射すると、レーザ光が反射して光点7が形成され、ポイント位置検出装置8の撮像面の出力映像16中のアドレス空間2内に光点7が映し込まれる。光点7の座標は、最終的にアドレス空間2に関する座標系に変換されて表示される。
【0040】
ポイント位置検出装置8を3D表示面1に正対するように配置して撮影すれば、3D表示面1の映像は長方形になるので、4隅の光点11を使わなくても、対角位置にある2隅の点の座標が得られれば、アドレス空間2を画定することができる。
また、3Dディスプレーを視聴者の視線の邪魔にならないように側方から撮影するような場合は、アドレス空間2の映像は大きく歪むが、隅の4点を測定することにより、アドレス空間2を画定して、内部の光点について、アドレス空間2を基準とする座標系で表現することができる。
【0041】
なお、ポイント位置検出装置8の前にポインターが3D表示面1上に形成する光点からの反射光を通すフィルタ12を設けると、ポイント位置検出装置8がより単純で画像処理の容易な光点映像を取得して、3D画像サーバ5に送信することができる。
【0042】
再び図3に戻ると、次に、ポインターデバイス6のボタン類を介してポインター表示に必要な各種パラメータに関する指令内容を取り込んで、これらの要求に従ったポインター表示を行うようにする。3D映像サーバ5は、ボタン類の操作状態を常時監視していて、何かが操作されたときは、直ちに内容を取り込んでポインター表示に反映させることができる。
【0043】
3D映像サーバ5は、ポインターデバイス6のポインター奥側位置指定ボタン28とポインター手前側位置指定ボタン29の操作に基づいて、ポインターの奥行き位置指令情報を入力する(S13)。また、ポインターで位置を指定するか領域を指定するか、ポインターの表示形態を指定するためのポインター表示モード指定ボタン32や、ポインター像の形状を指定する領域図形選択ボタン33、さらに、表示図形の大きさを指定するタッチパッド30の指令内容を入力する(S14)。
【0044】
これらの指令情報に従って、ポインターの右眼用映像と左眼用映像を作成する(S15)。ポインターの右眼用映像と左眼用映像はそれぞれ同じ形状と大きさを持つようにする。これらの右眼用映像と左眼用映像が3D表示面1に投影されたものを、それぞれの眼で見て合成することにより、左右の眼がポインター像を見通す視線が交差する位置に立体像が形成される。したがって、3D表示面上の像の距離に従って、ポインターの奥行き位置を適宜に調整することができる。
【0045】
さらに、ポインターを含まない元の表示映像に係る右眼用映像と左眼用映像のそれぞれにポインターの右眼用映像と左眼用映像のそれぞれを重ねて合成した右眼用映像と左眼用映像を生成する(S16)。
こうして生成した3D映像信号を3D映写装置4に伝送して、元の映像とポインター像を合成した映像を3D表示面1に表示させる(S17)。
【0046】
図7は、本実施例における3Dポインター装置を使った表示状況の1例を説明する概念図である。
図7では、下段にポインターを含む表示映像の右眼用映像(R映像)と左眼用映像(L映像)のそれぞれが示されている。人物像の顔の横に領域表示型のポインターが表示されている。従来のポインター装置ではポイント指示が普通で、このような領域表示をさせることは難しかったが、本実施例ではポインター像を3D映像サーバ5で形成するので、任意に生成することができる。
【0047】
中段の図は、右眼用映像と左眼用映像が一緒に、輻輳面に当たる3D表示面1に投影された状態を示す。右眼用映像のポインター像は左眼用映像のポインター像より右側にあって、3D眼鏡を装着した観察者がこれを観察すると、ポインター像を見通す左右の視線は3D表示面の後ろで交差することになる。
上段の図は、3D眼鏡を装着した観察者により観察されるポインターの位置を表すもので、3D表示面の位置に表された立木より後ろに立っている人物像と同じ奥行き位置に位置することが分かる。
【0048】
本実施例の3Dポインター装置を使用する講演者や説明者は、3D映写装置4により3D表示面1の上に映写された3D映像3中のポインター像の表示状態を、3D眼鏡9を介して観察しながら、ポインターデバイス6を操作して、所望の形、所望の大きさのポインター像を形成させることができる。また、ポインター像が意図する3D位置と異なる場合は、ポインターデバイス6やポインターデバイスに搭載されている奥行き指示装置を操作して、3D映像中のポインター像の位置や奥行き量を調整して、正しい3D位置に直すことができる。
【0049】
本実施例における3Dポインター装置では、ポイント位置を指定するポイント用レーザ光23の照射位置が見えなくても、3D映像サーバ5で映像中にポインター像を合成して3D表示面1に表示するので、ポイント位置を正確に観察しながらポインターデバイス6を操作して、ポイント位置を決定することができる。したがって、ポイント用レーザ光23は、必ずしも可視光レーザである必要はなく、赤外線や紫外線などの非可視光レーザを利用することもできる。ポイント用レーザ光23が可視光であるときは、目標位置を確定するまで3D表示面1上を光点が無秩序に動き回っていて気に障らせたり、レーザ光23で形成される3Dポインター映像が3D表示面1の面に見えるため3D映像と重なって視聴者を混乱させたりするが、ポイント用レーザ光23が非可視光であれば、視聴者にはポインターの動きが見えず全く気にならなくなる。
【0050】
なお、本実施例のポインターデバイス6には、ポイント用レーザ21と校正用レーザ24の2種類のレーザが備えられているが、ポイント用レーザ21と機能ボタンを備えて、機能ボタンで校正用レーザの機能を選択指定してポイント用レーザ21で代替できるようにして、校正用レーザ21を削除することもできる。
また、3D位置を検出するCCDカメラなどのポイント位置検出装置のモニターを活用し、3D映写装置4における表示面の4隅位置をレーザで指定する代わりに、モニター画面上でアドレス空間2を画定する表示枠を指定するようにしてもよい。
さらに、図1に示されているように、3D映像サーバ5で形成された3D映像信号は、分配器13を介してネットワーク14を経由させ、遠隔の表示装置15に送信して、いろいろな場所にいる多数の受講者が同じ3D映像を観察できるようにすることができる。
【0051】
3D映像サーバ5は、3D表示する映像の信号を付属する記憶装置に蓄積しておくことができる。また、通信により外部の機器から供給を受けるようにすることもできる。
3D映像サーバ5およびこれに付帯する装置は、各要素毎に電子回路により構成しても良いが、マイクロコンピュータで構成することもできる。また、汎用のパソコンでソフトウエアにより構成しても良い。
なお、ポインターデバイス6により指定するポインター像10の表示は、極端な立体視により視聴者に衛生上の危険を与えたり不快感を与えたりしないように、視差制限を行って適度な立体表示をするように制限することができる。
【実施例2】
【0052】
図8は、本発明の第2実施例に係る3Dポインター装置の液晶表示部を備えた蓋を開いた状態を示す正面図である。
本実施例の3Dポインター装置は、タッチパネル式3D表示面41を備えた携帯用パソコンを利用してポインターの位置や形状を指示するもので、元の映像についてポインター像を合成した3D映像は、別途大型の3D表示面に表示して大勢の視聴者が観察できるようになっている。
【0053】
本実施例の3Dポインター装置は、3D表示用液晶表示面41に形成されたタッチパネルの一部を領域制御パッド42の部分と奥行きパッド43の部分と機能ボタン44の部分に利用して、タッチパネル用ペン45を使って操作する。
領域制御パッドは、ポインター像の形状の大きさを指定する機能を有する。奥行きパッドは、ポイント位置の奥行きを指定する。機能ボタンは、ポインター表示モード指定や、領域図形選択や、ポイント位置設定などの機能を果たすいくつかのボタンで構成される。
また、文字入力が必要な場合は、キーボード46を使って入力することができる。
【0054】
本実施例の3Dポインター装置は、液晶表示面41に3D表示された映像に対して、ポインターを配置したい位置をタッチパネル用ペン45で指定し、液晶表示面41に表示された機能ボタン44を操作してポインター像の形状やポインター機能を指定すると、パソコンで演算処理して、適合するポインター像を液晶表示面41に表示する。ポインター像が所望の位置になければ、さらに、奥行きパッド43を操作して、所望の奥行き位置に移動させ、ポインター像が所望の大きさでなければ、領域制御パッド42を操作して所望の大きさにすることができる。
【0055】
こうして得られた適正な形状、位置、大きさを有するポインター像を3D表示用の映像信号に編成して、図外の大型表示装置に伝送する。
本実施例の3Dポインター装置を使用する場合は、使用者は大型表示装置の前で視聴者に背中を向けて操作している必要が無く、携帯用パソコンを操作することにより、適正なポインター像を大型表示装置に表示させることができるので、視聴者と対面して円滑に講演などを行うことができる。
【0056】
なお、液晶表示装置が3D表示方式でなく、単なる2D表示しかできない場合でも、ポイント位置の指定をタッチパネル面41で行い、奥行き位置の指定を奥行きパッド43で行うようにすれば、同様に適正な3Dポインター像を生成して大型の3D表示装置に表示させることができる。
【実施例3】
【0057】
図9から図13は、本発明の第3実施例に係る3Dポインター装置を説明する図面である。図9は本実施例の3Dポインター装置で3D表示面に映写された映像上で3D位置にポイントすることを示す概念図、図10はポイント位置の奥行き位置を調整する方法例を説明する概念図、図11は3Dポインター装置に組み込む調整機構の例を説明する概念図である。また、図12はポインターデバイスを3D表示面に正対する位置に据えた場合の表示原理に係る概念図、図13はポインター装置に組み込む水平維持機構の例を示す概念図である。
本実施例の3Dポインター装置は、スクリーンやディスプレー上に3D表示されている映像に対して、任意の3D位置にポインター像を3D表示させる簡便なポインターデバイスである。
【0058】
図9を参照すると、3D映像信号を供給する通常の3D映像再生機17とスクリーンやディスプレーなどの3D表示面1と3D表示面1に3D映像を表示させる3D映写装置4とで構成される3D表示装置に対して、本実施例に係るポインターデバイス51を使って3D表示面1上に3Dポインター像を形成すれば、3D眼鏡9を介して左右それぞれの眼に映ったポインター像を脳内で合成することによりポインターの3D位置を感知することができる。
【0059】
本実施例の3Dポインター装置に係るポインターデバイス51は、左右眼立体視用に分離した2個のレーザ光線52,53を使って3D表示面1に光点を3D投映する。
2本のレーザ光線52,53は、左右両眼の視線角度差に基づいてポインターの立体視ができるように、左右の眼に適合する1対の映像信号のそれぞれと共にポインターの映像信号を供給して、ポインター像を立体表示させるためのものである。
【0060】
ポインターの左眼用映像を形成するレーザ光52は、3D表示面1に3D映像を形成する左眼用映像と同じ光学特性持つように、またポインターの右眼用映像を形成するレーザ光53は、3D表示面1に3D映像を形成する左眼用映像と同じ光学特性持つように、それぞれフィルタ54を通すことにより変成される。
【0061】
フィルタ54は、3D眼鏡9と適合するものであって、3D表示装置が偏光面の向きが直交する偏光を使って左眼用と右眼用に分離された映像信号を使うシステムであるときは、偏光軸が直交する2枚の偏光フィルタを組み合わせたフィルタが採用される。また、左眼用映像と右眼用映像を交互に提示する機構を使うときは、フィルタ54は3D表示装置と同期してシャッターが作動するようなフィルタが採用される。なお、直交する偏光に代えて円偏光を利用することもできる。
【0062】
たとえば、3D表示面1における左眼用と右眼用のポインター像が同じ位置にあれば、ポインターは3D表示面1の上にあると感じられ、左眼用ポインター像が右眼用ポインター像より左側にあればその距離に応じて3D表示面の奥側に離れた位置に存在すると感じられる。また、左眼用ポインター像が右眼用ポインター像より右側にあれば、ポインターは3D表示面の手前側に存在すると感じられる。
【0063】
図10は、本実施例の3Dポインター装置において、ポイント位置の奥行きを指定する機構について説明する図面である。
本実施例では、ポインターデバイス51から放射される2本のレーザ光52,53が3D表示面1の上に形成する光点をそれぞれの眼で見た像を脳内で立体像に合成することにより、ポインターの3D位置を観察することができる。
【0064】
ポインターデバイス51は、左眼用レーザ光52を放射する左眼用レーザ発生器55と、右眼用レーザ光53を放射する右眼用レーザ発生器56を備える。左眼用レーザ光52と右眼用レーザ光53は、それぞれフィルタ54を透過することにより、元の映像について供給される左眼用映像信号と右眼用映像信号とに適合する画像信号になる。また、右眼用レーザ光53の光路上にプリズム57が介装されている。プリズム57は、ポインターデバイス51に搭載された制御器を操作することにより指定された距離だけ摺動し、レーザ光53の光路を変更できるようになっている。
【0065】
プリズム57を操作することにより、右眼用レーザ光53が3D表示面1の上に形成する光点を水平方向の適宜の位置に動かすことができる。したがって、観察者が3D眼鏡9を介して3D表示面1上の左眼用と右眼用の2つの光点を見ると、これらを見る視線が交差する位置にポインター像58が存在するように観察できる。図10に表したケースでは、ポインター像58は3D表示面1より遠方に形成されている。
【0066】
なお、レーザ光線52,53のうち一方のみについて照射位置を調整する代わりに、両方のレーザ光線52,53を同時に対称的に駆動することにより、ポインターの奥行きを調整するようにすることもできる。また、図面ではプリズム57を利用してレーザ光の照射位置を調整しているが、反射光学系を使って光路調整しても良く、またレーザ装置の向きを調整することにより放射方向を調整しても良い。
【0067】
なお、偏光フィルタ方式を採用する3D表示装置に適用する場合は、ポインター像についても効率よく反射するようにするため、シルバースクリーンなど反射光についても偏光面の傾きを維持するような3D表示面1を用いることが求められる。
また、本実施例の3Dポインター装置は、適応する機構を有するフィルタ54を使用することによって、時分割方式の3D表示装置についても適用することができる。
【0068】
さらに、ポインター像の立体視化には2本の光線が左右両眼の並ぶ水平方向にずれる必要があるので、2本の光線の並びを自動的に水平に維持する機構を備えることが好ましい。
図11は、水平維持機構の例を含み、3Dポインター装置に組み込む調整機構の例を説明する概念図である。
左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56の一方または両方のレーザ光路上に、プリズム57がボイスコイル61により並動可能に設置され、左眼用レーザ光52と右眼用レーザ光53の照射方向を調整することができるようになっている。ボイスコイル61には、直流電源62と駆動信号源63が接続されていて、プリズム57に固定された鉄心の移動量を調整できるようになっている。
【0069】
また、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56は1つの基板に固定され、垂直方向と水平方向に位置制御するためのボイスコイル64,65が設備されていて、ポイント位置に適宜の図形を描かせることができる。ボイスコイル64,65の駆動方法は、プリズム57に付属するボイスコイル61と同じ原理である。
さらに、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56とプリズム57を搭載した基板66は、ポインターデバイス51に固定された円形をしたガイドレール67の内縁に嵌合して、回転可能に設置されている。基板66には、常に重力方向に垂れ下がる錘68が固定されていて、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56が常に水平方向に並ぶように基板66の姿勢を一定に保つようになっている。
【0070】
図12は、ポインターデバイス51を3D表示面1に正対する位置に据えた場合のポインター像表示原理を説明する斜視図である。ポインターデバイス51は表示面1の中央前方に正対するように配置され、講演者は3D表示面1の脇、あるいは別の講演台のところに立って、遠隔操作器71によりポインターデバイス51を操縦する。講演者は、遠隔操作器71を操作することにより、左眼用レーザ光52と右眼用レーザ光53の照射方向を調整して、3D表示面1におけるポインター像の左眼用表示点72と右眼用表示点73を表示して、視聴者がポインター像を3D位置に観察できるようにすることができる。
【0071】
ポインター像が3D表示面1の中央にあるときは、ポインター像が上下方向に変位する場合も、ポインターデバイス51の左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56が3D表示面1に対して平行に配置されるので、視聴者は問題なくポインター像を立体視することができる。また、ポインター像が3D表示面1の脇の方にずれる場合も、ポインターデバイス51と3D表示面1の距離が十分あるときには、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56のずれが小さくポインター像の左眼用表示点72と右眼用表示点73はほぼ水平になるので、視聴者がポインター像を立体視する上で困難はない。
【0072】
しかし、3D表示面1の脇あるいは講演台の後にいる講演者がポインターデバイス51を持って直接操作することにより、視聴者に3D表示されたポインター像を観察させるようにする場合は、上記の構成を持ったポインターデバイス51では、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56を結ぶ線が3D表示面1に対して傾き左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56からスクリーンまでの距離に差異が生じるため、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56が水平に配置されても、ポインター像の左眼用表示点72と右眼用表示点73が上下方向にずれて、視聴者がポインター像を立体視することが困難になる場合がある。
【0073】
このため、ポインターデバイスは、3D表示面1の脇で操作しても、3D表示面1におけるポインター像の左眼用表示点72と右眼用表示点73が水平に配置されるようにする水平維持機構を備えることが好ましい。
図13は、このような水平維持機構の1例について説明する平面図である。ポインターデバイス80は、ジャイロスコープ81と平行リンク機構82を備える。
ジャイロスコープ81は、ジャイロの姿勢維持軸を水平かつ3D表示面1と平行に維持させ、これと左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56を結ぶ線が平行になるように構成する。なお、ジャイロスコープは、機械式、振動式、光学式など各種あるが、いずれを使用してもよい。
【0074】
さらに、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56は発光部同士をリンク83で回動可能に結合し、左眼用レーザ発生器55の器軸84と右眼用レーザ発生器56の器軸85及びふたつの器軸の端部同士を回動可能に結合したリンク86とで、平行リンク機構82を構成する。平行リンク機構82は、左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56を結ぶ線を軸として回動させること、また端部同士を結合したリンク86を左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56を結ぶ線に対して水平方向に振ることができ、これらを操作することにより、レーザ光52,53を平行を維持したまま適宜の方向に射出させることができる。なお、レーザ光52,53の射出方向はプリズム57などで偏向させることができる。
【0075】
このように構成されたポインターデバイス80により、3D表示面1に形成されるポインター像の左眼用表示点72と右眼用表示点73は、常に水平に並ぶため、視聴者がポインター像を立体視することができる。
なお、ジャイロスコープ81に代えて、水平かつ3D表示面1と平行にスライド軸を設置して利用してもよい。このスライド軸に左眼用レーザ発生器55と右眼用レーザ発生器56を結ぶ線が平行になるように支持される平行リンク機構82を備えて、レーザ光52,53の3D表示面1上の投影位置を平行を維持することができる。
【0076】
本実施例の3Dポインター装置を使用すれば、講演者等は、ポインターデバイス51から投射する2本のレーザ光線52,53の3D表示面1上の照射位置を操作して、ポインター像を3D映像中の選択する場所に所望の奥行きで表示させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の3Dポインター装置を用いることにより、大型の3D表示装置を利用して3D映像を使って講演や説明をしようとする講演者などが、的確かつ容易に映像中の3D位置を指示するポインターを表示させることができる。また、遠隔の表示装置にも同じポインター像を記入した映像をリアルタイムで表示することができるので、より大勢の視聴者に同時に説明を行うことができる。
なお、本発明の3Dポインター装置を用いることにより、映像中の領域を指示する場合にポインターをせわしなく動かして意思を表現する代わりに、指示したい領域を表示するポインターを使用して、安定した表示をすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 3D表示面
2 アドレス空間
3 左右眼用3D映像
4 3D映写装置
5 3D映像サーバ
6 ポインターデバイス
7 レーザ光照射位置
8 ポイント位置検出装置
9 3D眼鏡
10 ポインター像
11 画面枠隅点
12 フィルタ
13 分配器
14 ネットワーク
15 遠隔地表示装置
16 カメラ撮像出力面
17 3D映像再生機
21 ポイント用レーザ
22 ポイント用ボタン
23 ポイント用レーザ光
24 校正用レーザ
25 校正用ボタン
27 校正用レーザ光
28 ポインター奥側位置指定ボタン
29 ポインター手前側位置指定ボタン
30 タッチパッド
31 ポイント領域大きさ指定方向
32 ポインター表示モード指定ボタン
33 領域図形選択ボタン
34 ポイント位置設定ボタン
41 タッチパネル式3D表示面
42 領域制御パッド
43 奥行きパッド
44 機能ボタン
45 タッチパネル用ペン
46 キーボード
51 ポインターデバイス
52 左眼用レーザ光
53 右眼用レーザ光
54 フィルタ
55 左眼用レーザ発生器
56 右眼用レーザ発生器
57 プリズム
58 ポインター像
61 ボイスコイル
62 直流電源
63 駆動信号源
64,65 ボイスコイル
66 基板
67 ガイドレール
68 錘
71 遠隔操作器
72 ポインター像の左眼用表示点
73 ポインター像の右眼用表示点
80 ポインターデバイス
81 ジャイロスコープ
82 平行リンク機構
83 リンク
84,85 レーザ発生器の器軸
83 リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右視差を利用した3D表示面を有する3D表示器と、左眼用映像信号と右眼用映像信号を使って前記3D表示面に3D映像を映写する3D映写装置とを含んで構成される3D映像表示装置に適用する3Dポインター装置であって、前記3D表示面内に表示すべきポインター像の表示位置を指定する機能を備えたポインターデバイスと、前記3D表示面における左眼用のポインター像と右眼用のポインター像との距離を調整して前記ポインター像が表示される奥行き位置を指定する奥行き指示装置と、前記3D表示面に表示された前記ポインター像の3D位置を検出するポイント位置検出装置と、前記3D表示面に表示するポインター像に係る3D映像信号を生成する3Dポインター映像信号生成装置と、前記ポインター像に係る3D映像信号を入力して前記3D表示面に映写する元の映像に係る3D映像信号と混合して映写用3D映像信号を合成し前記3D映写装置に供給する映像供給装置と、を備える3Dポインター装置。
【請求項2】
さらに、前記映写用3D映像信号を通信ネットワークに分岐する分配器を備えて、該通信ネットワークに接続された3D映像表示装置に前記ポインター像と前記3D表示面に映写する元の映像とを合成した映像を表示させることを特徴とする請求項1記載の3Dポインター装置。
【請求項3】
前記ポイント位置検出装置が撮影する画面内の前記3D表示面の部分をアドレス空間として画定しておいて、前記ポインター像の3D位置を該アドレス空間に係る座標系で表すことを特徴とする請求項1または2記載の3Dポインター装置。
【請求項4】
前記3D表示面は映像の偏光面を維持するシルバースクリーンであって、前記ポインターデバイスが前記3D表示面に光点を形成し、前記ポイント位置検出装置がCCDカメラであって、前記3D表示面を撮影して前記光点の位置を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の3Dポインター装置。
【請求項5】
前記3D表示面に表示すべきポインター像の表示位置を指定する光線が可視光線であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の3Dポインター装置。
【請求項6】
前記3D表示面に表示すべきポインター像の表示位置を指定する光線が非可視光線であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の3Dポインター装置。
【請求項7】
前記3D表示面に表示するポインター像の形状と大きさが選択できることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の3Dポインター装置。
【請求項8】
3D表示面を有する3D表示器と前記3D表示面に3D映像を映写する3D映写装置とを含んで構成される3D映像表示装置に適用する3Dポインター装置であって、
対象とする映像を表示するタッチパネル式表示面と演算部とを備え、
該表示面が、ポインター像の形状の大きさを指定する領域制御パッドの部分と、ポイント位置の奥行きを指定する奥行きパッドの部分と、ポインター表示モード指定、領域図形選択、ポイント位置設定を含む機能を有する機能ボタンの部分とを備え、
前記演算部が、前記領域制御パッド、奥行きパッド、機能ボタンを介して指令されたポインター像を前記表示面に前記対象とする映像と重ねて表示させると共に、前記ポインター像と前記対象とする映像を混合した3D映像の映写用3D映像信号を合成し前記3D映写装置に供給する3Dポインター装置。
【請求項9】
前記タッチパネル式表示面は3D映像を表示することを特徴とする請求項8記載の3Dポインター装置。
【請求項10】
前記タッチパネル式表示面は2D映像を表示することを特徴とする請求項8記載の3Dポインター装置。
【請求項11】
3D映像を表示する3D表示装置の3D表示面において左右眼立体視用にそれぞれ表示される2個の光線を使って3D表示面に光点を3D投映する3Dポインター装置であって、2個の光放射装置と少なくとも1個の光偏向器を備え、該光偏向器が少なくとも一方の光線の光路を偏向させて前記3D表示面に現れる該光線による光点と他方の光線による光点との距離を調整することにより、前記3D画面上のポインター像に当たる光点の奥行き位置を調整して、左右眼立体視したときの該光点の3D位置を指定できるようにした3Dポインター装置。
【請求項12】
前記3D表示装置は時分割方式で前記3D表示面に3D映像を表示するものであり、前記2個の光照射装置は前記3D表示装置と同期した駆動信号に従って前記2個の光線を交互に放射する、請求項11記載の3Dポインター装置。
【請求項13】
前記3D表示装置は偏光フィルタ方式で前記3D表示面に3D映像を表示するものであり、前記2個の光照射装置はその放射光路中に前記3D表示装置と同じ偏光面を備えた偏光フィルタを備えて、前記2個の光線を該偏光フィルタを透過させる、請求項11記載の3Dポインター装置。
【請求項14】
さらに、姿勢維持機構を備え、該姿勢維持機構により前記2個の光照射装置の光線放射位置が水平に並ぶようにする、請求項11から13のいずれか1項に記載の3Dポインター装置。
【請求項15】
前記姿勢維持機構は、左眼用レーザ発生器と右眼用レーザ発生器を結ぶ線分を水平かつ3D表示面と平行に維持させるために用いるジャイロスコープと、該線分を軸として回動し前記左眼用レーザ発生器の器軸の端部と前記右眼用レーザ発生器の器軸の端部を結合したリンクを前記線分に対して水平方向に振ることができる平行リンク機構を備える、請求項14記載の3Dポインター装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−90102(P2012−90102A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235549(P2010−235549)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(594044646)株式会社エヌエイチケイメディアテクノロジー (20)
【出願人】(395011218)エフ・エーシステムエンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】