3D映像表示装置、および3D映像表示装置の動作方法
【課題】従来の3D映像表示におけるクロストークの発生低減技術には、液晶ディスプレイ特有のクロストーク発生原因(画素毎の液晶シャッターの開閉量の差による表示タイミングのずれを原因とするクロストークの発生)が考慮されておらず、その点を解消するような構成が提供されていない、という課題がある。
【解決手段】以上の課題を解決するために、本発明は、3D映像のフレーム情報から取得した、例えば画像内のコントラスト情報や右目用フレームと左目用フレーム間の輝度差情報などをもとにクロストークが発生しそうかを判断し、発生しそうなコントラストや画像間輝度差であれば液晶シャッターの移動速度の差を抑えるような輝度分布とすることでクロストークの発生を低減することのできる3D映像表示装置を提供する。
【解決手段】以上の課題を解決するために、本発明は、3D映像のフレーム情報から取得した、例えば画像内のコントラスト情報や右目用フレームと左目用フレーム間の輝度差情報などをもとにクロストークが発生しそうかを判断し、発生しそうなコントラストや画像間輝度差であれば液晶シャッターの移動速度の差を抑えるような輝度分布とすることでクロストークの発生を低減することのできる3D映像表示装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D映像表示における左右映像間の干渉現象、いわゆるクロストークの発生を抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3D映像を表示するための表示技術が様々提供されており、そのうちの一技術としてシャッター眼鏡などを利用したフレームシーケンシャル方式がある。このフレームシーケンシャル方式では1フレームを2分轄し、視差を有する左目用フレームと右目用フレームとをディスプレイ上に交互に表示し、それに同期してシャッター眼鏡の右目と左目のシャッターを交互に開閉させることで、左目用フレームと右目用フレームを視聴者の左右の目に交互に入力するよう構成されている。
【0003】
しかしこのようなフレームシーケンシャル方式の3D映像表示において、左目用フレームと右目用フレームとが厳密に区別されず、例えば左目用フレームの一部に右目用フレームが混入した状態で視聴者の左目に画像が入力されてしまうといったいわゆる「クロストーク」が発生することがある。この原因としては、表示装置にて画像を表示する際に、画像を横方向のラインで分轄して上から1ラインずつ描画することで画像表示を行っているため、左目用フレームを描画中であっても下部のラインではその前の右目用フレームが残ってしまっていることなどが挙げられる。
【0004】
そして、上記3D映像表示時のクロストークの発生を抑えるために、以下のような技術が提供されている。例えば、特許文献1には、液晶ディスプレイを上記ラインに沿って複数のブロックに分け、それぞれのブロックにおけるバックライトの点灯タイミングを適宜調整し、前記左目用フレームを描画中に下部ラインに残っている前の右目用フレームが表示されないようにすることでクロストークの発生を低減させる技術が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、これから表示しようとする例えば左目用フレームのRGB値から、直前の映像信号の残光量に相当する信号量分の値(予め測定などで定められた値)を減算することでクロストークの発生を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−276928号公報
【特許文献2】特開2000−134644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の3D映像表示におけるクロストークの発生低減技術には、以下のような液晶ディスプレイ特有のクロストーク発生原因が考慮されておらず、その点を解消するような構成が提供されていない、という課題がある。
【0008】
すなわち液晶ディスプレイでは、バックライトを光源とし、その前に配置された液晶シャッターの開閉角度を調節することで各画素の輝度値を再現し画像を表示している。そしてこの液晶シャッターの開閉角度調節は、輝度0(全閉)から輝度255(全開)に調節する場合に最もシャッターの回転量が大きくなる。そのため、同じ画像内で輝度差の大きな領域が存在すると各領域間で液晶シャッターの回転量に差が生じる可能性があり、結果として輝度の高い領域は低い領域と比較して今の画像が表示されるタイミングが遅くなる可能性がある。そのため輝度の高い領域には前の画像が残ることになり、クロストークが発生しやすくなる。
【0009】
あるいは連続する左目用フレームと右目用フレームとの間で輝度差の大きな画素や領域が存在すると、その画素や領域での液晶シャッターの回転量がやはり大きくなるため、前の画素輝度から今の画素輝度への切り替えに時間がかかり、やはりクロストークが発生しやすくなる。
【0010】
そしてこのような液晶シャッターの開閉スピードの差などを原因として発生するクロストークの低減については、上記特許文献1や2をはじめとする従来の技術では解決されていない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明は、3D映像のフレーム情報から取得した、例えば画像内のコントラスト(輝度差)情報や右目用フレームと左目用フレーム間の輝度差情報などをもとにクロストークが発生しそうかを判断し、発生しそうな画像内コントラストや画像間輝度差であれば、その輝度差がなくなるように当該輝度を調整することでクロストークの発生を低減することのできる3D映像表示装置を提供する。
【0012】
具体的には、液晶ディスプレイ部と、前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得部と、取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断部と、判断部での判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力部と、を有する3D映像表示装置を提供する。
【0013】
また、画像内のコントラストを示す輝度ヒストグラムを利用してクロストークが発生しそうかを判断する3D映像表示装置として、前記判断部が、フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得手段と、を有し、取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断する3D映像表示装置も提供する。
【0014】
また上記構成に加えて、前記判断部の階調取得手段が、さらに所定輝度値以上の第一輝度ピクセル積分値を求める第一算出手段と、前記第一輝度ピクセル積分値が所定値以上である場合に、所定輝度値以下の第二輝度ピクセル積分値を求める第二算出手段と、前記第二輝度ピクセル積分値と第一輝度ピクセル積分値が所定の関係にあるか判断する判断手段と、を有し、判断結果が所定の関係にあるとの判断結果である場合にクロストークが発生しそうであると判断する3D映像表示装置も提供する。
【0015】
また、右目用フレームと左目用フレームとの間の輝度差情報を利用してクロストークが発生しそうかを判断する3D映像表示装置として、前記判断部が、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断手段を有し、輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断する3D映像表示装置も提供する。
【0016】
また、上記構成によりクロストークが発生しそうと判断された場合に出力されるクロストーク低減命令に応じて階調ダイナミックレンジを狭める階調狭化部をさらに3D映像表示装置も提供する。そしてその階調狭化部が、階調ダイナミックレンジを狭くする際に、輝度ヒストグラムの階調成分を主に圧縮する圧縮手段を有する3D映像表示装置も提供する。また、圧縮手段によって圧縮がされた画像領域に対応するディスプレイの領域のバックライトの輝度を高めるバックライト輝度高化部をさらに有する3D映像表示装置も提供する。
【0017】
また、このような3D映像表示装置の動作方法も合わせて提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上のような構成をとる本発明によって、画像表示に際して一画面内の各画素における液晶シャッター開閉のための回転量のずれなどを抑えることでき、時間をかけずに前の画像から今の画像への切り替えを素早く行うことができる。したがって、前の画像の残像を残すことがなくクロストークの発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の3D映像表示装置におけるクロストーク発生判断処理の一例を説明するための図
【図2】実施例1の3D映像表示装置におけるクロストーク低減のための処理の一例を説明するための図
【図3】実施例1の3D映像表示装置における機能ブロックの一例を表す図
【図4】実施例1の3D映像表示装置における液晶ディスプレイ部における液晶シャッターの配向の一例を表す図
【図5】実施例1の3D映像表示装置におけるヒストグラム取得部にて取得された輝度ヒストグラムの一例を表す図
【図6】実施例1の3D映像表示装置における階調狭化部での階調ダイナミックレンジを狭める処理の一例を表す図
【図7】実施例1の3D映像表示装置における圧縮手段での各階調成分の圧縮処理の一例を説明するための図
【図8】実施例1の3D映像表示装置におけるハードウェア構成の一例を表す図
【図9】実施例1の3D映像表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図10】実施例1の3D映像表示装置のクロストーク発生判断における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図11】実施例1の3D映像表示装置のクロストーク低減命令出力における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図12】実施例2の3D映像表示装置における機能ブロックの一例を表す図
【図13】実施例2の3D映像表示装置の輝度差分値判断手段での判断処理の一例を説明するための概念図
【図14】実施例2の3D映像表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施例1は、主に請求項1,2,3,5,6,7,8、そして請求項9,10,12,13,15について説明する。また、実施例2は、主に請求項4,11,14について説明する。
【0021】
≪実施例1≫
<概要>
本実施例は、表示する画像がクロストークの発生しやすい「画像内コントラストが比較的高い画像」であるか否かを輝度ヒストグラムから判断し、コントラストの高い画像であればクロストークの発生しにくいレベルまで輝度の階調ダイナミックレンジを狭める処理を行うことを特徴とする3D映像表示装置である。
【0022】
図1および図2は、本実施例におけるクロストーク発生判断、およびクロストーク低減のための処理の一例を説明するための図であり、ある画像を液晶ディスプレイに表示した際の輝度ヒストグラムを表す図である。この図1(a)にあるように、横軸を輝度、縦軸を画素数とした際の輝度ヒストグラムに関して、最小値と最大値の間隔(階調ダイナミックレンジ)Aが閾値α以上ある。つまり、この画像は低い輝度の画素と高い輝度の画素が多数混在する、いわゆる「コントラストの高い画像」になっている。そのため、前述の通り低輝度画素と高輝度画素の間で液晶シャッターの開閉時間に差が生じる可能性があり、結果として前の画像(例えば右目用フレーム)と次の画像(左目用フレーム)とがディスプレイ上で混在する状態が生まれる。したがって輝度ヒストグラムがこのような分布を示す場合は、クロストークが発生する可能性があると判断することができる。
【0023】
一方、図1(b)に示すように、別の画像の輝度ヒストグラムもある程度のコントラストを有すると思われるものの、その階調ダイナミックレンジBは閾値α以下であり、この画像はコントラストの比較的低い画像になっている。そのため、各画素の間で液晶シャッターの開閉時間にあまり差が生じず、クロストークが発生する可能性が低いと判断することができる。
【0024】
そしてクロストークが発生する可能性があると判断された場合は、そのクロストークを低減するため、例えば図2に示すように、輝度の階調ダイナミックレンジを狭め、ヒストグラムの階調ダイナミックレンジが閾値α以下になるように調整する、という具合である。
【0025】
このようにして、クロストークの発生する可能性の大きい「コントラストの高い画像」を表示する場合には、例えば輝度の階調ダイナミックレンジを狭くすることでコントラストを下げ、クロストークの発生を抑えた画像を表示するようにできる。
【0026】
<機能的構成>
図3は、本実施例の3D映像表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。なおこの3D映像表示装置は、チューナなどを備えるテレビジョン受像機に組み込まれ、チューナにて受信した3D放送番組の映像を表示したり2D放送番組の映像を3D映像変換して表示したりするものであっても良い。あるいはモニタ装置やレコーダ装置、映像プレーやなどに組み込まれても良い。そして以下に記載する本装置の機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUや主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、情報入力に利用される入力デバイス、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザ・インターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。
【0027】
そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本装置の機能ブロックは専用ハードウェアによって実現されてもよい。
【0028】
また、この発明は装置として実現できるのみでなく、装置の動作方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0029】
そして、この図3にあるように、本実施例の3D映像表示装置0300は、液晶ディスプレイ部0301と、フレーム情報取得部0302と、判断部0303と、低減命令出力部0304と、を有する。
【0030】
液晶ディスプレイ部0301は、液晶シャッターと光源を利用して映像を表示する機能を有し、例えば、液晶パネルやバックライト、それらの制御回路などで実現することができる。図4は、この液晶ディスプレイ部における液晶シャッターの配向の一例を表す図である。この図4にあるように、画素αの輝度が0である場合、その液晶シャッターは閉じた状態である。一方、輝度255の画素βの液晶シャッターは開放された状態である。このように各画素の輝度が大きく異なる画像(すなわちコントラストの比較的高い画像)の場合、液晶シャッターの配向が大きく異なるため、それぞれの配向制御にかかる時間にずれが生じる可能性が高くなる。したがって、3D映像用の画像を表示する際には、そのずれの部分で前の画像(例えば左目用フレーム)と次の画像(右目用フレーム)とがあるタイミングで混在しやすくなり、クロストークが発生しやすい、という具合である。
【0031】
フレーム情報取得部0302は、前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得する機能を有し、例えばI/Oやデコーダ、フレームメモリ、フレーム情報取得プログラムなどによって実現することができる。なおフレームとは、3D映像の表示に際して所定単位時間ごとにディスプレイに順次表示される左目用および右目用の1のコマ画像をいい、フレーム情報としては、その1のコマ画像を表示するためのRGB値やYUV値などが挙げられる。
【0032】
そしてこのフレーム情報取得部では、映像入力用の回路などを介して取得した3D映像をデコーダで復号し、そのようなフレーム情報を取得する、という具合である。なお、3D映像データの取得元については特に限定せず、例えばテレビチューナにて受信したテレビ放送波に含まれる3D映像データであっても良いし、HDDなどの磁気記録媒体やDVDなどの光学記録媒体に記録されている3D映像データであっても良いし、インターネット上のサーバ装置から配信される3D映像データであっても良いし、それ以外の取得元から取得される構成であっても良い。
【0033】
判断部0303は、取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、判断プログラムによって実現することができる。
【0034】
この判断部での判断処理については、前述の通り液晶シャッターの開閉にかかる時間のずれがどの程度あるかに応じてクロストークが発生するかの判断を行うことができる。そしてそのために、一の画像内での各画素間の輝度差を判断材料としても良いし、連続する左目用フレームと右目用フレームとの同一画素間での輝度差を判断材料としても良い。
【0035】
本実施例では、一の画像内での各画素間の輝度差を判断材料としたクロストーク発生有無の判断を行う3D映像表示装置について説明する。この場合、判断部は、さらにヒストグラム取得手段と階調取得手段を有する。
【0036】
ヒストグラム取得手段は、フレームの輝度ヒストグラムを取得する機能を有し、CPUや主メモリ、ヒストグラム取得プログラムなどで実現することができる。図5(a)は、取得された輝度ヒストグラムの一例を表す図である。この図にあるように、例えば輝度の分解能に応じた輝度値ごと(分解能が8ビットならば輝度値0から255ごと)に、その画素数をカウントすることでフレームの輝度ヒストグラムを取得することができる。なおこの輝度ヒストグラム取得に関する具体的な処理方法は、従来技術にあるものを利用すると良い。例えば全画素についてカウントするのではなく、縦軸の画素あるいは横軸の輝度を間引いてカウントするなどしても良い。
【0037】
階調取得手段は、取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する機能を有し、CPUや主メモリ、階調取得プログラムなどによって実現することができる。「階調ダイナミックレンジ」とは、フレーム内に存在する輝度値の範囲を示す情報であり、この階調ダイナミックレンジが大きければ、いわゆる「コントラストの高い画像」である可能性があり、クロストークが発生しやすいと判断することができる。
【0038】
具体的には、例えば所定階調のヒストグラムにおいて、画素数が所定数以上の輝度の最大値と最小値(以下、この画素数が所定数以上の輝度の最大値と最小値を最大輝度値、最小輝度値という)との差分値や差分比率などで示される情報などが挙げられる。なお本件出願人らが官能検査を行ったところ、階調ダイナミックレンジを「[(最大輝度値−最小輝度値)/階調でとり得る輝度の最大値]*100」で表される比率が70%以内の画像であればクロストークの発生がほとんど確認されなかった。そこで本実施例では階調ダイナミックレンジによるコントラスト判断基準として比率70%を用いることとするが、もちろん、本件発明においてその値は限定されない。また、階調ダイナミックレンジを求めるための画素数の閾値となる所定数も適宜定められて良く、例えば1以上であれば少なくとも輝度差の大きな画素が存在するためクロストークの発生する可能性があるとしても良いし、全画素数に対する割合で所定数を定めても良い。
【0039】
そして、クロストークが発生しそうかの一つの判断方法として、上記のように階調ダイナミックレンジが所定の70%など以上であれば「コントラストの高い画像」である可能性があり、クロストークが発生しやすい、と判断する方法が挙げられる。
【0040】
また輝度最大値と最小値のみで階調ダイナミックレンジを判断するのではなく、所定輝度以上/以下の画素の個数(ピクセル積分値)をカウントすることで階調ダイナミックレンジ(輝度値の範囲)の取得、判断を行い、クロストークが発生しそうか否か判断しても良い。具体的に本実施例の3D映像表示装置の階調取得手段は、さらに第一算出手段と、第二算出手段と、判断手段と、を有する。
【0041】
第一算出手段は、第一の所定輝度値以上の第一輝度ピクセル積分値を求める機能を有する。具体的に、例えば図5(b)に示すような輝度最小値0であり輝度最大値輝度228のヒストグラム(8ビット階調)が取得される。そしてこの輝度ヒストグラムにおいて、例えば第一の所定輝度値179をとる画素の数(右側の斜線部分)をカウントする。なお、この第一の所定輝度値は、8ビット階調で最小輝度値を0とした場合に階調ダイナミックレンジが前述の「70%」となる輝度値である。もちろん、この所定輝度値は任意に設定されて良い。
【0042】
そして、カウントした第一輝度ピクセル積分値で示される高輝度成分の画素数が任意の所定個数以上であれば、画像内に高輝度成分が多く含まれているとして、次の第二算出手段による低輝度成分の画素数カウント処理を実行する。また、第一輝度ピクセル積分値が所定個数以下であれば、画像内の高輝度成分は少なくクロストークは発生しにくいとして以下の処理は実行しない。
【0043】
第二算出手段は、前記第一輝度ピクセル積分値が所定値以上である場合に、第二の所定輝度値以下の第二輝度ピクセル積分値を求める機能を有する。これは第二の所定輝度値が第一の所定輝度値よりも低く低輝度側の処理であること以外は、基本的に第一算出手段と同様の処理を実行する。具体的には、8ビット階調で最大輝度値を255とした場合に階調ダイナミックレンジが前述の「70%」となる輝度値76を第二の所定輝度値として、例えば図5(b)に示す輝度ヒストグラムの情報から輝度値が76以下の画素数(左側の斜線部分)をカウントし第二輝度ピクセル積分値を算出する。
【0044】
判断手段は、前記第二輝度ピクセル積分値が所定値以上であるか判断する機能を有する。このように、その第二輝度ピクセル積分値で示される低輝度成分の画素数が、任意の所定個数(第一輝度ピクセル積分値におけるものと同一の個数でも異なる個数でも良い)以上であれば、この画像内には高輝度成分と低輝度成分が多く含まれており、したがって階調ダイナミックレンジが大きいためクロストークが発生しそうであると判断する、という具合である。
【0045】
なお、上記判断においては、第一輝度ピクセル積分値の大小判断結果による分岐後に第二輝度ピクセル積分値を算出し大小判断処理を実行する構成を例としてあげているが、例えば第一輝度ピクセル積分値と第二輝度ピクセル積分値を算出したあと、それぞれの大小判断を行い、AND条件やOR条件で大小判断結果を場合分けしクロストークが発生しそうか否か判断するといった構成などであっても良い。
【0046】
低減命令出力部0304は、判断部での判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、低減命令出力プログラムによって実現することができる。
【0047】
この低減命令によるクロストーク低減処理としては、例えば液晶シャッターを駆動し画像を液晶ディスプレイ上に描画中であるタイミングではバックライトをオフにし、液晶シャッターの駆動が完了してからバックライトを点灯するといった処理が挙げられる。その場合には、低減命令は液晶シャッター駆動に合わせたバックライトのオン/オフ制御命令などとすると良い。
【0048】
また前述のとおり、液晶シャッターの特性から階調ダイナミックレンジが所定範囲内(例えば最小輝度値と最大輝度値の差が比率で70%以下など)であれば、クロストークが発生しにくいことが官能検査などで確認できる。そこで、画像のダイナミックレンジを狭くする調整命令をクロストーク低減命令として、当該低減処理を実行しても良い。
【0049】
具体的に、本実施例の3D映像表示装置はさらに階調狭化部を有していても良い。階調狭化部は、クロストーク低減命令に応じて階調ダイナミックレンジを狭める機能を有し、例えばCPUや主メモリ、階調狭化プログラムなどによって実現することができる。具体的に、図6に示すように、破線で示す元の輝度ヒストグラムの最大階調側の画素の輝度値を所定割合分だけ下げ、又は及び最小階調側の輝度の画素の輝度値を上げる処理を行うことで階調ダイナミックレンジを狭める処理が挙げられる。
【0050】
また、この階調狭化部は、上記のように最大/最小階調側の輝度の画素の輝度値のみ調整するのではなく、輝度ヒストグラムの各階調成分を主に圧縮する圧縮手段をさらに備えていても良い。図7は、この各階調成分の圧縮処理の一例を説明するための図である。この図にあるように、圧縮手段では、例えば各画素の輝度値に重み付け係数を掛けることでヒストグラム全体を低輝度方向に圧縮する、という具合である。なお、この重み付け係数は適宜設定されれば良く、例えば、前述の通り好適な階調ダイナミックレンジが70%であれば、重み付け係数を「0.7」として階調ダイナミックレンジが70%以下に納まるように設定しても良い。あるいは最大輝度値が228であれば、階調ダイナミックレンジを70%とするために、「179(所定値)/228(最大輝度値)」などの演算式によって重み付け係数が算出されるよう構成しても良い。なお、この演算式の所定値は、前述の通り8ビット階調で最小輝度値を0とした場合に階調ダイナミックレンジが「70%」となる輝度値である。
【0051】
なお、上記例では輝度ヒストグラムを低輝度方向(重み付け係数が1.0以下)に圧縮しているが、階調ダイナミックレンジが狭くなるように高輝度方向(重み付け係数が1.0以上)に圧縮する処理を行っても良い。
【0052】
以上のようにして、液晶ディスプレイに表示する画像に関して輝度ヒストグラムの階調ダイナミックレンジからクロストークが発生しそうであるか否かを判断し、当該画像がクロストークの発生しそうな「コントラストの高い画像」であれば、階調ダイナミックレンジを狭くするような処理を行うことでクロストークの発生を低減することができる。
【0053】
また、上記において階調ダイナミックレンジを圧縮し狭くする処理を行う場合、表示画像全体の輝度が低下してしまう可能性がある。そこで本実施例の3D映像表示装置は、さらにバックライト輝度高化部を有していても良い。
【0054】
バックライト輝度高化部は、圧縮手段によって圧縮がされた画像領域に対応するディスプレイの領域のバックライトの輝度を高める機能を有し、バックライト制御回路やバックライト輝度高化プログラムなどによって実現することができる。具体的に、このバックライト輝度高化部では、バックライト全体の輝度を所定の重み付け係数分上げる処理を行う。例えば通常時のバックライトの輝度を最大の80%として、前記圧縮処理を行った場合にはバックライト輝度を100%に制御する、という具合である。あるいは、同様に通常時のバックライト輝度を80%として、前記圧縮処理を行った場合には最大輝度値(例えば228)に基づいて、「80+20*(228/255)」などの演算式によりそのバックライトの輝度の高化制御割合を決定しても良い。
【0055】
また、バックライトが領域ごとに制御可能であれば、高輝度部分については輝度の圧縮幅が大きいので高い輝度となるようバックライトを制御するよう構成しても良い。なおその場合には、輝度値が圧縮された画素の位置情報などを取得し、その位置情報を元にして制御するバックライトを特定するよう構成すると良い。また圧縮手段によって階調成分が低輝度方向ではなく、前述のように高輝度方向に圧縮される場合(重み付け係数が1.0以上の場合)は、逆にバックライト輝度を低くするよう制御すると良い。
【0056】
<ハードウェア構成>
図8は、上記機能的な各構成要件をハードウェアとして実現した際の、3D映像表示装置における構成の一例を表す概略図である。この図を利用してクロストーク低減処理におけるそれぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。
【0057】
この図にあるように、3D映像表示装置は、判断部及び低減命令出力部であり、またその他の各種演算処理を実行するためのCPU0801と、主メモリ0802と、を備えている。また3D映像が入力される映像入力I/O0803や液晶ディスプレイ部である液晶ディスプレイ0804や映像処理回路0805、各種データやプログラムなどを保持するHDD0806、ユーザからの操作入力を受付ける入力デバイス0807などを備えている。そしてそれらがシステムバスなどのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0058】
また、主メモリにはプログラムが読み出され、CPUは読み出された当該プログラムを参照し、プログラムで示される手順に従い各種演算処理を実行する。また、この主メモリやHDDにはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、CPUの演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0059】
ここで、CPUはフレーム情報取得プログラムを解釈し、それにしたがって3D映像データを、例えばテレビ放送であれば図示しないチューナを介して取得し、あるいは光学記録媒体に記録されたものであれば別途外部再生装置などで再生されたものを映像入力I/Oを介して取得し、主メモリや、図示しないグラフィック用メモリなどに格納する。つづいて当該3D映像データが圧縮符号化されたものであるとして、図示しないデコーダによって復号化処理を行い、ディスプレイに表示すべきフレームの各画素のRGB値を取得する。
【0060】
つづいてCPUはヒストグラム取得プログラムを解釈し、当該プログラムで示されるRGB値を輝度値Yに変換するための所定の演算式、例えば「Y=0.299R+0.587G+0.114B」などを利用した演算処理によって各画素の輝度値Yを算出し「主メモリ」のアドレス1などに格納する。そして、CPUは算出した輝度値に基づいて輝度ごとの画素数をカウントし、輝度ヒストグラムとして主メモリのアドレス2などに格納する。
【0061】
次にCPUは、階調取得プログラムを解釈し、その解釈結果に従って画素数が所定個数、例えば10個以上の輝度値の中で最大の輝度値YMAXと最小の輝度値YMINを特定する。そして輝度階調が8ビット(最大階調が256)として「[(YMAX−YMIN)/256]*100」を演算し、階調ダイナミックレンジを比率として算出する。そして算出された値が当該プログラムやユーザ指定などで定められる閾値、例えば70%以上であるかの判断処理をCPUの演算によって実行する。ここで70%以下との判断結果であればクロストークはほとんど発生しないとして、クロストーク低減に係る処理は行わず、取得したフレームの各画素のRGB値に基づく右目用フレームまたは左目用フレームを、映像処理回路を介して液晶ディスプレイに表示する。一方70%以上との判断結果であれば、CPUはクロストークが発生しそうとの判断結果を出力する。
【0062】
また、上記のような輝度最大値と最小値のみを利用した階調ダイナミックレンジの判断処理ではなく、以下のような処理を行っても良い。すなわちCPUは、別の階調取得プログラムに含まれる第一算出プログラムを解釈し、その解釈結果にしたがって例えばプログラムなどで定められる/演算によって算出される高輝度側の第一の所定輝度値179以上の輝度値の画素数をカウントし、主メモリのアドレス3などに第一輝度ピクセル積分値として格納する。そして、その値が所定個数以上であるか否かの大小判断処理をCPUの演算処理にて実行し、第一輝度ピクセル積分値が所定個数よりも多いとの判断結果である場合、つづいてCPUは第二算出プログラムを解釈する。
【0063】
そしてその解釈の結果にしたがって、CPUは低輝度側の第二の所定輝度値76以下の輝度値の画素数をカウントし、主メモリのアドレス4などに第二輝度ピクセル積分値として格納する。そして、その値が所定個数以上であるか否かの大小判断処理をCPUの演算処理にて実行し、第二輝度ピクセル積分値が所定個数よりも多いとの判断結果である場合、クロストークが発生しそうであるとの判断結果を出力する。
【0064】
そして、クロストークが発生しそうとの判断結果が出力された場合には、CPUは低減命令出力プログラムを解釈し、その解釈結果にしたがってクロストーク低減命令を生成する。具体的には、例えば主メモリのアドレス1などに格納されている各画素の輝度値Yに対して、階調ダイナミックレンジを圧縮するための所定の重み付け係数0.7や別途演算によって算出された重み付け係数を掛け合わせる処理をCPUの演算によって実行する。そして、そのようにして算出された輝度値をもとに各画素のRGB値を再計算し、そのRGB値を映像処理回路に出力する。すると映像処理回路において、本来よりも階調ダイナミックレンジが圧縮された右目用フレームまたは左目用フレームのフレームが描画され、液晶ディスプレイに表示される、という具合である。
【0065】
また、それに合わせてCPUはバックライト輝度高化プログラムを解釈し、その解釈結果に従ってバックライト輝度を当初の80%から100%に向上させるなどの命令を図示しないバックライトの制御回路に出力しても良い。
【0066】
<処理の流れ>
図9は、本実施例の液晶ディスプレイ部を有する3D映像表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし、媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。
【0067】
この図にあるように、ステップS0901では前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得すると、ステップS0902では取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する。そして判断ステップでの判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合には、ステップS0903ではクロストーク低減命令を出力する。
【0068】
図10は、上記ステップS0902におけるクロストーク発生有無の判断におけるより詳細な処理の流れの一例を表すフローチャートである。この図にあるように、前述のステップS0901で取得したフレーム情報をもとに、ステップS1001では輝度ヒストグラムを取得し、ステップS1002では高輝度側の第一所定輝度以上の輝度値を取る画素の数をカウントし第一輝度ピクセル積分値Z1を算出する。そしてステップS1003では算出した第一輝度ピクセル積分値Z1が所定個数以上であるか判断し、Yesとの判断結果である場合には、つづいてステップS1004では低輝度側の第二所定輝度以上の輝度値を取る画素の数をカウントし第二輝度ピクセル積分値Z2を算出する。そしてステップS1005では算出した第一輝度ピクセル積分値Z2が所定個数以上であるか判断し、Yesとの判断結果である場合には、ステップS1006ではクロストークが発生しそうであるとの判断結果を出力する。
【0069】
また図11は、クロストーク低減命令の出力に応じたクロストーク低減処理の流れの一例を表すフローチャートである。この図にあるように、前述のステップS0903にてクロストーク低減命令が出力されるとステップS1101では重み付け係数が取得される)。そしてステップS1102ではフレーム情報で示される各画素の輝度値に対して重み付け係数を掛け合わせ、フレームの階調ダイナミックレンジを圧縮する。そして、ステップS1103ではその圧縮された輝度値を元にフレームのRGB値を算出し、液晶ディスプレイ部に表示するため当該フレーム画像を描画する。また、その際には、ステップS1104ではバックライト輝度高化のための重み付け係数を取得し、ステップS1105では液晶ディスプレイのバックライト輝度を上げる処理を行っても良い。
【0070】
<効果の簡単な説明>
以上のように本実施例の3D表示装置では、表示するフレームの階調ダイナミックレンジに応じてクロストークが発生しそうか否か判断し、発生しそうであれば階調ダイナミックレンジを狭めるなどする。つまり一画面内の各画素における液晶シャッター開閉のための移動量のずれを抑えることできクロストークの発生を抑えることが可能となる。
【0071】
また、階調ダイナミックレンジを狭めることで結果的に表示するフレームの輝度が低下している場合には、液晶ディスプレイのバックライト輝度を上げることで当該フレーム輝度低下の影響を抑えることもできる。
【0072】
≪実施例2≫
<概要>
本実施例の3D映像表示装置では、クロストークが発生しそうであるかの判断において、一の画面内の各画素の輝度差ではなく、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間での輝度差を利用して判断することを特徴とする。
【0073】
例えば前の右目用フレームの画素αの輝度が0として、次の左目用フレームの同じ画素αの輝度が255とすると、当該画素αを表示するための液晶ディスプレイ部の液晶シャッターは全閉状態から全開状態に制御されることになる。つまりこの液晶シャッターは開閉のための回転量が大きく次の画素の表示完了までの時間が他の液晶シャッターと比べてかかる可能性が高い。そのため、結果的に液晶ディスプレイに右目用フレームと左目用フレームが混在する状態が生じクロストークが発生しやすいということになる。
【0074】
そこで、本実施例では連続する左目用フレームと右目用フレームとの同一/近接画素間で所定値以上の輝度差がある場合に、その画素を表示するための液晶シャッターの開閉動作に時間がかかり、クロストークが発生する可能性があると判断する、という具合である。
【0075】
<機能的構成>
図12は、本実施例の3D表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の3D映像表示装置1200は実施例1を基本として液晶ディスプレイ部1201と、フレーム情報取得部1202と、判断部1203と、低減命令出力部1204と、を有する。また図示してしないが、上記実施例で説明した階調狭化部や圧縮手段、バックライト輝度高化部などをさらに有していても良い。
【0076】
そして本実施例の3D映像表示装置は、判断部がさらに輝度差分値判断手段1205を有することを特徴とする。
【0077】
輝度差分値判断手段1205は、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、フレームメモリ、輝度差分値判断プログラムなどによって実現することができる。
【0078】
図13は、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間での輝度差分値判断の一例を説明するための概念図である。この図にあるように、あるn番目のフレームを表示するための左目用フレームn(L)Frameと右目用フレームn(R)Frameとのについて、同一又は/及び近接画素単位でそれぞれの輝度差分値を算出する。また、画素単位ではなく画素の組を領域とし、その輝度平均値を領域輝度値として領域単位で輝度差分値を算出しても良い。
【0079】
そして、その差分値が所定値である例えば「179」よりも大きいか否か判断し、大きい場合には当該画素でクロストークの発生要因となり得ると判断する。また、差分値を「(差分値/階調でとり得る輝度の最大値)*100」など演算式で比率に変換し、前述の官能検査によって得られた例えば比率「70%」よりも大きいか否か判断しても良い。もちろん、この「179」や「70%」などの所定値は一例であり、任意の値に設定されて構わない。
【0080】
そして、判断部では、例えばクロストークの発生要因となり得ると判断された画素がひとつでもあれば、フレーム単位でもクロストークが人の目に確認されるとして「クロストーク発生しそう」との判断結果を出力しても良い。あるいは、ある程度の画素数があって初めて人の目にクロストークが確認されるとして、クロストークが発生しそうと判断された画素数をカウントし、その画素数が所定個数以上であれば「クロストークが発生しそう」との判断結果を出力しても良い。また、クロストークの発生要因となり得る画素が位置的に集合しているかを画素の位置情報を参照して判断し、集合しているクロストークの発生要因となり得る画素が所定個数以上であるかを判断しても良い。
【0081】
そして、このような処理の結果クロストークが発生しそうと判断されたフレームに関してクロストークの低減命令を出力し、上記実施例1で説明したように、例えば液晶シャッターを駆動が完了するまでバックライトをオフにする処理を行う。あるいは各画素の輝度差分値が70%以内になるようにクロストーク発生要因となり得る画素の輝度、あるいは全画素の輝度に対して所定の重み付け係数をかける処理を行うと良い。なお、所定の重み付け係数に関しては上記実施例1にて記載した重み付け系数と同様のものとすると良い。
【0082】
また、輝度に対して重み付け係数を掛けるなどすることでクロストーク低減処理を行う場合には、上記実施例1で説明したようにバックライト輝度高化部によるバックライト輝度の高化処理を実行するよう構成しても良い。
【0083】
このように本実施例の3D映像表示装置では、各画素や画素の組からなる領域単位で対応する液晶シャッターの開閉にかかる時間を判定するので、実施例1の処理と比較して演算負荷は高いものの正確なクロストーク発生有無の判断を行うことができる。
【0084】
<処理の流れ>
図14は、本実施例の3D映像表示装置におけるクロストーク発生有無の判断における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、クロストーク発生有無の判断処理以外の処理の流れについては、実施例1にて図9を用いて説明した処理の流れと同様である。図14は、図9に示すステップS0902の処理の流れの一例をより詳細に示すものである。この図14にあるように、先に取得したフレーム情報を元に、ステップS1401では連続する右目用フレームと左目用フレームの各画素の輝度値を取得する。つづいてステップS1402では右目用フレームと左目用フレーム間で同一画素、又は/及び所定の条件で隣接する画素の輝度差分値を算出し、ステップS1403ではその輝度差分値が所定値以上であるか否かの判断処理を行う。またこの際、その輝度差分値が所定値以上である画素数が所定数以上あるか否かの判断処理を行っても良い。そしてステップS1402での判断結果がYes(輝度差分値が所定値以上である等)である場合には、ステップS1404では当該フレームでクロストークが発生しそうであるとの判断結果を出力する。
【0085】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例の3D映像表示装置では、各画素や画素の組からなる領域単位で対応する液晶シャッターの開閉にかかる時間を判断することができる。したがって実施例1の判断処理と比較して演算負荷は高いものの正確なクロストーク発生有無の判断を行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
0300 3D映像表示装置
0301 フレーム情報取得部
0302 ヒストグラム取得部
0303 判断部
0304 低減命令出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D映像表示における左右映像間の干渉現象、いわゆるクロストークの発生を抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3D映像を表示するための表示技術が様々提供されており、そのうちの一技術としてシャッター眼鏡などを利用したフレームシーケンシャル方式がある。このフレームシーケンシャル方式では1フレームを2分轄し、視差を有する左目用フレームと右目用フレームとをディスプレイ上に交互に表示し、それに同期してシャッター眼鏡の右目と左目のシャッターを交互に開閉させることで、左目用フレームと右目用フレームを視聴者の左右の目に交互に入力するよう構成されている。
【0003】
しかしこのようなフレームシーケンシャル方式の3D映像表示において、左目用フレームと右目用フレームとが厳密に区別されず、例えば左目用フレームの一部に右目用フレームが混入した状態で視聴者の左目に画像が入力されてしまうといったいわゆる「クロストーク」が発生することがある。この原因としては、表示装置にて画像を表示する際に、画像を横方向のラインで分轄して上から1ラインずつ描画することで画像表示を行っているため、左目用フレームを描画中であっても下部のラインではその前の右目用フレームが残ってしまっていることなどが挙げられる。
【0004】
そして、上記3D映像表示時のクロストークの発生を抑えるために、以下のような技術が提供されている。例えば、特許文献1には、液晶ディスプレイを上記ラインに沿って複数のブロックに分け、それぞれのブロックにおけるバックライトの点灯タイミングを適宜調整し、前記左目用フレームを描画中に下部ラインに残っている前の右目用フレームが表示されないようにすることでクロストークの発生を低減させる技術が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、これから表示しようとする例えば左目用フレームのRGB値から、直前の映像信号の残光量に相当する信号量分の値(予め測定などで定められた値)を減算することでクロストークの発生を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−276928号公報
【特許文献2】特開2000−134644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の3D映像表示におけるクロストークの発生低減技術には、以下のような液晶ディスプレイ特有のクロストーク発生原因が考慮されておらず、その点を解消するような構成が提供されていない、という課題がある。
【0008】
すなわち液晶ディスプレイでは、バックライトを光源とし、その前に配置された液晶シャッターの開閉角度を調節することで各画素の輝度値を再現し画像を表示している。そしてこの液晶シャッターの開閉角度調節は、輝度0(全閉)から輝度255(全開)に調節する場合に最もシャッターの回転量が大きくなる。そのため、同じ画像内で輝度差の大きな領域が存在すると各領域間で液晶シャッターの回転量に差が生じる可能性があり、結果として輝度の高い領域は低い領域と比較して今の画像が表示されるタイミングが遅くなる可能性がある。そのため輝度の高い領域には前の画像が残ることになり、クロストークが発生しやすくなる。
【0009】
あるいは連続する左目用フレームと右目用フレームとの間で輝度差の大きな画素や領域が存在すると、その画素や領域での液晶シャッターの回転量がやはり大きくなるため、前の画素輝度から今の画素輝度への切り替えに時間がかかり、やはりクロストークが発生しやすくなる。
【0010】
そしてこのような液晶シャッターの開閉スピードの差などを原因として発生するクロストークの低減については、上記特許文献1や2をはじめとする従来の技術では解決されていない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明は、3D映像のフレーム情報から取得した、例えば画像内のコントラスト(輝度差)情報や右目用フレームと左目用フレーム間の輝度差情報などをもとにクロストークが発生しそうかを判断し、発生しそうな画像内コントラストや画像間輝度差であれば、その輝度差がなくなるように当該輝度を調整することでクロストークの発生を低減することのできる3D映像表示装置を提供する。
【0012】
具体的には、液晶ディスプレイ部と、前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得部と、取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断部と、判断部での判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力部と、を有する3D映像表示装置を提供する。
【0013】
また、画像内のコントラストを示す輝度ヒストグラムを利用してクロストークが発生しそうかを判断する3D映像表示装置として、前記判断部が、フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得手段と、を有し、取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断する3D映像表示装置も提供する。
【0014】
また上記構成に加えて、前記判断部の階調取得手段が、さらに所定輝度値以上の第一輝度ピクセル積分値を求める第一算出手段と、前記第一輝度ピクセル積分値が所定値以上である場合に、所定輝度値以下の第二輝度ピクセル積分値を求める第二算出手段と、前記第二輝度ピクセル積分値と第一輝度ピクセル積分値が所定の関係にあるか判断する判断手段と、を有し、判断結果が所定の関係にあるとの判断結果である場合にクロストークが発生しそうであると判断する3D映像表示装置も提供する。
【0015】
また、右目用フレームと左目用フレームとの間の輝度差情報を利用してクロストークが発生しそうかを判断する3D映像表示装置として、前記判断部が、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断手段を有し、輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断する3D映像表示装置も提供する。
【0016】
また、上記構成によりクロストークが発生しそうと判断された場合に出力されるクロストーク低減命令に応じて階調ダイナミックレンジを狭める階調狭化部をさらに3D映像表示装置も提供する。そしてその階調狭化部が、階調ダイナミックレンジを狭くする際に、輝度ヒストグラムの階調成分を主に圧縮する圧縮手段を有する3D映像表示装置も提供する。また、圧縮手段によって圧縮がされた画像領域に対応するディスプレイの領域のバックライトの輝度を高めるバックライト輝度高化部をさらに有する3D映像表示装置も提供する。
【0017】
また、このような3D映像表示装置の動作方法も合わせて提供する。
【発明の効果】
【0018】
以上のような構成をとる本発明によって、画像表示に際して一画面内の各画素における液晶シャッター開閉のための回転量のずれなどを抑えることでき、時間をかけずに前の画像から今の画像への切り替えを素早く行うことができる。したがって、前の画像の残像を残すことがなくクロストークの発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の3D映像表示装置におけるクロストーク発生判断処理の一例を説明するための図
【図2】実施例1の3D映像表示装置におけるクロストーク低減のための処理の一例を説明するための図
【図3】実施例1の3D映像表示装置における機能ブロックの一例を表す図
【図4】実施例1の3D映像表示装置における液晶ディスプレイ部における液晶シャッターの配向の一例を表す図
【図5】実施例1の3D映像表示装置におけるヒストグラム取得部にて取得された輝度ヒストグラムの一例を表す図
【図6】実施例1の3D映像表示装置における階調狭化部での階調ダイナミックレンジを狭める処理の一例を表す図
【図7】実施例1の3D映像表示装置における圧縮手段での各階調成分の圧縮処理の一例を説明するための図
【図8】実施例1の3D映像表示装置におけるハードウェア構成の一例を表す図
【図9】実施例1の3D映像表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図10】実施例1の3D映像表示装置のクロストーク発生判断における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図11】実施例1の3D映像表示装置のクロストーク低減命令出力における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図12】実施例2の3D映像表示装置における機能ブロックの一例を表す図
【図13】実施例2の3D映像表示装置の輝度差分値判断手段での判断処理の一例を説明するための概念図
【図14】実施例2の3D映像表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施例1は、主に請求項1,2,3,5,6,7,8、そして請求項9,10,12,13,15について説明する。また、実施例2は、主に請求項4,11,14について説明する。
【0021】
≪実施例1≫
<概要>
本実施例は、表示する画像がクロストークの発生しやすい「画像内コントラストが比較的高い画像」であるか否かを輝度ヒストグラムから判断し、コントラストの高い画像であればクロストークの発生しにくいレベルまで輝度の階調ダイナミックレンジを狭める処理を行うことを特徴とする3D映像表示装置である。
【0022】
図1および図2は、本実施例におけるクロストーク発生判断、およびクロストーク低減のための処理の一例を説明するための図であり、ある画像を液晶ディスプレイに表示した際の輝度ヒストグラムを表す図である。この図1(a)にあるように、横軸を輝度、縦軸を画素数とした際の輝度ヒストグラムに関して、最小値と最大値の間隔(階調ダイナミックレンジ)Aが閾値α以上ある。つまり、この画像は低い輝度の画素と高い輝度の画素が多数混在する、いわゆる「コントラストの高い画像」になっている。そのため、前述の通り低輝度画素と高輝度画素の間で液晶シャッターの開閉時間に差が生じる可能性があり、結果として前の画像(例えば右目用フレーム)と次の画像(左目用フレーム)とがディスプレイ上で混在する状態が生まれる。したがって輝度ヒストグラムがこのような分布を示す場合は、クロストークが発生する可能性があると判断することができる。
【0023】
一方、図1(b)に示すように、別の画像の輝度ヒストグラムもある程度のコントラストを有すると思われるものの、その階調ダイナミックレンジBは閾値α以下であり、この画像はコントラストの比較的低い画像になっている。そのため、各画素の間で液晶シャッターの開閉時間にあまり差が生じず、クロストークが発生する可能性が低いと判断することができる。
【0024】
そしてクロストークが発生する可能性があると判断された場合は、そのクロストークを低減するため、例えば図2に示すように、輝度の階調ダイナミックレンジを狭め、ヒストグラムの階調ダイナミックレンジが閾値α以下になるように調整する、という具合である。
【0025】
このようにして、クロストークの発生する可能性の大きい「コントラストの高い画像」を表示する場合には、例えば輝度の階調ダイナミックレンジを狭くすることでコントラストを下げ、クロストークの発生を抑えた画像を表示するようにできる。
【0026】
<機能的構成>
図3は、本実施例の3D映像表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。なおこの3D映像表示装置は、チューナなどを備えるテレビジョン受像機に組み込まれ、チューナにて受信した3D放送番組の映像を表示したり2D放送番組の映像を3D映像変換して表示したりするものであっても良い。あるいはモニタ装置やレコーダ装置、映像プレーやなどに組み込まれても良い。そして以下に記載する本装置の機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUや主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、情報入力に利用される入力デバイス、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザ・インターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。
【0027】
そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本装置の機能ブロックは専用ハードウェアによって実現されてもよい。
【0028】
また、この発明は装置として実現できるのみでなく、装置の動作方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0029】
そして、この図3にあるように、本実施例の3D映像表示装置0300は、液晶ディスプレイ部0301と、フレーム情報取得部0302と、判断部0303と、低減命令出力部0304と、を有する。
【0030】
液晶ディスプレイ部0301は、液晶シャッターと光源を利用して映像を表示する機能を有し、例えば、液晶パネルやバックライト、それらの制御回路などで実現することができる。図4は、この液晶ディスプレイ部における液晶シャッターの配向の一例を表す図である。この図4にあるように、画素αの輝度が0である場合、その液晶シャッターは閉じた状態である。一方、輝度255の画素βの液晶シャッターは開放された状態である。このように各画素の輝度が大きく異なる画像(すなわちコントラストの比較的高い画像)の場合、液晶シャッターの配向が大きく異なるため、それぞれの配向制御にかかる時間にずれが生じる可能性が高くなる。したがって、3D映像用の画像を表示する際には、そのずれの部分で前の画像(例えば左目用フレーム)と次の画像(右目用フレーム)とがあるタイミングで混在しやすくなり、クロストークが発生しやすい、という具合である。
【0031】
フレーム情報取得部0302は、前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得する機能を有し、例えばI/Oやデコーダ、フレームメモリ、フレーム情報取得プログラムなどによって実現することができる。なおフレームとは、3D映像の表示に際して所定単位時間ごとにディスプレイに順次表示される左目用および右目用の1のコマ画像をいい、フレーム情報としては、その1のコマ画像を表示するためのRGB値やYUV値などが挙げられる。
【0032】
そしてこのフレーム情報取得部では、映像入力用の回路などを介して取得した3D映像をデコーダで復号し、そのようなフレーム情報を取得する、という具合である。なお、3D映像データの取得元については特に限定せず、例えばテレビチューナにて受信したテレビ放送波に含まれる3D映像データであっても良いし、HDDなどの磁気記録媒体やDVDなどの光学記録媒体に記録されている3D映像データであっても良いし、インターネット上のサーバ装置から配信される3D映像データであっても良いし、それ以外の取得元から取得される構成であっても良い。
【0033】
判断部0303は、取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、判断プログラムによって実現することができる。
【0034】
この判断部での判断処理については、前述の通り液晶シャッターの開閉にかかる時間のずれがどの程度あるかに応じてクロストークが発生するかの判断を行うことができる。そしてそのために、一の画像内での各画素間の輝度差を判断材料としても良いし、連続する左目用フレームと右目用フレームとの同一画素間での輝度差を判断材料としても良い。
【0035】
本実施例では、一の画像内での各画素間の輝度差を判断材料としたクロストーク発生有無の判断を行う3D映像表示装置について説明する。この場合、判断部は、さらにヒストグラム取得手段と階調取得手段を有する。
【0036】
ヒストグラム取得手段は、フレームの輝度ヒストグラムを取得する機能を有し、CPUや主メモリ、ヒストグラム取得プログラムなどで実現することができる。図5(a)は、取得された輝度ヒストグラムの一例を表す図である。この図にあるように、例えば輝度の分解能に応じた輝度値ごと(分解能が8ビットならば輝度値0から255ごと)に、その画素数をカウントすることでフレームの輝度ヒストグラムを取得することができる。なおこの輝度ヒストグラム取得に関する具体的な処理方法は、従来技術にあるものを利用すると良い。例えば全画素についてカウントするのではなく、縦軸の画素あるいは横軸の輝度を間引いてカウントするなどしても良い。
【0037】
階調取得手段は、取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する機能を有し、CPUや主メモリ、階調取得プログラムなどによって実現することができる。「階調ダイナミックレンジ」とは、フレーム内に存在する輝度値の範囲を示す情報であり、この階調ダイナミックレンジが大きければ、いわゆる「コントラストの高い画像」である可能性があり、クロストークが発生しやすいと判断することができる。
【0038】
具体的には、例えば所定階調のヒストグラムにおいて、画素数が所定数以上の輝度の最大値と最小値(以下、この画素数が所定数以上の輝度の最大値と最小値を最大輝度値、最小輝度値という)との差分値や差分比率などで示される情報などが挙げられる。なお本件出願人らが官能検査を行ったところ、階調ダイナミックレンジを「[(最大輝度値−最小輝度値)/階調でとり得る輝度の最大値]*100」で表される比率が70%以内の画像であればクロストークの発生がほとんど確認されなかった。そこで本実施例では階調ダイナミックレンジによるコントラスト判断基準として比率70%を用いることとするが、もちろん、本件発明においてその値は限定されない。また、階調ダイナミックレンジを求めるための画素数の閾値となる所定数も適宜定められて良く、例えば1以上であれば少なくとも輝度差の大きな画素が存在するためクロストークの発生する可能性があるとしても良いし、全画素数に対する割合で所定数を定めても良い。
【0039】
そして、クロストークが発生しそうかの一つの判断方法として、上記のように階調ダイナミックレンジが所定の70%など以上であれば「コントラストの高い画像」である可能性があり、クロストークが発生しやすい、と判断する方法が挙げられる。
【0040】
また輝度最大値と最小値のみで階調ダイナミックレンジを判断するのではなく、所定輝度以上/以下の画素の個数(ピクセル積分値)をカウントすることで階調ダイナミックレンジ(輝度値の範囲)の取得、判断を行い、クロストークが発生しそうか否か判断しても良い。具体的に本実施例の3D映像表示装置の階調取得手段は、さらに第一算出手段と、第二算出手段と、判断手段と、を有する。
【0041】
第一算出手段は、第一の所定輝度値以上の第一輝度ピクセル積分値を求める機能を有する。具体的に、例えば図5(b)に示すような輝度最小値0であり輝度最大値輝度228のヒストグラム(8ビット階調)が取得される。そしてこの輝度ヒストグラムにおいて、例えば第一の所定輝度値179をとる画素の数(右側の斜線部分)をカウントする。なお、この第一の所定輝度値は、8ビット階調で最小輝度値を0とした場合に階調ダイナミックレンジが前述の「70%」となる輝度値である。もちろん、この所定輝度値は任意に設定されて良い。
【0042】
そして、カウントした第一輝度ピクセル積分値で示される高輝度成分の画素数が任意の所定個数以上であれば、画像内に高輝度成分が多く含まれているとして、次の第二算出手段による低輝度成分の画素数カウント処理を実行する。また、第一輝度ピクセル積分値が所定個数以下であれば、画像内の高輝度成分は少なくクロストークは発生しにくいとして以下の処理は実行しない。
【0043】
第二算出手段は、前記第一輝度ピクセル積分値が所定値以上である場合に、第二の所定輝度値以下の第二輝度ピクセル積分値を求める機能を有する。これは第二の所定輝度値が第一の所定輝度値よりも低く低輝度側の処理であること以外は、基本的に第一算出手段と同様の処理を実行する。具体的には、8ビット階調で最大輝度値を255とした場合に階調ダイナミックレンジが前述の「70%」となる輝度値76を第二の所定輝度値として、例えば図5(b)に示す輝度ヒストグラムの情報から輝度値が76以下の画素数(左側の斜線部分)をカウントし第二輝度ピクセル積分値を算出する。
【0044】
判断手段は、前記第二輝度ピクセル積分値が所定値以上であるか判断する機能を有する。このように、その第二輝度ピクセル積分値で示される低輝度成分の画素数が、任意の所定個数(第一輝度ピクセル積分値におけるものと同一の個数でも異なる個数でも良い)以上であれば、この画像内には高輝度成分と低輝度成分が多く含まれており、したがって階調ダイナミックレンジが大きいためクロストークが発生しそうであると判断する、という具合である。
【0045】
なお、上記判断においては、第一輝度ピクセル積分値の大小判断結果による分岐後に第二輝度ピクセル積分値を算出し大小判断処理を実行する構成を例としてあげているが、例えば第一輝度ピクセル積分値と第二輝度ピクセル積分値を算出したあと、それぞれの大小判断を行い、AND条件やOR条件で大小判断結果を場合分けしクロストークが発生しそうか否か判断するといった構成などであっても良い。
【0046】
低減命令出力部0304は、判断部での判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、低減命令出力プログラムによって実現することができる。
【0047】
この低減命令によるクロストーク低減処理としては、例えば液晶シャッターを駆動し画像を液晶ディスプレイ上に描画中であるタイミングではバックライトをオフにし、液晶シャッターの駆動が完了してからバックライトを点灯するといった処理が挙げられる。その場合には、低減命令は液晶シャッター駆動に合わせたバックライトのオン/オフ制御命令などとすると良い。
【0048】
また前述のとおり、液晶シャッターの特性から階調ダイナミックレンジが所定範囲内(例えば最小輝度値と最大輝度値の差が比率で70%以下など)であれば、クロストークが発生しにくいことが官能検査などで確認できる。そこで、画像のダイナミックレンジを狭くする調整命令をクロストーク低減命令として、当該低減処理を実行しても良い。
【0049】
具体的に、本実施例の3D映像表示装置はさらに階調狭化部を有していても良い。階調狭化部は、クロストーク低減命令に応じて階調ダイナミックレンジを狭める機能を有し、例えばCPUや主メモリ、階調狭化プログラムなどによって実現することができる。具体的に、図6に示すように、破線で示す元の輝度ヒストグラムの最大階調側の画素の輝度値を所定割合分だけ下げ、又は及び最小階調側の輝度の画素の輝度値を上げる処理を行うことで階調ダイナミックレンジを狭める処理が挙げられる。
【0050】
また、この階調狭化部は、上記のように最大/最小階調側の輝度の画素の輝度値のみ調整するのではなく、輝度ヒストグラムの各階調成分を主に圧縮する圧縮手段をさらに備えていても良い。図7は、この各階調成分の圧縮処理の一例を説明するための図である。この図にあるように、圧縮手段では、例えば各画素の輝度値に重み付け係数を掛けることでヒストグラム全体を低輝度方向に圧縮する、という具合である。なお、この重み付け係数は適宜設定されれば良く、例えば、前述の通り好適な階調ダイナミックレンジが70%であれば、重み付け係数を「0.7」として階調ダイナミックレンジが70%以下に納まるように設定しても良い。あるいは最大輝度値が228であれば、階調ダイナミックレンジを70%とするために、「179(所定値)/228(最大輝度値)」などの演算式によって重み付け係数が算出されるよう構成しても良い。なお、この演算式の所定値は、前述の通り8ビット階調で最小輝度値を0とした場合に階調ダイナミックレンジが「70%」となる輝度値である。
【0051】
なお、上記例では輝度ヒストグラムを低輝度方向(重み付け係数が1.0以下)に圧縮しているが、階調ダイナミックレンジが狭くなるように高輝度方向(重み付け係数が1.0以上)に圧縮する処理を行っても良い。
【0052】
以上のようにして、液晶ディスプレイに表示する画像に関して輝度ヒストグラムの階調ダイナミックレンジからクロストークが発生しそうであるか否かを判断し、当該画像がクロストークの発生しそうな「コントラストの高い画像」であれば、階調ダイナミックレンジを狭くするような処理を行うことでクロストークの発生を低減することができる。
【0053】
また、上記において階調ダイナミックレンジを圧縮し狭くする処理を行う場合、表示画像全体の輝度が低下してしまう可能性がある。そこで本実施例の3D映像表示装置は、さらにバックライト輝度高化部を有していても良い。
【0054】
バックライト輝度高化部は、圧縮手段によって圧縮がされた画像領域に対応するディスプレイの領域のバックライトの輝度を高める機能を有し、バックライト制御回路やバックライト輝度高化プログラムなどによって実現することができる。具体的に、このバックライト輝度高化部では、バックライト全体の輝度を所定の重み付け係数分上げる処理を行う。例えば通常時のバックライトの輝度を最大の80%として、前記圧縮処理を行った場合にはバックライト輝度を100%に制御する、という具合である。あるいは、同様に通常時のバックライト輝度を80%として、前記圧縮処理を行った場合には最大輝度値(例えば228)に基づいて、「80+20*(228/255)」などの演算式によりそのバックライトの輝度の高化制御割合を決定しても良い。
【0055】
また、バックライトが領域ごとに制御可能であれば、高輝度部分については輝度の圧縮幅が大きいので高い輝度となるようバックライトを制御するよう構成しても良い。なおその場合には、輝度値が圧縮された画素の位置情報などを取得し、その位置情報を元にして制御するバックライトを特定するよう構成すると良い。また圧縮手段によって階調成分が低輝度方向ではなく、前述のように高輝度方向に圧縮される場合(重み付け係数が1.0以上の場合)は、逆にバックライト輝度を低くするよう制御すると良い。
【0056】
<ハードウェア構成>
図8は、上記機能的な各構成要件をハードウェアとして実現した際の、3D映像表示装置における構成の一例を表す概略図である。この図を利用してクロストーク低減処理におけるそれぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。
【0057】
この図にあるように、3D映像表示装置は、判断部及び低減命令出力部であり、またその他の各種演算処理を実行するためのCPU0801と、主メモリ0802と、を備えている。また3D映像が入力される映像入力I/O0803や液晶ディスプレイ部である液晶ディスプレイ0804や映像処理回路0805、各種データやプログラムなどを保持するHDD0806、ユーザからの操作入力を受付ける入力デバイス0807などを備えている。そしてそれらがシステムバスなどのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0058】
また、主メモリにはプログラムが読み出され、CPUは読み出された当該プログラムを参照し、プログラムで示される手順に従い各種演算処理を実行する。また、この主メモリやHDDにはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、CPUの演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0059】
ここで、CPUはフレーム情報取得プログラムを解釈し、それにしたがって3D映像データを、例えばテレビ放送であれば図示しないチューナを介して取得し、あるいは光学記録媒体に記録されたものであれば別途外部再生装置などで再生されたものを映像入力I/Oを介して取得し、主メモリや、図示しないグラフィック用メモリなどに格納する。つづいて当該3D映像データが圧縮符号化されたものであるとして、図示しないデコーダによって復号化処理を行い、ディスプレイに表示すべきフレームの各画素のRGB値を取得する。
【0060】
つづいてCPUはヒストグラム取得プログラムを解釈し、当該プログラムで示されるRGB値を輝度値Yに変換するための所定の演算式、例えば「Y=0.299R+0.587G+0.114B」などを利用した演算処理によって各画素の輝度値Yを算出し「主メモリ」のアドレス1などに格納する。そして、CPUは算出した輝度値に基づいて輝度ごとの画素数をカウントし、輝度ヒストグラムとして主メモリのアドレス2などに格納する。
【0061】
次にCPUは、階調取得プログラムを解釈し、その解釈結果に従って画素数が所定個数、例えば10個以上の輝度値の中で最大の輝度値YMAXと最小の輝度値YMINを特定する。そして輝度階調が8ビット(最大階調が256)として「[(YMAX−YMIN)/256]*100」を演算し、階調ダイナミックレンジを比率として算出する。そして算出された値が当該プログラムやユーザ指定などで定められる閾値、例えば70%以上であるかの判断処理をCPUの演算によって実行する。ここで70%以下との判断結果であればクロストークはほとんど発生しないとして、クロストーク低減に係る処理は行わず、取得したフレームの各画素のRGB値に基づく右目用フレームまたは左目用フレームを、映像処理回路を介して液晶ディスプレイに表示する。一方70%以上との判断結果であれば、CPUはクロストークが発生しそうとの判断結果を出力する。
【0062】
また、上記のような輝度最大値と最小値のみを利用した階調ダイナミックレンジの判断処理ではなく、以下のような処理を行っても良い。すなわちCPUは、別の階調取得プログラムに含まれる第一算出プログラムを解釈し、その解釈結果にしたがって例えばプログラムなどで定められる/演算によって算出される高輝度側の第一の所定輝度値179以上の輝度値の画素数をカウントし、主メモリのアドレス3などに第一輝度ピクセル積分値として格納する。そして、その値が所定個数以上であるか否かの大小判断処理をCPUの演算処理にて実行し、第一輝度ピクセル積分値が所定個数よりも多いとの判断結果である場合、つづいてCPUは第二算出プログラムを解釈する。
【0063】
そしてその解釈の結果にしたがって、CPUは低輝度側の第二の所定輝度値76以下の輝度値の画素数をカウントし、主メモリのアドレス4などに第二輝度ピクセル積分値として格納する。そして、その値が所定個数以上であるか否かの大小判断処理をCPUの演算処理にて実行し、第二輝度ピクセル積分値が所定個数よりも多いとの判断結果である場合、クロストークが発生しそうであるとの判断結果を出力する。
【0064】
そして、クロストークが発生しそうとの判断結果が出力された場合には、CPUは低減命令出力プログラムを解釈し、その解釈結果にしたがってクロストーク低減命令を生成する。具体的には、例えば主メモリのアドレス1などに格納されている各画素の輝度値Yに対して、階調ダイナミックレンジを圧縮するための所定の重み付け係数0.7や別途演算によって算出された重み付け係数を掛け合わせる処理をCPUの演算によって実行する。そして、そのようにして算出された輝度値をもとに各画素のRGB値を再計算し、そのRGB値を映像処理回路に出力する。すると映像処理回路において、本来よりも階調ダイナミックレンジが圧縮された右目用フレームまたは左目用フレームのフレームが描画され、液晶ディスプレイに表示される、という具合である。
【0065】
また、それに合わせてCPUはバックライト輝度高化プログラムを解釈し、その解釈結果に従ってバックライト輝度を当初の80%から100%に向上させるなどの命令を図示しないバックライトの制御回路に出力しても良い。
【0066】
<処理の流れ>
図9は、本実施例の液晶ディスプレイ部を有する3D映像表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし、媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムを構成する処理ステップであっても構わない。
【0067】
この図にあるように、ステップS0901では前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得すると、ステップS0902では取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する。そして判断ステップでの判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合には、ステップS0903ではクロストーク低減命令を出力する。
【0068】
図10は、上記ステップS0902におけるクロストーク発生有無の判断におけるより詳細な処理の流れの一例を表すフローチャートである。この図にあるように、前述のステップS0901で取得したフレーム情報をもとに、ステップS1001では輝度ヒストグラムを取得し、ステップS1002では高輝度側の第一所定輝度以上の輝度値を取る画素の数をカウントし第一輝度ピクセル積分値Z1を算出する。そしてステップS1003では算出した第一輝度ピクセル積分値Z1が所定個数以上であるか判断し、Yesとの判断結果である場合には、つづいてステップS1004では低輝度側の第二所定輝度以上の輝度値を取る画素の数をカウントし第二輝度ピクセル積分値Z2を算出する。そしてステップS1005では算出した第一輝度ピクセル積分値Z2が所定個数以上であるか判断し、Yesとの判断結果である場合には、ステップS1006ではクロストークが発生しそうであるとの判断結果を出力する。
【0069】
また図11は、クロストーク低減命令の出力に応じたクロストーク低減処理の流れの一例を表すフローチャートである。この図にあるように、前述のステップS0903にてクロストーク低減命令が出力されるとステップS1101では重み付け係数が取得される)。そしてステップS1102ではフレーム情報で示される各画素の輝度値に対して重み付け係数を掛け合わせ、フレームの階調ダイナミックレンジを圧縮する。そして、ステップS1103ではその圧縮された輝度値を元にフレームのRGB値を算出し、液晶ディスプレイ部に表示するため当該フレーム画像を描画する。また、その際には、ステップS1104ではバックライト輝度高化のための重み付け係数を取得し、ステップS1105では液晶ディスプレイのバックライト輝度を上げる処理を行っても良い。
【0070】
<効果の簡単な説明>
以上のように本実施例の3D表示装置では、表示するフレームの階調ダイナミックレンジに応じてクロストークが発生しそうか否か判断し、発生しそうであれば階調ダイナミックレンジを狭めるなどする。つまり一画面内の各画素における液晶シャッター開閉のための移動量のずれを抑えることできクロストークの発生を抑えることが可能となる。
【0071】
また、階調ダイナミックレンジを狭めることで結果的に表示するフレームの輝度が低下している場合には、液晶ディスプレイのバックライト輝度を上げることで当該フレーム輝度低下の影響を抑えることもできる。
【0072】
≪実施例2≫
<概要>
本実施例の3D映像表示装置では、クロストークが発生しそうであるかの判断において、一の画面内の各画素の輝度差ではなく、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間での輝度差を利用して判断することを特徴とする。
【0073】
例えば前の右目用フレームの画素αの輝度が0として、次の左目用フレームの同じ画素αの輝度が255とすると、当該画素αを表示するための液晶ディスプレイ部の液晶シャッターは全閉状態から全開状態に制御されることになる。つまりこの液晶シャッターは開閉のための回転量が大きく次の画素の表示完了までの時間が他の液晶シャッターと比べてかかる可能性が高い。そのため、結果的に液晶ディスプレイに右目用フレームと左目用フレームが混在する状態が生じクロストークが発生しやすいということになる。
【0074】
そこで、本実施例では連続する左目用フレームと右目用フレームとの同一/近接画素間で所定値以上の輝度差がある場合に、その画素を表示するための液晶シャッターの開閉動作に時間がかかり、クロストークが発生する可能性があると判断する、という具合である。
【0075】
<機能的構成>
図12は、本実施例の3D表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の3D映像表示装置1200は実施例1を基本として液晶ディスプレイ部1201と、フレーム情報取得部1202と、判断部1203と、低減命令出力部1204と、を有する。また図示してしないが、上記実施例で説明した階調狭化部や圧縮手段、バックライト輝度高化部などをさらに有していても良い。
【0076】
そして本実施例の3D映像表示装置は、判断部がさらに輝度差分値判断手段1205を有することを特徴とする。
【0077】
輝度差分値判断手段1205は、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する機能を有し、例えばCPUや主メモリ、フレームメモリ、輝度差分値判断プログラムなどによって実現することができる。
【0078】
図13は、連続する左目用フレームと右目用フレームとの間での輝度差分値判断の一例を説明するための概念図である。この図にあるように、あるn番目のフレームを表示するための左目用フレームn(L)Frameと右目用フレームn(R)Frameとのについて、同一又は/及び近接画素単位でそれぞれの輝度差分値を算出する。また、画素単位ではなく画素の組を領域とし、その輝度平均値を領域輝度値として領域単位で輝度差分値を算出しても良い。
【0079】
そして、その差分値が所定値である例えば「179」よりも大きいか否か判断し、大きい場合には当該画素でクロストークの発生要因となり得ると判断する。また、差分値を「(差分値/階調でとり得る輝度の最大値)*100」など演算式で比率に変換し、前述の官能検査によって得られた例えば比率「70%」よりも大きいか否か判断しても良い。もちろん、この「179」や「70%」などの所定値は一例であり、任意の値に設定されて構わない。
【0080】
そして、判断部では、例えばクロストークの発生要因となり得ると判断された画素がひとつでもあれば、フレーム単位でもクロストークが人の目に確認されるとして「クロストーク発生しそう」との判断結果を出力しても良い。あるいは、ある程度の画素数があって初めて人の目にクロストークが確認されるとして、クロストークが発生しそうと判断された画素数をカウントし、その画素数が所定個数以上であれば「クロストークが発生しそう」との判断結果を出力しても良い。また、クロストークの発生要因となり得る画素が位置的に集合しているかを画素の位置情報を参照して判断し、集合しているクロストークの発生要因となり得る画素が所定個数以上であるかを判断しても良い。
【0081】
そして、このような処理の結果クロストークが発生しそうと判断されたフレームに関してクロストークの低減命令を出力し、上記実施例1で説明したように、例えば液晶シャッターを駆動が完了するまでバックライトをオフにする処理を行う。あるいは各画素の輝度差分値が70%以内になるようにクロストーク発生要因となり得る画素の輝度、あるいは全画素の輝度に対して所定の重み付け係数をかける処理を行うと良い。なお、所定の重み付け係数に関しては上記実施例1にて記載した重み付け系数と同様のものとすると良い。
【0082】
また、輝度に対して重み付け係数を掛けるなどすることでクロストーク低減処理を行う場合には、上記実施例1で説明したようにバックライト輝度高化部によるバックライト輝度の高化処理を実行するよう構成しても良い。
【0083】
このように本実施例の3D映像表示装置では、各画素や画素の組からなる領域単位で対応する液晶シャッターの開閉にかかる時間を判定するので、実施例1の処理と比較して演算負荷は高いものの正確なクロストーク発生有無の判断を行うことができる。
【0084】
<処理の流れ>
図14は、本実施例の3D映像表示装置におけるクロストーク発生有無の判断における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、クロストーク発生有無の判断処理以外の処理の流れについては、実施例1にて図9を用いて説明した処理の流れと同様である。図14は、図9に示すステップS0902の処理の流れの一例をより詳細に示すものである。この図14にあるように、先に取得したフレーム情報を元に、ステップS1401では連続する右目用フレームと左目用フレームの各画素の輝度値を取得する。つづいてステップS1402では右目用フレームと左目用フレーム間で同一画素、又は/及び所定の条件で隣接する画素の輝度差分値を算出し、ステップS1403ではその輝度差分値が所定値以上であるか否かの判断処理を行う。またこの際、その輝度差分値が所定値以上である画素数が所定数以上あるか否かの判断処理を行っても良い。そしてステップS1402での判断結果がYes(輝度差分値が所定値以上である等)である場合には、ステップS1404では当該フレームでクロストークが発生しそうであるとの判断結果を出力する。
【0085】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例の3D映像表示装置では、各画素や画素の組からなる領域単位で対応する液晶シャッターの開閉にかかる時間を判断することができる。したがって実施例1の判断処理と比較して演算負荷は高いものの正確なクロストーク発生有無の判断を行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
0300 3D映像表示装置
0301 フレーム情報取得部
0302 ヒストグラム取得部
0303 判断部
0304 低減命令出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイ部と、
前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得部と、
取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断部と、
判断部での判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力部と、
を有する3D映像表示装置。
【請求項2】
前記判断部は、
フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、
取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得手段と、を有し、
取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断する請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項3】
前記判断部の階調取得手段は、さらに
第一の所定輝度値以上の第一輝度ピクセル積分値を求める第一算出手段と、
前記第一輝度ピクセル積分値が所定値以上である場合に、第二の所定輝度値以下の第二輝度ピクセル積分値を求める第二算出手段と、
前記第二輝度ピクセル積分値が所定値以上であるか判断する判断手段と、を有し、
判断結果が所定値以上であるとの判断結果である場合にクロストークが発生しそうであると判断する請求項2に記載の3D映像表示装置。
【請求項4】
前記判断部は、
連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断手段を有し、
輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断する請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項5】
クロストーク低減命令に応じて階調ダイナミックレンジを狭める階調狭化部をさらに有する請求項1から4のいずれか一に記載の3D映像表示装置。
【請求項6】
階調狭化部は、階調ダイナミックレンジを狭くする際に、輝度ヒストグラムの階調成分を主に圧縮する圧縮手段を有する請求項5に記載の3D映像表示装置。
【請求項7】
圧縮手段によって圧縮がされた画像領域に対応するディスプレイの領域のバックライトの輝度を高めるバックライト輝度高化部をさらに有する請求項6に記載の3D映像表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の3D映像表示装置を含むテレビジョン受像機。
【請求項9】
液晶ディスプレイ部を有する3D映像表示装置の動作方法であって、
前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得ステップと、
取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断ステップと、
判断ステップでの判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力ステップと、
を計算機に実行させる3D映像表示装置の動作方法。
【請求項10】
前記判断ステップは、
フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得ステップと、
取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得ステップと、を含み、
取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断する請求項9に記載の3D映像表示装置の動作方法。
【請求項11】
前記判断ステップは、
連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断ステップを含み、
輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断する請求項9に記載の3D映像表示装置の動作方法。
【請求項12】
液晶ディスプレイ部を有する3D映像表示装置を動作させるプログラムであって、
前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得ステップと、
取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断ステップと、
判断ステップでの判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力ステップと、
を3D映像表示装置の計算機に実行させるプログラム。
【請求項13】
前記判断ステップは、
フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得ステップと、
取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得ステップと、を含み、
取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断するよう計算機に実行させる請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記判断ステップは、
連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断ステップを含み、
輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断するよう計算機に実行させる請求項12に記載のプログラム。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一に記載のプログラムを記録した記録媒体。
【請求項1】
液晶ディスプレイ部と、
前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得部と、
取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断部と、
判断部での判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力部と、
を有する3D映像表示装置。
【請求項2】
前記判断部は、
フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、
取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得手段と、を有し、
取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断する請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項3】
前記判断部の階調取得手段は、さらに
第一の所定輝度値以上の第一輝度ピクセル積分値を求める第一算出手段と、
前記第一輝度ピクセル積分値が所定値以上である場合に、第二の所定輝度値以下の第二輝度ピクセル積分値を求める第二算出手段と、
前記第二輝度ピクセル積分値が所定値以上であるか判断する判断手段と、を有し、
判断結果が所定値以上であるとの判断結果である場合にクロストークが発生しそうであると判断する請求項2に記載の3D映像表示装置。
【請求項4】
前記判断部は、
連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断手段を有し、
輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断する請求項1に記載の3D映像表示装置。
【請求項5】
クロストーク低減命令に応じて階調ダイナミックレンジを狭める階調狭化部をさらに有する請求項1から4のいずれか一に記載の3D映像表示装置。
【請求項6】
階調狭化部は、階調ダイナミックレンジを狭くする際に、輝度ヒストグラムの階調成分を主に圧縮する圧縮手段を有する請求項5に記載の3D映像表示装置。
【請求項7】
圧縮手段によって圧縮がされた画像領域に対応するディスプレイの領域のバックライトの輝度を高めるバックライト輝度高化部をさらに有する請求項6に記載の3D映像表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の3D映像表示装置を含むテレビジョン受像機。
【請求項9】
液晶ディスプレイ部を有する3D映像表示装置の動作方法であって、
前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得ステップと、
取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断ステップと、
判断ステップでの判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力ステップと、
を計算機に実行させる3D映像表示装置の動作方法。
【請求項10】
前記判断ステップは、
フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得ステップと、
取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得ステップと、を含み、
取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断する請求項9に記載の3D映像表示装置の動作方法。
【請求項11】
前記判断ステップは、
連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断ステップを含み、
輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断する請求項9に記載の3D映像表示装置の動作方法。
【請求項12】
液晶ディスプレイ部を有する3D映像表示装置を動作させるプログラムであって、
前記液晶ディスプレイ部に表示する3D映像のフレーム情報を取得するフレーム情報取得ステップと、
取得したフレーム情報から連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でクロストークが発生しそうか判断する判断ステップと、
判断ステップでの判断結果がクロストークが発生しそうとの判断結果である場合に、クロストーク低減命令を出力する低減命令出力ステップと、
を3D映像表示装置の計算機に実行させるプログラム。
【請求項13】
前記判断ステップは、
フレームの輝度ヒストグラムを取得するヒストグラム取得ステップと、
取得したヒストグラムから階調ダイナミックレンジを取得する階調取得ステップと、を含み、
取得した階調ダイナミックレンジを利用してクロストークが発生しそうか判断するよう計算機に実行させる請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記判断ステップは、
連続する左目用フレームと右目用フレームとの間でディスプレイ部のディスプレイの同一又は/及び近接ピクセルの輝度差分値が所定値以上であるか判断する輝度差分値判断ステップを含み、
輝度差分値が所定値以上である場合にはクロストークが発生しそうと判断するよう計算機に実行させる請求項12に記載のプログラム。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一に記載のプログラムを記録した記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−115520(P2013−115520A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258226(P2011−258226)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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