説明

3D製織によって異形部品を製作する方法、および得られる異形部品

本発明は、3D製織および含浸によって得られる中空異形部品に関する。本発明は、三次元製織によって、製織の際に部分的な非タイイング(19)を実行しながらプリフォーム(11)を製作するステップを含んでおり、この部分的な非インターリンキングが、後の織り終えた塊の内部への空洞の形成および含浸段階の際の形状の安定化を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後に熱硬化性の樹脂によって含浸されるプリフォームを得るために、例えば炭素繊維で作られたきわめて強い横糸および縦糸の三次元製織(3D製織として知られる)によって中空部品を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、前記中空部品に空洞を生成できるようにする改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特に衝撃に対して、大きな機械的強度の中空部品を製造するために、熱硬化性樹脂で覆われた炭素繊維を使用することが知られている。
【0003】
例えば、炭素繊維の糸からなる含浸済みの織布を裁断し、所望の部品のブランクを得るべく積層し、高温および加圧下で一体に結合させることによって、任意の部品を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1777063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような積層構造は、衝撃によって層の剥離が生じかねないため、特に耐衝撃性に関して最適ではない。
【0006】
欧州特許第1777063号明細書が、横糸および縦糸の3D製織によって中空部品(具体的には、ターボ機械の羽根)を製造するためのより効果的な方法を記載している。この方法は、非常に優れた強度を有し、特に層の剥離の恐れがないきわめて良好な耐衝撃性を呈する部品を得ることを可能にする。
【0007】
本発明は、重量を減らす必要があり、かつ/または通路を設ける必要がある場合に、任意の中空部品を製造するためのこの種の方法に、改善の提供を試みる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、より詳しくは、本発明は、複数の層に配置された縦糸の束を通って横糸を製織することによる3D製織によってプリフォームを製作し、前記プリフォームを硬化性樹脂で含浸することからなる中空部品の製造方法であって、製織の際に縦糸の2枚のシートの間に部分的な非インターリンキングを保証し、前記非インターリンキングによって前記プリフォームに所望の形状の空洞を生成することによって前記プリフォームを膨張させ、その後に、このようにして成形した前記プリフォームを前記樹脂にて含浸することからなることを特徴とする方法を提供する。
【0009】
非インターリンキングは、縦糸の束の中の特定の平面(より正確には、前記平面の一部分)を横糸が通過しないように保証することからなる製織の特定の特徴である。
【0010】
例えば、本発明の文脈において有利な非インターリンキングは、少なくとも製織の特定の段階から、各々の横糸が形成されるプリフォームの両側において通常どおりに織られるが、縦糸の2つの層の間に画定される中央の平面領域を決して通過することがないように保証することによって得られる。
【0011】
この非インターリンキングを有する3D製織の方法が、織り上げられるプリフォームの端部まで続けられる場合、開放しており、またはアクセスが可能であり、すなわち所望の空洞を得るべく部品の成形および含浸の際に膨張させることができる一種の袋が得られる。
【0012】
目的が、中空部品の重量の削減である場合には、例えば発泡体形式の膨張材料など、糸の密度よりも低い密度を有する固形材料を、袋に挿入することが可能である。そのような低密度材料のブロックは、所望の空洞の形状および寸法を有している。その後に、プリフォームの最終的な成形および含浸が続けられる。
【0013】
対照的に、目的が、ユーティリティ通路を生成することや、管状の構造を得ることなどである場合、前記空洞を生成することからなる作業が、膨張可能部材を前記非インターリンキングの位置においてプリフォームに挿入し、前記膨張可能部材を流体で充填して、この膨張可能部材に所望の空洞の形状および寸法を与えることによって実行される。含浸の後で、このようにして生成された空洞から、流体が抜き取られ、場合により膨張可能部材も抜き取られる。
【0014】
さらに本発明は、プリフォームを3D製織し、前記プリフォームを硬化性樹脂で含浸することによって得られる中空部品であって、空洞を備えており、この空洞が、3D製織の際の非インターリンキングによって可能にされる前記プリフォームの膨張によって画定されることを特徴とする中空部品を提供する。
【0015】
例として、中空部品は、ボートのラダーまたはセンターボードを構成することができる。
【0016】
添付の図面を参照しつつあくまでも例として説明される本発明の原理に従った中空部品の製造方法の以下の説明に照らして、本発明をよりよく理解することができ、本発明の他の利点がさらに明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ボートのラダーまたはセンターボードなどの中空部品を製造するためのプリフォームの3D製織を示している概略図である。
【図2】製織されたプリフォームの図である。
【図3】より低密度の剛性材料で充填された空洞を生成することによって成形された後のプリフォームの図である。
【図4】プリフォームの含浸を示している図である。
【図5】製織による別のプリフォームを図式的に示している図2の変形例である。
【図6】図5のプリフォームの成形を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1が、ボートのラダーへと変形されるプリフォーム11の製織を示している。縦方向の糸またはストランドの束12が配置され、各々が数百本の糸を有するいくつかの層で形成されているジャカード式の織機が使用される。機構は、図示のように、横糸14を挿入する目的で、縦糸のシートに対して横方向に、これらの糸の各々へと作用できるような機構である。プリフォームの製織が進み、プリフォームの厚さおよび幅が変化するとき、特定の数の縦糸が織られないことで、前記プリフォームの外形および連続的に変化しうる所望の厚さを定めることが可能になる。製織の終わりにおいて、縦糸および横糸が、プリフォーム11を取り出すために、織り終えた塊のきわにおいて裁断される。これが、3D製織の終わりかつ成形の前に見られるとおり、図2に示されている。
【0019】
重要な特性によれば、製織が、図2の外形16によって画定される平面領域において、縦糸の2つのシートの間の部分的な非インターリンキング19を伴う。
【0020】
上述のように、この非インターリンキングは、袋18の生成という結果を有する製織の特徴であり、ここで袋は、織り終えた塊の一端において開いており、後に熱硬化性樹脂による含浸に先立つ成形作業において膨張させるために適している。
【0021】
次いで、後にラダーとなるプリフォーム11は、低密度材料のブロック20を袋18へと挿入することによって成形されるが、このブロックは、所望の空洞の形状および寸法を実質的に有している。この作業の結果として、プリフォームに、ラダーに望まれる形状により近い形状が与えられる。これが、図3に示されている状態である。
【0022】
図4に示されている段階(この段階に先立って、随意による熱間圧縮を行ってもよい)は、熱硬化性樹脂でプリフォームの含浸を行う従来からの工程である。低密度材料のブロック20を挿入することによって成形されたプリフォームが、熱硬化性樹脂を注入することができるよう、ストーブ成形モールド22へと配置される。含浸作業の終わりにおいて、ラダーが、機械加工を施し、一方の端部へとチラー棒を付け加えることによって仕上げられる。チラーを、基本的にプリフォームの一端の製織によって得てもよいことを、理解できるであろう。また、そのような部材を、含浸の前または後で、プリフォームの別の端部に取り付けてもよい。
【0023】
図5および図6は、任意の構造の製作に適した中空部品を製造するための変形例を示している。この例において、目的は、ユーティリティ通路100を備える管状の部品を得ることである。この目的のため、プリフォーム111が、上述した方法と同様の方法で、すなわち部分的な非インターリンキング119を形成するように留意して、必要な寸法に製織される。プリフォームが製織の後で成形されるとき、膨張可能な部材120を、非インターリンキングからもたらされるスロットへと挿入し、流体(気体または液体)で充填し、膨張可能な部材120に通路または空洞に望まれる形状および寸法を与えることができる。この膨張可能な部材120は、一種の風船を構成し、含浸の工程の全体を通して膨張した状態に保たれる。ひとたび中空の部品が得られ、その形状および寸法が仕上がると、ユーティリティ通路100を解放すべく、流体が抜き取られ、風船を除去でき、またはその場で壊すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層に配置された縦糸の束を通って横糸を製織することによる3D製織によってプリフォーム(11)を製作し、前記プリフォームを硬化性樹脂で含浸することからなる中空部品の製造方法であって、
製織の際に縦糸の2枚のシートの間に部分的な非インターリンキング(19)を保証し、前記非インターリンキングによって前記プリフォームに所望の形状の空洞を生成することによって前記プリフォームを膨張させ、その後に、このようにして成形した前記プリフォームを前記樹脂にて含浸することからなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記空洞を生成することからなる作業が、所望の空洞の形状および寸法を有する低密度材料のブロック(20)を、前記非インターリンキング(19)の位置において、プリフォーム(11)に導入することからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空洞を生成することからなる作業が、膨張可能部材(120)を前記非インターリンキングの位置においてプリフォーム(111)に挿入し、前記膨張可能部材を流体で充填して、前記膨張可能部材に所望の空洞の形状および寸法を与え、含浸の工程の後で、前記流体を抜き取り、場合により前記膨張可能部材も前記空洞から抜き取ることからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プリフォーム(11)を3D製織し、前記プリフォームを硬化性樹脂で含浸することによって得られる中空部品であって、
空洞を備えており、前記空洞が、3D製織の際の非インターリンキング(19)によって可能にされる前記プリフォームの膨張によって画定されることを特徴とする、中空部品。
【請求項5】
前記空洞が、全体としての重量の削減が達成されるように、低密度の材料で充填されることを特徴とする、請求項4に記載の中空部品。
【請求項6】
前記空洞が、ユーティリティ通路(100)を形成する、請求項4に記載の中空部品。
【請求項7】
ラダーまたはセンターボードを構成する、請求項4または5に記載の中空部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−513322(P2012−513322A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542875(P2011−542875)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052654
【国際公開番号】WO2010/072967
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】