説明

3D/2Dモード切替のために制御可能な液晶レンズを使用するオートステレオスコピック表示装置

オートステレオスコピック表示装置は、表示パネル3上にあるレンチキュラ素子11のアレイ9を有し、レンチキュラ素子は、電気光学材料23を含み、2D及び3D観察モードを可能にするように切り替え可能である。液晶材料のような電気光学材料が、レンチキュラボディ21の形の光学的にトランスペアレントな層に隣接して含まれる。複屈折材料が、レンチキュラボディについて利用され、好適には、電気光学材料と実質的に整合する常屈折率及び異常屈折率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示を生成するための表示ピクセルのアレイを有する表示パネルと、表示パネル上に配されるレンチキュラ手段であって、該レンチキュラ手段を通じて表示ピクセルが観察されるレンチキュラ手段と、を備えるタイプのオートステレオスコピック表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているオートステレオスコピック表示装置は、表示を生成するために空間光変調器として作用する表示ピクセルの行及び列のアレイを有する2次元液晶表示パネルを備える。互いに平行に延在する細長いレンチキュラ素子のアレイが、表示ピクセルアレイ上にあり、表示ピクセルは、これらのレンチキュラ素子を通して観察される。レンチキュラ素子は、素子のシートとして提供され、素子の各々は、細長い半円筒形のレンズ素子を有する。レンチキュラ素子は、表示パネルの列方向に延在し、各々のレンチキュラ素子は、表示ピクセルの2又はそれ以上の隣接する列の個々のグループ上にある。
【0003】
例えば各々のレンチキュラ素子が、表示ピクセルの2列に関連付けられている機構において、各々の列の表示ピクセルは、個々の2次元サブ画像の垂直スライスを提供する。レンチキュラシートは、これら2つのスライス及び他のレンチキュラ素子に関連付けられる表示ピクセル列からの対応するスライスを、シートの前に位置するユーザの左目及び右目に方向付け、それにより、ユーザは、単一のステレオスコピック画像を観察する。こうして、レンチキュラ素子のシートは、光出力の方向付け機能を提供する。
【0004】
他の機構において、各々のレンチキュラ素子は、行方向の例えば4又はそれ以上の隣接する表示ピクセルのグループに関連付けられる。各々のグループ内の表示ピクセルの対応する列は、個々の2次元サブ画像からの垂直スライスを提供するように適切に配置される。ユーザの頭部が、左から右に移動するにつれて、一連の連続する、異なる、ステレオスコピックな(立体的に見える)ビューが知覚され、例えば周囲を見回す印象を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の装置は、効果的な3次元表示を提供する。しかしながら、ステレオスコピックなビューを提供するために、必要な犠牲が装置の水平解像度にあることが分かるであろう。解像度のこの犠牲は、例えば短距離から観察するための小さいテキストキャラクタの表示のような特定のアプリケーション、又は高解像度を必要とするグラフィックアプリケーションにとっては受け入れがたい。この理由のため、2次元(2D)モードと3次元(3Dステレオスコピック)モードとの間で切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置を提供することが提案されている。このような装置は、米国特許第6,069,650号明細書に記載されており、その内容はすべて、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。この装置において、1又は複数のステレオスコピックな対を形成するピクセルの異なるグループが、レンチキュラ素子を通して観察者の個々の目によって見られる。レンチキュラ素子は、レンチキュラ素子の屈折効果の除去を可能にするために、切り替え可能な屈折率を有する電気光学材料を含む。
【0006】
2次元モードにおいて、切り替え可能な装置のレンチキュラ素子は、「通過」モードで動作し、すなわち、それらは、光学的にトランスペアレントな材料の平坦なシートと全く同様に作用する。結果として得られる表示は、表示パネルの固有解像度に等しい高解像度を有し、これは、短い観察距離からの小さいテキストキャラクタの表示に適している。2次元表示モードは、当然ながら、ステレオスコピックな画像を提供することができない。
【0007】
3次元モードにおいて、切り替え可能な装置のレンチキュラ素子は、上述したように、光出力の方向付け機能を提供する。結果として得られる表示は、ステレオスコピックな画像を提供することができるが、更に、前述の必然的な解像度の損失を苦しむ。
【0008】
切り替え可能な表示モードを提供するために、切り替え可能な装置のレンチキュラ素子は、偏光された光に関して2つの異なる値の間で切り替え可能な屈折率を有する、液晶材料のような電気光学材料を使用する。装置は、レンチキュラ素子の上下に設けられる電極層に適当な電位を印加することによって、モード間で切り替えられる。電位は、隣接する光学的にトランスペアレントな層に関連して、レンチキュラ素子の屈折率を変える。代替として、隣接する光学的にトランスペアレントな層は、電気光学材料から形成されることができ、これは、光学的にトランスペアレントな層に関連してレンチキュラ素子の屈折率が変えられるという同じ結果を有する。
【0009】
しかしながら、斜めの角度で観察される場合の、2Dモードにおける不所望の表示アーチファクトに関する問題が経験される。このような角度において、目に見える構造が、レンチキュラシートの構造に関連して現れる表示出力に存在するが、表示パネル及びレンチキュラアレイの面に垂直に観察する場合はこのような構造は目に見えない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの見地によれば、表示パネルと、表示パネル上に配置されるレンチキュラ手段と、を有する切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置であって、レンチキュラ手段が、光学的にトランスペアレントな層に隣接して電気光学材料を含むレンチキュラ素子のアレイを有し、電気光学材料の屈折率が、電界の選択的な印加によって切り替え可能であり、光学的にトランスペアレントな層が、複屈折材料を含む、装置が提供される。
【0011】
上述したように、電気光学材料の屈折率は、レンチキュラ手段に2つの状態を提供するように切り替え可能である:1つの状態では、例えば、光出力の方向付け作用が、提供され、もう1つの状態では、例えば、光出力の方向付け作用が、除去される。これらは、2D及び3D動作モードである。
【0012】
複屈折材料から、レンチキュラ手段の光学的にトランスペアレントな層を形成することによって、斜めの角度における2Dモード表示の上述の不所望の表示アーチファクトの低減の大幅な改善が、達成されることができる。
【0013】
好適には、光学的にトランスペアレントな層が、電気光学材料と実質的に同じ常屈折率及びおそらく異常屈折率を有する。
【0014】
光学的にトランスペアレントな層は、好適には、シート又は板の形のレンズボディを有し、かかるレンズボディに、アレイのレンチキュラ素子が形成される。各々のレンチキュラ素子は、電気光学材料を含む、例えば半円筒形の凹部のようなレンズ形状を有するボディの凹部によって規定されることができる。
【0015】
不所望の表示アーチファクトは、知られている装置において、層の面に対して概して垂直に進む光線に関する光学的にトランスペアレントな層の屈折率が、層の面に対して斜めの角度で、例えば45度で進む光線に関する屈折率と異なるという事実によると、考えられる。2D表示モードにおいて、液晶(LC)材料の分子が、それを横切る適切な電圧印加により層の面に対して垂直に配向される場合、層に対して垂直な光線に関して、LC材料及び層の屈折率は、個々の材料の適当な選択によって整合される。しかしながら、斜めの光線に関して、LC材料の有効屈折率は、常屈折率(一般に約1.5)に等しくなく、常屈折率と異常屈折率(一般に約1.7)との間である。結果的に、光線は、LC材料と層との間のカーブしたレンズ表面において屈折される。これは、表示装置に対して斜めの角度にある観察者にとって目に見える表示アーチファクト構造を引き起こすと考えられる。表示アーチファクト構造の性質は、レンチキュラ手段の物理構造に関連して現れる。これらの効果は、当該層に複屈折材料を与えることを通じて、LC材料と層材料との間の屈折率整合を改善することによって、少なくともある程度除去される。
【0016】
光学的にトランスペアレントな層は、好適には、LC材料と、例えば紫外線硬化可能なポリマのような硬化可能なポリマと、の混合物を含む。
【0017】
光学的にトランスペアレントな層は、好適には、表示パネルの表面に対して垂直な方向において、1.50及び1.55の間(より好適には1.52及び1.54の間)の有効屈折率を有する。これは、2Dモードにおける同じ方向のLC材料の屈折率と整合する。光学的にトランスペアレントな層は、表示パネルの表面に対して垂直な方向から横に45度オフセットされた(傾いた)方向において、1.55及び1.70の間の有効屈折率を有することが好ましい。こうして、屈折率は、斜めの光線に関して、2DモードにおけるLC層の複屈折と整合するために、より大きい。
【0018】
光学的にトランスペアレントな層は、好適には、表示パネルの表面に対して垂直な第1の方向と、該垂直な方向から横にオフセットされた第2の横方向と、の間に複屈折を有する複屈折材料を含む。
【0019】
電気光学材料は、表示装置の2D及び3D動作モードを規定するために好適には切り替え可能である。光学的にトランスペアレントな層は、2D動作モードの場合、電気光学材料と実質的に同じ常屈折率及び異常屈折率を有する。
【0020】
本発明は更に、表示パネルと、表示パネル上に配置されるレンチキュラ手段と、を有する切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置を制御する方法であって、
−3Dモードにおいて、レンチキュラ素子の電気的に切り替え可能な光学材料と光学的にトランスペアレントな層との間のレンズ形状の境界において屈折率変化を規定するように、電界の印加によってレンチキュラ素子の電気的に切り替え可能な光学材料の屈折率を切り替えるステップと、
−2Dモードにおいて、レンズ形状の境界において実質的に屈折率変化を規定しないように、電気的に切り替え可能な光学材料の屈折率を切り替えるステップであって、光学的にトランスペアレントな層は、レンズ形状の境界をよこぎるすべての方向について実質的に屈折率変化がないような複屈折材料を含む、ステップと、
を含む方法が提供される。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、例示によって及び添付の図面を参照して与えられる本発明の好適な実施例の以下の説明を読むことから明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
2次元表示モード及び3次元表示モードの間で切り替えられることができる可視表示領域を有する切り替え可能な表示装置は、知られている。モード間の切り替えは、例えばLC材料のような電気光学材料から形成されるレンズ素子のアレイに電界を印加することによって達成される。2次元モードにおいて、レンズ素子は、それらがトランスペアレントな材料の通常のシートであるかのように振舞う。3次元モードにおいて、レンズ素子は、ステレオスコピック画像が知覚されることを可能にするために、光出力の方向付け機能を提供する。
【0023】
図1は、本発明が適用されることができる、知られている切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置1の図式的な斜視図である。表示装置1は、展開された形式で示されている。
【0024】
知られている装置1は、表示を生成するために空間光変調器として作用するアクティブマトリックスタイプの液晶表示パネル3を有する。表示パネル3は、行及び列で配置される表示ピクセル5の直交アレイを有する。明確にするため、少数の表示ピクセル5だけが、図に示されている。実際、表示パネル3は、約1000行及び数千列の表示ピクセル5を含むことができる。
【0025】
液晶表示パネル3の構造は、まったく通常のものである。具体的には、パネル3は、一対の間隔を置いて配置されるトランスペアレントなガラス基板を有し、ガラス基板の間には、配向されるツイステッドネマチック又は他の液晶材料が提供される。基板は、それらの対向する表面上に、トランスペアレントなインジウムスズ酸化物(ITO)電極のパターンを担持する。更に、偏光層が、基板の外側表面に設けられる。
【0026】
各々の表示ピクセル5は、間に介在する液晶材料を含む向かい合う電極を基板上に有する。表示ピクセル5の形状及びレイアウトは、電極の形状及びレイアウトによって決定される。表示ピクセル5は、間隙によって、規則的に他から間隔をおいて配置される。
【0027】
各々の表示ピクセル5は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)又は薄膜ダイオード(TFD)のようなスイッチング素子に関連付けられる。表示ピクセルは、スイッチング素子にアドレッシング信号を供給することによって表示を生成するように動作される。適切なアドレッシング手法は、当業者に知られている。
【0028】
表示ピクセル5間の間隙は、不透明な黒色マスクによって覆われる。マスクは、光吸収材料のグリッドの形で設けられる。マスクは、スイッチング素子を覆い、個別の表示ピクセル領域を規定する。
【0029】
表示パネル3は、この例では表示ピクセルアレイの領域に延在する平面バックライトを含む光源7によって照射される。光源7からの光は、表示パネル3を通じて方向付けられ、個別の表示ピクセル5は、光を変調させ、表示を生成するように、駆動される。
【0030】
表示装置1は、更に、表示パネル3の表示出力側に位置するレンチキュラ素子機構9を有するレンチキュラ手段を備える。機構は、ビュー形成機能を選択的に実施するように制御可能である。レンチキュラ素子機構9は、互いに平行に延在するレンチキュラ素子11のアレイを有し、そのうちの1つだけが、明確さのために、誇張された寸法で示されている。
【0031】
レンチキュラ素子機構9は、より詳しく図2に図式的に示されている。機構9は、展開された形式で示されている。
【0032】
図2を参照して、レンチキュラ素子機構9は、一対のトランスペアレントなガラス基板13、15を有し、インジウムスズ酸化物(ITO)から形成されるトランスペアレントな電極層17、19が、ガラス基板13、15の対向する表面上に設けられる。各々の電極層17、19は、複数の平行な細長い電極の形であり、個々の異なる層17、19の電極は、互いに垂直に配置される。細長い電極は、それらが別々にアドレスされることを可能にするために、電極間に小さい間隙を有して配置される。
【0033】
レンチキュラボディを構成し、逆レンチキュラ構造を有するシート又は板の形の、光学的にトランスペアレントな層21が、基板13、15の間に、基板の上側のもの13と隣り合って設けられる。レンチキュラボディ21は、複製技法を使用してプラスチック材料から製造される。更に、ネマチック液晶材料23が、基板13、15の間に、基板の下側のもの15に隣り合って供給される。レンチキュラボディ21の逆レンチキュラ構造は、図に示されるように、レンチキュラボディ21と下側の基板15との間で、液晶材料23が、平行な細長い半円筒形のレンチキュラ形状を呈するようにする。更に、液晶材料23と接触するボディ21の逆レンチキュラ構造及び下側基板15の表面は、液晶材料23を配向するために、配向層25及び26を備える。
【0034】
使用時、図1に示される知られている切り替え可能な表示装置1は、表示出力を提供するように動作可能であり、そのディスクリートな部分が、2次元(2D)及び3次元(3D)表示モードの間で、単独で又は組み合わせによって、切り替えられることができる。このようにして、1又は複数の2次元表示ウィンドウが、3次元表示領域に提供されることができる。
【0035】
モード間の表示出力のディスクリート部分の切り替え可能性は、液晶材料23から形成されるレンチキュラ素子に電界を印加することによって達成される。この電界は、電極層17、19の電極に電位を印加することによって生成される。
【0036】
電位は、各々の電極層17、19の細長い電極のうち選択された数の隣接するものに印加される。上側電極の選択は、切り替えられるべき表示ウィンドウの高さを規定し、下側電極の選択は、切り替えられるべき表示ウィンドウの幅を規定する。
【0037】
図示されるように小区分される代わりに、電極17及び19はそれぞれ、ピクセルアレイ上に連続的に延在するとともに、2D及び3D表示モードの間でその全体の表示出力を切り替えるために単なる適切な電圧の印加によって動作可能である単一の電極であってもよい。
【0038】
印加される電位は、表示領域の選択された部分のレンチキュラ素子が、光出力の方向付け機能の維持及び除去の間の切り替えをするようにする。これについて、以下、図3A及び図3Bを参照して説明する。LC材料の配向は、その静的誘電率異方性のため、印加される電界を通じて制御されることができる。光学的状況において、誘電率異方性が更にあり、LC材料の屈折率は、比誘電率に関連する。LC材料は、常屈折率及び異常屈折率を有し、前者は、ディレクタに対して垂直な電界偏光を有する光に適用可能であり、後者は、ディレクタに平行な電界偏光を有する光に適用可能である。
【0039】
図3Aは、電位が電極に印加されない場合の、レンチキュラ素子機構9の一部の図式的な断面図である。ここで、配向層25及び26のラビング方向及び表示光の偏光は、z方向にある。結果として、有効なレンズは、光学的に複屈折であるが、LC材料の異常屈折率に対応する屈折率を有する等方性レンズとして近似されることができる。この状態において、表示パネルによって提供される直線偏光された光に関する液晶材料23の屈折率は、ボディ21の屈折率より実質的に高く、それゆえ、レンチキュラ形状は、図示されるように、光出力の方向付け機能を提供する。
【0040】
図3Bは、約50ボルトの交番電位が電極に印加される場合の、レンチキュラ素子機構9の一部の図式的な断面図である。電界は、y方向において生成され、LC分子は、電解線と並ぶ。結果として、ディレクタは、y方向にある。表示パネルからの光の偏光方向は、直線偏光される。表示の偏光がz方向にある場合、有効なレンズは、常屈折率を有し、屈折率整合がLC材料及びレンチキュラボディ21の間にあるので、光は屈折されない。従って、この状態において、表示パネルによって提供される直線偏光の光に関するLC材料23の屈折率は、ボディ21の逆レンチキュラ構造と実質的に同じであり、それゆえ、図示されるように、レンチキュラ形状の光出力の方向付け機能が打ち消される。このように、アレイは、効果的に、「通過」モードで作用する。
【0041】
図3Aに示されるように光出力の方向付け機能が維持される場合、LC材料23によって規定されるレンチキュラ素子は、凸形の円筒レンズとして作用し、表示パネル3から、表示装置1の前に位置するユーザの目に、異なる画像又はビューを提供する。こうして、3次元画像が、提供されることができる。
【0042】
図3Bに示されるように光出力の方向付け機能が取り除かれる場合、液晶材料23によって規定されるレンチキュラ素子は、それらが凸形の円筒レンズの平坦なシートであるかのように作用する。こうして、高解像度の2次元画像が、表示パネル3の完全な固有解像度を用いて提供されることができる。
【0043】
表示モード間の切り替えをする電位の制御は、コントローラ12によって、レンチキュラ素子機構9の電極に供給される。
【0044】
知られている切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置の構造の更なる詳細は、米国特許第6,069,650号明細書に見い出されることができ、それを参照されたい。
【0045】
例えば表示パネルの面に対して約45度の斜めの角度で2Dモードの表示を観察する場合、不所望の表示アーチファクトが、この装置の表示出力において目に見えることが分かっている。これらのアーチファクトは、その構造がレンチキュラアレイの構造に関連するように現れる目に見える暗いバンディング又は陰影ラインの形である。表示パネルに垂直に2Dモード表示出力を観察する場合、アーチファクト構造は存在しない。アーチファクトは、いくらかの残余のレンズ効果によると考えられる。
【0046】
構造の可視性は、次のように説明されることができる。2Dモードにおいて、電圧が、レンチキュラ素子に印加され、LC材料の分子は、垂直に配向され、すなわち、表示パネル3の面にほぼ垂直である。図4は、このモードにおいて、アレイの2つの例示的なレンチキュラ素子の適用される効果を図式的に示し、これらの素子のLC材料の垂直な配向を示している。表示パネル及びレンチキュラアレイに対して実質的に垂直に進む光線は、LC材料及びレンチキュラボディ21の屈折率が整合されているので、レンズ表面(LC材料23及びレンチキュラボディ21の間の半円筒の境界)において屈折率の変化をみない。結果的に、光の経路は、変更されない。これは、図4の左側のレンチキュラ素子に関して示されている。
【0047】
しかしながら、斜めの光線の場合、LC材料23の有効屈折率は、常屈折率(一般に約1.5)に等しくなく、常屈折率と異常屈折率(一般に約1.7)の間の値を有する。結果的に、光線は、図4の右側のレンチキュラ素子に関して表されるように、カーブしたレンズ表面において屈折される。このように、LC材料の複屈折の特性により、斜めの角度で表示を観察する場合、残余のレンズ効果がある。レンチキュラ素子の焦点距離は角度に依存するものとされる。表示パネルに対して直角な垂直角度では、焦点倍率はゼロであるが、それは、観察角度が大きくなると増加する。特定の観察角度の場合、レンチキュラ素子の焦点は、表示パネルのピクセル構造のところにある。結果として、パネル内のピクセルを囲む黒色マトリックスが、無限遠にイメージングされ、これは、目に見えるアーチファクト構造の原因であると考えられる。
【0048】
この問題を解決するために、複屈折材料が、レンチキュラボディ21について使用される。好適には、複屈折材料は、LC材料と同じ常屈折率及び異常屈折率を有する。
【0049】
この効果は、図4と同様に2つの例示的なレンチキュラ素子11を有するレンチキュラアレイ9の一部の断面図である図5に示されている。レンチキュラボディ21の光軸の向きは、好適には、図5に示されるように垂直方向にある。
【0050】
3D動作モードにおいて、表示パネルからの光は、屈折がレンズ表面において得られるように偏光される。光線は、LC材料23の異常屈折率及びレンチキュラボディ21の常屈折率をみる。結果的に、垂直方向の光線は、レンズ表面において屈折率の変化を見ず、屈折されない。
【0051】
図5に示されるような2D動作モードにおいて、電圧が、レンチキュラ素子に印加され、LC材料分子は、垂直に再び配向される。このモードにおいて、LC材料及びレンチキュラボディ21の材料の常屈折率及び異常屈折率は整合し、レンズ表面において屈折はない。図5の左側のレンチキュラ素子11は、垂直に進む光の効果を表しており、右側のレンチキュラ素子11は、斜めに進む光の効果を表している。分かるように、いずれの場合においても、光線は、レンズ表面における屈折率の変化をみず、屈折されない。
【0052】
具体的には、光学的にトランスペアレントな層は、表示パネルの表面に垂直な(すなわち図5の左側の図に示されるように垂直な)第1の方向と、第2の横方向(すなわち右側の図に示されるように横成分を有する)と、の間の複屈折を有する複屈折材料を含む。
【0053】
更に詳細には、レンチキュラ素子11内のLC材料23は、均質な一軸異方性の媒質によって近似されることができる。一軸異方性の媒質中の光の伝播は、2つの独立した偏光モードによって記述されることができる。各々の独立したモードの屈折率は、複屈折媒質の光軸に対する伝播方向及び偏光方向に依存する。常屈折率を有する通常(O)波は、波数ベクトルk及び光軸に対して垂直な偏光方向を有する。異常(E)波は、O波の偏光方向に対して垂直な偏光方向を有する。E波の異常屈折率は、波数ベクトルkと光軸との間の角度Θに依存する。
【0054】
O波の伝播及びE波の伝播を区別することが可能である。O波の場合、屈折率は、伝播方向に依存しない。しかしながら、E波の場合、光軸に対する伝播方向に依存して、屈折率のバリエーションがある。言い換えると、屈折率は、同様に、観察角度に依存する。角度Θが増加する場合、有効屈折率も同様に増加する。特定の観察角度について、レンチキュラの屈折力は、切り替え可能なレンチキュラの焦点が、ちょうど表示パネルのピクセル構造のところにある値に達する。
【0055】
図5の装置において、レンチキュラボディ21は、垂直なy方向において、光軸に関して光学的に複屈折である。切り替え可能なレンチキュラ素子について使用されるLC材料23は、例えば1.527の常屈折率及び1.766の異常屈折率を有する。複屈折レンチキュラボディ21の屈折率を変更することによって、レンチキュラ素子の屈折力は、変更される。O波について完全な屈折率整合を生成するために、レンチキュラボディ21の常屈折率は、LC材料23の常屈折率に実質的に等しいように選択される。結果として、O波に関してレンズ効果はない。
【0056】
3Dモードにおいて装置の性能は、大きな影響を受けない。
【0057】
複屈折レンチキュラボディは、例えば2Pのような硬化可能なフォトポリマとLC材料との混合物を含むことができる。混合物は、例えば紫外線硬化によって重合される。
【0058】
やや好適な実施例において、レンチキュラボディ21の材料の異常屈折率は、LC材料23の異常屈折率と整合しなくてもよい。この実施例では、レンズ表面においてなおいくらかの屈折がありうるが、それは知られている装置よりも大幅に少ない。
【0059】
当業者によって理解されるようなさまざまな変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明が適用されることができる知られているオートステレオスコピック表示装置の図式的な斜視図。
【図2】図1に示される知られている表示装置の素子の詳細図。
【図3A】図1に示される知られている表示装置の動作原理を説明するために使用される図。
【図3B】図1に示される知られている表示装置の動作原理を説明するために使用される図。
【図4】動作の光学的効果を表す図1の装置の2つの例示のレンチキュラ素子の図式的な断面図。
【図5】本発明による表示装置の実施例におけるレンチキュラアレイの一部の、図4と同様の図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置であって、
表示パネルと、
前記表示パネル上に配されるレンチキュラ手段と、
を有し、前記レンチキュラ手段は、光学的にトランスペアレントな層に隣接して電気光学材料を含むレンチキュラ素子のアレイを有し、前記電気光学材料の屈折率は、電界の選択的な印加によって切り替え可能であり、前記光学的にトランスペアレントな層は、複屈折材料を含む、装置。
【請求項2】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記電気光学材料と実質的に同じ常屈折率及び異常屈折率を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気光学材料は、液晶材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記表示パネルは、液晶表示パネルを有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記光学的にトランスペアレントな層は、液晶材料及び硬化可能なポリマの混合物を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記硬化可能なポリマは、紫外線硬化可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記表示パネルの表面に対して垂直な方向において、1.50及び1.55の間の有効屈折率を有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記表示パネルの表面に対して垂直な方向から横に45度オフセットされた方向において、1.55及び1.70の間の有効屈折率を有する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記表示パネルの表面に対して垂直な第1の方向と前記垂直な方向から横にオフセットされた第2の横方向との間に複屈折を有する複屈折材料を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記電気光学材料は、前記表示装置の2D及び3D動作モードを規定するように切り替え可能である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記2D動作モードの場合、前記電気光学材料と実質的に同じ常屈折率及び異常屈折率を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
表示パネルと、
前記表示パネル上に配されるレンチキュラ手段と、
を有する、切り替え可能なオートステレオスコピック表示装置を制御する方法であって、
3Dモードの場合、レンチキュラ素子の電気的に切り替え可能な光学材料と、光学的にトランスペアレントな層と、の間のレンズ形状の境界において屈折率変化を規定するように、電界の印加によって前記電気的に切り替え可能な光学材料の屈折率を切り替えるステップと、
2Dモードの場合、前記レンズ形状の境界において実質的に屈折率変化を規定しないように、前記電気的に切り替え可能な光学材料の屈折率を切り替えるステップであって、前記光学的にトランスペアレントな層が、前記レンズ形状の境界を横切るすべての方向について実質的に屈折率変化がないような複屈折材料を含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記電気光学材料と実質的に同じ常屈折率及び異常屈折率を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気光学材料は、液晶材料を含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記表示パネルの表面に対して垂直な方向において、1.50及び1.55の間の有効屈折率を有する、請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的にトランスペアレントな層は、前記表示パネルの表面に対して垂直な方向から横に45度オフセットされた方向において、1.55及び1.70の間の有効屈折率を有する、請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−528565(P2009−528565A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556896(P2008−556896)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050601
【国際公開番号】WO2007/099488
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】