説明

4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの含有量が低いイチョウ抽出物

【課題】4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの含有量が低減されたイチョウ葉の抽出物の作製方法、該抽出物の提供、認知症およびその症状および/または脳または末梢血液循環障害の治療のための薬剤または食品の調製のための該抽出物の使用。
【解決手段】イチョウ葉の抽出物中の4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンを吸着樹脂および/またはイオン交換体によるろ過によって低減できる多段階精製方法。さらに、該方法によって得た4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの含有量が低減されたイチョウ葉抽出物、およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの含有量が低減されたイチョウ葉の抽出物を調製するための改善された多段階法であって、4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの除去は吸着樹脂および/またはイオン交換体によるろ過によって行われ、前記除去されるべき物質は前記樹脂上に保持される方法によって得られる、4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの含有量が低減されたイチョウ抽出物、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
何十年にもわたって、イチョウの葉からの抽出物は薬物として利用されている。現在、それら抽出物は、異なる種類の認知症およびその症状ならびに脳および末梢血液循環障害の治療に利用されている。その効力に関与している成分は、テルペンラクトン(ギンゴライドA、BおよびCおよびビロバライド)およびフラボンのグリコシド(ケルセチン、ケンペロールおよびイソラムネチン)である。イチョウの葉には、所望の効力には寄与しないが危険や副作用をもたらす可能性のある成分も含まれている。ギンコール酸のごとき非寒帯植物成分の他に、それらの成分は、4’−O−メチルピリドキシンおよびビフラボンである。効能があると同時に可能な限り安全で可能な限り副作用が少ないイチョウ抽出物には、これらの化合物は、できる限り存在してはならない。
4’−O−メチルピリドキシンは、痙攣発作および意識不明のごとき中毒症状を発症させる原因となり得る。従って、この化合物もギンコトキシンと呼ばれる。イチョウに含有されるビフラボンは、免疫毒性を示し、接触アレルギーを誘発することがある。イチョウに含有されるこれらビフラボンは、主に、アメントフラボン、ビロベチン、ギンゲチン、イソギンゲチンおよびシアドピチシンといった化合物である。
4’−O−メチルピリドキシン:
【0003】
【化1】

ビフラボン:
【0004】
【化2】

【0005】
4’−O−メチルピリドキシンおよび同時にビフラボンを除去するための方法および得られる抽出物は、EP1037646B1にすでに記載されている。その文献では、4’−O−メチルピリドキシンは酸性カチオン交換体を用いて保持され、ビフラボンは活性炭に吸着される。これらの除去工程は、EP1037646B1による方法の工程f)(3ページ目)の後、すなわち、「溶液を鉛化合物または不溶性ポリアミドで処理した」後で実施されることが好ましい。EP1037646B1の方法は、DE3940091C2に最初に記載された方法に基づいている。
EP1037646B1では、ビフラボンおよび4’−O−メチルピリドキシンの除去は、前記方法における一段階(工程f))において実施される。ここでは、鉛塩およびアンモニウム塩が比較的高い含有率で存在するので、使用するイオン交換体を増量させなければならない。
【0006】
さらに、ビフラボンおよび4’−O−メチルピリドキシンの除去は、組み合わせでのみ、記載およびクレームされている。しかしながら、将来的に設けられる可能性がある制限によっては、および、抽出物の組成の変更を最小限にするという要件に鑑みると、ビフラボンのみ、あるいは、4’−O−メチルピリドキシンのみを除去することが望ましいことがあり得る。
さらに、EP1037646B1が目指す50ppm未満の4’−O−メチルピリドキシンおよび100ppm未満のビフラボンという含有量は、まだ比較的高い。EP1037646B1には比較例が記載されていないため、実施例2および3において達成される実際の除去の程度は、この引用文献からは分からない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンの含有量が低いイチョウ抽出物を調製するための方法であって、前述の欠点が無く、とりわけ、
・ リサイクル性が高いおよび/または非常に安価な吸着剤を使用し、
・ 4’−O−メチルピリドキシンの含有量を20ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは2ppm未満にし、および/または、ビフラボンの含有量を20ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは5ppm未満にし、そして
・ 好ましくは20〜30重量%(特に好ましくは22.0〜27.0%)のフラボノイド、4.5〜8.5重量%(特に好ましくは5.0〜7.0%、好ましくは2.8〜3.4%のギンゴライドA、BおよびCならびに2.6〜3.2%のビロバリド)のテルペンラクトンおよび(最大で5ppm)のギンコール酸を含有する抽出物をもたらす(前記22.0〜27.0%のフラボノイド、5.0〜7.0%(2.8〜3.4%のギンゴライドA、BおよびCおよび2.6〜3.2%のビロバリド)のテルペンラクトンおよび(最大で5ppm)のギンコール酸は、ドイツ薬局方2003(“Deutsches Arzneibuch;DAB”)の必要条件を満たす)、
ことを特徴とする方法を提供することである。
前記DABによれば、フラボノイドは、酸加水分解後にケルセチン、ケンペロールおよびイソラムネチンの形態で測定され、フラボノイドグリコシドとして計算される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、ビフラボンを吸着樹脂を用いて分離させ、および/または、4’−O−メチルピリドキシンを酸性イオン交換体によって分離させることによって達成することができる。
【0009】
本発明による抽出物を生成するには、好ましくは下記方法、
ここで工程a)〜i)および工程m)はすでにDE3940091C2に実質的に記載されており、その開示内容の全体は、特に方法の詳細に関して、本願に援用されるべきである、
a)20〜90重量%の含有量を有する含水アセトン、炭素数が1〜3(メタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノール)でありかつ20〜90重量%の含有量を有する含水アルカノールまたは無水メタノールを用いて、20〜100℃、好ましくは40〜60℃の温度で、イチョウ(薬物)の葉を抽出する工程、ここで薬物と溶媒の量比は、1:4〜1:20、好ましくは1:5〜1:10である、と、
b)前記有機溶媒を最大で10重量%(好ましくは最大で5重量%)の含有量にまで蒸発させることによって前記溶媒を分離する工程、ここで最終蒸留工程において水を添加してもよい、と、
c)残りの水溶液を水で5〜25重量%(好ましくは15〜20重量%)の固形分にまで希釈し、25℃よりも低い温度(好ましくは約10〜12℃)にまで冷却し、そして残りの水溶液を沈殿物が形成されるまで静置しておく工程と、
d)残りの水溶液を硫酸アンモニウムで(好ましくは最大40重量%、特に好ましくは25〜35重量%の含有量にまで)処理した後、メチルエチルケトンまたはメチルエチルケトンとアセトンとの(好ましくは9:1〜4:6、とりわけ6:4の比率の)混合物を用いて少なくとも1回抽出する工程と、
e)得られた抽出物を(好ましくは50〜70重量%の固形分にまで)濃縮し、エタノールと水との混合物で希釈することによって、50重量%の水と50重量%のエタノールとを含有しかつ10重量%の固形分を有する溶液を得る工程と、
f)前記溶液を、茶色から暗褐色への色の変化が生じるまで鉛化合物(好ましくは酢酸鉛、酢酸水酸化鉛、硝酸鉛、または水酸化鉛の水性懸濁液)または不溶性ポリアミド(好ましくはポリアミド6、ポリアミド6,6または架橋ポリビニルピロリドン(ポリビドン))で処理する工程と、
g)ろ過された溶液を、60〜100℃の沸点を有する脂肪族または脂環式溶媒を用いて抽出する工程と、
h)残りの水性アルコール溶液を濃縮した後、硫酸アンモニウムで処理し、メチルエチルケトンおよびエタノールで抽出する(前記溶液は、減圧下において、最大で約5%のエタノール含有量にまで濃縮し、20重量%の硫酸アンモニウムを添加し、前記溶媒で8:2〜5:5、好ましくは6:4の割合で抽出することが好ましい)工程と、
i)得られた有機相を50〜70重量%の固形分にまで濃縮する工程と、
k)得られた濃縮物を、炭素数が1〜3の含水アルカノールに溶解させ、任意にろ過する工程と、
l)吸着樹脂および/またはイオン交換体でろ過する工程、ここで除去されるべき物質は前記樹脂上に保持される、と、
m)濃縮物を(好ましくは60〜80℃の最高温度で)減圧下において乾燥させることによって、含水率が5%未満である乾燥抽出物を得る工程と、
を含んでなる方法が実施される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による方法の利点とは、前記除去工程が前記方法の最後に行われるということである。従って、より少量のイオン交換体が使用されなければならず、とりわけ低い含有量の4’−O−メチルピリドキシンおよび/またはビフラボンが得られる。
工程l)における好ましい吸着樹脂は、ダイアイオン(Diaion) HP−20、HP−21またはセパビーズ(Sepabeads) SP−207およびSP−850のごとき、任意に置換されるスチレン/ジビニルベンゼンを基礎とする樹脂である。好ましいイオン交換体は、メルク(Merck) Iまたはアンバーライト(Amberlite) IR−120のごとき、強酸性イオン交換体である。前記ろ過は、任意に、さらなる溶媒を用いた通常の洗浄を伴う。工程k)における含水アルカノールは、20〜90重量%の含有量を有する含水メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノールであり、好ましくは含水エタノールであり、40〜60重量%の濃度が特に好ましい。
【0011】
本発明の対象は、本発明による方法によって得られうる、かつ、
・ 20ppm未満、好ましくは10ppm未満、とりわけ2ppm未満の4’−O−メチルピリドキシン、および/または
・ 20ppm未満、好ましくは10ppm未満、とりわけ5ppm未満のビフラボン
を含有する抽出物、とりわけ、乾燥抽出物である。
【0012】
さらに、本発明の対象は、本発明による方法によって得られうる、かつ、
・ 20〜30重量%、好ましくは22.0〜27.0重量%のフラボノイド、
・ 4.5〜8.5重量%、好ましくは5.0〜7.0重量%のテルペンラクトン、および
・ 10ppm未満、好ましくは5ppm以下のギンコール酸
を含有する抽出物、とりわけ、乾燥抽出物である。
【0013】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法によって得られ、かつ、
・ 20〜30重量%、好ましくは22.0〜27.0重量%のフラボノイド、
・ 合計で2.5〜4.5重量%、好ましくは2.8〜3.4重量%のギンゴライドA、BおよびC、
・ 2.0〜4.0重量%、好ましくは2.6〜3.2重量%のビロバリド、
・ 10ppm未満、好ましくは5ppm以下のギンコール酸、および
・ 20ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは2ppm未満の4’−O−メチルピリドキシン、および/または
・ 20ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは5ppm未満のビフラボン
を含有する抽出物、とりわけ、乾燥抽出物である。
ヨーロッパ薬局方によれば、乾燥抽出物は、一般に、少なくとも95重量%の乾燥残留物を有する。
【0014】
本発明による抽出物は、粉末、顆粒、錠剤、糖衣錠(コーティングされた錠剤)またはカプセルの形態で、好ましくは経口で、投与することができる。錠剤を調製するには、抽出物を、好適な薬学的に許容しうるアジュバント、例えばラクトース、セルロース、二酸化ケイ素、クロスカルメロースおよびステアリン酸マグネシウムと混ぜ合わせ、プレス成形して錠剤にし、任意に前記錠剤に、例えばヒドロキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、顔料(例えば二酸化チタン、酸化鉄)および滑石粉から成る好適なコーティングが施される、本発明による抽出物はカプセルに充填してもよく、その際に任意に安定剤、充填剤等のごときアジュバントを添加してもよい。投与量としては、1日当たり、10〜2,000mg、好ましくは50〜1,000mg、特に好ましくは100〜500mgの抽出物が投与される。
本発明のさらなる対象は、これらの抽出物と、任意に活性成分および/または薬学的に許容しうるアジュバントのごとき他の物質とを含有する薬剤、食品および他の調合物である。ここで用いられる「食品」という用語は、特に、ダイエット食品、栄養補助食品ならびに医療食品および健康補助食品を指す。
【実施例】
【0015】
実施例1および2および比較例1および2で使用される抽出物溶液の調製
イチョウの乾燥葉(薬物)を、その重量(w/w)の7倍(すなわち、薬物/溶媒比は1:7)のアセトン/水(60/40)(w/w)を用いて、約50℃の温度で抽出した(工程a))。
前記有機溶媒の大部分を抽出物から分離し(工程b))、残りの濃縮水溶液を水で約10重量%の固形分にまで希釈した。得られた溶液を攪拌しながら約12℃の温度まで冷却し、形成された沈殿物を除去した(工程c))。
残りの水溶液に約30重量%の硫酸アンモニウムを添加し、形成された溶液を、メチルエチルケトンとアセトンとを6:4の割合で含んでなる混合物を用いて抽出した(工程d))。
得られた抽出物を高度に濃縮し、そのようにして得られた濃縮物を水とエタノールとで希釈することによって、約10重量%の固形分において50重量%の水と50重量%のエタノールとを含有する溶液が得られた(工程e)。この溶液をろ過し、ろ液に酢酸水酸化鉛の水溶液を添加した(工程f)。
さらなるろ過の後、残りの水性アルコール溶液をヘプタンで抽出した(工程g))。
その後、残りの水性アルコール溶液を減圧下において約5%のエタノール含有量にまで濃縮し、硫酸アンモニウムを添加することによって、含水量に基づいて約20重量%の含有量を達成した。
得られた溶液を、メチルエチルケトンとエタノールとを6:4の割合で含んでなる混合物を用いて抽出した(工程h))。
得られた有機相を高度に濃縮した(約55重量%の固形分)(工程i))。その後、得られた生成物をエタノールと水とで希釈することによって、約75%のエタノール含有量と、約15%の固形分とを有する溶液が得られた(工程k))。
【0016】
実施例1: 4’−O−メチルピリドキシンの含有量が低減されたイチョウ抽出物
上記調製法に従って得られた1,249gの抽出物溶液を、水で約40%(w/w)のエタノール含有量にまで調整し、50ml(0.28ml/gの乾燥抽出物に相当)のアンバーライト(Amberlite) IR−120(強酸性イオン交換体)(カラム:約2×16.5cm、流量:約8ml/分)に適用し(工程l))、200mlの50%エタノール(w/w)で洗浄した。得られた溶液を回転蒸発器で濃縮し、真空中において50℃で乾燥させた(工程m)):179.4g。
下記表から分かるように、0.4ppmという4’−O−メチルピリドキシンの含有量は、効力に関与している成分の含有量を基本的に変えることなく達成された。
【0017】
比較例1: 本発明の工程l)による除去が無いイチョウ抽出物
実施例1で使用された98.4gの抽出物溶液を蒸発によって濃縮し、真空中において50℃で乾燥させた:14.7g。
【0018】
実施例2a): ビフラボンの含有量が低減されたイチョウ抽出物
上記調製法に従って得られた500gの抽出物溶液を、水で約40%(w/w)のエタノール含有量にまで調整し、400ml(5.7ml/gの乾燥抽出物に相当)のセパビーズ(Sepabeads) SP−850(吸着樹脂)(カラム:約4×32cm、流量:約8ml/分)に適用し(工程l))、合計で約2lの40%エタノール(w/w)で洗浄した。得られた溶液の10%(259.3g)を回転蒸発器で濃縮し、凍結乾燥させた(工程m)):6.92g。前記溶液の残りの90%は実施例2b)で使用した。
下記表から分かるように、1ppm未満というビフラボンの含有量は、効力に関与している成分の含有量を基本的に変えることなく達成された。
【0019】
実施例2b): 4’−O−メチルピリドキシンおよびビフラボンの含有量が低減されたイチョウ抽出物
実施例2a)で得られた溶液の90%(2,334.1g)を、25ml(0.40ml/gの乾燥抽出物に相当)のアンバーライト(Amberlite) IR−120(強酸性イオン交換体)(カラム:約1.5×11cm、流量:約10ml/分)に適用し(工程l))、100mlの40%エタノール(w/w)で洗浄した。得られた溶液を回転蒸発器で濃縮し、凍結乾燥させた(工程m)):61.67g。
下記表から分かるように、0.4ppmという4’−O−メチルピリドキシンの含有量および1ppm未満というビフラボンの含有量は、効力に関与している成分の含有量を基本的に変えることなく達成された。
【0020】
比較例2: 本発明の工程l)による除去が無いイチョウ抽出物
50gの実施例2a)で使用された抽出物溶液を蒸発によって濃縮し、凍結乾燥させた:7.05g。
【0021】
比較例3: EP1037646B1に準じた鉛化合物による処理(工程f))後にビフラボンおよび4’−O−メチルピリドキシンが除去されたイチョウ抽出物
イチョウの乾燥葉(薬物)を、その重量(w/w)の7倍(すなわち、薬物/溶媒比は1:7)のアセトン/水(60/40)(w/w)を用いて、約50℃の温度で抽出した。
前記有機溶媒の大部分を抽出物から分離し、残りの濃縮水溶液を水で約10重量%の固形分にまで希釈し、攪拌しながら約12℃の温度まで冷却し、形成された沈殿物を除去した。
残りの水溶液に約30重量%の硫酸アンモニウムを添加し、形成された溶液を、メチルエチルケトンとアセトンとを6:4の割合で含んでなる混合物を用いて抽出した。
得られた抽出物を高度に濃縮し、そのようにして得られた濃縮物を水とエタノールとで希釈することによって、約10重量%の固形分において50重量%の水と50重量%のエタノールとを含有する溶液が得られた。この溶液をろ過し、ろ液に酢酸水酸化鉛の水溶液を添加し、再度ろ過した(工程f))。
【0022】
そのようにして得られた溶液の150ml(乾燥抽出物の部分:7.1%、エタノール含有量:約50%)を、2.5g(最終生成物の0.17g/gに相当)の活性炭と、室温で30分間かき混ぜ合わせた。ろ液を、4.2ml(最終生成物の0.28ml/gに相当)の強酸性カチオン交換体(Merck I)を備えたカラムに適用した。前記イオン交換体カラムを、4×5mlのEtOH(50%)で洗浄した。
一緒にした溶出液を、3×70mlのn−ヘキサンを用いて振盪によって抽出した。エタノール/水相を回転蒸発器で濃縮し、水で100gにまで希釈した。そのようにして得られた抽出物溶液を、1×40ml、2×30mlおよび1×20mlの、メチルエチルケトンとエタノールとを3:2の割合で含んでなる混合物を用いて抽出し、15gの硫酸アンモニウムを添加して相分離を行った。
【0023】
有機相に25gの硫酸アンモニウムを添加した後、室温で1時間攪拌した。溶解しない硫酸アンモニウムおよび形成された水相を分離した。抽出物溶液を50℃において回転蒸発器で濃縮し、真空中において60℃で乾燥させた:14.8g。
下記表から分かるように、52ppmという4’−O−メチルピリドキシン含有量および31.3ppmというビフラボン含有量、従って、本発明による実施例2b)よりも著しく高い含有量および劣った除去結果が得られた。
表1に記載のフラボノイド、テルペンラクトンおよびギンコール酸の含有量の測定は、前記DABに従って行った。
【0024】
4’−O−メチルピリドキシンの定量は、Sep Pak Plus C18カートリッジによる濃縮に続いてBond Elut LRC−SCXカートリッジによる濃縮を行った後、HPLCおよび蛍光検出によって行った。前記定量では、Phenomenex Prodigy 5 μ ODS−3 HPLCカラムおよびトリフルオロ酢酸(pH2):メタノール=9:1(v/v)→メタノールの勾配を用いた。
表1に記載のビフラボンの含有量の測定は、9:1(v/v)の水:アセトニトリル+0.3容量%のリン酸(85%)→アセトニトリル+0.3容量%のリン酸の勾配を用いて、Waters Nova Pak C18カラムによってHPLCおよび340nmでの紫外検出によって行った。
いずれの場合も、高く、明確な純度等級を有する基準物質を用いて較正を行った。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケルセチングリコシド、ケンペロールグリコシドおよびイソラムネチングリコシドよりなる群から選ばれるフラボノイド20〜30重量%、
テルペンラクトン 4.5〜8.5重量%
ギンコール酸 10ppm未満
4’−O−メチルピリドキシン 10ppm未満および/または
アメントフラボン,ビロベチン,ギンゲチン,イソギンゲチンおよびシアドピチシンよりなる群から選ばれるビフラボン 20ppm未満
を含有しそして下記工程、すなわち、
a)含水アセトン、炭素数が1〜3の含水アルカノールまたは無水メタノールを用いてイチョウの葉を抽出する工程と、
b)前記有機溶媒を最大で10重量%の含有量にまで濃縮することによって前記溶媒を分離する工程、ここで、最終蒸留工程において水を添加してもよい、と、
c)残りの水溶液を水で5〜25重量%の固形分にまで希釈し、25℃よりも低い温度にまで冷却し、そして沈殿物が形成されるまで静置しておく工程と、
d)残りの水溶液を硫酸アンモニウムで処理した後、メチルエチルケトンまたはメチルエチルケトンとアセトンとの混合物を用いて少なくとも1回抽出する工程と、
e)得られた抽出物を濃縮し、エタノールと水との混合物で希釈することによって、10重量%の固形分において50重量%の水と50重量%のエタノールとを含有する溶液を得る工程と、
f)前記溶液を鉛化合物または不溶性ポリアミドで処理する工程と、
g)ろ過された溶液を、60〜100℃の沸点を有する脂肪族または脂環式溶媒を用いて抽出する工程と、
h)残りの水性アルコール溶液を濃縮した後、硫酸アンモニウムで処理し、メチルエチルケトンおよびエタノールで抽出する工程と、
i)得られた有機相を50〜70重量%の固形分にまで濃縮する工程と、
k)得られた濃縮物を、炭素数が1〜3の含水アルカノールに溶解させ、任意にろ過する工程と、
l)ビフラボンの含有量を低減するための吸着樹脂および/または4’−O−メチルピリドキシンの含有量を低減するための酸性イオン交換体でろ過する工程、ここで除去されるべき物質は前記樹脂および/または酸性イオン交換体上に保持される、と、
m)濃縮物を減圧下で乾燥させることによって、含水率が5%未満である乾燥抽出物を得る工程と、
を含んでなる方法によって得られ得る、
ことを特徴とする、イチョウの葉からの抽出物。
【請求項2】
2ppm未満の4’−O−メチルピリドキシンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
10ppm未満のビフラボンを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の抽出物。
【請求項4】
5ppm未満のビフラボンを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の抽出物。
【請求項5】
ケルセチングリコシド、ケンペロールグリコシドおよびイソラムネチングリコシドよりなる群から選ばれるフラボノイド22.0〜27.0重量%、
テルペンラクトン5.0〜7.0重量%、および
ギンコール酸5ppm以下
を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の抽出物。
【請求項6】
ケルセチングリコシド、ケンペロールグリコシドおよびイソラムネチングリコシドよりなる群から選ばれるフラボノイド22.0〜27.0重量%、
ギンゴライドA、BおよびC合計で2.8〜3.4重量%、
ビロバリド2.6〜3.2重量%、および
ギンコール酸5ppm以下
を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の抽出物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の抽出物の、認知症およびその症状および/または脳または末梢血液循環障害の治療のための薬剤または食品の調製のための使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のイチョウ抽出物を含有することを特徴とする薬剤または食品。

【公開番号】特開2009−173663(P2009−173663A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63133(P2009−63133)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【分割の表示】特願2008−509353(P2008−509353)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(500287282)ドクター.ヴィルマー シュワーベ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー (7)
【Fターム(参考)】