説明

4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産

本発明は、高められたレベルの活性で、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ、好ましくはPabAB二部分タンパク質(それは融合タンパク質であってもよい)を使ってインビボで発酵により行われ、それによって、回収されるADCおよび4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)を含む培養液を得る、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産方法に関する。本発明はまた、p−アミノフェニルアラニンへのADPのさらなる転化方法にも関する。本発明はさらに、3,4−CHAの回収を含む、かかる4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼのおよびイソコリメートを[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素、好ましくはフェナジン生合成タンパク質PhzDの共同作用による[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産に関する。本発明はまた、かかる方法の任意のものでの使用のための発現ベクターおよびホスト細胞にも関する。本発明はさらに、触媒活性生成物としての、特にキラル触媒としての3,4−CHAの使用に関する。そして本発明は最後に3,4−CHAからのリン酸オセルタミビルの合成に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、その第1実施形態で、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産方法に関する。前記方法では4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)と4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)との混合物が発酵培養液中に形成される。前記実施形態の統合されたその後の工程で、本発明はまたp−アミノフェニルアラニンの合成にも関する。
【0002】
用語「生合成生産」は本明細書で用いるところでは、より狭い意味が意図されることが文脈から明らかでない限り、その最も広い可能な意味で用いられる。それは、インビトロで実施される方法だけでなく、インビボで発酵により実施される方法をも含む。一般に、インビボ法は、生きている細胞(用語「生きている細胞」はそれによってまた、いわゆる休止細胞も含む)を用いるときに実施される方法であり、一方、インビトロ法は通常、細胞溶解物または(部分的に)精製された酵素を用いて実施される。しかしながら、生化学生産は本明細書で意味されるところでは、また透過性細胞を用いて実施されてもよく、インビボとインビトロとの区別は、しかしながら、透過性細胞で実施中の方法については意味をなさない。本発明の方法はまた固定化ホスト細胞、固定化酵素などを用いて実施できることは明らかであろう。特許請求の範囲が「インビボ」法に限定される場合、これは明確に示されるであろう。技術的な観点から厳密に言えば、用語「発酵により」はしばしば、ある方法が酸素なしでまたは限定された酸素供給下に実施されることを意味するであろうが、該用語は本特許出願との関連では最も広い可能な意味で用いられ、好気性方法も同様に含む。それは、発酵技術者に利用できるすべての一般的なテクニックを本発明に従った方法で用い得ることを示すつもりである。
【0003】
本発明はまた、第2実施形態では、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産方法に関する。この化合物[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)はまたトランス−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸とも言われる。
【0004】
さらに、本発明はまた、本発明の実施形態のどの方法でも用いることができるようなホスト細胞、発現ベクター、プラスミドなどにも関する。
【0005】
もっとさらなる実施形態では、本発明は、触媒活性生成物としての、特にキラル触媒としての[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の使用に関する。
【0006】
最後に、本発明はまた、本発明に従って生産することができるような、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)のさらなる転化にも関する。特に、それは、ホフマン−ラ・ロッシュ、スイス国(Hoffmann−La Roche,Switzerland)の商品名タミフル(Tamiflu)(登録商標)で公知の抗インフルエンザ医薬品のための活性原料であるリン酸オセルタミビル(IUPAC(国際純正応用化学連合)名称:リン酸(3R、4R、5S)−4−N−アセチルアミノ−3−(1−エチルプロポキシ)−5−N−アミノ−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル[1:1])と呼ばれる製品の生産のための新規合成ルートでのさらなる転化に関する。
【0007】
4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産は、K.S.アンダーソン(K.S.Anderson)ら、JACS 113(1991)、3198〜3200頁から公知である。パーソンズ(Parsons)らは、Biochem 42(2003)、5684〜5693頁において、5690頁で、それにとってADCが明らかに不満足な基質であるフェナジン生合成PhzDタンパク質の影響下でADCが辛うじて加水分解されるにすぎないと記載している。
【0008】
[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成はこれまで全く記載されたことがなかった。リン酸オセルタミビルの合成についてはこれまでは10より多い反応工程を含む全く骨の折れる方法が利用可能であるにすぎない。例えば、ローロフ(Rohloff)ら、J.Org.Chem.63(1999)、4545〜4550頁によって記載されているような、キナ酸から出発する12工程方法に、またはフェーダースピール(M.Federspiel)ら、Organic Process Research & Development 3(1999),266〜274頁によって記載されるようなシキミ酸から出発する11工程方法に言及することができる。
【0009】
4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)への生合成ルートは、例えば、テング(Teng)ら、J.Am.Chem.Soc.107巻(1985)、5008〜5009頁から公知であるが、ADPの生合成生産および回収は、それがADCについて公知であるように、恐らく生成物ADPが不安定であると考えられるので、記載されたことがなかった。テングらのこの参考文献はまた、ブランク(Blanc)ら、Mol.Mic.23巻(1997)、191〜202頁の開示と同様に、アミノデオキシコリスミ酸(ADC)への、それぞれp−アミノフェニルアラニンへの可能な生合成ルートを示しているが、生成物ADPおよびADCの、それぞれp−アミノフェニルアラニンの発酵ルートおよび回収は全く示唆されていない。
【0010】
公知方法の不利点は、
a)アミノデオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産については、これまでmg−スケールでの、および2、3mg/lの非常に低い濃度での合成が記載されてきたにすぎず、従って、かかる反応混合物からのADCの回収が非常に困難である、
b)[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産については、方法がまだ全く利用可能ではない、
c)リン酸オセルタミビルの最新合成については、これまで10工程より多い反応シーケンスが必要とされる
ことである。
【0011】
従って、アミノデオキシコリスミ酸(ADC)の改善された生合成法、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の合成のための完全に新規な生合成法、およびリン酸オセルタミビルの改善された合成方法に対するニーズがある。
【0012】
上記の問題はすべて、本明細書の請求項1で特許請求されているような基本的特徴を有する、本発明によって解決された。
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産が、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)を含む発酵培養液を得ながら、高められたレベルの活性で4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼを持ったホスト微生物中でインビボで発酵により行われること、かつ、これらの化合物が、一緒にか、または個別にかのどちらかで、発酵培養液から回収されることを今見いだした。
【0014】
ADC合成は自然界でコリスミ酸からのフォレート(folate)合成での第1工程であるので、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼ酵素は自然界で豊富に入手可能である。それらはすべてのフォレート原栄養株有機体中に、例えば、バクテリア、酵母、植物および低級真核生物中に存在すると推測される。アミノデオキシコリスミ酸シンターゼ酵素はまたp−アミノベンゾエート合成にも関与していることが知られている。
【0015】
本明細書で用いるところでは、用語「高められたレベルの活性」は、(示されるような任意の特定酵素の)活性のレベルが標準条件下でその自然環境(すなわち自然源細胞)での前記酵素の(生来の)活性のレベルより高いことを意味する。活性レベルを高めることは当業者に公知のあらゆる種類の方法によって、例えば、かかる酵素をコードする遺伝子の過剰発現、かかる遺伝子のマルチコピー、または例えばより強いプロモータ、誘導プロモータなどを用いて、改善された翻訳および/または転写効率の遺伝子への提供によって達成することができる。
【0016】
ADCシンターゼ、および任意のケースで大腸菌(Escherichia coli)からのものは単一ユニットの形で存在することが知られているが、時々二部分(bipartite)酵素として現れる。単一ユニットは、例えば、いわゆるPabAタンパク質(グルタミンからアンモニアを発生させることが知られているタンパク質)より、またはいわゆるPabBタンパク質(コリスミ酸中へ直接アンモニアを挿入することが知られているタンパク質)よりなってもよい。
【0017】
G.バセット(G.Bassett)らは、PNAS 101(2004)、1496〜1501頁で、融合したPabAおよびPabB領域を含有する二部分タンパク質が植物でのADCの合成に関与していると記載している。バセットらの論文でも行われているように、文献でのこれらのADCシンターゼは時々(そして、本発明者らが誤って信じているように)PABAシンターゼ(p−アミノ安息香酸シンターゼ)とも言われることが注目されるべきである。本発明者らは、自分たちの研究で、PABAシンターゼと間違って命名された酵素がADC(ADPとの混合で)の形成にすべて本当につながること、およびp−アミノベンゾエートの形成(仮に観察される場合でも、それは多くてもマイナー副生物としてである)が本発明のプロセス実施形態でほとんど起こらないことを示した。バセットらが確認したように、p−アミノベンゾエートへの転化はタンパク質PabCの追加存在を必要とする。従って、pabCは存在するかもしれないが、p−アミノベンゾエートが全く形成されないことは本発明の方法で最も驚くべきことである。
【0018】
本発明のこの第1実施形態の好ましい実施形態では、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産は、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼがPabAB二部分タンパク質であることによって行われる。
【0019】
本明細書で意図されるところでは、用語「4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼPabAB二部分タンパク質」は、PabA(グルタミンからアンモニアを発生させることが知られているタンパク質)およびPabB(コリスミ酸中へ直接アンモニアを挿入することが知られているタンパク質)の機能を組み合わせている任意の活性なタンパク質(すなわち、ADCシンターゼの機能性を有する任意のタンパク質)を表す。原則として、用語「二部分タンパク質」は本明細書で用いるところでは、用語「融合タンパク質」または「共有結合したタンパク質複合体」のどちらとも同じ意味で用いることができる。
【0020】
本発明の第1実施形態に従った方法は、ホスト微生物中でインビボで実施される。先行技術の方法では、インビトロ合成だけが記載されている。
【0021】
特に、そして好ましくは、二部分タンパク質は、放線菌(Actinomycetes)の群からの種、もしくはかかる二部分酵素を含有する植物に由来するか、またはPabAおよびPabBをそれぞれコードする遺伝子の融合によって構築される。遺伝子の融合方法は当業者に周知であり、例えば、PCR法、クローニングなどよりなってもよい。
【0022】
従って、二部分タンパク質は、植物からの天然由来(二部分)タンパク質か、または人工的に構築されたものであってもよい。本発明者らは、PabAタンパク質とTrpDタンパク質とも言われるある種のグルタミン・アミノトランスフェラーゼとの間にむしろ高いホモロジーがあること、およびPabBタンパク質とTrpEタンパク質とも言われるある種のアントラニル酸シンターゼとの間にむしろ高いホモロジーがあることを観察した。従って、二部分タンパク質のそれぞれPabA、PabB部分、の代わりに、またはそれらと一緒に、TrpD(PabAの代わりに)およびTrpE(PabBの代わりに)もまた本発明の方法に適用することができる。
【0023】
これは、次の組み合わせ:PabA/PabB、TrpD/PabB、PabA/TrpE、およびTrpD/TrpEのいずれもがすべて本発明(のこの第1実施形態)に従って有利な結果につながることを意味する。それ故、酵素活性のすべてのかかる組み合わせは、用語4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼPabAB二部分タンパク質に包含される。
【0024】
TrpDおよびTrpEは自然界でトリプトファン合成の第1工程に関与するので、これらの酵素は自然界で豊富に入手可能である。それらはすべてのL−トリプトファン原栄養株有機体中に、例えばバクテリア、酵母、植物および低級真核生物中に存在すると推測される。
【0025】
従って、二部分タンパク質PabA/PabB、TrpD/PabB、PabA/TrpE、およびTrpD/TrpEの部分のそれぞれをコードする遺伝子は、当業者に周知であり、入手可能である。
【0026】
好ましくは、PabAB二部分タンパク質は、そのようなものとしてまたは融合タンパク質として、エシェリキア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)またはストレプトミセス属(Streptomyces)からなる属の群からの種に由来する。ADCの生合成のための本発明に従って方法では、PabAB二部分タンパク質はより好ましくは、そのようなものとしてまたは融合タンパク質として、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・ジフテリア・グラビス(Corynebacterium diphtheriae gravis)NCTC13129、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ストレプトミセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトミセス・ヴェネズエラエ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトミセス種FR−008(これらはポリケチドFR−008の合成に関与する株である)、ストレプトミセス・プリスチナエスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトミセス・チオルテウス(Streptomyces thioluteus)、およびストレプトミセス・アヴェルミチリス(Streptomyces avermitilis)からなる種の群からの種の1つに由来する。ストレプトミセス種FR−008株の例は、KCTC 10529BPで2003年10月20日にタイプ・カルチャーのための韓国コレクション(Korean Collection for Type Cultures)にデポジットされた株である。PabAB二部分タンパク質はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032に由来することが最も好ましい。
【0027】
上述のように、タンパク質は「高められたレベルの活性で」存在するべきである。これは、(示されるような任意の特定酵素の)活性のレベルが標準条件下でその自然環境(すなわち自然源細胞)での前記酵素の(生来の)活性のレベルより高いことを意味する。
【0028】
最良の結果は、その中でタンパク質が発現されるホスト微生物が620nmで約0.5〜100の範囲の、好ましくは多くても50のO.D.(光学密度)に達した後に実生産のスタートのタイミングが開始されるようなやり方でPabAB二部分タンパク質の発現が操作されるときに達成される。この発現は、誘発ありまたはなしで達成することができる。発現が誘発ありで達成されるケースでは、それは好ましくは強力なプロモータ、例えばプタッック(ptac)プロモータの助けを借りて行われ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘発される。
【0029】
本発明のこの第1実施形態では、形成された4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)は、反応抽出およびクロマトグラフィーからなる群から選択された分離法、場合により引き続き結晶化によって、一緒にまたは個別に、前記得られた発酵培養液から好ましくは回収される。
【0030】
本発明のこの第1実施形態のその後のおよび統合されたバージョンで、p−アミノフェニルアラニンの合成は達成される。これは、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産方法に統合されたp−アミノフェニルアラニンの生合成生産であって、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)を含む発酵培養液を得ながら、高められたレベルの活性で4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼを持ったホスト微生物中でインビボで発酵により行われ、かつ、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)と4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)との混合物中の4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)が4−アミノ−4−デオキシプレフェネート・デヒドロゲナーゼとアミノトランスフェラーゼとの共同作用を用いて、それらの高められたレベルの活性でp−アミノフェニルアラニンへ転化され、かつ、当該p−アミノフェニルアラニンが発酵培養液から回収される生合成生産によって行われる。
【0031】
アミノトランスフェラーゼは、任意の好適な資材源からのL−またはD−特異的アミノトランスフェラーゼであってもよい。勿論、次にp−アミノフェニルアラニンは次の工程でその誘導体へ転化されてもよい。
【0032】
4−アミノ−4−デオキシプレフェネートデヒドロゲナーゼは好ましくはPapCタンパク質である。遺伝子papCは、例えば、ストレプトミセス・プリスチナエスピラリスでのプリスチナマイシン生合成から公知である(ブランク(Blanc)ら、Molec.Microbiol.23(1997)、191〜202頁を参照されたい)。papC遺伝子は、ストレプトミセス・ヴェネズエラエでのクロラムフェニコール合成に関与するようなcmlC遺伝子(また4−アミノ−4−デオキシプレフェネート・デヒドロゲナーゼもコードする)と酷似している(Heら、Microbiol.147(2001)、2817〜2829頁を参照されたい)。本発明の目的のためには、cmlCによってコードされるタンパク質はまたPapCタンパク質であると考えられる。
【0033】
ADPのp−アミノフェニルアラニンへの転化は、R.A.メール(R.A.Mehl)ら、JACS 125(2003)、935〜939頁の論文に記載されており、ここで936頁の図1に示されているように)PapA、PapBおよびPapCのその後の作用、続いて大腸菌アミノトランスフェラーゼとの相互作用はp−アミノフェニルアラニンの形成につながる。これらの著者らがp−アミノフェニルアラニンの生合成のためのS.ヴェネズエラエからのcml遺伝子を確かにクローン化したが、彼らがS.プリスチナエスピラリス遺伝子の標識に従って行われたであろうようにpapでこれらの遺伝子を標識したことは注目されるべきである。本発明の上記の実施形態に従って、p−アミノフェニルアラニンへの転化に関与する酵素の数、および従って工程の数は、メールらによって記載されたルートでより1つ少ない。
【0034】
本発明は、その第2実施形態では、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産方法であって、生合成生産が4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼのおよびイソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素の共同作用によって、および高められたレベルの活性で行われ、かつ、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)がそのように得られた発酵培養液から回収される方法に関する。2,3−CHDはまた、[2S,3S]−2,3−ジヒドロキシ−2,3−ジヒドロ安息香酸と言うこともできる。
【0035】
本発明のこの実施形態では、生合成生産は、ホスト微生物中でインビボで発酵により実施されてもよいし、または例えば前述の酵素活性を含む酵素製剤を用いることによって、インビトロで酵素的に実施されてもよい。かかる酵素製剤は、例えば、キャリア上の酵素の形で、または休止細胞中に、または細胞溶解物として、または(部分的に)精製された酵素として、または当業者に公知の任意の他の形で存在してもよい。
【0036】
本明細書で意味するところでは、語句「共同作用で、および高められたレベルの活性で」は、述べられる両酵素が一緒に作用し、そしてそれらのそれぞれが標準条件下でその自然環境(すなわち自然源細胞)での前記酵素の(生来の)活性のレベルより高いレベルの(かかる酵素の)活性で用いられつつあることを示す。前に示されたように、酵素の活性レベルを高めることは当業者に公知のあらゆる種類の方法によって、例えば、かかる酵素をコードする遺伝子の過剰発現、かかる遺伝子のマルチコピー、または例えばより強いプロモータ、誘導プロモータなどを用いて、改善された翻訳および/または転写効率の遺伝子への提供によって達成することができる。
【0037】
原則として、化学的観点から、ADCは[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)のモノ置換(すなわち、保護された)形であると考えられてもよいであろうことが注目される。実際には、逆に、ADCはまた3,4−CHAの誘導体と呼ばれてもよいかもしれない。ADCおよび3,4−CHAは両方とも興味あるさらなる化合物の合成のための重要な中間体である。
【0038】
好ましくは、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産は、ホスト微生物中でインビボで発酵により行われる。
【0039】
イソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる好適な酵素は、イソコリスマターゼ[EC 3.3.2.1]の酵素クラスから得ることができる。勿論、ADCの3,4−CHAへの所望の転化のために最適化されるように工作されたこのクラスのタンパク質の突然変異株および突然変異タンパク質はまた、それらがもはやイソコリスミ酸の2,3−CHDへの転化を触媒することができない場合でさえ、本出願の脈略の中で、前記クラスの酵素内に入ると考えられる。
【0040】
本発明のこの第2実施形態では、4−アミノ−4−デオキシ−コリスミ酸シンターゼは最も好ましくはPabAB二部分タンパク質である。PabAB二部分タンパク質については、本発明の第1実施形態に関して本特許出願の前述部分で行われたようなすべての見解が適用される。
【0041】
好ましくは、イソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素はイソコリスマターゼ(isochorismatase)酵素である。
【0042】
特に、この実施形態では、PabAB二部分タンパク質は、本発明の第1実施形態について上に記載されたようなタンパク質であり、イソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素はまた、4−アミノ−4−デオキシイソコリスミ酸を[5S,6S]−6−アミノ−5−ヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHA)へ転化することもできる。
【0043】
[5S,6S]−6−アミノ−5−ヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHA)はまた、[2S,3S]−2−アミノ−3−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロ安息香酸、またはトランス−2,3−ジヒドロ−3−ヒドロキシアントラニル酸とも言うことができる。
【0044】
イソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素はフェナジン生合成PhzDタンパク質であることが最も好ましい。[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)はまた、[2S,3S]−2,3−ジヒドロキシ−2,3−ジヒドロ安息香酸と言うこともできる。
【0045】
PhzDをコードする遺伝子は、例えば、マクドナルド(McDonald)ら、JACS 123(2001)、9459〜9460頁の論文から公知である。フェナジン遺伝子は、J.Bacteriol.180(1998)、2541〜2548頁に記載されているように、D.マブロジ(D.Mavrodi)らによって特定され、配列決定された。
【0046】
さらに、「Phenazine natural products:biosynthesis,synthetic analogues and biological activity」という表題の、Chem.Rev.104(2004)、1663〜1685頁におけるJ.B.ローセン(J.B.Laursen)らの論文で、フェナジン天然物はシュードモナス属およびストレプトミセス属、ならびに土壌または海洋生息環境からの2、3の他の属から主として単離されると述べられている。かかる他の種の例は、メタノサルシーナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)Goe1、ペラジオバクター・バリアビリス(Pelagiobacter variabilis)、ビブリオ株(Vibrio strains)、エルビニア・ハービコラ(Erwinia herbicola)(これはパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)とも命名される株である)、バークホルデリア・フェナジニウム(Burkholderia phenazinium)、ワックスマニア・アエラタ(Waksmania aerata)、および粘液細菌種(Sorangium species)である。従って、PhzDと同種のタンパク質は好ましくはかかる株の任意のものから得られる。
【0047】
このように、好ましくは、フェナジン生合成PhzDタンパク質は、シュードモナス属、パントエア属(Pantoea)、ストレプトミセス属、およびエルビニア属(Erwinia)からなる属の群からの種に由来する。特に、フェナジン生合成PhzDタンパク質は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、およびパントエア・アグロメランス種からなる群から選択された種に由来する。最も好ましくは、フェナジン生合成PhzDタンパク質は緑膿菌ATCC 17933に由来する。
【0048】
本発明のこの第2実施形態では、PabAB二部分タンパク質は、そのようなものとしたまたは融合タンパク質として、エシェリキア属、コリネバクテリウム属、サッカロミセス属またはストレプトミセス属からなる属の群からの種に由来し、最も好ましくは大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、コリネバクテリウム・ジフテリア・グラビスNCTC13129、コリネバクテリウム・エフィシエンス、サッカロミセス・セレビシエ、ストレプトミセス・グリセウス、ストレプトミセス・ヴェネズエラエ、ストレプトミセス種FR−008、ストレプトミセス・プリスチナエスピラリス、ストレプトミセス・チオルテウス、およびストレプトミセス・アヴェルミチリスからなる種の群から選択される。
【0049】
最も好ましくは、二部分タンパク質は、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032に由来する。それは、フェナジン生合成PhzDタンパク質がそのC−またはN−末端で標識されている場合に有利である。そうならば、その時はフェナジン生合成PhzDタンパク質は、His、MycおよびStrepタグからなる群から選択された、5〜15単位の短いタグ・シーケンスで好ましくは標識される。タグ群のこの選択内では、フェナジン生合成PhzDタンパク質は、そのN−末端で(5〜15His単位で)好ましくはHis−標識される。
【0050】
加えて、それは、本発明に従った方法のこの実施形態で、フェナジン生合成PhzDタンパク質の発現がHis−phzD遺伝子の上流のT7ポリメラーゼ・プロモ−タによってコントロールされる場合に極めて有利である。これは、T7ポリメラーゼがない大腸菌のようなホスト株で特に、T7プロモータのかかる効果が予期されるべきではないので、最も驚くべきである。最も好ましくは、フェナジン生合成PhzDタンパク質はHis10
−標識されている。
【0051】
[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)は、当業者に公知の任意の方法によって、本発明のこの第2実施形態で得られた発酵培養液から回収することができる。好ましくは、それは、結晶化によって、または反応抽出およびクロマトグラフィーからなる群から選択された分離法、場合により続いて結晶化によって前記発酵培養液から回収される。
【0052】
本発明の第1および第2実施形態の方法は、好適なホスト生物中インビボで実施することができる。本発明の第1および第2実施形態に従った方法がインビボで、すなわち生きている細胞中で実施されるとき、原核細胞ならびに、コリスミ酸への生合成経路がそこに存在する場合には、真核細胞が、本発明の方法のためのホスト細胞として用いられてもよい。本発明の第2実施形態に従った方法はまたインビトロで(酵素的に)実施されてもよいことが注目されるべきである。
【0053】
本発明に従ったインビボ法のためのホスト生物は、発酵法に好適な任意のホストであることができる。しかしながら、最も好ましくは、(本発明の第1または第2実施形態の)方法は、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属、エシェリキア属、およびピチア属(Pichia)からなる属の群から選択されたホスト生物中で行われる。
【0054】
本発明はさらに、本発明の方法請求項の任意のものに従った方法であって、インビボで実施される方法での使用のための発現ベクターにも関する。本明細書で意味されるところでは、発現ベクターは、必要とされる遺伝子のすべてを一緒に単一ベクター上に含んでもよいし、または異なるベクターで異なる遺伝子を含んでもよい。ベクター、またはそれらの発現カセット(オペロン)、またはそれに関連する遺伝子は、染色体に組み込まれていてもよい。
【0055】
さらに、本発明は、バチルス属、コリネバクテリウム属、エシェリキア属、およびピチア属からなる属の群から選択されたホスト生物の1つからのホスト細胞であって、標準条件下その自然環境でのかかる酵素の、すなわち、
・請求項3〜8のいずれか一項に従って使用されるようなPabAB二部分タンパク質、または
・4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ(好ましくはPabAB二部分タンパク質)、ならびに4−アミノ−4−デオキシプレフェネート・デヒドロゲナーゼおよびアミノトランスフェラーゼ、または
・4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ(好ましくはPabAB二部分タンパク質)、およびイソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素、または
・4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ(好ましくはPabAB二部分タンパク質)、およびイソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができるおよび4−アミノ−4−デオキシイソコリスミ酸を[5S,6S]−6−アミノ−5−ヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHA)へ転化することができる酵素、または
・PabAB二部分タンパク質およびフェナジン生合成PhzDタンパク質、または
・PabAB二部分タンパク質および標識フェナジン生合成PhzDタンパク質
の生来の活性のレベルと比べて高められたレベルの活性での次の活性または活性の組み合わせの少なくとも1つを含むホスト細胞にも関する。
【0056】
大腸菌中でのp−アミノベンゾエートの生合成に取り組む参考文献に、pabAおよびpabB遺伝子の組み合わされた過剰発現が記載されてきたことは注目される。Yeら、Proc.Natl.Acad.Sci.87巻(1990)、9391〜9395頁に、およびニコルズ(Nichols)ら、J.Biol.Chem.264巻(1989)、8597〜8601頁の以前の研究に言及することができる。しかしながら、後の2文書は、PabABタンパク質の過剰発現も、そのアミノトランスフェラーゼとの組み合わせも示しも、示唆もしていない。従って、上にリストされた具体的なホスト細胞は新規である。
【0057】
勿論、本発明の脈略の中で、用いられるホストはまた、所望の生成物の生合成を高めるための修正をさらに含んでもよい。例えば、コリスミ酸活性と競合するかもしれない活性をコードする遺伝子は削除されてもよく(例えば、染色体から、コリスミ酸・ムターゼ/プレフェネート・デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子tyrA、および/またはコリスミ酸・ムターゼ/プレフェネート脱水酵素をコードするpheAの削除)、または一般的な芳香族経路のキー酵素は過剰発現されてもよい(例えば、DAHPシンターゼをコードするaroFの過剰発現)。
【0058】
本発明者らはさらに、本発明の方法の第2実施形態に従って製造された[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)が触媒として、特にキラル触媒として、例えば、3,4−CHAとのZn−錯体の存在下に4−ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのアルドール縮合で非常に好適に使用できることを見いだした。3,4−CHAはキラル分子である。3,4−CHAでのキラル触媒作用で得られたキラル生成物の鏡像体過剰率、例えば生成物[S]−1−p−ニトロフェニル−2−ヒドロキシブタン−3−オンのe.e.は、配位子としてのL−プロリンとのZn−錯体を用いる公知のキラル触媒作用反応のケースより驚くべきことにもはるかに高い。様々な一般レビューおよび論文は、L−プロリンのような化合物での不斉触媒作用を教示している。例えば、リスト、B.(List B.)ら、J.Am.Chem.Soc.122巻(2000)、2395〜2396頁;ダルコ、P.I(Dalko,P.I.)ら、Angew Chem.Int.Ed.40(2001)、33726〜22748頁、;リスト、B、Tetrahedron 58(2002)、5573〜5590頁、;チャンドラセクハー、S.(Chandrasekhar、S.)ら、Tetrahedron Lett.45巻(2004),4581〜4582頁;バーケッセル、A.(Berkessel,A.)ら、Asymmetric Organocatalysis、VCH、Weinheim、2004;シーヤッド、J.(Seayad、J.)ら、Org.Biomol.Chem.3巻(2005)、719〜724頁を参照されたい。
【0059】
一方、α−アミノ酸、L−プロリン以外の他のアミノ酸も示される、を用いるキラル触媒作用は、例えば、2つの最近の定期刊行物、すなわち、Zn塩を用いた触媒作用を示すダーブレ、T.(Darbre、T.)ら、Chem.Commun.2003、1090〜1091頁、および例えば不斉アルドール反応での使用を示すアメジコー、M.(Amedjkouh、M.)、Tetrahedron:Asymmetry 16巻(2005)、1411〜1414頁から公知であることは注目できる。
【0060】
しかしながら、上述のレビューおよび論文のどれも、アミノ基がカルボン酸基に関してα−またはβ−位にない、かかるアミノ酸および/またはその誘導体のキラル触媒作用についての使用に関していかなる教示も提供していない。しかしながら、β−アミノ酸(β−アラニン)がクネーベナーゲル(Knoevenagel)反応、α−アミノ酸(α−アラニンのような)によって触媒され得ない反応での触媒として(例えばプロウト、F.S.(Prout,F.S)によって、J.Org.Chem.18巻(1953)、928〜933頁に)確かに既に記載されたことが注目されてもよい。しかしかかる開示は、触媒として、特に明らかなキラル触媒として3,4−CHAを利用することは明らかにできない。
【0061】
従っておよび驚くべきことに、本発明はまた、本発明のこのさらなる独立した実施形態で、本発明の第2実施形態に従った方法によって得られる[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の触媒活性生成物としての、特にキラル触媒としての使用にも関する。
【0062】
最後に、本発明はまた、本発明に従って生産することができるような[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)のさらなる転化にも関する。かかるさらなる転化は、3,4−CHAのあらゆる種類の誘導体を得るために都合よく実施することができる。かかるさらなる転化の良い例は(リン酸)オセルタミビルの合成である。
【0063】
これまで、(リン酸)オセルタミビルのすべての合成は、正しい相対および絶対立体配置でのターゲット分子の4および5位に2つの窒素官能基の導入を必要とする。出発化合物としてシキメートを用いる、これまで公表された最短ルートは11工程を必要とする。これは、図式的に、下のスキーム1に表される。
【化1】

【0064】
下のスキーム2から理解できるように、3,4−CHAだけでなくADCも、C−3の酸素置換基に関して正しい絶対および相対立体配置でC−4に窒素官能基を含有する。このように、本発明に従った、すなわち3,4−CHAの生合成から出発する(リン酸)オセルタミビルの合成は、C−5のアミノ基が正しく導入されなければならないだけであるから、非常に簡略化される。C−5アミノ基の導入は、例えばアジリジン化およびそれに続く還元(X.E.Hu、Tetrahedron 60(2004)、2701〜2743頁を参照されたい)によって、または直接にか、例えば、標準的なテクニック(例えば、M.B.ガスク(M.B.Gasc)ら、Tetrahedron 39(1983)、703〜731頁によって記載されているような)に従ったソルボ水銀化(solvomercuration)およびそれに続く還元によるかのどちらかでのアミノ化によって行うことができる。3,4−CHAの保護は標準的なテクニックによって行うことができる。従って、様々な順番の工程で、好ましくは(しかし必ずしもではなく)下のスキーム2に示されるようなC−5位でまだアミノ化されなければならない完全保護の化合物(スキーム2で「新規中間体」と言われる)を経由して実施することができる一連の個々の反応工程として、かかる短縮された一連の反応工程の後、かかる短縮された一連の反応工程は実施されてもよい。しかしながら、かかる個々の反応工程の多くの異なる順番は、本発明に従って製造された3,4−CHAから出発して可能である。さらに、本発明に従った生合成による以外の別の方法で製造された3,4−CHAもまた、リン酸オセルタミビルにつながるその後の反応工程用の出発原料として用いることができる。
【化2】

【0065】
それ故特に、本発明はまた、
a)[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)を、好ましくは3,4−CHAの合成に関する請求項のいずれか一項に従った3,4−CHAの生合成によって提供する工程と、
任意の順の工程b)〜e)
b)カルボン酸官能基のそのエチルエステルへのエステル化、
c)ヒドロキシル官能基のその3−ペンタノールエーテルへのエーテル化、
d)C−3のアミノ基のアセチル化、
e)C−4のN−含有基に関してトランス位でのアミノ官能基の導入、
続いて
f)組み合わせられた反応工程b)、c)、d)、およびe)の結果として3,4−CHAから製造された生成物のリン酸オセルタミビルへの転化
とを含む、リン酸オセルタミビルの新規合成方法にも関する。
【0066】
例えば、工程b)、エステル化で好適に適用することができる反応は、フェーダースピールら、Organic Process & Research Development 1999、266〜274頁、特に273頁のシキミ酸ルートの第1工程での中間体23の24への転化によって記載された。工程c)のエーテル化は、当業者に公知のあらゆる方法によって行われてもよい。工程d)のアセチル化は、例えば、カープフ(Karpf)ら、J.Org.Chem.66(2001)、2044〜2051頁によって、特に2049頁の中間体17の18への転化で記載されている方法を用いて行うことができる。例えば、工程e)でのようなアミノ官能基の導入は、アジリジン化またはアミノ化(それぞれ、上述のX.E.Huの論文、M.B.ガスク(M.B.Gasc)らのそれを参照されたい)によって実施されてもよい。リン酸オセルタミビルへの最終転化は、例えば、カール(Carr)ら、J.Org.Chem.62(1997)、8640〜8653頁、特に8648頁の中間体12の13への転化によって記載されているように行うことができる。
【0067】
実験の部に先行する添付の化学式シートは、この出願で述べられる様々な化合物、すなわち、
コリスミ酸
イソコリスミ酸
3,4−CHA(トランス位のアミノ基およびヒドロキシ基)
2,3−CHA(トランス位のアミノ基およびヒドロキシ基)
3,4−CHD(トランス位のヒドロキシ基)
2,3−CHD(トランス位のヒドロキシ基)
ADC
ADIC
ADP
p−アミノフェニルアラニン
の構造を示す。
【0068】
本発明は本明細書で以下、本発明の範囲を限定することを決して意図されない多数の実施例実施例を用いて説明される。
【0069】
実験の部で言及されるヌクレオチドのシーケンス列挙、すなわち[SEQ ID:No.1]〜[SEQ ID:No.10]は実験の部の終わりに示される。それらはまた、電子形式(パテントルン(Patentln))で提出されるであろう。
【化3】

【0070】
実験の部I(実施例1〜8):単一遺伝子のクローン化ならびにADCおよび3,4−CHA生合成オペロンの構築
実施例1〜8のための一般手順
プラスミドDNA単離、ゲル電気泳動、核酸の酵素的制限修飾、大腸菌形質転換などのような標準的な分子クローン化技術は、サムブロック(Sambrook)ら、1989、「Molecular Cloning:a laboratory manual」、Cold spring Harbor Laboratories、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州によって記載されているように行った。合成オリゴデオキシヌクレオチドは、MWG−バイオテック(MWG−Biotech AG)(エバースベルグ(Ebersberg)、独国)から入手した。DNAシーケンス解析は、GATCバイオテック(GATC Biotech AG)(コンスタンツ(Konstanz)、独国)およびアゴワ(AGOWA GmbH)(ベルリン(Berlin)、独国)によって行われた。
【0071】
実施例1〜8についての概論
ADCおよび3,4−CHA生合成遺伝子発現ベクターとして、プラスミドpJF119EHを選んだ;ヒュールステ(Fuerste)ら(Gene、48(1986)、119〜131頁)。該発現システムはIPTG誘導可能tacプロモータを用い、そしてインデューサなしでクローン化外来遺伝子の発現を極めて低く保つlacリプレッサー(IacI遺伝子)を持っている。さらに、緑膿菌のphzD遺伝子を、N−末端His・タッグ(His・Tag)(登録商標)シーケンスおよびプロテアーゼ・ファクターXa認識部位を含有するPhzDタンパク質を生産する発現ベクターpET16b(カルビオケム−ノバビオケム(Calbiochem−Novabiochem GmbH)、シュバールバッハ(Schwalbach)/Ts.、独国)にクローン化した。
【0072】
実施例1:プラスミドpC26の構築
緑膿菌ATCC 17933からのゲノムDNAはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、マナッサス(Manassas)、バージニア州、米国から入手した。フェナジン生合成タンパク質PhzDをコードする、PA1902のためのオープン・リーディング・フレーム(ORF)を含む706bpフラグメントを、次のプライマー:
5’−GAGCGCAAAGCTTCCCCTGGAGACCGTGGCATGAGC−3’ [SEQ ID:No.1]
(Hindlll認識部位に下線を引いた)および
5’−GTGGGCAAAGCTTTCATTCCAGCACCTCGTCGGTGG−3’ [SEQ ID:No.2]
(Hindlll認識部位に下線を引いた)
を用いて、緑膿菌ATCC 17933からの染色体DNA(受入番号AE004616のヌクレオチド3857−4480;増幅領域ヌクレオチド3840−4480)からのPCRによって増幅させた。
【0073】
本出願との関連で用いられるすべてのヌクレオチド・シーケンスのリストは、本明細書に添付されるシーケンス列挙で提示する。
【0074】
増幅フラグメントの正確なサイズは、アガロースゲル電気泳動によって確認し、フラグメントをゲルから精製した。フラグメントを、突出末端を生み出すために酵素Hindlllで消化させた。プラスミドpJF119EHをHindlllで消化させ、脱リン酸した。2つのフラグメントを次に結紮し、大腸菌DH5α(インビトロゲン(Invitrogen GmbH)、カールスルーエ(Karlsruhe)、独国)の化学的に有能な(competent)細胞の形質転換のために用いた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(シーケンシングによって確認されるように)正確な挿入シーケンスを示すプラスミドをpC26と呼んだ。
【0075】
phzD遺伝子が緑膿菌のゲノムに2倍存在することは注目されるべきである。正確なコピーは、受入番号AE004838ヌクレオチド2623−3246(PA4213)下に見いだすことができる。
【0076】
実施例2:プラスミドpC49の構築
フェナジン生合成タンパク質PhzDをコードする緑膿菌phzD遺伝子を、PCRを用いてpET16bにサブクローン化した。PhzD・ORFを、プライマーとして
5’−CCCCTGGAGACCGTCATATGAGCGGCATTCCCG−3’
[SEQ ID:No.3]
(Ndel認識部位に下線を引いた)および
5’−CCGGTTCTGCGTTCTGATTTGGATCCTATCAGGC−3’ [SEQ ID:No.4]
(BamHl認識部位に下線を引いた)
を用い、テンプレートとしてpC26(実施例1を参照されたい)プラスミドDNAを用いて増幅させた。
【0077】
増幅フラグメントの正確なサイズ(712bp)は、アガロースゲル電気泳動によって確認した。フラグメントおよびプラスミドpET16bをNdelおよびBamHlで消化させた。2つのフラグメントを結紮し、大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(シーケンシングによって確認されるように)正確な挿入シーケンスを示すプラスミドをpC49と呼んだ。
【0078】
実施例3:プラスミドpC53の構築
ゲノムDNAを、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、マナッサス(Manassas)、バージニア州、米国から入手したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032から調製した。アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのためのORF(Cg10997)を含む1907bpフラグメントを、次のプライマー:
5’−TTTTAGATCTGTGGTTTTGTCAGAGGATGTC−3’ [SEQ ID:No.5]
(Bglll認識部位に下線を引いた)および
5’−TTGGATCCGTACGTCATGGGaAATTCAAC−3’ [SEQ ID:No.6]
(BamHl認識部位に下線を引いた、内部EcoRl認識部位を破壊するために、変更されるヌクレオチドを小文字で示して)
を用いて、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032染色体DNA(受入番号NC 003450のヌクレオチド1052000−1053883、増幅領域ヌクレオチド1052000−1053888)からのPCRによって増幅させた。
【0079】
増幅フラグメントの正確なサイズは、アガロースゲル電気泳動によって確認し、フラグメントをゲルから精製した。フラグメントを、突出末端を生み出すために酵素BglllおよびBamHlで消化させた。プラスミドpJF119EHをBamHlで消化させ、脱リン酸した。2つのフラグメントを次に結紮し、大腸菌DH5αの化学的に有能な細胞の形質転換のために用いた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(シーケンシングによって確認されるように)正確な挿入シーケンスを示すプラスミドをpC53と呼んだ。
【0080】
実施例4:プラスミドpC56の構築
この実施例では、実施例1および3からのクローン化pabABおよびphzDを発現ベクターpJF119EHで結合させた。pC53中のpabAB遺伝子をEcoRlおよびBamHlでの消化によって発現ベクターから切除し、pabAB遺伝子を含有するこのDNAフラグメントをゲル電気泳動によって精製した。プラスミドpC26をEcoRlおよびBamHlで消化させ、PabAB・EcoRl/BamHlフラグメントと一緒に結紮し、そして大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(制限マッピングによって確認されるように)pJF119EHにおいて正確な順番で2つの遺伝子を含むプラスミドをpC56と称した。
【0081】
実施例5:プラスミドpC78の構築
この実施例では、実施例2および3からのクローン化pabABおよびphzDを発現ベクターpJF119EHで結合させた。pC49中のphzD遺伝子をBglllおよびBamHlでの消化によって発現ベクターから切除し、phzD遺伝子を含有するこのDNAフラグメントをゲル電気泳動によって精製した。プラスミドpC53をBamHlで消化させ、脱リン酸化し、PhzD・Bglll/BamHlフラグメントと一緒に結紮し、大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(制限マッピングによって確認されるように)pJF119EHにおいて正確な順番で2つの遺伝子を含むプラスミドをpC78と称した。
【0082】
実施例6:プラスミドpF34の構築
ゲノムDNAを、大腸菌W3110株LJ110(T.ゼッペンフェルド(T.Zeppenfeld)ら、J.Bacteriol.182(2000)、4443〜4452頁)から調製した。DAHPシンターゼ(tyr)のための遺伝子aroFを含む1213bpフラグメントを、次のプライマー:
5’−CTATCGAATTCGAGCATAAACAGGATCGCC−3’ [SEQ ID:No.7]
(EcoRl認識部位に下線を引いた)および
5’−CACTTCAGCAACCAGTTCCCGGGGCTTCGC−3’ [SEQ ID:No.8]
(Smal認識部位に下線を引いた)
を用いて、大腸菌LJ110染色体DNA(受入番号AE000346のヌクレオチド5872−6942、増幅領域ヌクレオチド5786−6965)からのPCRによって増幅させた。
【0083】
増幅フラグメントの正確なサイズは、アガロースゲル電気泳動によって確認した。フラグメントおよびプラスミドpJF119EHをEcoRlおよびSmalで消化させた。2つのフラグメントを結紮し、そして大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(シーケンシングによって確認されるように)正確な挿入シーケンスを示すプラスミドをpF34と呼んだ。
【0084】
実施例7:プラスミドpC99、pC100、pC101の構築
この実施例では、実施例3、4、および5からのクローン化pabABおよびphzDを発現ベクターpJF119EHでaroFと結合させた。プラスミドpF34を酵素SmalおよびScalで消化させ、5595bpフラグメントをゲルから精製した。
【0085】
7.1 プラスミドpC99の構築
プラスミドpC53をEcoRlで消化させ、突出末端にKlenow酵素を用いて情報を与えた。次に、pabAB遺伝子をScalでの消化によって切除し、2774bpのDNAフラグメントを電気泳動によって精製した。pF34からの5595bpのDNAフラグメントおよび2774bpのDNAフラグメントを結紮し、大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(制限マッピングによって確認されるように)aroFおよびpabAB遺伝子を含むプラスミドをpC99と称した。
【0086】
7.2 プラスミドpC100の構築
プラスミドpC56をEcoRlで消化させ、突出末端にKlenow酵素を用いて情報を与えた。次に、pabAB−phzD・DNAフラグメントをScalでの消化によって切除し、3421bpのDNAフラグメントを電気泳動によって精製した。pF34からの5595bpのDNAフラグメントおよび3421bpのDNAフラグメントを結紮し、大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(制限マッピングによって確認されるように)aroF、pabAB、およびphzD遺伝子を含むプラスミドをpC100と称した。
【0087】
7.3 プラスミドpC101の構築
プラスミドpC78をEcoRlで消化させ、突出末端にKlenow酵素を用いて情報を与えた。次に、pabAB−phzD・DNAフラグメントをScalでの消化によって切除し、3613bpのDNAフラグメントを電気泳動によって精製した。pF34からの5595bpのDNAフラグメントおよび3613bpのDNAフラグメントを結紮し、大腸菌DH5αで形質転換させた。形質転換体を、100mg・l−1アンピシリンを含有するLB寒天平板上で選択した。(制限マッピングによって確認されるように)aroF、pabAB、およびphzD遺伝子を含むプラスミドをpC101と称した。
【0088】
実施例8:ホスト株F4の構築
大腸菌W3110株LJ110(T.ゼッペンフェルドら、J.Bacteriol.182(2000)、4443〜4452頁)のpheA・tyrA・aroF遺伝子座を、K.A.ダチェンコ(K.A.Datsenko)およびB.L.ワーナー(B.L.Wanner)、PNAS、97(2000)、6640〜6645頁に従って不活性化させた。不活性化カセットを、次のプライマー:
5’−AACTTCGTCGAAGAAGTTGAAGAAGAGTAGTCCTTTATATTGAGTGTATCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC−3’ [SEQ ID:No.9]
5’−AGTGTAAATTTATCTATACAGAGGTAAGGGTTGAAAGCGCGACTAAATTGCATATGAATATCCTCCTTAG−3’ [SEQ ID:No.10]
を用いてプラスミドpKD4からのPCRによって増幅させた。
【0089】
pheA・tyrA・aroF遺伝子座が欠失している株をF4と称した。
【0090】
実験の部II(実施例9〜12):ADC+ADP、および3,4−CHAの生産
実施例9:フェッド−バッチ(fed−batch)バイオリアクターでのADCとADPとの混合物の発酵生産
グルコースからの大腸菌F4/pC99のADC生産を無機培地で研究した。前培養培地は、MgSO・7HO(0.3g・l−1)、CaCl・2HO(0.015g・l−1)、KHPO(3.0g・l−1)、KHPO(12.0g・l−1)、NaCl(0.1g・l−1)、(NHSO(5.0g・l−1)、FeSO・7HO(0.075g・l−1)、クエン酸Na・3HO(1.0g・l−1)、チアミン・HCI(0.0125g・l−1)、L−チロシン(0.05g・l−1)、およびL−フェニルアラニン(0.05g・l−1)よりなった。追加のミネラルを、Al(SO・18HO(2.0g・l−1)、CoCl・6HO(0.75g・l−1)、CuSO・5HO(2.5g・l−1)、HBO(0.5g・l−1)、MnCl・4HO(20.0g・l−1)、NaMoO・2HO(3.0g・l−1)、NiSO・6HO(20g・l−1)、ZnSO・7HO(15.0g・l−1)からなる微量成分溶液(1.0ml・l−1)の形で加えた。グルコース原液(500g・l−1)を別々にオートクレーブ滅菌し、滅菌した培地に15g・l−1の最終濃度まで加えた。
【0091】
大腸菌F4/pC99の保存培養物を、50%グリセロールを含有するルリア−ベルターニ(Luria−Bertani)(LB)培地中−80℃で保存した。1ml供給原料を用いてアンピシリン(100mg・l−1)を含有する200mlの前培養培地に接種し、2つの1l振盪フラスコに分け、37℃および180rpmで16時間培養した。
【0092】
発酵培地は、次の変更を除いて前培養用のものと同じものであった:MgSO・7HO(0.9g・l−1)、KHPOは除いた、FeSO・7HO(0.1125g・l−1)、クエン酸Na・3HO(1.5g・l−1)、チアミン・HCI(0.075g・l−1)、L−チロシン(0.15g・l−1)、およびL−フェニルアラニン(0.3g・l−1)。追加ミネラルを微量成分溶液(1.5ml・l−1)の形で加えた。
【0093】
流加培養を5lのラブフォース(Labfors)バイオリアクター(インフォース(Infors)、アインスバッハ(Einsbach)、スイス国)中、2リットル初期容量、培養温度37℃、pH6.8で、10%接種で27.25時間行った。pHは12.5%アンモニアおよび2.5NのKOH滴定によって調整した。8.25時間後にL−チロシンおよびL−フェニルアラニンのフィード(1NのKOHに溶解した5g・l−1L−チロシン、6g・l−1L−フェニルアラニン;フィード速度7g・h−1)を開始した。9.25時間後にグルコースのフィード(500g・l−1;フィード速度12.5g・h−1)を開始した。約4.0のOD620nmで7.5時間後にADC生産が0.1mMのIPTGの添加によって誘発された。
【0094】
培養上清のサンプルを凍結乾燥させ、DOに再溶解させた。303Kでの600MHzのH−NMRは、予期される共鳴スペクトルを示した。共鳴すべての帰属は、幾つかの2D NMRテクニック(H−H COSY、H−H TOCSY、H−13C COSYおよびH−13CロングレンジHMBC)を用いて行った。スペクトルはすべてADCおよびADPの存在を裏付けた。存在するADCの量は7g・l−1であると測定された。(ADCおよびADPに加えて、16g・l−1のその前駆体コリスミ酸がHPLC分析によって測定されるように存在した。)
【0095】
別個のバッチでADCとADPとの混合物をイオン交換クロマトグラフィー(ダウエックス(Dowex)50Wx8、H−形、0.5Mアンモニア溶液で溶出)によってADCおよびADPの様々な比で、しばしばADP過剰で発酵上清から単離した。コリスミ酸を定量的に除去した。最終生成物はほぼ1:1のADCおよびADPを含有した。
【0096】
実施例10:3,4−CHAのインビトロ生産
プラスミドpC49(実施例2を参照されたい)を抱く大腸菌株BL21(DE3)pLysS(カルビオケム−ノバビオケム(Calbiochem−Novabiochem GmbH)、シュバールバッハ(Schwalbach)/Ts.、独国)の単コロニーを、アンピシリン(100mg・l−1)を含有する200mlのLB培地で37℃で培養した。0.6のOD600nmで、細胞はIPTG(1mM)の添加によって誘発された。4時間後に細胞を収穫し、緩衝液(20mMのN−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸(HEPES)、300mMのNaCl、1mMのジチオトレイトール(DTT)、20mMのイミダゾール)に再懸濁させ、後での使用のために−70℃で凍結させた。
【0097】
凍結細胞を水浴中30℃で解凍し、次に完全な溶解のために氷上で1時間インキュベートした。細胞残屑を遠心分離によって除去し、得られた細胞なし抽出物を25mlのNi−NTAスーパーフロー(Superflow)カラム(キアゲン(Qiagen)、ヒルデン(Hilden)、独国)にかけた。洗浄工程(20mMのHEPES、300mMのNaCl、1mMのDTT、20mMのイミダゾール)の後にHis・PhzDタンパク質を、増加する濃度のイミダゾール(最高250mM)を含有する緩衝液(20mMのHEPES、300mMのNaCl、1mMのDTT)での溶出によって少なくとも95%純度で得た。部分精製された抽出物をさらなる研究に用いた。
【0098】
3mlの3,4−CHA生産分析試料は0.2MのK−リン酸塩緩衝液(pH7.6)、85mgのADC、および62.5μgの部分精製されたHis・PhzDを含有した。分析をHis・PhzDの添加によって開始し、37℃で2時間後に停止した。タンパク質をセントリコン(Centricon)10カラム(ミリポア(Milipore)、エッシュボルン(Eschborn)、独国)による遠心分離によって除去した。反応混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分離した。サンプルをDOに溶解させ、300MHzのH−NMRによって293Kで分析し、3,4−CHAの存在を確認した。
【0099】
実施例11:振盪フラスコでの3,4−CHAの発酵生産
グルコースからの、それぞれ、大腸菌株F4/pC100およびF4/pC101の3,4−CHA生産を無機培地で研究した。この無機培地は、グルコース(10g・l−1)を除いて、実施例9に記載したような前培養培地と同じものであった。
【0100】
大腸菌F4/pC100およびF4/pC101の保存培養物を、50%グリセロールを含有するルリア−ベルターニ(LB)培地中−80℃で保存した。1.8ml供給原料を用いて500ml振盪フラスコ中でアンピシリン(100mg・l−1)を含有する50mlの無機培地に接種し、37℃および180rpmで16時間培養した。この培養物の125μlを次に用いて500ml振盪フラスコ中で50mlの同じ培地に接種し、37℃および180rpmで24時間培養した。約1.5のOD620nmで3.25時間後に、細胞は0.1mMIPTGを添加することによって誘発された。
【0101】
培養上清のサンプルを凍結乾燥させ、DOに再溶解させた。303Kでの600MHzのH−NMRは、予期される共鳴スペクトルを示した。共鳴すべての帰属は、幾つかの2D NMRテクニック(H−H COSY、H−H TOCSY、H−13C COSYおよびH−13CロングレンジHMBC)を用いて行った。スペクトルはすべて3,4−CHAの存在を裏付けた。存在量は株F4/pC100およびF4/pC101についてそれぞれ、30mg・l−1および150mg・l−1であると測定された。(3,4−CHAに加えて、それぞれ、102mg・l−1および520mg・l−1の3,4−CHDが存在したが、ADC、ADP、およびp−アミノ安息香酸はHPLCおよびNMR分析によって測定されるように存在しなかった。)
【0102】
実施例12:フェッド−バッチ・バイオリアクターでの3,4−CHAの発酵生産
F4/pC101の前培養を実施例9に記載したように行った。発酵培地は実施例9でのものと同じものであった。
【0103】
流加培養を5lのラブフォース・バイオリアクター(インフォース、アインスバッハ(Einsbach)、スイス国)中、2リットル初期容量、培養温度37℃、pH6.8で、10%接種で31.25時間行った。pHは12.5%アンモニアおよび2.5NのKOH滴定によって調整した。7.5時間後にL−チロシンおよびL−フェニルアラニンのフィード(1NのKOHに溶解した5g・l−1L−チロシン、6g・l−1L−フェニルアラニン;フィード速度7g・h−1)を開始した。6.5時間後にグルコースのフィード(500g・l−1;フィード速度12.5g・h−1)を開始した。約7.5のOD620nmで7.0時間後に、3,4−CHA生産が0.1mMのIPTGの添加によって誘発された。上清を3,4−CHAについてH−NMRによって分析し、存在量は1.7g・l−1であると測定された。前記量の3,4−CHAに加えて、5.4g・l−1での3,4−CHDが存在することが分かり、ならびに非常に少量の、およそそれらの検出限界で、ADC(<37mg・l−1)およびp−アミノ安息香酸(<27mg・l−1)がHPLC分析によって測定されるように存在した。
【0104】
3,4−CHAを、イオン交換クロマトグラフィーによって発酵上清から、約90重量%の収率で単離した。
【0105】
実験の部で言及されるヌクレオチドの全シーケンスは本明細書で以下にリストされ、電子形式(パテントルン)で提出されるであろう。
【0106】
実験の部III(実施例13および14、比較例AおよびB):本発明に従って得られた3,4−CHAの触媒としての使用
実施例13:本発明の前記実施形態に従って得られた純3,4−CHAでの触媒作用(および比較例A:L−プロリンでの同じ反応)
本発明者らは、モデル反応(カーディロ、G(Cardillo,G.)ら、Synth.Commun.、33巻、1587〜1594頁に記載されているものに類似のクネーベナーゲル縮合)を用いて、触媒としてL−プロリンを用いた同じ反応と比較して、3,4−CHAそれ自体が前記反応のための触媒として使用できることを実証した。
【0107】
比較例A
3−メチルブチルアルデヒド(1.55ミリモル、0.801g/mlの密度を有する172μlの液体)をDMSOに溶解させ、L−プロリン(0.2ミリモル、23.0mg)を加えた。次に、5分後に、マロン酸ジメチル(4ミリモル、1.156g/mlの密度を有する459μlの液体)を加え、混合物を室温(r.t.)で一晩撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で2回洗浄した。有機層を無水NaSO上で乾燥させた。297mgの縮合生成物、2−(3−メチル−ブチリデン)マロン酸ジメチルを得た。従って、縮合生成物の収率は96%であった。
【0108】
実施例13
3−メチルブチルアルデヒド(1.55ミリモル、0.801g/mlの密度を有する172μlの液体)をDMSOに溶解させ、3,4−CHA(0.2ミリモル、31.0mg)を加えた。次に、5分後に、マロン酸ジメチル(4ミリモル、1.156g/mlの密度を有する459μlの液体)を加え、混合物を室温(r.t.)で70時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で2回洗浄した。有機層を無水NaSO上で乾燥させた。183mgの縮合生成物、2−(3−メチル−ブチリデン)マロン酸ジメチルを得た。従って、縮合生成物の収率は46%であった。
【0109】
実施例14:本発明の前記実施形態に従って得られた純3,4−CHAのZn−錯体でのキラル触媒作用
(および比較例B:L−プロリンでの同じ反応)
本発明者らは、モデル反応(ダーブレ、T.(Darbre,T.)ら、Chem.Commun.2003、1090〜1091頁によって記載されている合成に類似の3,4−CHAの亜鉛−錯体を用いるアルドール縮合)を用いて、触媒としてL−プロリンの亜鉛−錯体を用いた同じ反応と比較して、3,4−CHAの亜鉛−錯体が、例えば4−ヒドロキシ−4−(4−ニトロフェニル)ブタン−2−オンの形成で、不斉触媒活性を示すことを実証した。良好なe.e.を前記反応生成物について得ることができる。
【0110】
同じ反応を、触媒として酢酸亜鉛だけを用いて行ったときには転化は全く観察されなかった。
【0111】
比較例B
L−プロリン(4.34ミリモル、499mg)をMeOHに溶解させ、引き続いてトリエチルアミン(TEA、0.73g/mlの密度を有する0.6mlの液体)を加えた。混合物を室温(rt)で10分間撹拌した。次に、酢酸亜鉛(2.17ミリモル、476mg)を混合物に加え、無色の沈澱が前記添加の直後に現れた。1時間撹拌した後、固体物質を濾過し、乾燥させて532mg(41%)の亜鉛−(L−プロリン)錯体を得た。この錯体は、次のH−NMR(DO)特性:δ=1.87(br s,3H),2.29(br m,1H),3.04(br s,1H),3.19(br m,1H),3.92(br s,1H)によってキャラクタリゼーションされた。
【0112】
水中の少量の上記亜鉛−(L−プロリン)錯体(0.05ミリモル;10mlの水中の15mgの錯体)を次に5mlのアセトン中の4−ニトロベンズアルデヒド(1.0ミリモル、151mg)の溶液に加え、反応混合物を不活性条件(N)下にrtで撹拌した。4時間後に、反応混合物を蒸発させ、残渣をクロロホルムに溶解させた。すべての不溶性物質を濾過した。濾液を次にロータリー蒸発させて173mg(83%収率、11%e.e.)の4−ヒドロキシ−4−(4−ニトロフェニル)ブタン−2−オンを与えた。e.e.の測定は、キラル相HPLC(キラルパック(Chiralpak)AS、ダイセル(Daicel))によって行った。
【0113】
この生成物は、次のH−NMR(DO)特性:δ=2.23(s,3H),2.86(m,2H),3.61(br s,1H,OH),5.28(dd,J=7.7,4.6Hz,1H),7.55(d,J=9.1Hz,2H),8.22(d,J=9.1Hz,2H)によって;それぞれ次の13C−NMR(DO)特性:δ=30.9(CH),51.7(CH),69.1(CH),124.0(2×CH),126.6(2×CH),150.1(2×C),208.8(C=O)によってキャラクタリゼーションされた。
【0114】
実施例14
3,4−CHA(1.08ミリモル、167mg)をMeOHに溶解させ、同量の水を加え、引き続いてトリエチルアミン(TEA、1.08ミリモル、0.73g/mlの密度を有する150μlの液体)を加えた。混合物をrtで10分間撹拌した。次に、酢酸亜鉛(0.54ミリモル、119mg)を混合物に加えた。1時間撹拌した後、固体物質を濾過した。濾液から、240μlのTEAの添加後に、白色固体が沈澱し、それを分離し、乾燥させて104mg(30%収率)の亜鉛−(3,4−CHA)錯体を与えた。
【0115】
水中の少量の上記亜鉛−(3,4−CHA)錯体(0.05ミリモル;10mlの水中の18.8mgの錯体)を次に5mlのアセトン中の4−ニトロベンズアルデヒド(1.0ミリモル、151mg)の溶液に加え、反応混合物を不活性条件(N)下にrtで撹拌した。70時間後に、反応混合物を蒸発させ、残渣をクロロホルムに溶解させた。不溶性物質を濾過した。濾液を次にロータリー蒸発させて90mg(43%生成物、88%e.e.)の4−ヒドロキシ−4−(4−ニトロフェニル)ブタン−2−オンを与えた。e.e.の測定は、キラル相HPLC(キラルパックAS、ダイセル)によって行った。
【0116】
この生成物のe.e.が反応時間および転化率への依存性をほとんど全く示さなかった:42時間の反応時間後および約24%転化率でさえも生成物は90%e.e.のレベルで鏡像体過剰であったことは注目されるべきである。
【0117】
オリゴヌクレオチドのシーケンス列挙
[SEQ ID:No.1]
GAGCGCAAAG CTTCCCCTGG AGACCGTGGC ATGAGC 36
[SEQ ID:No.2]
GTGGGCAAAG CTTTCATTCC AGCACCTCGT CGGTGG 36
[SEQ ID:No.3]
CCCCTGGAGA CCGTCATATG AGCGGCATTC CCG 33
[SEQ ID:No.4]
CCGGTTCTGC GTTCTGATTT GGATCCTATC AGGC 34
[SEQ ID:No.5]
TTTTAGATCT GTGGTTTTGT CAGAGGATGT C 31
[SEQ ID:No.6]
TTGGATCCGT ACGTCATGGA AATTCAAC 28
[SEQ ID:No.7]
CTATCGAATT CGAGCATAAA CAGGATCGCC 30
[SEQ ID:No.8]
CACTTCAGCA ACCAGTTCCC GGGGCTTCGC 30
[SEQ ID:No.9]
AACTTCGTCG AAGAAGTTGA AGAAGAGTAG TCCTTTATAT TGAGTGTATC GTGTAGGCTG GAGCTGCTTC 70
[SEQ ID:No.10]
AGTGTAAATT TATCTATACA GAGGTAAGGG TTGAAAGCGC GACTAAATTG CATATGAATA TCCTCCTTAG 70

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生合成生産が、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)を含む発酵培養液を得ながら、高められたレベルの活性で4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼを持ったホスト微生物中でインビボで発酵により行われること、かつ、これらの化合物が、一緒にか、または個別にかのどちらかで、発酵培養液から回収されることを特徴とする、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産方法。
【請求項2】
4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼがPabAB二部分タンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二部分タンパク質が放線菌類(Actinomycetes)の群からの種に、もしくはかかる二部分酵素を含有する植物に由来するか、またはそれぞれPabAおよびPabBをコードする遺伝子の融合によって構築されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
PabAB二部分タンパク質が、そのようなものとしてまたは融合タンパク質として、エシェリキア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)およびストレプトミセス属(Streptomyces)からなる属の群からの種に由来することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
PabAB二部分タンパク質が、そのようなものとしてまたは融合タンパク質として、大腸菌(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・ジフテリア・グラビス(Corynebacterium diphtheriae gravis)NCTC13129、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ストレプトミセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトミセス・ヴェネズエラエ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトミセス種(Streptomyces,sp.)FR−008、ストレプトミセス・プリスチナエスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトミセス・チオルテウス(Streptomyces thioluteus)、およびストレプトミセス・アヴェルミチリス(Streptomyces avermitilis)からなる種の群からの種の1つに由来することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
PabAB二部分タンパク質がコリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032に由来することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
形成された4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)が、反応抽出およびクロマトグラフィーからなる群から選択された分離法、場合により引き続き結晶化によって、一緒にか、または個別にかのどちらかで、前記発酵培養液から回収されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
生合成生産が、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)および4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)を含む発酵培養液を得ながら、高められたレベルの活性で4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼを持ったホスト微生物中でインビボで発酵により行われること、かつ、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)と4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)との混合物中の4−アミノ−4−デオキシプレフェネート(ADP)が、4−アミノ−4−デオキシプレフェネート・デヒドロゲナーゼとアミノトランスフェラーゼとの共同作用を用いて、そしてそれらの高められたレベルの活性でp−アミノフェニルアラニンへ転化されること、かつ、p−アミノフェニルアラニンが発酵培養液から回収されることを特徴とする、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸(ADC)の生合成生産方法に統合されたp−フェニルアラニンの生合成生産方法。
【請求項9】
生合成生産が、4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼの、およびイソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素の共同作用によって、およびそれらの高められたレベルの活性で行われること、かつ、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)がそのように得られた発酵培養液から回収されることを特徴とする、アミノデオキシコリスミ酸シンターゼのクラスに属する酵素によって少なくとも触媒される[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の生合成生産方法。
【請求項10】
生合成生産がホスト微生物中でインビボで発酵により行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼがPabAB二部分タンパク質であることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
PabAB二部分タンパク質が請求項3〜6のいずれか一項に記載の、またはそれに従ったタンパク質であること、かつ、イソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素がまた4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸を[5S,6S]−6−アミノ−5−ヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHA)へ転化することができることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
イソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素がフェナジン生合成PhzDタンパク質であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
フェナジン生合成PhzDタンパク質がシュードモナス属(Pseudomonas)、パントエア属(Pantoea)、ストレプトミセス属、およびエルビニア属(Erwinia)からなる属の群からの種に由来することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
フェナジン生合成PhzDタンパク質が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、およびパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)種からなる群から選択された種に由来することを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
フェナジン生合成PhzDタンパク質が緑膿菌ATCC 17933に由来することを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
PabAB二部分タンパク質が大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミカム、コリネバクテリウム・ジフテリア・グラビスNCTC13129、コリネバクテリウム・エフィシエンス、サッカロミセス・セレビシエ、ストレプトミセス・グリセウス、ストレプトミセス・ヴェネズエラエ、ストレプトミセス種.FR−008、ストレプトミセス・プリスチナエスピラリス、ストレプトミセス・チオルテウス、およびストレプトミセス・アヴェルミチリスからなる種の群から選択された種に由来することを特徴とする請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
PabAB二部分タンパク質がコリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032に由来することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
形成された[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)が前記反応混合物から結晶化によって、または反応抽出およびクロマトグラフィーからなる群から選択された分離法、場合により引き続いて結晶化によって回収されることを特徴とする請求項9〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属、エシェリキア属、およびピチア属(Pichia)からなる属の群から選択されたホスト生物中で行われることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法での使用のための発現ベクター。
【請求項22】
バチルス属、コリネバクテリウム属、エシェリキア属、およびピチア属からなる属の群から選択されたホスト生物の1つからのホスト細胞であって、標準条件下その自然環境でのかかる酵素の、すなわち、
・請求項3〜6のいずれか一項に従って使用されるようなPabAB二部分タンパク質、または
・4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ(好ましくはPabAB二部分タンパク質)、ならびに4−アミノ−4−デオキシプレフェネート・デヒドロゲナーゼおよびアミノトランスフェラーゼ、または
・4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ(好ましくはPabAB二部分タンパク質)、およびイソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができる酵素、または
・4−アミノ−4−デオキシコリスミ酸シンターゼ(好ましくはPabAB二部分タンパク質)、およびイソコリスミ酸を[5S,6S]−5,6−ジヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHD)へ転化することができるおよび4−アミノ−4−デオキシイソコリスミ酸を[5S,6S]−6−アミノ−5−ヒドロキシシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−カルボン酸(2,3−CHA)へ転化することができる酵素、または
・PabAB二部分タンパク質およびフェナジン生合成PhzDタンパク質、または
・PabAB二部分タンパク質および標識フェナジン生合成PhzDタンパク質
の生来の活性のレベルと比べて高められたレベルの活性での次の活性または活性の組み合わせの少なくとも1つを含むホスト細胞。
【請求項23】
触媒活性生成物としての、特にキラル触媒としての、請求項9〜19のいずれか一項に記載の方法によって得られた、[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)の使用。
【請求項24】
a)[3R,4R]−4−アミノ−3−ヒドロキシシクロヘキサ−1,5−ジエン−1−カルボン酸(3,4−CHA)を、好ましくは3,4−CHAの合成に関する請求項のいずれか一項に従った3,4−CHAの生合成によって提供する工程と、
任意の順の工程b)〜e)
b)カルボン酸官能基のそのエチルエステルへのエステル化、
c)ヒドロキシル官能基のその3−ペンタノールエーテルへのエーテル化、
d)C−3のアミノ基のアセチル化、
e)C−4のN−含有基に関してトランス位でのアミノ官能基の導入、
続いて、
f)組み合わせられた反応工程b)、c)、d)、およびe)の結果として3,4−CHAから製造された生成物のリン酸オセルタミビルへの転化
とを含む、リン酸オセルタミビルの合成方法。


【公表番号】特表2008−501326(P2008−501326A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513866(P2007−513866)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005988
【国際公開番号】WO2005/118829
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【出願人】(506403488)ディーエスエム ビオテック ゲーエムベーハー (1)
【出願人】(506403503)フォルシュングスツェントルム ユーリッヒ ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】FORSCHUNGSZENTRUM JULICH GMBH
【Fターム(参考)】