説明

4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの製造方法

【課題】製造における排水処理の環境への負担、従業者の健康への配慮等の工業的製造に有利で安価な4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの製造方法の提供。
【解決手段】4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチルー4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをケトン系溶媒の存在下反応させる工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(±)−4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、「モサプリド」ということがある。)は、選択的セロトニン4受容体アゴニストであり、良好な消化管運動促進作用を示す(後記特許文献1参照)。また、モサプリドのクエン酸塩・2水和物は、慢性胃炎に伴う消化器症状の改善を目的として既に実用化されている。
【0003】
特許文献1には、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、「化合物(III)」ということがある。)の製造方法として、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(以下、「化合物(I)」ということがある。)と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(以下、「化合物(II)」ということがある。)とを反応させる製造方法が開示されている。具体的に特許文献1には、化合物(I)と化合物(II)を1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の存在下、塩化メチレン中で反応させて化合物(III)を製造する方法、および、化合物(I)を塩化メチレン中、クロル炭酸イソブチル、トリエチルアミンを用いて反応性誘導体とし、続いてこれと化合物(II)とを反応させて化合物(III)を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1には、上記脱水縮合反応において使用できる溶媒として、例えばベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類、塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化類、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、水等が挙げられ、これらの溶媒はそれぞれ単独で、あるいは2種以上混合して用いられることが開示されている。
【0005】
【化1】

【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の上記工程において、種々の不純物が副生成する可能性がある。すなわち、工程1の反応・処理後の化合物(III)中に副生成物や残存する試薬等の不純物が、ある一定量以上含まれると、続く工程2で得られる4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド 酸付加塩(以下、「化合物(IV)」ということがある。)中に該不純物が残留する可能性がある。これら観点から、工程1において種々の不純物の生成量をできるだけ抑える必要がある。
【0007】
また、非特許文献1においても、塩化メチレンを溶媒とする前記と同様の方法によって、化合物(III)の両光学活性体の製造方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、塩化メチレンは、低沸点溶媒であるため工業的に不向きな溶媒である。そこで、工業的に有利な溶媒の選択が望まれていた。
【特許文献1】特公平3−54937号公報
【非特許文献1】Chem. Pharm. Bull., 42, 877 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、工業的製造に有利な化合物(III)の製造方法を提供することにある。
【0010】
まず、塩化メチレンの代替反応溶媒として1,2−ジクロロエタンが通常用いられるため、本反応に適用できるかを試みた。その結果、工程1において1,2−ジクロロエタンを反応溶媒として用いることで、不純物の生成が少なく、かつ、収率の良い方法であることが判明した。
【0011】
ところで、医薬品の安全性を一層高める観点から、日米EU三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議(ICH)において「医薬品の残留溶媒ガイドライン」(厚生省医薬安全局審査管理課長通知,医薬審第307号,平成10年3月30日)が作成された。医薬品の製造に使用される溶媒は、収率を向上させ、結晶形、純度、溶解性等の原薬の物性を決める重要な役割を果たしているため、それが毒性を有することが知られていても、リスク−ベネフィットの観点から原薬の製造においてその使用が避けられない場合がしばしば起こる。このような場合、本ガイドラインは原薬の残留溶媒濃度を毒性学的に許容し得る限度値以下にすべきことを規定している。
【0012】
1,2−ジクロロエタンは、本ガイドラインによるとクラス1(医薬品の製造において使用を避けるべき溶媒)に分類され、もし製造工程で使用する場合は、その残留濃度を5ppm以下にしなければならない。本ガイドラインはすでに販売されている医薬品には適用されないが、その基準に合致する原薬を製造することは医薬品に対する安全性の観点から極めて重要である。1,2−ジクロロエタンを本製造工程に用いた場合でも、残留濃度を5ppm以下にすることは可能であることは確認している。しかし、1,2−ジクロロエタンは製造における排水処理の環境への負担、従業者の健康への配慮等の工業的製造に有利で安価な溶媒でないという観点から、使用を避けることが重要であると考えた。すなわち、収率良く、操作性にも優れ、および、本ガイドラインにおいて低毒性の溶媒に分類される反応溶媒を見出すことが重要であると考えた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、工程1において使用できる反応溶媒について鋭意検討を重ねた結果、通常は工業的な縮合反応に使用されないアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒を反応溶媒として使用することで品質および収率において最も良い結果が得られることを明らかにした。アセトンおよびメチルエチルケトンは、前記の「医薬品の残留溶媒ガイドライン」によるとクラス3(低毒性の溶媒)に分類され、製造における排水処理の環境への負担、従業者の健康への配慮等の工業的製造に有利で安価な溶媒であることからも好ましい反応溶媒である。
【0014】
さらに、アセトンを反応溶媒として用いると、反応終了後に溶媒を留去することなく、反応溶液に貧溶媒である水を加え、析出した結晶を濾取することで、化合物(III)の粗結晶が簡便に得られることも見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、安価で安全かつ環境負荷も少ないケトン系溶媒を使用した化合物(III)の製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明は以下の態様を含む。
【0017】
[項1]4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをケトン系溶媒の存在下反応させる工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの製造方法。
【0018】
[項2]ケトン系溶媒がアセトンである項1に記載の製造方法。
【0019】
[項3]下記工程を含む項2に記載の製造方法:
(1a)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをアセトンの存在下反応させる工程、
(1b)上記(1a)で得られる反応混合物に水を添加し、結晶を析出させる工程。
【0020】
[項4]4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸の反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとを反応させる工程を含む項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【0021】
[項5]4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸の反応性誘導体が混合酸無水物である項4に記載の製造方法。
【0022】
[項6]4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸1重量部に対して、ケトン系溶媒を5〜20容量部用いる項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【0023】
[項7]下記工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの酸付加塩の製造方法:
(1)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをケトン系溶媒の存在下反応させた後、回収する工程、
(2)上記(1)で得られる生成物を酸で処理し、酸付加塩を得る工程。
【0024】
[項8]下記工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの酸付加塩の製造方法:
(1a)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをアセトンの存在下反応させる工程、
(1b)上記(1a)で得られる反応混合物に水を添加し、結晶を析出させた後、回収する工程、
(2)上記(1b)で得られる生成物を酸で処理し、酸付加塩を得る工程。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、化合物(III)の収率がよく、不純物の生成が少なく、操作性の観点からも適した化合物(III)の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の製造方法を以下に詳しく説明する。
【0027】
工程1
【0028】
【化2】

【0029】
本発明の出発物質である4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸(I)および2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(II)は公知物質であって、化合物(II)は、例えば、特許文献1に記載されている方法で製造される。また、特許文献1によれば、化合物(I)またはその反応性誘導体と、化合物(II)とを反応させることにより、化合物(III)を得ることができる。
【0030】
本発明の特徴は、反応溶媒としてケトン系溶媒を用いることである。ケトン系溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトンが例示できるが、好ましい反応溶媒としてはアセトンである。これら溶媒は混合して用いても良く、また本発明の効果を損なわない範囲において他の溶媒を加えても良い。該ケトン系溶媒の使用量は好ましくは、化合物(I)1重量部に対して、通常5〜20容量部である。なお、「1重量部に対して1容量部」とは、1gに対して1mLであることを意味する。
【0031】
化合物(I)に対する化合物(II)の使用量は化合物(I)に対して通常0.8〜1.5当量であり、好ましくは、0.9〜1.2当量である。反応温度は通常0〜120℃であり、好ましくは0〜50℃である。また、反応時間は通常1〜24時間であり、好ましくは1.5〜12時間である。
【0032】
化合物(I)と化合物(II)とを直接脱水縮合する場合には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、N,N’−カルボニルジコハク酸イミド、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリンのような縮合剤の存在下に反応させることができる。縮合剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合には、N−ヒドロキシコハク酸イミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等を添加して反応することが好ましい。
【0033】
化合物(I)の反応性誘導体としては、例えば低級アルキルエステル、活性エステル、酸無水物、酸ハライド(特に酸クロリド)等が挙げられる。活性エステルの具体例としてはp−ニトロフェニルエステル、2,4,5−トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、シアノメチルエステル、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、N−ヒドロキシフタルイミドエステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドエステル、N−ヒドロキシピペリジンエステル、8−ヒドロキシキノリンエステル、2−アルキルフェニルエステル、2−ヒドロキシ−4,5−ジクロロフェニルエステル、2−ヒドロキシピリジンエステル、2−ピリジルチオールエステル等が挙げられる。
【0034】
酸無水物としては、対称酸無水物または混合酸無水物が挙げられる。混合酸無水物としては、化合物(I)とクロル炭酸エチル、クロル炭酸イソブチルのようなクロル炭酸アルキル、クロル炭酸ベンジルのようなクロル炭酸アラルキル、クロル炭酸フェニルのようなクロル炭酸アリール、ピバロイルクロリド等の試薬と反応させて製造される酸無水物が例として挙げられる。
【0035】
上記反応の中で収率が良く、かつ、安価に製造するために、好ましくは、化合物(I)を混合酸無水物に誘導した後に化合物(II)とを反応させる方法がよい。混合酸無水物に誘導する好ましい試薬としては、上記に挙げた中でクロル炭酸エチル、クロル炭酸イソブチルのようなクロル炭酸アルキルである。ここにおいて、例えばクロル炭酸エチルを用いる方法では、不純物として5−クロロ−2−エトキシ−4−エトキシカルボニルアミノ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、「化合物(V)」ということがある。)が化合物(III)中に含まれ、続く化合物(IV)にも含有される可能性がある。しかしながら、クロル炭酸エチルを用いた場合、本発明の製法によれば化合物(IV)中の化合物(V)は検出限界以下である。
【0036】
【化3】

【0037】
使用されるクロル炭酸アルキル等の試薬の使用量は、化合物(I)に対して、通常1〜3当量であり、好ましくは、1.0〜1.2当量である。また、混合酸無水物に誘導する反応は、通常塩基の存在下で行われ、塩基の具体例としては、例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような重炭酸アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような炭酸アルカリあるいはトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリンのような有機塩基が挙げられるが、化合物(II)の過剰量で兼ねることもできる。該反応で用いられる塩基の使用量は、化合物(I)に対して、通常1〜3当量であり、好ましくは1.0〜1.5当量である。反応温度は通常0〜40℃であり、好ましくは0〜30℃である。また、反応時間は通常0.5〜3時間であり、好ましくは0.5〜1.5時間である。
【0038】
化合物(I)の反応性誘導体と化合物(II)との反応であるアミド化反応の反応温度は通常0〜50℃であり、好ましくは20〜40℃である。また、反応時間は通常0.5〜4時間であり、好ましくは1〜3時間である。
【0039】
本反応における工程において、アセトンを反応溶媒として用いる場合には、反応終了後に貧溶媒である水を添加することにより、化合物(III)の粗生成物を結晶として単離することが可能である。その水の添加量は、通常アセトン1容量部に対して0.5〜5容量部であり、好ましくは0.6〜4容量部である。
【0040】
工程2
【0041】
【化4】

【0042】
工程2は、例えば特許文献1に記載の方法に従って行うことができる。
【0043】
化合物(IV)の結晶の残留アセトンの濃度は、前記の「医薬品の残留溶媒ガイドライン」においては5,000ppm以下であることが規定されているが、好ましい値としては、50ppm以下である。本発明によれば、実際に製造される原薬として、アセトンの濃度が12ppm(検出限界)以下の原薬が製造できる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。化合物(IV)において、酸がクエン酸である酸付加塩を化合物(IV’)とする。化合物(III)の純度ならびに化合物(III)および化合物(IV’)に含まれる化合物(V)の含有量は高速液体クロマトグラフィーで測定した。なお、化合物(IV’)は、水和物および/または溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物および/または溶媒和物も化合物(IV’)に包まれる。
【0045】
実施例1〜4
[工程1]化合物(I)20.0g、トリエチルアミン11.3gおよびアセトンまたはメチルエチルケトン160mLの混合溶液に、クロル炭酸エチル11.1gを滴下し、0〜20℃で表1に示す時間攪拌した(混合酸無水物反応)。次に、該混合液に化合物(II)21.8gを滴下し、0〜20℃で1時間攪拌した(アミド化反応)。反応終了後、溶媒を減圧留去し、50vol%イソプロパノール水90mLを加え、攪拌した。さらに水70mLを加え、析出した結晶を濾取し、化合物(III)の粗生成物を得た。得られた化合物(III)にイソプロパノール440mLおよび活性炭2gを加え、還流下で30分間攪拌した。熱時濾過後放冷し、析出した結晶を濾取・乾燥し、精製した化合物(III)を得た。
[工程2]上記工程1で得られた化合物(III)、クエン酸一水和物13.9gおよび50vol%イソプロパノール水314mLを加えて混合し、混合溶液を還流下で30分間攪拌した。放冷後、析出した結晶を濾取・乾燥し、精製した化合物(IV’)を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例1〜6
実施例1におけるアセトンに代えて、1,2−ジクロロエタン、トルエン、酢酸エチルを用いる以外は、実施例1と同様にして、化合物(III)、続いて、化合物(IV’)を製造した。なお、前記の「医薬品の残留溶媒ガイドライン」の分類において、トルエンはクラス2(医薬品中の残留量を規制すべき溶媒)に分類され、酢酸エチルはクラス3(低毒性の溶媒)に分類される。
【0048】
【表2】

【0049】
酢酸エチルを反応溶媒として使用した場合には、化合物(IV’)中から化合物(V)を除去することができなかった。また、トルエンを使用した場合は、その他の溶媒と比較して化合物(I)の溶解度が低いため、収率が低下したと考えられた。
【0050】
実施例5〜10
実施例1の工程1において、化合物(I)1重量部に対するアセトンの8容量部に代えて、アセトンの6、12または18容量部を用い、アミド化反応の反応時間を1時間から2時間に変更する以外は実施例1と同様にして化合物(III)をそれぞれ2回製造した。結果を表3に示した。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例11〜34
実施例1の工程1において、混合酸無水物反応における製造パラメータ(反応温度および反応時間)を種々変化させ、またアミド化反応の反応時間を1時間から2時間に変更する以外は実施例1の工程1と同様の方法で、化合物(III)をそれぞれ2回製造した。結果を表4に示した。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例35〜43
化合物(I)20.0g、トリエチルアミン11.3gおよびアセトン200mLの混合溶液にクロル炭酸エチル11.1gを滴下し、10℃で1時間攪拌した。次に、化合物(II)21.8gのアセトン40mL溶液を滴下し、アミド化反応における製造パラメータ(反応温度および反応時間)を種々変化させ反応した。反応終了後、反応液に水240mLを加え、析出した結晶を濾取し、化合物(III)の粗生成物を得た。得られた化合物(III)、活性炭2.0gおよびイソプロパノール440mLの混合溶液を35分間還流攪拌した。溶液を熱時濾過し放冷後、析出した結晶を濾取し、精製した化合物(III)を得た。結果を表5に示した。
【0055】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0056】
以上記載のように、本発明方法により医薬品として使用しうる高純度の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドが製造できる工業的方法が提供される。本発明方法は、従来法と比較して品質および収率において優れ、操作性も良く、さらに、製造における排水処理の環境への負担、従業者の健康への配慮等の工業的製造に有利で安価な製造法であることから、その経済的利点は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをケトン系溶媒の存在下反応させる工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの製造方法。
【請求項2】
ケトン系溶媒がアセトンである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記工程を含む請求項2に記載の製造方法:
(1a)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをアセトンの存在下反応させる工程、
(1b)上記(1a)で得られる反応混合物に水を添加し、結晶を析出させる工程。
【請求項4】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸の反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとを反応させる工程を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸の反応性誘導体が混合酸無水物である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸1重量部に対して、ケトン系溶媒を5〜20容量部用いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
下記工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの酸付加塩の製造方法:
(1)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをケトン系溶媒の存在下反応させた後、回収する工程、
(2)上記(1)で得られる生成物を酸で処理し、酸付加塩を得る工程。
【請求項8】
下記工程を含む4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドの酸付加塩の製造方法:
(1a)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸またはその反応性誘導体と2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとをアセトンの存在下反応させる工程、
(1b)上記(1a)で得られる反応混合物に水を添加し、結晶を析出させた後、回収する工程、
(2)上記(1b)で得られる生成物を酸で処理し、酸付加塩を得る工程。

【公開番号】特開2008−247753(P2008−247753A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87739(P2007−87739)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 大日本住友製薬株式会社 環境CSR推進部、「大日本住友製薬 社会・環境報告書2006」、2006年(平成18年)10月
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】