説明

4−アミノブチルアルデヒドアセタールの製造方法

【課題】高収率で4−アミノブチルアルデヒドアセタールを簡便に製造し得る方法の提供。
【解決手段】一般式(1)(RとRはメチル基、エチル基で代表される。)


で示されるアクロレインアセタールを、ヒドロホルミル化触媒、一酸化炭素および水素の存在下で、反応圧力が0.3〜1.3MPaかつ反応温度が100〜140℃でヒドロホルミル化し、次に水素化触媒、アンモニアおよび水素の存在下で還元アミノ化することを特徴とする、一般式(2)


で示される4−アミノブチルアルデヒドアセタールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノブチルアルデヒドアセタールの製造方法に関する。本発明により得られる4−アミノブチルアルデヒドアセタールは、二官能性の化合物として、医薬品、農薬および香料などの合成中間体として有用である。
【背景技術】
【0002】
4−アミノブチルアルデヒドアセタールの従来の製造方法としては、1−シアノ−4,4−ジメトキシブタンを還元する方法(特許文献1〜3参照)、N−ビニルフタルイミドをヒドロホルミル化した後に、アセタール化、フタルイミドの脱離によって合成する方法(特許文献4参照)などが知られている。また、アクロレインの環状アセタールをヒドロホルミル化した後に、還元アミノ化する方法(非特許文献1参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−227552号
【特許文献2】特開平11−71333号
【特許文献3】米国特許5,886,227号
【特許文献4】国際公開第2008/134327号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chemiker−Zeitung, Vol.108, No.12, 391〜397頁(1984)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、少量の不純物で触媒が被毒され活性を失うことや、触媒被毒の抑制のため反応に直接関係のない添加物を加えることが提案されており、精製工程での添加物の分離やコストの面で不利である。また、特許文献4に記載の方法では、出発物質からの反応段階が長く、4−アミノブチルアルデヒドアセタールの収率が低い。非特許文献1に記載の方法には環状アセタール以外の合成例が無く、非環状アセタールへの適用についてはなんら言及されていない。また、触媒使用量も多く、非経済的である。
しかして、本発明の目的は、高収率で4−アミノブチルアルデヒドアセタールを簡便に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者によれば、上記の目的は、
下記一般式(1)
【化1】

(式中、RとRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10の環状炭化水素基を表すか,またはRとRは連結して、それぞれが結合している酸素原子と共に環形成原子数5〜15の環を形成しても良い。)
で示されるアクロレインアセタール(以下、アクロレインアセタール(1)と称する。)を、ヒドロホルミル化触媒、一酸化炭素および水素の存在下で、反応圧力が0.3〜1.3MPaかつ反応温度が100〜140℃でヒドロホルミル化し、次いで水素化触媒、アンモニアおよび水素の存在下で還元アミノ化することを特徴とする、下記一般式(2)
【化2】

(式中、RとRは前記定義のとおりである。)
で示される4−アミノブチルアルデヒドアセタールの製造方法を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、簡便に収率よく4−アミノブチルアルデヒドアセタールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いるアクロレインアセタール(1)は、下記一般式(1)で示される。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、RとRが、それぞれ独立して表す炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。中でも、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基であることが好ましい。
とRがそれぞれ独立して表す炭素数3〜10の環状炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
とRが連結して、それぞれが結合している酸素原子と共に形成していてもよい環形成原子数5〜15の環としては、例えばジオキソラン環、ジオキサン環、ジオキセパン環、ジオキセカン環などが挙げられる。
【0011】
本発明の方法において、ヒドロホルミル化は、アクロレインアセタール(1)をヒドロホルミル化触媒存在下に、一酸化炭素と水素の混合ガスと反応させることによって行う。反応は、攪拌型反応槽、循環型反応槽、気泡塔型反応槽などを用いて、バッチ方式または連続方式で行うことができる。必要ならば、未反応のアクロレインアセタール(1)を再循環しながら実施してもよい。連続式反応では、単一反応器または直列もしくは並列の複数の反応器で実施することができる。
【0012】
ヒドロホルミル化では、1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタールおよび異性体である2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノアセタールが生成する。その生成比は反応温度、反応圧力などの反応条件によって大きく変化する。経済性、蒸留精製の容易さの観点から、1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタール:2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノアセタール=70:30〜95:5となる反応条件が好ましい。以下、詳述する。
【0013】
使用できるヒドロホルミル化触媒は、均一系触媒が好ましく、有機金属錯体を触媒として用いることが好ましい。共存させる配位子として、ホスフィンもしくはホスファイトを使用できる。ヒドロホルミル化触媒として用いる中心金属の例としては、コバルト、ルテニウム、白金、ロジウムが挙げられる。これらの中でも、経済性および収率の観点から、ロジウムが好ましい。配位子は単座配位子でも二座配位子でもよい。配位子の例としてトリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィンなどのモノホスフィン;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなどのビスホスフィン;トリフェニルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイトなどのモノホスファイト、下記式
【0014】
【化3】

(以下、BIPHEPHOSと略す)
【0015】
【化4】

(以下、TTB−NGと略す)
【0016】
などのビスホスファイトが挙げられる。
【0017】
ヒドロホルミル化触媒の使用量に特に制限は無いが、バッチ方式で反応させる場合、アクロレインアセタール(1)に対して0.001〜1モル%であるのが好ましく、0.002〜0.1モル%であるのがより好ましい。ヒドロホルミル化触媒の使用量が0.001モル%以上であれば、十分な反応速度でヒドロホルミル化反応が進行するため有利であり、1モル%以下であれば、急激な反応による発熱や暴走反応を抑えることができ、かつ経済的に有効である。また、中心金属原子とリン原子の比は、1:1〜1:100の範囲となるのが好ましく、1:2〜80の範囲となるのがより好ましく、1:4〜1:80の範囲となるのがさらに好ましい。
【0018】
ヒドロホルミル化反応の反応温度に特に制限は無いが、本発明の方法においては100〜140℃の範囲であるのが特に好ましい。反応温度が100℃以上であると、1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタール選択性が高くなり、反応温度が140℃以下であると、生成物の分解が抑制される。
【0019】
ヒドロホルミル化反応に用いる一酸化炭素と水素の混合ガス圧力は、使用する原料の量、反応器の空隙容量、反応温度によって適宜決定されるが、一酸化炭素と水素の混合ガスの圧力が0.3〜1.3MPaの範囲であることが好ましく、0.5〜1.1MPaの範囲であることがより好ましい。圧力が0.3MPa以上であれば、十分な反応速度が得られ、圧力が1.3MPa以下であると、高い1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタール選択性が得られる。
【0020】
一酸化炭素と水素の混合比率に特に制限は無いが、通常、体積比で一酸化炭素:水素=75:25〜25:75であるのが好ましく、70:30〜30:70であるのがより好ましい。また、窒素やアルゴンなどの不活性ガスがさらに存在していても構わない。
【0021】
ヒドロホルミル化反応は、溶媒の存在下または非存在下に実施することができる。使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンなどのポリオール;テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの脂肪族または芳香族炭化水素;水などが挙げられる。これらの中でも、脂肪族または芳香族炭化水素が好ましい。これらは、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。溶媒の使用量に特に制限は無い。
【0022】
本発明の方法に使用するアクロレインアセタール(1)は、市販品を使用しても、アクロレインをアルコール存在下でアセタール化したものを使用してもよい。アセタール化の方法については特に制限は無く、公知の方法によって行うことができる。
【0023】
ヒドロホルミル化反応によって得られた1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタールは、そのままアンモニア存在下での還元反応に用いることもできるし、蒸留などの手段によって分離精製した後に用いることもできる。
【0024】
本発明の方法における還元アミノ化は、ヒドロホルミル化反応によって得られた1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタールを、水素化触媒存在下に水素とアンモニアを反応させることによって行う。反応は、攪拌型反応槽、循環型反応槽、気泡塔型反応槽などを用いて、バッチ方式または連続方式で行うことができる。連続式反応では、例えば固定床反応器、流動床反応器又はスラリー反応器も用いることができ、単一反応器または直列もしくは並列の複数の反応器で実施することもできる。
【0025】
使用する水素化触媒は不均一系触媒などが好ましい。使用できる金属の例としてコバルト、ニッケル、銅などが挙げられる。これらの中でも、経済性および収率の観点から、ニッケル触媒が好ましい。かかるニッケル触媒の例としては、各種ラネーニッケル、チタニア、アルミナ、シリカ、ケイソウ土等の様々な担体に担持されたニッケルなどが挙げられる。これらのニッケル触媒は、他の金属、例えばバリウム、マンガン、ジルコニウム、セレン、カルシウム、モリブデン等によって変性されていてもよい。
【0026】
水素化触媒の使用量に特に制限は無いが、バッチ方式で反応させる場合、1,4−ブタンジアルデヒドモノアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノアセタールの総質量に対して0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜15質量%であるのがより好ましい。水素化触媒の使用量が0.1質量%以上であると、十分な反応速度で反応が進行し、一方、30質量%以下であると、急激な反応による発熱や暴走反応を抑えることができる。
【0027】
アンモニアの使用量に特に制限は無いが、通常、ホルミル基に対して1〜50モル倍であるのが好ましい。アンモニアの使用量がホルミル基に対して1モル倍以上であると、未反応の原料や反応中間体が残留しないので精製や生産性、経済性の観点から有利であり、アンモニアの使用量がホルミル基に対して50モル倍以下であると、生産性の観点から好ましい。アンモニアは、液体アンモニアを用いても、水などの溶媒に溶解させた溶液を用いてもよい。
【0028】
還元アミノ化の反応温度に特に制限は無いが、通常、60〜200℃が好ましい。反応温度が60℃以上であれば、反応の速度が向上し、反応温度が200℃以下であれば、生成物の分解が抑制される。
【0029】
水素圧力に特に制限は無く、使用する原料の量、反応器の空隙容量、反応温度によって適宜決定されるが、反応圧力が1〜20MPaとなるように水素を加えることが好ましい。反応圧力が1MPa以上であると、十分な反応速度が得られ、反応圧力が20MPa以下であると、高価な反応器を必要とせず、経済的観点から好ましい。
【0030】
還元アミノ化反応は、溶媒の存在下または非存在下に実施することができる。使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンなどのポリオール;テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの脂肪族または芳香族炭化水素;水などが挙げられる。これらの中でも、アルコ−ルが好ましい。これらは、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。溶媒の使用量に特に制限は無い。
【0031】
還元アミノ化によって得られた4−アミノブチルアルデヒドアセタールは、蒸留などの手段によって分離精製することができる。
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、本実施例において、ガスクロマトグラフィー分析は以下の条件で行い、収率は検量線法による内標分析により求めた。
[ガスクロマトグラフィー分析条件]
分析機器:GC14A(株式会社島津製作所製)
検出器:FID(水素炎イオン化型検出器)
使用カラム:DB−1(20m、膜圧5μm)(J&W Scientific社製)
分析条件:Injection Temp.280℃、Detection Temp.280℃
昇温条件:50℃(5分保持)→(10℃/分で昇温)→250℃(5分保持)
【0033】
<実施例1>
〈ヒドロホルミル化〉
容量100mLのオ−トクレ−ブ(SUS316製)中に、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム3.7mg(14.3μmol)、TTB−NG0.35g(0.36mmol)、トルエン28mLおよびアクロレインジメチルアセタール36.2g(0.35mol)を入れ、一酸化炭素:水素=1:1(体積比)の混合ガスで0.6MPaに昇圧したのちに、110℃に加熱した。混合ガスを10L/hrで流通させながら、110℃で撹拌した。6時間後に、反応混合液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、アクロレインジメチルアセタールの転化率は91%で、アルデヒド選択率は92%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は87:13であった。
〈還元アミノ化〉
容量100mLのオ−トクレ−ブ(SUS316製)中にラネーニッケル(BK113AW エボニックデグサジャパン株式会社製)0.5g、メタノ−ル27mLおよび液体アンモニア18mL(0.72mol)を入れ、120℃に加熱した。水素で9MPaに昇圧したのちに、上記のヒドロホルミル化によって得られた反応混合液32mL(アルデヒド濃度62%、0.12mol、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタール/2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタール=87/13)を1.0mL/分でオートクレーブに加えた。反応液を加え終えてから4時間、120℃で撹拌した。冷却した後に、触媒をろ過で取り除き、溶媒を留去したところ、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタール、2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの転化率は100%で、4−アミノ−1−ブチルアルデヒドジメチルアセタールと1−アミノ−2−メチルプロパンジアルデヒドジメチルアセタールが91%の収率、生成比93:7で得られた。この反応液を理論段数15段の蒸留塔を用いて還流比5、1.3kPaで減圧蒸留し、69℃のフラクションを分離したところ、純度99.7%の4−アミノ−1−ブチルアルデヒドジメチルアセタールが単離収率94%で得られた。
【0034】
以下、ヒドロホルミル化反応についての実施例を示す。
<実施例2>
反応温度を130℃にする以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は94%で、アルデヒド選択率は89%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は92:8であった。
【0035】
<実施例3>
TTB−NGを0.07g(0.07mmol)にする以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は92%で、アルデヒド選択率は92%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は90:10であった。
【0036】
<実施例4>
反応圧力を1.2MPaにする以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は93%で、アルデヒド選択率は90%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は82:18であった。
【0037】
<実施例5>
反応圧力を1.0MPaにする以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は94%で、アルデヒド選択率は90%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は75:25であった。
【0038】
<実施例6>
Rh使用量を180mg、TTB−NG使用量を17.5gにする以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は94%で、アルデヒド選択率は89%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は92:8であった。
【0039】
<実施例7>
一酸化炭素:水素=1:2(体積比)の混合ガスを使用する以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は94%で、アルデヒド選択率は89%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は93:7であった。
【0040】
<実施例8>
配位子にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.23g(0.36mmol)を使用する以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は92%で、アルデヒド選択率は90%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は92:8であった。
【0041】
<実施例9>
配位子にトリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト0.19g(0.36mmol)を使用する以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は91%で、アルデヒド選択率は90%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は88:12であった。
【0042】
<実施例10>
配位子にトリフェニルホスフィン0.09g(0.36mmol)を使用する以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は88%で、アルデヒド選択率は89%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は92:8であった。
【0043】
<実施例11>
配位子にBIPHEPHOS0.28g(0.36mmol)を使用する以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は88%で、アルデヒド選択率は90%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は94:6であった。
【0044】
<実施例12>
触媒にカルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム13.1mg(14.3μmol)を使用し、配位子にトリフェニルホスファイト0.11g(0.36mmol)を使用する以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は92%で、アルデヒド選択率は87%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は88:12であった。
【0045】
<実施例13>
アクロレインジメチルアセタールの代わりにアクロレインジエチルアセタール46.1g(0.35mmol)を使用する以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジエチルアセタールの転化率は95%で、アルデヒド選択率は93%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジエチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジエチルアセタールの生成比は94:6であった。
【0046】
<比較例1>
〈ヒドロホルミル化〉
反応温度を80℃にし、反応時間を8時間にする以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は86%で、アルデヒド選択率は86%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は59:41であった。
〈還元アミノ化〉
得られた反応液を用いて実施例1と同様に還元アミノ化を行ったところ、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタール、2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの転化率は100%で、4−アミノ−1−ブチルアルデヒドジメチルアセタールと1−アミノ−2−メチルプロパンジアルデヒドジメチルアセタールが86%の収率、生成比65:35で得られた。この反応液を理論段数15段の蒸留塔を用いて還流比5、1.3kPaで減圧蒸留し、69℃のフラクションを分離したところ、純度96.7%(3−アミノ−2−メチルプロピオンアルデヒドジメチルアセタール3.2%)の4−アミノ−1−ブチルアルデヒドジメチルアセタールが収率74%で得られた。
【0047】
以下、ヒドロホルミル化反応についての比較例を示す。
<比較例2>
反応圧力を2.0MPaにする以外は実施例2と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は96%で、アルデヒド選択率は85%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は59:41であった。
【0048】
<比較例3>
反応圧力を1.0MPaにする以外は比較例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は93%で、アルデヒド選択率は86%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は53:47であった。
【0049】
<比較例4>
反応圧力を9.0MPaにする以外は比較例1と同様に反応を行った。その結果、アクロレインジメチルアセタールの転化率は93%で、アルデヒド選択率は90%であり、1,4−ブタンジアルデヒドモノジメチルアセタールと2−メチル−1,3−プロパンジアルデヒドモノジメチルアセタールの生成比は46:54であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により得られる4−アミノブチルアルデヒドアセタールは、二官能性の化合物として、医薬品、農薬、香料などの機能性化合物の合成原料や、塗料化合物に使用されているホルムアルデヒドの代替品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、RとRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10の環状炭化水素基を表すか、またはRとRは連結して、それぞれが結合している酸素原子と共に環形成原子数5〜15の環を形成しても良い。)
で示されるアクロレインアセタールを、ヒドロホルミル化触媒、一酸化炭素および水素の存在下で、反応圧力が0.3〜1.3MPaかつ反応温度が100〜140℃でヒドロホルミル化し、次いで水素化触媒、アンモニアおよび水素の存在下で還元アミノ化することを特徴とする、下記一般式(2)
【化2】

(式中、RとRは前記定義のとおりである。)
で示される4−アミノブチルアルデヒドアセタールの製造方法。

【公開番号】特開2012−201624(P2012−201624A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67423(P2011−67423)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】