説明

4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩、その製造方法およびそれを用いる核酸の検出方法

【課題】 ストークスシフトが大きく、蛍光強度値が大きく、さらに蛍光増感率も大きい、二本鎖核酸を検出するための蛍光色素を提供すること。
【解決手段】 一般式(2)
【化1】


で表される4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩により前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖核酸を検出するための蛍光色素として有用な、4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩、その製造方法およびそれを用いた核酸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子診断技術の発達に伴い、遺伝子を検出する技術の重要性が増している。二本鎖DNAやDNA−RNAハイブリッド等の二本鎖核酸の検出には、従来よりエチジウムブロミドやオキサゾールイエロー等の蛍光色素を用いた検出が用いられている(非特許文献1)。また、それらの蛍光色素をオリゴヌクレオチドに結合させて得られるオリゴヌクレオチドプローブは、癌遺伝子やウイルス等の遺伝子診断に用いられている(特許文献1)。
【0003】
本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩はこれまでに全く報告されておらず、新規の化合物である。なお非特許文献2には、本発明の類似化合物である2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩が開示されているが、本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩とは、少なくともベンゾチアゾール環4位にアルコキシ基を有している点で異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−013147号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】The Handbook,A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies;Molecular Probe;315−412(2005)
【非特許文献2】Dyes and Pigments,67,47−54(2005)
【非特許文献3】Dyes and Pigments,11,21−35(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エチジウムブロミドやオキサゾールイエロー等二本鎖核酸を検出するのに用いられる従来の蛍光色素は、ストークスシフトが小さい、蛍光強度が弱いといった問題があった。具体的には、エチジウムブロミドには、蛍光強度値が低く、当該色素と核酸との接触による蛍光強度値の増加の割合、いわゆる蛍光増感率が小さいという問題があった。オキサゾールイエローには、ストークスシフトが小さいという問題があった。
【0007】
また非特許文献2に開示の2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩は、二本鎖核酸を検出するための蛍光色素として用いることができるが、ストークスシフトが小さく、蛍光強度値が低く、蛍光増感率も小さいため、実用には十分ではないという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、ストークスシフトが大きく、蛍光強度値が大きく、さらに蛍光増感率も大きい、二本鎖核酸を検出するための蛍光色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩が、ストークスシフトが大きく、蛍光強度値が大きく、さらに蛍光増感率も大きい、二本鎖核酸を検出するための蛍光色素であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、一般式(2)
【0011】
【化1】

(式中、Rは炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のハロアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表す。RとRは結合している窒素原子と一体となって複素環を形成してもよい。R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基、メトキシ基またはフッ素原子を表し、R6−1、R6−2およびR6−3は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基または炭素数1から3のアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子、炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基、メチルスルホニルオキシ基またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩に関し、その具体例として、下記一般式(2a)
【0012】
【化2】

(式中、R2aは3−ヨードプロピル基、4−ヨードブチル基、5−ヨードペンチル基または6−ヨードヘキシル基を表す。)、および下記式(2b)
【0013】
【化3】

がある。
【0014】
また本発明は、一般式(4)
【0015】
【化4】

(式中、Rは炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のハロアルキル基を表し、R6−1、R6−2およびR6−3は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基または炭素数1から3のアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子、炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基、メチルスルホニルオキシ基またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム塩を、縮合剤の存在下、一般式(5)
【0016】
【化5】

(式中、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表す。RとRは結合している窒素原子と一体となって複素環を形成してもよい。R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基、メトキシ基またはフッ素原子を表す。)で表されるベンズアルデヒド誘導体と反応させる、一般式(2)
【0017】
【化6】

(式中、R、R、R、R、R5−1、R5−2、R5−3、R5−4、R6−1、R6−2、R6−3およびXは前記と同じ意味を表す。)で表される4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩の製造方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、一般式(2)
【0019】
【化7】

(式中、Rは炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のハロアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表す。RとRは結合している窒素原子と一体となって複素環を形成してもよい。R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基、メトキシ基またはフッ素原子を表し、R6−1、R6−2およびR6−3は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基または炭素数1から3のアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子、炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基、メチルスルホニルオキシ基またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩と二本鎖核酸とを分子間相互作用させ、該4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩の蛍光増感を観測することにより、二本鎖核酸を検出する方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩は、二本鎖核酸を検出するための蛍光色素として用いることができる。また本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩は、非特許文献2で開示の2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩と比較し、大きなストークスシフト、強い蛍光強度、および高い蛍光増感を示すため、遺伝子検査、遺伝子診断、遺伝子研究の分野等で極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩(以下、本発明の蛍光色素という)中、Rで表される炭素数1から3のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を例示することができる。中でも蛍光強度が強い点で、メチル基がRとして好ましい。
【0023】
本発明の蛍光色素中、Rで表される炭素数1から8のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基を例示することができる。また、Rで表される炭素数1から8のハロアルキル基としては、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、3−ブロモプロピル基、4−ブロモブチル基、5−ブロモペンチル基、6−ブロモヘキシル基、7−ブロモヘプチル基、8−ブロモオクチル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、3−ヨードプロピル基、4−ヨードブチル基、5−ヨードペンチル基、6−ヨードヘキシル基、7−ヨードヘプチル基、8−ヨードオクチル基を例示することができる。中でも蛍光強度が強い点で、エチル基、3−ヨードプロピル基、4−ヨードブチル基、5−ヨードペンチル基または6−ヨードヘキシル基がRとして好ましい。
【0024】
本発明の蛍光色素中、RおよびRで表される炭素数1から3のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を例示することができる。また、RとRが結合している窒素原子と一体となって形成される複素環としては、該窒素原子を含む複素環の名称で例示すると、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基を例示することができる。中でも蛍光強度が強い点で、メチル基がRおよびRとして好ましい。
【0025】
本発明の蛍光色素中、R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4で表される炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基を例示することができる。中でも蛍光強度が強い点で、水素原子がR5−1、R5−2、R5−3およびR5−4として好ましい。
【0026】
本発明の蛍光色素中、R6−1、R6−2およびR6−3で表される炭素数1から3のアルキル基としては、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を例示することができる。また、R6−1、R6−2およびR6−3で表される炭素数1から3のアルコキシ基としては、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基を例示することができる。中でも蛍光強度が強い点で、水素原子、メチル基またはメトキシ基がR6−1、R6−2およびR6−3として好ましい。
【0027】
本発明の蛍光色素中、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示することができる。またXで表される炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基としては、メトキシスルホニルオキシ基、エトキシスルホニルオキシ基、プロポキシスルホニルオキシ基、ブトキシスルホニルオキシ基、ペントキシスルホニルオキシ基、ヘキサノキシスルホニルオキシ基、ヘプタノキシスルホニルオキシ基、オクタノキシスルホニルオキシ基を例示することができる。中でも蛍光強度が強い点で、ヨウ素原子またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ(TfO)基がXとして好ましい。
【0028】
次に、本発明の蛍光色素の製造方法(以下、単に本発明の製造方法という)について詳細に説明する。本発明の蛍光色素(2)は、下記スキームにより製造することができる。
【0029】
【化8】

(式中、R、R、R、R、R5−1、R5−2、R5−3、R5−4、R6−1、R6−2、R6−3およびXは前記と同じ意味を表す。)
本発明の製造方法は、4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム塩(4)とベンズアルデヒド誘導体(5)を縮合させ、本発明の蛍光色素(2)を製造する方法である。本発明の製造方法の原料である4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム塩(4)は、例えば文献記載の方法(Dyes and Pigments,11,21−35(1989):非特許文献3)を参考に、対応する4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾール誘導体から調製することができる。
【0030】
なお本発明の製造方法は、縮合剤の存在下に行なうことが必須であり、縮合剤としては塩基または脱水剤を用いることができる。本工程の縮合剤として用いることのできる塩基としては、ピペリジン、ピロリジン、モルフォリン等の有機塩基を例示することができる。また、本工程の縮合剤で用いることのできる脱水剤としては、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を例示することができる。中でも収率が良い点で、ピペリジンまたは無水酢酸が縮合剤として好ましい。
【0031】
本工程の反応は反応を阻害しない溶媒であれば、溶媒中で行なってもよい。本工程で用いることができる溶媒として、具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、水等を例示することができ、これらの溶媒の中から2種類以上を混合して用いてもよい。また前述した縮合剤である、ピペリジン、ピロリジン、モルフォリン等の有機塩基、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を溶媒として用いてもよい。
【0032】
4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム塩(4)とベンズアルデヒド誘導体(5)とのモル比に特に制限はないが、1:1から1:10の範囲が好ましく、中でも収率が良い点で1:1から1:3がさらに好ましい。また、4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム塩(4)と縮合剤とのモル比も特に制限はないが、縮合剤を溶媒として用いない場合には、1:1から1:10が好ましく、中でも収率が良い点で1:1から1:3がさらに好ましい。
【0033】
本工程の反応温度は、−78℃から150℃の範囲から適宜選ばれた温度で行なうことができる。中でも収率が良い点で室温から120℃の範囲が好ましい。
【0034】
本工程で得られた、本発明の蛍光色素(2)は、必要に応じて反応終了後、反応溶液から精製することで得ることができる。精製する方法には特に限定はないが、溶媒抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を精製することができる。
【0035】
本発明の蛍光色素(2)は、二本鎖核酸と分子間相互作用することにより顕著な蛍光増感を示すので、二本鎖核酸の検出に用いることができる。分子間相互作用の方法に特に制限はないが、例えば、インターカレーション、マイナーグルーブバインディング、メジャーグルーブバインディング等があげられる。好ましくはインターカレーションまたはマイナーグルーブバインディングであり、さらに好ましくはインターカレーションである。検出対象の二本鎖核酸は、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッドのいずれであってもよく、PCR等に代表される核酸増幅反応により合成された二本鎖核酸、化学的に合成された二本鎖核酸、血液、組織、細胞等の生体由来試料から抽出された二本鎖核酸、食品、土壌、排水等から分離された微生物由来試料から抽出された二本鎖核酸等を用いることができる。
【0036】
本発明の蛍光色素(2)と二本鎖核酸とを分子間相互作用させ、該蛍光色素(2)の蛍光増感を観測する溶媒に特に制限はないが、緩衝液を用いると好ましい。該緩衝液としては、トリス−塩酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、HEPES−KOH緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液を例示することができる。また、検出対象の二本鎖核酸の熱的安定性の向上を目的に、前述の緩衝液に任意の濃度で無機塩を添加してもよい。用いることのできる無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化マグネシウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等を例示することができ、これらの無機塩の中から2種類以上を混合して用いてもよい。なお、無機塩の添加濃度は0Mから5Mの範囲が好ましい。前述の緩衝液に、さらに0%から80%の割合で該緩衝液と混和可能な有機溶媒を添加してもよい。該有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランを例示することができ、これらの有機溶媒の中から2種類以上を混合して用いてもよい。有機溶媒の添加割合は、検出対象の二本鎖核酸が安定して存在する点で、0%から20%の範囲が好ましい。
【0037】
本発明の蛍光色素(2)と二本鎖核酸とを分子間相互作用させ、本発明の蛍光色素(2)の蛍光増感を観測する温度に特に制限はないが、検出対象の二本鎖核酸の融解温度(Tm値)以下である0℃から80℃が好ましく、0℃から60℃の範囲が特に好ましい。
【実施例】
【0038】
次に本発明を実施例および参考例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
【0040】
【化9】

アルゴン雰囲気下、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(931mg,2.60mmol)、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(420mg,2.82mmol)と無水酢酸(10mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(5.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−エチル−4−メトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(1.17g,収率92%)を紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.02(d,J=15.2Hz,1H),7.91(d,J=9.0Hz,2H),7.83(dd,J=8.1Hz,1H),7.62(t,J=8.1Hz,1H),7.57(d,J=15.2Hz,1H),7.40(d,J=8.1Hz,1H),6.83(d,J=9.0Hz,2H),4.98(q,J=7.0Hz,2H),4.06(s,3H),3.11(s,6H),1.47(t,J=7.0Hz,3H).
実施例2
【0041】
【化10】

アルゴン雰囲気下、3−(3−ヨードプロピル)−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(35.9mg,0.076mmol)、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(14.0mg,0.094mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(5.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−(3−ヨードプロピル)−4−メトキシベンゾチアゾリウム=ヨージド(16.7mg,収率36%)を黒紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.04(d,J=15.3Hz,1H),7.91(d,J=9.6Hz,2H),7.84(d,J=8.1Hz,1H),7.62(t,J=8.1Hz,1H),7.52(d,J=15.3Hz,1H),7.42(d,J=8.1Hz,1H),6.89(d,J=9.6Hz,2H),5.10−4.90(m,2H),4.09(s,3H),3.47(t,J=7.4Hz,2H),3.12(s,6H),2.41−2.37(m,2H).
実施例3
【0042】
【化11】

アルゴン雰囲気下、3−(4−ヨードブチル)−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(1.36g,2.78mmol)、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(416.6mg,2.79mmol)と無水酢酸(12.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(5.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−(4−ヨードブチル)−4−メトキシベンゾチアゾリウム=ヨージド(1.41g,収率82%)を紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.07(d,J=15.2Hz,1H),7.91(d,J=9.0Hz,2H),7.83(d,J=8.1Hz,1H),7.62(d,J=8.1Hz,1H),7.54(d,J=15.2Hz,1H),7.39(d,J=8.1Hz,1H),6.84(d,J=9.0Hz,2H)5.10−5.00(m,2H),4.07(s,3H),3.40−3.35(m,2H),3.11(s,6H),2.00−1.90(m,4H).
実施例4
【0043】
【化12】

アルゴン雰囲気下、3−(5−ヨードペンチル)−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(39.6mg,0.073mmol)、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(20.2mg,0.14mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(2.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−(5−ヨードペンチル)ベンゾチアゾリウム=ヨージド(11.2mg,収率24%)を黒紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.06(d,J=15.3Hz,1H),7.91(d,J=9.2Hz,2H),7.83(d,J=8.2Hz,1H),7.63(t,J=8.2Hz,1H),7.56(d,J=15.3Hz,1H),7.39(d,J=8.2Hz,1H),6.83(d,J=9.2Hz,2H),4.96−4.93(m,2H),4.06(s,3H),3.30−3.29(m,2H),3.11(s,6H),1.90−1.80(m,4H),1.60−1.50(m,2H).
実施例5
【0044】
【化13】

アルゴン雰囲気下、3−(6−ヨードヘキシル)−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(38.6mg,0.075mmol)、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(16.6mg,0.11mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(2.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−(6−ヨードヘキシル)ベンゾチアゾリウム=ヨージド(12.9mg,収率27%)を黒紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.03(d,J=15.3Hz,1H),7.91(d,J=9.0Hz,2H),7.83(d,J=8.1Hz,1H),7.62(t,J=8.1Hz,1H),7.56(d,J=15.3Hz,1H),7.40(d,J=8.1Hz,1H),6.85(d,J=9.0Hz,2H),4.94(t,J=8.0Hz,2H),4.07(s,3H),3.29(t,J=6.8Hz,2H),3.12(s,6H),1.90−1.70(m,4H),1.52−1.40(m,4H).
実施例6
【0045】
【化14】

アルゴン雰囲気下、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(238.6mg,0.67mmol)、4−(ジメチルアミノ)−3−フルオロベンズアルデヒド(122.8mg,0.73mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(2.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)−3−フルオロスチリル]−3−エチル−4−メトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(356.6mg,収率90%)を紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.05(d,J=15.5Hz,1H),8.00(dd,J=2.0,16.1Hz,1H),7.87(d,J=8.2Hz,1H),7.72(d,J=15.5Hz,1H),7.68(m,1H),7.66(t,J=8.2Hz,1H),7.43(d,J=8.2Hz,1H),6.96(t,J=9.2Hz,1H),5.03(q,J=7.0Hz,2H),4.07(s,3H),3.04(d,J=2.0Hz,6H),1.48(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −77.7(s,3F),−123.1(s,1F).
実施例7
【0046】
【化15】

アルゴン雰囲気下、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(101.8mg,0.28mmol)、4−(ジメチルアミノ)−2−フルオロベンズアルデヒド(47.5mg,0.28mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(2.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)−2−フルオロスチリル]−3−エチル−4−メトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(111.7mg,収率74%)を紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.06(t,J=9.0Hz,1H),7.95(d,J=15.4Hz,1H),7.84(d,J=8.1Hz,1H),7.64(t,J=8.1Hz,1H),(d,J=15.4Hz,1H),7.42(d,J=8.1Hz,1H),6.73(dd,J=2.5,9.0Hz,1H),6.66(dd,J=2.5,15.2Hz,1H),4.98(q,J=7.1Hz,2H),4.07(s,3H),3.11(s,6H),1.48(t,J=7.1Hz,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −77.7(s,3F),−122.2(s,1F).
実施例8
【0047】
【化16】

アルゴン雰囲気下、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(104.3mg,0.29mmol)、4−(ジエチルアミノ)−3−メトキシベンズアルデヒド(60.5mg,0.29mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(2.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−2−[4−(ジエチルアミノ)−3−メトキシスチリル]−3−エチル−4−メトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(113.9mg,収率90%)を黒紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.07(d,J=15.1Hz,1H),7.92(d,J=9.0Hz,1H),7.75(d,J=8.1Hz,1H),7.57(t,J=8.1Hz,1H),7.45(d,J=15.1Hz,1H),7.36(d,J=8.1Hz,1H),6.51(dd,J=2.0,9.0Hz,1H),6.24(d,J=2.0Hz,1H),4.90(q,J=7.1Hz,2H),4.04(s,3H),3.97(s,3H),3.53(q,J=7.0Hz,4H),1.45(t,J=7.1Hz,3H),1.18(t,J=7.0Hz,6H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −77.7(s,3F).
実施例9
【0048】
【化17】

アルゴン雰囲気下、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(128.9mg,0.36mmol)、4−(1−ピロリジニル)ベンズアルデヒド(69.4mg,0.40mmol)と無水酢酸(1.0mL)の混合物を、110℃で一晩撹拌した。反応混合物にトルエン(2.0mL)を加えて減圧濃縮を行ない、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、(E)−3−エチル−4−メトキシ−2−[4−(1−ピロリジニル)スチリル]ベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(184.4mg,収率99%)を紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.01(d,J=15.2Hz,1H),7.91(d,J=8.8Hz,2H),7.81(d,J=8.1Hz,1H),7.61(t,J=8.1Hz,1H),7.53(d,J=15.2Hz,1H),7.38(d,J=8.1Hz,1H),6.79(d,J=8.8Hz,2H),4.97(q,J=7.0Hz,2H),4.06(s,3H),3.42(t,J=6.4Hz,4H),2.02−1.98(m,4H),1.46(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −77.7(s,3F).
実施例10
【0049】
【化18】

実施例1と同様な方法で、3−エチル−4,7−ジメトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナートと4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを反応させ、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−エチル−4,7−ジメトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナートの緑色固体(70%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.13(d,J=15.2Hz,1H),7.90(d,J=9.0Hz,2H),7.55(d,J=15.2Hz,1H),7.34(d,J=9.0Hz,1H),7.22(d,J=9.0Hz,1H),6.83(d,J=9.0Hz,2H),4.95(q,J=7.1Hz,2H),4.00(s,3H),3.99(s,3H),3.11(s,6H),1.45(t,J=7.1Hz,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −77.7(s,3F).
実施例11
【0050】
【化19】

実施例1と同様な方法で、3−エチル−4,6−ジメトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージドと4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを反応させ、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−エチル−4,6−ジメトキシベンゾチアゾリウム=ヨージドの赤褐色固体(85%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.93(d,J=15.2Hz,1H),7.78(d,J=9.0Hz,2H),7.53(d,J=15.2Hz,1H),7.48(d,J=2.3Hz,1H),6.95(d,J=2.3Hz,1H),6.82(d,J=9.0Hz,2H),4.93(q,J=7.1Hz,2H),4.03(s,3H),3.88(s,3H),3.09(s,6H),1.44(t,J=7.1Hz,3H).
実施例12
【0051】
【化20】

実施例1と同様な方法で、3−エチル−4,5,6,7−テトラメトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナートと4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを反応させ、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−エチル−4,5,6,7−テトラメトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナートの緑色固体(55%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 8.34(d,J=15.1Hz,1H),7.91(d,J=9.0Hz,2H),7.56(d,J=15.1Hz,1H),6.84(d,J=9.0Hz,2H),4.87(q,J=7.1Hz,2H),4.05(s,3H),4.03(s,3H),3.96(s,3H),3.95(s,3H),3.12(s,6H),1.46(t,J=7.1Hz,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −77.7(s,3F).
実施例13
【0052】
【化21】

アルゴン雰囲気下、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(107mg,0.30mmol)、4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(51.8mg,0.35mmol)とピペリジン(9.0μL,0.090mmol)のエタノール(2.0mL)溶液を、90℃で一晩撹拌を行なった。反応混合物を室温に戻した後減圧濃縮を行ない、得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]により精製することで、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−エチル−4−メトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(50mg,収率34%)を紫色の固体として得た。
【0053】
実施例14
【0054】
【化22】

アルゴン雰囲気下、3−(4−ヨードブチル)−4,7−ジメトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(201mg,0.39mmol)と4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド(59.0mg,0.39mmol)の無水酢酸(1.0mL)懸濁液を、110℃で一晩撹拌を行なった。反応混合物を室温に戻した後減圧濃縮を行ない、得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]により精製することで、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]−3−(4−ヨードブチル)−4,7−ジメトキシベンゾチアゾリウム=ヨージド(225mg,収率89%)を暗赤色粉状として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)/H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 8.13(d,J=15.2Hz,1H),7.90(d,J=9.0Hz,2H),7.55(d,J=15.2Hz,1H),7.34(d,J=9.0Hz,1H),7.22(d,J=9.0Hz,1H),6.84(d,J=9.0Hz,2H),4.94(m,2H),4.00(s,3H),3.99(s,3H),3.38−3.35(m,2H),3.11(s、6H),1.96−1.80(m,4H).
実施例15
【0055】
【化23】

アルゴン雰囲気下、3−(4−ヨードブチル)−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(133mg,0.27mmol)と4−(ジメチルアミノ)−3−フルオロベンズアルデヒド(45.4mg,0.27mmol)の無水酢酸(2.0mL)溶液を、110℃で一晩撹拌を行なった。反応混合物を室温に戻した後減圧濃縮を行ない、得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]により精製することで、(E)−2−[4−(ジメチルアミノ)−3−フルオロスチリル]−3−(4−ヨードブチル)−4−メトキシベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(112.9mg,収率65%)を紫色の固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.07(d,J=15.7Hz,1H),7.98(d,J=15.7Hz,1H),7.90(d,J=8.1Hz,1H),7.70(d,J=9.3Hz,1H),7.69(t,J=8.1Hz,1H),7.68(t,J=8.1Hz,1H),7.44(d,J=8.1Hz,1H),6.97(t,J=9.3Hz,1H),5.04−5.01(m,2H),4.08(s,3H),3.38−3.35(m,2H),3.06(s,3H),3.05(s,3H),1.96−1.94(m,4H).
19F−NMR(376MHz,CDCl):δ −123.1(s,1F).
参考例1
【0056】
【化24】

2−アミノ−4−メトキシベンゾチアゾール(5.0g,27.7mmol)と水酸化カリウム(30g,15.3mmol)の水−エチレングリコール(5:1,36mL)混合溶液を二日間加熱還流した。反応混合物にトルエン(100mL)と酢酸(30mL)を加え、トルエン(30mL×3)にて抽出した。あわせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮を行なうことで2−アミノ−3−メトキシチオフェノール(3.79g,収率88%)を黄色液体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 6.85(d,J=7.9Hz,1H),6.77(d,J=7.9Hz,1H),6.54(t,J=7.9Hz,1H),3.84(s,3H).
参考例2
【0057】
【化25】

アルゴン雰囲気下、2−アミノ−3−メトキシチオフェノール(3.79g,24.4mmol)のピリジン(30mL)溶液にパラアセトアルデヒド(16.2mL,122mmol)と酢酸(7.0mL)を加えた後、70℃で一晩撹拌した。反応混合溶液に飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(30mL×3)にて抽出した。あわせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮を行なった。得られた粗生成物のエタノール(40mL)溶液に塩化鉄(III)(3.95g,24.4mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、酢酸エチル(100mL×3)にて抽出した。あわせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮を行なった。得られた粗生成物を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(3:1)]で精製することにより、4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾール(2.36g,収率54%)を黄色固体として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ 7.40(d,J=8.0Hz,1H),7.29(t,J=8.0Hz,1H),6.88(d,J=8.0Hz,1H),4.03(s,3H),2.85(s,3H).
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ 165.0,152.9,143.3,125.6,113.4,106.3,55.8,20.0.
参考例3
【0058】
【化26】

アルゴン雰囲気下、4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾール(509mg,2.84mmol)のジクロロメタン(5.0mL)溶液を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸エチル(0.5mL,3.87mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、得られた粗生成物を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム−メタノール(10:1)]で精製することにより、3−エチル−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=トリフルオロメタンスルホナート(949mg,収率94%)を白色固体として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 7.95(d,J=8.2Hz,1H),7.72(t,J=8.2Hz,1H),7.48(d,J=8.2Hz,1H),4.85(q.J=7.2Hz,2H),4.08(s,3H),3.15(s,3H),1.48(t,J=7.2Hz,3H).
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ 175.5,149.5,131.1,130.1,129.1,116.0,111.7,57.1,48.1,16.5,14.3.
19F−NMR(376MHz,DMSO−d):δ −77.7.
参考例4
【0059】
【化27】

アルゴン雰囲気下、4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾール(524mg,2.92mmol)と1,4−ジヨードブタン(1.90mL,14.6mmol)の混合物を、105℃にて一晩撹拌した。反応溶液に酢酸エチル加えた後、濾過を行なうことで3−(4−ヨードブチル)−4−メトキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム=ヨージド(1.36g,96%)を黄土色の固体として得た。
mp:145から147℃.
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ 7.96(d,J=8.2Hz,1H),7.72(t,J=8.2Hz,1H),7.47(d,J=8.2Hz,1H),4.83−4.79(m,2H),4.08(s,3H),3.45−3.30(m,2H),3.14(s,3H),1.97−1.94(m,4H).
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ 175.8,149.4,131.1,130.2,129.1,116.0,111.7,57.2,51.3,30.0,29.8,16.8,7.60.
以上、実施例1から15および参考例1から4に例示した方法により製造可能な、本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩の例を表1から7に示す。ただし、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0060】
【化28】

【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

実施例16
4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩(2)に二本鎖核酸(二本鎖DNA(DNA−DNA)またはDNA−RNAハイブリッド)を添加した時の蛍光特性を評価した。
【0068】
(a)方法
以下の条件で、本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩(2)(化合物1、化合物10、化合物18)に二本鎖DNAまたはDNA−RNAハイブリッドを添加して蛍光スペクトルを測定した。なお対照化合物として下記の対照色素Aを用いて、同様の測定を行なった。
【0069】
【化29】

二本鎖DNA:
5’−d(CGACGCAGGGATGTTAAGTATAACATTTGC)−
3’(配列番号1)と5’−d(GCAAATGTTATACTTAACATCC
CTGCGTCG)−3’(配列番号2)からなる二本鎖DNA
DNA−RNAハイブリッド:
5’−d(CGACGCAGGGATGTTAAGTATAACATTTGC)−
3’(配列番号1)と5’−r(GCAAAUGUUAUACUUAACAUCC
CUGCGUCG)−3’(配列番号3)からなるDNA−RNAハイブリッド
測定溶液:
リン酸バッファー(137mM NaCl,2.68mM KCl,8.1mM
NaHPO,1.47mM KHPO、pH7.4),0.1% DMS

色素濃度:1.0μM
二本鎖核酸の濃度:0.5μM
測定温度:43℃
(b)結果
本発明の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩(本発明の蛍光色素)(2)(化合物1、化合物10、化合物18)および対照色素A(対照A)のみでの最大励起波長、最大蛍光波長および蛍光強度、ならびに二本鎖核酸(二本鎖DNA(DNA−DNA)またはDNA−RNAハイブリッド)添加時の各化合物の最大蛍光波長、蛍光強度、蛍光増感率(二本鎖核酸添加時の蛍光強度値を色素のみでの蛍光強度値で割った値)を表8に示す。
【0070】
【表8】

本発明の蛍光色素(2)は、二本鎖核酸の添加により大きな蛍光増感を示すことがわかる。具体的には、二本鎖DNAを添加したときの、本発明の蛍光色素(2)(化合物1、化合物10、化合物18)における蛍光増感率は、それぞれ10.7倍、13.1倍、19.7倍を示す一方、対照色素Aの蛍光増感率は6.3倍であり、本発明の色素が二本鎖DNAに対し蛍光増感率の有意な増大が確認できた。また、本発明の蛍光色素(2)(化合物1、化合物10、化合物18)に二本鎖DNA添加した時の蛍光強度値は、対照色素Aに二本鎖DNA添加した時の値と比較し、1.2倍から1.6倍あり、蛍光強度絶対値の増大も確認できた。さらに、二本鎖DNAの添加による本発明の蛍光色素(2)(化合物1、化合物10、化合物18)のストークスシフトも、対照色素A(50nm)に対し3nmから17nm増大した。同様に、DNA−RNAハイブリッドを添加したときの、本発明の蛍光色素(2)(化合物1、化合物10、化合物18)における蛍光増感率は、それぞれ3.5倍、8.0倍、3.2倍を示す一方、対照色素Aの蛍光増感率は2.3倍であり、本発明の色素がDNA−RNAハイブリッドに対し蛍光増感率の有意な増大が確認できた。また、DNA−RNAハイブリッドによる本発明の蛍光色素(2)(化合物1、化合物10、化合物18)のストークスシフトも、対照色素A(53nm)に対し4nmから19nm増大した。
【0071】
以上の結果より、対照色素Aのベンゾチアゾール環4位をアルコキシ基に置換した、本発明の蛍光色素(2)は、対照色素Aと比較し、二本鎖核酸添加による、ストークスシフトの有意な増大、蛍光強度値の増大および蛍光増感率の有意な増加が確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(2)
【化1】

(式中、Rは炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のハロアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表す。RとRは結合している窒素原子と一体となって複素環を形成してもよい。R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基、メトキシ基またはフッ素原子を表し、R6−1、R6−2およびR6−3は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基または炭素数1から3のアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子、炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基、メチルスルホニルオキシ基またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を表す。)で表される、4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項2】
6−1、R6−2およびR6−3が各々独立に水素原子またはメトキシ基である、請求項1に記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項3】
5−1、R5−2、R5−3、R5−4、R6−1、R6−2およびR6−3が水素原子である、請求項1に記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項4】
がメチル基である、請求項1から3のいずれかに記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項5】
およびRがメチル基である、請求項1から4のいずれかに記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項6】
がエチル基、3−ヨードプロピル基、4−ヨードブチル基、5−ヨードペンチル基または6−ヨードヘキシル基である、請求項1から5のいずれかに記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項7】
Xがヨウ素原子またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基である、請求項1から6のいずれかに記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項8】
一般式(2)が、下記一般式(2a)
【化2】

(式中、R2aは3−ヨードプロピル基、4−ヨードブチル基、5−ヨードペンチル基または6−ヨードヘキシル基を表す。)である請求項1に記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項9】
一般式(2)が、下記式(2b)
【化3】

である、請求項1に記載の4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩。
【請求項10】
一般式(4)
【化4】

(式中、Rは炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のハロアルキル基を表し、R6−1、R6−2およびR6−3は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基または炭素数1から3のアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子、炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基、メチルスルホニルオキシ基またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−メチルベンゾチアゾリウム塩を、縮合剤の存在下、一般式(5)
【化5】

(式中、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表す。RとRは結合している窒素原子と一体となって複素環を形成してもよい。R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基、メトキシ基またはフッ素原子を表す。)で表されるベンズアルデヒド誘導体と反応させる、一般式(2)
【化6】

(式中、R、R、R、R、R5−1、R5−2、R5−3、R5−4、R6−1、R6−2、R6−3およびXは前記と同じ意味を表す。)で表される4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩の製造方法。
【請求項11】
一般式(2)
【化7】

(式中、Rは炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のハロアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から3のアルキル基を表す。RとRは結合している窒素原子と一体となって複素環を形成してもよい。R5−1、R5−2、R5−3およびR5−4は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基で置換していてもよいアミノ基、メトキシ基またはフッ素原子を表し、R6−1、R6−2およびR6−3は各々独立に水素原子、炭素数1から3のアルキル基または炭素数1から3のアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子、炭素数1から8のアルコキシスルホニルオキシ基、メチルスルホニルオキシ基またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩と二本鎖核酸とを分子間相互作用させ、該4−アルコキシ−2−(4−アミノスチリル)ベンゾチアゾリウム塩の蛍光増感を観測することにより、二本鎖核酸を検出する方法。

【公開番号】特開2013−40136(P2013−40136A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178374(P2011−178374)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】